特許第6209181号(P6209181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209181時計ムーブメントの脱進機構のためのアンクル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209181
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】時計ムーブメントの脱進機構のためのアンクル
(51)【国際特許分類】
   G04B 15/14 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   G04B15/14 A
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-111102(P2015-111102)
(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公開番号】特開2015-230309(P2015-230309A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2015年6月1日
(31)【優先権主張番号】14171389.1
(32)【優先日】2014年6月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・フッシンガー
(72)【発明者】
【氏名】マルク・シュトランツル
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・ヴォシェ
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02320280(EP,A1)
【文献】 特表2013−529779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 15/00 − 14
G04C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメントの脱進機構のためのアンクル(2)であって、フォーク部(4)と、爪石保持部(7)と、前記爪石保持部に取り付けられた爪石(6)と、前記爪石保持部を前記フォーク部に相互接続しているレバー(8)と、を備え、前記フォーク部は、フォーク(12)と、ケン先(14)と、スタッド(16)と、を含み、前記レバーと前記爪石保持部は、一体であって、当該アンクルの一体型の本体(3)を形成しており、前記フォークは、前記本体の取付け孔(18)と前記フォークの取付け孔(20)に押し込まれる前記スタッドによって前記本体に固定される追加部品であり、前記追加されたフォークは、前記本体から距離を置いており、
前記スタッドは、実質的に破断伸びがなくかつ850HV以上の硬度を有する材料で構成されることを特徴とする、アンクル。
【請求項2】
少なくとも前記取付け孔に係合する前記スタッドの表面は、研削により得られる表面仕上げを有することを特徴とする、請求項1に記載のアンクル。
【請求項3】
前記スタッドは略円柱形状を有し、その各端に、該スタッドの長手軸に対して垂直に広がる前面を有し、
前記前面は、直角度のずれが1°未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアンクル。
【請求項4】
前記スタッドは、サファイア、ルビー、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化タングステン、単結晶または多結晶コランダム、窒化シリコン、炭化シリコン、硬化鋼、コバルトマトリクスと炭化タングステン、非晶質金属合金、を含む群から選択された材料で構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のアンクル。
【請求項5】
前記フォークは、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、ニッケル、ニッケル−リン、鋼、非晶質合金、銅合金、を含む群から選択された材料で構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のアンクル。
【請求項6】
前記本体は、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、チタン、アルミニウム、鋼、ニッケル、ニッケル−リン、非晶質合金、を含む材料群から選択された材料で構成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のアンクル。
【請求項7】
前記フォークは、前記取付け孔(20)の周りにスペーサチューブ(19b)を有し、該チューブは、前記フォークと前記本体との間の距離を規定するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のアンクル。
【請求項8】
前記本体は、前記取付け孔(18)の周りにスペーサチューブ(19a)を有し、該チューブは、前記フォークと前記本体との間の距離を規定するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のアンクル。
【請求項9】
前記本体は、機械加工により得られる様々なレベルを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のアンクル。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のアンクルを少なくとも1つ有する、時計脱進機構。
【請求項11】
請求項10に記載の時計脱進機構を有する時計ムーブメント。
【請求項12】
時計ムーブメントの脱進機構のためのアンクル(2)であって、フォーク部(4)と、爪石保持部(7)と、前記爪石保持部に取り付けられた爪石(6)と、前記爪石保持部を前記フォーク部に相互接続しているレバー(8)と、を備え、前記フォーク部は、フォーク(12)と、ケン先(14)と、スタッド(16)と、を含み、前記レバーと前記爪石保持部は、一体であって、当該アンクルの一体型の本体(3)を形成しており、前記フォークは、前記本体の取付け孔(18)と前記フォークの取付け孔(20)に押し込まれる前記スタッドによって前記本体に固定される追加部品であり、前記追加されたフォークは、前記本体から距離を置いており、
前記スタッドは、応力下で塑性域を実質的に持たない材料で構成され、
前記フォークは、前記取付け孔(20)の周りにスペーサチューブ(19b)を有し、該チューブは、前記フォークと前記本体との間の距離を規定するように構成されていることを特徴とする、アンクル。
【請求項13】
時計ムーブメントの脱進機構のためのアンクル(2)であって、フォーク部(4)と、爪石保持部(7)と、前記爪石保持部に取り付けられた爪石(6)と、前記爪石保持部を前記フォーク部に相互接続しているレバー(8)と、を備え、前記フォーク部は、フォーク(12)と、ケン先(14)と、スタッド(16)と、を含み、前記レバーと前記爪石保持部は、一体であって、当該アンクルの一体型の本体(3)を形成しており、前記フォークは、前記本体の取付け孔(18)と前記フォークの取付け孔(20)に押し込まれる前記スタッドによって前記本体に固定される追加部品であり、前記追加されたフォークは、前記本体から距離を置いており、
前記スタッドは、応力下で塑性域を実質的に持たない材料で構成され、
前記本体は、前記取付け孔(18)の周りにスペーサチューブ(19a)を有し、該チューブは、前記フォークと前記本体との間の距離を規定するように構成されていることを特徴とする、アンクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメントの脱進機構のための、特にスイスレバー脱進機のための、アンクルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
時計脱進機構のためのアンクルは、特許文献1に開示されている。フォークとレバーのそれぞれの機能を最適化するために、フォークは、レバーおよびケン先の平面からオフセットした追加部品である。フォークは、フォークとレバーにそれぞれ形成されたオリフィスに押し込まれるスタッドによってレバーに固定され、このスタッドにより、レバーの平面とフォークとの間の距離も設定される。アンクルの主平面に対して垂直な軸に沿ったこの距離は、アンクルが組み込まれる機構の最適な動作を得るためには、アンクルの製造の際に、特にレバー上のケン先の組み立ての際に、完全に制御されなければならない。実例として、この距離の設定における製造公差は、典型的には、およそ±20μmである。従来、スタッドは、棒材旋削加工により製造される極めて小径の金属部品である。典型的には、これらのスタッドは、鋼、黄銅、または洋白の棒材を、棒材旋削加工することによって製造される。これらのスタッドは、典型的には、約0.24mmの直径を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2320280号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
棒材旋削加工によるスタッドに関する現在の問題は、それらは、製造の際の突切り工程の結果として、その前面に「突起物」を有するということである。実際に、棒材旋削工程の終わりに、チゼルで棒材からスタッドを切り離すと、スタッドは棒材から解放されて、端面に小さな錐状体が残る。「突起物」として知られるこの小さな錐状体は、レバー上のケン先を正確な距離で組み立てる作業のための基準としての機能を果たし得る円柱体に対して垂直なクリーンな端面を形成することを不可能にするので、望ましくない。これらのスタッドは、レバーと「同一平面」になるように押し入れることができない。さらに、これらのスタッドは、それらが小寸法であることから、組み付けの際に変形する傾向があるので、組み付けが難しく、これにより、ケン先に対するフォークの位置決めが永久的に失われて、脱進機の性能に悪影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、長い使用期間にわたって正確かつ高信頼性である、時計脱進機構のためのアンクルを提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、製造するのに経済的な、頑強なアンクルを提供することである。
【0007】
さらに、本発明の目的は、アンクルのフォーク、レバー、爪石の機能の最適化を可能とする、時計脱進機構のためのアンクルを提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、アンクルの主平面に対して垂直な軸に沿った、レバーの平面とケン先との間の距離が完全に制御される、時計脱進機構のためのアンクルを提供することである。
【0009】
本発明のこれらの目的は、請求項1に記載の、時計脱進機構のためのアンクルによって達成される。従属請求項は、本発明の効果的な態様について記載している。
【0010】
本発明では、時計ムーブメントの脱進機構のためのアンクルは、フォーク部と、爪石保持部と、爪石保持部に取り付けられた爪石と、爪石保持部をフォーク部に相互接続しているレバーと、を備える。フォーク部は、フォークと、ケン先と、スタッドと、を含む。レバーと爪石保持部は、一体であって、アンクルの一体型の本体を形成しており、フォークは、本体の取付け孔とフォークの取付け孔に押し込まれるさらに/または組み付けられるスタッドによって本体に固定される追加部品である。追加されたフォークは、本体から距離を置いている。スタッドは、応力下で塑性域を持たない材料で製造される。
【0011】
取付け孔に係合するスタッド面は、研削および/または研磨により得られる表面仕上げを有する。
【0012】
一実施形態によれば、スタッドは、850HV以上の硬度を有する。スタッド材料は、金属マトリクス複合材、セラミック、結晶性または非晶質金属とすることができ、それは、850HV以上の表面硬度を実現するために処理されても、処理されなくてもよい。
【0013】
スタッドは、好ましくは、サファイア、ルビー、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化タングステン、単結晶または多結晶コランダム、窒化シリコン、炭化シリコン、硬化鋼、コバルトマトリクスと炭化タングステン、非晶質金属合金、を含む群から選択された材料で構成される。非晶質合金として、具体的には、鉄−ニッケル非晶質合金およびコバルト−ニッケル系非晶質合金が選択され、典型的には、合金Fe52Ni22Nb6V5B15または合金Co50Ni22Nb8V5B15である。
【0014】
効果的には、スタッドは略円柱形状を有し、その各端に、スタッドの長手軸に対して垂直に広がる前面を有する。それらの前面は、上記軸に対する直角度のずれが1°未満であり、好ましくは、取付け孔に係合するスタッド面および前面は、研削により得られる表面仕上げを有する。
【0015】
一実施形態では、フォークは、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、ニッケル、ニッケル−リン合金(具体的には、合金NiP12)、非晶質合金、を含む群から選択された材料で製造され、非晶質合金は、具体的には、鉄−ニッケル非晶質合金およびコバルト−ニッケル系非晶質合金であり、典型的には、合金Fe52Ni22Nb6V5B15または合金Co50Ni22Nb8V5B15である。
【0016】
一実施形態では、本体は、鋼、洋白合金、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、ニッケル、ニッケル−リン合金(具体的には、合金NiP12)、非晶質合金、を含む材料群から選択された材料で製造され、非晶質合金は、具体的には、鉄−ニッケル非晶質合金、コバルト−ニッケル系非晶質合金、およびジルコニウム系非晶質合金であり、典型的には、合金Fe52Ni22Nb6V5B15または合金Co50Ni22Nb8V5B15または合金Zr65.7Cu15.6Ni11.7Al3.7Ti3.3である。
【0017】
一実施形態では、本体は、取付け孔の周りに配置されるとともにフォークと本体との間の距離を規定するように構成されたスペーサチューブを有する。
【0018】
別の実施形態では、フォークは、取付け孔の周りに配置されるとともにフォークと本体との間の距離を規定するように構成されたスペーサチューブを有する。
【0019】
本発明は、さらに、記載されたアンクルを有する時計脱進機構、および脱進機構を有する時計ムーブメントに関する。
【0020】
本発明の他の効果的な目的および態様は、請求項、および以下の実施形態の詳細な説明、ならびに添付の図面を読解することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1a図1aは、本発明の一実施形態による、スイスレバー脱進機構のためのアンクルの概略斜視図である。
図1b図1bは、図1aの実施形態の平面図である。
図1c図1cは、図1aの実施形態の分解斜視図である。
図2a図2aは、本発明の第2の実施形態による、スイスレバー脱進機構のためのアンクルの概略斜視図である。
図2b図2bは、製造中の、図2aのアンクルの本体の斜視図である。
図2c図2cは、図2aの実施形態の分解斜視図である。
図3図3は、本発明の第3の実施形態による、スイスレバー脱進機構のためのアンクルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、時計ムーブメントのスイスレバー脱進機構のためのアンクル2は、フォーク部4と、爪石保持部7と、爪石6と、爪石保持部をフォーク部に相互接続しているレバー8と、を備える。アンクルは、真10によって回転可能にムーブメント(図示せず)に取り付けられる。
【0023】
爪石6は、ガンギ車に回転トルクを供給するエネルギー源に接続された脱進機構のガンギ車(図示せず)の歯と協働する。アンクルの回転振動に応じて、爪石のうちの一方は入爪石を成し、他方は出爪石を成す。
【0024】
フォーク部4は、フォーク12と、ケン先14と、スタッド16と、を含む。フォーク12は、第1のクワガタ22aと第2のクワガタ22bとを有する。フォークは、通常、周期振動するテン輪と一体の振り石と係合する。
【0025】
テンプの回転の一方向では、第1のクワガタ22aは入クワガタとして機能し、第2のクワガタ22bは出クワガタとして機能する。もう一方の回転方向では、第1と第2のクワガタの機能は逆転する。ケン先は、衝撃が発生した場合に、フォークが振り石の誤った側に移動するようにアンクルが真回りに回転することを防いでいる。例示した機構は、参照により本明細書に組み込まれる「Theorie de l’Horlogerie(時計理論)」と題する著作(ISBN2−940025−10−X)の99〜128頁にさらに詳細に記載されているような、従来のスイスレバー脱進機に相当するものである。この原理は周知であるため、従来の要素およびそれらの動作については、本特許出願においてさらに詳細には記載しない。
【0026】
レバーと、爪石を保持するウデとは、一体であって、アンクル2の本体3を形成している。
【0027】
フォーク12は、本体に配置された取付け孔18に押し込まれるスタッド16によって本体3に固定される追加部品である。フォークがアンクルの本体から距離を置いていることによって、アンクルの残りの部分であるレバーとケン先と爪石保持部を製造するための材料および製造方法の選択を制限することなく、特にフォークと振り石との摩擦による損失を減少させるように、フォークの機能を最適化することができる。また、追加されたフォークによって、フォークの平面を爪石に対してオフセットさせることも可能となり、これにより、コンパクトな脱進機を製造することが可能となる。
【0028】
フォークは、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸化シリコン層で被覆されたシリコン、ダイヤモンド層で被覆されたシリコン、を含む様々な材料で製造することができ、これらの材料のいずれかで構成されたウェハに対するフォトリソグラフィ法および深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)を含む様々な製造方法を用いて製造することができる。また、フォークは、例えばLIGA(Roentgenlithographie, Galvanoformung, Abformung)製法を用いて、ニッケルまたはニッケル−リン(NiP,NiP12)で製造することもできる。さらに、このフォークは、機械成形によって、結晶形または非晶形の金属または金属合金で製造することもできる。鉄−ニッケル系非晶質合金である例えば合金Fe52Ni22Nb6V5B15、コバルト−ニッケル系非晶質合金である例えば合金Co50Ni22Nb8V5B15、およびジルコニウム系非晶質合金である例えば合金Zr65.7Cu15.6Ni11.7Al3.7Ti3.3は、特に適している。フォークは、銅−ベリリウム合金、オーステナイト系コバルト合金、オーステナイト系ステンレス鋼、またはHIS(高侵入型鋼)で製造することもできる。
【0029】
また、アンクル2の本体3も、フォトリソグラフィ法および深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)を含む様々な製造方法を用いて、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸化シリコン層で被覆されたシリコン、ダイヤモンド層で被覆されたシリコン、を含む様々な材料で製造することができる。また、本体3は、チタン、アルミニウム、マグネシウム、典型的にはオーステナイト系ステンレス鋼またはHIS(高侵入型鋼)である鋼、銅合金(典型的には、洋白または銅−ベリリウム)、オーステナイト系コバルト合金、またはオーステナイト系ニッケル合金、または非晶質合金で製造することもできる。鉄−ニッケル系非晶質合金である例えば合金Fe52Ni22Nb6V5B15、コバルト−ニッケル系非晶質合金である例えば合金Co50Ni22Nb8V5B15、およびジルコニウム系非晶質合金である例えば合金Zr65.7Cu15.6Ni11.7Al3.7Ti3.3は、特に適している。
【0030】
第1の好ましい実施形態では、本体3およびフォーク12は、LIGA電鋳法により、典型的にはNiP12であるニッケル−リンで製造される。
【0031】
第2の好ましい実施形態では、本体3は、LIGA法により、典型的にはニッケル−リンまたはニッケルで製造され、フォーク12は、典型的にはシリコンウェハからエッチングにより製造される。
【0032】
スタッド16は、応力下で塑性域を持たないか、またはほとんど持たない材料で製造され、スタッドは、好ましくは、850HV以上の硬度を有する。典型的には、スタッドは、サファイア、ルビー、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、単結晶または多結晶コランダム、炭化タングステン、窒化シリコン、炭化シリコン、硬化鋼、コバルトマトリクスと炭化タングステン、具体的には鉄−ニッケル系合金およびコバルト−ニッケル系非晶質合金である非晶質合金、を含む群から選択された材料で構成される。
【0033】
典型的には、合金Fe52Ni22Nb6V5B15または合金Co50Ni22Nb8V5B15を、非晶質合金として用いることができる。
【0034】
効果的な一実施形態では、スタッドは略円柱形状を有し、その各端に、その長手軸に対して垂直に広がる前面を有し、そしてルビーで構成されており、以下の公差で正確な寸法を得るための研削仕上げを有する:真円度±1μm、直径±1.5μm、長さ±7μm。特に、スタッドの前面は、直角度のずれが1°未満である。
【0035】
スタッド材料の硬度が850HV以上であることによって、極めて正確な直径および相互に完全に直角な前面を有するスタッドを製造することが可能となり、これにより、スタッドをフォークおよび本体3のオリフィスに押し込むことが、これらの構成部品を破壊するリスクを低減して可能となる。また、スタッドとこれらの構成部品との間の取付け安定性および位置決め精度も、従来のアセンブリと比較して向上する。
【0036】
図1a〜1cによる実施形態では、本体3およびフォーク10は、LIGA方式の電鋳法によって製造され、これは、小寸法の部品のための極めて経済的な製造方法であり、さらには、電鋳層の厚さ方向および本体の主平面において極めて正確である。
【0037】
この第1の実施形態の利点は以下の通りである。
− 幾何学的形状は、一般的に電鋳工程用の鋳型を作製するために用いられるフォトリソグラフィ法の精度で、実現される。
− ルビー製スタッドの製造は制御されて、直径の公差は極めて小さく、典型的には、およそ(±1.5μm)である。
− ルビー製スタッドは、棒材旋削加工によるスタッドとは異なり、その端面に突起物がなく、それらの端面は、完全に平坦かつ互いに平行である。
− スタッドの幾何学的形状(平坦部の有無)およびオリフィス18、20の形状に応じて、その組み立て方法により、追加されるフォークのクワガタは、ケン先に対して調整される。
− この組み立て方法は、接着剤を必要としない。
− このコンセプトにより確保される高精度によって、本体にフォークを組み付けるための従来の方法と比較して、2倍〜3倍厳しい公差が保証される。
− LIGA方式の電鋳法により製造されるフォークを使用することによって、押し込みにより組み付けを達成することが可能となり、これにより、構成部品の公差とは無関係に、高さの調整が可能となることで、フォークとケン先との間の距離を確保するカラーを備えたスタッドの製造は回避される。
【0038】
図2a〜2cによる第2の実施形態では、本体3は、LIGA方式の電鋳法により製造されて、その後、様々なレベルおよびベベルを形成するために機械的に再加工される。本体3のオリフィス18の周りに、スペーサチューブ19aが、特に長さ方向にフォーク12とケン先14との間の距離を規定するように構成される。フォーク10は、典型的にはシリコンウェハからエッチングにより製造される。ルビー製スタッド16は、プレートのオリフィスに押し込まれ、シリコン製フォークは、突出するスタッド上に遊びを伴って組み付けられて接着接合され、このとき、フォークは、スペーサチューブ19aの端面に対して押圧される。
【0039】
この第2の実施形態の利点は以下の通りである。
− 幾何学的形状は、一般的に本体を電鋳する工程用の鋳型を作製するため、およびシリコンエッチングの前にマスク層にフォークの形状を規定するために用いられるフォトリソグラフィ法の精度で、実現される。
− ルビー製スタッドの製造は制御されて、直径の公差は極めて小さく、典型的には、およそ±1.5μmである。
− ルビー製スタッドは、棒材旋削加工によるスタッドとは異なり、突起物がなく、それらの面は、完全に平坦かつ互いに平行である。
− それらの構成部品の垂直位置決めは、極めて正確である。
− 製造コストおよび組立てコストが削減される。
【0040】
図3による第3の実施形態では、本体3は、一定厚さの層を形成するように、LIGA方式の電鋳法により製造される。フォーク10は、典型的にはシリコンウェハからエッチングによって、フォーク14のオリフィス20の周りに延在するスペーサチューブ19bを形成するように、少なくとも2つのレベルで実現される。スペーサチューブ19bは、特に長さ方向にフォーク12と本体3のプレートとの間の距離を規定するように構成される。ルビー製スタッド16は、プレートのオリフィスに押し込まれ、シリコン製フォークは、突出するスタッド上に遊びを伴って組み付けられて接着接合され、このとき、フォークのスペーサチューブ19の端は、本体3の表面に当接して止まっている。
【0041】
なお、注目されるのは、一般に、スタッドとフォークおよび/または本体との間の接合は、フォークおよび/またはスタッドが塑性域を持つ材料(例えば金属)で構成されているのか、または脆性材料すなわち塑性域をほとんど持たない材料(例えば、シリコン、炭化シリコン、窒化シリコンなど)で構成されているのかによって、本質的に異なるということである。フォークおよび/または本体が塑性域を持つ材料で構成されている場合は、スタッドは、本体および/またはフォークに押し込まれる。フォークおよび/または本体が塑性域を持たない材料で構成されている場合は、スタッドは、本体および/またはフォークに接着接合される。
【0042】
本発明により、製造コストを削減するとともに、生産量を増加させることが可能となる。実際に、従来のスタッドをそれらの寸法に棒材旋削加工すること、およびスタッド、プレート、ケン先/クワガタの組み立てを制御することは、難しい。アンクルの本体にフォークを組み付けるために、応力下で塑性域を持たない材料で構成されたスタッドを使用することの重要な利点は、それは、組み立ての際に変形しないことであり、また、完全に平坦かつ互いに平行な基準面を形成する前面を有して、正確な寸法で、切断および研削されることができるということである。その結果、特にフォークと本体との間の距離の優れた制御が、これら2つの部品の組み立て工程において得られる。
【符号の説明】
【0043】
3 脱進機構
2 アンクル
3 本体
8 レバー
7 爪石保持部
19a スペーサチューブ
18 取付けオリフィス/孔
10 真
4 フォーク部
12 フォーク
22a 第1のクワガタ
22b 第2のクワガタ
20 取付けオリフィス/孔
19b スペーサチューブ
14 ケン先
16 スタッド
24 平坦部
6 爪石(入爪石、出爪石)
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3