(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態を採用した両軸受リールは、
図1、
図2及び
図3に示すように、ベイトキャスト用の小型のロープロフィール型のリールである。両軸受リールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用ハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3とを備えている。
【0016】
<リール本体>
リール本体1は、
図4及び
図5に示すように、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6a及び第2側カバー6bとを有している。また、リール本体1は、
図1、
図2及び
図3に示すように、前方を覆う前カバー7と、上部を覆うサムレスト8とを有している。さらに、リール本体1は、
図5に示すように、第1側カバー6aにねじ止め固定される軸支持部9を有している。リール本体1の内部には糸巻き用のスプール12が回転自在かつ着脱自在に装着されている。
【0017】
フレーム5は、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の第1側板5a及び第2側板5bと、これらの第1側板5a及び第2側板5bを連結する図示しない複数の連結部とを有している。第1側板5aには、スプール12が通過可能な第1開口部5c(
図5)が形成されている。また、第1側板5aの前下部には、
図4に示すように、概ね矩形の第2開口部5dが形成されている。第2開口部5dは、後述するスプール制動装置23の制動力を調整するための操作部材60の外周部を第1側板5aの前下方に露出させるために形成されている。
【0018】
第1側カバー6aは、第1側板5a及び第2側板5bの後部に軸方向移動自在かつ回動自在に支持されている。第1側カバー6aは、
図8に示す開閉機構14により開閉可能である。
【0019】
開閉機構14は、第1側カバー6aに基端が固定された開閉軸14aと、軸支持部9にロック位置と解除位置とに回動自在に装着された開閉操作部14bと、を有している。開閉軸14aは、第1側板5a及び第2側板5bに回動自在に装着されている。開閉軸14aは、第2側板5bを貫通して第2側カバー6bの内側に先端が配置されている。この先端部に図示しない、例えばコイルバネからなる付勢部材が配置されている。開閉軸14aは、付勢部材により第1側カバー6aが開く方向に付勢されている。
【0020】
開閉操作部14bには、第1側板5aに係合する複数の突起部14cが外周部に径方向外方に形成されている。この突起部14cがバヨネット構造で第1側板5aに係合する。また、開閉操作部14bの外周部には、開閉操作用の開閉レバー14dが形成されている。開閉操作部14bがロック位置に配置されると、突起部14cが第1側板5aに係合する。これにより、第1側カバー6aが第1側板5aに固定される。また、開閉操作部14bが解除位置に配置されると、第1側板5aとの係合が解除され、付勢部材により付勢された開閉軸14aが第1側板5aから進出し、第1側カバー6aが開く。
【0021】
第2側カバー6bは、第2側板5bにネジ止め固定されている。第2側カバー6bには、第1ボス部6c(
図4参照)と、第2ボス部6d(
図5参照)と、が設けられている。第1ボス部6cは、ハンドル2が連結される後述する駆動軸30を支持するために設けられている。第2ボス部6dは、スプール12が固定されるスプール軸16を支持するために設けられている。スプール軸16は、スプールの回転軸の一例である。
【0022】
前カバー7及びサムレスト8は、フレーム5にねじ止め固定されている。軸支持部9は、
図5に示すように、有底筒状の部材である。軸支持部9の内周部には、スプール軸16の一端を支持する第1軸受24aを内部に収納する筒状の軸受収納部9aが形成されている。軸受収納部9aは、スプール12側に配置された大径の第1外周面9bと、第1側カバー6a側に配置された小径の第2外周面9cと、を有している。
【0023】
フレーム5内には、
図4及び
図5に示すように、スプール12と、スプール12内に釣り糸を均一に巻き付けるためのレベルワインド機構15と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチ操作部材17とが配置されている。クラッチ操作部材17は、開閉レバー14dと並べて配置されている。スプール12は、第1側板5aの第1開口部5cを通過可能である。また、フレーム5と第2側カバー6bとの間には、ギア機構18と、クラッチ機構13と、クラッチ制御機構19と、ドラグ機構21と、キャスティングコントロール機構22と、が配置されている。ギア機構18は、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構15に伝えるための機構である。クラッチ制御機構19は、クラッチ操作部材17の操作に応じてクラッチ機構13の係脱及び制御を行うための機構である。キャスティングコントロール機構22は、スプール12の回転時の抵抗力を調整するための制動機構である。さらに、フレーム5と第1側カバー6aとの間には、スプール制動装置23が配置されている。スプール制動装置23は、本発明の一実施形態によるスプール制動装置であり、キャスティング時のバックラッシュを抑えるための装置である。
【0024】
<スプール及びスプール軸>
スプール12は、
図5に示すように、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部12aと、左右一対のフランジ部12bと、ボス部12cと、を有している。フランジ部12bは、糸巻胴部12aの両端にそれぞれ径方向外方に一体的に突出して設けられている。ボス部12cは、スプール軸16に圧入等の適宜の固定手段により固定されている。これにより、スプール12は、スプール軸16に一体回転可能に連結される。
【0025】
スプール軸16は、
図5に示すように、第2側板5bを貫通して第2側カバー6bの外方に延びている。スプール軸16の一端は、軸支持部9の軸受収納部9aに第1軸受24aにより回転自在に支持されている。またスプール軸16の他端は、第2側カバー6bに設けられた第
2ボス部6
d内で第2軸受24bにより回転自在に支持されている。さらに、スプール軸16の中間部は、第2側板5bに設けられたボス部5eに第3軸受24cにより回転自在に支持されている。これにより、スプール軸16はリール本体1に3箇所で軸受により支持されている。
【0026】
スプール軸16の第2側板5bの貫通部分には、クラッチ機構13を構成する係合ピン20が固定されている。係合ピン20は、直径に沿ってスプール軸16を貫通しており、その両端が径方向に突出している。スプール軸16のスプール12の固定部分の外周面には、第1セレーション16aが形成されている。第1セレーション16aは、スプール12を圧入する際の回り止めとして機能する。スプール軸16の第1セレーション16aの第1側カバー6a側には、大径の鍔部16bが形成されている。鍔部16bは、スプール制動装置23の後述する回転部材62を位置決めするために設けられている。鍔部16bの第1側カバー6a側のスプール軸16の外周面には、第2セレーション16cが形成されている。第2セレーション16cは、回転部材62をスプール軸16に圧入する際の回り止めとして機能する。
【0027】
<ギア機構>
ギア機構18は、
図4及び
図5に示すように、ハンドル2が一体回転可能に連結される駆動軸30と、駆動軸30に装着された駆動ギア31と、駆動ギア31に螺合するピニオンギア32(
図5参照)と、駆動軸30に一体回転可能に連結された第1ギア33と、第1ギア33に噛み合う第2ギア34と、を有する。第2ギア34は、レベルワインド機構15をハンドル2の回転に応じて左右に往復移動するために設けられる。
【0028】
駆動軸30は、ワンウェイクラッチ40により糸巻取方向のみ回転可能である。駆動軸30は、第4軸受35a及び第5軸受35bによりリール本体1に回転自在に支持されている。第4軸受35aは、第2側カバー6bの第1ボス部6cに装着されている。第5軸受35bは、第2側板5bに装着されている。
【0029】
駆動軸30は、
図6に示すように、第1装着部30aと、第1装着部30aに隣接して設けられる第2装着部30bと、第2装着部30bと逆側で第1装着部30aと隣接して設けられる大径の鍔部30cと、鍔部に形成される溝部30dと、を有している。また、駆動軸30は、ハンドル2が装着される第3装着部30eと、第1ギア33が装着される第4装着部30fとをさらに有している。第1装着部30aは、この実施形態では、第2装着部30bより大径である。
【0030】
第1装着部30aには、ドラグ機構21のドラグ力を受けるドラグ受け部材としてのラチェットホイール36が一体回転可能に装着される。ラチェットホイール36は、駆動ギア31と鍔部30cとの間に配置される。第1装着部30aは、ラチェットホイール36を一体回転可能に連結するための4つの面取り部30gを外周面に有する。ラチェットホイール36は、ドラグ受け部材として機能するとともに、クラッチ機構13をクラッチオフ状態からクラッチオン状態に戻すクラッチ戻し機構としても機能する。第1装着部30aの4つの面取り部30gは、周方向に90度間隔で形成される平面をそれぞれ有する。
【0031】
面取り部30gは、
図7に破線で示すTスロット工具T1の先端面を用いた機械加工により形成される。Tスロット工具T1は、軸部より大径の刃先部の先端面で加工を行う工具である。Tスロット工具T1で面取り部30gを加工するとき、面取り部30gを鍔部30cとの境界部まで確実に加工するため、鍔部30cに食い込むように加工する。これにより、スロット工具T1の刃先部の軸方向長さと同じ溝幅の溝部30dが形成される。溝部30dは、先端面で第1装着部30aを加工するときTスロット工具T1の側面で鍔部30cの側面に加工される。したがって、溝部30dが形成されない鍔部30cの側面には、鍔部30cを例えば旋盤により機械加工により形成する際のドットで示す第1加工面C1及び右下がりハッチングで示す第2加工面C2が残る。したがって、第1加工面C1と第2加工面C2の軸方向の位置は同じ位置になる。
【0032】
従来は、第1装着部は、
図7に二点鎖線で示すエンドミルT2の側面を利用して機械加工により形成している。エンドミルT2の直径は大きいため、エンドミルT2により機械加工すると、第1加工面C1は残らずにエンドミルT2の先端面により加工されてしまう。一方、第2加工面C2は残ってしまうため、エンドミルT2により加工される第1加工面C1と加工されない第2加工面C2との軸方向の位置が異なるものになる。これにより、ラチェットホイール36がスタードラグ3により押圧されると、段差によりラチェットホイール36が傾きさらに駆動ギア31が傾くおそれがある。
【0033】
しかし、この実施形態では、溝部30dが形成されるように第1加工面C1を残すことにより、ラチェットホイール36が押圧されても、ラチェットホイール36が接触する部分に段差が生じなくなり、ラチェットホイールが傾かなくなる。これにより、ラチェットホイール36を押圧する駆動ギア31が倒れにくくなり、駆動ギア31が傾くことによる噛み合い不良が生じにくくなる。
【0034】
図6に示すように、第2装着部30bには、駆動ギア31が回転自在に装着されるとともに、ドラグ機構21のドラグ板37が一体回転可能に装着される。また、第2装着部30bには、スタードラグ3のドラグナット3a(
図4参照)が螺合する。第2装着部30bには、軽量化を図るための環状の肉盗み部30hが形成されている。また、第2装着部30bの肉盗み部30hの奥側(
図6左側)には、ドラグ板37が一体回転可能に連結される4つの面取り部30iが軸方向に所定長さで形成されている。第3装着部30eは、第2装着部30bの先端側に配置されている。第3装着部30eは、第2装着部30bより小径である。第3装着部30eには、ハンドル2が一体回転可能に装着されるとともに、ハンドル2を駆動軸30に固定するためのナット53(
図4参照)が螺合する。第4装着部30fは、第1装着部30aと鍔部30cを挟んで配置される。第4装着部30fには、第1ギア33が一体回転可能に装着される。
【0035】
駆動ギア31は、0.3以下のモジュールを有するマイクロピッチ歯形を有している。このため、僅かに傾いただけでも、ピニオンギア32との噛み合いが悪くなる。しかし、上記のように駆動ギア31が高向きにくくなるため、噛み合い不良は生じにくくなる。
【0036】
ピニオンギア32は、
図5に示すように、スプール軸16が中心を貫通する筒状部材である。ピニオンギア32は、リール本体1に回転自在に支持されている。具体的には、一端が第2側板5bに装着された第6軸受38aにより回転自在に支持され、他端が第2側カバー6bの第2ボス部6dに装着された第7軸受38bにより回転自在に支持される。また、ピニオンギア32は、スプール軸方向に移動自在に装着されている。ピニオンギア32の一端には、係合ピン20が係合する噛み合い溝32aが直径上に沿って形成されている。ピニオンギア32の他端側には、駆動ギア31に噛み合うギア歯32bが形成されている。噛み合い溝32aとギア歯32bの間にはくびれ部32cが形成されている。くびれ部32cには、クラッチ制御機構19を構成するクラッチヨーク39が係合している。クラッチヨーク39は、クラッチ操作部材17がクラッチオン位置にあると
図5に示すオン位置に配置され、クラッチ操作部材17がクラッチオフ位置にあると、オン位置より
図5右側のオフ位置に移動する。これにより、係合ピン20が噛み合い溝32aから外れてクラッチ機構13がクラッチオフ状態になる。したがって、クラッチ機構13は、係合ピン20とピニオンギア32とにより構成される。
【0037】
第2ギア34は、レベルワインド機構15の図示しない螺軸に一体回転可能に連結される。
【0038】
<ドラグ機構>
ドラグ機構21は、クラッチオン状態のとき、駆動ギア31を介してスプール12の糸繰り出し方向の回転を制動するものである。ドラグ機構21は、スタードラグ3によりラグ力が調整される。ドラグ機構21は、
図4及び
図6に示すように、ワンウェイクラッチ40の内輪40aを介してハンドル2の回転及びスタードラグ3の押圧力が伝達されるものである。ドラグ機構21は、内輪40aに一体回転可能に連結されるドラグ板37と、ラチェットホイール36と、を有する。ドラグ板37と駆動ギア31との間及び駆動ギア31とラチェットホイール36との間には、ドラグ作動時に駆動ギア31が滑らかに滑るようにするためにフェルト製またはグラファイト製の第1ドラグ座金41a及び第2ドラグ座金41bが装着されている。
【0039】
<キャスティングコントロール機構>
キャスティングコントロール機構22は、第1摩擦プレート51a及び第2摩擦プレート51bと、制動キャップ52と、を有している。第1摩擦プレート51a及び第2摩擦プレート51bは、スプール軸16の両端を挟むように配置されている。制動キャップ52は、第1摩擦プレート51
a及び第2摩擦プレート51bによるスプール軸16の挟持力を調節するためのものである。第1摩擦プレート51aは、制動キャップ52内に配置されている。制動キャップ52は、第2ボス部6dの外周面に螺合する。第2摩擦プレート51bは、軸支持部9内に装着されている。
【0040】
<スプール制動装置>
スプール制動装置23は、
図8及び
図9に示すように、回転部材62(
図9参照)と、複数(例えば6つ)のブレーキシュー64と、ブレーキドラム66と、移動機構68と、オンオフ切換機構70(切換機構の一例)と、を備えている。スプール制動装置23はスプール軸16及び軸支持部9に装着されている。複数のブレーキシュー64は、回転部材62に揺動可能かつ着脱自在に弾性係合されている。ブレーキドラム66は、ブレーキシュー64の径方向内方に配置され、揺動するブレーキシュー64に接触可能な外周面66aを有している。移動機構68は、ブレーキシュー64とブレーキドラム66とをスプール軸16の軸方向に相対移動可能かつ位置決め可能である。
【0041】
<回転部材>
回転部材62は、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等の合成樹脂製の概ね円形の部材である。回転部材62は、スプール12の少なくとも糸繰り出し方向の回転に連動して回転する。この実施形態では、回転部材62は、スプール12の
両方向の回転に連動して回転する。回転部材62は、
図9に示すように、スプール軸16に圧入等の適宜の固定手段により一体回転可能に連結されている。回転部材62は、この実施形態では、第2セレーション16cに圧入固定されている。回転部材62はスプール軸16の鍔部16bにより軸方向に位置決めされている。
【0042】
回転部材62は、
図10及び
図11に示すように、内周部がスプール軸16に固定されるボス部62aと、ボス部62aの径方向外方に配置された厚肉環状のシュー取付部62bと、ボス部62aとシュー取付部62bとを接続する接続部62cと、を有している。ボス部62aは、スプール軸16が貫通する段付きの貫通孔62dを有する筒状の部分である。貫通孔62dは、スプール軸16の鍔部16bにより軸方向に位置決めされ、第2セレーション16cに圧入固定されている。
【0043】
シュー取付部62bは、厚肉リング形状の本体部63aと、本体部63aに設けられた複数(例えば、6つ)のシュー支持凹部63bと、シュー支持凹部63bに設けられた複数(例えば、6つ)の揺動軸63cと、揺動軸63cと間隔を隔ててシュー支持凹部63bに配置されるシュー保持部63dと、を有している。シュー支持凹部63bは、周方向に間隔を隔てて設けられている。この実施形態では、シュー支持凹部63bは、スプール12の回転方向に等間隔に配置されている。シュー支持凹部63bは、ブレーキシュー64を配置可能な幅で凹んで形成されている。複数のシュー支持凹部63bの間には、軽量化のための複数の肉抜き部63eが形成されている。
【0044】
揺動軸63cは、ブレーキシュー64が揺動可能に弾性係止される軸である。揺動軸63cは、スプール軸16と食い違う方向に沿ってシュー支持凹部63bに一体形成されている。揺動軸63cには、
図11に示すように、ブレーキシュー64の揺動範囲を規制するための規制突起63fが、外周面から径方向外方に突出して形成されている。
【0045】
規制突起63fは、ブレーキシュー64のブレーキドラム66に向かう方向の揺動を規制するものである。規制突起63fは、三角形のくちばし形状に突出し、ブレーキシュー64の後述するスリット65dに接触してブレーキシュー64のブレーキドラム66側への揺動を規制する。
【0046】
シュー保持部63dはオンオフ切換機構70を構成している。オンオフ切換機構70は、
図11に実線で示す作動状態と、
図11に二点鎖線で示す非作動状態と、にブレーキシュー64を切り換える機構である。作動状態は、ブレーキシュー64がブレーキドラム66に接触可能な状態である。非作動状態は、ブレーキシュー64がブレーキドラム66に接触不能な状態である。シュー保持部63dは、スプール軸16と食い違う方向に沿ってシュー支持凹部63bに一体形成されている。シュー保持部63dは、断面が概ね矩形に形成されている
接続部62cは、厚肉円板状の部材であり、ボス部62aの外周部に一体形成されている。接続部62cの外周側の端面にシュー取付部62bの本体部63aが一体形成されている。
【0047】
<ブレーキシュー>
ブレーキシュー64は
、例えば、ポリアミド樹脂等の弾性を有する合成樹脂製の板状の部材である。ブレーキシュー64は、
図9に示すように、第1ブレーキシュー64aと、第1ブレーキシュー64aより軽量の第2ブレーキシュー64bと、を有している。この実施形態では、第1ブレーキシュー64aと第2ブレーキシュー64bは交互に配置されている。しかし、第1ブレーキシュー64aと第2ブレーキシュー64bの配置及び数は制動特性等に応じて適宜に設定できる。第2ブレーキシュー64bは、質量調整用の貫通孔64cを有している点を除いて、材質及びその他の外形形状は同一である。したがって以下の説明では、第1ブレーキシュー64aについて主に説明する。
【0048】
第1ブレーキシュー64aは、
図12に示すように、第1端65aと、第1端65aと逆側の第2端65bと、を有している。第1ブレーキシュー64aは、第1端65aから第2端65bに向かって長い板状部材である。第1ブレーキシュー64aは、第1端65aと重心Gとの間で回転部材62の揺動軸63cに揺動可能に連結される。第1ブレーキシュー64aは、揺動軸63cが嵌合する支持孔65cと、揺動軸63cより狭い幅で支持孔65cの内周面から第1ブレーキシュー64aの外側面に開口するスリット65dと、を有する。支持孔65cは、第1端65aと重心Gとの間に配置される。また、第1ブレーキシュー64aは、第2端65b側に配置され、シュー保持部63dに弾性係止される保持突起65eをさらに有している。保持突起65eは、ブレーキシュー64が非作動状態に配置されると、シュー保持部63dを三方から囲むように円弧状に湾曲して形成されている。このようにオンオフ切換機構70によって、ブレーキドラム66に接触可能なブレーキシュー64の数を変更することにより、さらに広範囲に制動力を調整できる。
【0049】
支持孔65cは、揺動軸63cにすきま嵌めで嵌合する。スリット65dは、鉤状に90度折れ曲がって形成されている。スリット65dの開口側の幅W1は揺動軸63cの外径より大きい。一方、スリット65dの支持孔65c側の幅W2は、揺動軸63c外径より小さい。また、スリット65dの支持孔65c側の部分は、長手方向に沿って形成される。これにより、スリット65dの延びる方向が第1ブレーキシュー64aに力が作用する方向(径方向外方)と異なる方向になり、かつその部分の幅W2が揺動軸63cの外形より小さいため、第1ブレーキシュー64aを揺動軸63cに装着すると、揺動軸63cから外れにくくなる。第1ブレーキシュー64aの第1端65aには、ブレーキドラム66に接触する接触面65fが形成されている。接触面65fは、円弧状に形成され、他の部分より幅が狭く形成されている。支持孔65cの外周側には、他の部分から両側に突出するボス部65gが形成されている。ボス部65gは、シュー支持凹部63bに近接する位置まで突出している。
【0050】
第2ブレーキシュー64bは、
図14に示すように、第1ブレーキシュー64aの構成に加えて貫通孔64cを有している。貫通孔64cの内径を変更することにより、質量が異なる種々のブレーキシューを得ることができる
。
ブレーキシュー64は、スプール12が回転すると、重心Gに作用する遠心力により、揺動軸芯Pを中心として
図11反時計回りに揺動する。
【0051】
<ブレーキドラム>
ブレーキドラム66は、
図8及び
図9に示すようにブレーキシュー64の径方向内方に配置された、例えば亜鉛合金製の比較的硬質の金属製の筒状部材である。ブレーキドラム66は、
図9に示すように、軸支持部9の軸受収納部9aの第1外周面9bに回転自在かつ軸方向移動自在に装着されている。ブレーキドラム66は、スプール12に近い回転部材62側から順に配置されたテーパ面66bと、平行面66cと、を有する外周面66aを有している。すなわち、ブレーキドラム66は、異なる直径でブレーキシュー64に接触可能な外周面66aを有している。このテーパ面66b及
び平行面66cに遠心力により揺動するブレーキシュー64の第1端65aに形成された接触面65fが接触する。テーパ面66bは、平行面66cからスプール12に向かって徐々に縮径するように形成されている。テーパ面66bの小径側端部の直径は、大径側端部の直径の85%から95%の範囲である。この実施形態では、小径側端部の直径は、14.1mmであり
、平行面66cの直径は、16.2mmである。また、テーパ面66bの軸方向長さは、5.5mmである。したがって、テーパ面66bの平行面66cに対する傾斜角度は例えば20.8度である。
【0052】
ブレーキドラム66は、第1側カバー6a側に移動機構68を構成する第1ギア部材73が固定される装着面66dを有している。第1ギア部材73は、装着面66dに例えば、圧入、接触等の適宜の固定手段により、一体回転可能に固定されている。
【0053】
<移動機構>
移動機構68は、ブレーキシュー64とブレーキドラム66とをスプール軸方向に移動かつ位置決め可能な機構である。移動機構68は、
図8に示すように、操作部材60と、ブレーキカム71と、第1ギア部材73と、第1ギア部材73に噛み合う第2ギア部材74と、第2ギア部材74に噛み合い、操作部材60と一体回転に設けられた第3ギア部材75と、を有している。
【0054】
操作部材60は、合成樹脂製の円板状の部材であり、外周部が第1側板5aの第2開口部5dから外部に露出するように配置されている。ブレーキカム71は、半円形の第1分割部材71aと第2分割部材71bとに二分割された、例えばポリアセタール樹脂製のリング形状の部材である。ブレーキカム71は、軸受収納部9aの第2外周面9cに回転不能かつ軸方向移動不能に装着されている。第1分割部材71aと第2分割部材71bの外周面には、螺旋状のカム溝71cが形成されている。第1分割部材71aと第2分割部材71bのブレーキカム71の内周面には位置決め突起71dが形成されている。位置決め突起71dは、
図8及び
図9に示すように、軸受収納部9aの第2外周面9cに貫通して形成された位置決め孔9dに係合する。第1ギア部材73は、ブレーキドラム66ともにスプール軸方向に移動するため、第1ギア部材73は、ブレーキドラム66がいずれの移動位置にあっても第2ギア部材74に噛み合うように肉厚が厚くなっている。第1ギア部材73の内周面には、カム溝71cに係合する例えば2個の円柱状に突出するカム突起73aが形成されている。カム溝71cにカム突起73aが係合した状態で第1ギア部材73が回転することにより、ブレーキドラム66が回転しつつ軸方向に移動する。
【0055】
第2ギア部材74は、第1側カバー6aの背面にねじ込み固定される第1ネジ軸76により回転自在に支持されている。第3ギア部材75は、第2ギア部材74より径方向外方の位置で第1側カバー6aの背面にねじ込み固定される第2ネジ軸77により、操作部材60と一体回転可能に連結された状態で回転自在に支持される。操作部材60は、位置決めピン78aを有する位置決め機構78により、複数段階(例えば、6段階から20段階)の操作位置で位置決めされる。この実施形態では、10段階の操作位置で位置決めされる。位置決めピン78aは、操作部材60の背面に円周方向に間隔を隔てて形成された図示しない複数(例えば10個)の凹部に係合する。
【0056】
操作部材60を操作開始位置から時計回りに回動操作させると、第3ギア部材75が回動し、第2ギア部材74を介して第1ギア部材73が回動し、ブレーキドラム66が回動する。なお、
図9に二点鎖線で示す操作開始位置は最も制動力が弱い状態のブレーキドラム66の位置である。操作部材60を回動させると、ブレーキカム71とのカム結合により、ブレーキドラム66がスプール12に近づく方向に移動し、最大の操作位置で図
9に示すスプール12に最も接近した最大制動位置にブレーキドラム66が移動する。これにより、スプール制動装置23の制動力を複数段階に調整できる。
【0057】
<スプール制動装置の動作>
スプール制動装置23では、操作部材60が、操作開始位置にあるときは、
図15Aに示すように、規制突起63fによって規制された位置でブレーキシュー64の接触面65fがテーパ面66bの小径側に接触する。このとき、ブレーキシュー64の揺動角度αが最も大きくなる。このとき重心Gは、スプール軸芯Cから遠くなるので、重心Gに作用する遠心力CF1は大きくなる。しかし、
操作開始位置における揺動角度αが
最大になるため、揺動中心SCと重心Gとを結ぶ直線と垂直な方向の遠心力CF1の分力F1は、微小なものになる。このため、ブレーキドラム66に作用する制動力は最も小さい。操作部材60が中間位置にあるときは、
図15Bに示すように、揺動角度αが操作開始位置より小さくなるため、遠心力CF2は操作開始位置の遠心力CF1より小さくなる。しかし、揺動中心SCと重心Gとを結ぶ直線と垂直な方向の分力F2は操作開始位置の分力F1より大きくなる。このためブレーキシュー64を押圧する制動力は、操作開始位置より大きくなる。操作部材60が最大制動位置にあるとき、
図15Cに示すように、揺動角度αが中間位置よりさらに小さくなるため、遠心力CF3は中間位置の遠心力CF2より小さくなる。しかし、揺動中心SCと重心Gとを結ぶ直線と垂直な方向の分力F3は中間位置の分力F2より大きくなる。このためブレーキシュー64を押圧する制動力は、最大になる。
【0058】
このような構成のスプール制動装置23では、操作部材60が操作開始位置から時計回りに回動操作されると、第3ギア部材75が時計回りに回転し、第2ギア部材74を介して第1ギア部材73が時計回りに回転する。なお、
図9は最大制動位置にすなわち操作終了位置に操作部材60がある状態を示している。これにより、ブレーキドラム66が回動し、例えばスプール12から離反する方向にブレーキドラム66が移動する。最大制動位置に操作されると、ブレーキシュー64が平行面66cに接触し、前述したように最大制動状態になる。逆に、操作部材60を反時計回りに操作すると制動力が徐々に弱くなる。
【0059】
調整が終わり、キャスティングを行うとスプール12が糸繰り出し方向に回転する。スプール12が回転すると、遠心力がブレーキシュー64の重心Gに作用し、ブレーキシュー64がスプール12
と食い違う軸回りに揺動し、接触面65fがブレーキドラム66の外周面の調整された位置に接触する。すると、ブレーキシュー64とブレーキドラム66との摩擦によりスプール12が制動される。このときの制動力は、接触位置でのブレーキドラム66の直径に依存する。
【0060】
ここでは、スプール制動装置23の制動力が遠心力ではなく、ブレーキシュー64の傾き(ブレーキドラム66に接触する位置)に依存して変化するため、広範囲に制動力を調整可能になる。また、ブレーキシュー64がスプール軸16と
食い違う軸回りに揺動するので、スプール軸方向の長さの増加を抑えることができ、ブレーキシュー64を揺動させても、リールの大型化を防止できる。
【0061】
また、ブレーキシュー64が回転部材62に着脱自在に弾性係合されている。このため、揺動するブレーキシュー64であっても容易に交換できる。
【0062】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0063】
(a)前記実施形態では、駆動ギアが駆動軸に回転自在に装着されているが、駆動ギアが一体回転可能に連結される駆動軸にも本発明を適用できる。
【0064】
(b)前記実施形態では、面取り部30gを4つ設けたが、面取り部の数は4つに限定されず少なくとも一つあればよい。
【0065】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0066】
(A)両軸受リールの駆動軸30は、ドラグ力を受けるラチェットホイール36及びスプール回転用の駆動ギア31が装着される軸である。駆動軸30は、第1装着部30aと、第2装着部30bと、鍔部30cと、溝部30dと、を備えている。第1装着部30aは、外周面に4つの面取り部30gを有し、ラチェットホイール36を一体回転可能に装着するためのものである。第2装着部30bは、第1装着部30aに隣接して設けられ、駆動ギア31を装着するためのものである。鍔部30cは、第2装着部30bと逆側で第1装着部30aに隣接して設けられ、第1装着部30aより大径のものである。溝部30dは、鍔部30cのラチェットホイール36が接触可能な側面に、面取り部30gに沿って機械加工により形成される。
【0067】
この、駆動軸30では、第1装着部30aの面取り部30gを加工するときに、溝部30dの形成も合わせて行えるようにする。これにより、鍔部30
cの側面の大部分を加工することなく面取り部30gを形成できる。たとえば、エンドミルT2ではなく、Tスロット工具T1を用いて面取り部30gをTスロット工具の先端面で加工し、溝部30dをTスロット工具T1の側面で加工することにより溝部30dと面取り部30gとを同時に加工できる。これにより、面取り部30gを形成していない周面の径方向外方に加工できない部分が生じても、溝部30d以外の面と加工できない面とに段差が生じなくなる。このため、鍔部30cに接触するラチェットホイール36を装着しても、ラチェットホイール36が鍔部30cの大きな面積に接触してドラグ力を受けることができる。このため、ラチェットホイール36が傾きにくくなる。
【0068】
(B)駆動軸30において、第2装着部30bは、駆動ギア31を回転自在に装着可能である。この場合に、第2装着部30bに駆動ギア3
1を装着しても駆動ギア31が傾きにくくなる。
【0069】
(C)駆動軸30において、面取り部30gは、周方向に間隔を隔てて複数設けられる。面取り部30
gが複数設けられて鍔部の側面の加工箇所が増えても、溝部30dを形成できるため、ラチェットホイール36が傾きにくくなる。
【0070】
(D)駆動軸30において、面取り部30gは、4つ設けられ、溝部30dは4つの面取り部30gに沿って4つ設けられる。この場合には、4つの面取り部30gを設けても、溝部30dの径方向外方が加工されないため、加工できない部分との間に段差が生じない。このため、面取り部30gを4つ設けてもラチェットホイール36が傾きにくくなる。
【0071】
(E)駆動軸30において、溝部30dは、面取り部30gをTスロット工具T1の先端面を用いて機械加工する際に、Tスロット工具T1の側面により機械加工されて形成される。この場合には、溝部30dと面取り部30gとが同時に形成されるので、溝部30dと面取り部30gとを形成しても加工時間が長くならない。
【0072】
(F)両軸受リールは、発明1から5のいずれかに記載の駆動軸30を備える。この場合には、上記作用効果を奏する両軸受リールを得ることができる。