(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
波長0.154nmのX線をフィルム法線方向から入射させ、透過広角X線散乱を測定した際の、散乱角2θ=20.9°〜21.8°の散乱強度の方位角分布プロフィールにおいて、
前記方位角分布プロフィールが、4つの散乱ピークを有し、
前記4つの散乱ピークの隣り合う散乱ピーク間隔が、90°±10°であり、
配向成分比Rが、0.01以上100以下であり、
前記4つの散乱ピークの平均面積が、1以上89以下である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂ラップフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
〔ポリオレフィン系樹脂ラップフィルム〕
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂ラップフィルム(以下、「ラップフィルム」ともいう。)は、
ポリオレフィン系樹脂を含み、
流れ方向(以下、「MD方向」ともいう。)引き裂き時には流れ方向に引き裂かれ、
巾方向(以下、「TD方向」ともいう。)引き裂き時には巾方向に引き裂かれ、かつ
流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合は、流れ方向又は巾方向のいずれかの方向に、引き裂かれ、
流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合の引き裂き方向と、切断線とのなす鋭角が30〜60°であり、
流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合の引裂強度が10g以下である。
【0015】
ラップフィルムとは、主として、食品の簡易的包装材として主に一般家庭や飲食店で手によりカットして使用するものをいう。ラップフィルム用途において、ラップフィルムが手で所定方向に直線的に容易に切ることができれば、収容容器の刃が不要となり、子供などが使用する場合でも安全に使用することができる。さらに、刃が不要となれば収容容器の製造コストを下げられるばかりでなく、廃棄コストも下げることができる。なお、このような課題は、シュリンク包装用フィルムなど、業務用用途であって、装置などを用いてフィルムを切断して食品を包装する用途においては、特段問題とはならない。ラップフィルムの用途としては、上記の食品包装用途以外に、下記の用途に使用してもよい。美容院等での髪染め時に染色液が他に転写して汚れるのを防止し、染色液の揮発を抑制し、染色効果を高める目的でラップフィルムを頭に巻きつける用途、皮膚のひび割れ、傷口に対して、保湿、塗り薬の揮発を防止する目的で当該部にラップフィルムを巻きつける用途、運動後の筋肉、関節部の炎症を軽減する、いわゆるクールダウンのために、氷、保冷剤等を当該部に接触、固定化する目的でラップフィルムを巻きつける用途、運動時に腹部の保温性を高めて、ダイエット効果を高める目的でラップフィルムを巻きつける用途、運動時に大腿部、膝などの保温性を高めて、怪我を防止する目的でラップフィルムを巻きつける用途等。
【0016】
〔ポリオレフィン系樹脂〕
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4メチルペンテンなどのオレフィン類の単独重合体若しくは2種以上のオレフィン類の共重合体、又は1種以上のオレフィン類とオレフィン類以外の異種成分との共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(ポリエチレン系樹脂)
このなかでも、ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂を含むことが好ましい。ポリエチレン系樹脂とは、エチレン単位を含むポリオレフィン樹脂をいう。このようなポリエチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン;エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体;エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルメタクリレート共重合体等のエチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂を含むことにより、ラップフィルム製膜時の延伸性、電子線架橋性、低温下における強度等により優れる傾向にある。ポリエチレン系樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ポリエチレン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して、70〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%がさらに好ましい。ポリエチレン系樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、ラップフィルム製膜時の延伸性、電子線架橋性、低温下におけるフィルム強度等により優れる傾向にある。
【0019】
ポリエチレン系樹脂のなかでも、超低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低圧法高密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が好ましく、耐突き刺し性の観点から、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等がより好ましい。
【0020】
超低密度ポリエチレン(以下、「VLDPE」ともいう。)とは、密度が0.910g/cm
3未満であるポリエチレン系樹脂をいう。VLDPEの含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して、0〜80質量%が好ましく、0〜60質量%がより好ましく、0〜40質量%がさらに好ましい。
【0021】
低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」ともいう。)とは、密度が0.910g/cm
3以上0.930g/cm
3未満であるポリエチレン系樹脂をいう。LDPEは、エチレンが単純な鎖状に結合せず、多く長鎖分岐(LCB)や短鎖分岐(SCB)を有しうる。LDPEの含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して、5〜50質量%が好ましく、8〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。LDPEの含有量が上記範囲内であることにより、ラップフィルムの弾性(張りと腰)、及び密着性がより向上する傾向にある。
【0022】
低密度ポリエチレンの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、一般に公知の方法、例えば高圧法が使用できる。高圧法において、具体的には、100〜300℃、100〜350MPaの高温高圧下でパーオキサイドなどの遊離基発生剤の存在下でエチレンをオートクレープ又はチューブリアクターなどで重合することにより、低密度ポリエチレンを製造できる。
【0023】
線状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」ともいう。)とは、超低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンの一種であり、一般にエチレン−α−オレフィン共重合体とも称され、一般的に、エチレンと、1種以上のα−オレフィンと、の共重合体である。
【0024】
α−オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オタテン等の炭素数が3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。このなかでも、1−ブテン、1−へキセン、及び1−オタテンが好ましい。また、線状低密度ポリエチレン中に占めるαオレフィンの含有量は、仕込みモノマー基準において、6〜30質量%が好ましい。
【0025】
LLDPEの含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して、50〜95質量%が好ましく、55〜90質量%がより好ましく、60〜85質量%がさらに好ましい。
【0026】
LLDPEの密度は、0.900〜0.940g/cm
3が好ましく、0.910〜0.935g/cm
3がより好ましく、0.920〜0.930g/cm
3がさらに好ましい。密度が0.900g/cm
3以上であることにより、過剰密着が抑制され引出力がより向上する、フィルムの弾性(張りと腰)がより向上する傾向にある。また、0.940g/cm
3以下であることにより、ラップフィルムの密着性がより向上する傾向にある。
【0027】
線状低密度ポリエチレンの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、気相流動床法、気相攪拌床法、液相スラリー法、液相溶液法、高圧反応釜法などの一般に公知の方法が挙げられる。具体的には、例えば遷移金属触媒の存在下、低温、低圧でエチレンとα−オレフィンとを気相又は液相内で共重合する方法が挙げられる。上記触媒としては、特に限定されないが、例えばチーグラー系触媒、フィリップス系触媒及びメタ口セン系触媒などが挙げられる。このなかでも、チーグラー系触媒が好ましい。チーグラー系触媒を用いることにより、得られるポリエチレン中の低分子量成分が多くなり、密着性が適度に高くなる傾向にある。
【0028】
中密度ポリエチレン(以下、「MDPE」ともいう。)とは、密度が0.930g/cm
3以上0.942g/cm
3未満であるポリエチレン系樹脂をいう。MDPEの含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して、0〜80質量%が好ましく、0〜60質量%がより好ましく、0〜40質量%がさらに好ましい。
【0029】
高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」ともいう。)とは、密度が0.942以上g/cm
3であるポリエチレン系樹脂をいう。HDPEは、一般的にエチレンが分岐をほとんど持たず直鎖状に結合したものである。HDPEの含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して、0〜30質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましく、0〜9質量%がさらに好ましい。HDPEの含有量が上記範囲内であることにより、ラップフィルムの弾性(張りと腰)がより向上し、かかる製造時に延伸し易くなる傾向にある。
【0030】
高密度ポリエチレンは、エチレン単独重合体又はエチレンとα-オレフィンの共重合体であり、フィリップス法、スタンダード法、チーグラー法などの一般に公知の方法で製造することができる。
【0031】
ポリエチレンの密度の測定方法は、実施例に記載の方法により行なうことができる。また、超低密度ポリエチレン、高圧法廷密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低圧法高密度ポリエチレン、及び線状低密度ポリエチレンは、1種単独で用いても、触媒又は構成成分の異なる2種以上を併用してもよい。
【0032】
エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ともいう。)としては、その酢酸ビニル成分の含有量が、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量%に対して、5〜25質量%のものが好ましい。酢酸ビニル成分が5質量%以上であることにより、ラップフィルムの密着性がより向上する傾向にある。また、酢酸ビニル成分が25質量%以下であることにより、ラップフィルムの臭いがより無臭に近くなる傾向にある。EVAの含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して、0〜30質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましく、0〜10質量%がさらに好ましい。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂は、LDPE5〜50質量%と、LLDPE50〜95質量%と、EVA0〜30質量%と、を含むことが好ましく、LDPE8〜40質量%と、LLDPE55〜90質量%と、EVA0〜20質量%と、を含むことがより好ましく、LDPE10〜30質量%と、LLDPE60〜85質量%と、EVA0〜10質量%と、を含むことがさらに好ましい。上記組成とすることにより、ラップフィルムの弾性(張りと腰)、密着性、製膜安定性により優れる傾向にある。
【0034】
上記ポリオレフィン系樹脂は、シングルサイト系触媒、もしくはマルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができる。上記ポリオレフィン系樹脂は、従来石油、天然ガス由来原料から得られたものに限らず、サトウキビ、トウモロコシ等の植物由来原料から得られたものであってもよい。
【0035】
ポリオレフィン系樹脂の密度は、0.860〜0.960g/cm
3が好ましく、0.900〜0.955g/cm
3がより好ましく、0.915〜0.950g/cm
3がさらに好ましい。密度が上記範囲内であることにより、フィルムの弾性(張りと腰)、強度、密着性、製膜安定性により優れる傾向にある。なお、密度は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂の190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう。)は、0.1〜25g/10分が好ましく、0.2〜10g/10分がより好ましく、0.3〜5g/10分がさらに好ましい。MFRが0.1g/10分以上であることにより、分子鎖の絡まりが程よく弱くなり、切断するのに要する力がより小さくなり、樹脂の押出工程における分解物などの異物の発生頻度もより少なくなる傾向にある。また、MFRが25g/10分以下であることにより、分子鎖の絡まりが程よく大きくなり、ポリオレフィン樹脂が配向しやすくなるため、ラップフィルムが不用意に破れることをより抑制できる傾向にある。なお、MFRは実施例に記載の方法により測定することができる。
【0037】
ラップフィルムは、ポリオレフィン系樹脂を含む単層又は積層からなるものであっても、ポリオレフィン系樹脂を含む層と、その他の樹脂を含む層を含む積層体からなるものであってもよい。
【0038】
積層体の場合、表面層にエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いると、ラップフィルムの密着性が向上する。ラップフィルムの各層には50wt%未満の範囲で別の樹脂や各種添加剤が配合されてもよい。
【0039】
〔その他添加剤〕
ラップフィルムは、必要に応じて、食品包装材料に用いられる可塑剤、安定剤、耐候性向上剤、染料又は顔料などの着色剤、防曇剤、抗菌剤、滑剤、核剤など公知の添加剤を含んでいてもよい。これらは1種単独で用いても又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチルクエン酸トリブチルのようなクエン酸エステル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、グリセリン、グリセリンエステル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル及びエポキシ化大豆油が挙げられる。
【0041】
安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、2,5−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブロピオネート、及び4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等の酸化防止剤;エポキシ化植物油、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、オレイン酸塩、リシノール酸塩、2−エチル−ヘキシル酸塩、イソデカン酸塩、ネオデカン酸塩、及び安息香酸カルシウム等の熱安定剤が挙げられる。
【0042】
耐候性向上剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾリトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、及び2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0043】
染料又は顔料などの着色剤としては、特に限定されないが、具体的には、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、及びベンガラが挙げられる。
【0044】
防曇剤としては、特に限定されないが、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。この中でもグリセリンステアレート、ジグリセリンステアレート、グリセリンラウレート、ジグリセリンラウレートのような二重結合を含まない脂肪酸由来のグリセリン脂肪酸エステルの添加が好ましい。これによりフィルム表面への添加剤成分のブリードが抑制され、フィルム表面が曇るのを抑制することができる。
【0045】
抗菌剤としては、特に限定されないが、具体的には、銀系無機抗菌剤が挙げられる。
【0046】
滑剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレンビスステロアミド、ブチルステアレート、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル等の脂肪酸炭化水素系滑剤、高級脂肪酸滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、及び脂肪酸エステル滑剤が挙げられる。
【0047】
核剤としては、特に限定されないが、具体的には、リン酸エステル金属塩が挙げられる。
【0048】
〔流れ方向と45°の方向への引き裂き評価〕
流れ方向と45°の方向への引き裂き評価では、JIS K 7128の引裂試験B法(エルメンドルフ法)と同様にして、引き裂き試験を行い、引裂方向と切断方向、すなわち流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合の引き裂き方向と切断線とのなす鋭角を測定する。ここで、試験片はラップフィルムから流れ方向と45°の方向で採取し、試験片の大きさは60×60mm、スリット長さは10mmとする。
【0049】
流れ方向と45°の方向に引き裂いた場合の引き裂き方向と切断線とのなす鋭角は、30〜60°であり、35〜55°が好ましく、40〜50°がより好ましい。引き裂き方向と切断線の角度が上記範囲内であることにより、手でカットした場合の直進性により優れる傾向にある。ここで、「切断線」とは、本実施形態においては、MD方向と45°の方向に引かれる線方向にラップフィルムを引き裂いた際、引き裂き開始点と終了点(ラップフィルム試験片の端辺と実際に引き裂かれた線の交点)を結ぶ線をいう。また、ラップフィルムのMD方向と45°の方向に引き裂いた場合であっても、本実施形態にかかるラップフィルムはMD方向又はTD方向に引き裂かれる。そのため、ラップフィルムのMD方向と45°の方向に引き裂いた際の引き裂き方向と切断線とのなす鋭角が45°の場合の引き裂き方向は、MD方向又はTD方向となる。引き裂き方向と切断線の角度は、延伸条件、それにより生じる配向の度合いにより制御することができる。二軸延伸において、延伸倍率が高く、延伸温度が低い程、分子の配向の度合いは高くなり、分子鎖はMD及びTD方向に強く配向する。このため、ラップフィルムを引き裂いた場合、分子が強く配向している方向に引き裂かれ易くなる。すなわち、MD及びTD方向に引き裂かれ易くなり、他の方向、例えば、MD方向と45°の方向には引き裂き難くなる。よって、流れ方向と45°に引き裂いても、MDまたはTD方向に引き裂かれる。このようなラップフィルム巻き回し体を引き出して、手で切る場合、流れ方向に張力をかけて、指で切断の起点を作ると、容易に巾方向に切ることが可能になる。
【0050】
〔流れ方向への引き裂き評価〕
流れ方向への引き裂き評価は、引き裂き方向が流れ方向であること以外は、流れ方向と45°の方向への引き裂き評価と同様に行うことができる。流れ方向に引き裂いた場合の引き裂き方向と切断線とのなす鋭角は、0〜15°であり、0〜10°が好ましく、0〜5°がより好ましい。引き裂き方向と切断線の角度が上記範囲内であることにより、手でカットした場合の直進性により優れる傾向にある。本実施形態において、「流れ方向引き裂き時には流れ方向に引き裂かれる」とは、引き裂き方向と切断線の角度が上記範囲内であることをいう。
【0051】
〔巾方向への引き裂き評価〕
巾方向への引き裂き評価は、引き裂き方向が巾方向であること以外は、流れ方向と45°の方向への引き裂き評価と同様に行うことができる。巾方向に引き裂いた場合の引き裂き方向と切断線とのなす鋭角は、0〜15°であり、0〜10°が好ましく、0〜5°がより好ましい。引き裂き方向と切断線の角度が上記範囲内であることにより、手でカットした場合の直進性により優れる傾向にある。本実施形態において、「巾方向引き裂き時には巾方向に引き裂かれる」とは、引き裂き方向と切断線の角度が上記範囲内であることをいう。
【0052】
〔引裂強度〕
ラップフィルムのMD方向と45°の方向に引き裂いた場合の引裂強度は、10g以下であり、1〜8gが好ましく、2〜6gがより好ましい。MD方向と45°の方向の引裂強度が上記範囲内であることにより、MD方向及びTD方向のカット性により優れる傾向にある。なお、引裂強度が10gより大きいと、手により容易にカットすることができない。ラップフィルムのMD方向と45°の方向に引き裂いた場合の引裂強度は、その引き裂かれた際に測定される引裂強度をいう。
【0053】
ラップフィルムのMD方向に引き裂いた場合の引裂強度は、10g以下が好ましく、1〜8gがより好ましく、2〜6gがさらに好ましい。MD方向の引裂強度が上記範囲内であることにより、MD方向の手によるカット性により優れる傾向にある。なお、引裂強度が10gより大きいと、手により容易にカットすることができない。
【0054】
ラップフィルムのTD方向に引き裂いた場合の引裂強度は、10g以下が好ましく、1〜8gがより好ましく、2〜6gがさらに好ましい。TD方向の引裂強度が上記範囲内であることにより、TD方向の手によるカット性により優れる傾向にある。なお、引裂強度が10gより大きいと、手により容易にカットすることができない。
【0055】
なお、各方向の引裂強度は実施例に記載の方法により測定することができる。ラップフィルムの引裂強度は、延伸倍率、各樹脂の含有比率、樹脂の密度、厚み等によって制御することができる。
【0056】
〔透過広角X線散乱測定〕
波長0.154nmのX線をフィルム法線方向から入射させ、透過広角X線散乱を測定した際の、散乱角2θ=20.9°〜21.8°の散乱強度の方位角分布プロフィールにおいて、方位角分布プロフィールが、4つの散乱ピークを有し、4つの散乱ピークの隣り合う散乱ピーク間隔が、90°±10°であり、配向成分比Rが、0.01以上100以下であり、4つの散乱ピークの平均面積が、1以上89以下であることが好ましい。なお、「フィルムの法線方向」とは、フィルム面の1点を通り、その点における接平面に垂直な方向をいう。
【0057】
ラップフィルムの透過広角X線散乱測定は、次の方法で実施する。ラップフィルムの法線方向に波長0.154nmのX線を入射させ、透過広角X線散乱測定を行う。この際、2次元検出器を用いる。上記の測定では、空気散乱補正を実施する。さらに、散乱角(2θ)=20.9°〜21.8°の範囲内で、方位角φに対して、散乱強度プロフィールを得る。その際に、下記の式(3)で、散乱強度の規格化を行う。
【数1】
ここで、I(φ)は、実測された散乱強度、I'(φ)は、規格化された散乱強度である。
【0058】
方位角分布プロフィールは、4つの散乱ピークを有することが好ましい。4つの散乱ピークの間隔は、90°±10°が好ましく、90°±8°がより好ましく、90°±5°がさらに好ましい。
【0059】
4つの散乱ピークの方位角の小さい側から、順番にA、B、C、Dとし、これらの散乱ピーク面積をSA、SB、SC、SDとする。なお、方位角0°付近に散乱ピークが部分的に現れた場合は、0°付近と359°付近に部分的に現れた散乱ピークの面積の和をSAとする。このとき、各散乱ピークの面積Sは、下記の式(4)で定義する。
【数2】
ここで、φ1とφ2は、積分上下限値であり(φ1<φ2)、各散乱ピークを挟むI'(φ)が極小値をとるφを用いる。
【0060】
また、配向成分比Rは、下記の式(5)で定義する。配向成分比Rは、0.01以上100以下が好ましく、0.05以上50以下がより好ましく、0.1以上10以下がさらに好ましい。
R=(SA+SC)/(SB+SD) (5)
【0061】
さらに、4つの散乱ピークの平均面積S’は、式(6)で定義する。平均面積S’は、1以上89以下が好ましく、10以上79以下がより好ましく、20以上69以下がさらに好ましい。
S’=(SA+SB+SC+SD)/4 (6)
【0062】
上記4つの条件を満たすラップフィルムは直行する2方向(一般的にはMD方向とTD方向)に配向していることからいずれの方向から切断(引き裂き)を試みても、その直行する2方向に優先的に、直線性良く切断することが可能となる。
【0063】
〔ラップフィルムの融点〕
ラップフィルムの示差走査熱量測定(DSC)における融点は、80℃〜123℃が好ましく、85℃〜122℃がより好ましく、90℃〜121℃がさらに好ましい。なお、ラップフィルムのDSCで測定におけるピークが複数ある場合には、最大値を融点ピークとする。融点の高いHDPEや特定のMDPE等を含む場合、融点は123℃を超えることがある。融点が上記範囲内であることにより、ラップフィルムの耐突刺性(単位厚み当たりの突刺深度)がより向上し、突起物に対して破れにくくなる傾向にある。
【0064】
〔架橋処理;ゲル分率〕
ラップフィルムはエネルギー線照射により架橋処理されたものであることが好ましい。架橋処理したものであることにより、より容易に手で切ることができる。また、架橋処理したものであることにより、電子レンジでの高温条件下で使用可能な耐熱性、耐油性がより向上する傾向にある。
【0065】
ラップフィルムのゲル分率は、架橋度の指標として用いられる。ラップフィルムのゲル分率は、10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、25〜40質量%がさらに好ましい。ゲル分率が上記範囲内であることにより、手によるカット性、耐熱性、耐油性及び製造時の延伸性がより向上する傾向にある。なお、ゲル分率は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0066】
〔弾性率〕
本実施形態におけるラップフィルムの弾性率は、フィルムの伸び難さ、それによる引き出し性、カット性の指標として用いられる。MD方向の弾性率は、300MPa以上が好ましく、300〜1200MPaがより好ましく、300〜900MPaがさらに好ましい。また、TD方向の弾性率は、100MPa以上が好ましく、100〜1000MPaがより好ましく、100〜800MPaがさらに好ましい。MD方向弾性率又はTD方向弾性率が上記範囲内にあることにより、ラップフィルムの引き出し性がより向上する方向にあり、カットする際に伸び難く、よりカット性が優れる傾向にある。
【0067】
なお、弾性率は実施例に記載の方法により測定することができる。また、弾性率は、使用する樹脂の密度、架橋度、延伸倍率などで調整することができる。
【0068】
〔突刺強度〕
ラップフィルムの突刺強度は、260g以下が好ましく、50〜250gがより好ましく、100〜240gがさらに好ましい。なお、突刺強度は実施例に記載の方法により測定することができる。また、突刺強度は樹脂の密度、架橋度、延伸倍率などにより調整することができる。
【0069】
MD方向及びTD方向の弾性率が上記範囲内であり、かつ突刺強度が上記範囲内であることにより、ラップフィルムがMD方向及びTD方向に伸び難く、突起物などによりラップフィルムに切断の起点となる貫通痕を形成しやすいため、カット性がより向上し、優れる傾向にある。
【0070】
〔収縮倍率〕
本実施形態におけるラップフィルムの収縮倍率は、最大熱収縮率から逆算した擬似的な延伸倍率であり、配向度の指標として用いている。本実施形態における最大熱収縮率とは、延伸されたラップフィルムが昇温加熱され、残留応力が開放されて、収縮を開始した後、残留応力が消失し、収縮挙動が終了した時点で達する熱収縮率のことをいう。つまり結晶性樹脂の場合は、完全に結晶が融解したとみなされる温度、非晶性樹脂であれば、ガラス転移温度Tgを十分に超える温度で加熱した際に測定される熱収縮率のことをいう。測定加熱温度は、以下のうち、高温の方とする。
(A):DSC法における結晶融解終了温度+10℃
(B):DSC法におけるTg+30℃。
【0071】
下記式(1)により求められる流れ方向収縮倍率(Smd)は、2.5倍以上が好ましく、3.0倍以上がより好ましく、4.0倍以上がさらに好ましい。Smdが上記範囲内であることにより、MD方向に高配向しているため、ラップフィルムの切断の起点から、MD方向に直線的にフィルムを破断させやすく、カット性がより向上する傾向にある。
流れ方向収縮倍率(Smd)=100/(100−αmd) (1)
(上記式(1)中において、αmdは流れ方向の最大熱収縮率(%)を示す。)
【0072】
下記式(2)により求められる巾方向収縮倍率(Std)は、2.5倍以上が好ましく、3.0倍以上がより好ましく、4.0倍以上がさらに好ましい。Stdが上記範囲内であることにより、TD方向に高配向しているため、ラップフィルムの切断の起点から、TD方向に直線的にフィルムを破断させやすく、カット性が向上する傾向にある。
巾方向収縮倍率(Std) =100/(100−αtd) (2)
(上記式(2)中において、αtdは、巾方向の最大熱収縮率(%)を示す。)
【0073】
なお、流れ方向収縮倍率(Smd)及び巾方向収縮倍率(Std)は実施例に記載の方法により算出することができる。収縮倍率は、架橋度、延伸倍率、延伸温度、ヒートセット条件などによって、所望の値に調整することができる。
【0074】
面積延伸倍率(Smd×Std)は、10倍以上が好ましく、15倍以上がより好ましく、20倍以上がさらに好ましい。面積延伸倍率(Smd×Std)が上記範囲内であることにより、ポリオレフィン樹脂がMD方向及びTD方向に高配向しているため、ラップフィルムの切断の起点から、MD方向又はTD方向に直線的にフィルムを破断させやすい傾向にある。
【0075】
Std/Smdは、0.5〜10が好ましく、0.52〜9がより好ましく、0.55〜8がさらに好ましい。Std/Smdが上記範囲内であることにより、巾方向のカット性により優れる傾向にある。これにより、ラップフィルム巻回体を取り扱う際に、間違って、縦方向に裂け続けるトラブルの発生がより少なくなる傾向にある。
【0076】
〔耐熱温度〕
ラップフィルムの耐熱温度は、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。耐熱温度が上記範囲内であることにより、例えば電子レンジで使用した際に高温の油がラップフィルムに付着することにより穴が開くことなどをより抑制できる傾向にある。耐熱温度は、樹脂の種類、密度、架橋度などによって、調整することができる。なお、耐熱温度は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0077】
〔密着仕事量〕
ラップフィルムの密着仕事量は、0.50〜3.50mJが好ましく、0.80〜3.00mJがより好ましく、1.00〜2.00mJがさらに好ましい。密着仕事量が0.50mJ以上であることにより、密着性が高くフィルムが独りでに剥がれることを抑制できる傾向にある。また、密着仕事量が3.50mJ以下であることにより、過剰密着を防ぎ、取り扱い性がより向上する傾向にある。密着仕事量は、容器や食品にラップフィルムを被せたときのフィルム同士や容器との密着性を評価する指標であり、引出力と併せて重要な特性である。
【0078】
なお、密着仕事量は実施例に記載の方法により測定することができる。密着仕事量は、用いる樹脂の密度や組み合わせなどによって調整することが可能である。
【0079】
〔厚み〕
ラップフィルムの厚みは、5.0〜15.0μmが好ましく、5.0〜12.0μmがより好ましく、5.0〜8.5μmがさらに好ましい。全層厚みが5μm以上であることにより、破れやすくなることをより抑制できる傾向にある。また、全層厚みが15μm以下であることにより、カット性がより向上する傾向にある。
【0080】
なお、厚みは実施例に記載の方法により測定することができる。上記全層厚みの調整は、製造時の各層押出機の吐出量又はその比率、ライン速度、延伸倍率などによって行なうことができる。
【0081】
〔ラップフィルム巻回体の製造方法〕
本実施形態に係るラップフィルムの製造方法は、一般に公知の方法であれば特に限定されないが、例えば、押出工程、延伸(成膜)工程及び巻き取り工程などからなる方法が挙げられ、必要に応じて、積層工程、エネルギー線照射工程、及びヒートセット工程などの処理を行うこともできる。
【0082】
押出工程は、押出機よりポリオレフィン樹脂を溶融押出する工程である。複数の層からなるラップフィルムを作製する場合は、特に限定されないが、例えば、各層の押出機で樹脂を溶融して、多層サーキユラ一ダイ(例えば環状3層ダイ、環状5層ダイ)で共押出しする。
【0083】
積層工程は、多層からなるラップフィルムを製造する際に、押出された樹脂を積層し、積層体を作製する工程である。積層方法としては、特に限定されないが、例えば、ドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法、共押出法等が挙げられる。このなかでも、設備が簡易な点で上述の共押出法が好ましい。
【0084】
延伸工程は、押出されたポリオレフィン樹脂を2軸延伸し、ポリオレフィン樹脂をMD方向及びTD方向に配向させる工程である。延伸方法としては、特に限定されないが、例えば、溶融したポリオレフィン樹脂を冷却ローラーを用いて引き取るキャスト法、溶融樹脂チューブを冷却固化後に加熱延伸するダブルバブルインフレーション法、溶融樹脂チューブに直接エアーを吹き込み延伸させるダイレクトインフレーション法、ロール縦延伸後にテンター横延伸する逐次テンター2軸延伸法などが挙げられる。ラップフィルムは、適した厚さになるまで延伸される。ラップフィルムのカット性を良好にするためには、延伸時の特にMD方向及びTD方向の延伸倍率の制御、及びそれにより得られるTD引裂強度が重要な因子となる。
【0085】
延伸工程においては、2軸延伸が好ましく、逐次テンター2軸延伸法及びダブルバブルインフレーション法がより好ましく、ダブルバブルインフレーション法がさらに好ましい。2軸延伸をすることでカット性がより向上する傾向にある。
【0086】
延伸工程における延伸手順においては、MD方向およびTD方向に同時に延伸する同時2軸延伸が適用可能であるが、MD方向に延伸した後にTD方向に延伸する逐次二軸延伸もしくはTD方向に延伸した後にMD方向に延伸する逐次二軸延伸がより好ましい。逐次2軸延伸をすることにより、斜め方向の配向成分生成が抑えられ、ラップフィルムを切断した際に斜め方向に引き裂かれることなく、TD方向もしくはMD方向に直線性よく切ることができる。
【0087】
MD及びTD方向の延伸倍率は、5.0〜12倍が好ましく、5.5〜11倍が以上より好ましく、6.0〜10倍がさらに好ましい。延伸倍率が上記範囲であることにより、ラップフィルム中のポリオレフィン系樹脂の配向度が高くなり手によるカット性により優れ、かつ裂けトラブルがより抑制されたラップフィルムが得られる傾向にある。TD方向の延伸倍率は、(延伸後のフィルム巾)/(延伸前のパリソン巾)の比であり、MD方向の延伸倍率は、(延伸後のライン速度)/(延伸前のライン速度)の比である。また、延伸面積倍率は、5〜70倍が好ましく、20〜60倍がより好ましい。延伸面積倍率が、5倍以上であることによりカット性により優れる傾向にある。また、延伸面積倍率が、70倍以下であることにより製品の寸法変化より小さくなる傾向にある。
【0088】
延伸温度は、ポリオレフィン系樹脂の融点+60℃以下が好ましく、融点+40℃以下がより好ましく、融点+30℃以下がさらに好ましい。延伸温度が上記範囲であることにより、ポリオレフィン系樹脂の配向度が高くなり手によるカット性により優れる傾向にある。
【0089】
巻き取り工程は、延伸されたフィルムを巻き取り機で巻き取って、フィルム原反を作製する工程である。その後のスリット工程では、スリッターで、このフィルム原反の両端をカットして2枚に剥離し、更に所望の幅にカットし、巻き取って巻回体とする。最後に、リワインド工程では、この巻回体からフィルムを所望の巻長分だけ、巻き取り、巻回フィルムを作製する。巻き取り方法は、特に限定されないが、例えば、芯体に巻き取る方法が挙げられる。芯体としては、特に限定されないが、例えば、紙製、プラスチック製、金属製、木製、またはこれらの組み合わせが挙げられる。他の巻き取り方法としては、芯体を使用せずに、エアシャフト等を巻き芯にして巻き取ることで、芯体のない巻回体を得ることができる。これは使用後に廃棄する際、芯体のゴミが発生しない利点を有する。
【0090】
エネルギー線照射工程はパリソン又は延伸後のフィルムに対して行なうことができる。電子線架橋処理方法で用いられる電子線としては、特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線、X線、α線、線、線、中性子線等の電離性放射線が挙げられる。このなかでも、電子線が好ましい。電子線照射による照射方法では、例えば100kV〜1MVのエネルギー電圧で電子線をパリソン又はフィルム全体に照射する方法が挙げられる。
【0091】
押出混練時における樹脂や防曇剤等の添加剤の劣化防止、電子線架橋時の架橋度の調整等を目的に、酸化防止剤を添加してもよい。添加方法は特に限定されないが、押出機に直接、原料樹脂と共に添加する方法、事前に原料樹脂に練り込んだマスターバッチにより添加する方法、事前に防曇剤等の液状添加剤の中に添加し、これを押出機に直接添加する方法等が挙げられる。酸化防止剤は、電子線架橋時に架橋反応を阻害する効果があるため、酸化防止剤添加量により架橋度を調整することができる。自動包装機によるシュリンク包装用に用いるシュリンクフィルムでは、表面層の酸化防止剤添加量が多い程、表面層の架橋度が低くなり、熱シール性が高くなる傾向にあり、より好ましい。逆に、本ラップフィルムでは、酸化防止剤添加量が少ない程、架橋度が高くなり、カット性が向上する傾向にあり、より好ましい。また、必要に応じ、後処理、例えば寸法安定性のためのヒートセット、他種フィルムとのラミネーションが行われてもよい。
【0092】
ラップフィルムの製造方法の一例として、ダブルバブルインフレーション法についてより詳細に説明する。
まず、溶融したポリオレフィン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を押出機により、円形のダイのダイ口から管状に押し出し、管状の樹脂組成物であるパリソンが形成される。
【0093】
パリソン内部に剥離性を付与するためにソック液を注入してもよい。ソック液としては、特に限定されないが、例えば、水、ミネラルオイル、アルコール類;プロピレングリコールやグリセリン等の多価アルコール類;セルロース系やポリビニルアルコール系の水溶液が挙げられる。ソック液は1種単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、ソック液には、必要に応じて、従来の食品包装材料に用いられる耐候性向上剤、防曇剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0094】
次に、押出物であるパリソン外側を冷水槽や水冷リング等にて冷水に接触させ、パリソンの内部にはソック液を常法により注入して貯留することにより、パリソンを内外から冷却して固化させる。この際、パリソンはその内側にソック液が塗布された状態となる。固化されたパリソンは、第1ピンチロールにて折り畳まれ、ダブルプライシートであるパリソンが成形される。ソック液の塗布量は第1ピンチロールのピンチ圧により制御される。エネルギー線照射工程を行う場合には、パリソンに電子線などのエネルギー線照射を施して樹脂を架橋させる。
【0095】
続いて、パリソンの内側に空気を注入することにより、再度パリソンは開口されて管状となる。パリソンは、延伸に適した温度まで再加熱される。延伸に適した温度は、容易に延伸ができるようにする観点から、130〜230℃であることが好ましい。次いで、インフレーション工程において、適温まで加熱された管状のパリソンに空気を注入してインフレーション延伸によりバブルを成形し、延伸フィルムが得られる。
【0096】
その後、延伸フィルムは、第3ピンチロールで折り畳まれ、ダブルプライフィルムとなる。その後、必要に応じてヒートセット工程が行なわれる。ダブルプライフィルムは、巻取りロールにて巻き取られる。さらに、このダブルプライフィルムはスリットされて、1枚のフィルムになるように剥がされる(シングル剥ぎ)。最終的にこのフィルムは例えば芯体に巻き取られ、ラップフィルム巻回体が得られる。
【0097】
上記の説明は、ラップフィルムの製造方法の一例であり、上記以外の各種装置構成や条件等によってラップフィルムを製造してもよく、例えば、公知の他の方法を採用してもよい。
【0098】
〔ラップフィルム収容体〕
本実施形態に係るラップフィルム収容体は、上記ポリエチレン系樹脂ラップフィルムの巻回体と、該巻回体を収納する容器と、を有する。容器は、ポリエチレン系樹脂ラップフィルムを切断するための切断具を有していても、有していなくてもよい。
【0099】
図1は、本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂ラップフィルムを収容したラップフィルム収容体の一例を示す斜視図である。ラップフィルムFを収納する容器は、前板1、底板2、後板3、及び脇板6の各壁面で形成される上部が開口した直方体の収納室8と、前記後板3の上端縁から収納室8を覆う方向に接続して設けられた蓋板4、前記蓋板4の前端縁から前記前板1を覆う方向に延出した掩蓋片5、掩蓋片5の両脇に設けられた脇掩蓋片7の各壁面で形成される蓋体4とからなる収納箱などが挙げられる。
【0100】
〔巻回体〕
巻回体Rは、上記ポリエチレン系樹脂ラップフィルムFが巻回されたものである。
【0101】
〔容器〕
容器は、巻回体Rを収納するものである。容器は、ポリエチレン系樹脂ラップフィルムを切断するための切断具を有していてもよい。
図5にラップフィルム容器の切断具形状の一例を示す。
図5に示すように、切断具としては、特に制限されないが、例えば、容器の一部に具備された突起状のものが好ましい。特に、容器のフタ部の一部に、突起部を有することが好ましい。ここで、切断具とは、ポリエチレン系樹脂ラップフィルムに対し、切断する始点となる箇所に局所的に力を加える形状のものをいい、フィルムの幅方向全体に配されるノコ刃は含まれない。本実施形態にかかるポリエチレン系樹脂ラップフィルムは、局所的に力を加えればMD方向又はTD方向に直進性欲切断することができるため、刃の代わりに突起部等の切断具があれば、より容易に本実施形態に係るポリエチレン系樹脂ラップフィルムを切ることができる。
【0102】
本実施形態で用いる容器が、突起部等の切断具を有する場合の取り付け位置は、ラップフィルムを容易に切断できる位置であれば、特に制限はなく、掩蓋片5の先端縁部がより好ましい。切断具は、ラップフィルムを切断するための道具であり、形状や材質は様々なものが使用可能である。切断具の形状としては、特に限定されないが、例えば、突起形状、山形状等が挙げられる。このなかでも、フィルムを更により軽く切断できる山形状が好ましい。切断具の材質としては、特に限定されないが、例えば、乳酸系ポリマーなどの脂肪族エステル系ポリマーや芳香族エステル系ポリマーなどのエステル系ポリマー、エチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマー、スチレン系ポリマー、アミド系ポリマーなどの高分子材料、その他にバルカナイズド紙、樹脂含浸硬化紙、砥粒、砥粒固着紙などが挙げられる。これのなかでも、循環型で環境に配慮できる乳酸系ポリマーがより好ましい。また、切断刃のない切断具としては、掩蓋片にヤスリ部を有するものも好ましい。
図6に本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂ラップフィルムを収容するラップフィルム収容体の他の例を示す斜視図を表す。
図6に表される掩蓋片に配されたヤスリ部は、ポリエチレン系樹脂ラップフィルムを端部からカットする際に、ポリエチレン系樹脂ラップフィルムと接触することで切断の起点を作る。この切断起点から、より容易に、巾方向にフィルムがカットされる。
【0103】
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂ラップフィルムは手で容易に切ることができるものであるため、容器はポリエチレン系樹脂ラップフィルムを切断するための切断具を有さなくてもよい。例えば容器の側面から巻回体を出し入れし、手で切断する際には巻回体のみで使用できる箱と組み合わせるとより好ましい。また、刃を有さない容器であれば、刃による怪我を防止でき、安全に使用することができる上、刃と容器本体を分別して捨てる必要がなくなるため破棄する上でも利点を有する。
【0104】
容器の材質は、特に限定されず、例えば、プラスチック、金属、木材、ダンボール及び板紙、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。このなかでも、使い勝手が良い点で、板紙が好ましい。この板紙は、厚さ0.35〜1.50mmの厚紙で、一般に肉厚のものほど剛性、強度が高く丈夫な収容容器が得られる。しかし、折り曲げ加工が困難になるため、厚さは0.35〜0.80mmがより好ましい。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0106】
〔測定方法〕
〔密度〕
ポリオレフィン系樹脂の密度は、JISK7112に準じて測定した。
【0107】
〔メルトフローレート〕
ポリオレフィン系樹脂の190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう。)は、JISK7210に準じて測定した。
【0108】
〔MD方向及びTD方向の引裂試験〕
ラップフィルムのMD方向の引裂強度、及びTD方向の引裂強度は、エルメンドルフ引裂強度試験機(東洋精機製)により、60mm×60mmのフィルムに10mmの切れ目を入れてMD方向から45°の方向に引き裂いたこと以外は、JISK7128に準じて測定した。
【0109】
MD方向及びTD方向の引裂試験の測定において、引き裂かれた方向と引き裂き方向(MD方向又はTD方向)とのなす鋭角を測定した。
【0110】
〔斜め方向の引裂試験〕
図2に実施例における斜め引裂試験(MD方向と45°の方向の引き裂き性試験)の概略を示す。ラップフィルムのMD方向と45°の方向の引裂強度は、エルメンドルフ引裂強度試験機(東洋精機製)により、60mm×60mmのフィルムに10mmの切れ目を入れてMD方向から45°の方向に引き裂いたこと以外は、JISK7128に準じて測定した。
【0111】
上記斜め引裂試験の測定において、引き裂かれた方向と引き裂き方向(MD方向と45°の方向)とのなす鋭角を測定した。
【0112】
斜め引裂試験のカット性評価は、引き裂かれた方向と引き裂き方向(MD方向と45°の方向)とのなす鋭角を下記評価基準により評価することにより行なった。
【0113】
評価基準
◎:引き裂かれた方向と引き裂き方向とのなす鋭角が40以上50°以下であり、かつ引裂強度が2〜6gである。
○:引き裂かれた方向と引き裂き方向とのなす鋭角が30°以上40°未満、又は50°超過60°以下かつ引裂強度が10g以下である。
×:引き裂かれた方向と引き裂き方向とのなす鋭角が60°超過又は30°未満である、又は引裂強度が10g超過である。
【0114】
〔刃なしカット性〕
刃なしカット性評価では、まずラップフィルム巻回体を片手に持ち、ラップフィルムを上出しで30cm引き出し、ラップフィルム巻回体を持っている手の親指を、巾方向中央部に押し当てた。次いで、引き出したラップフィルムに対して、引き出し方向に張力を掛けながら、親指を強くラップフィルムに押し当てた。親指の押し当てによりラップフィルムに切断の切っ掛けを作ったのち、引き出し方向張力により、ラップフィルムが巾方向に切断した。この時の切断状況を下記評価基準により評価した。
評価基準
◎ : あまり力を掛けずに、巾方向に真っ直ぐに、綺麗な切断面で切断された。
○ : やや強めに力を掛けることで、概ね巾方向に真っ直ぐ、綺麗な切断面で切断された。
△ : 切断されたが、巾方向に真っ直ぐではない、または切断面が綺麗でない。
× : うまく巾方向に切断されなかった。
【0115】
〔弾性率〕
フィルム流れ方向の弾性率は、ASTMD-882に準じて測定した。測定条件は、引張速度は5mm/min、初期試料長(つかみ具間隔)は100mm、試料幅は10mmであり、2%伸長時の応力から算出した。評価基準を以下に示す。
評価基準
×:700MPa超過 張り、腰及び手触り感が落ちる
△:600MPa超過700MPa以下 実用上、張り、腰及び手触り感に問題なし
◎:400MPa以上600MPa以下 最適な弾性率である。張り、腰及び手触り感に優れる。
○:300MPa以上400MPa未満 適度な弾性率である。
×:300MPa未満 弾性率が不適である。
【0116】
〔突刺強度〕
農林規格第10条に準じて、フィルムを内寸法で125mm×125mmの木枠に固定し、その中心部に直径1.0mm、先端形状0.5mmRの針を50±5mm/分の速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大荷重を測定し、その値を突刺強度とした。
【0117】
〔突刺深度〕
上記突刺強度と同様に試験をした際に、針が貫通するまでの移動距離を測定し、その値を突刺深度とした。
【0118】
〔MD方向収縮倍率(Smd)及びTD方向収縮倍率(Std)〕
MD方向収縮倍率(Smd)及びTD方向収縮倍率(Std)は下記式により算出した。
流れ方向収縮倍率(Smd)=100/(100−αmd) (1)
巾方向収縮倍率(Std) =100/(100−αtd) (2)
(上記式(1)及び(2)中において、αmdは流れ方向の最大熱収縮率(%)を示し、αtdは、巾方向の最大熱収縮率(%)を示す。)
【0119】
〔最大熱収縮率〕
最大熱収縮率の測定は、ASTMD−1204(1984年度版)に準じて行った。まず、縦120mm×横120mmの大きさのフィルムに(フィルムの)MD方向に5cm間隔で3点の印を付けた。次いでこれらの各点の(フィルムの)TD方向に5cm間隔で2点の印を付けた。このフィルムを特定温度に保たれたオーブン中で1分間熱処理後、取り出して各点間の長さから熱収縮率を計算した。
【0120】
特定温度とは、DSC法により昇温速度10℃/分で加熱する第1加熱において、結晶融解終了温度+10℃と、ガラス転移温度+30℃のうち、高温の方の温度をいう。熱収縮率は測定温度が高い程、増加するが、ある温度以上では平衡に達する。上記特定温度では、ガラス転移や結晶融解が十分に生じ、分子配向が十分に緩和し、最大の熱収縮を発現すると思われるため、この温度での熱収縮率を最大熱収縮率とした。
【0121】
〔透過広角X線散乱(WAXS)〕
下記で得られたラップフィルムから、縦1cm、横1cmの正方形の試料を切り取り、試料のMD方向(巻き取り方向)を縦に、TD方向(MD方向に垂直する方向)を横になるよう、試料ホルダーにセットした。測定は、RIGAKU社製X線散乱装置(Nano−Viewer)を用いて行った。測定条件は、入射X線波長0.154nm、カメラ長79.1mm、出力45kV/60mA、測定時間15分とした。検出器には、イメージングプレートを用いた。上記の測定では、空気散乱補正を実施した。
【0122】
散乱角(2θ)=20.9°〜21.8°の範囲内で、方位角φに対して、散乱強度プロフィールを得た。実測データについて、上記の方法で処理し、方位角分布プロフィールに現れた4つの散乱ピークの平均面積S’、および配向成分比Rを算出した。なお、各算出式は、上記式(3)〜(6)を用いた。
【0123】
〔融点〕
下記で得られたラップフィルムの融点は、パーキンエルマー社製DSCを用いて下記の6段階のプログラムを実施することにより測定した。
1)0℃にて1分保持、
2)0℃から200℃まで10℃/分で昇温、
3)200℃で1分保持、
4)200℃から0℃まで10℃/分で降温、
5)0℃で1分保持、
6)0℃から200℃まで10℃/分で昇温。
上記段階のうち6)における熱量ピークが最大の温度を融点と規定した。
【0124】
〔ゲル分率〕
ラップフィルムのゲル分率は、ASTM-D2765に準拠し以下のように測定した。沸騰パラキシレン中、12時間抽出した後の不溶分の質量分率を次式により表示したものをゲル分率とした。尚、試料は、延伸されたフィルムを140℃で熱収縮させてパリソン状に戻したものを使用した。なお、ゲル分率の測定においては、適宜フィルム融点以上の沸点を持つ溶媒を使用することができる。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料重量/抽出前の試料重量)×100
【0125】
〔耐熱温度〕
ラップフィルムの耐熱温度は、東京都消費生活条例11条に基づくラップ品質表示実施要領(都民表第29号)に準拠しつつ、一部条件を変更して、次の通り評価した。
【0126】
ラップフィルムを幅3cm×長さ14cmに裁断し、上端及び下端のフィルムの両面に、幅3cm×長さ2.5cmの板目紙を外れないように両面テープにて接着し、これを試料片とした。この試料の下端に重りをつるさずに、これを所定の温度に保たれたオーブン中に上端をジグで固定し、1時間後に切断の有無を確認した。フィルムが切断していた場合は、オープンの温度を5℃下げて同様にして測定を行った。フィルムが未切断の場合は、オープンの温度を5℃上げて同様にして測定を行った。そして、この結果より得られる試料が未切断の最高の温度を、耐熱温度とした。評価は、以下の通り、3段階にて行った。
評価基準
〇:140℃以上 耐熱性が優れている。十分使用可能。
△:100℃以上140℃未満 耐熱性は問題なし。電子レンジで使用可能。
×:100℃未満 耐熱性が悪い。電子レンジで使用しづらい。
【0127】
〔密着仕事量(密着性)〕
ラップフィルムの密着仕事量は、この方法は、食器などの容器や食品にラップフィルムを被せたときのフィルム同士の密着性を評価するための値である。密着仕事量は、以下の通り、測定し、評価した。
【0128】
底面積が25cm
2で質量が400gの円柱を2本用意した。そして、これらの底面に、底面と面積が同一の濾紙を予め貼り付けた。この濾紙を貼り付けた2つの円柱の底面に、ラップフィルムを皺が入らないように緊張させて固定した。そして、これらのフィルム面の相互がぴったり重なり合うように2本の円柱を合わせた後、すぐに500gの重りを載せて荷重し、1分間圧着した。所定時間経過後に重りを取り外し、すぐに、重なり合わせたフィルム相互を引張試験機にて5mm/分の速度で面に垂直な方向に引き離し、この時に生じたエネルギー(mJ)を密着仕事量とした。測定は、23℃雰囲気中で行った。試験回数は、10回行い、平均値を採用した。この評価は、以下の通り、4段階で行った。
【0129】
評価基準
×:3.50mJ超過 過剰密着である。
△:3.00mJ超過3.50mJ以下 過剰密着が殆どない。実用上、密着性は問題ない。
〇:2.00mJ超過3.00mJ以下 独りでに剥がれない。過剰密着がない。密着性が優れている。
◎:1.00mJ以上2.00mJ以下 最適な密着仕事量である。
密着性が非常に優れている。
〇:0.80mJ以上1.00mJ未満 独りでに剥がれない。過剰密着がない。密着性が優れている
△:0.50mJ以上0.80mJ未満 独りでに剥がれることが殆どない。過剰密着が殆どない。実用上、密着性は問題ない。
×:0.50mJ未満 独りでに剥がれる。実用上、密着性に問題がある。
【0130】
〔厚み〕
ラップフィルムの厚みは、ASTME-252に準じて測定した。具体的には、TECLOCKCORPORATION製 TECLOCK US−26を使用して測定を行った。
【0131】
〔実包耐熱油性〕
実際に料理をラップ包装し、電子レンジ加熱する際の実用的な耐熱油性を評価する実包耐熱油性は、以下のように測定した。お皿にカレーライスを盛り、その上からラップフィルムで包装した後、電子レンジで、750W×1分加熱した後、ラップフィルムに破れ、穴あき、ピンホール等の有無を目視確認し、下記評価基準により評価した。
【0132】
評価基準
◎:破れ、穴あき、ピンホール等の生成なし。
○:外径5mm未満のピンホールのみ生成。
×:外形5mm以上の穴あき、破れなどが生成。
【0133】
〔実施例および比較例において使用した樹脂および添加剤〕
以下の樹脂を表面層、中間層、および内部層の材料として用いた。なお、表面層とは、ラップフィルムの最表面となる層であり、中間層とは、ラップフィルムの表面層に接する層であって、内部層がある場合には、内部層を挟むように接する層であり、内部層とは、ラップフィルムの中間層に挟まれるように接する層である。
・LL1:エチレン−1−オクテン共重合体、密度=0.926g/cm
3、MFR=2.0g/10分
・LL2:エチレン−1−へキセン共重合体、密度=0.913g/cm
3、MFR=2.0g/10分
・LL3:エチレン−1−ヘキセン共重合体、密度=0.926g/cm
3、MFR=2.5g/10分
・LL4:エチレン−1−ヘキセン共重合体、密度=0.916g/cm
3、MFR=2.3g/10分
・LL5:エチレン−1−ヘキセン共重合体、密度=0.912g/cm
3、MFR=1.0g/10分
・VL1:エチレン−1−ヘキセン共重合体、密度=0.900g/cm
3、MFR=2.0g/10分
・VL2:エチレン−1−ヘキセン共重合体、密度=0.905g/cm
3、MFR=4.0g/10分
・ML1:エチレン−オクテン共重合体、密度=0.939g/cm
3、MFR=2.1g/10分
・LD1:高圧法低密度ポリエチレン、密度=0.921g/cm
3、MFR=0.4g/10分
・LD2:高圧法低密度ポリエチレン、密度=0.922g/cm
3、MFR=0.2g/10分
・LD3:高圧法低密度ポリエチレン、密度=0.924g/cm
3、MFR=3.0g/10分
・HD1:高密度ポリエチレン、密度=0.954g/cm
3、MFR=1.1g/10分
・EL1:エチレン−1−オクテン共重合エラストマー、密度=0.877g/cm
3、MFR=0.5g/10分
・EL2:エチレン−1−オクテン共重合エラストマー、密度=0.868g/cm
3、MFR=0.5g/10分
・EVA1:エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル成分=15%、密度=0.940g/cm
3、MFR=2.0g/10分
・EVA2:エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル成分=15%、密度=0.940g/cm
3、MFR=1.0g/10分
・PP1:ホモポリプロピレン、密度=0.900g/cm
3、MFR=3.3g/10分
・PB1:プロピレン−ブテン共重合体、密度=0.890g/cm
3、MFR=2.0g/10分
・PMP1: ポリメチルペンテン、密度=0.834g/cm
3、MFR=21g/10分(260℃)
・添加剤1:ジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1混合物
・添加剤2:ジグリセリンラウレート
【0134】
〔実施例1〜15〕
表1に示す組成の樹脂組成物に、ジグリセリンオレートとグリセリンモノオレートの1:1の混合物(添加剤1)またはジグリセリンラウレート(添加剤2)を2.0質量%添加したものを環状ダイより単層または3層原反または5層原反として押出した後、冷水にて冷却固化して、折り巾120mm、厚さ500μmのチューブ状原反を作製した。これを電子線照射装置に誘導し、500kVに加速した電子線を照射し、吸収線量として80kGyになるように架橋処理を行った。これを延伸機内に誘導して再加熱を行い、2対の差動ニップロール間に通して、エアー注入によりバブルを形成し、表1に示す延伸条件でそれぞれ延伸を行い、実施例1〜15のラップフィルムを得た。各種物性を表2に示す。
【0135】
〔実施例16〕
表1に記載の樹脂組成とし、電子線架橋をしない点、ストレッチャーにて逐次二軸延伸をした点が異なる以外は上記と同様にして実施例16のラップフィルムを得た。各種物性を表2に示す。
【0136】
〔実施例17〕
電子線架橋処理を行った後に、ストレッチャーにて逐次二軸延伸をした点が異なる以外は実施例2と同様にして実施例17のラップフィルムを得た。各種物性を表2に示す。
【0137】
〔比較例1〕
表3のように、内部層の樹脂組成が異なる以外は、実施例8と同様にして比較例1のラップフィルムを得た。各種物性を表4に示す。
【0138】
〔比較例2〕
表3のように、パリソン厚みと延伸倍率が異なる以外は、実施例11と同様にして比較例2のラップフィルムを得た。各種物性を表4に示す。
【0139】
〔比較例3〕
表3のように、内部層の樹脂組成、電子線照射をしない点、パリソン厚みと延伸倍率が異なる以外は、実施例12と同様にして比較例3のラップフィルムを得た。各種物性を表4に示す。
【0140】
〔比較例4〕
表3のように、電子線照射をしない点、パリソン厚みと延伸倍率が異なる以外は、実施例13と同様にして比較例4のラップフィルムを得た。各種物性を表4に示す。
【0141】
〔比較例5〜6〕
表3のように、内部層及び中間層の樹脂組成、電子線照射をしない点、パリソン厚みと延伸倍率が異なる以外は、実施例12と同様にして、比較例5〜6のラップフィルムを得た。各種物性を表4に示す。
【0142】
〔比較例7〕
表3のように、ポリエチレンを用いた市販のラップフィルムを比較例7のラップフィルムとして用いた。各種物性を表4に示す。
【0143】
〔比較例8〕
表3のように、ポリプロピレンを用いた市販のラップフィルムを比較例8のラップフィルムとして用いた。各種物性を表4に示す。
【0144】
〔比較例9〕
表3のように、ポリメチルペンテンを用いた市販のラップフィルムを比較例9のラップフィルムとして用いた。各種物性を表4に示す。
【0145】
また、
図3に、実施例2の方位角分布プロフィールを示し、
図4に、比較例2の方位角分布プロフィールを示す。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
総合評価
◎:耐熱性、密着性が良好でカット性が非常に優れる。
刃なしカット性◎、実包耐熱油性○以上、密着仕事量○以上
○:耐熱性、密着性、刃なしカット性が良好。
刃なしカット性○、実包耐熱油性○以上、密着仕事量○以上
△:刃なしカット性がやや劣る。
刃なしカット性△、実包耐熱油性○以上、密着仕事量△以上
×:刃なしカット性が劣る。
刃なしカット性×、実包耐熱油性○以上、密着仕事量△以上
【0151】
本出願は、2013年12月16日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2013−259453)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。