特許第6209211号(P6209211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209211風力タービン・ブレードの雷バイパス・システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209211
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】風力タービン・ブレードの雷バイパス・システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/30 20160101AFI20170925BHJP
【FI】
   F03D80/30
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-515471(P2015-515471)
(86)(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公表番号】特表2015-518940(P2015-518940A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2013060867
(87)【国際公開番号】WO2013182447
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年5月17日
(31)【優先権主張番号】12170679.0
(32)【優先日】2012年6月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513288311
【氏名又は名称】エルエム ダブリューピー パテント ホールディング エイ/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ラース ボー
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102008045939(DE,A1)
【文献】 特開2010−059813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に水平のロータ・シャフトを有する風力タービンのロータのための風力タービン・ブレードであって、前記ロータがハブを有し、前記風力タービン・ブレードが前記ハブに取り付けられたとき前記ハブから実質的に径方向に延在し、前記風力タービン・ブレードが長手方向軸に平行な長手方向に延在し、先端部及び翼根端部を有し、
前記風力タービン・ブレードが、正圧側及び負圧側、さらには、その間を延在する一定の翼弦長の翼弦を有する前縁及び後縁を有する翼形輪郭をさらに備え、前記翼形輪郭が入射する気流により衝撃を受けたとき揚力を発生させ、
前記風力タービン・ブレードが、少なくとも1つの雷レセプタと、前記風力タービン・ブレードを風力タービン・ハブに結合させるために前記翼根端部に設けられた複数のステイ・ボルトを備えるボルト・サークルとをさらに備え、
前記風力タービン・ブレードが、電気絶縁性材料から形成される、前記ボルト・サークル内に設けられる少なくとも1つのステイ・ボルトを備える雷バイパス・システムをさらに備え、前記ステイ・ボルトが電気伝導性材料のコアを有し、前記ステイ・ボルトが、前記風力タービン・ブレードの前記翼根端部に埋め込まれる第1の端部と、前記翼根端部から突出する第2の端部とを有し、
前記少なくとも1つのステイ・ボルトの前記電気伝導性コアが前記少なくとも1つの雷レセプタに導電結合され、前記雷バイパス・システムが、前記電気伝導性コア内の前記少なくとも1つの雷レセプタによって受けられる雷電流を風力タービン・ハブまで伝導させるように動作可能である、
風力タービン・ブレード。
【請求項2】
前記風力タービン・ブレードが前記ハブに結合されるように設けられる設置要素をさらに備え、前記少なくとも1つのステイ・ボルトが、前記風力タービン・ブレードの前記翼根端部に埋め込まれる第1の端部と、前記設置要素に結合されるために前記風力タービン・ブレードの前記翼根端部から突出する第2の端部とを備え、前記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの前記第2の端部が前記設置要素を通って突出して前記設置要素から突き出るように構成される、請求項1に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項3】
前記雷バイパス・システムが電気伝導性コアを有する少なくとも2つのステイ・ボルトを備え、前記少なくとも2つのステイ・ボルトが前記翼根端部にある前記ボルト・サークルの円周周りで等距離に離間される、請求項1又は請求項2に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項4】
前記雷バイパス・システムが、電気伝導性コアを有する第1のステイ・ボルトと、電気伝導性コアを有する第2のステイ・ボルトとを備え、前記第1及び第2のステイ・ボルトが前記翼根端部にある前記ボルト・サークルの反対側に位置する、請求項3に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項5】
電気伝導性コアを有する前記第1のステイ・ボルトが前記風力タービン・ブレードの前記前縁に隣接するように前記ボルト・サークル内に位置し、電気伝導性コアを有する前記第2のステイ・ボルトが前記風力タービン・ブレードの前記後縁に隣接するように前記ボルト・サークル内に位置する、請求項4に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項6】
前記雷バイパス・システムが電気伝導性コアを有する単一のステイ・ボルトを備え、電気伝導性コアを有する前記単一のステイ・ボルトが前記風力タービン・ブレードの前記前縁又は前記後縁に隣接するように前記ボルト・サークル内に位置する、請求項1又は請求項2に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項7】
前記雷バイパス・システムが前記風力タービン・ブレードの前記翼根端部に設けられた少なくとも1つのブレード翼根ブッシングを備え、電気伝導性コアを有する前記少なくとも1つのステイ・ボルトが前記少なくとも1つのブレード翼根ブッシング内で部分的に受けられ、前記少なくとも1つのブレード翼根ブッシングが電気絶縁性材料から形成される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項8】
風力タービン・ブレードが前記風力タービン・ブレードの前記翼根端部に設けられたピッチ・システムを備え、前記ピッチ・システムが前記翼根端部にある前記ボルト・サークルの前記複数のステイ・ボルトに結合されるように構成され、電気伝導性コアを有する前記少なくとも1つのステイ・ボルトが前記ピッチ・システムを通って延在し、したがって、前記雷バイパス・システムが、前記少なくとも1つの雷レセプタによって受けられる雷電流を前記電気伝導性コア内の前記ピッチ・システムを通して風力タービン・ハブまで伝導させるように動作可能となる、請求項1から7までのいずれか一項に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項9】
前記少なくとも1つのステイ・ボルトの前記第2の端部が風力タービン・ブレード・ハブ内に設けられる雷接地システムに結合されるように構成される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項10】
前記電気伝導性コアが前記少なくとも1つのステイ・ボルトの前記第2の端部から突出する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項11】
前記雷バイパス・システムが前記少なくとも1つのステイ・ボルトの前記第2の端部に設けられるフラッシュオーバ防止絶縁体を備える、請求項10に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項12】
前記電気伝導性コアの直径と前記雷バイパス・システムの前記少なくとも1つステイ・ボルトの全体の直径との比が1:2未満であり、好適には約1:3である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の風力タービン・ブレード。
【請求項13】
風力タービン・ブレードのための雷バイパス・システムであって、
電気絶縁性材料から形成される少なくとも1つのステイ・ボルト又はコネクタであって、前記ステイ・ボルト又はコネクタが風力タービン・ブレードの翼根端部から風力タービンのハブまで延在するように構成され、前記ステイ・ボルトが電気伝導性材料のコアを備える、少なくとも1つのステイ・ボルト又はコネクタ
を備え、
風力タービン・ブレードから風力タービン・ハブまで前記電気伝導性コアを介して雷電流を伝導させるように構成される、
雷バイパス・システム。
【請求項14】
前記導電性コアの直径が前記導電性コアを含む前記ステイ・ボルトの全体の直径の半分未満である、請求項13に記載の雷バイパス・システム。
【請求項15】
請求項1から12までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの風力タービン・ブレードを備える風力タービン。
【請求項16】
風力タービン・ブレード内に雷バイパス・システムを提供するための方法であって、
風力タービン・ブレードの翼根端部に位置するボルト・サークル内に電気伝導性材料のコアを有する、電気絶縁性材料から形成される少なくとも1つのステイ・ボルトを提供するステップと、
少なくとも1つの雷レセプタによって受けられる雷電流を前記電気伝導性コアを通して風力タービンの雷接地システムまで伝導させるために、前記電気伝導性コアを前記風力タービン・ブレードの前記少なくとも1つの雷レセプタに導電結合させるステップと
を含む方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトが風力タービンのハブに設けられる設置要素に結合されるように構成され、前記方法が、前記ボルト・サークルから突出するように前記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトを構成するステップを含み、前記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトが前記設置要素を通って突出し、前記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの自由端が、前記自由端にある前記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの前記電気伝導性コアを風力タービンの雷接地システムに接続させるために前記設置要素から突き出る、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雷防護システムを有する風力タービン・ブレードに関し、詳細には、繊細な風力タービン構成要素を迂回するグラウンドまでの経路を用いて風力タービン・ブレード内で落雷を送るための風力タービン・ブレードのための雷バイパス・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービン・ブレード設計の課題の1つは効果的な雷防護システムを提供することである。このようなシステムは、一般に、ブレードの外部の通常はブレードの先端部に設けられる雷レセプタ(lightning receptor)の形態をとり、このレセプタはブレードの内部に位置する避雷導線に結合される。レセプタは落雷を受けるように機能し、雷が避雷導線を経由してブレード翼根端部まで伝導され、この点で、雷防護システムがより大型の風力タービン・タワー構造に設けられたグラウンド接続部に結合される。
【0003】
避雷導線をブレード翼根端部にある適切なグラウンド接続部に接続するための、詳細には、ブレード翼根にある例えばピッチ・システムなど任意の繊細なブレード構成要素周りに落雷を経路設定するための、種々の異なるタイプの接続システムが知られている。1つの既知のシステムは火花間隙解決策のものであり、避雷導線が、ブレード翼根端部から離間された外部導電性プレートに結合される。可撓性アームが風力タービン・ハブ又は風力タービン・ナセルから延在し、外部プレートに隣接するように設けられる。プレートとアーム内の導電性要素との間の火花間隙が、風力タービン・ブレード内での落雷のためのグラウンドまでの導電性経路を提供し、グラウンドまでのこの経路はブレードの翼根端部構成要素を回避する。
【0004】
代替的システムが特許文献1に記述されており、これは、雷電流がブレード翼根端部にある安全なTボルトを経由することができる雷バイパス・システムを開示している。Tボルトがブレード・ピッチ・システム内の開口を通って風力タービン・ハブの内部空間内まで通過し、雷電流は、例えば次の火花間隙接続部(spark gap connection)などを介して次のグラウンド接続部に結合されるように構成される。しかし、ピッチ・システムを通る開口はTボルトとピッチ・システムとの間に絶縁性材料を備えることができるが、このような構成を使用する場合には、システム・インターフェース間の空間内に湿気が侵入することにより、ピッチ・システム構成要素とグラウンドまでの雷経路との間に人工の火花間隙が形成される問題が発生する。このような火花間隙は、落雷が発生した場合、風力タービン・システムの比較的繊細な構成要素の損傷を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008045939号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、繊細なブレード構成要素を損傷させることなく落雷をグラウンドまでより効果的に伝導させることができる風力タービン・ブレード雷バイパス・システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、風力タービン・ブレードのための雷バイパス・システムが提供され、この雷バイパス・システムが、
電気絶縁性材料から形成される少なくとも1つのステイ・ボルト又はコネクタであって、絶縁性ステイ・ボルトが風力タービン・ブレードの翼根端部から風力タービンのハブまで延在するように構成され、絶縁性ステイ・ボルトが電気伝導性材料のコアを備える、少なくとも1つのステイ・ボルト又はコネクタ
を備え、
雷バイパス・システムが、風力タービン・ブレードから風力タービン・ハブまでの雷電流を上記の電気伝導性コアを通過させて伝導させるように構成される。
【0008】
導電性コアを備える少なくとも1つの電気絶縁性ステイ・ボルトを使用することにより、既存の風力タービン・ブレード設計に比較的容易に組み込むことができ、バイパス・システムを使用して落雷を伝導させるときに風力タービン・ブレード、詳細には翼根端部又は風力タービン・ブレードが損傷するのを防止するのに十分な絶縁性を有する、風力タービン・ブレードのための雷バイパスの手段を提供することが可能となる。また、このシステムが、風力タービン・ブレードの翼根端部から、風力タービン・ハブから突出するハブ拡張デバイスなどの、風力タービン・ハブ上に設けられ得る要素まで雷電流を伝導させるのに使用され得ることを理解されたい。
【0009】
このような絶縁性ステイ・ボルトが存在することにより、ステイ・ボルトの内部を通過する導電性経路の周りに適切な絶縁層が設けられることで、電気伝導性ステイ・ボルト・コアから風力タービンの周囲要素までの雷がクロスオーバ(cross−over)することが確実になくなる。ステイ・ボルトの絶縁効果は、風力タービン・ブレードのボディ内に位置する第1の端部から、任意の考えられる導電性設置要素を有さずに好適には突出する第2の端部までの範囲に及び、それにより、導電性コアを例えば金属ピッチ・システムなどの風力タービンの任意の導電性構成要素に対して露出させるための明確な距離が画定され、それにより、導電性コアから任意の別の導電性要素への雷フラッシュオーバが発生する可能性が大幅に低減される。
【0010】
これは、導電性材料と導電性ピッチ・システムとの間のみに設けられる比較的薄い絶縁層と共に導電性ボルトが使用される従来技術のシステムとは対照的であり、従来技術のシステムでは絶縁性スリーブの縁部で雷電流のフラッシュオーバが発生するのを防止することができず、また、比較的薄い絶縁性スリーブ内で故障が起きやすくなる。
【0011】
ステイ・ボルトが、風力タービン内の要素を結合するのに使用されるボルト又は別の適切なコネクタと解釈されることを理解されたい。
【0012】
好適には、少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトは風力タービンのハブに設けられる設置要素に結合されるように構成され、ここでは、少なくとも1つのステイ・ボルトが、風力タービン・ブレードの翼根端部に埋め込まれる第1の端部と、上記設置要素に結合されるために風力タービン・ブレードの上記翼根端部から突出する第2の端部とを備え、ここでは、上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの上記第2の端部から上記設置要素を通って突出して上記設置要素から突き出るように構成される。
【0013】
ハブ側の設置要素を通って延在するように絶縁性ステイ・ボルトを構成し、絶縁性ステイ・ボルトの第2の端部を設置要素から離間させることにより、導電性要素間の間隔が増大することにより、ステイ・ボルトのコアの第2の端部から設置要素へのフラッシュオーバが発生する危険性が大幅に低減される。さらに、湿気が侵入することにより構成要素間に有効な火花間隙が形成される可能性が大幅に低減される。
【0014】
設置要素が風力タービン・ブレードと風力タービン・ロータ・ハブ又はハブ拡張部との間に、例えばブレード・ピッチ・システム、設置用フランジなどの導電性であってよい任意適切な結合機構を備えることができることを理解されたい。
【0015】
好適には、導電性コアの直径は、導電性コアを含めたステイ・ボルトの全体の直径の半分未満である。
【0016】
絶縁性コアの周りの大部分の距離にわたってステイ・ボルトの外側絶縁性ボディが延在する絶縁性ステイ・ボルト又はコネクタを提供することにより、落雷のためのグラウンドまでの導電性経路の絶縁特性が改善され、ステイ・ボルトの絶縁性外側層が故障する危険性が低減される。
【0017】
また、実質的に水平のロータ・シャフトを有する風力タービンのロータのための風力タービン・ブレードが提供され、ロータがハブを有し、風力タービン・ブレードがハブに取り付けられたときそのハブから実質的に径方向に延在し、風力タービン・ブレードが長手方向軸に平行な長手方向に延在し、先端部及び翼根端部を有し、
風力タービン・ブレードが、正圧側及び負圧側、さらには、間を延在する一定の翼弦長を有する翼弦を有する前縁及び後縁を有する翼形(profiled)輪郭をさらに備え、翼形輪郭が入射する気流により衝撃を受けたとき揚力を発生させ、
風力タービン・ブレードが、少なくとも1つの雷レセプタと、上記風力タービン・ブレードを風力タービン・ハブに結合させるために上記翼根端部に設けられた複数のステイ・ボルトを備えるボルト・サークル(bolt circle)とをさらに備え、
風力タービン・ブレードが、電気絶縁性材料から形成される、上記ボルト・サークル内に設けられる少なくとも1つのステイ・ボルトを備える雷バイパス・システムをさらに備え、ステイ・ボルトが電気伝導性材料のコアを有し、ステイ・ボルトが、上記風力タービン・ブレードの翼根端部に埋め込まれる第1の端部と、上記翼根端部から突出する第2の端部とを有し、
上記少なくとも1つのステイ・ボルトの電気伝導性コアが上記少なくとも1つの雷レセプタに導電結合され、雷バイパス・システムが、上記電気伝導性コア内の上記少なくとも1つの雷レセプタによって受けられる雷電流を風力タービン・ハブまで伝導させるように動作可能である。
【0018】
この雷バイパスの手段は既存の風力タービン・ブレードのボルト・サークルに容易に組み込まれ得ることから、ブレードの翼根端部要素を損傷させずに風力タービン・ブレードの翼根端部から雷電流を伝導させる安全で信頼性の高い方法が提供され得る。導電性経路が電気絶縁性ステイ・ボルトのコア内に設けられることから、可撓性の絶縁性スリーブ又はカバーを使用する従来技術のシステムと比較してこのバイパス・システムの信頼性が改善される。電気伝導性コアが風力タービン・ハブ内に設けられる雷接地システムに接続され得る。好適には、上記少なくとも1つのステイ・ボルトの電気伝導性コアが、風力タービン・ブレード内に設けられる避雷導線又は導電性ケーブルを介して上記少なくとも1つの雷レセプタに導電結合される。
【0019】
好適には、少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトが風力タービンのハブに設けられる設置要素に結合されるように構成され、ここでは、少なくとも1つのステイ・ボルトが、風力タービン・ブレードの翼根端部に埋め込まれる第1の端部と、上記設置要素に結合されるために風力タービン・ブレードの上記翼根端部から突出する第2の端部とを備え、上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの上記第2の端部が上記設置要素を通って突出して上記設置要素から突き出るように構成される。
【0020】
好適には、上記雷バイパス・システムが電気伝導性コアを有する少なくとも2つのステイ・ボルトを備え、上記少なくとも2つのステイ・ボルトが上記翼根端部にあるボルト・サークルの円周周りで等距離に離間される。
【0021】
翼根端部のボルト・サークルに電気伝導性コアを有する複数のステイ・ボルトを利用することにより、雷バイパス・システムの全体の導電性を向上させることができる。異なる導電性コアが、ピッチ・システムを通ってグラウンドまで伝導される雷のための別個の導電性経路又はループを提供する。この場合、バイパス・システムのステイ・ボルトがボルト・サークルの円周周りに好適には等間隔に離間され、それによりバイパス・システムのステイ・ボルトが受ける荷重が低減される。
【0022】
特に好適な実施例では、上記雷バイパス・システムが、電気伝導性コアを有する第1のステイ・ボルトと、電気伝導性コアを有する第2のステイ・ボルトとを備え、上記第1及び第2のステイ・ボルトが上記翼根端部にある上記ボルト・サークルの反対側に位置する。
【0023】
このようなシステムでは、バイパス・システムの各経路又はループを通って流れる雷電流が半分となり、それにより、落雷がバイパス・システムの構成要素を損傷させる可能性が低減される。
【0024】
好適には、電気伝導性コアを有する上記第1のステイ・ボルトが上記風力タービン・ブレードの前縁に隣接するように上記ボルト・サークル内に位置し、電気伝導性コアを有する上記第2のステイ・ボルトが上記風力タービン・ブレードの後縁に隣接するように上記ボルト・サークル内に位置する。
【0025】
風力タービン・ブレードの反対側の縁部にある2つの離間された経路又はループを提供することにより、ステイ・ボルトに作用する機械的荷重が低減され、ステイ・ボルトが故障する可能性が低減される。
【0026】
別法として、上記雷バイパス・システムが電気伝導性コアを有する単一のステイ・ボルトを備え、ここでは、電気伝導性コアを有する上記単一のステイ・ボルトが風力タービン・ブレードの前縁又は後縁に隣接するように上記ボルト・サークル内に位置する。
【0027】
これらの実施例では、ステイ・ボルト(複数可)がブレードの前縁及び/又は後縁に位置し、ここでは、ボルト・サークルが受ける荷重が最小となり、それにより、雷バイパスの手段のステイ・ボルト(複数可)が受ける荷重が確実に最小となる。
【0028】
好適には、上記雷バイパス・システムが上記風力タービン・ブレードの翼根端部内に設けられる少なくとも1つのブレード翼根ブッシング(blade root bushing)を備え、ここでは、電気伝導性コアを有する上記少なくとも1つのステイ・ボルトが上記少なくとも1つのブレード翼根ブッシング内で部分的に受けられ、ここでは、上記少なくとも1つのブレード翼根ブッシングが電気絶縁性材料から形成される。
【0029】
電気絶縁性材料のブレード翼根ブッシングを使用することにより、雷電流がバイパス・システムを通って伝導されることによりブレードの翼根端部に起こる可能性がある任意の損傷に対する保護が向上する。
【0030】
好適には、上記風力タービン・ブレードが上記風力タービン・ブレードの翼根端部に設けられたピッチ・システムを備え、上記ピッチ・システムが上記翼根端部にある上記ボルト・サークルの複数のステイ・ボルトに結合されるように構成され、ここでは、電気伝導性コアを有する上記少なくとも1つのステイ・ボルトが上記ピッチ・システムを通って延在し、したがって、上記雷バイパス・システムが、上記少なくとも1つの雷レセプタによって受けられる雷電流を上記電気伝導性コア内の上記ピッチ・システムを通して風力タービン・ハブまで伝導させるように動作可能となる。
【0031】
ステイ・ボルトの導電性コアがブレードのピッチ・システムを通って延在することにより、ピッチ・システム構成要素を損傷させることなくブレード・ピッチ・システムを迂回するように雷電流が風力タービン・ブレードからグラウンドまで通過するための、単純で、安全且つ効果的なシステムが提供される。
【0032】
好適には、上記少なくとも1つのステイ・ボルトの上記第2の端部が風力タービン・ブレード・ハブ内に設けられる雷接地システムに結合されるように構成される。好適には、上記雷接地システムが火花間隙システムを備える。
【0033】
好適には、上記電気伝導性コアが上記少なくとも1つのステイ・ボルトの上記第2の端部から突出する。
【0034】
ステイ・ボルトの電気伝導性コアがステイ・ボルトの第2の端部から突出することから、電気伝導性コアをハブ内の適切な接地システムに比較的容易に接続させることが可能となる。
【0035】
好適には、雷バイパス・システムが、上記少なくとも1つのステイ・ボルトの上記第2の端部に設けられるフラッシュオーバ防止絶縁体を備える。
【0036】
好適には、風力タービン・ブレードが、上記少なくとも1つの雷レセプタから接続要素まで延在する少なくとも1つの内部避雷導線を備え、上記接続要素が上記風力タービン・ブレードの内部から、上記雷バイパス・システムの上記少なくとも1つのステイ・ボルトの電気伝導性コアとの接続ポイントまで延在する。
【0037】
一実施例では、上記少なくとも1つのステイ・ボルトの上記第1の端部が、上記電気伝導性コアに接続される導電性材料から形成されるヘッド要素を備え、ここでは、上記接続要素が、上記少なくとも1つの雷レセプタから上記電気伝導性コアまでの導電性経路を形成するように上記ヘッド要素に接触されるように設けられる。
【0038】
好適には、電気伝導性コアの直径と雷バイパス・システムの少なくとも1つのステイ・ボルトの全体の直径との比は約1:3である。
【0039】
このような構成を使用することにより、絶縁性材料内で故障又は破損が生じることが確実に防止され、落雷時に風力タービン構成要素が損傷する可能性が排除される。一般に、好適には銅コアである電気伝導性コアの面積は好適には避雷導線経路のために少なくとも50mmである。一実施例で2つの電気伝導性コアが使用される場合、好適には、別個の各電気伝導性コアの面積は少なくとも25mmである。
【0040】
一実施例では、電気伝導性コアの直径は約12mmであり、電気伝導性コアを有する少なくとも1つのステイ・ボルトの全体の直径は約36mmである。しかし、風力タービン・ブレードで必要とされる構成に基づいて任意適切な寸法が選択され得ることを理解されたい。
【0041】
好適には、上記少なくとも1つのステイ・ボルト及び/又は上記雷バイパス・システムのブレード翼根ブッシングが、プラスチック材料、ガラス材料、セラミック材料及び/又はゴム材料のうちの少なくとも1つから形成される。好適には、上記電気伝導性コア及び/又は上記雷バイパス・システムの上記ヘッド要素が例えば銅などの電気伝導性金属元素から形成される。
【0042】
また、上述した少なくとも1つの風力タービン・ブレードを備える風力タービンが提供される。
【0043】
さらに、風力タービン・ブレード内に雷バイパス・システムを提供するための方法が提供され、この方法が、
風力タービン・ブレードの翼根端部に位置するボルト・サークル内に電気伝導性材料のコアを有する、電気絶縁性材料から形成される少なくとも1つのステイ・ボルトを提供するステップと、
上記少なくとも1つの雷レセプタによって受けられる雷電流を上記電気伝導性コアから風力タービンの雷接地システムまで伝導させるために、上記電気伝導性コアを風力タービン・ブレードの少なくとも1つの雷レセプタに導電結合させるステップと
を含む。
【0044】
好適には、上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトが風力タービンのハブに設けられる設置要素に結合されるように構成され、ここでは、本方法が上記ボルト・サークルから突出するように上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトを構成するステップを含み、上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトが上記設置要素を通って突出し、上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの自由端が、上記自由端にある上記少なくとも1つの絶縁性ステイ・ボルトの電気伝導性コアを風力タービンの雷接地システムに接続させるために上記設置要素から突き出る。
【0045】
例えばブレード翼根端部フランジ、ピッチ・システムなどの設置要素から自由に突出するようにステイ・ボルト又はコネクタを構成することにより、ボルトの自由端で導電性コアからフラッシュオーバが発生する危険性が低減される。これはさらに、自由端部で適切なフラッシュオーバ防止コネクタなどを使用することでも軽減される。設置要素が電気伝導性材料を備えることができることを理解されたい。
【0046】
次に添付図面を参照しながら単に例として本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】風力タービンを示す図である。
図2】風力タービン・ブレードを示す概略図である。
図3図2のブレードのエーロフォイル・プロファイルを示す概略図である。
図4】本発明による雷バイパス・システムを示す断面図である。
図5図4の平面X−Xの断面図である。
図6図4の雷バイパス・システムの実施例を備える風力タービン・ブレードの翼根端部を示す部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1が、タワー4と、ナセル6と、実質的に水平のロータ・シャフトを備えるロータとを備える、いわゆる「Danish concept」に従う従来の最新のアップウィンド風力タービンを示す。ロータが、ハブ8と、ハブ8から径方向に延在する3つブレード10とを有し、ブレードの各々がハブに最も近いブレード翼根16と、ハブ8から最も遠いブレード先端部14とを有する。ロータがRで示される半径を有する。
【0049】
図2が、本発明の一実施例に従って使用され得る風力タービン・ブレード10の第1の実施例の概略図を示す。風力タービン・ブレード10は従来の風力タービン・ブレードの形状を有し、ハブに最も近い翼根領域30と、ハブから最も遠い翼形領域又はエーロフォイル領域34と、翼根領域30とエーロフォイル領域34との間にある移行領域32とを備える。ブレード10が、ブレードをハブに設置している場合にブレード10の回転方向を向く前縁18と、前縁18の反対方向を向く後縁20とを備える。
【0050】
エーロフォイル領域34(翼形領域とも称される))は揚力を発生させることに関して理想的又はほぼ理想的なブレード形状を有し、一方で、翼根領域30は構造を考慮して実質的に円形又は楕円形の断面を有し、それにより例えばブレード10をハブに設置することがより容易及び安全となる。翼根領域30の直径(又は、翼弦)は翼根エリア30全体に沿って通常は一定である。移行領域32は、翼根領域30の円形状又は楕円形状からエーロフォイル領域34のエーロフォイル・プロファイル50まで徐々に変化する移行プロファイル42を有する。移行領域32の翼弦長は通常はハブからの距離rが増大するにつれて実質的に線形に増大する。
【0051】
エーロフォイル領域34は、ブレード10の前縁18と後縁20との間を延在する翼弦を有するエーロフォイル・プロファイル50を有する。翼弦の幅はハブからの距離rが増大するにつれて減少する。
【0052】
ブレードの異なるセクションの翼弦が通常は共通の平面上にないことに留意されたい。その理由は、ブレードが捻じられ、及び/又は湾曲され(つまり、予め曲げられ)、したがって対応して捻じれた、及び/又は湾曲したコースを翼弦平面に与えることがある。これは、ハブからの半径に依存するブレードの局所速度を補償する場合に最も頻繁に見られる。
【0053】
図3が、エーロフォイルの幾何形状を画定するのに通常使用される種々のパラメータを用いて示される、風力タービンの通常のブレードのエーロフォイル・プロファイル50の概略図を示す。エーロフォイル・プロファイル50は正圧側52及び負圧側54を有し、使用中(すなわち、ロータの回転中)、これらはそれぞれ風上(又は、アップウィンド)側及び風下(又は、ダウンウィンド)側を向く。エーロフォイル50は、ブレードの前縁56と後縁58との間を延在する翼弦長cを有する翼弦60を有する。エーロフォイル50は、正圧側52と負圧側54との間の距離として画定される厚さtを有する。エーロフォイルの厚さtは翼弦60に沿って変化する。対称なプロファイルからのずれは、エーロフォイル・プロファイル50を通る中線であるソリ曲線62によって与えられる。中線は、前縁56から後縁58までの内接円を描くことによって得られる。中線はこれらの内接円の中心に従い、翼弦60からのずれ又は距離はキャンバfと称される。上側キャンバ及び下側キャンバと称されるパラメータを使用することにより非対称性を画定することも可能であり、これらは、それぞれ、翼弦60と、負圧側54及び正圧側52とからの距離として定義される。
【0054】
エーロフォイル・プロファイルはしばしば以下のパラメータによって特徴付けられる:翼弦長c、最大キャンバf、最大キャンバfの位置df、メジアン・キャンバ線62に沿う内接円の最大直径である最大エーロフォイル厚さt、最大厚さtの位置dt、ノーズ半径(図示せず)。これらのパラメータは通常は翼弦長cに対する比として定義される。
【0055】
本発明による雷バイパス・システムの断面図が図4に示される。図4は、風力タービン・ブレード翼根端部16の断面と風力タービン・ハブ8との間のインターフェースの拡大図を示す。ピッチ・システム70が風力タービン・ブレード10とハブ8との間に位置し、ピッチ・システム70が、ボルト78を介してブレード翼根端部16に結合される内側ピッチ・リング72と、タービン・ハブ8に結合される外側ピッチ・リング74とを備える。内側リング72は外側リング74を基準としてピッチを設定され得、それにより、風力タービン位置の風力状態に基づいて風力タービン・ブレード10のピッチを設定することが可能となる。ピッチ・システム70は一般に金属の電気伝導性材料から形成される。
【0056】
一般に、複数のブレード翼根ブッシング76が風力タービン・ブレード翼根16の円周周りに位置し、ブッシング76は内側ピッチ・リング72をブレード翼根端部16に結合させるために複数のブレード翼根ボルト(図示せず)を受けるように構成され、上記ブレード翼根ボルトは一般に金属の電気伝導性材料から形成される。さらに、複数の貫通ボルト(through−going bolt)78を使用して外側ピッチ・リング74がタービン・ハブ8に結合される。好適には、上記ブレード翼根ブッシング76は、プラスチック材料、ガラス材料、セラミック材料及び/又はゴム材料などの、絶縁性の非導電性材料で形成される。
【0057】
図4を参照すると、この雷バイパス・システムの場合、少なくとも1つのブレード翼根ボルトが、例えばゴム、プラスチック、セラミック、ガラスなどの絶縁性材料すなわち非導電性材料から形成されるステイ・ボルト80に置き換えられる。絶縁性ステイ・ボルト80の第1のブレード翼根端部80aがブレード翼根ブッシング76内で受けられ、絶縁性ステイ・ボルト80が内側ピッチ・リング72内に設けられるボルト開口(bolting aperture)を通って延在するように構成される。絶縁性ステイ・ボルト80の第2の遠位端80bが内側ピッチ・リング72の反対側の表面を超えて、風力タービン・ハブ8の内部に画定される内部スペース内まで突出する。
【0058】
絶縁性ステイ・ボルト80は、銅、鋼、アルミニウム、銀などの金属導体などの導電性材料から形成される中心コア82を備える。導電性中心コア82はブレード翼根ブッシング76内に位置する第1のブレード翼根端部82aを備え、コア82が絶縁性ステイ・ボルト80の中心を通って、絶縁性ステイ・ボルト80の遠位端80bを超えるところに位置する第2のハブ遠位端82bまで延在し、コア82の第2のハブ遠位端82aがハブ8によって画定される内部スペース内に位置する。
【0059】
避雷導線(図示せず)が風力タービン・ブレード10の内部に設けられ、ブレード10上に設けられる少なくとも1つの雷レセプタ(図示せず)から延在する。ブレード10の翼根端部16で、避雷導線が接続要素84に導電結合される。接続要素84は風力タービン・ブレード10の内部から、風力タービン・ブレード10のボディの側壁の一部分を通って、雷バイパス・システムのブレード翼根ブッシング76の内部まで延在する。接続要素84は、絶縁性ステイ・ボルト80の導電性中心コア82の第1の端部82aに導電結合される。
【0060】
図4に示される実施例では、ブレード翼根ブッシング76内に位置する絶縁性ステイ・ボルト80aの第1の端部が導電性材料で形成されるヘッド部分86に置き換えられてよく、ヘッド部分86が上記接続要素84の突出部分を受けてその突出部分に機械的に結合されるように構成される適切な寸法の開口を有し、それにより、導電性コア82と接続要素84とを安全且つ堅固に接続することが可能となる。図5が、図4の線X−Xの断面で見た場合の、上記ブッシング76内の上記ヘッド部分86内で受けられるときの接続要素84の断面図を示す。
【0061】
導電性コア82の第2の端部82bが風力タービン・ハブ8内に設けられる避雷導線システム88に結合されるように構成され、避雷導線システム88が雷電流をグラウンド90まで伝導させるように動作可能である。図4に示される実施例では、避雷導線システム88は接地回路への火花間隙接続部として構成されるが、任意適切な避雷導線システム88が使用されてよいことを理解されたい。
【0062】
導電性コア82の第2の端部82bがフラッシュオーバ防止絶縁体92を備えることができ、フラッシュオーバ防止絶縁体92は、ブレード翼根端部16に設けられる例えばピッチ・システム70などの導電性構成要素に向かう上記第2の端部82bからのフラッシュオーバを防止するように構成される。フラッシュオーバ防止絶縁体92は上記第2の端部82b上に装着されるキャップ要素を備えることができ、このキャップは絶縁性材料から形成される少なくとも1つの突出カラー又はリングを備える。
【0063】
このようにして、本発明の雷バイパス・システムが、風力タービン・ブレード10上に構成されるブレード・雷レセプタから、避雷導線と、接続要素84と、ステイ・ボルト80の導電性中心コア82とを通って、導電性コア82の第2のハブ遠位端82bまでの、導電性経路を提供する。この構成は、ブレード翼根16に位置する風力タービンの繊細な構成要素のいずれにも接触することを防止する、風力タービン・ブレード10の落雷のための導電性経路を提供し、この導電性経路は、風力タービン・ハブ8又はナセル6内に位置する適切な避雷導線システム88を使用してグラウンドまで伝導され得る。導電性コア84を有する、絶縁性材料で形成されるステイ・ボルト80を使用することにより、落雷を受ける場合にフラッシュオーバ効果が生じるのを防止しながら、少なくとも1つの非導電性ブレード翼根ブッシングを有する既存の風力タービン・ブレードに大きな変更を加えることなく容易に装着され得る、設置が比較的容易である雷バイパス・システムが提供される。
【0064】
図6を参照すると、本発明による雷バイパス・システムを有する風力タービン・ブレードの好適な実施例の部分図が示され、風力タービン・ブレード10の翼根端部16に設けられるボルト・サークル88が示されている。図6の実施例では、雷バイパス・システムが、図4に示されるようにそれぞれ導電性コア90、92を有する第1及び第2の絶縁性ステイ・ボルトを備え、上記第1のステイ・ボルト90及び第2のステイ・ボルト92は風力タービン・ブレード10の翼根端部16に設けられるボルト・サークル88内で離間される。第1のステイ・ボルト90及び第2のステイ・ボルト92は平行に風力タービン・ブレード10の避雷導線システムに導電結合され、それにより、ブレード内の落雷が風力タービン・ハブ8内の適切なグラウンド接続部まで伝導されるようになる。ブレード翼根端部16にある別個の導電性経路により平行に落雷を伝導させるための、導電性コアを有する2つ以上のステイ・ボルトを提供することは、各導電性コアが担持する雷電流が低減され、それにより、雷バイパス・システムの構成要素が損傷する危険性が低減されることを意味する。
【0065】
好適には、第1のステイ・ボルト90及び第2のステイ・ボルト92は、第1のステイ・ボルト90が風力タービン・ブレード10の前縁18に最も近いポイントでブレード・ボルト・サークル88上に位置し、第2のステイ・ボルト92が風力タービン・ブレード10の後縁20に最も近いポイントでブレード・ボルト・サークル88上に位置するように、構成される。ステイ・ボルト90、92をブレード10の前縁18及び後縁20に配置することにより、確実に、ステイ・ボルト90、92が受ける機械的荷重が最小となり、それにより、タービンの動作中にステイ・ボルトが故障する危険性が低減される。
【0066】
図6の実施例は導電性コアを備える2つのステイ・ボルトを有する雷バイパス・システムを示すが、システムに対する機械的荷重の影響を最小にし且つブレード・ボルト・サークル88内の他のボルトによって担持される荷重を最適化するように、ステイ・ボルトの位置を選択することにより、任意の数の複数のステイ・ボルトが使用されてもよいことを理解されたい。さらに、システムが導電性コアを有する単一のステイ・ボルトを備えることもでき、ここでは、上記単一のステイ・ボルトが、ステイ・ボルトに対する機械的荷重を確実に最小にするためにブレード・ボルト・サークル88の前縁18又は後縁20のいずれかに好適に位置することを理解されたい。
【0067】
導電性コアの直径及び絶縁性ステイ・ボルトの直径は、雷バイパス・システムの構成要素を確実に故障又は破損させることなく落雷のための適切な導電性経路を提供するように、選択されることを理解されたい。好適には、電気伝導性コアの直径と雷バイパス・システムの少なくとも1つのステイ・ボルトの全体の直径との比は約1:3であり、例えば一実施例では、電気伝導性コアの直径が約12mmであり、電気伝導性コアを有する少なくとも1つのステイ・ボルトの全体の直径が約36mmである。
【0068】
本発明の雷バイパス・システムが、例えば風力タービン・ブレードの外部に設けられる火花間隙システムなどの、任意の別の避雷導線システムと組み合わせて使用され得ることを理解されたい。
【0069】
本発明は本明細書で説明される実施例のみに限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく修正又は適合され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6