特許第6209247号(P6209247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6209247
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】転写シール材料とその使用法
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/17 20060101AFI20170925BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170925BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20170925BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B44C1/17 N
   B32B27/00 L
   B32B27/10
   C09J7/00
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-125041(P2016-125041)
(22)【出願日】2016年6月24日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】396017176
【氏名又は名称】ミラクル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230115336
【弁護士】
【氏名又は名称】山下 綾
(74)【代理人】
【識別番号】100071548
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 賢二
(72)【発明者】
【氏名】森山 泰之
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3199388(JP,U)
【文献】 特開2008−049609(JP,A)
【文献】 特許第3266197(JP,B2)
【文献】 登録実用新案第3151251(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3184778(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C1/16−1/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水紙(11)の表面へ水溶性のアンダーコート層(12)と透視可能なトップコート層(13)とが順次積層一体化された合計3層のプリントベースシート(A)と、
粘着剤層(14)の表面に透視可能な離型フィルム(15)と同じく裏面に離型紙(16)とが貼り合わされた合計3層の両面粘着シート(B)とを備え、
上記プリントベースシート(A)を両面粘着シート(B)へ積み重ねた合計6層として、その全体の背部(10)を接着剤での無線綴じ状態に保ったことを特徴とする転写シール材料。
【請求項2】
吸水紙(11)の表面へ水溶性のアンダーコート層(12)と透視可能な撥水性の中間コート層(20)並びにやはり透視可能なトップコート層(13)とが順次積層一体化された合計4層のプリントベースシート(A)と、
粘着剤層(14)の表面に透視可能な離型フィルム(15)と同じく裏面に離型紙(16)とが貼り合わされた合計3層の両面粘着シート(B)とを備え、
上記プリントベースシート(A)を両面粘着シート(B)へ積み重ねた合計7層として、その全体の背部(10)を接着剤での無線綴じ状態に保ったことを特徴とする転写シール材料。
【請求項3】
転写シール用の抜き取り輪郭線(17)を、プリントベースシート(A)だけの貫通状態に予じめ加工したことを特徴とする請求項1又は2記載の転写シール材料。
【請求項4】
請求項1又は2記載の転写シール材料を使用するに当り、そのプリントベースシート(A)のトップコート層(13)へ表側から希望の標章(T)を逆画像(18b)としてプリントした後、
両面粘着シート(B)をその背部(10)の支点廻りに360度方向変換して裏返すと共に、その離型紙(16)の剥離により露出した粘着剤層(14)を介して、未だ残存している離型フィルム(15)を上記プリントベースシート(A)のトップコート層(13)へ、その表側から上記標章(T)の被覆状態に貼り合わせ、
その貼り合わせ状態にある両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)から剥離する如く、上記プリントベースシート(A)における標章(T)がプリントされた部分を転写シール(S)として切り抜き、
その抜き取った転写シール(S)を上記離型フィルム(15)からの剥離後に露出した両面粘着シート(B)の粘着剤層(14)によって、目的の被写体(O)へ貼り付けることを特徴とする転写シール材料の使用法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の転写シール材料を使用するに当り、そのプリントベースシート(A)だけに転写シール用の抜き取り輪郭線(17)を貫通状態に加工しておき、その抜き取り輪郭線(17)の内部へトップコート層(13)の表側から希望の標章(T)を逆画像(18b)としてプリントした後、
両面粘着シート(B)をその背部(10)の支点廻りに360度方向変換して裏返すと共に、その離型紙(16)の剥離により露出した粘着剤層(14)を介して、未だ残存している離型フィルム(15)を上記プリントベースシート(A)のトップコート層(13)へ、その表側から上記標章(T)の被覆状態に貼り合わせ、
その貼り合わせ状態にある両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)から剥離する如く、上記プリントベースシート(A)における標章(T)がプリントされた部分を転写シール(S)として、その上記転写シール用の抜き取り輪郭線(17)に沿い抜き取り、
その抜き取った転写シール(S)を上記離型フィルム(15)からの剥離後に露出した両面粘着シート(B)の粘着剤層(14)によって、目的の被写体(O)へ貼り付けることを特徴とする転写シール材料の使用法。
【請求項6】
目的の被写体(O)へ貼り付けた結果として転写シール(S)の表側となるプリントベースシート(A)の吸水紙(11)へ、水分を付与することにより、
その吸水紙(11)とアンダーコート層(12)との2層をトップコート層(13)との境界面又は中間コート層(20)との境界面から剥離して、未だ残存するトップコート層(13)だけの1層又はトップコート層(13)と中間コート層(20)との2層を通じて、逆画像(18b)の標章(T)を正画像(18a)のそれとして表側から透視できる状態に保つことを特徴とする請求項4又は5記載の転写シール材料の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写シール材料とその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は既に特許文献1、2を提案している。その前者の特許文献1にはユーザーが希望するオリジナルな標章(画像)を、インクジェットプリンターやありふれた水性の筆記具によってプリントできる転写シールが記載されている一方、後者の特許文献2には同じく希望のオリジナルな標章(画像)を、レーザープリンターや静電複写機などのトナーによってプリントできる転写シールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3266197号公報
【特許文献2】特開2008−49609号公報
【特許文献3】実用新案登録第3199388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2を代表例に挙げて言えば、この発明の転写シール(S)はプリント基材シート(A)と両面粘着シート(B)との別個独立する2部品から成るため、その標章(T)がプリントされたプリント基材シート(A)の表面へ、離型紙(16)が剥離された両面粘着シート(B)を貼り合わす作業上甚だ煩らわしく、すばやく正確に貼り合わすことがでない。
【0005】
また、上記特許文献2の転写シール(S)では図6のように複数の標章(T)がプリントされた1枚物のプリント基材シート(A)を、その材料自体としての大きさ・形状(A4サイズ)のままで、図11のように被写体(M)へ貼り付け転写する方法・状態が説明されているが、例えば上記標章(T)の1個づつを被写体(M)へ貼り付け転写する場合を考えると、その場合には1個づつの標章(T)をその共通の材料であるプリント基材シート(A)から切り抜き作業しなければならず、ユーザーにとって甚だ煩らわしく、そのための適当な刃物も用意しなければならないので、大変不便である。
【0006】
この点、上記特許文献3のプリント基材シート(A)には希望する標章(T)の1個づつプリントされた転写シール(S)の抜き取り輪郭線(14)が、プリント基材シート(A)にミシン目として貫通加工されており、そのため刃物による切り抜き作業を必要としない利便性がある。
【0007】
しかし、これでは未だ両面粘着シート(B)が貼り合わされていないプリント基材シート(A)だけの独立状態(図1、2や図4、5参照)において、既に上記抜き取り輪郭線(14)が貫通状態に加工されているため、ユーザーが粗雑に取り扱ったり、粗雑に取り扱わなくとも、上記プリンターを使用してプリント中に、転写シール(S)がその抜き取り輪郭線(14)から不慮に脱落してしまい、その後複数の転写シール(S)の全体へ両面粘着シート(B)を適正に貼り合わすことができなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では吸水紙の表面へ水溶性のアンダーコート層と透視可能なトップコート層とが順次積層一体化された合計3層のプリントベースシートと、
【0009】
粘着剤層の表面に透視可能な離型フィルムと同じく裏面に離型紙とが貼り合わされた合計3層の両面粘着シートとを備え、
【0010】
上記プリントベースシートを両面粘着シートへ積み重ねた合計6層として、その全体の背部を接着剤での無線綴じ状態に保ったことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2では吸水紙の表面へ水溶性のアンダーコート層と透視可能な撥水性の中間コート層並びにやはり透視可能なトップコート層とが順次積層一体化された合計4層のプリントベースシートと、
【0012】
粘着剤層の表面に透視可能な離型フィルムと同じく裏面に離型紙とが貼り合わされた合計3層の両面粘着シートとを備え、
【0013】
上記プリントベースシートを両面粘着シートへ積み重ねた合計7層として、その全体の背部を接着剤での無線綴じ状態に保ったことを特徴とする。
【0014】
請求項3では転写シール用の抜き取り輪郭線を、プリントベースシートだけの貫通状態に予じめ加工したことを特徴とする。
【0015】
他方、請求項4では請求項1又は2記載の転写シール材料を使用するに当り、そのプリントベースシートのトップコート層へ表側から希望の標章を逆画像としてプリントした後、
【0016】
両面粘着シートをその背部の支点廻りに360度方向変換して裏返すと共に、その離型紙の剥離により露出した粘着剤層を介して、未だ残存している離型フィルムを上記プリントベースシートのトップコート層へ、その表側から上記標章の被覆状態に貼り合わせ、
【0017】
その貼り合わせ状態にある両面粘着シートの離型フィルムから剥離する如く、上記プリントベースシートにおける標章がプリントされた部分を転写シールとして切り抜き、
【0018】
その抜き取った転写シールを上記離型フィルムからの剥離後に露出した両面粘着シートの粘着剤層によって、目的の被写体へ貼り付けることを特徴とする。
【0019】
また、請求項5では同じく請求項1又は2記載の転写シール材料を使用するに当り、そのプリントベースシートだけに転写シール用の抜き取り輪郭線を貫通状態に加工しておき、その抜き取り輪郭線の内部へトップコート層の表側から希望の標章を逆画像としてプリントした後、
【0020】
両面粘着シートをその背部の支点廻りに360度方向変換して裏返すと共に、その離型紙の剥離により露出した粘着剤層を介して、未だ残存している離型フィルムを上記プリントベースシートのトップコート層へ、その表側から上記標章の被覆状態に貼り合わせ、
【0021】
その貼り合わせ状態にある両面粘着シートの離型フィルムから剥離する如く、上記プリントベースシートにおける標章がプリントされた部分を転写シールとして、その上記転写シール用の抜き取り輪郭線に沿い抜き取り、
【0022】
その抜き取った転写シールを上記離型フィルムからの剥離後に露出した両面粘着シートの粘着剤層によって、目的の被写体へ貼り付けることを特徴とする。
【0023】
更に、請求項6では目的の被写体へ貼り付けた結果として転写シールの表側となるプリントベースシートの吸水紙へ、水分を付与することにより、
【0024】
その吸水紙とアンダーコート層との2層をトップコート層との境界面又は中間コート層との境界面から剥離して、未だ残存するトップコート層だけの1層又はトップコート層と中間コート層との2層を通じて、逆画像の標章を正画像のそれとして表側から透視できる状態に保つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1、2の上記構成によれば、プリントベースシートと両面粘着シートとは別個独立しておらず、そのプリントベースシートが両面粘着シートへ積み重ねられた全体として、その背部(木口面)での接着剤により無線綴じ(背貼り)状態に一体化されているため、上記プリントベースシートと両面粘着シートとの貼り合わせを、ユーザーの誰でも容易に正しく行えるのであり、使用上著しく便利である。
【0026】
また、プリントベースシートはその裏側から両面粘着シートによって支持された常態にあるため、そのプリントベースシートに転写シール用抜き取り輪郭線を予じめ加工したり、その輪郭線の内部へユーザーが希望の標章をプリントしたりすることも、一切の支障なく行えるのである。
【0027】
その場合、特に請求項3の構成を採用するならば、転写シールをそのプリントベースシートの抜き取り輪郭線から、指先によって抜き取れば良く、刃物を使って切り抜き作業する必要がなく、利便性がますます向上する。
【0028】
更に、請求項4、5の構成によれば、転写シール材料の両面粘着シートをその背部(木口面)の支点廻りに360度方向変換して裏返すと共に、その離型紙の剥離により露出した粘着剤層を介して、未だ残存している両面粘着シートの透視可能な離型フィルムを、プリントベースシートの標章がプリントされているトップコート層へ、その表側から標章の被覆状態に正しく貼り合わせることができ、転写シールの作成を容易に行える効果がある。
【0029】
請求項4、5の何れの構成を採用する場合でも、その転写シールを被写体へ貼り付け転写使用するに当り、請求項6の構成を採用するならば、その転写シールを目的とする各種被写体の表面へ、誰でも簡便にすばやく貼り付けることができ、しかも転写シールの標章が使用中に水分を受けて滲み・形崩れしたり、太陽光を受けて褪色したり、まして被写体から剥離したりするおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る転写シール材料の基本実施形態を示す平面図である。
図2図1の2−2線拡大断面図である。
図3図1の転写シール材料に対する標章のプリント状態を示す平面図である。
図4図3の4−4線拡大断面図である。
図5図3の標章を抽出して示す平面図である。
図6図4から両面粘着シートを背部の支点廻りに360度方向変換する過程の断面図である。
図7図6から離型紙を全部剥離した状態の断面図である。
図8図7から両面粘着シートの離型フィルムをプリントベースシートへ表側から貼り合わせた状態の断面図である。
図9図8から転写シールを裏側へ抜き取る状態の断面図である。
図10図9の抜き取った転写シールを被写体へ貼り付け転写した状態の断面図である。
図11図10から吸水紙とアンダーコート層とが剥離された使用状態の断面図である。
図12図11の表側から見た拡大平面図である。
図13】本発明に係る変形実施形態を示す図4に対応する断面図である。
図14】同じく変形実施形態を示す図8に対応する断面図である。
図15】同じく変形実施形態を示す図9に対応する断面図である。
図16】同じく変形実施形態を示す図10に対応する断面図である。
図17】同じく変形実施形態を示す図11に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基いて本発明の具体的構成を詳述すると、図1〜12はその転写シール材料(M)の基本実施形態を示しており、これは一定な厚みのプリントベースシート(A)と両面粘着シート(B)とを備え、そのプリントベースシート(A)が両面粘着シート(B)へ積み重ねられ、且つその全体の背部(木口面)(10)が接着剤によって、無線綴じ(背貼り)の状態に一体化されたものである。
【0032】
ユーザーはこの転写シール材料(M)を用いて、希望のオリジナル(個性的)な標章(T)をプリントした転写シール(S)の複数を作成の上、その転写シール(S)の1個づつを刃物の必要なく抜き取って、目的とする各種被写体(O)の表面へ貼り付け転写使用できるようになっている。ここに、標章(T)とは文字、図形、記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合を意味する。
【0033】
先ず、上記転写シール材料(M)のプリントベースシート(A)について言えば、これは例えばはがきサイズやA5サイズ、A4サイズなどの適当な大きさ・形状として、合計3層の積層状態にある。
【0034】
即ち、(11)は所謂吸い取り紙やその他の水を吸収する吸水紙であり、約110μmの厚みを有する。(12)はその吸水紙(11)の表面全体へ約3μmの厚みとして塗工されたアンダーコート層であって、ポリビニルアルコール(商品名:ポバール)やポリビニルピロリドン、その他の水溶性(高吸水性)ポリマーから成る。
【0035】
また、(13)は上記アンダーコート層(12)の表面全体へ約5μmの厚みとして塗工された透視可能なトップコート層であり、ポリエチレンやポリプロピレン、その他の熱可塑性ポリマーから成るが、そのうちでも特にポリエチレンテレフタレート(PET)を採用することが好ましい。
【0036】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は吸水率や熱膨張係数が低く、そのトップコート層(13)として引裂き・衝撃・屈曲強度、耐熱性、耐候性、絶縁性、印刷特性(印字濃度・発色性・色再現性など)、その他の機械的・電気的性質に優れ、後述するトナー(帯電粉インク)の定着上最も有効な記録体となるからである。
【0037】
上記プリントベースシート(A)は吸水紙(11)とその表面に順次積層一体化されたアンダーコート層(12)並びにトップコート層(13)との合計3層から成るため、そのトップコート層(13)へ表側から電子写真方式のレーザープリンターや静電複写機などにより、トナー(帯電粉インク)を加熱溶着させて、そのトナーから成る希望の標章(T)を焼き付けることができる。
【0038】
次に、上記転写シール材料(M)の両面粘着シート(B)は粘着剤層(14)と、その表面全体に貼り合わせ一体化された透視可能な離型フィルム(15)と、同じく粘着剤層(14)の裏面全体に貼り合わせ一体化された離型紙(16)との合計3層から成る。その離型紙(16)には離型フィルム(15)との識別(両面粘着シートの表裏識別)を容易化するために、適当な色彩を施しておくことが望ましい。
【0039】
上記両面粘着シート(B)の粘着剤層(14)としてはアクリル系粘着剤が使用されており、その厚みは約8〜12μmである。離型フィルム(15)はポリエチレンテレフタレートやその他の透明又は半透明な合成樹脂から成り、その厚みは約38μm、離型紙(16)の厚みは約110μmである。
【0040】
その場合、図示省略してあるが、両面粘着シート(B)における表側の離型フィルム(15)に比して、裏側の離型紙(16)を軽く剥離できるように、その剥離上の軽重差が与えられている。両面粘着シート(B)の粘着剤層(14)から裏側の離型紙(16)を先に剥離し、その剥離時には勿論のこと、その後転写シール(S)を被写体(O)へ貼り付け転写使用する時までは、その表側の離型フィルム(15)が安定良く確固な貼り合わせ状態を維持できるように、その剥離力が大小に相違変化されているのである。
【0041】
そして、上記転写シール材料(M)は図1、2から明白なように、合計3層の両面粘着シート(B)とその表面に積み重ねられた合計3層のプリントベースシート(A)とから成る合計6層として、その6層の全体が背部(木口面)(10)に塗布されたホットメルト型などの接着剤により、所謂無線綴じ(背貼り)の状態に固められている。そのため人手などによる剥離力を加えない限り、上記プリントベースシート(A)と両面粘着シート(B)との分離するおそれはないが、その両シート(A)(B)の上下相互間を仮り止め状態に接着しておいても良い。
【0042】
更に、全体として上記6層をなす転写シール材料(M)のうち、その表側3層分のプリントベースシート(A)だけには転写シール(S)を抜き取るための輪郭線(17)が、図外の抜き刃型によって貫通状態に加工(ハーフカット)されており、その転写シール用抜き取り輪郭線(17)の内部へ図3、4のように、ユーザーが追って希望の標章(T)をプリント(好ましくはカラープリント)し、その標章(T)を各種被写体(O)の表面へ貼り付け転写できる転写シール(S)として使うようになっている。
【0043】
その場合、転写シール用抜き取り輪郭線(17)が言わば実線として、プリントベースシート(A)の3層を貫通する状態に加工されていても、その裏側には3層の両面粘着シート(B)が付属しており、これによる支持状態に保たれているため、転写シール(S)がその抜き取り輪郭線(17)から裏側へ不慮に脱落するおそれはない。
【0044】
尚、図1、2では一例としてはがきサイズの転写シール材料(M)へ、ハート形と円形並びに正方形という平面輪郭形状が異なる3種類・合計6個の転写シール用輪郭線(17)を並列分布状態に加工しており、これらをユーザーが選択して使用するようになっているが、上記平面輪郭形状が悉く同じ1種類・複数個の抜き取り輪郭線(17)を加工しても良く、その抜き取り輪郭線(17)の平面輪郭形状や大きさ、個数、配置などは自由に選定することができる。
【0045】
本発明の基本実施形態に係る転写シール材料(M)は上記プリントベースシート(A)と両面粘着シート(B)とから成る合計6層の無線綴じ(背貼り)した製品として、販売に供されることになるため、これを購入したユーザーが、次の作業を行うことにより、転写シール(S)を作成すれば良い。
【0046】
即ち、上記転写シール材料(M)を使用するに当っては、そのプリントベースシート(A)に予じめ加工されている転写シール用抜き取り輪郭線(17)の内部へ、先ずそのトップコート層(13)の表側から図3、4のように希望する標章(T)を、電子写真方式のカラーレーザープリンターやカラー静電複写機などによってカラープリントする。そうすれば、トナー(帯電粉インク)がトップコート層(13)へ瞬時に加熱溶着され、これから成る標章(T)が確固に焼付け定着されることになる。
【0047】
その際、上記標章(T)が文字や記号を含むなどの理由により、これを正しく読める正画像(18a)と、その逆画像(18b)とを区別する必要があるならば、その標章(T)を図3、5のような左右の反転する逆画像(18b)としてプリントする。標章(T)が図形や模様などであれば、その区別の必要はなく、正画像(18a)としてプリントしてもさしつかえない。
【0048】
そこで、次に上記転写シール材料(M)の両面粘着シート(B)を図6の矢印(R)で示す如く、その無線綴じ(背貼り)状態にある背部(木口面)(10)の支点廻りに360度方向変換して、その裏側の離型紙(16)が上記プリントベースシート(A)のトップコート層(13)と向かい合う表側へ反転させる(裏返す)と共に、その離型紙(16)を図7のように剥離する。
【0049】
その場合、転写シール材料(M)における両面粘着シート(B)の背部(10)側へ片寄った位置に、その離型紙(16)だけの分割線(19)を予じめ図2、4、6のように切り込み加工(ハーフカット)しておくことが好ましい。
【0050】
そうすれば、その分割線(19)から離型紙(16)の片寄った位置にある小面積な一部を、図6のように先行的に剥離して、その露出した粘着剤層(14)の対応位置する小面積の一部により、離型フィルム(15)の対応位置する一部をプリントベースシート(A)のトップコート層(13)へ貼り合わせ、その後離型紙(16)の残る全部を図6から図7のように、引き続き分割線(19)から剥離して、その露出した粘着剤層(14)の対応位置する大面積の大半部により、同じく離型フィルム(15)の対応位置に残る全部を、やはりプリントベースシート(A)のトップコート層(13)へ貼り合わせることにより、その貼り合わせ作業をすばやく円滑に行うことができる。
【0051】
何れにしても、両面粘着シート(B)の露出した粘着剤層(14)を介して、その両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)を図8のように、プリントベースシート(A)のトップコート層(13)へ貼り合わせることにより、そのトップコート層(13)に予じめプリントされている標章(T)を表側から被覆するのである。その被覆したとしても、表側から離型フィルム(15)を通じて、標章(T)を支障なく透視することができる。
【0052】
図1〜4のように、上記転写シール材料(M)のプリントベースシート(A)へ複数の転写シール用抜き取り輪郭線(17)を加工し、その抜き取り輪郭線(17)の内部へ悉く上記標章(T)をプリントした場合には、その並列分布状態にある標章(T)のすべてが、共通する両面粘着シート(B)の透視可能な離型フィルム(15)によって表側から被覆される結果となる。
【0053】
そのため、更に上記転写シール(S)を目的の被写体(O)へ貼り付け転写使用するに当っては、図8の状態にある転写シール(S)を1個づつ図9のように、両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)から裏側へ剥離する如く、上記プリントベースシート(A)の転写シール用抜き取り輪郭線(17)に沿って抜き取る。
【0054】
そうすれば、その抜き取った転写シール(S)には依然両面粘着シート(B)の粘着剤層(14)が付属しており、しかもその粘着剤層(14)は上記離型フィルム(15)から剥離された結果として、露出することになるため、その露出した粘着剤層(14)によって、上記転写シール(S)を引き続き図10のように、目的とする被写体(O)の表面へ貼り付け転写することができる。
【0055】
その目的の被写体(O)へ貼り付け転写すると、上記転写シール(S)を形作っている転写シール材料(M)のプリントベースシート(A)としては、図10から明白なように、その標章(T)のプリントされているトップコート層(13)が裏側となり、吸水紙(11)が表側となる表裏反転状態になるため、同図の矢印(F)方向から所要量の水分を付与する。その水分の付与は、例えばありふれたスポンジやティッシュペーパーなどに少量の水分を含浸させて、これにより表側から吸水紙(11)を濡らせば良い。
【0056】
そうすれば、図10図11との対比から明白なように、上記転写シール材料(M)のプリントベースシート(A)を形成している吸水紙(11)とアンダーコート層(12)との2層が、水分を吸収して柔軟化又は溶融するため、そのアンダーコート層(12)と上記トップコート層(13)との境界面が剥離界面となって、ここからアンダーコート層(12)と吸水紙(11)との2層を滑る如く、すばやく確実に剥離することができ、被写体(O)の表面には転写シール(S)の標章(T)を被覆したトップコート層(13)だけが、貼り付け使用状態として残る結果になる。
【0057】
その最終的な被写体(O)への貼り付け転写使用状態は図11、12に示すとおりであり、その転写シール(S)のプリントベースシート(A)が表裏反転するため、逆画像(18b)としてプリントされていた標章(T)は表側から正しく読み取れる正画像(18a)となり、しかも上記プリントベースシート(A)のトップコート層(13)を通じて、その正画像(18a)を透視することができる。
【0058】
その場合、上記プリントベースシート(A)の転写シール用抜き取り輪郭線(17)から抜き取られた転写シール(S)における平面輪郭形状の縁取り線(輪郭線)を、図12に実線として表示しているが、そのプリントベースシート(A)のトップコート層(13)は透視可能なものであるため、転写シール(S)自身の上記輪郭線を表側から目視することはできず、目視できるものは標章(T)だけとなる。
【0059】
また、その標章(T)を表側から被覆するトップコート層(13)は極薄な1層であるに過ぎないため、被写体(O)の表面が均斉なフラット面のみならず、たとえ曲面や凹凸粗面、角張ったコーナー面などであっても、これらに馴染み良く屈曲変形して密着一体化し、更に標章(T)がトナー(帯電粉インク)から造形されているため、その使用中に人体の発汗や外界からの雨水、洗濯水、摩擦力などを受けるも、決して消失したり、滲み・形崩れしたり、太陽光に晒されて褪色したりするおそれもない。
【0060】
次に、図13〜17は本発明に係る転写シール材料(M)の変形実施形態を示しており、これでは基本実施形態の図4と対応する図13から明白なように、その転写シール材料(M)のプリントベースシート(A)が上記基本実施形態と同じ吸水紙(11)とアンダーコート層(12)並びにトップコート層(13)のほか、そのトップコート層(13)とアンダーコート層(12)との表裏(上下)相互間に介在する中間コート層(20)も備えた合計4層に積層一体化されている。
【0061】
転写シール材料(M)の両面粘着シート(B)は上記基本実施形態のそれと同じ合計3層から成り、その合計4層のプリントベースシート(A)を合計3層の両面粘着シート(B)へ積み重ねた合計7層の転写シール材料(M)が、その背部(木口面)(10)での接着剤によって全体の無線綴じ(背貼り)状態に保たれているのである。
【0062】
上記プリントベースシート(A)の中間コート層(20)はアクリル樹脂やその他の撥水性を有し、しかも透視可能なポリマーから成り、上記水溶性を有するアンダーコート層(12)の表面全体へ、約5μmの厚みに塗工されている。このような中間コート層(20)の表面全体に透視可能なトップコート層(13)が約5μmの厚みとして塗工されているのである。
【0063】
その場合、水溶性のアンダーコート層(12)に対して、これとの言わば逆な撥水性の中間コート層(20)を積層一体化させた理由は、転写シール(S)を被写体(O)へ貼り付け転写使用する時に、吸水紙(11)の存在する表側から与えられる水分を撥ねることにより、そのアンダーコート層(12)と中間コート層(20)との境界面を安定・確固な剥離界面として機能させ、その中間コート層(20)からアンダーコート層(12)と吸水紙(11)との2層を容易・円滑に剥離できるようにするためである。
【0064】
そして、合計4層の上記プリントベースシート(A)だけには、やはり転写シール(S)を抜き取るための輪郭線(17)が、予じめ貫通状態に開口されている。
【0065】
そのため、上記変形実施形態の転写シール材料(M)を使用するに当っては、そのプリントベースシート(A)に予じめ加工されている転写シール用抜き取り輪郭線(17)の内部へ、ユーザーが表側からインクジェットプリンターを用いて、図13のように希望の標章(T)を逆画像(18a)としてプリントする。
【0066】
その後は上記基本実施形態と同様に、図6、7の過程を経て、図14の状態にある転写シール(S)を1個づつ図15のように、両面粘着シート(B)の離型フィルム(15)から裏側へ剥離する如く、プリントベースシート(A)の転写シール用抜き取り輪郭線(17)に沿って抜き取る。
【0067】
その離型フィルム(15)から剥離した転写シール(S)に付属の粘着剤層(14)は、露出することになる結果、これによって転写シール(S)を図16のように、目的とする被写体(O)の表面へ貼り付け転写する。
【0068】
そうすれば、やはり上記標章(T)のプリントされているトップコート層(13)が裏側となり、吸水紙(11)が表側となる表裏反転状態を得られるため、その表側から所要量の水分を与えるのである。
【0069】
その水分の付与により、上記プリントベースシート(A)の吸水紙(11)とアンダーコート層(12)との2層がやはり水分を吸収して柔軟化又は溶融する一方、同じくプリントベースシート(A)の中間コート層(20)は撥水性を有するため、これによって水分が撥ねられ、その中間コート層(20)とアンダーコート層(12)との境界面が剥離界面になって、ここからアンダーコート層(12)と吸水紙(11)との2層が滑る如く、確実に剥離するのである。
【0070】
そして、被写体(O)への貼り付け転写使用状態では図17から明白なように、その転写シール(S)の残る中間コート層(20)とトップコート層(13)との2層が、標章(T)を表側からは保護するマスキングシートとして機能し、その標章(T)を表側から透視できる状態に保つこととなる。
【0071】
図13〜17の変形実施形態におけるその他の構成と使用法は、図1〜12の上記基本実施形態と実質的に同一であるため、その図13〜17に図1〜12と同じ符号を記入するにとどめて、その詳細な説明を省略する。
【0072】
尚、上記基本実施形態と変形実施形態との何れにあっても、その転写シール材料(M)を形成しているプリントベースシート(A)には、転写シール(S)の抜き取り輪郭線(17)を貫通状態に予じめ加工しており、これによって刃物とそのユーザーの切り抜き作業を不要化しているが、上記転写シール用抜き取り輪郭線(17)の加工を省略して、ユーザーが転写シール材料(M)のプリントベースシート(A)へ自由に制約なく希望の標章(T)をプリントできるように定めても良い。
【符号の説明】
【0073】
(10)・背部
(11)・吸水紙
(12)・アンダーコート層
(13)・トップコート層
(14)・粘着剤層
(15)・離型フィルム
(16)・離型紙
(17)・転写シール用抜き取り輪郭線
(18a)・正画像
(18b)・逆画像
(19)・離型紙の分割線
(20)・中間コート層
(A)・プリントベースシート
(B)・両面粘着シート
(M)・転写シール材料
(O)・被写体
(S)・転写シール
(T)・標章
【要約】
【課題】転写シールになる標章がプリントされたプリントベースシートと、その被写体への貼り付け用になる両面粘着シートとを、常時容易に正しく貼り合わすことができるようにする。
【解決手段】吸水紙(11)の表面へ水溶性のアンダーコート層(12)と透視可能なトップコート層(13)とが順次積層一体化された合計3層のプリントベースシート(A)と、粘着剤層(14)の表面に透視可能な離型フィルム(15)と同じく裏面に離型紙(16)とが貼り合わされた合計3層の両面粘着シート(B)とを備え、上記プリントベースシート(A)を両面粘着シート(B)へ積み重ねた合計6層として、その全体の背部(10)を接着剤での無線綴じ状態に保った転写シール材料(M)である。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17