(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ドーパントは、下記化学式2〜化学式4のいずれか一つで表わされる1種以上の化合物を含む請求項1
〜4のいずれか1つに記載の有機発光素子。
[化学式2]
[化学式3]
[化学式4]
(前記化学式2〜化学式4において、
前記化学式2内のAは置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の、ヘテロ原子としてO、NまたはSを有する炭素数3〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換の、ヘテロ原子としてO、NまたはSを有する炭素数3〜50のヘテロアリーレン基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記化学式2中、X
1およびX
2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または無置換の炭素数6〜30のアリーレン基または単結合の中から選択されるいずれか一つであり、X
1とX
2は互いに結合することができ、
Y
1とY
2は、それぞれ、互いに同一または異なり、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6〜24のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2〜24のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜24のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜24のヘテロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜24のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜24のアルコキシ基、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜24のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、ゲルマニウム、リン、ホウ素、重水素及び水素よりなる群から選択され、互いに隣接する基と脂肪族、芳香族、脂肪族ヘテロまたは芳香族ヘテロの縮合環を形成することができ、
前記l、mはそれぞれ1〜20の整数であり、nは1〜4の整数である。
化学式3及び化学式4において、
A
1、A
2、E及びFは、それぞれ、互いに同一または異なり、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6〜50の芳香族炭化水素環、または置換もしくは無置換の炭素数2〜40の芳香族ヘテロ環であり、
前記A
1の芳香族環内の隣り合った二つの炭素原子と、前記A
2の芳香族環内の隣り合った二つの炭素原子は、前記置換基R
1及びR
2に連結された炭素原子と5員環を形成することにより、それぞれ縮合環を形成し、
前記連結基L
1からL
12は、それぞれ、互いに同一または異なり、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜60のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のアルケニレン基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のアルキニレン基、置換もしくは無置換の炭素数3〜60のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のヘテロシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数2〜60のヘテロアリーレン基の中から選択され、
前記Mは、N−R
3、CR
4R
5、SiR
6R
7、GeR
8R
9、O、S及びSeの中から選択されるいずれか一つであり、
前記置換基R
1からR
9、Ar
1からAr
8は、それぞれ、互いに同一または異なり、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルゲルマニウム基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールゲルマニウム基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基の中から選ばれるいずれか一つであるが、
前記R
1及びR
2は、互いに連結されて脂環族、芳香族の単環または多環を形成することができ、前記形成された脂環族、芳香族の単環または多環の炭素原子はN、O、P、Si、S、Ge、Se及びTeの中から選択される少なくとも一つのヘテロ原子で置換でき、
前記p
1からp
4、r
1からr
4、s
1からs
4は、それぞれ1〜3の整数であるが、これらのそれぞれが2以上である場合、それぞれの連結基L
1からL
12は互いに同一または異なり、
前記xは1または2の整数であり、y及びzは、それぞれ同一または異なり、互いに独立して0〜3の整数であり、
前記Ar
1とAr
2、Ar
3とAr
4、Ar
5とAr
6、およびAr
7とAr
8は、それぞれ互いに連結されて環を形成することができ、
前記化学式3において、A
2環内の隣り合った二つの炭素原子は前記構造式Q
1の*と結合して縮合環を形成し、
前記化学式4において、前記A
1環内の隣り合った二つの炭素原子は前記構造式Q
2の*と結合して縮合環を形成し、前記A
2環内の隣り合った二つの炭素原子は前記構造式Q
1の*と結合して縮合環を形成する。)
前記有機発光素子は380nm〜800nmの波長範囲で発光する青色発光材料、緑色発光材料または赤色発光材料の発光層をさらに含み、前記青色発光材料、緑色発光材料または赤色発光材料は蛍光材料またはリン光材料である請求項1〜5のいずれか1つに記載の有機発光素子。
前記有機発光素子は、フラットパネルディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色または白色の平板照明用装置、及び単色または白色のフレキシブル照明用装置から選択されるいずれか一つの装置に使用される請求項1〜6のいずれか1つに記載の有機発光素子。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、自発光型素子であって、視野角が広く、コントラストに優れ、応答時間が速く、多色化が可能であり、輝度、駆動電圧及び応答速度特性に優れるという長所がある。
一般的な有機発光素子は、光を発光する有機発光層、及び有機発光層を挟んで相互対向する陽極(アノード)と陰極(カソード)とを含む。
より具体的にが、前記有機発光素子は、前記陽極の上部に正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極が順次形成されている構造を有する。ここで、正孔輸送層、発光層および電子輸送層は、有機化合物からなる有機薄膜である。
【0003】
このような構造の有機発光素子の駆動原理は、次のとおりである。
前記陽極と陰極との間に電圧を印加すると、陽極から注入された正孔は正孔輸送層を経由して発光層へ移動し、陰極から注入された電子は電子輸送層を経由して発光層へ移動する。前記正孔及び電子などのキャリアは、発光層領域で再結合してエキシトン(exciton)を生成する。このエキシトンが励起状態から基底状態に変わりながら光が生成される。
【0004】
一方、有機発光素子で有機物層として使用される材料は、機能によって、発光材料と電荷輸送材料、例えば、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料などに分類できる。前記発光材料は、発光メカニズムによって、電子の一重項励起状態に由来する蛍光材料と、電子の三重項励起状態に由来するリン光材料に分類できる。
また、発光材料として一つの物質のみを使用する場合、分子間の相互作用によって最大発光波長が長波長へ移動し、色純度が低下したり発光減衰効果により素子の効率が減少したりするという問題が発生するので、色純度の増加及びエネルギー転移による発光効率の増加を図るために、発光材料としてホスト−ドーパントシステムを採用することができる。その原理は、発光層を形成するホストよりもエネルギーバンド間隙の小さいドーパントを発光層に少量混合すると、発光層から発生したエキシトンがドーパントに輸送されて効率の高い光を出すことである。この際、ホストの波長がドーパントの波長帯へ移動するので、利用するドーパントの種類に応じて所望の波長の光を得ることができる。
【0005】
このような有機発光素子において、特許文献1では、発光効率を改善するための従来の技術として、発光層と電子輸送層との間に、電子の量を調整するための抑制層を設置することを特徴とする有機発光素子について開示しており、また、特許文献2では、2つの三重項励起子の衝突及び融合により一重項励起子が発生する現象であるTTF(Triplet−Triplet Fusion)現象をより効率よく生じさせるために、発光層と電子注入層との間にブロッキング層を挟み、発光層のホストの三重項エネルギーよりもブロッキング層の三重項エネルギーがさらに大きい条件を満たしてTTF現象をより効率よく生じさせるように三重項励起子を発光層に閉じ込め、電子注入層とブロッキング層のアフィニティ値が特定の範囲を満足する材料を含む有機発光素子を設計して蛍光発光の効率を増加させる有機発光素子について開示している。
【0006】
しかし、これらの先行文献は、電子の量を調整することにより、発光効率を向上させるか或いは三重項励起子のTTF現象をより効率よく起こすことにより、発光効率を向上させる素子に該当するが、発光位置が発光層内の正孔輸送層(HTL)と発光層(EML)との界面側に形成される場合、発光効率の増進効果を得ることはできるが、界面の素子劣化現象により寿命が低下する。
また、素子の長寿命を実現するためには、正孔輸送層と発光層とを構成するそれぞれの材料の熱的、電気的特性および界面特性などの基本物性の要件を満たさなければならないが、大面積ディスプレイの実現に最も重要な要素である長寿命素子特性を満たさない限界がある。
したがって、未だにもより改善された長寿命特性を有する有機発光素子の開発の必要性は持続的に求められている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施し得る好適な実施例を詳細に説明する。本発明の各図面において、構造物のサイズまたは寸法は本発明の明確性を期するために実際より拡大または縮小して示し、特徴的構成が現れるように公知の構成は省略して示したので、図面に限定されない。本発明の好適な実施例に対する原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にするおそれがあると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。図示された各構成の大きさおよび厚さは、説明の便宜のために任意に示したので、本発明は必ずしも図示に限定されず、また、図面において、複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。そして、図面において、説明の便宜のために、一部の層および領域の厚さを誇張して示した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」あるとするとき、これは他の部分「すぐ上に」ある場合だけでなく、それらの間に別の部分がある場合も含む。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。また、明細書全体において、「〜上に」とは、対象部分の上または下に位置することを意味し、必ずしも重力方向を基準に上側に位置することを意味するのではない。
以下、図面を参照して本発明の実施例に係る有機発光表示装置を説明する。
【0013】
本発明に係る有機発光素子は、陽極、正孔輸送層、ホスト及びドーパントを含む発光層、電子輸送層並びに陰極を順次含む有機発光素子において、前記発光層と前記電子輸送層との間に、下記化学式Aで表示されるアントラセン誘導体を含む発光位置調節層を含み、前記発光位置調節層のアフィニティA
ed(eV)は、発光層内のホストのアフィニティA
h(eV)と前記電子輸送層のアフィニティA
e(eV)との間の範囲(A
h≧A
ed≧A
e)を有し、前記発光位置調節層内のアントラセン誘導体の電子移動度は、電子輸送層内の材料の電子移動度と同じかそれより少ないことを特徴とする。
[化学式A]
前記化学式Aにおいて、
置換基Ar
1およびAr
2は、それぞれ同一または異なり、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数2〜50のヘテロアリール基であり、
前記連結基Lは単結合であるか、または置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基であり、nは0〜2の整数であるが、前記nが2である場合、それぞれの連結基nはそれぞれ同一または異なり、
置換基R
1〜R
8は、それぞれ同一または異なり、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルゲルマニウム基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールゲルマニウム基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基の中から選ばれるいずれか一つであり、
前記「置換もしくは無置換の」における「置換」は、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数2〜24のアルキニル基、炭素数1〜24のヘテロアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアリールアルキル基、炭素数2〜24のヘテロアリール基、または炭素数2〜24のヘテロアリールアルキル基、炭素数1〜24のアルコキシ基、炭素数1〜24のアルキルアミノ基、炭素数6〜24のアリールアミノ基、炭素数1〜24のヘテロアリールアミノ基、炭素数1〜24のアルキルシリル基、炭素数6〜24のアリールシリル基及び炭素数6〜24のアリールオキシ基よりなる群から選択された1つ以上の置換基で置換されることを意味する。
【0014】
本発明において、前記「置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基」、「置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリール基」などにおける前記アルキル基またはアリール基の範囲を考慮すると、前記炭素数1〜30のアルキル基及び炭素数5〜50のアリール基の炭素数の範囲は、それぞれ、前記置換基が置換された部分を考慮せずに非置換されたものと看做したときのアルキル部分またはアリール部分を構成する全体炭素数を意味する。例えば、パラ位にブチル基が置換されたフェニル基は、炭素数4のブチル基で置換された炭素数6のアリール基に該当するものと見るべきである。
本発明の化合物で使用されるアリール基は、一つの水素除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであって、5〜7員、好ましくは5または6員を含む単一または融合環系を含み、また、前記アリール基に置換基がある場合、隣接する置換基と相互融合して環をさらに形成することができる。
【0015】
前記アリールの具体的な例として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、インデニル、フルオレニル、フェナントリル、トリフェニルレニル、ピレニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニルなどを含むが、これらに限定されない。
前記アルキル基中の1つ以上の水素原子は、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シリル基、アミノ基(−NH
2、−NH(R)、−N(R’)(R”)、R’とR”は互いに独立して炭素数1〜10のアルキル基であり、この場合、「アルキルアミノ基」という)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のアルキニル基、炭素数1〜24のヘテロアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数6〜24のアリールアルキル基、炭素数2〜24のヘテロアリール基または炭素数2〜24のヘテロアリールアルキル基で置換できる。
【0016】
本発明の化合物で使用される置換基であるヘテロアリール基は、前記アリール基において、それぞれの環内にN、O、P、Se、Te、Si、GeまたはSの中から選ばれた1〜4個のヘテロ原子を含むことができる炭素数2〜24のヘテロ芳香族有機ラジカルを意味し、前記環は、融合して環を形成することができる。そして、前記ヘテロアリール基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
本発明で使用される置換基であるアルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−アミル、ヘキシルなどを挙げることができ、前記アルキル基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
本発明の化合物で使用される置換基であるアルコキシ基の具体的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、iso−アミルオキシ、ヘキシルオキシなどを挙げることができ、前記アルコキシ基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
本発明の化合物で使用される置換基であるシリル基の具体的な例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、トリメトキシシリル、ジメトキシフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、シリル、ジフェニルビニルシリル、メチルシクロブチルシリル、ジメチルフリルシリルなどを挙げることができ、前記シリル基中の1つ以上の水素原子は、前記アリール基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0017】
本発明の有機発光素子は、前記陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層が含まれ、前記電子輸送層と陰極との間に電子注入層が含まれてもよい。
図1では、前記正孔注入層と電子注入層を含む、本発明の一実施例に係る有機発光素子の構造を示す。
これをより詳細に説明すると、本発明に係る有機発光素子は、陽極20、正孔輸送層40、発光層50、発光位置調節層55、電子輸送層60及び陰極80を含み、必要に応じて正孔注入層30と電子注入層70をさらに含むことができ、その他にも、1層または2層の中間層をさらに形成することも可能である。
【0018】
次に、
図1を参照して、本発明の有機発光素子及びその製造方法について考察する。
まず、基板10の上部に陽極(アノード)電極用物質をコートしてアノード20を形成する。ここで、基板10としては、通常の有機EL素子で用いられる基板を使用するが、透明性、表面平滑性、取扱い容易性及び防水性に優れた有機基板または透明プラスチック基板が好ましい。そして、陽極電極用物質としては、透明で伝導性に優れた酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)などを使用する。
前記陽極20電極の上部に正孔注入層物質を真空熱蒸着またはスピンコートして正孔注入層30を形成する。その次に、前記正孔注入層30の上部に正孔輸送層物質を真空熱蒸着またはスピンコートして正孔輸送層40を形成する。
前記正孔注入層の材料は、当業界で通常使用されるものである限り、特に制限されずに使用することができ、例えば、2−TNATA[4,4’,4”−tris(2−naphthylphenyl−phenylamino)−triphenylamine]、NPD[N,N’−di(1−naphthyl)−N,N’−diphenylbenzidine)]、TPD[N,N’−diphenyl−N,N’−bis(3−methylphenyl)−1,1’−biphenyl−4,4’−diamine]、DNTPD[N,N’−diphenyl−N,N’−bis−[4−(phenyl−m−tolyl−amino)−phenyl]−biphenyl−4,4’−diamine]などを使用することができる。しかし、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
また、前記正孔輸送層の材料として当業界で通常使用されるものである限り、特に制限されず、例えば、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)またはN,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(a−NPD)などを使用することができる。しかし、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0019】
次いで、前記正孔輸送層40の上部に発光層50を真空蒸着方法またはスピンコート方法で積層し、前記有機発光層50の上部に本発明に係る発光位置調節層55を用いて真空蒸着方法またはスピンコート方法で薄膜を形成することができる。
ここで、前記発光層はホストとドーパントからなってもよい。
本発明の具体的な例によれば、前記発光層の厚さは50〜2,000オングストロームであることが好ましい。
本発明において、前記発光層50は、ホスト及びそれに加えてドーパント材料が使用できる。前記発光層がホスト及びドーパントを含む場合、ドーパントの含有量は、通常、ホスト約100重量部を基準にして約0.01〜約20重量部の範囲で選択でき、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明で使用される前記発光層内のホストの一例として、これは下記化学式1Aで表示される化合物とすることができる。
[化学式1A]
前記化学式1Aにおいて、
前記X
1〜X
10は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の、ヘテロ原子としてO、NまたはSを有する炭素数3〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のシリコン基、置換もしくは無置換のホウ素基、置換もしくは無置換のシラン基、カルボニル基、ホスホリル基、アミノ基、ニトリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基及びエステル基よりなる群から選ばれるいずれか一つであり、互いに隣接する基は脂肪族、芳香族、脂肪族へテロまたは芳香族へテロの縮合環を形成することができる。
【0021】
より具体的に、前記ホストは、下記[化合物1]〜[化合物196]で表示される群から選ばれるいずれか一つで表示できるが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明で前記発光層に使用されるドーパントは、下記化学式2〜化学式4のいずれか一つで表示される1種以上の化合物を含むことができる。
前記化学式2〜化学式4において、
前記化学式2内のAは、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の、ヘテロ原子としてO、NまたはSを有する炭素数3〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換の、ヘテロ原子としてO、NまたはSを有する炭素数3〜50のヘテロアリーレン基の中から選択されるいずれか一つであり、
好ましくは、アントラセン、パイレン、フェナントレン、インデノフェナントレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、トリフェニレン、ペリレン、ペンタセンである。
【0023】
前記Aは下記化学式A1〜化学式A10で表示される化合物のいずれかであってもよい。
ここで、前記化学式A3のZ
1とZ
2は、それぞれ、水素、重水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜60のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜60のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜60のアルキルチオ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜60のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5〜60のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜60のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜60の(アルキル)アミノ基、ジ(置換もしくは無置換の炭素数1〜60のアルキル)アミノ基、または(置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール)アミノ基、ジ(置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール)アミノ基よりなる群から選択され、Z
1とZ
2それぞれは、互いに同一または異なり、互いに隣接する基と縮合環を形成することができ、
前記化学式2中、X
1およびX
2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または無置換の炭素数6〜30のアリーレン基または単結合の中から選択されるいずれか一つであり、X
1とX
2は互いに結合することができ、
Y
1とY
2は、それぞれ、互いに同一または異なり、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6〜24のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2〜24のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜24のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜24のヘテロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜24のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜24のアルコキシ基、シアノ基、ハロゲン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜24のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、ゲルマニウム、リン、ホウ素、重水素及び水素よりなる群から選択され、互いに隣接する基と脂肪族、芳香族、脂肪族ヘテロまたは芳香族ヘテロの縮合環を形成することができ、
前記l、mはそれぞれ1〜20の整数であり、nは1〜4の整数である。
【0024】
また、化学式3及び化学式4において、
A
1、A
2、E及びFは、それぞれ、互いに同一または異なり、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数6〜50の芳香族炭化水素環、または置換もしくは無置換の炭素数2〜40の芳香族ヘテロ環であり、
前記A
1の芳香族環内の隣り合った二つの炭素原子と、前記A
2の芳香族環内の隣り合った二つの炭素原子は、前記置換基R
1及びR
2に連結された炭素原子と5員環を形成することにより、それぞれ縮合環を形成し、
前記連結基L
1からL
12は、それぞれ、互いに同一または異なり、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜60のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のアルケニレン基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のアルキニレン基、置換もしくは無置換の炭素数3〜60のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のヘテロシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数2〜60のヘテロアリーレン基の中から選択され、
前記Mは、N−R
3、CR
4R
5、SiR
6R
7、GeR
8R
9、O、S及びSeの中から選択されるいずれか一つであり、
前記置換基R
1からR
9、Ar
1からAr
8は、それぞれ、互いに同一または異なり、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のアリールチオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルアミン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールアミン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルゲルマニウム基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールゲルマニウム基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基の中から選ばれるいずれか一つであるが、
前記R
1及びR
2は、互いに連結されて脂環族、芳香族の単環または多環を形成することができ、前記形成された脂環族、芳香族の単環または多環の炭素原子は、N、O、P、Si、S、Ge、Se及びTeの中から選択される少なくとも一つのヘテロ原子で置換でき、
前記p
1からp
4、r
1からr
4、s
1からs
4は、それぞれ1〜3の整数であるが、これらのそれぞれが2以上である場合、それぞれの連結基L
1からL
12は互いに同一または異なり、
前記xは1または2の整数であり、y及びzはそれぞれ同一または異なり、互いに独立して0〜3の整数であり、
前記Ar
1とAr
2、Ar
3とAr
4、Ar
5とAr
6、およびAr
7とAr
8はそれぞれ互いに連結されて環を形成することができ、
前記化学式3において、A
2環内の隣り合った二つの炭素原子は、前記構造式Q
1の*と結合して縮合環を形成し、
前記化学式4において、前記A
1環内の隣り合った二つの炭素原子は前記構造式Q
2の*と結合して縮合環を形成し、前記A
2環内の隣り合った二つの炭素原子は前記構造式Q
1の*と結合して縮合環を形成する。
【0025】
前記化学式2から化学式4に結合されるアミン基は、下記置換基1から置換基52で表示される群から選ばれるいずれか一つとすることができるが、これに限定されるものではない。
前記置換基において、Rは、互いに同一または独立して、水素、重水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボキシル基またはその塩、スルホン基またはその塩、リン酸またはその塩、置換もしくは無置換の炭素数1〜60のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜60のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜60のアルキルチオ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜60のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数2〜60のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜60の(アルキル)アミノ基、ジ(置換もしくは無置換の炭素数1〜60のアルキル)アミノ基、または(置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール)アミノ基、ジ(置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール)アミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、ゲルマニウム、リン、ホウ素の中から選択でき、それぞれ1〜12個まで置換でき、それぞれの置換基は互いに隣接する基と縮合環を形成することができる。
【0026】
前記発光層上に本発明に係る発光位置調節層55が形成され、該発光位置調節層に電子輸送層60を真空蒸着方法またはスピンコート方法によって蒸着した後、電子注入層70を形成し、前記電子注入層70の上部に陰極形成用金属を真空熱蒸着して陰極80電極を形成することにより、有機EL素子が完成する。
【0027】
本発明において、前記発光位置調節層のアフィニティA
ed(eV) 、発光層内のホストのアフィニティA
h(eV)と前記電子輸送層のアフィニティA
e(eV)との間の範囲(A
h≧A
ed≧A
e)を有することを特徴とする。
これは
図2及び
図3を介してより詳細に説明できる。
図2は本発明の一実施例に係る、発光区域調節層のアフィニティが発光層のアフィニティと電子輸送層のアフィニティとの間の範囲を有する有機発光素子のエネルギーレベル構造を示す図である。
図2に示すように、本発明の有機発光素子は、発光層50と電子輸送層60との間に発光位置調節層55が形成され、前記発光位置調節層55のアフィニティAf55は、発光層のホストのアフィニティAf50(eV)と前記電子輸送層のアフィニティAf60(eV)との間の範囲を有することを特徴とする。
このような発光位置調節層のアフィニティ値が前記発光層のホストのアフィニティと電子輸送層のアフィニティ値との間の範囲を有する場合、本発明に係る有機発光素子は、各層間の電子注入障壁が低くなることがある。
図3は発光位置調節層を含まない場合(左)と、本発明の一実施例による発光位置調節層を含む場合(右側)の有機発光素子の構造を示す図である。
図3の左側の絵に示すように、電子輸送層60が直接発光層50に隣接しているとき、陰極から提供される電子は、電子輸送層60を経て発光層のホスト50へ移動する場合に電子注入障壁が大きくなって発光層内のホストのエキシトン密度が大きくなく、高い駆動電圧特性を有するようになるが、本発明での如く、前記発光位置調節層のアフィニティA
ed(eV)を発光層内のホストのアフィニティA
h(eV)と前記電子輸送層のアフィニティA
e(eV)との間の範囲(A
h≧A
ed≧A
e)を有するようにする場合に各層間の電子注入障壁がより小さくなり、発光層内のホストへの電子注入が容易になって発光層内のエキシトン密度が増加できる。また、発光位置調節層をさらに備えても駆動電圧が増加する欠点を補完することができる。
【0028】
前記発光位置調節層を構成する材料の電子移動度が電子輸送層内の材料の電子移動度よりも大きくなる場合には、通常、発光層までへの電子の移動がスムーズに行われることにより、発光層内の電子密度をさらに増加させることができ、これはエキシトンの再結合領域を正孔輸送層側へ移動させることができる。
しかし、前述したように、前記発光位置調節層を構成する材料の電子移動度が電子輸送層内の材料の電子移動度よりも大きくなる場合には、エキシトンの再結合領域を正孔輸送層側へ移動させることにより、さらに電流効率(Current efficiency)及びEL強度を向上させることができるという利点があるが、素子の寿命面では、発光層内の正孔輸送層側に近い特定の部分のみがエキシトンの再結合領域として使用できるため、長寿命を期待することができないと推定される。
【0029】
この問題点を解決するために、本発明における前記発光位置調節層内の材料の電子移動度は、電子輸送層内の材料の電子移動度と同じかそれより小さくすることができる。
これをより詳細に説明すると、本発明に係る有機発光素子は、前記発光位置調節層のアィニティA
ed(eV)を発光層内のホストのアフィニティA
h(eV)と前記電子輸送層のアフィニティA
e(eV)との間の範囲(A
h≧A
ed≧A
e)を有するようにして、各層間の電子注入障壁をより小さくすることにより、発光層内のホストのエキシトン密度が増加するようにし、これに加えて、前記発光位置調節層を構成する材料の電子移動度が電子輸送層内の材料の電子移動度よりも大きくないように調節することにより、素子の寿命特性を改善することができるようにした。
つまり、発光位置調節層の導入により、各層間の電子注入障壁をより小さくして発光層内の電子密度を高めるが、前記発光位置調節層を構成する材料の電子移動度を下げることにより、電流密度を下げ、エキシトンの再結合領域を正孔輸送層側に近い特定の部分だけではなく、発光層の全領域が該当するように発光位置調節層の材料の物性を限定するのである。
【0030】
図4は本発明の実施例と比較例に対する電圧変化による電流効率の変化を示す図であり、本発明における発光位置調節層の導入とそれによる電子移動度を求めるために、
図4の下側の絵に示したようなEOD(Electron only device)を製作して直流電圧を印加しながら素子の電流密度を測定した。
図4の上側の絵に示すように、発光位置調節層を導入することにより、同じ電圧で、これを導入していない比較例(Ref)より電流密度が減少することを確認することができる。
より正確な算術的比較のために、各素子の電子移動度(μ)の値を求めることができる。このため、発光位置調節層の有無を問わず、素子を構成する全体厚さは同一に製作して、電子移動度の計算誤差要因を排除した。
EOD素子の測定データを用いて電子移動度を求めるために、後述するような移動度と電気伝導率(σ)の関係式を利用した(G.Paasch et al.Synthetic Metals Vol.132,pp.97−104(2002))。
【0031】
まず、電流−電圧データから素子の抵抗値(R)を計算し、素子の全体厚さ(d)とピクセル面積値(A)を用いて下記式(1)によって電気伝導率を求めた。このように求めた電気伝導率に基づいて、電子移動度の値を下記式(2)で求め、下記実施例内の表2に記録した。
【0032】
図5では電場による電子移動度の値を示した。
図7に示すように、前記発光位置調節層の材料の電子移動度が電子輸送層材料の電子移動度よりも大きくない材料を用いて、前記電子輸送層から供給される電子が発光位置調節層で適切に遅延して発光層へ供給されることにより、
図3に示すように、発光層内の発光位置をより広範囲に拡大させることが分かる。
【0033】
本発明で使用される発光位置調節層の材料及び電子輸送層の電子移動度は、例示的に、電界強度0.04MV/cm〜0.5MV/cmで少なくとも10
-6cm
2/Vsであってもよい。
本発明における前記発光位置調節層内の化学式Aで表示されるアントラセン誘導体は、下記化学式A−1で表示されるアントラセン誘導体であってもよい。
[化学式A−1]
前記化学式A−1において、
連結基L
1は単結合または炭素数6〜18のアリール基であり、
置換基Ar
11及びA
21は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数2〜20のヘテロアリール基であるが、前記置換基Ar
11及びA
21の少なくとも一つは、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のヘテロアリール基であり、
前記置換基R
1からR
8は、先に定義された通りである。
【0034】
一実施例として、本発明の前記化学式A−1で表示されるアントラセン誘導体は、下記[化合物1]〜[化合物5]の中から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0035】
本発明において、前記電子輸送層の材料としては、電子注入電極(Cathode)から注入された電子を安定的に輸送する機能をするものであって、公知の電子輸送物質を用いることができる。公知の電子輸送物質の例としては、キノリン誘導体、特にトリス(8−キノリノレート)アルミニウム(Alq3)、Liq、TAZ、Balq、ベリリウムビス(ベンゾキノリ−10−ノエート)(beryllium bis(benzoquinolin−10−olate:Bebq2)、ADN、化合物201、化合物202、BCP、オキサジアゾール誘導体であるPBD、BMD、BNDなどの材料を使用することもできるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明で使用される電子輸送層は、化学式Fで表される有機金属化合物が単独でまたは前記電子輸送層の材料と混合して使用できる。
[化学式F]
Ym−M−(OA)n
前記[化学式F]において、
Yは、C、N、OおよびSから選択されるいずれか一つが前記Mに直接結合されて単結合をなす部分と、C、N、OおよびSから選択されるいずれか一つが前記Mに配位結合をなす部分とを含み、前記単結合と配位結合によってキレートされたリガンドであり、
前記Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム(Al)またはホウ素(B)原子であり、前記OAは前記Mと単結合または配位結合可能な1価のリガンドであって、
前記Oは酸素であり、
Aは、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルキニル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルケニル基、および置換もしくは無置換の、ヘテロ原子としてO、N、SおよびSiから選択される少なくとも一つを有する炭素数2〜50のヘテロアリール基の中から選択されるいずれか一つであり、
前記Mがアルカリ金属から選択される1つの金属である場合には、m=1、n=0であり、
前記Mがアルカリ土類金属から選択される1つの金属である場合には、m=1、n=1であるか、或いはm=2、n=0であり、
前記Mがホウ素またはアルミニウムである場合には、m=1〜3のいずれかであり、nは0〜2のいずれかであって、m+n=3を満足し、
前記「置換もしくは無置換の」における「置換」は、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アリールオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ゲルマニウム、リン及びホウ素よりなる群から選択された1つ以上の置換基で置換されることを意味する。
【0037】
本発明において、Yは、それぞれ同一または異なり、互いに独立して、下記[構造式C1]〜[構造式C39]から選択されるいずれか一つであってもよい。これらに限定されるものではない。
【0038】
前記[構造式C1]から[構造式C39]において、
Rは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数3〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールアミノ基、および置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基の中から選択され、隣接した置換体とアルキレンまたはアルケニレンで連結されてスピロ環または融合環を形成することができる。
【0039】
本発明における有機発光素子は、前記電子輸送層の上部に陰極からの電子の注入を容易にする機能を有する物質である電子注入層(EIL)が積層でき、これは特に材料を制限しない。
前記電子注入層の形成材料としては、CsF、NaF、LiF、NaCl、Li
2O、BaOなどの電子注入層形成材料として公知された任意の物質を用いることができる。前記電子注入層の蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、一般に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲の中から選択できる。
前記電子注入層の厚さは、約1オングストローム〜約100オングストローム、約3オングストローム〜約90オングストロームとすることができる。
圧の上昇なしに、満足すべき程度の電子注入特性を得ることができる。
本発明において、前記陰極は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などの陰極形成用金属を使用するか、或いは前面発光素子を得るためにはITO、IZOを用いた透過型陰極を用いて形成することができる。
【0040】
本発明における有機発光素子は、380nm〜800nmの波長範囲で発光する青色発光材料、緑色発光材料または赤色発光材料の発光層をさらに含むことができる。つまり、本発明における発光層は複数の発光層であって、前記さらに形成される発光層内の青色発光材料、緑色発光材料または赤色発光材料は蛍光材料またはリン光材料とすることができる。
本発明において、前記正孔注入層、正孔輸送層、発光層、発光位置調節層、電子輸送層および電子注入層から選択された一つ以上の層は、単分子蒸着方式または溶液工程によって形成できる。
ここで、前記蒸着方式は、前記それぞれの層を形成するための材料として使用される物質を真空または低圧状態で加熱などを介して蒸発させて薄膜を形成する方法を意味し、前記溶液工程は、前記それぞれの層を形成するための材料として使用される物質を溶媒と混合し、これをインクジェット印刷、ロール・ツー・ロールコーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティングなどの方法によって薄膜を形成する方法を意味する。
【0041】
本発明における前記有機発光素子は、フラットパネルディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色または白色の平板照明用装置、及び単色または白色のフレキシブル照明用装置、から選択されるいずれか一つの装置に使用できる。
以下、実施例を介して具体化された有機発光素子についてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
合成例1:BD1の合成
合成例1−(1):[中間体1−a]の合成
下記反応式1に従い、[中間体1−a]を合成した
<反応式1>
500mLの丸底フラスコ反応器にメチル5−ブロモ−2−ヨードベンゾエート(25.0g、73mmol)、4−ジベンゾフランボロン酸(18.7g、88mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.7g、0.15mmol)、炭酸カリウム(20.2g、146.7mmol)を入れ、トルエン125mL、テトラヒドロフラン125mL、水50mLを入れた。反応器の温度を80度に昇温させ、10時間攪拌した。反応が終了したら、反応器の温度を室温に下げ、酢酸エチルで抽出し、有機層を分離した。有機層は、減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで分離して<中間体1−a>を得た。(75.0g、60.1%)
【0043】
合成例1−(2):[中間体1−b]の合成
下記反応式2に従い、[中間体1−b]を合成した:
<反応式2>
500mLの丸底フラスコ反応器に<中間体1−a>(17.0g、45mmol)、水酸化ナトリウム(2.14g、54mmol)、およびエタノール170mlを入れ、48時間還流撹拌した。薄膜クロマトグラフィーで反応終結を確認した後、室温に冷却した。冷却された溶液に2−ノーマル塩酸を滴加し、酸性化して生成された固体は30分攪拌した後、濾過した。ジクロロメタンとn−ヘキサンで再結晶して<中間体1−b>を得た。(14.5g、88.6%)
【0044】
合成例1−(3):[中間体1−c]の合成
下記反応式3に従い、[中間体1−c]を合成した:
<反応式3>
250mlの丸底フラスコ反応器に<中間体1−b>(14.5g、39mmol)、メタンスルホン酸145mlを入れ、80度に昇温して3時間撹拌した。薄膜クロマトグラフィーで反応終結を確認した後、室温に冷却させた。反応溶液は、氷水150mlにゆっくりと滴加した後、30分攪拌した。生成された固体は、濾過の後、水とメタノールで洗浄して<中間体1−c>を得た。(11.50g、83.4%)
【0045】
合成例1−(4):[中間体1−d]の合成
下記反応式4に従い、[中間体1−d]を合成した:
<反応式4>
【0046】
1Lの丸底フラスコ反応器に<中間体1−c>(11.5g、33mmol>およびジクロロメタン300mlを入れ、常温攪拌した。臭素(3.4ml、66mmol)は、ジクロロメタン50mlに希釈して滴加し、8時間常温攪拌した。反応終了後、反応容器にアセトン100mlを入れて攪拌した。生成された固体は、濾過の後、アセトンで洗浄した。固体は、モノクロロベンゼンに再結晶して<中間体1−d>を得た。(11.0g、78%)
【0047】
合成例1−(5):[中間体1−e]の合成
下記反応式5に従い、[中間体1−e]を合成した:
<反応式5>
250mlの丸底フラスコ反応器に2−ブロモビフェニル(8.4g、0.036mol)とテトラヒドロフラン110mlを入れ、窒素雰囲気下で−78度に冷却した。冷却された反応溶液にn−ブチルリチウム(19.3ml、0.031mol)を同じ温度で滴加した。反応溶液は、2時間攪拌した後、<中間体1−d>(11.0g、0.026mol)を少しずつ入れて常温で攪拌した。反応溶液の色が変わると、TLCで反応終結を確認した。50mlのH
2Oを入れて反応終了し、酢酸エチルと水で抽出した。有機層を分離して減圧濃縮した後、アセトニトリルで再結晶して<中間体1−e>を得た。(12.2g、81.5%)
【0048】
合成例1−(6):[中間体1−f]の合成
下記反応式6に従い、[中間体1−f]を合成した:
<反応式6>
250mlの丸底フラスコ反応器に<中間体1−e>(12.0g、0.021mol)、酢酸120mlおよび硫酸2mlを入れ、5時間還流撹拌した。固体が生成されると、薄膜クロマトグラフィーで反応終結を確認した後、室温に冷却した。生成された固体は、濾過の後、H
2Oおよびメタノールで洗浄した後、モノクロロベンゼンに溶かしてシリカゲルろ過、濃縮し、常温で冷却して<中間体1−f>を得た。(10.7g、90%)
【0049】
合成例1−(7):[BD1]の合成
下記反応式7に従い、[BD1]を合成した:
<反応式7>
250mlの丸底フラスコ反応器に<中間体1−f>(5.0g、0.009mol)、(4−tert−ブチルフェニル)−フェニルアミン(4.7g、0.021mol)、パラジウム(II)アセテート(0.08g、0.4mmol)、ナトリウム−t−ブト
キシド(3.4g、0.035mol)、およびトリ−tert−ブチルホスフィン(0.07g、0.4mmol)、トルエン60mlを入れ、2時間還流撹拌した。反応終了の後、常温冷却した。反応溶液はジクロロメタンと水で抽出した。有機層は分離して硫酸マグネシウムで無水処理した後、減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーで分離精製した後、ジクロロメタンとアセトンで再結晶して<BD1>を得た。(2.9g、38%)
MS(MALDI−TOF):m/z 852.41[M+]
【0050】
実施例1〜3:有機発光素子の製造
ITOガラスの発光面積が2mm×2mmのサイズとなるようにパターニングした後、洗浄した。前記ITOガラスを真空チャンバーに装着した後、ベース圧力が1×10
-7torrとなるようにした後、前記ITO上にDNTPD(400オングストローム)、TPD(200オングストローム)の順で成膜し、発光層としてBHとBD1(重量比97:3)を混合して成膜(200オングストローム)した後、発光位置調節層として下記表1に記載の化合物を成膜(50オングストローム)し、しかる後に、電子輸送層として[化学式E−2](250オングストローム)を成膜し、電子注入層として[化学式E−1](5オングストローム)、Al(1000オングストローム)の順で成膜して有機発光素子を製造した。前記有機発光素子の発光特性は10mA/cm
2で測定した。
【0051】
本発明で使用された発光層内のホストの材料、電子密度調節層の材料および電子輸送層の材料の電子アフィニティ値を下記表2に示す。
ここで、各材料のアフィニティ値はLUMO=HOMO−Band gap(UV onset)の式を用い、前記HOMOレベルは、各化合物をクォーツ基板上に単一薄膜で成膜した後、PYS−202装備で測定し、UV onsetは単一薄膜で吸収スペクトルを測定して求めた。
【0052】
実施例4:有機発光素子の製造
[BD1]の代わりに[BD2]を使用した以外は実施例2と同様にして有機発光素子を製作し、前記有機発光素子の発光特性は10mA/cm
2で測定した。前記[BD2]の構造は次のとおりである。
[BD2]
【0053】
比較例1
ITOガラスの発光面積が2mm×2mmのサイズとなるようにパターニングした後、洗浄した。前記ITOガラスを真空チャンバーに装着し、ベース圧力が1×10
-7torrとなるようにした後、前記ITO上にDNTPD(400オングストローム)、TPD(200オングストローム)の順で成膜した後、発光層としてBHとBD1(重量比97:3)を混合して成膜(200オングストローム)し、しかる後に、電子輸送層として[化学式E−2](300オングストローム)を成膜し、電子注入層として化学式E−1](5オングストローム)、Al(1000オングストローム)の順で成膜して有機発光素子を製造した。前記有機発光素子の発光特性は10mA/cm
2で測定した。
【0054】
比較例2
[BD1]の代わりに[BD2]を使用した以外は比較例1と同様にして有機発光素子を製作し、前記有機発光素子の発光特性は10mA/cm
2で測定した。
本発明の実施例と比較例に係る電圧の変化に伴う電流効率の変化と時間による素子の寿命評価を
図4及び
図6に示し、表1では前記素子評価の結果を示した。前記表1において、T
90は輝度が初期輝度(2000cd/m
2)で90%に減少するのにかかる時間を意味し、前記
図4〜
図6において、EZCL1〜EZCL3に関するグラフは実施例1〜3の結果を示すものであり、Ref.で表示されたグラフは比較例1の結果を示すものである。
【表1】
【表2】
【0055】
前記表1及び
図4〜6に示すように、本発明に係る発光層と電子輸送層との間に発光領域調節層を形成した有機発光素子の場合、これを備えていない有機発光素子に比べて長寿命特性を有し、改善された有機発光素子を製造することができるという利点がある。