(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
−第1の実施形態−
図1は、第1の実施形態における車両の駆動装置の概略構成図である。
図1において、車両1には、エンジン2、モータジェネレータ21、エアコン用コンプレッサ31が設けられている。具体的には、エンジン2の出力軸3、モータジェネレータ21の回転軸22、エアコン用コンプレッサ31の回転軸32が平行に配置され、出力軸3の一端にクランクプーリ4が、回転軸22、32に各プーリ23、33が取り付けられている。これら3つの各プーリ4、23、33にはベルト5が掛け回され、エンジン2の出力軸3、回転軸23、33の間は、ベルト5によって動力が伝達(伝導)される。
【0011】
スタータ6は、エンジン2の始動に用いられる。エンジン2の出力軸3の他端には、トルクコンバータ8、ベルト式の自動変速機9が接続されている。トルクコンバータ8は、図示しないポンプインペラ、タービンランナを有する。ベルト式の自動変速機9は、図示しないプライマリプーリ、セカンダリプーリ、これらプーリに掛け回されるスチールベルトを有する。エンジン2の回転駆動力は、これらトルクコンバータ8、自動変速機9を介して、最終的に車両駆動輪(図示しない)に伝達される。
【0012】
車両1の電源として、メインバッテリ41とサブバッテリ42が設けられている。いずれも14Vバッテリである。2つのバッテリ41、42の間は、並列された2つのリレー43によって接続されている。
【0013】
上記のスタータ6、モータジェネレータ21は、メインバッテリ41とリレー43の間に接続され、電力はメインバッテリ41から供給される。なお、モータジェネレータ21は、交流機から構成されているため、メインバッテリ41からの直流を交流に変換するインバータ24を付属している。
【0014】
エンジンコントロールモジュール(ECM)51は、エンジン2、スタータ6及びモータジェネレータ21を制御する。
【0015】
図2はガソリンエンジンの制御システム図である。各吸気ポート(図示しない)には、燃料噴射弁7が設けられている。燃料噴射弁7は、燃料をエンジン2に間欠的に供給するものである。
【0016】
吸気通路11には、電子制御のスロットル弁12が設けられ、スロットルモータ13によってスロットル弁12の開度(以下、「スロットル開度」という。)が制御される。実際のスロットル開度は、スロットルセンサ14により検出され、エンジンコントロールモジュール51に入力される。
【0017】
エンジンコントロールモジュール51には、アクセルセンサ53からのアクセル開度(アクセルペダル52の踏込量)の信号、クランク角センサ54からのクランク角の信号、エアフローメータ55からの吸入空気量の信号が入力される。クランク角センサ54の信号からは、エンジン2の回転速度が算出される。エンジンコントロールモジュール51は、これらの信号に基づいて、目標吸入空気量及び目標燃料噴射量を算出し、目標吸入空気量及び目標燃料噴射量が得られるように、スロットルモータ13及び各燃料噴射弁7に指令を出す。
【0018】
ここで、吸入空気量の制御について概説する(特開平9−287513号公報参照)。アクセル開度APOとエンジン回転速度Neとから所定のマップを検索することにより、目標基本吸入空気量及び目標当量比tDMLをそれぞれ算出する。目標基本吸入空気量を目標当量比tDMLで除算した値を目標吸入空気量とする。そして、この目標吸入空気量とエンジン回転速度から所定のマップを検索することにより、目標スロットル弁開度を求める。目標スロットル弁開度を指令値に変換して、スロットルモータ13に出力する。
【0019】
次に、燃料噴射(燃料噴射量及び燃料噴射時期)の制御について概説する。エアフローメータ55の出力をA/D変換し、リニアライズして吸入空気量Qaを算出する。この吸入空気量Qaとエンジン回転速度Neから、ほぼ理論空燃比(当量比=1.0)の混合気が得られる基本噴射パルス幅Tp0[ms]を、Tp0=K×Qa/Ne(ただし、Kは定数)として求める。次に、
Tp=Tp0×Fload+Tp-1×(1−Fload)
ただし、Fload:加重平均係数、
Tp-1:前回のTp、
の式によりシリンダ空気量相当パルス幅Tp[ms]を求める。これは、シリンダ(燃焼室)に流入する空気量(つまりシリンダ空気量)がエアフローメータ部での吸入空気量に対して応答遅れを有するので、この応答遅れを一次遅れで近似したものである。一次遅れの係数である加重平均係数Fload[無名数]は、回転速度Ne及びシリンダ容積Vの積Ne・Vと吸気管の総流路面積Aaから所定のマップを検索することにより求める。このようにして求めたシリンダ空気量相当パルス幅Tpに基づいて、燃料噴射弁7に与える燃料噴射パルス幅Ti[ms]を、
Ti=Tp×tDML×(α+αm−1)×2+Ts
ただし、tDML:目標当量比[無名数]、
α:空燃比フィードバック補正係数[無名数]、
αm:空燃比学習値[無名数]、
ts:無効噴射パルス幅[無名数]、
の式により算出する。そして、所定の燃料噴射時期になったときに、この燃料噴射パルス幅Tiの期間、燃料噴射弁7を開く。
【0020】
なお、ガソリンエンジン2では、燃焼室(シリンダ)に臨んで点火プラグを備えている。エンジンコントロールモジュール51は、圧縮上死点前の所定の時期に点火コイルの一次側電流を遮断することにより点火プラグに火花を発生させ、これによって燃焼室内の混合気に点火する。
【0021】
また、エンジンコントロールモジュール51は、スタータスイッチ56からの信号に基づいて、初回の始動要求があると判断したときには、スタータ6を駆動しエンジン2を始動させる。
【0022】
エンジンコントロールモジュール51は、燃費向上を目的として、アイドルストップ制御を行う。すなわち、アクセルペダル52が踏み込まれておらず(APO=0)、ブレーキペダル57が踏み込まれ(ブレーキスイッチ58がON)、かつ車両1が停止状態にある(車速VSP=0)ときに、アイドルストップ許可条件が成立する。アイドルストップ許可条件が成立すると、燃料噴射弁7から吸気ポートへの燃料噴射を遮断して、エンジン2を停止する。これにより、無駄な燃料消費を低減する。
【0023】
その後、アイドルストップ状態で、アクセルペダル52が踏み込まれたり、ブレーキペダル57が戻される(ブレーキスイッチ58がOFF)などすると、アイドルストップ許可条件が不成立となる。アイドルストップ許可条件が不成立となると、モータジェネレータ21をスタータとして用いてエンジン2をクランキングし、燃料噴射弁7からの燃料噴射と点火プラグによる火花点火とを再開して、エンジン2を再始動する。
【0024】
このように、モータジェネレータ21をアイドルストップからのエンジン再始動用として専ら用いることで、スタータ6の使用頻度を減らして、スタータ6を保護する。なお、スタータ6やモータジェネレータ21を駆動するときには、エンジンコントロールモジュール51により、2つのリレー43をともに遮断して、メインバッテリ41とサブバッテリ42を電気的に切り離す。これによって、エンジン2の始動操作に伴ってサブバッテリ42の電圧が変動することを防止する。
【0025】
図1に戻り、説明を続ける。車両1には、自動変速機用コントロールユニット(CVTCU)61が設けられている。自動変速機用コントロールユニット61は、車速とスロットル開度とから定まる車両の走行条件に応じて、自動変速機9の変速比を無段階に制御する。また、ポンプインペラ、タービンランナを有するトルクコンバータ8には、ポンプインペラとタービンランナとを締結・開放する機械式のロックアップクラッチが設けられている。ロックアップクラッチを締結する車両の走行域は、ロックアップ領域(車速とスロットル開度とをパラメータとしている)として予め定められている。自動変速機用コントロールユニット61は、車両の走行条件がロックアップ領域となったとき、ロックアップクラッチを締結してエンジン2と変速機9とを直結状態とし、車両の走行条件がロックアップ領域でないときには、ロックアップクラッチを開放する。エンジン2と変速機9とを直結状態としたときには、トルクコンバータ8でのトルクの吸収がなくなり、その分燃費が良くなる。
【0026】
車両1にはまた、ビークルダイナミックコントロール(Vehicle Dynamics Control)ユニット(VDCCU)62、車速感応式の電動パワーステアリング(Electric Power Steering)用コントロールユニット(EPSCU)63、エアコン用オートアンプ64、コンビネーションメータ66が設けられている。ビークルダイナミックコントロールユニット62は、車両の横滑りや尻振りを起こしそうになると、横滑り状態をセンサが検知し、ブレーキ制御とエンジン出力制御により、走行時の車両安定性を向上させる。車速感応式電動パワーステアリング用コントロールユニット63は、トルクセンサから入力される操舵トルク、及び車速から、最適なアシストトルク信号をEPSモータに出力する。
【0027】
上記の自動変速機用コントロールユニット61、ビークルダイナミックコントロールユニット62、車速感応式パワーステアリング用コントロールユニット63、コンビネーションメータ66は、電圧降下を許容できない電気負荷である。従って、これらは、サブバッテリ42から電力の供給を受ける。
【0028】
エンジンコントロールモジュール51と3つの各コントロールユニット61〜63、エアコン用オートアンプ(A/C Amp)64、コンビネーションメータ66の間は、CAN(Controller Area Network)で接続されている。エンジンコントロールモジュール51には、コンビネーションメータ66から車速信号が入力される。
【0029】
上述したように、モータジェネレータ21を使用する範囲をエンジンの始動用のみにとどめるのではなく、車両走行中のトルクアシスト用にまで拡大することができれば、運転性がよくなると本発明者が思い至った。
【0030】
そこで、第1の実施形態では、アイドルストップからの再始動用に用いているモータジェネレータ21の使用範囲を車両走行中のトルクアシストにまで拡大する。具体的には、エンジン2の始動後かつ車両1の走行開始後に、車速VSPが所定車速VSPLOKより高い場合に、モータジェネレータ21を用いたトルクアシストを許可する。
【0031】
トルクアシストを許可するときには、エンジン2をトルクアシストするよう、メインバッテリ41を電源として用いて、モータジェネレータ21に所定のアシストトルクを発生させ、トルクアシストを禁止するときにはアシストトルクを発生させない。これによって、エンジン2の始動後かつ車両1の走行開始後に、良好な加速応答性(運転性)が得られるようにする。
【0032】
メインバッテリ41の電圧はモニタし、エンジンコントロールモジュール51に入力させておく。エンジンコントロールモジュール51は、メインバッテリ41の電流に基づいて、メインバッテリ41のSOC(State Of Charge)を算出し、このSOCに基づいて、メインバッテリ41の充放電の収支を管理する。
【0033】
インバータ24とエンジンコントロールモジュール51とは、LIN(Local Interconnect Network)で接続している。LINを介して、エンジンコントロールモジュール51がインバータ24に対して、モータジェネレータ21を駆動するのか、それともモータジェネレータ21で発電させるのか、モータとして駆動するためにどのくらいの電流を流すのか等を指令する。
【0034】
エンジン2の再始動後かつ車両1の走行開始後に、車速VSPが所定車速VSPLOKより高い場合に、モータジェネレータ21を用いて行うトルクアシストについて、
図3を参照して説明する。
図3は、エンジン再始動の開始からエンジン回転速度、車両トルク、車速、アクセル開度がどのように変化するのかをモデルで示したタイミングチャートである。ここで、「車両トルク」とは車両の駆動に用いられるトルクのことで、通常はエンジントルクが車両トルクとなる。一方、モータジェネレータ21によるトルクアシストがあるときには、このアシストトルクとエンジントルクの合計が車両トルクとなる。
図3の下方に示した2つのフラグについては後述する。
【0035】
t1のタイミングでアイドルストップ許可条件が不成立となって、再始動フラグが0から1になり、モータジェネレータ21を用いてエンジン2のクランキングを行うと共に、燃料噴射弁7からの燃料噴射及び点火プラグによる火花点火を再開する。これによってエンジン2が燃焼を開始すればエンジン回転速度が急上昇するが、所定の完爆回転速度を横切るt2のタイミングでエンジン2が再始動したと判定される。
【0036】
一方、t2の付近でドライバ(運転者)がアクセルペダル52を少し踏み込んだため、燃料噴射弁7からの燃料噴射量(Tp)と吸入空気量Qaとが増加する。これによって、エンジン回転速度が上昇し、車両トルク(=エンジントルク)が増加するので、車両1がt3のタイミングより走行を開始し、車速がゆっくりと上昇している。車両1を発進させた後もアクセル開度は一定であるので、エンジン回転速度と車両トルクとはt3のタイミングを過ぎた当たりで一定値へと落ち着く。
【0037】
次に、t5のタイミングでドライバがアクセルペダル52を踏み込んだとすると、アクセル開度の増加に応じて車速が上昇する。車速VSPが閾値VSPLOKを超えるt6のタイミングで、メインバッテリ41からインバータ24に電流を流してモータジェネレータ21をモータとして駆動する。これにより、エンジントルクにモータトルクが加わり(トルクアシスト)、ドライバの望む加速がすぐに得られることとなる。この場合、モータジェネレータ21が発生するトルクは、ゼロから漸増して最大トルクとなるようにする(
図3の第2段目参照)。
【0038】
一方、モータジェネレータ21によるトルクアシスト分をエンジン2の発生するトルクで賄おうとすると、燃料噴射弁7からの燃料供給を増量補正しなければならず、それだけ燃料消費が多くなり、燃費が悪くなる。これに対して、車両1の減速時に、モータジェネレータ21により運動エネルギーを電気エネルギーとして回収し、その回収した電気エネルギーをメインバッテリ41に蓄えておく。そして、車速VSPが閾値VSPLOKを超えたときに、この電気エネルギーを蓄えたメインバッテリ41を電源として用いて、モータジェネレータ21にアシストトルクを発生させるのであれば、燃料を消費することがないので、燃費を悪くすることがない。また、モータジェネレータ21は、エンジン2よりも応答良くトルクを発生することができる。応答が良ければ、ドライバがアクセルペダルを踏み込み過ぎることを避けることができる。
【0039】
図4は、モータジェネレータ21を用いたトルクアシスト制御のフローチャートである。
図4に示すフローチャートの処理は、エンジンコントロールモジュール51によって所定時間ごと(例えば、10msごと)に行われる。
【0040】
ステップS10では、エンジン2の初回始動後であるか否かを判定する。エンジン2の初回始動では、スタータ6を用いる。エンジン2の初回始動後でないと判定すると今回の処理は終了し、初回始動後であると判定すると、ステップS20に進む。
【0041】
ステップS20では、車両1が走行中であるか否かを判定する。車速がゼロまたはゼロに近い値以下であるときには車両の停止中(走行中でない)と判断して、今回の処理は終了する。一方、車速がゼロでないとき、またはゼロに近い値を超えているときには、車両の走行中であると判断して、ステップS30に進む。
【0042】
ステップS30では、トルクアシスト許可条件が成立しているか否かを判定する。すなわち、次の〈1〉、〈2〉の全ての条件が成立してないときに、トルクアシスト許可条件が成立したと判断する。言い換えると、次の〈1〉、〈2〉のいずれかの条件でも成立するときには、トルクアシスト許可条件が成立しないと判断して、トルクアシストを禁止する。
〈1〉ロックアップクラッチを開放しているとき
〈2〉メインバッテリ41のSOCがトルクアシスト許可値未満であるとき
上記〈1〉のときにトルクアシストを禁止するのは、ロックアップクラッチを開放しているときにエンジン2にアシストトルクを加えても、アシストトルクの一部がトルクコンバータ8で吸収されてしまい、トルク伝達の効率が悪いためである。一方、ロックアップクラッチを締結し、エンジン2と変速機9とを直結状態としているときにエンジン2に対してアシストトルクを加えるのであれば、アシストトルクの分が車両トルクの増加となるので、トルク伝達の効率が悪くなることがない。
【0043】
上記〈2〉の条件が成立する場合には、トルクアシストを禁止する。言い換えると、メインバッテリ41のSOCがトルクアシスト許可値以上であるときに、トルクアシストを許可することとしている。
【0044】
このように本実施形態では、車両挙動制御装置との干渉を主に防止する観点からトルクアシストを許可する条件を限定している。
【0045】
上記〈1〉と〈2〉の両方とも成立していないときには、トルクアシスト許可条件が成立したと判断して、ステップS40に進み、トルクアシスト許可フラグ=1とする。これを
図3で示すと、t4のタイミングで、トルクアシスト許可フラグがゼロから1へと切換わっている。
【0046】
一方、上記〈1〉と〈2〉のいずれか一方でも成立するときには、トルクアシスト許可条件が成立しないと判断してステップS50に進み、トルクアシスト許可フラグ=0とする。
【0047】
ステップS60では、トルクアシスト許可フラグ=1であるか否かを判定する。トルクアシスト許可フラグ=1であると判定すると、ステップS70に進み、トルクアシスト許可フラグ=0であると判定すると、ステップS90に進む。
【0048】
ステップS70では、車速VSPが閾値VSPLOKより高いか否かを判定する。車速VSPが閾値VSPLOKより高いと判定すると、
トルクアシストを許可する。そして、トルクアシストを実行するため、ステップS80に進み、トルクアシスト実行フラグ=1とする。
【0049】
トルクアシスト実行フラグ=1により、エンジンコントロールモジュール51がインバータ24に電流を流し、モータジェネレータ21をモータとして駆動する。これを
図3で示すと、t6のタイミングでトルクアシスト実行フラグが0から1へと切換わり、t6のタイミングでモータトルクがエンジントルクに加わっている。
【0050】
一方、ステップS70で車速VSPが閾値VSPLOK以下であると判定すると、ステップS90に進み、トルクアシスト実行フラグ=0とする。このトルクアシスト実行フラグ=0により、エンジンコントロールモジュール51がインバータ24への電流供給を遮断して、モータジェネレータ21を非駆動状態とする。すなわち、車速が閾値VSPLOK以下の低車速域では、モータジェネレータ21によるトルクアシストを禁止するので、低車速域において目立ちやすい、トルクアシスト開始時の押し出され感やトルクアシスト終了時のショックが発生しない。また、低車速、つまり、低回転・高負荷域で懸案となるベルト5の鳴き防止や、各プーリ4、23、33の軸3、22、32の強度確保が可能となる。
【0051】
本実施形態では、モータジェネレータ21に最大トルクまで発生させる例を挙げて説明したが、これに限られるものでない。例えば、最大トルク未満の一定トルクを発生させるようにしてもかまわない。
【0052】
以上、第1の実施形態における車両の駆動装置によれば、車両の走行開始後に、車速が第1の車速閾値VSPLOKを超えている場合に、エンジン2の出力軸にベルトを介して機械的に結合されたモータジェネレータ21によるトルクアシストを許可し、車速が第1の車速閾値VSPLOK以下の場合に、モータジェネレータ21によるトルクアシストを禁止する。車速が第1の車速閾値VSPLOKを超えている場合にトルクアシストを許可するので、ドライバの加速意志(加速要求)に応えつつ、トルクアシストの開始、終了時に発生するトルクの段差に起因するショックをドライバに感じにくくさせることができる。また、車速が第1の車速閾値VSPLOK以下の場合にトルクアシストを禁止するので、トルクアシスト開始時の押し出され感やトルクアシスト終了時の引け感の発生を防止することができ、また、低車速、つまり、低回転・高負荷域で懸案となるベルト5の鳴き防止や、各プーリ4、23、33の軸3、22、32の強度確保が可能となる。
【0053】
−第2の実施形態−
図5は、第2の実施形態におけるエンジン再始動からのタイミングチャートである。また、
図6は、第2の実施形態における車両の駆動装置によって行われるトルクアシスト制御のフローチャートである。
図3、
図4と同一部分には、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0054】
第1の実施形態では、エンジン2の始動後、かつ車両1の走行開始後にトルクアシストを許可する車速域を閾値VSPLOKより高い領域とし、閾値VSPLOK以下の低車速域では、モータジェネレータ21によるトルクアシストを禁止した。これに対して、第2の実施形態では、エンジン2の始動後、かつ車両1の走行開始後にトルクアシストを許可する車速域を、閾値VSPHOK(VSPLOK<VSPHOK)以下の車速域に限定し、閾値VSPHOKより高い高車速域におけるモータジェネレータ21のトルクアシストを禁止する。
【0055】
図5のタイミングチャートにおいて、t7のタイミングでトルクアシストを許可し、インバータ24にメインバッテリ41からの電流を流してモータジェネレータ21にモータトルクを発生させる。これによって、エンジントルクにモータトルクが加わり(トルクアシスト)、ドライバの望む加速が得られることとなる。
【0056】
この後、トルクアシスト中に車速VSPが閾値VSPHOKを超えるt8のタイミングで、高車速域に移行したと判断して、トルクアシストを禁止し、インバータ24への電流供給を遮断する。
【0057】
図6に示すフローチャートにおいて、ステップS30の判定を肯定すると、ステップS200に進む。ステップS200では、車速VSPが閾値VSPHOK以下であるか否かを判定する。車速VSPが閾値VSPHOK以下であると判定すると、ステップS40に進んでトルクアシスト許可フラグ=1とし、車速VSPが閾値VSPHOKより高いと判定すると、ステップS50に進んでトルクアシスト許可フラグ=0とする。
【0058】
ステップS60では、トルクアシスト許可フラグ=1であるか否かを判定する。トルクアシスト許可フラグ=1であると判定すると、ステップS80に進んでトルクアシスト実行フラグ=1とし、トルクアシスト許可フラグ=0であると判定すると、ステップS90に進んでトルクアシスト実行フラグ=0とする。この結果、第2実施形態では、トルクアシスト許可フラグとトルクアシスト実行フラグが同じタイミングで切換わる(
図5の第6段目、第7段目参照)。
【0059】
以上、第2の実施形態における車両の駆動装置によれば、車両の走行開始後に、車速が第2の車速閾値VSPHOK以下の場合に、エンジン2の出力軸にベルトを介して機械的に結合されたモータジェネレータ21によるトルクアシストを許可し、車速が第2の車速閾値VSPHOKを超えている場合にトルクアシストを禁止する。高車速による耐熱性や耐摩耗性に対して不利となる領域でトルクアシストを禁止するので、安全性を確保できるとともに、モータジェネレータ21の特性上、モータトルクが小さくなりトルクアシスト効果が小さい高車速域での過剰な電力消費を抑えることができる。
【0060】
−第3の実施形態−
図7は、第3の実施形態におけるエンジン再始動からのタイミングチャートである。また、
図8は、第3の実施形態における車両の駆動装置によって行われるトルクアシスト制御のフローチャートである。
図3、
図4と同一部分には、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0061】
第3の実施形態は、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせたものである。すなわち、エンジン2の始動後、かつ車両1の走行開始後にトルクアシストを許可する車速域を第1の閾値VSPLOKより高く、かつ第2の閾値(VSPLOK<VSPHOK)以下とする。
【0062】
図7のタイミングチャートにおいて、t6のタイミングまでの処理は、
図3のタイミングチャートと同じである。t9のタイミングにおいて、車速VSPが第2の閾値VSPHOKを超えると、トルクアシストを禁止し、インバータ24への電流供給を遮断する。
【0063】
図8のフローチャートについて説明する。ステップS70において、車速VSPが第1の閾値VSPLOKより高いと判定すると、ステップS200に進み、第1の閾値VSPLOK以下であると判定すると、ステップS90に進む。
【0064】
ステップS200では、車速VSPが第2の閾値VSPHOK以下であるか否かを判定する。車速VSPが第2の閾値VSPHOK以下であると判定すると、ステップS80に進んでトルクアシスト実行フラグ=1とし、車速VSPが第2の閾値VSPHOKより高いと判定すると、ステップS90に進んでトルクアシスト実行フラグ=0とする。
【0065】
以上、第3の実施形態における車両の駆動装置によれば、車速が第1の車速閾値VSPLOKを超えており、かつ第2の車速閾値VSPHOK以下の場合に、モータジェネレータ21によるトルクアシストを許可し、車速が第1の車速閾値VSPLOK以下または第2の車速閾値VSPHOKを超えている場合に、トルクアシストを禁止する。これにより、第1の実施形態と同様に、ドライバの加速意志(加速要求)に応えつつ、トルクアシストの開始、終了時に発生するトルクの段差に起因するショックをドライバに感じにくくさせることができる。また、車速が第1の車速閾値VSPLOK以下の場合にトルクアシストを禁止するので、トルクアシスト開始時の押し出され感やトルクアシスト終了時の引け感の発生を防止することができ、また、低車速、つまり、低回転・高負荷域で懸案となるベルト5の鳴き防止や、各プーリ4、23、33の軸3、22、32の強度確保が可能となる。さらに、第2の実施形態と同様に、高車速による耐熱性や耐摩耗性に対して不利となる領域でトルクアシストを禁止するので、安全性を確保できるとともに、モータジェネレータ21の特性上、モータトルクが小さくなりアシスト効果が小さい高車速域での過剰な電力消費を抑えることができる。
【0066】
−
参考例1−
参考例1における車両の駆動装置では、エンジン2の始動後、かつ車両1の走行開始後に、車速の変化率DVSPが閾値DVSPLOKより大きいときに、モータジェネレータ21を用いたトルクアシストを許可する。
【0067】
図9は、
参考例1における車両の駆動装置によって行われるトルクアシスト制御のフローチャートである。
図4に示すフローチャートと同一の処理を行うステップについては、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0068】
ステップS20に続くステップS300では、前回読み込んだ車速VSPをVSPOLDに設定する。ただし、エンジン2の初回始動後に初めてステップS300の処理を行う場合には、VSPOLD=0とする。
【0069】
ステップS310では、車速VSPを読み込む。
【0070】
ステップS320では、ステップS310で読み込んだ車速VSPと、ステップS300で設定したVSPOLDとの差を車速変化率DVSPとして算出する。
【0071】
ステップS60でトルクアシスト許可フラグ=1であると判定すると、ステップS330に進む。ステップS330では、ステップS320で算出した車速変化率DVSPが閾値DVSPLOKより大きいか否かを判定する。車速変化率DVSPが閾値DVSPLOKより大きいと判定するとステップS80に進み、トルクアシスト実行フラグ=1とする。一方、車速変化率DVSPが閾値DVSPLOK以下であるとステップS90に進んでトルクアシスト実行フラグ=0とする。
【0072】
以上、
参考例1における車両の駆動装置によれば、車両の走行開始後に、車速の変化率DVSPが第1の変化率閾値DVSPLOKを超えている場合に、エンジン2の出力軸にベルトを介して機械的に結合されたモータジェネレータ21によるトルクアシストを許可し、車速の変化率DVSPが第1の変化率閾値DVSPLOK以下の場合に、モータジェネレータ21によるトルクアシストを禁止する。車速の変化率が第1の変化率閾値DVSPLOKを超えている場合にトルクアシストを許可するので、ドライバの加速意志(加速要求)に応えつつ、トルクアシストの開始、終了時に発生するトルクの段差に起因するショックをドライバに感じにくくさせることができる。また、車速の変化率が第1の変化率閾値VSPLOK以下の場合にトルクアシストを禁止するので、トルクアシスト開始時の押し出され感やトルクアシスト終了時の引け感の発生を防止することができる。さらに、アクセルは踏まれつつも減速している状態でのトルクアシストによる押し出され感を防ぐことができる。
【0073】
−
参考例2−
参考例2における車両の駆動装置では、エンジン2の始動後、かつ車両1の走行開始後に、車速の変化率DVSPが閾値DVSPHOK(DVSPLOK<DVSPHOK)以下のときに、モータジェネレータ21を用いたトルクアシストを許可する。
【0074】
図10は、
参考例2における車両の駆動装置によって行われるトルクアシスト制御のフローチャートである。
図9に示すフローチャートと同一の処理を行うステップについては、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0075】
ステップS30に続くステップS400では、ステップS320で算出した車速変化率DVSPが閾値DVSPHOK以下であるか否かを判定する。車速変化率DVSPが閾値DVSPHOK以下であると判定するとステップS40に進んで、トルクアシスト許可フラグ=1とする。一方、車速変化率DVSPが閾値DVSPHOKより大きいと判定すると、ステップS50に進んで、トルクアシスト許可フラグ=0とする。
【0076】
以上、
参考例2における車両の駆動装置によれば、車両の走行開始後に、車速の変化率DVSPが第2の変化率閾値DVSPHOK以下の場合に
、モータジェネレータ21によるトルクアシストを許可し、車速の変化率DVSPが第2の変化率閾値DVSPHOKを超えている場合に
、トルクアシストを禁止する。急激な負荷増などによる耐熱性や耐摩耗性に対して不利となる領域でトルクアシストを禁止するので、安全性を確保できるとともに、モータジェネレータ21の特性上、モータトルクが小さくなりアシスト効果が小さい領域での過剰な電力消費を抑えることができる。
【0077】
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参考例3−
参考例3は、
参考例1と
参考例2とを組み合わせたものである。すなわち、エンジン2の始動後、かつ車両1の走行開始後にトルクアシストを許可する車速変化率を第1の閾値DVSPLOKより大きく、かつ第2の閾値DVSPHOK以下とする。
【0078】
図11は、
参考例3における車両の駆動装置によって行われるトルクアシスト制御のフローチャートである。
図9に示すフローチャートと同一の処理を行うステップについては、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0079】
ステップS330において、車速変化率DVSPが第1の閾値DVSLOKより大きいと判定するとステップS400に進み、第1の閾値DVSLOK以下であると判定すると、ステップS90に進む。
【0080】
ステップS400では、車速変化率DVSPが第2の閾値DVSPHOK以下であるか否かを判定する。車速変化率DVSPが第2の閾値DVSPHOK以下であると判定すると、ステップS80に進んでトルクアシスト実行フラグ=1とする。一方、車速変化率DVSPが第2の閾値DVSPHOKより大きいと判定すると、ステップS90に進んでトルクアシスト許可フラグ=0とする。
【0081】
以上、
参考例3における車両の駆動装置によれば、車速の変化率DVSPが第1の変化率閾値DVSPLOKを超えており、かつ第1の変化率閾値DVSPLOKより大きい第2の変化率閾値DVSPHOK以下の場合に、モータジェネレータ21によるトルクアシストを許可し、車速の変化率が第1の変化率閾値DVSPLOK以下または第2の変化率閾値DVSPHOKを超えている場合に
、トルクアシストを禁止する。これにより、
参考例1と同様に、ドライバの加速意志(加速要求)に応えつつ、トルクアシストの開始、終了時に発生するトルクの段差に起因するショックをドライバに感じにくくさせることができる。また、車速の変化率が第1の変化率閾値DVSPLOK以下の場合にトルクアシストを禁止するので、トルクアシスト開始時の押し出され感やトルクアシスト終了時の引け感の発生を防止することができる。さらに、第5の実施形態と同様に、急激な負荷増などによる耐熱性や耐摩耗性に対して不利となる領域でトルクアシストを禁止するので、安全性を確保できるとともに、モータジェネレータ21の特性上、モータトルクが小さくなりアシスト効果が小さい領域での過剰な電力消費を抑えることができる。
【0082】
本発明は、上述した第1〜第6の実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。