(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表側シートと、その裏側に配された裏側シートと、表側シート及び裏側シートの接合部により周りを囲まれ、かつ表側シート及び裏側シートが接合されていない多数のセルと、このセル内に含まれた、高吸収性ポリマー粒子を含む粉粒体とを有する吸収体を備えた、吸収性物品において;
前記接合部は、隣接するセル内の高吸収性ポリマー粒子の膨張力により剥離可能な弱接合部と、隣接するセル内の高吸収性ポリマー粒子の膨張力により剥離しない強接合部とを含み、
前記弱接合部を介して隣接するセル同士は、当該弱接合部の剥離により合体し、より大きな単一のセルに拡大可能であり、
少なくとも股間部の幅方向中間部では、前記接合部が一様なパターンで設けられ、かつ前記吸収体の幅方向中央部から幅方向両側に向かうにつれて前記接合部に占める前記弱接合部の数的比率が段階的又は連続的に増加している、
ことを特徴とする吸収性物品。
少なくとも股間部の幅方向中間部では、前記高吸収性ポリマー粒子の単位面積当たりの含有量が、前記吸収体の幅方向中央部から幅方向両側に向かうにつれて段階的又は連続的に増加している、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
少なくとも股間部の幅方向中間部では、前記強接合部によって周りを囲まれた、セル間に位置する接合部が弱接合部のみである複数のセルの集合又は単一のセルからなる最拡大区画が、前後方向及び幅方向に並んでおり、かつそれら最拡大区画は、前記吸収体の幅方向両側のものほど前後方向長さが長い、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、セル吸収体を用いつつ横漏れ防止を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明の代表的な態様は以下のとおりである。
【0008】
<第1の態様>
表側シートと、その裏側に配された裏側シートと、表側シート及び裏側シートの接合部により周りを囲まれ、かつ表側シート及び裏側シートが接合されていない多数のセルと、このセル内に含まれた、高吸収性ポリマー粒子を含む粉粒体とを有する吸収体を備えた、吸収性物品において;
前記接合部は、隣接するセル内の高吸収性ポリマー粒子の膨張力により剥離可能な弱接合部と、隣接するセル内の高吸収性ポリマー粒子の膨張力により剥離しない強接合部とを含み、
前記弱接合部を介して隣接するセル同士は、当該弱接合部の剥離により合体し、より大きな単一のセルに拡大可能であり、
少なくとも股間部の幅方向中間部では、前記接合部が一様なパターンで設けられ、かつ前記吸収体の幅方向中央部から幅方向両側に向かうにつれて前記接合部に占める前記弱接合部の数的比率が段階的又は連続的に増加している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
本発明では、排泄液の吸収時、高吸収性ポリマー粒子の膨張により弱接合部は剥離するが、強接合部は剥離しないため、弱接合部の剥離により隣接するセル同士が合体していくものの、合体セルの大きさ、高さは強接合部により制限される。よって、接合部が一様なパターンで設けられる場合、弱接合部の数的比率が高い部分ほど(この場合、強接合部の数的比率が低いのと同義)、排泄液の吸収時、合体セルが大きく高く盛り上がることとなる。本発明はこれを利用するものであり、排泄液の吸収時には吸収体の幅方向両側に向かうほど大きく、高く盛り上がった合体セルが形成され、この合体セルが幅方向に移動する尿を遮断する遮断体となり、横漏れが防止されるものである。また、高吸収性ポリマー粒子の吸収膨張が吸収体の幅方向中央部から幅方向両側に向かって順次進行し、幅方向中央側から順に遮断体が形成されるため、排泄液が前後方向に拡散しやすくなり、効率よく吸収体全体を使用できるという利点もある。
【0010】
<第2の態様>
少なくとも股間部の幅方向中間部では、
前記接合部は多角形が隙間なく並ぶパターンに沿って設けられており、
前記セルは、前記接合部の多角形の部分により周りを囲まれた多角形をなしており、かつ
前記セルにおける前記接合部が位置する辺のうち、幅方向に対し最も平行に近い辺が、隣接するセルにおける幅方向に対し最も平行に近い辺と直線的につながっていない、
第1の態様の吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
多角形が隙間なく並ぶパターンに沿って接合部が設けられている場合、排泄液はこの接合部のパターンに沿って流れやすくなるため、上記のように接合部のパターンを、幅方向に長く直線的につながらないパターンとすることによって、より横漏れ防止性に優れたものとなる。
【0012】
<第3の態様>
少なくとも股間部の幅方向中間部では、前記高吸収性ポリマー粒子の単位面積当たりの含有量が、前記吸収体の幅方向中央部から幅方向両側に向かうにつれて段階的又は連続的に増加している、
第1又は2の態様の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
高吸収性ポリマー粒子の単位面積当たりの含有量についても、吸収体の前後端から前後方向中央に向かうにつれて多くなっていると、排泄液の吸収時に、吸収体の幅方向両側に向かうほど大きく、高く盛り上がった合体セルを形成しやすくなるため特に好ましい。
【0014】
<第4の態様>
少なくとも股間部の幅方向中間部では、前記強接合部によって周りを囲まれた、セル間に位置する接合部が弱接合部のみである複数のセルの集合又は単一のセルからなる最拡大区画が、前後方向及び幅方向に並んでおり、かつそれら最拡大区画は、前記吸収体の幅方向両側のものほど前後方向長さが長い、
第1〜3のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
本第4の態様では、排泄液の吸収時、高吸収性ポリマー粒子の膨張により弱接合部が剥離してセルが合体していくとしても、最拡大区画以上には大きくならない。よって、吸収体の少なくとも股間部において、幅方向両側のものほど前後方向長さが長くなるように最拡大区画を設けると、排泄液の吸収時には吸収体の幅方向両側に向かうほど大きく、高く盛り上がった合体セルが形成され、この合体セルが幅方向に移動する尿を遮断する遮断体となり、横漏れが防止されるものである。
また、本第2の態様では、排泄液の吸収時、膨張した高吸収性ポリマー粒子のゲル化物は最拡大区画外には移動できないため、ゲル化した高吸収性ポリマー粒子の前後方向移動により吸収体の形状が崩れるのを効果的に防止できるという利点もある。
【0016】
<第5の態様>
少なくとも股間部の幅方向中間部では、
前記接合部は、幅方向に沿う対辺を有する多角形が隙間なく並ぶパターンに沿って設けられており、
前記セルは、前記接合部の多角形の部分により周りを囲まれた多角形をなしており、かつ
前記複数のセルの集合からなる最拡大区画では、前記セルにおける前記接合部が位置する辺のうち、幅方向に平行な辺の位置にのみ前記弱接合部が設けられている、
第4の態様の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
本第5の態様では、セルが幅方向には合体せず、前後方向にのみ合体して前後方向に長い遮断体が形成されるため、前後方向の拡散性が向上し、より横漏れ防止性に優れたものとなる。
【0018】
<第6の態様>
前記吸収体における前後方向の中間における両側部のセルは、他のセルよりも高吸収性ポリマー粒子の単位面積当たりの内包量が少ない空セルであり、
これら両側部の空セルの間に位置する領域では、前記接合部が一様なパターンで設けられ、かつ当該領域の幅方向中央部から幅方向両側に向かうにつれて前記接合部に占める前記弱接合部の数的比率が段階的又は連続的に増加している、
第1〜5のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
例えば、粉砕パルプ等の親水性短繊維に高吸収性ポリマー粒子を混合し綿状に積繊した吸収体では、脚周りに沿うように前後方向の中間部が幅方向にくびれた形状に形成することが一般的であるが、セル吸収体においても、前後方向の中間における幅方向の両側部のセルを空セルとすることにより、当該部分は吸収後も膨張が少ないものとなり、したがって吸収後においても吸収体が脚周りにフィットする形状となる。
なお、「高吸収性ポリマー粒子の単位面積当たりの内包量が少な」いことには、高吸収性ポリマー粒子を内包しないことも含まれる(以下、同じ)。
しかし、単にこのような空セルを設けると、横漏れしやすくなることは避けられない。これに対して、上述のように、両側部の空セルの間に位置する領域では、接合部が一様なパターンで設けられ、かつ当該領域の幅方向中央部から幅方向両側に向かうにつれて接合部に占める弱接合部の数的比率が段階的又は連続的に増加していると、排泄液の吸収時には、両側部の空セルは膨張が少なく脚周りにフィットしやすいものでありながら、それらの間に位置する領域で、幅方向両側に向かうほど大きく、高く盛り上がった合体セルが形成され、この合体セルが幅方向に移動する尿を遮断する遮断体となり、横漏れが防止されるため好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、セル吸収体を用いつつ横漏れ防止性に優れるようになる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
<吸収性物品の例>
図1〜
図6はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示しており、図中の符号Xはファスニングテープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示している。各構成部材は、以下に述べる固定又は接合部分以外も、必要に応じて公知のおむつと同様に固定又は接合される。これらの固定又は接合のための手段としては、ホットメルト接着剤や溶着(加熱溶着、超音波溶着)を適宜選択することができる。
【0023】
このテープタイプ使い捨ておむつは、透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収体50が介在された基本構造を有しており、吸収体50の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、かつ吸収体50を有しない部分である腹側エンドフラップ部EF及び背側エンドフラップ部EFを有するとともに、吸収体50の側縁よりも側方に延出する一対のサイドフラップ部SFを有している。背側部分Bにおけるサイドフラップ部SFにはファスニングテープ13がそれぞれ設けられており、おむつの装着に際しては、背側部分Bのサイドフラップ部SFを腹側部分Fのサイドフラップ部SFの外側に重ねた状態で、ファスニングテープ13を腹側部分F外面の適所に係止する。
【0024】
また、このテープタイプ使い捨ておむつでは、吸収性本体部10並びに各サイドフラップ部SFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収体50を含む領域においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収体50、中間シート40、及びトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30及び液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収体50よりも前後方向LD及び幅方向WDにおいて若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収体50の側縁よりはみ出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収体50の側縁よりはみ出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより接合されている。また液不透過性シート11は、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0025】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部立体ギャザー60が設けられており、この側部立体ギャザー60を形成するギャザーシート62が、トップシート30の両側部上から各サイドフラップ部SFの内面までの範囲に固着されている。
【0026】
以下、各部の詳細について順に説明する。
(外装シート)
外装シート12は製品外面を構成するシートである。外装シート12は、両側部における前後方向LDの中央部が括れた形状とされており、ここが着用者の脚を囲む部位となる。外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m
2、特に15〜30g/m
2のものが望ましい。外装シート12は省略することもでき、その場合には液不透過性シート11を外装シート12と同形状として、製品外面を構成することができる。
【0027】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、この他にも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0028】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有する有孔又は無孔の不織布を用いることができる。不織布の構成繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0029】
(中間シート)
中間シート40は、トップシート30を透過した排泄液を吸収体50側へ速やかに移動させるため、及び逆戻りを防ぐために、トップシート30の裏面に接合されているものである。中間シート40及びトップシート30間の接合は、ホットメルト接着剤を用いる他、ヒートエンボスや超音波溶着を用いることもできる。中間シート40としては、不織布を用いる他、多数の透過孔を有する樹脂フィルムを用いることもできる。不織布としては、トップシート30の項で説明したものと同様の素材を用いることができるが、トップシート30より親水性が高いものや、繊維密度が高いものが、トップシート30から中間シート40への液の移動特性に優れるため好ましい。
【0030】
図示の形態の中間シート40は、吸収体50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向LDの長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収体50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0031】
(側部立体ギャザー)
トップシート30上における排泄物の横方向移動を阻止し、横漏れを防止するために、幅方向WDにおける製品の両側の内面から突出(起立)する側部立体ギャザー60を設けるのは好ましい。
【0032】
この側部立体ギャザー60は、ギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向LDに沿って伸長状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、
図1及び
図3に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0033】
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向WDの固着始端を有し、この固着始端から幅方向WDの外側の部分は、液不透過性シート11の側部および当該部分に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。
【0034】
脚周りにおいては、側部立体ギャザー60の固着始端より幅方向WDの内側は、製品前後方向LDの両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性伸縮部材63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして弾性伸縮部材63の収縮力が作用するので、弾性伸縮部材63の収縮力により側部立体ギャザー60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0035】
図示形態と異なり、ギャザーシート62の幅方向WDの内側の部分における前後方向LDの両端部を、幅方向WDの外側の部分から内側に延在する基端側部分と、この基端側部分の幅方向WDの中央側の端縁から身体側に折り返され、幅方向WDの外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0036】
(平面ギャザー)
各サイドフラップ部SFには、
図1〜
図3に示すように、ギャザーシート62の固着部分のうち固着始端近傍の幅方向WDの外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に、糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64が前後方向LDに沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップ部SFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。脚周り弾性伸縮部材64はサイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装シート12との間に配置することもできる。脚周り弾性伸縮部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
【0037】
(ファスニングテープ)
図1、
図2及び
図6に示されるように、ファスニングテープ13は、おむつの側部に固定されたテープ取付部13C、及びこのテープ取付部13Cから突出するテープ本体部13Bをなすシート基材と、このシート基材におけるテープ本体部13Bの幅方向WDの中間部に設けられた、腹側に対する係止部13Aとを有し、この係止部13Aより先端側が摘み部とされたものである。ファスニングテープ13のテープ取付部13Cは、サイドフラップ部における内側層をなすギャザーシート62及び外側層をなす外装シート12間に挟まれ、かつホットメルト接着剤により両シート62,12に接着されている。また、係止部13Aはシート基材に接着剤により剥離不能に接合されている。
【0038】
係止部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)が好適である。フック材は、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、レ字状、J字状、マッシュルーム状、T字状、ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。もちろん、ファスニングテープ13の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0039】
また、テープ取付部からテープ本体部までを形成するシート基材としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布等の各種不織布の他、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができる。
【0040】
(ターゲットシート)
腹側部分Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所には、係止を容易にするためのターゲット有するターゲットシート12Tを設けるのが好ましい。ターゲットシート12Tは、係止部がフック材13Aの場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート基材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。また、腹側部分Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニングテープ13の係止部がフック材13Aの場合には、ターゲットシート12Tを省略し、フック材13Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。この場合、ターゲットシート12Tを外装シート12と液不透過性シート11との間に設けてもよい。
【0041】
(吸収体)
吸収体50は、排泄物の液分を吸収保持する部分である。吸収体50は、その表裏少なくとも一方側の部材に対してホットメルト接着剤等の接着剤を介して接着することができる。
【0042】
図7に拡大して示すように、吸収体50は、表側シート51と、その裏側に配された裏側シート52と、表側シート51及び裏側シート52の接合部54により周りを囲まれ、かつ表側シート51及び裏側シート52が接合されていないセル(小室)55と、このセル55内に含まれた、高吸収性ポリマー粒子53とを有するセル吸収体50である、このように、接合部54により周囲全体を囲まれた多数のセル55に高吸収性ポリマー粒子53を分配保持させることにより、吸収体50における高吸収性ポリマー粒子53の偏在を防止できる。セル吸収体50は、図示しない包装シートにより包装することができる。この場合、一枚の包装シートを吸収体50の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付ける他、2枚の包装シートで表裏両側から挟むようにして包装することができる。包装シートとしては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。包装シートに不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m
2、特に10〜30g/m
2のものが望ましい。包装シートでセル吸収体50を包装する場合、セル吸収体の表裏いずれか一方側にパルプ繊維を積繊させ、これらをひとまとめで包装シートで包装することもできる。
【0043】
表側シート51は、液透過性素材であっても、液不透過性素材であっても良いが、図示形態のようにトップシート30側に位置する場合には液透過性素材であることが好ましい。表側シート51は、トップシート30と同様に、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシートを用いることができる。表側シート51に不織布を用いる場合、その構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができるが、熱加工性に優れる点で熱可塑性樹脂の繊維が好適である。不織布の繊維結合法は特に限定されないが、高吸収性ポリマー粒子53の脱落を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニ一ドルパンチ法のように繊維密度が高くなる結合法が好ましい。多孔性プラスチックシートを用いる場合、その開孔径は、高吸収性ポリマー粒子53の脱落を防止するため、高吸収性ポリマー粒子53の外形より小さくするのが好ましい。また、表側シート51の素材が疎水性の場合には、親水剤を含有させることもできる。
【0044】
製造時の高吸収性ポリマー粒子53の配置を容易にするため、及び吸収膨張後の容積確保のために、表側シート51における各セル55を構成する部分には、裏側から表側に窪む窪み51cが形成されていると好ましいが、形成されていなくてもよい。
【0045】
裏側シート52としては、表側シート51と同様の素材とすることもできるが、表側シート51を液透過性素材により構成する場合には、裏側シート52に液不透過性素材を採用することもできる。裏側シート52に用いうる液不透過性素材としては、液不透過性シート11の項で述べた素材の中から適宜選択して用いることができる。図示しないが、表側シート51及び裏側シート52は、一枚の素材が二つに折り重ねられた一方の層及び他方の層とすることもできる。
【0046】
高吸収性ポリマー粒子53は表側シート51及び裏側シート52に対して非固定とし、自由に移動可能とする他、表側シート51及び裏側シート52に接着又は粘着させることもできる。また、高吸収性ポリマー粒子53はある程度塊状化していても良い。
【0047】
高吸収性ポリマー粒子53としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子の粒径は特に限定されないが、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0048】
高吸収性ポリマー粒子53の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子53としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子53の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0049】
高吸収性ポリマー粒子53としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体50内に供給された液が吸収体50外に戻り出てしまういわゆる逆戻りを発生しやすくなる。
【0050】
また、高吸収性ポリマー粒子53としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体50とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0051】
高吸収性ポリマー粒子53の目付け量は、当該吸収体50の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m
2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m
2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m
2を超えると、効果が飽和する。
【0052】
セル55の平面形状は適宜定めることができ、
図8、
図11、
図16等に示すように、六角形、菱形、正方形、長方形、円形、楕円形等とすることができるが、より密な配置とするために多角形とすることが望ましく、図示形態のように隙間なく配列することが望ましい。なお、
図8に示す形態は正六角形セル55のハニカム状配列を採用しており、
図11に示す形態は正方形セル55の千鳥状配列を採用している。セル55は、同一形状及び同一寸法の物を配列する他、形状及び寸法の少なくとも一方が異なる複数種のセル55を組み合わせて配列することもできる。なお、用語「正六角形」は、表側シート51及び裏側シート52が製造時に伸び縮みする影響で前後方向LDに±5%まで伸縮変形したものも含む。
【0053】
セル55(つまり高吸収性ポリマー粒子53の集合部も同様)の平面配列は適宜定めることができるが、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、
図16(a)に示すような斜方格子状や、
図16(b)に示すような六角格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、
図16(c)に示すような正方格子状、
図16(d)に示すような矩形格子状、
図16(e)に示すような平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが伸縮方向に対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、セル55の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。
【0054】
各セル55の寸法は適宜定めることができ、例えば前後方向LDの長さ55Lは8〜30mm程度とすることができ、また幅方向WDの長さ55Wは10〜50mm程度とすることができる。各セル55の面積は65〜1650mm
2程度とすることができる。
【0055】
表側シート51及び裏側シート52を接合する接合部54は、超音波溶着やヒートシールのように表側シート51及び裏側シート52の溶着により接合されていることが望ましいが、ホットメルト接着剤を介して接合されていても良い。
【0056】
表側シート51及び裏側シート52の接合部54は、各セル55を取り囲むように配置され、隣接するセル間の境界となる限り、図示形態のように点線状(各セル55を取り囲む方向に断続的)に形成する他、連続線状に形成することもできる。接合部54を断続的に形成する場合、セル55を取り囲む方向における接合部54の間には、高吸収性ポリマー粒子53が存在しないか又は存在するとしてもセル55内よりも少ないものとされる。
【0057】
図10にも示すように、接合部54は、隣接するセル55内の高吸収性ポリマー粒子53の膨張力により剥離可能な弱接合部54bと、隣接するセル55内の高吸収性ポリマー粒子53の膨張力により剥離しない強接合部54aとを含む。弱接合部54bを挟んで隣接するセル55同士は、当該セル55内の高吸収性ポリマー粒子53の吸収膨張圧により剥離して合体して一つの大きなセル55に拡大する。一方、強接合部54aはその両側のセル55が吸収膨張しても剥離しない部分であるため、合体セル55の大きさや高さを制限する機能を果たす。
【0058】
また、接合部54はそれが特定の方向に続くことにより拡散性を向上させたり、高吸収性ポリマー粒子53のゲル化物の流動を防止したり、表面側の接触面積を低減したりする等の効果を有し、強接合部54aが続く部分はその効果が持続する。このため、接合部54のパターンが幅方向に長く直線的に延びていると、横漏れを助長するおそれがある。よって、図示形態のように多角形が隙間なく並ぶパターンに沿って接合部が設けられている場合、セルにおける接合部が位置する辺のうち、幅方向に対し最も平行に近い辺が、隣接するセルにおける幅方向に対し最も平行に近い辺と直線的につながらないパターンで、接合部を設けると、横漏れ防止性に優れたものとなるため好ましい。
【0059】
なお、
図8、
図9、
図12〜
図14では、強接合部54aが太い点線で表現され、弱接合部54bは細い点線で表現されている。
【0060】
幅方向WDの最も外側に位置する接合部54は、これが剥離すると吸収体50の側方に高吸収性ポリマー粒子53又はそのゲル化物が漏れ出るおそれがあるため強接合部54aとすることが望ましい。同様の観点から、表側シート51及び裏側シート52はセル55形成領域よりも幅方向WDの外側にある程度延在させ、この延在部分に補強のために縁部接合部54cを施しておくのは好ましい。
【0061】
接合強度の差異は、接合部54の面積を変化させることにより形成するのが簡単でよいが、これに限定されず、例えば接合部54をホットメルト接着剤により形成する場合にはホットメルト接着剤の種類を部位により異ならしめるといった手法を採用することもできる。特に、表側シート51及び裏側シート52を溶着することにより接合部54を形成する場合、弱接合部54bは、接合部54を点線状にして点間隔54Dを広くすることのみでも形成できるが、接合部54は隣接するセル55同士の境界となる部分であるため、点間隔54Dが広くなりすぎると隣接するセル55同士の境界に隙間が多くなり、高吸収性ポリマー粒子53が移動しやすくなる。よって、接合部54の線幅54Wの広狭と、点間隔54Dの広狭とを組み合わせて点線状の弱接合部54bを形成すると、その弱接合部54b部分は隙間が少ない割には剥離しやすいものとなる。
【0062】
表側シート51及び裏側シート52を接合する接合部54の寸法は適宜定めることができ、例えば線幅(セル55を取り囲む方向と直交する方向の寸法)54Wは0.6〜8.0mm程度とすることができる。また、点線状(セル55を取り囲む方向に断続的)に接合部54を形成する場合、セル55を取り囲む方向における接合部54の長さ54Lは0.6〜8.0mm程度、点間隔54Dは0.8〜10.0mm程度とすることが好ましい。特に、強接合部54aの場合には、線幅54Wは1.0〜4.0mm程度、接合部54の長さ54Lは1.5〜4.0mm程度、点間隔54Dは0.8〜2.5mm程度とすることが好ましい。また、弱接合部54bの場合には、線幅54Wは0.6〜3.5mm程度、接合部54の長さ54Lは0.6〜2.5mm程度、点間隔54Dは1.0〜4.0mm程度とすることが好ましい。
【0063】
弱接合部54bを剥離可能とするために、弱接合部54bに隣接するセル55の容積よりも当該セル55内の高吸収性ポリマー粒子53の飽和吸収時の体積が十分に大きくなるように、各セル55内に配置される高吸収性ポリマー粒子53の種類及び量を定めることができる。また、強接合部54aを剥離しないものとするために、弱接合部54bの剥離により合体可能なセル55の合体後の容積よりも、当該合体可能なセル55に含まれる高吸収性ポリマー粒子53の飽和吸収時の体積が小さくなるように、各セル55内に配置される高吸収性ポリマー粒子53の種類及び量を定めることができる。
【0064】
接合部54を連続線状に形成する場合における接合部54の幅、並びに接合部54を点線状に形成する場合における線幅54Wは、セル55を取り囲む方向に一定とする他、変化させることもできる。また、接合部54を点線状に形成する場合における各接合部54の形状は適宜定めることができ、すべて同一とする他、部位に応じて異なる形状とすることもできる。特に各セル55の形状を多角形とする場合には、各辺の中間位置及び各頂点位置の少なくとも一方には接合部54を設けるのが好ましい。また、強接合部54aの場合は各頂点位置にも設けることが好ましいが、弱接合部54bの場合は各頂点位置には設けない方が弱接合部54bが剥離しやすくなり、セル55の合体が円滑に進行するため好ましい。各頂点位置に接合部54を設ける場合、その形状は各辺の方向に突出する放射状(星状)の形状をなしていることが望ましい。
【0065】
特徴的には、
図8及び
図11に示すように、セル吸収体50の前後方向LD全体が横漏れ防止領域となっており、この横漏れ防止領域では、接合部54が一様なパターンで設けられており、強接合部54aによって周りを囲まれた、セル55間に位置する接合部54が弱接合部54bのみである複数のセル55の集合又は単一のセル55からなる最拡大区画57が、前後方向LD及び幅方向WDに並んでおり、かつそれら最拡大区画57は、吸収体50の幅方向WD両側のものほど前後方向長さ58が長くなっている。
【0066】
前述のように、排泄液の吸収時、高吸収性ポリマー粒子53の膨張により弱接合部54bは剥離するが、強接合部54aは剥離しないため、弱接合部54bの剥離により隣接するセル55同士が合体していく。例えば
図8及び
図11に示す形態において、位置Z1に尿が排泄されたと仮定すると、そこを中心に
図9及び
図12に示すように尿が周囲に拡散しつつ、その尿を各位置の高吸収性ポリマー粒子53が吸収していく。このとき、
図10にも示すように、内部の高吸収性ポリマー粒子53の膨張圧が高まったセル55については、その周囲の弱接合部54bが膨張圧に抗しきれずに剥離し、隣接セル55と合体する。この合体は、高吸収性ポリマー粒子53の吸収膨張が弱接合部54bを剥離しうる限り続き、周囲に強接合部54aを有するセル55まで進行可能となる。つまり、高吸収性ポリマー粒子53の膨張により弱接合部54bが剥離してセル55が合体していくとしても、最拡大区画57以上には大きくならない。よって、横漏れ防止領域において幅方向WD両側のものほど前後方向長さ58が長くなるように最拡大区画57を設けると、排泄液の吸収時には吸収体50の幅方向WD両側に向かうほど大きく、高く盛り上がった合体セル55が形成され、この合体セル55が幅方向WDに移動する尿を遮断する遮断体となり、横漏れが防止される。
図9及び
図12は、領域Z2内の弱接合部54bのみがすべて剥離し、最拡大区画57までセルが合体した状態を示している。また、排泄液の吸収時、高吸収性ポリマー粒子53の吸収膨張が吸収体50の幅方向WD中央部から幅方向WD両側に向かって順次進行し、幅方向WD中央側から順に遮断体が形成されるため、排泄液が前後方向LDに拡散しやすくなり、効率よく吸収体50全体を使用できるという利点や、膨張した高吸収性ポリマー粒子53のゲル化物は最拡大区画57外には移動できないため、ゲル化した高吸収性ポリマー粒子53の前後方向LD移動により吸収体50の形状が崩れるのを効果的に防止できるという利点もある。
【0067】
横漏れ防止領域における最拡大区画57は、図示形態のように単一セル55からなる最拡大区画57と複数の合体可能なセル55の集合からなる最拡大区画57の両方を含んでいても、また、単一セル55からなる最拡大区画57を含まず、複数の合体可能なセル55の集合からなる最拡大区画57のみを含む形態とすることもできる。
【0068】
横漏れ防止領域における最拡大区画57は、
図8に示す形態のように、吸収体50の幅方向WDの両側のものほど幅方向WDの長さも長くなる形態とする他、
図11に示す形態のように、吸収体50の幅方向WDの位置によって幅方向WDの長さがほとんど変化しない形態とすることもできる。すなわち、
図8に示す吸収体50では、同一形状の多角形セル55が千鳥状に隙間なく配列され、幅方向WD中央部を含む第1の幅方向範囲W1には単一セル55からなる最拡大区画57のみが前後方向LD及び幅方向WDに配列され、その幅方向WD両側に隣接する第2の幅方向範囲W2には、複数の方向に並ぶセル55の集合(図示例では3セル55)からなる最拡大区画57が前後方向LDに並んでおり、最も幅方向WD外側に位置する第3の幅方向範囲W3には第2の幅方向WD範囲の最拡大区画57よりも多い数(図示例では5又は7セル55)のセル55が複数の方向に並ぶセル55の集合からなる最拡大区画57が前後方向LDに並んでいる。よって、
図8に示す形態の吸収体50では、排泄液の吸収時、
図9に示すように、吸収体50の幅方向WDの両側に向かうほど前後方向LD及び幅方向WDの両方に長く、高く盛り上がった合体セル55が形成され、この合体セル55が幅方向WDに移動する尿を遮断する遮断体となり、横漏れが防止される。
【0069】
これに対して、
図11に示す吸収体50では、幅方向WD中央線について線対称なセル55配置となっており、幅方向WD中央線の左右各側には同一形状の矩形セル55が千鳥状に隙間なく配列されている。そして、幅方向WD中央部を含む第1の幅方向範囲W1は単一セル55からなる最拡大区画57のみが前後方向LD及び幅方向WDに並び、その幅方向WD両側に隣接する第2の幅方向範囲W2には、前後方向LDに並ぶセル55の集合(図示例では2セル55)からなる最拡大区画57が前後方向LD及び幅方向WDに並び、最も幅方向WD外側に位置する第3の幅方向範囲W3には、第2の幅方向範囲W2の最拡大区画57よりも多い数のセル55が前後方向LDに並ぶセル55の集合(図示例では3セル55)からなる最拡大区画57が前後方向LDに並んでいる。この場合、第2の幅方向範囲W2及び第3の幅方向範囲W3における最拡大区画57では、セル55の幅方向WDに平行な辺の位置にのみ弱接合部54bが設けられる。そして、
図11に示す形態の吸収体50では、排泄液の吸収時、吸収体50の幅方向WD両側に向かうほど前後方向LDに長く、高く盛り上がった合体セル55が形成され、この合体セル55が幅方向WDに移動する尿を遮断する遮断体となり、横漏れが防止される。ただし、
図11に示す吸収体50では、合体セル55の幅方向WD長さは
図8に示す吸収体50と異なり、吸収体50の幅方向WD位置によらず一定であり、前後方向LDに長い遮断体となるため、前後方向LDの拡散性が向上し、より横漏れ防止性に優れたものとなる。なお、
図11に示す吸収体50は、セル55の形状が矩形となっているが、幅方向WDに沿う対辺を有する多角形であれば、矩形以外でも同様に前後方向LDに長い遮断体を形成することができる。
【0070】
複数のセルの集合からなる最拡大区画57の大きさや形状、配置(つまり強接合部54aの配置)は適宜定めることができる。例えば、
図8に示す形態のようにセル55が正六角形である場合には、最拡大区画57の周縁において、一つのセル55あたり連続する2つの辺をつなげた部分は直線状の部分となりうるものであり、一つのセル55あたり連続する3つの辺をつなげた部分は直線状の部分又は内角120度の角部分(方向転換部分)となりうるものであり、一つのセル55あたり連続する4つの辺をつなげた部分は内角60度又は180度の方向転換部分となりうるものである。よって、これら直線状の部分と角部分を組み合わせることにより、最拡大区画57の周縁形状(強接合部54aの配列)を、ほぼ三角形状、ほぼ四角形状、ほぼ円形状、ほぼ台形状、又はほぼ平行四辺形状等、適宜の形状とすることができる。
図8に示す形態では、複数のセルの集合からなる最拡大区画57は、3以上の数のセルが二方向以上の方向に並び、かつ周縁形状が、周縁に沿うセル55において一つのセル55あたり連続する2〜4の辺をつなげて形成される閉形状をなしている。これにより、セル55が順次合体して最拡大区画57まで円滑に拡大しやすく、最拡大区画57は膨らみやすい形状となり、かつ最拡大区画57まで拡大したときの、セル55合体数に対するセル55容積増加量に優れるようになる。
【0071】
横漏れ防止領域は、吸収体50における少なくとも股間部の幅方向WDの中間部に設けられていれば、股間部の幅方向WDの全体に設けられていても、股間部よりある程度広い前後方向範囲にわたり設けられていてもよく、また、当該横漏れ防止領域以外は最拡大区画57の前後方向LDの長さが変化しなくても、また最拡大区画57が一つであったり、最拡大区画57が一つも無かったりしても良い。例えば、
図11に示す接合部54の配列を基本として、幅方向WDの最も外側の一列又は複数列のセル55における、幅方向WDに対し最も平行に近い辺の接合部54については、すべて弱接合部54bとしたり(最拡大区画57が一つも無い)、又は前後端の接合部54は強接合部54aとし、それ以外はすべて弱接合部54bとしたり(最拡大区画57が一つのみ)することもできる。
【0072】
高吸収性ポリマー粒子53の単位面積当たりの含有量は、最拡大区画57の大きさの変化に関係なく一定としても良いが、前述のような横漏れ防止原理を考慮すると、少なくとも横漏れ防止領域では、吸収体50の幅方向WDの中央部から幅方向WDの両側に向かうにつれて段階的又は連続的に増加していると、排泄液の吸収時に、吸収体50の幅方向WDの両側に向かうほど大きく、高く盛り上がった合体セル55を形成しやすくなるため好ましい。この高吸収性ポリマー粒子53の含有量の変化は適宜定めることができるが、例えば最も高含有の部分で450〜1000g/m
2程度とし、最も低含有の部分では最も高含有の部分の1/2〜1/10倍程度とすることができる。
【0073】
他方、
図13及び
図14に示すように、高吸収性ポリマー粒子53の単位面積当たりの内包量が他のセルよりも少ない空セル56を設けることもできる。
図13及び
図14では、高吸収性ポリマー粒子53を含有するセル55(つまり低膨張セル55s及び後述の空セル56を除くセル)に斜線模様が付されている。なお、この斜線模様を付した領域53Aは、製造時の高吸収性ポリマー粒子53の散布領域の形状を想定しているため、周縁のセルには斜線模様のない部分があるが、セル内で高吸収性ポリマー粒子が移動可能である場合には製品ではセル内における高吸収性ポリマー粒子の存在位置が固定されるものではない。空セル56における高吸収性ポリマー粒子53の内包量は、重量比で他のセルの1/2以下、特に1/10以下であることが好ましく、全く内包しないと特に好ましい。例えば、
図13及び
図14に示すように、吸収体50の前端及び後端は、製造の際に個々の吸収体50へ切断することにより形成されるため、この位置に高吸収性ポリマー粒子53を含有すると切断装置の刃の寿命が短くなるおそれがある。よって、少なくとも前後端が通過する位置のセル55は空セル56であることが望ましい。
【0074】
また、粉砕パルプ等の親水性短繊維に高吸収性ポリマー粒子53を混合し綿状に積繊した吸収体50では、脚周りに沿うように前後方向LDの中間部が幅方向WDにくびれた形状に形成することが一般的であるが、
図13に示すように、セル吸収体50においても、前後方向LDの中間における両側部のセルを空セル56とすることにより、当該部分は吸収後も膨張が少ないものとなり、したがって吸収後においても吸収体50が脚周りにフィットする形状となる。ただし、単にこのような空セル56を設けると、横漏れしやすくなることは避けられない。よって、
図13に示すように、両側部の空セル56の間に位置する領域では、接合部54が一様なパターンで設けられ、かつ当該領域の幅方向WDの中央部から幅方向WDの両側に向かうにつれて接合部54に占める弱接合部54bの数的比率が段階的又は連続的に増加していると、排泄液の吸収時には、両側部の空セル56は膨張が少なく脚周りにフィットしやすいものでありながら、それらの間に位置する領域で、幅方向WDの両側に向かうほど大きく、高く盛り上がった合体セル55が形成され、この合体セル55が幅方向WDに移動する尿を遮断する遮断体となり、横漏れが防止されるため好ましい。
【0075】
図14に示すように、幅方向WDの中央部に位置する一列又は複数列のセル55についても空セル56とすることができる。これにより、当該空セル56はその幅方向WDの両側のセル55と比較して膨張量が少なくなるため、排泄液の吸収時に幅方向WDの中央部に前後方向LDに延びる溝が形成され、その溝により液拡散が促進される。この幅方向WDの中央部の空セル56は、吸収体50の全長にわたり設けられていてもよいが、図示形態のように前後方向LDの中間部分(特に股間部を含み、その前後両側にわたる範囲)に設けられていてもよい。
【0076】
セル吸収体50を製造する場合、個々のセル55に正確に所定量の高吸収性ポリマー粒子53を分配することは困難であるため、表側シート51又は裏側シート52上における高吸収性ポリマー粒子53含有領域(空セル56となる部分を除いた領域)の全体にわたり高吸収性ポリマー粒子53を一様に散布した後、接合部54を形成して表側シート51及び裏側シート52を一体化するとともにセル55内に高吸収性ポリマー粒子53を閉じ込めることが好ましい。この場合、特に高吸収性ポリマー粒子53含有領域の周縁に位置する周縁セル55に対しては、セル55の周縁に一致する正確な形状で高吸収性ポリマー粒子53を散布することができないため、
図13及び
図14に斜線で示される高吸収性ポリマー粒子53の散布領域53Aの形状からも分かるように、散布領域53Aの周縁が周縁セル55の中間を通るように高吸収性ポリマー粒子53を散布することが望ましい。この場合、周縁セル55の高吸収性ポリマー粒子53の内包量は、周縁セル55よりも内側に位置するセル55より少なくなり、周縁セル55の外側にセル55を有する場合には、この外側のセル55が高吸収性ポリマー粒子53を実質的に含まない空セル56となる。
【0077】
上記例は、セル55内に高吸収性ポリマー粒子53のみ内包させているが、高吸収性ポリマー粒子53とともに消臭剤粒子等、高吸収性ポリマー粒子53以外の粉粒体を内包させることもできる。
【0078】
上記例は、接合部54によって周りを囲まれた、セル55間に位置する接合部54が弱接合部54bのみである複数のセル55の集合又は単一のセル55からなる最拡大区画57を有する形態であるが、最拡大区画57を有しない形態とすることもできる。すなわち、弱接合部及び強接合部を有し、弱接合部を介して隣接するセル同士は当該弱接合部の剥離により合体し、より大きな単一のセルに拡大可能である場合、排泄液の吸収時、高吸収性ポリマー粒子の膨張により弱接合部は剥離するが、強接合部は剥離しないため、弱接合部の剥離により隣接するセル同士が合体していくものの、合体セルの大きさ、高さは強接合部により制限される。このため、接合部が一様なパターンで設けられる場合、弱接合部の数的比率が高い部分ほど(この場合、強接合部の数的比率が低いのと同義)、排泄液の吸収時、合体セルが大きく高く盛り上がることとなる。よって、最拡大区画を有しない形態でも、接合部が一様なパターンで設けられ、かつ吸収体の幅方向中央部から幅方向両側に向かうにつれて接合部に占める弱接合部の数的比率が段階的又は連続的に増加している場合には、排泄液の吸収時、吸収体の幅方向両側に向かうほど大きく、高く盛り上がった合体セルが形成され、この合体セルが幅方向に移動する尿を遮断する遮断体となり、横漏れが防止されるものである(図示略)。
【0079】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載がない限り、以下の意味を有するものである。
・「MD方向」及び「CD方向」とは、製造設備における流れ方向(MD方向)及びこれと直交する横方向(CD方向)を意味し、いずれか一方が製品の前後方向となるものであり、他方が製品の幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「人工尿」は、尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したものであり、特に記載の無い限り、温度40度で使用される。
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter−MAX ME−500)でゲル強度を測定する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:
0.098N/cm
2、及び加圧面積:2cm
2の条件下で自動測定する。
・吸水量は、JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・試験や測定における環境条件についての記載がない場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載がない限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。