特許第6209269号(P6209269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209269
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】可動家具部の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/453 20170101AFI20170925BHJP
   A47B 88/40 20170101ALI20170925BHJP
【FI】
   A47B88/00 H
   A47B88/04 E
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-506717(P2016-506717)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公表番号】特表2016-518176(P2016-518176A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】AT2014000056
(87)【国際公開番号】WO2014165874
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】A292/2013
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴーツ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,フロリアン
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−532135(JP,A)
【文献】 特表2009−513263(JP,A)
【文献】 特開2012−239738(JP,A)
【文献】 特表2014−516649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動家具部(2)のための駆動装置(1)であって、駆出要素(3)と、駆出力保存手段(4)と、前記駆出要素(3)のためのロック装置(5)と、を備え、前記ロック装置(5)は、前記駆出力保存手段(4)により作用を受けるロックピン(7)であって、ガイド通路(6)のラッチ領域(R)のロック位置(V)にロック可能なロックピン(7)を有しており、前記ガイド通路(6)はカージオイド形状ガイド通路であり、前記カージオイド形状ガイド通路が、応力付与部分(S)であって、そこで前記ロックピン(7)が前記駆出力保存手段(4)の応力付与時に可動である応力付与部分(S)と、前記ラッチ領域(R)の前記ロック位置(V)に到達する前の前記ロックピン(7)のラッチ係合動作領域(E)と、を有した駆動装置(1)において、応力印加された前記駆出力保存手段(4)により作用を受ける前記ロックピン(7)は、前記ラッチ係合動作領域(E)内で減衰されて可動であり、減衰されて前記ラッチ領域(R)内に配置できることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記ラッチ領域(R)は、前記応力付与部分(S)と前記ラッチ係合動作領域(E)との間の移行領域(U)から、前記可動家具部(2)の開方向(OR)に間隔が開けられていることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記ロックピン(7)は、前記ロックピン(7)が前記駆出力保存手段(4)により前記ラッチ係合動作領域(E)に沿って前記ラッチ領域(R)内に移動可能であるよう、前記移行領域(U)への到達で、前記可動家具部(2)の動作から切り離されることができることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆出力保存手段(4)と前記ロックピン(7)との間で作動し、前記ロック位置(V)に到達する前に、前記駆出力保存手段(4)から前記ロックピン(7)へと伝達される運動エネルギーを減衰する減衰装置(8)が提供されていることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ロックピン(7)に作用する運動エネルギーは、前記ロックピン(7)の前記ラッチ係合動作領域(E)においてのみ前記減衰装置(8)によって減衰されることを特徴とする請求項4記載の駆動装置。
【請求項6】
前記減衰装置(8)は制御カーブ(9)を有しており、前記制御カーブ(9)によって、前記ロックピン(7)に作用する前記駆出力保存手段(4)からの運動エネルギーは、前記制御カーブ(9)に応じて前記ラッチ係合動作領域(E)に沿って増加することを特徴とする請求項4または5記載の駆動装置。
【請求項7】
前記減衰装置(8)は可動減衰要素を有していることを特徴とする請求項4記載の駆動装置。
【請求項8】
前記可動減衰要素は、回転動作が減衰される回転ギヤ(11)を含んでおり、前記回転ギヤ(11)の少なくとも1つの歯部(12)は前記ラッチ係合動作領域(E)で前記ロックピン(7)と接触でき、前記ラッチ領域(R)の方向に減衰されて可動であることを特徴とする請求項7記載の駆動装置。
【請求項9】
前記駆出要素(3)を形成するベースプレート(14)とスライダ(15)とを含んでおり、前記スライダは、前記ベースプレート(14)に対して可動であり、前記ロック装置(5)によって前記ベースプレート(14)にロックすることが可能であることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項10】
前記駆出力保存手段(4)は、一方側で前記ベースプレート(14)に固定され、他方側で前記スライダ(15)に固定されていることを特徴とする請求項9記載の駆動装置。
【請求項11】
前記ロックピン(7)はロックレバー(16)によって前記スライダ(15)に回転可能に取り付けられており、前記ロックピン(7)は前記ベースプレート(14)に形成された前記ガイド通路(6)内で可動であることを特徴とする請求項9または10記載の駆動装置。
【請求項12】
前記駆出力保存手段(4)は前記可動家具部(2)の開動作及び/又は閉動作によって荷重が掛けられ得ることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項13】
前記ロックピン(7)は、前記ラッチ領域(R)に到達する前に、前記ラッチ係合動作領域(E)において減衰されて可動であることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項14】
家具筐体(18)と、前記家具筐体(18)に対して可動である可動家具部(2)と、前記可動家具部(2)のための請求項1記載の駆動装置(1)と、を備えた家具(17)。
【請求項15】
前記駆動装置(1)のベースプレート(14)が前記可動家具部(2)に配置されており、前記駆出要素(3)と係合することができる同伴部分(19)が前記家具筐体(18)に配置されていることを特徴とする請求項14記載の家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆出要素、駆出力保存手段および駆出要素のためのロック装置を含んだ可動家具部のための駆動装置に関し、このロック装置は、駆出力保存手段により作用を受け、ガイド通路のラッチ領域のロック位置にてロック可能なロックピンを有している。このガイド通路はカージオイド形状構造であり、このカージオイド形状ガイド通路は、駆出力保存手段の応力付与によってロックピンが可動である応力付与部分と、ラッチ領域のロック位置に到達する前のロックピンのラッチ係合動作領域とを有している。本発明はさらに、家具筐体、家具筐体に対して可動である可動家具部、および可動家具部のための駆動装置を含んだ家具にも関する。
【背景技術】
【0002】
閉位置から開位置にまで可動家具部を駆出する駆動装置は家具装備具産業において既に何年にも亘って知られている。駆出要素または可動家具部が、閉位置に確実に保持されることを保証するため、ロック装置がその構造に利用されている。可動家具部を開くことが望まれるとき、ロック装置は起動(トリガー)機構の作用によってロック解除できる。ロック解除は、例えば、過押圧位置(オーバプレス位置)にまで押込むために可動家具部を押圧することによって実行できる。起動操作またはロック解除は引張動作によっても可能である。そのようなロックの解除後、駆出力保存手段はその作用力を発揮でき、そうすることで、可動家具部を駆出要素によって開方向に移動させることができる。
【0003】
可動家具部が開かれて駆出力保存手段がその荷重(負荷)を解放した後、その駆出力は応力の付与によって駆出力保存手段に回復されなければならない。それは一般的に、可動家具部を手によって移動させるユーザが可動家具部を閉めるときに(開くときであっても可能)実施される。従って、押圧力が可動家具部の閉鎖時に付与されると、圧力は駆出力保存手段の作用力にも抗して付与される。駆出力保存手段が十分に応力を受領すると直ちに、ロック装置のロックピンはガイド通路を通過してラッチ(掛け留め)領域内に進入するが、その場合には、駆出力保存手段は応力付与位置に手では保持されなくなり、ロックピンが応力を付与された駆出力保存手段をラッチ領域のロック位置にてロックまたは保持する。
【0004】
応力付与およびロック作用の点で重要な領域は、ラッチ領域のロック位置に到達する直前の領域である。特に、もしガイド通路の形態によってラッチピンがラッチ領域に到達する直前に1領域に進入したら、駆出力保存手段は比較的高い作用力でそのロックピンに作用でき、この場合には、続いて、比較的大きな騒音や摩耗が発生するアバットメント(当接)状態になる。
【0005】
DE102011002212R1は、ラッチ凹部を形成するバネ要素を開示するが、これは引張動作によるロック解除を同時に許容するだけである。
【0006】
WO2007/112463A2は、騒音発生問題に対処するが、その目的のために、可動家具部全体は、駆出力保存手段が荷重される前に制動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE102011002212R1
【特許文献2】WO2007/112463A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、従来のものよりも改善された駆動装置を提供することである。特に、本発明は、可能な限り静かにロック動作を実行させることを探求する。本発明はさらに、関与する構成要素に対する可能な限り少ない荷重でロック作用を実行させることを探求する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
それは、請求項1の特徴を備えた駆動装置によって達成される。従って、減衰関係にある、応力印加された駆出力保存手段によって作用を受けるロックピンがラッチ係合作動領域で可動であり、ラッチ領域に配置できる。従って、ラッチ領域に到達すると、駆出力保存手段の全作用力はロックピンに作用しなくなるが、ラッチ領域に到達する前または到達時にロックピンの動作は減衰される。
【0010】
そのようなカージオイド形状のガイド通路により、ラッチ領域は、応力付与部とラッチ係合動作領域との間に存在する移行領域から、好適には0.2mmから3mmだけ可動家具部の開方向に間隔が設けられる。移行領域への到達からのように、ロックピンは可動家具部の動作から、好適には完全に連結解除でき、よってロックピンはラッチ係合動作領域に沿って駆出力保存手段によってラッチ領域内に移動が可能であるため、駆出力保存手段からロックピンに作用する高作用力により、比較的大きな衝突およびロック雑音が発生する原因となるのは、まさに、前述のカージオイド形状ガイド通路での移行領域とラッチ領域との間の空隙である。駆出力保存手段の作用力が大きければ大きいほど、ロック騒音はさらに大きく、さらに不快になる。そのようなことは、ロックピンに関しては減衰作用によって防止される。
【0011】
原理的に、ロックピンがラッチ領域に減衰関係で配置できる複数の異なる方法が着想できる。
【0012】
第1の別態様では、駆出力保存手段とロックピンとの間で作動し、ロック位置に到達する前に駆出力保存手段からロックピンに伝達される運動エネルギーを減衰する減衰装置が活用される。よって、移行領域の達成(到達)からのように、ロックピンに伝達されるのは全エネルギーではない。言い換えると、ロックピンに作用する運動エネルギーは減衰装置によって減衰される。この目的の達成のため、特に好適には、ロックピンに作用する運動エネルギーは、ロックピンのラッチ係合動作領域においてのみ減衰装置によって減衰される。その減衰装置は、全体的なラッチ係合動作領域でロックピンの動作を減衰する必要もないが、その領域の一部のみでも減衰ができる。そのような減衰装置の特に好適な実施態様では、減衰装置は走行伝達機構の形態である。よって、駆出力保存手段からロックピンに直ちに伝達されるのは全エネルギーではない。それは、例えば、ロックピンを、走行伝達機構によってカーブ制御関係でラッチ領域に配置できる構成により実行でき、走行伝達機構は制御カーブを有しており、それにより、ロックピンに作用する駆出力保存手段からの運動エネルギーは、好適には制御カーブに依存して、ラッチ係合動作領域に沿って安定的に増加する。駆出力保存手段からロックピンへのエネルギーの緩慢な搬送のための別な態様では、ダンパ、例えばリニアダンパの形態のダンパが、駆出力保存手段の領域に、またはその頭部に配置される。よって、駆出力保存手段の応力解放走行の第1部分は、全応力付与から閉位置で達成される略全応力付与までである。
【0013】
ロックピンを減衰関係でラッチ領域に配置する第2の態様では、ロックピンへの運動エネルギーの移行は遅延または制御されないが、駆出力保存手段の全作用力が既に作用しているロックピン自体の動作が減衰される。この目的で、別な態様では、減衰装置は可動減衰要素、好適には回転ダンパを有しており、減衰要素は減衰された回転関係で取り付けられたギヤを含み、少なくとも1つのギヤの歯部がラッチ係合動作領域のロックピンによって接触が可能であり、ラッチ領域の方向の減衰された関係での動作が可能である。よって、実際には、ラッチ係合動作領域のギヤの歯部は一種の減衰を提供し、ロックピンは妨害されずにはラッチ領域内に移動できない。好適には、ロックピンは旋回可能なロックレバー上に配置されるので、ロックレバーの回転軸の領域に回転ダンパまたは摩擦減衰装置を設置することでロックピンの減衰作用も発生が可能である。
【0014】
原理上は、構造的に単純な形態となるように駆出要素を形成するベース(基礎)プレートとスライダが提供され、スライダはベースプレートに対して可動であり、ロック装置によってベースプレートにロックできる。この場合、好適には引張バネの形態である駆出力保存手段は、片側でベースプレートに、他方側でスライダに固定される。ガイド通路におけるロックピンの動作を許容するため、好適には、ロックピンは、ロックレバーを介してスライダに回転可能に取り付けられ、ベースプレートのガイド通路に係合する。この場合、上述したように、ロックレバーの動作も減衰装置によって減衰できる。
【0015】
原理上は、駆出力保存手段は、可動家具部を開くことで、及び/又は閉じることで荷重できる。可動家具部を閉方向における閉位置の背後に存在する押込み位置に押込むことによって、及び/又は可動家具部を閉位置の前方に存在する開位置に引っ張ることによって、駆動装置全体をロック解除または起動させることも可能である。
【0016】
本発明は家具筐体を有した家具にも関する。この点で、駆動装置の必須構成要素は家具筐体上に配置され、可動家具部は可動家具部または引出しレールに取り付けられた同伴部分(帯同部分)によって駆出できる。しかし本発明の1好適実施態様においては、駆動装置のベースプレートは可動家具に配置され、駆出要素と係合できる同伴部分は家具筐体上に配置できる。よって、可動家具部は事実上、駆動装置を介して家具筐体に対して自身を押し付ける。
【0017】
本発明のさらなる詳細と利点は、図面に図示された例示としての実施例に関する特定の説明によって以下で十分に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は様々な位置にある可動家具部を備えた家具を示す。
図2図2は可動家具部の斜視図である。
図3図3は駆動装置を備えた可動家具部を下方から示す。
図4図4は駆動装置の分解図である。
図5-18】図5から図18は様々な位置に存在する駆動装置を示す。
図19図19は駆動装置の第2の実施例の分解図である。
図20図20は第2の駆動装置の詳細図である。
図20a-20g】図20aから図20gは、2構成要素射出成形を利用して作製された減衰装置の1実施例を示す。
図20h-20k】図20hから図20kは、複構成要素射出成形を利用して作製された減衰装置の1実施例を示す。
図21-26】図21から図26は第2の駆動装置の別位置を示す。
図27-28】図27図28は減衰装置のさらに別実施例を示す。
図29-30】図29図30は緩衝されたアバットメントの形態の減衰装置を示す。
図31図31は本発明の基本原理を概略的に示す。
図32図32は第1の実施例に適合する駆出力保存手段のバネ作用力を図示するグラフである。
図33-40】図33から図40は引張動作によって起動するさらなる別実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、家具筐体18に可動に取り付けられた引出し形態の複数の可動家具部2を備えた家具17を示す。この場合、個々の可動家具部2は、延伸ガイド手段24を介して家具筐体18にそれぞれ取り付けられており、延伸ガイド手段24は少なくとも1つの筐体レール22および引出しレール23を含んでいる。中央レールも存在できる。可動家具部2自体は少なくとも1つの引出し収容部20と前方パネル21とを有する。上方部に示される可動家具部2は開位置OSに存在し、駆動装置1が引出し収容部20または引出しレール23に取り付けられている様が示されている。必須要素としての駆動装置1はベースプレート14と、ベースプレート14に対して可動である駆出要素3とを有する。駆出要素3は移動可能なスライダの形態であり、駆出力保存手段4によって作用を受ける。駆出要素3は同伴部分19を介して筐体レール22および家具筐体18にそれぞれ係合する。駆出時に、駆動装置1は駆出要素3を介して同伴部分19と当接し、かつ、この場合には圧縮バネの形態である、開方向ORに可動家具部2を移動させる駆出力保存手段4に当接する。駆出装置3はロック装置5を介してベースプレート14にロックできる。この目的で、ロック装置5は、ベースプレート14内にラッチ領域Rと共に、スライダ15に旋回可能に取り付けられたロックレバー16と、ロックレバー16の前端部に配置されたロックピン7と、ガイド通路6とを有する。可動家具部2が最上部の引出しが示す位置からその下に示す位置に移動すると、閉方向SRでのその動作において、スライダ15はベースプレート14に対して右側に移動し、駆出力保存手段4が応力を受ける。ロックピン7はガイド通路6のラッチ領域に進入すると直ちにロック装置5のロック位置Vに到達する。そのような状況は、可動家具部2が未だ開いているときに該当し、特に、引き込み装置25(概略的に図示)によって可動家具部2が第2の図示位置から第3の図示位置、さらに閉位置SSに移動した場合に該当する。図1の最下部に示す図は起動位置を示し、または圧力が閉方向SRで可動家具部2に適用され、ロック装置5をロック解除する押込み位置USを示す。しかし、引張動作によってロック解除するように構成することも可能である。
【0020】
図2は可動家具部2の斜視図であり、可動家具部2は引出し収容部20と前方パネル21とを含んでいる。また可動家具部2は延伸ガイド手段24に接続されている。
【0021】
図3は可動家具部2を下方から示しており、駆動装置1は引出し底部27に取り付けられたベースプレート14を備えている。筐体レール22には同伴部分19が取り付けられている同伴プレート26が固定されている。
【0022】
図4は駆動装置1の分解図であり、2つの主要構成要素は、ベースプレート14と、駆出要素3を形成するスライダ15とである。これら2つの構成要素14と15の相対的な直線動作は、少なくともベースプレート14に取り付けられたスライダ通路制限部37と、スライダ15内のスライダ通路36とにより制限される。別の重要な構成要素は、ベースプレート14上のバネベース(基礎部)31と、スライダ15上のバネベース32で保持される駆出力保存手段4である。その駆出力保存手段4は引張バネの形態である。ロックピン17を備えたロックレバー16と、カージオイド形状のガイド通路6とが、ロック装置5として提供されている。ロックレバー16はスライダ15内の回転ベアリング(支承部)28に回転可能または旋回可能に取り付けられている。取り付け状態でロックピン7はガイド通路6に係合する。ガイド制限手段52を介してスライダ15の下側に提供された通路(図示せず)に制限的可動状態で取り付けられた伝達要素42がさらに存在する。連結要素33が旋回ベアリング73でその伝達要素42に旋回可能に取り付けられている。その連結要素33は同伴部分19(図示せず)のために捕捉領域34を有する。ガイド要素74がスライダ15内の連結要素ガイド通路35内を導かれるとき、連結要素33の旋回動作はガイド要素74を介して制御される。回転ベアリング44内に回転可能に取り付けられた接続要素41も存在する。応力付与アバットメント55がその接続要素41上に存在する。別の構成要素として、ベースプレート14内の制御要素ガイド通路30内でガイド要素57を介して可動または移動可能な制御要素29が使用されている。また制御要素29には、駆出力保存手段4の応力付与によって接続要素41の応力付与アバットメント(当接部)55に当接する応力付与要素56も取り付けられている。制御要素29は、それぞれの位置に応じて伝達要素42上のアバットメント43が当接する制御カーブも有している。それら2つの構成要素43と9は共に、一種の走行伝達機構を形成しており、よって、ロックピン7を減衰関係でラッチ領域R内に移動させるための減衰装置8を形成している(このことは以下の図面でさらに詳細に説明されている)。さらに、第1の引張起動要素46はベースプレート14に回転ベアリング19を介して回転可能に取り付けられている。その第1の引張起動要素46は2つの制限要素61を有しており、それらの間に伝達要素42のアバットメント43が閉位置SSに配置されている。また、その上にラッチ領域Rを形成するロックアバットメント45が提供されている第2の引張起動要素47も存在する。よって、そのロックアバットメント45はガイド通路6の一部を形成し、ベースプレート14に対して可動である。その第2の引張起動要素47の移動はガイドアバットメント75とベースプレート14の側面76によって制限される。さらに、その第2の引張起動要素46は圧縮バネ48を介して加圧され、圧縮バネ48は一方側でバネベース50に固定または保持され、他方側で第2の引張起動要素47のバネベース51に固定または保持される。最後に、駆動装置1は、必須構成要素として引込み力保存手段40、引込み連結要素39、およびカバー要素38を有する引込み装置25も有し、カバー要素38は保持クリップ77を介してベースプレート14内の開口部78に保持される。引込み力保存手段40は引張バネの形態である。
【0023】
図5に示すように、可動家具部2の全体が開位置OSに存在しており、可動家具部2は自由走行状態にある。言い換えると、概略的に図示された同伴部分19との接触は未だない。駆出力保存手段4は未だ応力が解放されているが、スライダ通路36の端部がスライダ通路制限手段37に当接するまでスライダ15を引張動作する。ロックピン7はガイド通路6の応力付与部分S内を導かれる。制御要素29の応力付与要素56は接続要素41の応力付与アバットメント55に未だ当接していないが、一方、伝達要素42のアバットメント43は既に制御要素29および制御カーブ9の開始部でそこに当接している。バネベース53とバネベース54の間で作用する圧縮バネ(図示せず)により、接続要素41は回転ベアリング44の周囲を左側に旋回する。さらに、詳細図の右底部で、ガイド通路6は、応力付与部分Sと、移行領域Uの後にラッチ係合動作領域Eを有する。第2の引張起動要素47に取り付けられたロックアバットメント45によって形成されたラッチ領域Rは、そのラッチ係合動作領域Eの端部に提供されている。そのラッチ領域Rには駆出部分Aが続き、ロックピン7はダイバージョン(方向変換)表面79を介して駆出部分Aに進入する。ロックピン7がそのダイバージョン表面79に遭遇するのは、押込み操作によってロック解除されたときだけである。一方、引張動作によってロック解除されると、ロックアバットメント45は下方に引っ張られ、ロックピン7を駆出部分Aへ導く通路も自由状態になり、駆出力保存手段4は応力が解放される。以下で説明される図6から図18は必ずしも全ての部材番号を示していない。しかし、当然ながら、その参照番号は全て図5から図18のそれぞれに対応する。
【0024】
図6で示すように、可動家具部2は閉方向SRに駆動装置1と共に移動し、続いて、連結要素23は家具筐体に対して固定されている同伴部分19と当接する。その結果、連結要素ガイド通路35と、その内部を導かれるガイド要素74の形態のおかげで、連結要素33は旋回軸73の周囲を旋回し、同伴部分19は連結要素33の捕捉領域34内に捕捉される。図6で示すように、可動家具部2の手動による閉方向SRでの閉動作によって、連結要素33は伝達要素42と共に図5の位置から相当の距離を既に移動している。アバットメント43を介して制御要素29もその動作によって移動する。応力付与要素56はその制御要素29上に提供されているので、接続要素41もまた応力付与アバットメント55を介して移動する。その接続要素41がスライダ15上で回転ベアリング44に再び取り付けられているので、スライダ15の全体と、それと共に駆出要素3とは、駆出力保存手段4の応力付与によりベースプレート14に対して移動する。その移動のおかげで、ロックピン7も応力付与部分Sに沿って移行領域Uの近辺内へさらに移動している。図6には、制御要素29が、ガイド要素57と制御要素ガイド通路30を介してわずかに旋回することが示されている。
【0025】
図7に示すように、既に制御要素29のその旋回動作がさらに継続しており、伝達要素42のアバットメント43が制御要素29上の制御カーブ9に沿って既に移動している。同時に、ロックピン7は既に移行領域Uを越えて移動しており、ラッチ係合動作領域Eの開始部に存在する。前述の実施例では、その瞬間に駆出要素3とスライダ15とは利用者のプレス動作から連結解除されており、スライダ15は自由化されている。その結果、駆出力保存手段4の全駆出力はロックピン7に作用することができ、それを素早く動かし、ラッチ係合動作領域Eに沿った大きな作用力でラッチ領域R内に進入させている。その結果、前述の実施例では、大量の雑音が発生し、ロック装置5の部品には著しい荷重が影響を及ぼすという弱点があった。それに比べて、図7では、スライダ15は駆出力保存手段4によって既に伝達要素42およびそのアバットメント43から連結解除されているが、制御カーブ9の形態のおかげで全体的な連結解除は未だ発生していない。それどころか、アバットメント43と制御カーブ9は走行伝達機構を形成しており、よって、ロックピン7のための一種の減衰装置8を形成している。その結果、ロックピン7上で駆出力保存手段から発生する運動エネルギーは緩慢に増加するだけである。
【0026】
このことは図8にも示されており、そこではアバットメント43は制御カーブ9に沿ってさらに移動しており、同時にラッチ係合動作領域Eでのロックピン7のさらなる動作が発生している。駆出力保存手段4がベースプレート14に対してスライダ15を既に再び移動させているという事実は、スライダ通路制限手段37が図7からスライダ通路36に対して移動しているという事実から理解できる。
【0027】
図9では、アバットメント43と制御要素29の制御カーブ9との間には接触がなくなり、駆出力保存手段4の全作用力は、スライダ15、回転ベアリング28およびロックレバー16を介してロックピン7に作用している。しかし、ロックピン7に対して駆出力保存手段4により全作用力が発揮されている瞬間に、そのロックピン7は既にラッチ領域Rに存在するので、大きな騒音は発生せず、大きな摩耗もない。図9で示す位置において、制御要素29は緩んでおり、制御要素ガイド通路30では作用力に影響されない。伝達要素42のさらなる移動のおかげで、接続要素41は圧縮バネ(非図示)の作用力に抗して時計回り方向に旋回する。これは、接続要素41上のダイバージョンアバットメント58が伝達要素42上のダイバージョン面59によって移動または進路変更されるときに生じる。図9では、ロック装置5はロック位置Vに既に存在しているが、可動家具部2は未だ開位置OSに存在する。しかしながら、手動での閉動作により連結要素33は、引き込み連結要素39が引き込み装置25の曲形状端部分80から移動しており、引き込み連結要素39が連結要素33上で連結ピン60に結合するよう、既にベースプレート14に対して移動している。引き込み連結要素39が曲形状部分80には存在しなくなるため、引き込み力保存手段40も応力が解放されるに連れて収縮し、可動家具部2全体はさらに閉方向SRに移動し、図10で示す位置に到達する。その位置は閉位置SSに到達する直前の位置に対応する。この図10に示すように、スライダ15に対する伝達要素42のさらなる移動のおかげで、接続要素41はダイバージョンアバットメント58によってさらに時計回り方向に旋回している。その結果、制御要素29の応力付与要素56は接続要素41の応力付与アバットメント55との係合から外れる。図10はさらに、伝達要素42のアバットメント43が、第1の引張起動要素46の制限要素61間に存在し、第2の引張起動要素47の弾性アーム部62に横方向で当接する。
【0028】
引き込み力保存手段40は図11で示すように応力が解放されているとき、図11で示すような閉位置SSに到達する。図11で示すように、第1の引張起動要素46も、アバットメント43と伝達要素42を介して発揮された圧力のおかげで、反時計回り方向に回転ベアリング49の周囲を回転しており、アーム部81は弾性アーム部62前方側部に当接し、弾性アーム部62を撓ませる。
【0029】
図11で示すように押圧力が閉位置SSから始めて閉方向SRで可動家具部2に作用すると、可動家具部は図12で示すように押込み位置USにまで進入する。図11で示すように、伝達要素42がガイド制限手段52を介して既にスライダ15の通路の端部に到達しているので、この押込み状況においてスライダ15の全体はベースプレート14側に移動し、ロックピン7もラッチ領域Rから脱出し、ダイバージョン面79を介して駆出部分A内に進入する。
【0030】
図13で示すように、その別実施例として、ロック解除は引張動作によっても可能である。この場合には、図11で示す位置から始めて可動家具部2は引っ張られ、伝達要素42とそのアバットメント43は連結要素33を介してスライダ15に対して移動する。図11で示すように、アバットメント43が、制限要素61間に未だ捕捉されているので、第1の引張起動要素46はその引張動作によって時計回り方向に回転ベアリング49の周囲を回転する。第1の引張起動要素46のアーム部81が第2の引張起動要素47の弾性アーム部62の端部に当接すると(その端部により作用力を受けても変形せず、その形状を保つ)、その引張起動要素47は、図13において圧縮されたバネ48の作用力に抗してベースプレート14に対して移動し、ロックアバットメント45もラッチ領域Rから脱出する。その結果、ロックピン7はラッチ領域Rには保持されなくなり、またはロックされなくなり、駆出力保存手段4のバネ作用力によって駆出部分Aに進入する。
【0031】
ロック装置5が引張動作によってロック解除されていようが、押込み動作によってロックされていようが関係なく、駆動装置1は図14で示すように開位置OSに進入する。その移動で、第1の起動要素46もアバットメント43を介して時計回り方向にさらに回転し、第2の引張起動要素47は、第1の引張起動要素46が図14で示す位置に進入するまで、バネ48の作用力に抗して移動する。
【0032】
その駆出移動時に、引き込み装置25の引き込み力保存手段40も連結ピン16を介して応力を受ける。ロックピン7は押圧位置Sに再び進入する(図15参照)。
【0033】
図16に示すように、引き込み連結要素39は連結要素33の連結ピン60から再び連結解除され、引き込み連結要素39は引き込み力保存手段40が応力を受けている状態で曲形状部分80に保持される。図16では、駆出力保存手段4は応力から全面的には解放されていない。
【0034】
しかし、図17では、駆出力保存手段4は応力から解放され、スライダ15はスライダ通路36と端部位置でスライダ通路制限手段37とを介してベースプレート14に当接する。これで可動家具部2は自由に移動でき、すなわち駆出力保存手段4により起動される慣性によって、例えば、開方向ORにさらに移動できる。同伴部分19は、開方向OPでのさらなる移動時に連結要素の捕捉領域34に保持されたままであるため、連結要素33は伝達要素42と共にスライダ15に対してさらに移動し、アバットメント43は図16で示すように制御要素29上でアバットメント63と接触状態になっており、制御要素29もスライダ15に対して伝達要素42によって制御要素ガイド通路30に沿って移動している。
【0035】
図18で示すように、伝達要素42は制御要素29が再び接続要素41の高さになるまでスライダ15に対して移動している。同時に、接続要素41とスライダ15の間のバネ(非図示)は、ダイバージョン面59によって撓むことはないダイバージョンアバットメント58を介して応力が解放されている。図18では、連結要素33も連結要素ガイド通路35の曲形状端部分に到達しており、連結要素33は旋回ベアリング73の周囲を旋回しており、同伴部分19は連結要素33の捕捉領域34から解放されている。図5で示す当初位置はこのように回復される。
【0036】
走行伝達機構のごとく、駆出力保存手段4の全作用力をロックピンに直ちに作用させない別方法は、駆出力保存手段自身を減衰させることである。その目的で、特に駆出力保存手段4の第1の移動範囲で、押込み位置USから閉位置SSに向かって開方向ORに作用する減衰装置8は、駆出力保存手段4からスライダ15への作用力の伝達を低減できる。それは図32で概略的に示されている。図32のグラフでは、駆出力保存手段4のバネ力Fが、可動家具部2の移動通路に沿っていかに作用するかが示される。破線で示す通常の駆出状況では、可動家具部2が押込み位置USで解放されると、駆出力保存手段4の高作用力が解放され、バネ力Fは閉位置SSに到達する前から高ニュートン値Nに上昇する。このことは駆出力保存手段4からロックピン7への作用力の伝達に当てはまるので、押込み位置USと閉位置SSとの間の領域内だけではなく、移行領域Uとラッチ領域Rとの間の実質的に同一である引出し走行動作においても当てはまり、ラッチ領域Rに駆出力保存手段4が到達すると、非常に高いバネ力Fがロックピン7とラッチ領域Rのガイド通路6に作用し、大きなノッキング音を発生させることがある。そのラッチ係合動作領域Eにおける作用力の高伝達を減少させるため、第1実施例に従って減衰効果を有する走行伝達機構が利用されるか、あるいは、駆出力保存手段4とスライダ5の間の減衰装置8(例えばリニアダンパ)が利用される。例えば、その減衰装置8は駆出力保存手段4と一体化できるか、あるいはそれと並列に接続できる。
【0037】
ロックピン7が減衰関係でラッチ領域R内に設置できる駆動装置1の別実施例は図19の分解図で示されている。この場合もまた、ラッチ領域Rを備えたガイド通路6がベースプレート14内に存在する。そのベースプレート14は、深さ調節ホイール65を介して可動家具部2に対して移動できるため、前方パネル間隔を調整することができる。駆出要素33またはスライダ15は連結要素ガイド通路35に沿ってベースプレート14に対して移動可能に取り付けられている。連結要素33もスライダ15に旋回可能に取り付けられている。さらに、同期要素67もスライダ15に接続されている。可動家具部2の両側に設置されている駆動装置1は同期要素67によって連結または同期されている。ロックレバー16はロックレバー旋回ベアリング70によって回転可能または旋回可能にスライダ15に取り付けられている。ロックピン7もロックレバー16に取り付けられている。駆出力保存手段4はスライダ15とベースプレート14の間で作動する。この実施例では、追加の要素としてベースプレートカバー64が提供されており、そこには減衰装置8が存在する。その目的で、ベースプレートカバー64は、ギヤ11が回転可能に取り付けられているギヤ回転ベアリング66を有する。そのギヤ11とギヤ回転ベアリング66は、それらの間の減衰媒体と共に回転ダンパ10を形成する。ギヤ11とベアリング66の間に良好な接続を達成するため、この構造体は、ギヤ11をベアリング66に押し付ける保持要素68を有する。
【0038】
図20は、ギヤ11とベアリング66が対応する同心溝部を有することを示す詳細図である。良好な減衰作用を提供するため、適した、好適には粘性の減衰媒質、例えばオパノールがこの溝部内に存在し、あるいは導入される。図20は開口部69がベースプレートカバー64内に提供されていることを示す。その開口部69の縁部は実質的にガイド通路6の一部と一致しており、ベースプレートカバー64内で、ベースプレート14内のガイド通路6の領域の反対側または上方に十分に正確に提供される。従って、開口部69の縁部もその1領域内で、組み立て状態でギヤ11の歯部12が突き入るラッチ係合動作領域Eに対応する。
【0039】
図20aから図20gは減衰装置8の別実施例を示す。この変形実施例では、減衰作用が、好適には2成分射出成形により製造される2つの部材間の摩擦によって発生する限りは減衰媒質の使用を省略できる。図20aと図20bは共同で回転ダンパ10を形成する星型ギヤ11と保持要素68とを示す。鋼製の保持要素68は曲形延伸部83と開口部を有しており、曲形延伸部83は同時にギヤ回転ベアリング66を形成している。図20cと図20dの断面から、延伸部83はプラスチック製のギヤ11内に突入していることが分かる。2成分射出成形加工のすぐ後に曲形延伸部83とギヤは実質的に全表面で接触する(図20e参照)。射出成形加工後、プラスチック材料の短縮または収縮84によって、曲形延伸部83とギヤ11の間の接続は少なくとも部分的に解除される(図20f参照)。それによりシート金属の厚みとの関係で小さくなる。その結果、ギヤ11は保持要素68に対して回転できる。トルクは壁厚と材料の選択によって調整できる。図20gはベースプレートカバー64上に設置状態にある減衰装置8を示す。
【0040】
複成分射出成形の形態の減衰装置8の可能な設計形状は図20hから図20kに示されている。これらの図では、ギヤ回転ベアリング66は保持要素68の一部の形態ではなく、別体のプラスチック部品として保持要素68に“射出によって追加”されており、保持要素68の開口部を通って突き出ている。ギヤ11を形成する別なプラスチック部品も、ベアリング66を形成するそのプラスチック部品に回転可能に取り付けられている。減衰作用はギヤ11とベアリング66との間の摩擦によって発生する。
【0041】
減衰媒質は減衰装置8のそれら設計形態においては不要であり、トルク変動は小さく、温度感受性の程度は低く、サービス寿命は長い。
【0042】
図21では可動家具部2は開位置OSにあり、ロックピン7は駆出力保存手段4の応力付与動作の開始部に存在する。ギヤ11の歯部12はガイド通路6のラッチ係合動作領域E内に突出する。
【0043】
可動家具部2は閉方向SRに移動しているので、同伴部分19は連結要素33の捕捉領域34に捕捉されている。同時にロックピン7は応力付与部分Sに沿って移動する(図22参照)。
【0044】
図23では、ロックピン7は移行領域Uを越えて移動しており、駆出力保存手段4の全作用力がロックピン7に作用するラッチ係合動作領域Eに進入する。しかし、その作用力はロックピン7が、ラッチ係合動作領域E内に突き入る歯部12に当接するまで作用できるだけである。さらに、ロックピン7が歯部12に当接するとすぐに、ロックピン7の動作は、回転ダンパ10の減衰作用力により減衰され、ロックピン7はラッチ領域Rの方向に緩慢に移動するだけとなる。
【0045】
ロックピン7の動作の減衰を伴ってギヤ11が反時計回り方向に、それがラッチ係合動作領域E内に突入しなくなるまで移動すると直ちに、図24で示すようにロックピン7はガイド通路6のラッチ領域R内に入る。よって、ロックピン7の動作は、回転ダンパ10の形態の減衰装置8によってラッチ係合動作領域Eの少なくとも一部で減衰される。
【0046】
それ自体は知られているように、図25は、可動家具部分2を閉方向SRの閉位置SSの背後の押込み位置USに押し込むことにより、ダイバージョン面79を介してロックピン7がラッチ領域Rから駆出部分Aに移動する押し込み位置USを示す。
【0047】
図26では、開位置OSに再び到達し、そこでロックピン7が当初位置の領域に再び進入する。図19から図26で示すように、この実施例の残りの構成要素および残りの手順的な操作のさらに詳細な説明はここでは記載しない。なぜなら、基本的な適用例は第1実施例に実質的に対応しているからである。
【0048】
衰関係で、ロックピン7をラッチ領域R内に配置する可能な別実施例は図27図28に示されている。この実施例の基本的な構造は図19から図26の実施例に対応しており、異なる形態のものは減衰装置8だけである。この実施例では、ラッチ係合動作領域Eの領域には回転ダンパ10は存在しないが、ロックレバー16の旋回動作は減衰装置8で減衰される。この目的で、減衰装置8は同期要素67上またはスライダ15上でロックレバー16の回転軸Dの領域に配置されている。特に図28は、ピン71がロックレバー16のための回転軸Dを形成している断面図を示す。摩擦減衰具72が、そのピン71とロックレバー16の間で環状形態に配置されている。ロックレバー16の旋回動作は、摩擦減衰具72がロックレバー16とピン71の間の領域内に非常に強力に挟み込まれることで減衰できる。その結果、ロックピン7はラッチ係合動作領域Eに沿って減速移動する。他の種類のシャフトダンパも利用が可能である。
【0049】
ロックピンを減衰関係でラッチ領域R内に進入させるための別実施例は図29図30に示されている。この場合、駆出力保存手段4からスライダ15への作用力の伝達は減衰されず、ロックピン7はラッチ係合動作領域Eでは減衰されないが、ラッチ領域Rにはクッション要素13または弾性変形要素の形態の減衰装置8が提供されている。この点で、図29にはロックピン7が移行領域Uを越えて通過した後に、どのようにラッチ係合動作領域Eに到達するかが示されている。この領域Eで、ロックピン7は全速力および最大荷重の下でラッチ領域Rの方向に移動し、そこに図30で示すように到着する。騒音の発生を減少させるため、クッション要素13がラッチ領域R内で利用される。このようにして当接接触は減衰される。
【0050】
本発明の基本的な概念は図31に再び概略的に纏められている。ガイド通路6のラッチ領域R内でのロックピン7のロック動作は可能な限り静寂に実行される。
【0051】
この目的で、第1の実施例(図3から図18および図32)によれば、ラッチ係合動作領域Eに沿って減衰動作領域Bが提供される。この場合、それは、ロックピン7またはガイド通路6に作用するのは駆出力保存手段4の全作用力ではなく、例えば、ラッチ係合動作領域Eに沿った走行伝達機構またはリニアダンパを介するという事実によって実行できる。
【0052】
さらに別な実施例(図19から図28)では、その動作領域Bでのロックピン7の移動は、例えば、回転ダンパまたは旋回動作ダンパの形態である減衰装置8によって、少なくとも部分的に減衰できる。
【0053】
第3の実施例(図29図30)として、ラッチ領域Rでの当接作用は本来的に減衰される。この目的で、減衰装置8はガイド通路6の壁部に密着したクッション要素13または弾性要素の形態でよい。
【0054】
図13は、引張動作によってロック解除および駆出するための実施例を示す。引張動作によるロック解除の別実施例は図33から図36に示されており、そこでは駆動装置1は回転ベアリング49の周囲を回転できる引張起動要素46を有する。その起動要素46は、引張起動要素47の開口部内にアーム部81を介して係合する。ロックアバットメント45はその引張起動要素47に提供されている。図34で示すように、閉位置SSから開始して、引張力が開方向ORで可動家具部2に作用すると、引張起動要素46はベアリング49の周りを時計回り方向に回転し、アーム部81を介して引張起動要素47はバネ48(図35参照)の作用力に対抗して移動する。その結果、ロックアバットメント45も移動し、ロックピン7のための通路を利用可能にする。このように、駆出力保存手段4は応力が解放され、可動家具部2は開位置OS内に移動することができ、この場合、ロックピン7が図26で示す位置に進入する。
【0055】
別な引張起動実施例が図37から図40に示されており、ロックアバットメント45は、閉方向SRに対して横断方向に可動な引張起動要素47上に提供されている。図38で示すように、閉位置SSから開始して、開方向ORに引張力が可動家具部2に作用すると、ロックピン7自身が引張起動要素47をロックアバットメント45と共にバネ48の作用力に対抗して図39に対応する位置に移動する。このことは、ロックピン7がロックされなくなり、ロックピン7の通路が利用可能になり、すなわち開かれる。駆出力保存手段4は応力が解放され、可動家具部2を開方向ORの開位置OS内に駆出し、ロックピン7は図40で示す位置に進行する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図11
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図18
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図20b
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