特許第6209295号(P6209295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6209295-帯板 図000004
  • 特許6209295-帯板 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6209295
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】帯板
(51)【国際特許分類】
   A41F 19/00 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   A41F19/00 101E
   A41F19/00 109Z
   A41F19/00 109B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-56616(P2017-56616)
(22)【出願日】2017年3月22日
【審査請求日】2017年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517037397
【氏名又は名称】白鳥 文子
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100119208
【弁理士】
【氏名又は名称】岩永 勇二
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【復代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 文子
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−101221(JP,U)
【文献】 実開昭50−009114(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の全部又は一部の素材として羊革及び/又は牛革を使用した帯板であって、
前記一部が、前記帯板の長手方向の中心線から左右にそれぞれ20cm〜22cmまでの領域内の全部であることを特徴とする帯板。
【請求項2】
裏面の素材として合成布を使用したことを特徴とする請求項1に記載の帯板。
【請求項3】
前記表面の前記一部を除く残部が、合成布からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着物を着る際に使用する帯板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帯板は、帯を結ぶときに帯の間に入れて、帯に皺が寄らないように、帯の形を整えるために使用されている。
【0003】
従来の帯板によれば、帯板が身体にフィットしない、着崩れしやすいといった問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1では、輪状に曲げて着物の上に巻き付け可能な長さと柔軟性を有してベルト状を呈する帯板本体を形成し、その帯板本体の長手方向の一端内面部に面ファスナを取付けるとともに、帯板本体の他端外面部にその帯板本体の長手方向と同一方向に長くてその任意の位置で上記の面ファスナを着脱自在とする面ファスナを取付け、又、帯板本体の長手方向の両端上辺角部を斜めにカットして、その帯板本体の上縁両端部にそれぞれ外側へ向って下るように傾斜した合わせ縁部を設けて成り、その両端の合わせ縁部の線を一致させる状態で着物の外周に輪状に巻き付けて、その外側に更に巻き付ける帯と共に着物に対して一体的に回転可能とした帯板が提案されている。特許文献1に記載の帯板によれば、身体におけるウエストのくびれの上部位置の形状に合致した形状になって、全体が身体にフィットするようになるため、帯板の下部の内側に隙間が発生しなくなるので、帯板が弛みにくくなって安定し、着物の着崩れを防止することができる旨が記載されている。
【0005】
また、特許文献2では、帯の内側に着用される帯板本体と、帯板本体の長さ方向の両端部に、それぞれ取り付けられ、先端に相互に係合可能なフックを備え、帯板本体と共に着物の上に巻き付けられる伸縮自在な一対の巻付バンドと、帯板本体の上縁から上方に向けて取り付けられ、先端に帯もしくは着物の一部を挟持する挟持金具が設けられた長さ調節可能な連結バンドと、を備えている補助具付き帯板が提案されている。特許文献2に記載の帯板によれば、帯結びの仕上がりを良好なものとし、着物の着崩れが防止できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−266142号公報
【特許文献2】特開2007−204905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜2に記載の帯板は、面ファスナやフック等の補助具を備えなければならないため、慣れていない人にとっては使いづらい。
【0008】
そこで、本発明の目的は、補助具を備えていなくても着物の着崩れが防止できる帯板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の帯板を提供する。
【0010】
[1]表面の全部又は一部の素材として羊革及び/又は牛革を使用したことを特徴とする帯板。
[2]裏面の素材として合成布を使用したことを特徴とする前記[1]に記載の帯板。
[3]前記一部が、前記帯板の長手方向の中心線から左右にそれぞれ20cm〜22cmまでの領域内の全部であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の帯板。
[4]前記表面の前記一部を除く残部が、合成布からなることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の帯板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、補助具を備えていなくても着物の着崩れが防止できる帯板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る帯板の一例であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は右側面図である。
図2図1の帯板の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る帯板の一例であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は右側面図である。また、図2は、図1の帯板の変形例である。以下、図を参照しつつ、本発明の実施形態に係る帯板10を詳細に説明する。
【0014】
本発明の実施形態に係る帯板10は、表面1の全部又は一部の素材として羊革及び/又は牛革を使用したことを特徴とする。これにより後述する効果を得ることができる。
【0015】
表面1とは、身体(お腹付近)に装着した際、外側に来る面である。表面1の素材として羊革及び/又は牛革を使用する。羊革を使用することが好ましい。羊革としては、ラムスキン、シープスキン、ゴートスキンがあるが、ラムスキン及びシープスキンが好ましい。
【0016】
表面1には羊革と牛革の両方を使用しても良いが、いずれか一方のみ使用することが好ましい。両方使用する場合には、例えば、羊革と牛革の境界部を縫い合わせる又は接着剤等で貼り合わせる。
【0017】
素材として羊革及び/又は牛革を使用する範囲は、帯板10の表面1の全面であることが好ましいが、(特に夏用として)表面1の一部であってもよい。素材として羊革及び/又は牛革を使用する範囲を帯板10の表面1の全面ではなく、一部とする場合には、当該一部が、帯板10の長手方向の中心線から左右にそれぞれ15cm〜22cm(図2のW,W)までの領域内の全部(図2の斜線領域)であることが好ましく、左右にそれぞれ20cm〜22cmまでの領域内の全部であることがより好ましい。
【0018】
表面1の羊革及び/又は牛革を使用した上記一部を除く残部(図2においては両サイド部分)は、合成布からなることが好ましい。特に高強度の合成布であることが好ましい。高強度の合成布を構成する合成繊維としては、例えば、高強度ポリエチレン、芳香族ポリアミド、ポリエステルが挙げられる。合成繊維を使用することが好ましいが、ある程度の強度が保持できれば、天然繊維や半合成繊維からなる布を使用することもできる。羊革及び/又は牛革からなる部分と残部との境界部は縫い合わせる等により一体化することができる。
【0019】
裏面2とは、身体(お腹付近)に装着した際、内側に来る面である。裏面2の素材として合成布を使用することが好ましい。特に高強度の合成布であることが好ましい。高強度の合成布を構成する合成繊維としては、例えば、高強度ポリエチレン、芳香族ポリアミド、ポリエステルが挙げられる。合成繊維を使用することが好ましいが、ある程度の強度が保持できれば、天然繊維や半合成繊維からなる布を使用することもできる。
【0020】
表面1と裏面2とは、高強度の糸(合成繊維又は天然繊維)で縫い合わされており、表面1と裏面2の外形に沿って縫い目1a,2aが形成されている。表面1と裏面2とは縫い合わせて一体化することが好ましいが、これに限られず、接着剤や両面テープで貼り合わせる等して一体化してもよい。
【0021】
なお、表面1と裏面2の間に表面1及び裏面2と同形状の薄板を備えていることが好ましい。当該薄板は、形状記憶樹脂等のプラスチックからなることが好ましい。当該薄板は、表面1及び裏面2と一緒に縫い合わせられる。あるいは、表面1と薄板の間、薄板と裏面2の間をそれぞれ接着剤や両面テープで貼り合わせる等してもよい。
【0022】
裏面2の中央部には、ポケット22が設けられていることが好ましく、例えば、図1(c)では、裏面2の中央部の上方にポケット22の入り口が設けられている。ポケット22には、メモ用紙やお札(お金)を入れておくことができる。
【0023】
帯板10の形状は、特に限定されるものではないが、図1に示すように図1の下側(使用時に下側)の角部のテーパーに比べて、図1の上側(使用時に上側)の角部のテーパーが緩いことが好ましい。
【0024】
帯板10の長手方向の長さは、40cm〜45cmの範囲内であることが好ましい。
【0025】
帯板10の高さ(長手方向と垂直方向の長さ)は、13cm〜16cmの範囲内であることが好ましい。
【0026】
帯板10の厚みは、2mm〜4mmの範囲内であることが好ましい。
【0027】
帯板10は、図1(a)に示されるように、裏面側に反っている形状とすることが装着時の密着性の観点から好ましい。
【0028】
本発明の実施形態に係る帯板によれば、以下の効果が期待できる。
(1)補助具を備えていなくても着物の着崩れを防止できる。
(2)帯板が身体(前板の場合、お腹)にフィットする。
(3)長時間(例えば18時間)着物を着ていても疲れにくい。
(4)帯締めのズレを防止できる。
(5)帯ズレの頻度が少ない。
(6)帯を傷めない。
(7)着装仕上がりが綺麗である。
(8)軽い。
(9)帯締めが締めやすい。
(10)従来の帯板と違って革は使えば使うほど素材が身体に馴染み、末永く使用可能である(使い捨てではない)。
【0029】
したがって、本発明の実施形態に係る帯板は、着物を着て動きのある仕事(例えば、芸能関係、旅館やホテルの女将、飲食業、着付教室・茶道・華道の先生、等)をする人に特に適している。
【0030】
また、本発明の実施形態に係る帯板は、前板として使用する場合に特に適しているが、長手方向の長さ(横幅)を短くして(例えば25cm〜35cm)後ろ板として使用することもできる。また、帯板の長手方向の両端部に布(例えば合成布)を繋ぎ合わせ、繋ぎ合わせた布が使用時に背中の中心で交差するような実施形態とすることもできる。
【0031】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
実施例及び比較例の帯板を製造し、各種の評価を行なった。
【0033】
〔帯板の製造〕
図1に示す帯板10を表面1の素材として表1に示す材料を使用して製造した。裏面2の素材としては、高強度ポリエチレンを使用した。また、表面1と裏面2の間の薄板の素材としては合成プラスチック板を使用した。縫い糸はポリエステル繊維からなる糸を使用した。帯板10の長手方向の長さは44cmであり、高さは15cmであり、厚みは2.5mmである。
【0034】
【表1】
【0035】
〔帯板の評価〕
製造した実施例及び比較例の帯板について、下記の評価を行なった。
(評価1)立って座る動作を繰り返し行って、何回で着物の着崩れが発生するかをカウントした(立って座るで1回としてカウントした)。
(評価2)身体(お腹)へのフィット感のあるものを○(合格)とし、フィット感の感じられないものを×(不合格)とした。
(評価3)18時間、着物を着て活動していても疲れを感じなかったものを○(合格)とし、疲れを感じたものを×(不合格)とした。
(評価4)帯締めのズレが6時間着用していても無かったものを○(合格)とし、ズレが発生したものを×(不合格)とした。
(評価5)立って座る動作を繰り返し行って、何回で帯ズレが発生するかをカウントした(立って座るで1回としてカウントした)。
(評価6)15回帯締めを行ない、帯を傷めなかったものを○(合格)とし、帯を傷めたものを×(不合格)とした。
(評価7)着装仕上がりが綺麗であったものを○(合格)とし、仕上がりが綺麗であるとは言えなかったものを×(不合格)とした。
(評価8)着物を着て活動していても重く感じなかったものを○(合格)とし、重く感じたものを×(不合格)とした。
(評価9)帯締めが締めやすかったものを○(合格)とし、締めにくかったものを×(不合格)とした。
【0036】
評価結果は、下記の表2の通りであり、実施例1の羊革及び実施例2の牛革が優れていた。評価3の疲れやすさは、帯ズレや着崩れを何度も直す煩わしさやフィット感が無いことに基づく心地悪さ等に由来することが分かった。
【0037】
【表2】
【0038】
なお、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されず種々に変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10:帯板
1:表面、1a,2a:縫い目、2:裏面、22:ポケット
【要約】      (修正有)
【課題】補助具を備えていなくても着物の着崩れが防止できる帯板を提供する。
【解決手段】本発明の帯板10は、表面1の全部又は一部の素材として羊革及び/又は牛革を使用したこと、裏面の素材として合成布を使用したこと、一部が帯板10の長手方向の中心線から左右にそれぞれ20cm〜22cmまでの領域内の全部であること、表面1の前記一部を除く残部が合成布からなることを特徴とする。これにより補助具を備えていなくても着物の着崩れが防止できる、帯板が身体にフィットする、長時間着物を着ていても疲れにくい、帯締めのズレを防止できる、帯ズレの頻度が少ない、帯を傷めない、着装仕上がりが綺麗である、軽い、帯締めが締めやすい、従来の帯板と違って革は使えば使うほど素材が身体に馴染み、末永く使用可能であるなどの効果がある。
【選択図】図1
図1
図2