(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エスケープ車(9、109)と連係する移動止め(7、107)を有する移動止めエスケープと連係する慣性−弾性のタイプの共振器(5、105)を有する発振器(1、101)であって、
前記共振器(5、105)は、慣性メンバー(11、111)と、及び弾性を与え前記共振器の仮想回転軸(A1、A3)を形成する第1の可撓性構造(13、113)とを有して一体的に形成されており、
前記移動止め(7、107)は、前記エスケープ車(9、109)と連係するロック用石(34、134)を形成する構造体(33、133)と、前記移動止めの仮想回転軸(A2、A4)を形成する第2の可撓性構造(35、135)と、及び前記移動止め(7、107)の前記構造体(33、133)の一端に形成された止めメンバー(36、136)と連係するロック解除用ばね(37、137)とを有して一体的に形成されており、
前記慣性メンバー(11、111)は、前記エスケープ車(9、109)と連係するインパルスパレット(12、112)と、及び前記ロック解除用ばね(37、137)と連係する解放用パレット(14、114)とを形成している
ことを特徴とする発振器(1、101)。
前記第1の可撓性構造(13、113)は、少なくとも1つのアンカー手段(16、116、116’)を有し、これは、クロス材(19、119)によって接続されている2つの弧状体(17、18、117、118)と、可撓性手段(15、115)を介して、一体的になっており、
前記可撓性手段は、前記クロス材(19、119)の中心にて前記共振器(5、105)の前記仮想回転軸を形成するように構成している
ことを特徴とする請求項3に記載の発振器(1、101)。
前記第1の可撓性構造(13、113)の前記可撓性手段(15、115)は、少なくとも1つの基部(20、20’、120、120’)を有し、これはそれぞれ、少なくとも1つの可撓性細長材(21、21’、22、22’、23、23’、24、24’、121、121’、122、122’、123、123’、124、124’)を介して、前記2つの弧状体(17、18、117、118)のそれぞれと、前記少なくとも1つのアンカー手段とを接続している
ことを特徴とする請求項4に記載の発振器(1、101)。
前記第1の可撓性構造(13、113)は、少なくとも1つのアンカー手段(16、116、116’)を有し、これは、クロス材(19、119)によって接続されている2つの弧状体(17、18、117、118)と、可撓性手段(15、115)を介して、一体的にされており、
前記可撓性手段は、前記クロス材(19、119)の中心にて前記共振器(5、105)の仮想回転軸を形成するように構成している
ことを特徴とする請求項6に記載の発振器(1、101)。
前記第1の可撓性構造(13、113)の前記可撓性手段(15、115)は、少なくとも1つの基部(20、20’、120、120’)を有し、これはそれぞれ、少なくとも1つの可撓性細長材(21、21’、22、22’、23、23’、24、24’、121、121’、122、122’、123、123’、124、124’)を介して、前記2つの弧状体(17、18、117、118)のそれぞれと、前記少なくとも1つのアンカー手段とを接続している
ことを特徴とする請求項7に記載の発振器(1、101)。
前記第1の可撓性構造(13、113)は、さらに、少なくとも1つの止めメンバー(26’、27、126、126、127、127’)を有し、これは、前記共振器(5、105)の振幅を制限するように前記少なくとも1つのアンカー手段と接触しているように構成している
ことを特徴とする請求項4、5、7又は8に記載の発振器(1、101)。
前記第2の可撓性構造(35、135)は、少なくとも2つの固定手段(38、40、138、140)を有し、これは、可撓性手段(39、139)を介して基部要素(41、141)と一体的となっており、
前記可撓性手段は、前記基部要素(41、141)の中心にて前記移動止めの仮想回転軸を形成するように構成している
ことを特徴とする請求項10に記載の発振器(1、101)。
前記一体的な共振器(5、105)及び前記一体的な移動止め(7、107)は、前記共振器(5、105)及び前記移動止め(7、107)が互いに対して理想的に位置合わせされているような一体的な発振器アセンブリー(3、103)を形成するように連結している2つの単一のプレート(2、4、102、104)として形成されている
ことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の発振器(1、101)。
前記2つのプレート(2、4、102、104)の一方は、前記エスケープ車(9、109)を受けるためのベアリング(45、145)を有し、これによって、前記エスケープ車(9、109)は、前記一体的な発振器アセンブリー(3、103)に対して理想的に位置合わせされている
ことを特徴とする請求項14に記載の発振器(1、101)。
前記2つのプレート(2、4、102、104)の一方は、少なくとも2つの固定手段(146、147)を有し、これは、前記発振器(1、101)を主板に取り付けるように構成している
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の発振器(1、101)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、信頼性があり、コンパクトで、トリッピングせず、及び機関どうしが互いに対して非常に正確に位置しているような移動止めエスケープと連係する慣性−弾性のタイプの共振器を有する発振器を提案することによって、前記課題のすべて又は一部を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このために、本発明は、エスケープ車と連係する移動止めを有する移動止めエスケープと連係する慣性−弾性のタイプの共振器を有する発振器に関し、前記共振器は、一体的にされており、慣性メンバーと、及び前記共振器の弾性を与え前記共振器の仮想回転軸を形成する第1の可撓性構造又はベアリングとを有し、前記移動止めは、一体的に作られており、前記エスケープ車と連係するロック用石又はロック用パレットを形成する構造体と、前記移動止めの仮想回転軸を形成する第2の可撓性構造又はベアリングと、及び前記移動止めの前記構造体の一端に形成された止めメンバーと連係するロック解除用ばねとを有し、前記慣性メンバーは、前記エスケープ車と連係するインパルスパレットと、及び前記ロック解除用ばねと連係する解放用パレットとを形成している。
【0005】
このようにして、好ましいことに、本発明によると、発振器がわずかな数しかマウントする部品を備えないことが明らかである。なぜなら、ほとんど一体的な部品であるからである。このことは、これらの部品の要素どうしが互いに対して既に完璧に位置合わせされていることを意味する。また、モノリシックな連接構造とも呼ばれる可撓性構造を用いるので、発振器は非常にコンパクトである。これは、回転軸を用いることをなくすことによって必要な厚みを小さくし、本質的にトリッピングをなくすことができる。また、本発明の発振器は、好ましいことに、スイス式レバーエスケープを用いる発振器と比べて、発振器の全体効率を減少させずに、共振器の周波数を大きくすることができる。結果的に、本発明の発振器は、腕時計に適用することを考慮することができるほどに十分にコンパクトで信頼性が高い。
【0006】
本発明の他の好ましい変種によると、以下の特徴を有する。
【0007】
− 前記一体的な共振器は、一体的な第1及び第2の層内にて形成され、その第1のレベルは、インパルスパレットが設けられている慣性メンバーを有し、その第2のレベルは、第1の可撓性構造及び解放用パレットを有する。
【0008】
− 第1の実施形態によると、前記慣性メンバーは、リングで形成されており、リングの周面にはインパルスパレットが設けられている。
【0009】
− 第1の可撓性構造は、少なくとも1つのアンカー手段統合を有し、これは、クロス材によって接続されている2つの弧状体と、可撓性手段を介して、一体的にされており、前記可撓性手段は、クロス材の中心にて共振器の仮想回転軸を形成するように構成している。
【0010】
− 前記可撓性手段は、少なくとも1つの基部を有し、これはそれぞれ、少なくとも1つの可撓性ストリップを介して、前記2つの弧状体のそれぞれと、前記少なくとも1つのアンカー手段とを接続している。
【0011】
− 第2の実施形態によると、前記慣性メンバーは、棒状体によって接続されている2つのセクターで形成され、これらセクターの一方の周面にインパルスパレットが設けられている。
【0012】
− 第1の可撓性構造は、少なくとも1つのアンカー手段を有し、これは、クロス材によって接続されている2つの弧状体と、可撓性手段を介して、一体的にされており、前記可撓性手段は、クロス材の中心にて共振器の仮想回転軸を形成するように構成している。
【0013】
− 前記可撓性手段は、少なくとも1つの基部を有し、これはそれぞれ、少なくとも1つの可撓性ストリップを介して、前記2つの弧状体のそれぞれと、前記少なくとも1つのアンカー手段とを接続している。
【0014】
− 第1及び第2の実施形態によると、前記第1の可撓性構造は、さらに、少なくとも1つの止めメンバーを有し、これは、共振器の振幅を制限するように前記少なくとも1つのアンカー手段と接触しているように構成している。
【0015】
− 前記一体的な移動止めは、一体的な第1及び第2の面内にて形成され、前記第1の面は、ロック用石を有する側面を有する構造体を有し、前記第2の面は、第2の可撓性構造、前記ロック解除用ばね及び前記止めメンバーを有する。
【0016】
− 前記第2の可撓性構造は、少なくとも2つの固定手段統合を有し、これは、可撓性手段を介して基部要素と一体的にされており、前記可撓性手段は、前記基部要素の中心にて前記移動止めの仮想回転軸を形成するように構成している。
【0017】
− 第2の可撓性構造の可撓性手段は、少なくとも1つの可撓性ストリップを有する。
【0018】
− 前記ロック解除用ばねは、基部要素と一体的にされており、止めメンバーと連係しており、これによって、共振器が第1の回転方向に回転しているときには、移動止めの構造体を拘束せずに留まらせ、共振器が第2の回転方向に回転しているときには、共振器の解放用パレットとの接触によって移動止めを一体的に動かす。
【0019】
− 前記一体的な共振器及び前記一体的な移動止めは、一体的な発振器アセンブリーを形成するように連結している2つの単一のプレート内に形成され、前記共振器と前記移動止めどうしは互いに対して理想的に位置合わせされている。
【0020】
− 前記2つのプレートの一方は、エスケープ車を受けるためのベアリングを有し、これによって、エスケープ車は、一体的な発振器アセンブリーに対して理想的に位置合わせされている。
【0021】
− 前記2つのプレートの一方は、発振器を主板に取り付けるように構成している少なくとも2つの固定手段を有する。
【0022】
− 前記発振器は、さらに、前記移動止めの運動の振幅を制限するように構成するロック解除防止手段を有する。
【0023】
− 前記発振器は、さらに、予応力付与手段を有し、これは、移動止めがロック位置にあるときに、第2の可撓性構造を応力がかけられた状態に配置するように構成している。
【0024】
添付図面を参照しながら以下の説明(これに制限されない例としてのみ示している)を読むことによって、他の特徴及び利点を明確に理解することができるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、計時器用の発振器、すなわち、エスケープシステムのような分配及び保全システムに連結する共振器に関する。本発明によると、発振器は、移動止めエスケープと連係する慣性−弾性のタイプの共振器を有する。この移動止めエスケープは、エスケープ車と連係する移動止めを有する。
【0027】
好ましいことに、本発明によると、共振器は、一体的にされている。したがって、共振器は、一体的に、慣性メンバー及び第1の可撓性構造又はベアリングを有する。この第1の可撓性構造又はベアリングは、共振器の弾性を与え、共振器の仮想回転軸を形成する。これによって、通常のベアリングや回転軸を使用しなくてもよくなる。しかし、他方では、共振器の振幅は、第1の可撓性構造又はベアリングの最大運動範囲に制限される。しかし、この運動制限によって、共振器がトリッピングすることを本質的に不可能にし、このことによって、移動止めエスケープ機構に対して通常害を与える上記の主要な問題を意識的に解決することができる。
【0028】
また、本発明によると、移動止めは一体的にされている。したがって、移動止めは、一体的に、構造体と、第2の可撓性構造又はベアリングと、及び当該移動止めの構造体の一端に形成された止めメンバーと連係するロック解除用ばねとを有する。このようなアセンブリーを調整するのは通常非常に難しく、本発明による一体的な態様は、アセンブリーの位置合わせ精度について有利である。
【0029】
移動止め構造体には、エスケープ車と連係する一体的なロック用石ないしロック用パレットが設けられている。これによって、付加的なインパルスピンを使用すること、及び移動止め構造体とは異なる平面でのエスケープ車との接触を回避することができる。本発明によると、第2の可撓性構造構造体は、移動止めの仮想回転軸を形成している。第1の可撓性構造におけるように、第2の可撓性構造では、通常のベアリング及び回転軸を用いる必要性をなくすことができている。最後に、ロック解除用ばねは、移動止め構造体の一端に形成された止めメンバーと連係している。
【0030】
コンパクト性をさらに改善するために、慣性メンバーには、インパルスパレットが直接設けられている。すなわち、インパルスパレットは、慣性メンバーと一体的にされている。また、インパルスパレットは、エスケープ車と直接連係している。なお、慣性メンバーとエスケープ車の間では、中間的な部品が使用されず、これによって、通常の移動止めエスケープ機構よりもインパルスが直接的になることが理解できる。
【0031】
最後に、慣性メンバーには、解放用パレットも直接設けられている。すなわち、解放用パレットも、慣性メンバーと一体的にされている。また、解放用パレットは、ロック解除用ばねと直接連係している。インパルスパレットと同様に、慣性メンバーとロック解除用ばねの間には、中間的な部品が使用されておらず、これによって、通常の移動止めエスケープシステムに比べてロック解除をよりコンパクトにし、さらには、より直接的にすることがわかるであろう。
【0032】
好ましいことに、本発明によると、一体的な共振器が一体的な第1及び第2のレベル内で形成され、一体的な移動止めが一体的な第1及び第2の面内に形成され、前記第1及び第2のレベルはそれぞれ、第1及び第2の面と共面又はこれらの面とはオフセットされている。なお、通常の移動止めエスケープシステムと連係する通常のばね仕掛けバランス共振器を用いて、得られるアセンブリーの厚みを、発振器に対して劇的に減少させることができることがわかるであろう。
【0033】
好ましいことに、本発明によると、一体的な共振器及び一体的な移動止めが、一体的な発振器アセンブリーを形成するように連結された2つの単一のプレートないしウェーハとして形成することができ、これによって、共振器と移動止めどうしが互いに理想的に位置合わせされていることがわかるであろう。このことは、計時器用ムーブメントにおいて一体的にマウントされる完璧に位置合わせされたアセンブリーが有する利点を直ちに与えるものであって、これには、いずれの特定の使用上の注意又は細密調整が観察されることをも必要としない。
【0034】
この一体的な発振器アセンブリーを、例えば、典型的にはシリコンオンインシュレーター基板(「SOI」とも呼ばれる)のような連結されたケイ素ベースのプレートで作ることができるしかし、シリコンオンインシュレーター基板のような、互いに固定することができその後に対面させてエッチングすることができるいずれの材料をも用いることができる。
【0035】
図1〜11には、本発明の利点についての説明のための2つの実施形態を示している。
図1〜6に示す本発明の第1の実施形態によると、発振器1は、一体的な発振器アセンブリー3を有しており、これは、一体的な共振器5及び一体的な移動止め7と一体的に形成されており、一体的な第1及び第2のプレート2、4内のみにて形成されている。また、発振器1は、エスケープ車9を有し、これは、第2のプレート4の開口6内に配置されている。
【0036】
一体的な共振器5は、一体的な第1及び第2のレベル内にて形成されており、その第1のレベルには、インパルスパレット12が設けられた慣性メンバー11が設けられており、その第2のレベルには、第1の可撓性構造13及び解放用パレット14が設けられている。
図1、2及び4に示すように、インパルスパレット12は、リングで形成された慣性メンバー11の周面上にて一体的に設けられている。
【0037】
第1の可撓性構造13は、少なくとも1つのアンカー手段16を有し、これは、クロス材19によって接続されている2つの弧状体17、18と可撓性手段15を介して一体的となっており、この可撓性手段15は、クロス材19の中心にて共振器5の仮想回転軸A
1を形成するように構成している。
【0038】
また、可撓性手段15は、少なくとも1つの基部20、20’を有し、これはそれぞれ、少なくとも1つの可撓性細長材21、21’、22、22’、23、23’、24、24’を介して、前記2つの弧状体17、18のそれぞれと、前記少なくとも1つのアンカー手段16とを接続している。第1の実施形態において、
図5でより明確にわかるように、1つのアンカー手段16のみが用いられることに留意すべきである。アンカー手段16は、第2のプレート4と一体的になっており、格子25によって可撓性細長材21、22に接続している。
図2に示すように、可撓性細長材21’、22’は、慣性メンバー11には接続しているが、プレート2、4上の固定点には接続していないことに留意すべきである。最後に、
図2、3及び4に示すように、第1の可撓性構造13は、さらに、少なくとも1つの止めメンバー26、27を有し、これは、共振器5の振幅を制限するように前記少なくとも1つのアンカー手段16と接触しているように構成している。
【0039】
図3には、第1の可撓性構造13の最大の移動距離の例を示している。共振器5の振幅のこの極限位置において、縁28と止めメンバー27に加えて、可撓性細長材21〜23、可撓性細長材21’〜23’、アンカー手段16と止めメンバー26が、接触しており、共振器5に対して実質的に80°である慣性メンバー11の固定の最大角度を与える。実際に、反対の回転方向では、共振器5の振幅の別の極限位置において、縁28’と止めメンバー26に加えて、可撓性細長材22〜24、可撓性細長材22’〜24’、アンカー手段16及び止めメンバー27が、接触している。したがって、第1の実施形態による慣性メンバー11の最大振幅は、実質的に160°となる。
【0040】
好ましいことに、本発明によると、一体的な移動止め7が、一体的な第1及び第2の面内にて形成され、その第1の面には、ロック用石34を有する側面を有する構造体33が設けられ、その第2の面には、第2の可撓性構造35、ロック解除用ばね37及び止めメンバー36が設けられている。
【0041】
図2及び4に示すように、第2の可撓性構造35は、少なくとも2つの固定手段38、40を有し、これは、可撓性手段39を介して基部要素41と一体的にされており、可撓性手段39は、基部要素41の中心にて移動止め7の仮想回転軸A
2を形成するように構成している。第1の実施形態において、可撓性手段39は、固定手段38、40及び基部要素41の間にそれぞれ、少なくとも1つの可撓性細長材42、44を有する。
【0042】
図4及び6でより明確にわかるように、ロック解除用ばね37は、基部要素41と一体的になっており、複雑な幾何学的構成で止めメンバー36と連係して、これによって、共振器5が第1の回転方向に回転しているときには、移動止め7の構造体33を拘束せずに留まらせ、共振器5が第2の回転方向に回転しているときには、共振器5の解放用パレット14との接触によって、移動止め7を一体的に動かすように連係している。
【0043】
より詳細には、慣性メンバー11が回転方向S
1に回転しているときには、
図6に示すように、解放用パレット14は、止めメンバー36を駆動せずにロック解除用ばね37のL字形の端に当接し、したがって、移動止め7の構造体33を自由にして留まらせる。しかし、慣性メンバー11が回転方向S
1とは反対である回転方向S
2に回転しているときには、解放用パレット14は、ロック解除用ばね37のL字形の端と当接し、このL字形の端を止めメンバー36のU字形の空欠部に押し込み、止めメンバー36を駆動し、これによって、移動止め7の構造体33を回転させる。
【0044】
図2及び3に示すように、2つのプレート2、4の一方が、エスケープ車9を受けるためのベアリング45を有することができ、これによって、エスケープ車9が、一体的な発振器アセンブリー3に対して理想的に位置合わせされている。
【0045】
図7〜11に示す本発明の第2の実施形態によると、発振器101は、一体的な発振器アセンブリー103を有し、これは、一体的な共振器105及び一体的な移動止め107と一体的に形成されており、一体的な第1及び第2のプレート102、104内にのみ形成されている。また、発振器101は、エスケープ車109を有し、これは、第2のプレート104の開口106内に配置されている。
【0046】
図10に示すように、一体的な共振器105は、一体的な第1及び第2のレベル内にて形成され、この第1のレベルには、インパルスパレット112を備える慣性メンバー111が設けられ、第2のレベルには、第1の可撓性構造113及び解放用パレット114が設けられている。
図9及び10に示すように、慣性メンバー11は、棒状体110によって接続されている2つのセクター108、108’で形成されており、これらのセクター108、108’の一方のセクター108’の周面には、インパルスパレット112が設けられている。
【0047】
第1の可撓性構造113は、少なくとも1つのアンカー手段116、116’を有し、これは、可撓性手段115を介して、クロス材119によって接続されている2つの弧状体117、118と一体的にされており、可撓性手段115は、クロス材119の中心にて共振器105の仮想回転軸A
3を形成するように構成している。
【0048】
また、可撓性手段115は、少なくとも1つの基部120、120’を有し、これはそれぞれ、少なくとも1つの可撓性細長材121、121’、122、122’、123、123’、124、124’を介して、2つの弧状体117、118のそれぞれと、前記少なくとも1つのアンカー手段116、116’とを接続している。第2のプレート104と一体的なアンカー手段116、116’はそれぞれ、可撓性細長材121、121’、122、122’に接続している。最後に、
図8、9、10に示すように、第1の可撓性構造113は、さらに、少なくとも1つの止めメンバー126、127、126’、127’を有し、これは、共振器105の振幅を制限するように前記少なくとも1つのアンカー手段116、116’と接触するように構成している。
【0049】
第1の実施形態と同様に、共振器105の振幅の第1の極限位置において、可撓性細長材121〜123、可撓性細長材122’〜124’、アンカー手段116、116’及び止めメンバー126’、127は、接触しており、実質的に40°である共振器5に対する慣性メンバー111の固定の最大角度を与える。実際に、反対の回転方向に回転しているときには、共振器105の振幅の別の極限位置において、可撓性細長材121’〜123’、可撓性細長材122〜124、アンカー手段116、116’と、止めメンバー126、127’とが接触していることがわかる。第2の実施形態による慣性メンバー111の最大振幅は、実質的に80°である。
【0050】
好ましいことに、本発明によると、一体的な移動止め107は、一体的な第1及び第2の面内にて形成され、この第1の面には、側面を有しロック用石134を有する構造体133が設けられており、第2の面には、第2の可撓性構造135、ロック解除用ばね137及び止めメンバー136が設けられている。
【0051】
図9、11に示すように、第2の可撓性構造135は、少なくとも2つの固定手段138、140を有し、これは、可撓性手段139を介して、基部要素141と一体的となっており、この可撓性手段139は、基部要素141の中心にて移動止め107の仮想回転軸A
4を形成するように構成している。第2の実施形態において、可撓性手段139は、固定手段138、140と、基部要素141との間にそれぞれ、少なくとも1つの可撓性細長材142、144を有する。
【0052】
図9、11に明確に示しているように、ロック解除用ばね137は、基部要素141と一体的になっており、複雑な幾何学的構成で止めメンバー136と連係して、これによって、共振器105が第1の回転方向に回転しているときには、移動止め107の構造体133を拘束せずに留まらせ、共振器105が第2の回転方向に回転しているときには、共振器105の解放用パレット114との接触によって、移動止め107を一体的に動かす。
【0053】
より詳細には、慣性メンバー111が回転方向S
3に回転しているときには、
図11に示すように、解放用パレット114は、止めメンバー136を駆動せずにロック解除用ばね137のL字形の端に当接して、移動止め107の構造体133を自由にして留まらせる。しかし、慣性メンバー111が回転方向S
3とは反対の回転方向S
4に回転しているときには、解放用パレット114は、ロック解除用ばね137のL字形の端と当接し、そのL字形の端を止めメンバー136のU字形の空欠部に押し込み、止めメンバー136を駆動し、これによって、移動止め107の構造体133を回転させる。
【0054】
図8に示すように、2つのプレート102、104の一方は、エスケープ車109を受けるためのベアリング145を有する。これによって、エスケープ車109は、一体的な発振器アセンブリー103に対して理想的に位置合わせされる。また、前記2つのプレート102、104の一方は、少なくとも2つの固定手段146、147を有し、これは、発振器101を主板に取り付けるように構成している。
図7及び8に示す例では、前記少なくとも2つの固定手段146、147にはそれぞれ、プレート102の材料の拡張部分に形成された穴148、149が設けられている。
【0055】
好ましいことに、実施形態にかかわらず、本発明によると、発振器1、101は、さらに、移動止め7、107の運動の振幅を制限するためにロック解除防止手段151を有することができる。
図6〜11の第2の実施形態に示した例(これに制限されない)では、ロック解除防止手段151は、例えば、安全アーム152を有し、これは、移動止め107の構造体133と一体的にされており、ロック解除が望まれない場合にエスケープ車109に対して移動止め107をロックするように構成している。
【0056】
好ましいことに、実施形態にかかわらず、本発明によると、発振器1、101は、さらに、予応力付与手段161を有することができ、これは、第2の可撓性構造35、135が応力を与えられる状態にするように構成し、これによって、止めメンバーに対して支持力が常に維持される。また、第2の可撓性構造35、135は、リターントルクを与える角度的なスチフネスを有する。これによって、エスケープ車109に対する引き(ドロー)をなくすことができる。
【0057】
図6〜11の第2の実施形態に示した例(これに制限されない)において、予応力付与手段161は、エキセントリックカム163を有し、これは、第2の可撓性構造135に対する応力を選択的に変更するように、移動止め107の構造体133を動かすように構成する。
【0058】
以下、
図1〜11を参照して、発振器1、101の動作を説明する。発振器1、101が、固定システムに支援されて計時器用ムーブメントなどに設けられる。この固定システムは、前記固定手段146、147を有することができる。好ましいことに、主板に、発振器1、101を設けて、例えば、歯車列がバレルによって応力が与えられる状態にされ、エスケープ車109と噛み合うようにすることができる。したがって、主板にはめられたベアリングと、ベアリング45、145との間で、エスケープ車109が回転することが明らかである。
【0059】
共振器5、105の振幅が小さいことを考えると、単に振られることによって発振器1、101を始動させることができる。しかし、最終的な計時器の構成に依存して、発振器1、101を手動で始動させることが必要であることがある。例えば、エキセントリックカム163のアーバーをユーザーが手動でシフトして、ロック用石34、134を一時的に傾斜させ、バレルからのエネルギーを、エスケープ車9、109を介して、慣性メンバー11、111に与えることができる。
【0060】
図6、11に示すように慣性メンバー11、111の第1の回転方向S
1、S
3において、解放用パレット14、114は、方向S
1、S
3に回転している解放用パレット14、114の傾斜に起因して止めメンバー36、136から徐々に離れるロック解除用ばね37、137のL字形の端に当接する。したがって、方向S
1、S
3に回転しているときに、振動が弱められること、すなわち、共振器5、105がエネルギーを一切受けないことを理解できるであろう。
【0061】
結果的に、回転方向S
1、S
3に回転しているときには、慣性メンバー11、111は、移動止め7、107の構造体33、133を実質的に不動のまま留まらせる。したがって、基部要素41、141に対してばね37、137をその安静位置に戻しても、ロック用石34、134によってエスケープ車9、109がロック解除しない。これは、移動止め7、107の第2の可撓性構造35、135に起因している。
【0062】
慣性メンバー11、111は、共振器5、105の第1の可撓性構造13、113、そして可能性としては、止めメンバー26、27、126、127’が、その運動を制限している場合、共振器5、105の振幅の第1の極限位置に到達する。そして、共振器5、105の第1の可撓性構造13、113は、反対方向S
2、S
4に回転しているときには、再び離れることを慣性メンバー11、111に強いる。
【0063】
慣性メンバー11、111が回転方向S
2、S
4に回転しているときには、解放用パレット14、114は、方向S
2、S
4で動く解放用パレット14、114の肩部に起因して、ロック解除用ばね37、137のL字形の端に正面当接する。なお、解放用パレット14、114が通過する瞬間では、解放用パレット14、114は、ロック解除用ばね37、137のL字形の端の面と実質的に平行な接触面を与える。このことによって、このL字形の端が、移動止め7、107の止めメンバー36、136のU字形の空欠部内に理想的に導かれることが可能になる。止めメンバー36、136が移動止め7、107の構造体33、133と一体的にされているので、解放用パレット14、114は、第2の可撓性構造35、135に逆らって移動止め7、107を駆動し、これによって、移動止め7、107の構造体33、133を回転させる。
【0064】
移動止め7、107の構造体33、133が基部要素41、141に対して回転することによって、ロック用石34、134のスリッピングのロック解除によるエスケープ車9、109の歯の解放が可能になり、これによって、エスケープ車9、109が反動なしで回転することが可能になる。実際に、本発明によると、解放用パレット14、114に対するエスケープ車9、109の引きがないことが望まれるので、解放用パレット14、114は、直線状ではなく所定の半径で曲がっていることが好ましい。この半径は、典型的には、移動止め7、107の仮想軸A
2、A
4を中心としている。
【0065】
本発明によると、エスケープ車9、109をロック用石34、134から解放するのためのロック解除の角度は、第2の可撓性構造35、135によって定まる移動止め7、107の構造体33、133の合計角度の実質的に半分である。そして、解放されたエスケープ車9、109は、慣性メンバー11、111のインパルスパレット12、112に追いついて、バレルからのエネルギーの一部を共振器5、105に供給して、共振器5、105の振動を維持することができる。同時に、エスケープ車9、109の回転によって、バレルからのエネルギーを供給する歯車列によって時間をカウントして、共振器5、105の振動を表示デバイスに表示することが可能になる。
【0066】
好ましいことに、本発明によると、第2の可撓性構造35、135は、解放用パレット14、114を介して、エスケープ車9、109の1つの歯のみを解放するように構成する。通常、この調整は、製造時及び組み立て時のばらつきによって困難となっている。好ましいことに、本発明によると、製造と位置が非常に正確であるので、単に、エスケープ車9、109の幾何学的構成によって、そして可能性としては、予応力付与手段161の調整によって、ロック解除を統制することができる。
【0067】
慣性メンバー11、111は、共振器5、105の第1の可撓性構造13、113、そして可能性としては、止めメンバー26、27、126’、127がその運動を制限する場合に、共振器5、105の振幅の第2の極限位置に到達する。そして、共振器5、105の第1の可撓性構造13、113は、反対方向S
1、S
3に再び離れることを慣性メンバー11、111に強いる。そして、共振器5、105は、1回の完全な振動を完了し、上で説明した運動を繰り返す。
【0068】
したがって、好ましいことに、本発明によると、発振器1、101は、ほとんど一体的にされているので、組み立てを必要とする部品がほとんどないことを理解できるであろう。したがって、本発明によると、2つ(一体的な発振器アセンブリー3、103及びエスケープ車9、109)又は3つ(一体的な共振器5、105、一体的な移動止め7、107及びエスケープ車9、109)の部品のみが、計時器用ムーブメントにおける組み立てが必要となることを理解できるであろう。これによって、部品の数が2つ又は3つに制限されているので、これらの部品の要素どうしを互いに対して完全に位置合わせすることが可能になる。
【0069】
また、発振器1、101は、非常にコンパクトである。これは、モノリシックな連接構造とも呼ばれる可撓性構造又はベアリングの使用に起因している。これによって、古典的なベアリング(例、穴の開いた石)及び回転軸を用いることをなくなり、必要な厚みが小さくなる。また、好ましいことに、既知の移動止めシステムの主要な課題、すなわち、トリッピング、を意識的になくすために可撓性構造が使用されている。結果的に、本発明の発振器1、101は、腕時計に適用することを考えることができるように、十分にコンパクトであり、信頼できる。
【0070】
もちろん、本発明は、図示した例に制限されず、当業者が思い浮かべる様々な変種及び変更が可能である。具体的には、所望の用途に応じて、共振器5、105及び/又は移動止め7、107を変更することができる。特に、それらの幾何学的構成(慣性メンバー、移動止め)ないしそれらの可撓性構造について、変更することができる。
【0071】
また、ロック解除防止手段151は、安全アーム152に限定されず、例えば、ロック解除が望まれない場合に移動止め7、107を阻止するように構成する慣性に対抗する手段を有することができる。
【0072】
また、発振器1、101とその保全システムとの間に緩衝手段を設けて、計時器が受けるあらゆる衝撃の伝達を防ぐことができる。また、2つの実施形態どうしを互いに組み合わせることができることも明白である。したがって、本発明の範囲から逸脱せずに、第1の実施形態の共振器5が第2の実施形態の移動止め107と連係したり、第2の実施形態の予応力付与手段161が第1の実施形態に組み入れられたりすることが可能である。
【0073】
最後に、エスケープ車9、109が慣性メンバー11、111のインパルスパレット12、112に追いつく時間を短くするために、エスケープ車9、109が、歯と、ムーブメントの歯車列に接続されたピニオンとの間で弾性を有することができる。このようなエスケープ車は、例えば(これに制限されない)、欧州特許EP2455821に記載されているエネルギー伝達車セットについての実施形態のいずれかであることができる。この欧州特許EP2455821を参照によって本明細書に組み入れる。