【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、風力タービン・ブレードのための雷バイパス・システムが提供され、この雷バイパス・システムが、
電気絶縁性材料から形成される少なくとも1つのステイ・ボルト又はコネクタであって、絶縁性ステイ・ボルトが風力タービン・ブレードの翼根端部から風力タービンのハブまで延在するように構成され、絶縁性ステイ・ボルトが電気伝導性材料のコアを備える、少なくとも1つのステイ・ボルト又はコネクタ
を備え、
雷バイパス・システムが、風力タービン・ブレードから風力タービン・ハブまでの雷電流を上記の電気伝導性コアを通過させて伝導させるように構成される。
【0008】
導電性コアを備える少なくとも1つの電気絶縁性ステイ・ボルトを使用することにより、既存の風力タービン・ブレード設計に比較的容易に組み込むことができ、バイパス・システムを使用して落雷を伝導させるときに風力タービン・ブレード、詳細には翼根端部又は風力タービン・ブレードが損傷するのを防止するのに十分な絶縁性を有する、風力タービン・ブレードのための雷バイパスの手段を提供することが可能となる。また、このシステムが、風力タービン・ブレードの翼根端部から、風力タービン・ハブから突出するハブ拡張デバイスなどの、風力タービン・ハブ上に設けられ得る要素まで雷電流を伝導させるのに使用され得ることを理解されたい。
【0009】
このような絶縁性ステイ・ボルトが存在することにより、ステイ・ボルトの内部を通過する導電性経路の周りに適切な絶縁層が設けられることで、電気伝導性ステイ・ボルト・コアから風力タービンの周囲要素までの雷がクロスオーバ(cross−over)することが確実になくなる。ステイ・ボルトの絶縁効果は、風力タービン・ブレードのボディ内に位置する第1の端部から、任意の考えられる導電性設置要素を有さずに好適には突出する第2の端部までの範囲に及び、それにより、導電性コアを例えば金属ピッチ・システムなどの風力タービンの任意の導電性構成要素に対して露出させるための明確な距離が画定され、それにより、導電性コアから任意の別の導電性要素への雷フラッシュオーバが発生する可能性が大幅に低減される。
【0010】
これは、導電性材料と導電性ピッチ・システムとの間のみに設けられる比較的薄い絶縁層と共に導電性ボルトが使用される従来技術のシステムとは対照的であり、従来技術のシステムでは絶縁性スリーブの縁部で雷電流のフラッシュオーバが発生するのを防止することができず、また、比較的薄い絶縁性スリーブ内で故障が起きやすくなる。
【0011】
ステイ・ボルトが、風力タービン内の要素を結合するのに使用されるボルト又は別の適切なコネクタと解釈されることを理解されたい。
【0012】
好適には、少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトは風力タービンのハブに設けられる設置要素に結合されるように構成され、ここでは、少なくとも1つのステイ・ボルトが、風力タービン・ブレードの翼根端部に埋め込まれる第1の端部と、上記設置要素に結合されるために風力タービン・ブレードの上記翼根端部から突出する第2の端部とを備え、ここでは、上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの上記第2の端部から上記設置要素を通って突出して上記設置要素から突き出るように構成される。
【0013】
ハブ側の設置要素を通って延在するように絶縁性ステイ・ボルトを構成し、絶縁性ステイ・ボルトの第2の端部を設置要素から離間させることにより、導電性要素間の間隔が増大することにより、ステイ・ボルトのコアの第2の端部から設置要素へのフラッシュオーバが発生する危険性が大幅に低減される。さらに、湿気が侵入することにより構成要素間に有効な火花間隙が形成される可能性が大幅に低減される。
【0014】
設置要素が風力タービン・ブレードと風力タービン・ロータ・ハブ又はハブ拡張部との間に、例えばブレード・ピッチ・システム、設置用フランジなどの導電性であってよい任意適切な結合機構を備えることができることを理解されたい。
【0015】
好適には、導電性コアの直径は、導電性コアを含めたステイ・ボルトの全体の直径の半分未満である。
【0016】
絶縁性コアの周りの大部分の距離にわたってステイ・ボルトの外側絶縁性ボディが延在する絶縁性ステイ・ボルト又はコネクタを提供することにより、落雷のためのグラウンドまでの導電性経路の絶縁特性が改善され、ステイ・ボルトの絶縁性外側層が故障する危険性が低減される。
【0017】
また、実質的に水平のロータ・シャフトを有する風力タービンのロータのための風力タービン・ブレードが提供され、ロータがハブを有し、風力タービン・ブレードがハブに取り付けられたときそのハブから実質的に径方向に延在し、風力タービン・ブレードが長手方向軸に平行な長手方向に延在し、先端部及び翼根端部を有し、
風力タービン・ブレードが、正圧側及び負圧側、さらには、間を延在する一定の翼弦長を有する翼弦を有する前縁及び後縁を有する翼形(profiled)輪郭をさらに備え、翼形輪郭が入射する気流により衝撃を受けたとき揚力を発生させ、
風力タービン・ブレードが、少なくとも1つの雷レセプタと、上記風力タービン・ブレードを風力タービン・ハブに結合させるために上記翼根端部に設けられた複数のステイ・ボルトを備えるボルト・サークル(bolt circle)とをさらに備え、
風力タービン・ブレードが、電気絶縁性材料から形成される、上記ボルト・サークル内に設けられる少なくとも1つのステイ・ボルトを備える雷バイパス・システムをさらに備え、ステイ・ボルトが電気伝導性材料のコアを有し、ステイ・ボルトが、上記風力タービン・ブレードの翼根端部に埋め込まれる第1の端部と、上記翼根端部から突出する第2の端部とを有し、
上記少なくとも1つのステイ・ボルトの電気伝導性コアが上記少なくとも1つの雷レセプタに導電結合され、雷バイパス・システムが、上記電気伝導性コア内の上記少なくとも1つの雷レセプタによって受けられる雷電流を風力タービン・ハブまで伝導させるように動作可能である。
【0018】
この雷バイパスの手段は既存の風力タービン・ブレードのボルト・サークルに容易に組み込まれ得ることから、ブレードの翼根端部要素を損傷させずに風力タービン・ブレードの翼根端部から雷電流を伝導させる安全で信頼性の高い方法が提供され得る。導電性経路が電気絶縁性ステイ・ボルトのコア内に設けられることから、可撓性の絶縁性スリーブ又はカバーを使用する従来技術のシステムと比較してこのバイパス・システムの信頼性が改善される。電気伝導性コアが風力タービン・ハブ内に設けられる雷接地システムに接続され得る。好適には、上記少なくとも1つのステイ・ボルトの電気伝導性コアが、風力タービン・ブレード内に設けられる避雷導線又は導電性ケーブルを介して上記少なくとも1つの雷レセプタに導電結合される。
【0019】
好適には、少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトが風力タービンのハブに設けられる設置要素に結合されるように構成され、ここでは、少なくとも1つのステイ・ボルトが、風力タービン・ブレードの翼根端部に埋め込まれる第1の端部と、上記設置要素に結合されるために風力タービン・ブレードの上記翼根端部から突出する第2の端部とを備え、上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの上記第2の端部が上記設置要素を通って突出して上記設置要素から突き出るように構成される。
【0020】
好適には、上記雷バイパス・システムが電気伝導性コアを有する少なくとも2つのステイ・ボルトを備え、上記少なくとも2つのステイ・ボルトが上記翼根端部にあるボルト・サークルの円周周りで等距離に離間される。
【0021】
翼根端部のボルト・サークルに電気伝導性コアを有する複数のステイ・ボルトを利用することにより、雷バイパス・システムの全体の導電性を向上させることができる。異なる導電性コアが、ピッチ・システムを通ってグラウンドまで伝導される雷のための別個の導電性経路又はループを提供する。この場合、バイパス・システムのステイ・ボルトがボルト・サークルの円周周りに好適には等間隔に離間され、それによりバイパス・システムのステイ・ボルトが受ける荷重が低減される。
【0022】
特に好適な実施例では、上記雷バイパス・システムが、電気伝導性コアを有する第1のステイ・ボルトと、電気伝導性コアを有する第2のステイ・ボルトとを備え、上記第1及び第2のステイ・ボルトが上記翼根端部にある上記ボルト・サークルの反対側に位置する。
【0023】
このようなシステムでは、バイパス・システムの各経路又はループを通って流れる雷電流が半分となり、それにより、落雷がバイパス・システムの構成要素を損傷させる可能性が低減される。
【0024】
好適には、電気伝導性コアを有する上記第1のステイ・ボルトが上記風力タービン・ブレードの前縁に隣接するように上記ボルト・サークル内に位置し、電気伝導性コアを有する上記第2のステイ・ボルトが上記風力タービン・ブレードの後縁に隣接するように上記ボルト・サークル内に位置する。
【0025】
風力タービン・ブレードの反対側の縁部にある2つの離間された経路又はループを提供することにより、ステイ・ボルトに作用する機械的荷重が低減され、ステイ・ボルトが故障する可能性が低減される。
【0026】
別法として、上記雷バイパス・システムが電気伝導性コアを有する単一のステイ・ボルトを備え、ここでは、電気伝導性コアを有する上記単一のステイ・ボルトが風力タービン・ブレードの前縁又は後縁に隣接するように上記ボルト・サークル内に位置する。
【0027】
これらの実施例では、ステイ・ボルト(複数可)がブレードの前縁及び/又は後縁に位置し、ここでは、ボルト・サークルが受ける荷重が最小となり、それにより、雷バイパスの手段のステイ・ボルト(複数可)が受ける荷重が確実に最小となる。
【0028】
好適には、上記雷バイパス・システムが上記風力タービン・ブレードの翼根端部内に設けられる少なくとも1つのブレード翼根ブッシング(blade root bushing)を備え、ここでは、電気伝導性コアを有する上記少なくとも1つのステイ・ボルトが上記少なくとも1つのブレード翼根ブッシング内で部分的に受けられ、ここでは、上記少なくとも1つのブレード翼根ブッシングが電気絶縁性材料から形成される。
【0029】
電気絶縁性材料のブレード翼根ブッシングを使用することにより、雷電流がバイパス・システムを通って伝導されることによりブレードの翼根端部に起こる可能性がある任意の損傷に対する保護が向上する。
【0030】
好適には、上記風力タービン・ブレードが上記風力タービン・ブレードの翼根端部に設けられたピッチ・システムを備え、上記ピッチ・システムが上記翼根端部にある上記ボルト・サークルの複数のステイ・ボルトに結合されるように構成され、ここでは、電気伝導性コアを有する上記少なくとも1つのステイ・ボルトが上記ピッチ・システムを通って延在し、したがって、上記雷バイパス・システムが、上記少なくとも1つの雷レセプタによって受けられる雷電流を上記電気伝導性コア内の上記ピッチ・システムを通して風力タービン・ハブまで伝導させるように動作可能となる。
【0031】
ステイ・ボルトの導電性コアがブレードのピッチ・システムを通って延在することにより、ピッチ・システム構成要素を損傷させることなくブレード・ピッチ・システムを迂回するように雷電流が風力タービン・ブレードからグラウンドまで通過するための、単純で、安全且つ効果的なシステムが提供される。
【0032】
好適には、上記少なくとも1つのステイ・ボルトの上記第2の端部が風力タービン・ブレード・ハブ内に設けられる雷接地システムに結合されるように構成される。好適には、上記雷接地システムが火花間隙システムを備える。
【0033】
好適には、上記電気伝導性コアが上記少なくとも1つのステイ・ボルトの上記第2の端部から突出する。
【0034】
ステイ・ボルトの電気伝導性コアがステイ・ボルトの第2の端部から突出することから、電気伝導性コアをハブ内の適切な接地システムに比較的容易に接続させることが可能となる。
【0035】
好適には、雷バイパス・システムが、上記少なくとも1つのステイ・ボルトの上記第2の端部に設けられるフラッシュオーバ防止絶縁体を備える。
【0036】
好適には、風力タービン・ブレードが、上記少なくとも1つの雷レセプタから接続要素まで延在する少なくとも1つの内部避雷導線を備え、上記接続要素が上記風力タービン・ブレードの内部から、上記雷バイパス・システムの上記少なくとも1つのステイ・ボルトの電気伝導性コアとの接続ポイントまで延在する。
【0037】
一実施例では、上記少なくとも1つのステイ・ボルトの上記第1の端部が、上記電気伝導性コアに接続される導電性材料から形成されるヘッド要素を備え、ここでは、上記接続要素が、上記少なくとも1つの雷レセプタから上記電気伝導性コアまでの導電性経路を形成するように上記ヘッド要素に接触されるように設けられる。
【0038】
好適には、電気伝導性コアの直径と雷バイパス・システムの少なくとも1つのステイ・ボルトの全体の直径との比は約1:3である。
【0039】
このような構成を使用することにより、絶縁性材料内で故障又は破損が生じることが確実に防止され、落雷時に風力タービン構成要素が損傷する可能性が排除される。一般に、好適には銅コアである電気伝導性コアの面積は好適には避雷導線経路のために少なくとも50mm
2である。一実施例で2つの電気伝導性コアが使用される場合、好適には、別個の各電気伝導性コアの面積は少なくとも25mm
2である。
【0040】
一実施例では、電気伝導性コアの直径は約12mmであり、電気伝導性コアを有する少なくとも1つのステイ・ボルトの全体の直径は約36mmである。しかし、風力タービン・ブレードで必要とされる構成に基づいて任意適切な寸法が選択され得ることを理解されたい。
【0041】
好適には、上記少なくとも1つのステイ・ボルト及び/又は上記雷バイパス・システムのブレード翼根ブッシングが、プラスチック材料、ガラス材料、セラミック材料及び/又はゴム材料のうちの少なくとも1つから形成される。好適には、上記電気伝導性コア及び/又は上記雷バイパス・システムの上記ヘッド要素が例えば銅などの電気伝導性金属元素から形成される。
【0042】
また、上述した少なくとも1つの風力タービン・ブレードを備える風力タービンが提供される。
【0043】
さらに、風力タービン・ブレード内に雷バイパス・システムを提供するための方法が提供され、この方法が、
風力タービン・ブレードの翼根端部に位置するボルト・サークル内に電気伝導性材料のコアを有する、電気絶縁性材料から形成される少なくとも1つのステイ・ボルトを提供するステップと、
上記少なくとも1つの雷レセプタによって受けられる雷電流を上記電気伝導性コアから風力タービンの雷接地システムまで伝導させるために、上記電気伝導性コアを風力タービン・ブレードの少なくとも1つの雷レセプタに導電結合させるステップと
を含む。
【0044】
好適には、上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトが風力タービンのハブに設けられる設置要素に結合されるように構成され、ここでは、本方法が上記ボルト・サークルから突出するように上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトを構成するステップを含み、上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトが上記設置要素を通って突出し、上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの自由端が、上記自由端にある上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの電気伝導性コアを風力タービンの雷接地システムに接続させるために上記設置要素から突き出る。
【0045】
例えばブレード翼根端部フランジ、ピッチ・システムなどの設置要素から自由に突出するようにステイ・ボルト又はコネクタを構成することにより、ボルトの自由端で導電性コアからフラッシュオーバが発生する危険性が低減される。これはさらに、自由端部で適切なフラッシュオーバ防止コネクタなどを使用することでも軽減される。設置要素が電気伝導性材料を備えることができることを理解されたい。
【0046】
次に添付図面を参照しながら単に例として本発明の実施例を説明する。