【文献】
日光ケミカルズ株式会社,NIKKOL Product Profiles,2007年,19−20頁,47−48頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の発泡性圧縮製剤は、炭酸塩を含有する。炭酸塩は、本発明の発泡性圧縮製剤を浴水に投入したときに、後述する有機酸とともに炭酸ガスを発生させることができる。かかる炭酸塩としては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の炭酸ジアルカリ金属塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸モノアルカリ金属塩;炭酸カルシウム等の二価以上の金属の炭酸塩が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
なかでも、保存安定性を向上させる観点から、炭酸塩として、少なくとも炭酸ジアルカリ金属塩を含有するのが好ましい。この際、炭酸ジアルカリ金属塩の含有量は、炭酸ガス発生量を確保する観点、及び良好な保存安定性を保持する観点から、炭酸塩中に、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、またさらに好ましくは60質量%以上であり、また好ましくは100質量%以下である。そして、好ましくは25〜100質量%であり、より好ましくは40〜100質量%であり、さらに好ましくは50〜100質量%であり、またさらに好ましくは60〜100質量%である。
【0018】
さらに、炭酸塩として炭酸モノアルカリ金属塩を用いる場合、炭酸モノアルカリ金属塩の含有量は、高い保存安定性を確保する観点から、炭酸塩中に、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは0〜40質量%であり、またさらに、他の成分中に不可避的に混入する以外、炭酸モノアルカリ金属塩を含有しないのが好ましい。
【0019】
炭酸塩として、炭酸ジアルカリ金属塩及び炭酸モノアルカリ金属塩を併用する場合、これらの含有量は、良好な保存安定性を保持する観点から、質量比(炭酸ジアルカリ金属塩:炭酸モノアルカリ金属塩)で、好ましくは25:75〜100:0であり、より好ましくは30:70〜100:0である。これら炭酸ジアルカリ金属塩及び炭酸モノアルカリ金属塩を併用する場合、、炭酸ガス発生量を確保する観点、及び良好な保存安定性を保持する観点から、炭酸ジアルカリ金属塩として炭酸ナトリウムを用い、炭酸モノアルカリ金属塩として炭酸水素ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0020】
炭酸塩の含有量は、炭酸ガス発生量を確保する点及び保存安定性の点から、本発明の発泡性圧縮製剤中に、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、また好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。そして、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは25〜50質量%である。
【0021】
本発明の発泡性圧縮製剤は、有機酸を含有する。かかる有機酸としては、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、サリチル酸及びシュウ酸等の室温(25℃)で固体の有機酸が好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、炭酸ガス発生量を確保する観点、及び良好な保存安定性を保持する観点から、かかる有機酸がフマル酸、リンゴ酸又は酒石酸を含有することが好ましく、フマル酸を含有することがより好ましい。
【0022】
有機酸の含有量は、炭酸ガス発生量を確保し、かつ肌に対する低刺激性を実現する上で浴水のpHを弱酸性とする点から、本発明の発泡性圧縮製剤中に、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、また好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。そして、好ましくは30〜70質量%であり、より好ましくは35〜65質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。
【0023】
本発明の発泡性圧縮製剤は、2質量%を超え10質量%以下の25℃で液状の成分を含有する。本発明の発泡性圧縮製剤は、後述するように特定の平均表面積を有していることから、25℃で液状の成分をこのような量で含有していても、良好に炭酸ガスを発生させながら高い保存安定性を保持することができ、液状の成分による作用を十分に発揮させることが可能である。なお、25℃で液状の成分とは、炭酸塩と有機酸との反応に影響を及ぼす成分を意味し、かかる25℃で液状の成分としては、例えば、香料又はエキス、界面活性剤、油剤が挙げられる。
【0024】
25℃で液状の香料又はエキスとは、香料又はエキス自体が25℃で液状ものであってもよく、溶剤を用いて25℃で液状のものとなるようにしたものであってもよい。本発明の発泡性圧縮製剤は保存安定性が高いため、かかる香料又はエキスによってもたらされる良好な香り立ちやエキスによる作用を長期間に亘って安定に保持させることができる。かかる香料又はエキスとしては、合成香料として1996年化学工業日報社刊印藤元一著「合成香料化学と商品知識」、1969年MONTCLAIR,N.J.刊、ステファンアークタンダー(STEFFEN ARCTANDER)著「パヒューム アンド フレーバーケミカルス(Perfume and Flavor Chemicals)」等に記載の香料が使用でき、天然香料として「香りの百科」(日本香料協会編)に記載の香料が使用でき、エキスとして各種生薬等の動植物抽出物の抽出エキスが使用できる。香料としては、具体的には、例えば、メントール、dl−メントール、l−メントール、シネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネロール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、カンファー、チモール、スピラントール、ピネン等が挙げられ、これらはハッカ油、ジャスミン油、樟脳油、ヒノキ油、トウヒ油、リュウ油、ミカン油、オレンジ油、ユズ油、ラベンダー油、ベン油、クローブ油、ヒバ油、バラ油、ユーカリ油、レモン油、タイム油、ペパーミント油、セージ油、ベルガモット油、菖蒲油、パイン油等精油成分として含有させても良く、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。エキスとしては、具体的には、エキス、等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。溶剤としては、具体的には、エタノール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、イソプロパノール、アセチン(トリアセチン)、プロピレングリコール、水等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
25℃で液状の界面活性剤は、本発明の発泡性圧縮製剤を浴水に投入した際、各成分を浴水中に均一に溶解又は分散させる作用を発揮することができる。かかる界面活性剤としては、具体的には、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
25℃で液状の油剤は、本発明の発泡性圧縮製剤に含有させることにより、炭酸ガスの皮膚からの吸収を促進しながら温まり感を増大させるとともに、入浴後の皮膚に対してしっとり感を付与し、優れたスキンケア効果をもたらすことができる。かかる油剤としては、具体的には、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、スクワラン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素油;リンゴ酸ジイソステアリル、乳酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバチン酸ジイソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリカプロイン、オリーブ油、メドフォーム油、2エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル等のエステル油;セチルイソブチルエーテル、ジオクチルエーテル、エチレングリコールモノラウリルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
25℃で液状の成分として、これら香料又はエキス、界面活性剤及び油剤から選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。かかる25℃で液状の成分の合計含有量は、保存安定性を良好に保持しつつ液状の成分による作用を十分に発揮させる観点から、本発明の発泡性圧縮製剤中に、2質量%を超えるものである。また10質量%以下であって、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以下である。
【0028】
なお、本発明の発泡性圧縮製剤は、さらに保存安定性を高めるため、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子としては、分子量1500以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェノールエーテル等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールを用いるのが好ましい。ポリエチレングリコールとしては、重量平均分子量が2000〜10000であるものが好ましい。
【0029】
有機酸の一部又は全部としてフマル酸を用いる場合、予め上記水溶性高分子でフマル酸に表面処理を施していてもよい。フマル酸に予めかかる処理を施すことにより、本発明の発泡性圧縮製剤を浴水に投入した際、浴水面でのフマル酸の浮き及び泡立ちを抑制することができ、また浴水をかき混ぜた時に生じる泡立ちをも速やかに消失させることができる。かかる表面処理には、ポリエチレングリコールを用いるのが好ましい。表面処理に用いるポリエチレングリコールとしては、重量平均分子量が2000〜10000であるものが好ましい。表面処理に用いるポリエチレングリコールの量は、フマル酸が浴水面で浮遊するのを抑制する観点から、有機酸100質量部に対し、好ましくは0.2質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上であり、また好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは45質量部以下である。
【0030】
また、フマル酸と同様に、炭酸塩も予め上記水溶性高分子で表面処理を施すのが好ましい。炭酸塩にかかる表面処理を施す場合、水溶性高分子としては上記ポリエチレングリコールを用いるのが好ましい。この場合、表面処理に用いるポリエチレングリコールの量は、本発明の発泡性圧縮製剤の溶解速度を調節する観点から、炭酸塩100質量部に対し、好ましくは0.2質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上であり、また好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは45質量部以下である。
【0031】
本発明の発泡性圧縮製剤は、上記成分のほか、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常浴用剤に用いられる25℃で液状ではない成分を含有することができる。
かかる成分としては、例えば、25℃で液状ではない糖類、無機塩類、生薬類、アルコール類、多価アルコール類、色素等が挙げられる。
【0032】
本発明の発泡性圧縮製剤は、製剤1錠に外接する楕円体を製剤1錠あたりが有する立体形状と仮定し、かつ楕円体の中心Oで互いに直交する3つの楕円面の主軸の長さを2a(mm)、2b(mm)及び2c(mm)(ただし、2aは楕円体の最長差し渡し径である)としたときに、
下記式(I)、(II)、(III)又は(IV)で求められる楕円体1個あたりの平均表面積Sが220mm
2以上900mm
2以下である。
【0033】
本発明の発泡性圧縮製剤が特定の平均表面積を有するものであることを示すにあたり、まず、製剤1錠に外接する楕円体を製剤1錠あたりが有する立体形状と仮定し、かつ楕円体の中心Oで互いに直交する3つの楕円面の主軸の長さを2a(mm)、2b(mm)及び2c(mm)とすることにより、本発明の発泡性圧縮製剤1錠の形状を楕円体1個の形状と同等であるとみなす。
【0034】
次に、かかる楕円体において、中心Oで互いに直交する3つの楕円面の主軸の長さを2a(mm)、2b(mm)及び2c(mm)とする。このとき、2aは楕円体の最長差し渡し径であって、a≧b≧cであり、2a、2b及び2cは、中心Oで二等分される楕円面の主軸である。すなわち、2aは、例えば、
図1の概略図に示すように、楕円体において中心Oを含む任意の楕円面のなかで、最も長い主軸(最長差し渡し径)に相当するものである。中心Oを原点としてかかる楕円体をx軸、y軸及びz軸の直交座標系に当てはめた場合、2aを主軸とする楕円面をx軸方向における楕円体の断面とすると、2bを主軸とする楕円面及び2cを主軸とする楕円面は、いずれか一方がy軸方向における楕円体の断面に相当し、他方がz軸方向における楕円体の断面に相当することとなる。
【0035】
そして、本発明の発泡性圧縮製剤は、かかる製剤が有する形状を上記楕円体としたときに、2a、2b及び2cから求められる楕円体1個当たりの平均表面積Sが、220mm
2以上900mm
2以下である。かかる平均表面積Sは、a、b及びcの関係により、以下の(1)〜(4)に述べるように、式(I)〜(IV)のいずれかの式にa、b及びcを代入することによって算出することができる。
なお、式(I)は、楕円体の表面積を求める際に用いられる公式に準じたものであり、例えば「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R. Spiegel著、オーム社、1995年、p179)にも記載されるように、ヤコービの標準式又はルジャンドルの標準式に沿ったものである。式(II)は回転楕円体(扁球)、式(III)は回転楕円体(長球)および式(IV)は球の表面積の公式である。
【0036】
(1)a、b及びcが、a>b>cである場合、上記楕円体1個当たりの平均表面積Sは、下記式(I)で求められる。
【0037】
【数5】
なお、kは母数、αは偏角と称されるものである。
【0038】
(2)a、b及びcが、a=b>cである場合、上記楕円体1個当たりの平均表面積Sは、下記式(II)で求められる。
【0040】
(3)a、b及びcが、a>b=cである場合、上記楕円体1個当たりの平均表面積Sは、下記式(III)で求められる。
【0042】
(4)a、b及びcが、a=b=cである場合、上記楕円体1個当たりの平均表面積Sは、下記式(IV)で求められる。
【0043】
【数8】
なお、この場合、楕円体の形状は、球体に相当する。
【0044】
式(I)〜(IV)のいずれかの式により算出される楕円体1個当たりの平均表面積Sは、保存中における炭酸塩と有機酸との反応の進行を有効に抑制する観点、及び外気との接触面積も適度に制御して保存安定性を高める観点から、220mm
2以上900mm
2以下であって、好ましくは230以上であり、より好ましくは240以上であり、また好ましくは750以下であり、より好ましくは600以下である。
【0045】
圧縮製剤がブリケット製剤であるとき、上記a、b及びcは、例えば、デジマチックキャリパCD-10C(MITUTOYO製)等の測定装置にて0.01mm単位で測定することにより求めることもできるし、本発明の発泡性圧縮製剤を製造する際に用いたブリケッティングマシンに備えられたポケットを製剤1錠に外接する楕円体とみたて、これを測定することにより求めることもできる。
なお、ブリケット製剤とは、圧縮造粒法の一種であるブリケッティングによって得られる成型物を意味する。かかるブリケッティングとは、一般に表面に型(ポケット)が彫られたロールを備えたブリケッティングマシンを用い、所望の成分を圧縮して成型物を得る方法である。
ブリケット製剤は、表面に型(ポケット)が彫られたロールを備えたブリケッティングマシンにより製造されるものであるが、ポケットの形状に沿って忠実に模られた錠剤だけでなく、場合によっては欠けが生じたり、部分的にハリが突出したりする錠剤も混在し得る。そのため、得られた錠剤の表面をポケットの形状に沿った滑らかな曲面とみたてた上で外接する楕円体を想定し、錠剤1錠あたりが有する立体形状をブリケッティングマシンのロールに形成されたポケットの形状、すなわちブリケッティングマシンによって本来得られるべき形状に近似させるものである。
【0046】
本発明の発泡性圧縮製剤の1錠あたり重量は、好ましくは0.1〜5g、より好ましく0.2〜3g、さらに好ましくは0.3〜2.5gであることが、浴水中で良好に溶解して、炭酸ガスの泡を良好に発生させるとともに、香料等の液状成分による作用を十分に発揮することができる点で好ましい。
【0047】
本発明の発泡性圧縮製剤を製造するには、全成分を混合し、得られた混合物を表面に型が彫られたロールを備えたブリケッティングマシンで圧縮して成形する。
【0048】
なお、上述のように有機酸を水溶性高分子で表面処理する場合、予めかかる表面処理を施した後、これに炭酸塩、25℃で液状の成分、及び他の成分を混合して混合物を得るのが好ましい。また、炭酸塩を水溶性高分子で表面処理する場合にも、同様にして、予めかかる表面処理を施した後、これに有機酸、25℃で液状の成分、及び他の成分を混合して混合物を得るのが好ましい。
【0049】
有機酸や炭酸塩の表面処理法としては、噴霧法や浸漬法等の常法が採用されるが、次のような熱溶融法を採用するのが好ましい。すなわち、例えばフマル酸を表面処理する場合、フマル酸、ポリエチレングリコール及び非イオン性界面活性剤を55〜100℃で加熱溶融した後、冷却して粉末化する。かかる冷却は、例えば、内部にパドル又はプロペラ状の攪拌翼を取り付けた流動層で攪拌しながら行うのが好ましい。
【0050】
その一部又は全部に上記表面処理が施されてなるフマル酸を含む有機酸を用いる場合、かかる有機酸と水溶性高分子の加熱混合は、ジャケット付のミキサーや流動層造粒機等により、温水又は温風で昇温しつつ混合することができ、最も短時間での処理が可能で効率的である観点から、堅型攪拌混合機で激しく混合し、発生する熱で昇温する方法を採用するのが好ましい。この際に水溶性高分子としてポリエチレングリコールを用いる場合、かかる水溶性高分子(ポリエチレングリコール)の融点以上の温度で混合した後、流動層に移し、攪拌翼で攪拌し、冷風で冷却することにより、圧縮の成形に適した有機酸を得ることができる。炭酸塩に水溶性高分子で表面処理を施す場合にも、同様の方法を採用することができる。
【0051】
本発明の発泡性圧縮製剤は、適宜袋状包材内に密封して保存するのがよい。袋状包材の材質としては、例えば、厚さ5〜10μmのアルミによる積層フィルムなどが挙げられ、ガラス蒸着処理したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の透明性を有したものも用いることができる。本発明の発泡性圧縮製剤は、かかる袋状包材に包装した場合であっても、炭酸塩と有機酸との反応の進行を有効に抑制する高い保存安定性を有するため、保存中の包材に膨れ等が生じるのを容易に防止することができる。
【0052】
本発明の発泡性圧縮製剤は、浴用剤以外にも水中に投入して溶解させることにより、炭酸ガスを発生させながら液状の成分の作用を発揮させる用途、例えば、足浴剤、芳香剤に適用することができる。
【0053】
上述した本発明の実施態様に関し、さらに以下の発泡性圧縮製剤を開示する。
[1]炭酸塩、有機酸、及び2質量%を超え10質量%以下の25℃で液状の成分を含有する発泡性圧縮製剤であって、
製剤1錠に外接する楕円体を製剤1錠あたりが有する立体形状と仮定し、かつ楕円体の中心Oで互いに直交する3つの楕円面の主軸の長さを2a(mm)、2b(mm)及び2c(mm)(ただし、2aは楕円体の最長差し渡し径であり、a≧b≧cである)としたときに、
下記式(I)、(II)、(III)又は(IV)で求められる楕円体1個あたりの平均表面積Sが220mm
2以上900mm
2以下である発泡性圧縮製剤。
【数9】
【0057】
[2]平均表面積Sが、好ましくは230以上であり、より好ましくは240以上であり、また好ましくは750以下であり、より好ましくは600以下である上記[1]の発泡性圧縮製剤。
[3]炭酸塩が、好ましくは炭酸ジアルカリ金属塩、炭酸モノアルカリ金属塩及び二価以上の金属の炭酸塩から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは少なくとも炭酸ジアルカリ金属塩を含有する上記[1]又は[2]の発泡性圧縮製剤。
[4]炭酸塩が、好ましくは炭酸ジアルカリ金属塩及び炭酸モノアルカリ金属塩を含有し、かつ炭酸ジアルカリ金属塩と炭酸モノアルカリ金属塩の質量比(炭酸ジアルカリ金属塩:炭酸モノアルカリ金属塩)が、好ましくは25:75〜100:0であり、より好ましくは30:70〜100:0である上記[3]の発泡性圧縮製剤。
【0058】
[5]炭酸ジアルカリ金属塩の含有量が、炭酸塩中に、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、また好ましくは100質量%以下である。そして、好ましくは30質量%以上である上記[3]又は[4]の発泡性圧縮製剤。
[6]炭酸モノアルカリ金属塩の含有量が、炭酸塩中に、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、またさらに、他の成分中に不可避的に混入する以外、炭酸モノアルカリ金属塩を含有しない上記[3]〜[5]のいずれか1の発泡性圧縮製剤。
[7]炭酸塩の含有量が、本発明の発泡性圧縮製剤中に、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25実量%以上であり、また好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である上記[1]〜[6]のいずれか1の発泡性圧縮製剤。
[8]炭酸塩が、水溶性高分子で表面処理されてなる上記[1]〜[7]のいずれか1の発泡性圧縮製剤。
[9]水溶性高分子が、ポリエチレングリコールである上記[7]の発泡性圧縮製剤。
【0059】
[10]有機酸が、好ましくはリンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、サリチル酸及びシュウ酸から選ばれる1種又は2種以上を含有し、より好ましくはフマル酸、リンゴ酸及び酒石酸から選ばれる1種又は2種以上を含有し、またさらに好ましくはフマル酸を含有する上記[1]〜[9]のいずれか1の発泡性圧縮製剤。
[11]有機酸の含有量が、本発明の発泡性ブリケット製剤中に、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、また好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である上記[1]〜[10]のいずれか1の発泡性圧縮製剤。
[12]フマル酸が、水溶性高分子で表面処理されてなる上記[10]又は[11]の発泡性圧縮製剤。
[13]水溶性高分子が、ポリエチレングリコール及び非イオン界面活性剤である上記[12]の発泡性圧縮製剤。
【0060】
[14]25℃で液状の成分が、香料又はエキス、界面活性剤及び油剤から選ばれる1種又は2種以上である上記[1]〜[13]のいずれか1の発泡性圧縮製剤。
[15]25℃で液状の成分の含有量が、2質量%を超え、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは6質量%以下である上記[1]〜[14]のいずれか1の発泡性圧縮製剤。
[16]1錠あたり重量が、好ましくは0.1〜5g、より好ましく0.2〜3g、さらに好ましくは0.3〜2.5gである上記[1]〜[15]のいずれか1の発泡性圧縮製剤。
[17]浴用剤、足浴剤又は芳香剤である上記[1]〜[16]のいずれか1の発泡性圧縮製剤。
【実施例】
【0061】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0062】
[調製例1]
フマル酸を95部、ポリエチレングリコール6000を5部用いて、堅型攪拌混合機により表面処理を施したフマル酸Aを得た。
【0063】
[調製例2]
炭酸水素ナトリウムを95部、ポリエチレングリコール6000を5部用いて、堅型攪拌混合機により表面処理を施した炭酸水素ナトリウムBを得た。
【0064】
[調製例3]
炭酸ナトリウムを95部、ポリエチレングリコール6000を5部用いて、堅型攪拌混合機により表面処理を施した炭酸ナトリウムCを得た。
【0065】
[調製例4]
シトラス系香料82部、イソステアリン酸イソステアリル6部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット6部、パルミチン酸イソプロピル3部及びポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル3部を混合し、液状成分A(25℃で液状)を得た。
【0066】
[調製例5]
シトラス系香料25部、イソステアリン酸イソステアリル25部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット25部、パルミチン酸イソプロピル12.5部及びポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル12.5部を混合し、液状成分A−2(25℃で液状)を得た。
【0067】
[調製例6]
オタネニンジンの抽出エキス42部、L−メントール28部、DL−カンファー12部、イソステアリン酸イソステアリル6部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット6部、パルミチン酸イソプロピル3部及びポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル3部を混合し、液状成分B(25℃で液状)を得た。
【0068】
[調製例7]
フローラル系香料82部、イソステアリン酸イソステアリル6部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット6部、パルミチン酸イソプロピル3部及びポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル3部を混合し、液状成分C(25℃で液状)を得た。
【0069】
[実施例1〜6、比較例1〜3:浴用剤の製造]
表1〜2に示す処方に従って、調製例1で得られたフマル酸A、及び調製例4で得られた液状成分A又は調製例5で得られた液状成分A−2のほか、炭酸塩として表面処理を施していない炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウムを用い、これらを混合した後、ブリケッティングマシンで圧縮して製剤を得た。
得られた製剤1錠を抽出し、かかる製剤に外接する楕円体におけるa、b及びcについて、用いたブリケッティングマシンに備えられたポケットを製剤1錠に外接する楕円体とみたててこれを測定することにより求め、これらの関係に応じて上記式(I)〜(IV)のいずれかの式にa、b及びcを代入して平均表面積Sを算出した。なお、Sは抽出した製剤5錠の平均の値とした。
次いで、得られた錠剤を用い、下記方法にしたがって各評価を行った。結果を表1〜2に示す。
【0070】
《50℃での安定性評価》
得られた製剤(40g)をアルミピローで包装した後、50℃の恒温槽に入れ、30日後のアルミピローの状態について、5名の専門パネラーが、下記の評価基準に従い目視にて評価した。評価結果は協議により決定した。
(評価基準)
1:アルミピローの外観にまったく変化を認めない
2:アルミピローの外観にごくわずかに膨れを認める
3:アルミピローにやや膨れを認める
4:アルミピローに膨れを認める
【0071】
《香り立ちと持続性の評価》
250リットルの浴槽に40℃、150リットルの湯を入れ、ここに得られた製剤(40g)全量を溶かし、溶解直後の香り立ちと、溶解1時間後の香り立ちについて、5名の専門パネラーが以下の評価基準に従い評価を行った。評価結果は協議により決定した。評価結果は、いずれも4又は5であるのが好ましく、4であるのが最も好ましい。
さらに「溶解直後の香り立ち」と「溶解1時間後の香り立ち」との差を、持続性の評価とした。持続性の評価結果は、1以内であるが好ましい。
(評価基準)
1:無臭
2:ごくわずかに香る
3:弱く香る
4:ちょうど良く香る
5:はっきり香る
6:強く香る
7:かなり強く香る
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
[実施例7〜15、比較例4〜6:足浴剤の製造]
表3〜5に示す処方に従って、調製例1で得られたフマル酸A、調製例2で得られた炭酸水素ナトリウムB、調製例3で得られた炭酸ナトリウムC、及び調製例5で得られた液状成分Bのほか、表面処理を施していないフマル酸、炭酸酸として表面処理を施していない炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを用い、これらを混合した後、ブリケッティングマシンで圧縮して製剤を得た。
得られた製剤1錠を抽出し、かかる製剤に外接する楕円体におけるa、b及びcをデジマチックキャリパCD-10C(MITUTOYO製)を用いて0.01mm単位で測定し、これらの関係に応じて上記式(I)〜(IV)のいずれかの式にa、b及びcを代入して平均表面積Sを算出した。なお、Sは抽出した製剤5錠の平均の値とした。
次いで、得られた錠剤を用い、下記方法にしたがって各評価を行った。結果を表3〜5に示す。
【0075】
《50℃での安定性評価》
得られた製剤(45g)をアルミピローで包装した後、50℃の恒温槽に入れ、30日後のアルミピローの状態について、5名の専門パネラーが、下記の評価基準に従い目視にて評価した。評価結果は協議により決定した。
(評価基準)
1:アルミピローの外観にまったく変化を認めない
2:アルミピローの外観にごくわずかに膨れを認める
3:アルミピローにやや膨れを認める
4:アルミピローに膨れを認める
【0076】
《香り立ちと持続性の評価》
15リットルの足浴用容器に40℃、5リットルの湯を入れ、ここに得られた製剤(45g)全量を溶かし、溶解直後の香り立ちと、溶解1時間後の香り立ちについて、5名の専門パネラーが以下の評価基準に従い評価を行った。評価結果は協議により決定した。評価結果は、いずれも4又は5であるのが好ましく、4であるのが最も好ましい。
さらに「溶解直後の香り立ち」と「溶解1時間後の香り立ち」との差を、持続性の評価とした。持続性の評価結果は、1以内であるが好ましい。
(評価基準)
1:無臭
2:ごくわずかに香る
3:弱く香る
4:ちょうど良く香る
5:はっきり香る
6:強く香る
7:かなり強く香る
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
[実施例16〜21、比較例7〜9:芳香剤の製造]
表6〜7に示す処方に従って、調製例1で得られたフマル酸A、及び調製例6で得られた液状成分Cのほか、炭酸塩として表面処理を施していない炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを用い、これらを混合した後、ブリケッティングマシンで圧縮して製剤を得た。
得られた製剤1錠を抽出し、かかる製剤に外接する楕円体におけるa、b及びcをデジマチックキャリパCD-10C(MITUTOYO製)で0.01mm単位で測定し、これらの関係に応じて上記式(I)〜(IV)のいずれかの式にa、b及びcを代入して平均表面積Sを算出した。なお、Sは抽出した製剤5錠の平均の値とした。
次いで、得られた錠剤を用い、下記方法にしたがって各評価を行った。結果を表6〜7に示す。
【0081】
《50℃での安定性評価》
得られた製剤(20g)をアルミピローで包装した後、50℃の恒温槽に入れ、30日後のアルミピローの状態について、5名の専門パネラーが、下記の評価基準に従い目視にて評価した。評価結果は協議により決定した。
(評価基準)
1:アルミピローの外観にまったく変化を認めない
2:アルミピローの外観にごくわずかに膨れを認める
3:アルミピローにやや膨れを認める
4:アルミピローに膨れを認める
【0082】
《香り立ちと持続性の評価》
200ミリリットルの容器に40℃、150ミリリットルの湯を入れ、ここに得られた製剤(20g)全量を溶かし、溶解直後の香り立ちと、溶解1時間後の香り立ちについて、5名の専門パネラーが以下の評価基準に従い評価を行った。評価結果は協議により決定した。評価結果は、いずれも4又は5であるのが好ましく、4であるのが最も好ましい。
さらに「溶解直後の香り立ち」と「溶解1時間後の香り立ち」との差を、持続性の評価とした。持続性の評価結果は、1以内であるが好ましい。
(評価基準)
1:無臭
2:ごくわずかに香る
3:弱く香る
4:ちょうど良く香る
5:はっきり香る
6:強く香る
7:かなり強く香る
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
上記表1〜7の結果より、本発明の発泡性圧縮製剤であれば、保存安定性が高く、25℃で液状の成分を十分な量で含有させることができるので、かかる液状の成分による作用を良好に発揮させることが可能であることがわかる。