特許第6209346号(P6209346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209346
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   G06F17/50 650Z
   G06F17/50 634Z
   G06F17/50 601A
   G06F17/50 610C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-69517(P2013-69517)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-191794(P2014-191794A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】土屋 信治
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−123562(JP,A)
【文献】 特開2009−181746(JP,A)
【文献】 特開2009−205400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
H01B 13/012
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行図面データに基づくワイヤハーネスの経路レイアウトが記録された記録部と、
前記記録部に記録された前記ワイヤハーネスの経路レイアウトに基づいて、ワイヤハーネスの3次元画像を構築する演算部と、
前記演算部によって構築された前記ワイヤハーネスの3次元画像を出力する出力部と、
前記出力部によって出力された前記ワイヤハーネスの3次元画像に対する電線の経路の変更を受け付ける入力部と、
を備え、
前記演算部は、正式図面データに反映されるべき事項を解析者に把握させるために、前記入力部によって入力された前記電線の経路の変更が反映されて前記ワイヤハーネスの荷姿が表現された前記ワイヤハーネスの3次元画像を構築し、
前記記録部は、前記ワイヤハーネスを製造するための治具板レイアウトの上に配索された状態の形状であって前記ワイヤハーネスを構成する各電線が直線的に延びる形状を有する前記ワイヤハーネスの経路レイアウトを記録しており、
前記演算部は、前記入力部からの前記電線の経路の変更を受け付ける前の段階では、前記各電線が直線的に延びる形状を有する前記ワイヤハーネスの3次元画像を構築すると共に、前記入力部からの前記電線の経路の変更を受け付けた後は、前記各電線が屈曲した形状を有する前記ワイヤハーネスの荷姿が表現された前記ワイヤハーネスの3次元画像を構築する
ことを特徴とする解析装置。
【請求項2】
コンピュータが、先行図面データに基づくワイヤハーネスの経路レイアウトを取り込み、
記ワイヤハーネスの経路レイアウトに基づいて構築されたワイヤハーネスの3次元画像を出力し、
前記ワイヤハーネスの3次元画像に対する電線の経路の変更を受け付け、
正式図面データに反映されるべき事項を解析者に把握させるために、前記電線の経路の変更が反映されて前記ワイヤハーネスの荷姿が表現されたワイヤハーネスの3次元画像を出力
前記コンピュータは、前記ワイヤハーネスの経路レイアウトを取り込む際、前記ワイヤハーネスを製造するための治具板レイアウトの上に配索された状態の形状であって前記ワイヤハーネスを構成する各電線が直線的に延びる形状を有する前記ワイヤハーネスの経路レイアウトを取り込み、
前記電線の経路の変更を受け付ける前の段階では、前記各電線が直線的に延びる形状を有する前記ワイヤハーネスの3次元画像を出力すると共に、前記電線の経路の変更を受け付けた後は、前記各電線が屈曲した形状を有する前記ワイヤハーネスの荷姿が表現された前記ワイヤハーネスの3次元画像を出力する
ことを特徴とする解析方法。
【請求項3】
前記コンピュータに、請求項2に記載の各手順を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの3次元画像を構築する解析装置、解析方法、プログラム、及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実物のワイヤハーネスを製造する前に、解析装置を用いて仮想上のワイヤハーネスを3次元的に構築し、その仮想上のワイヤハーネスに対する評価結果を実物のワイヤハーネスの設計に反映させる手法が採用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−181746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤハーネスを製造するサプライヤがカーメーカーにワイヤハーネスを納入する形態として、サプライヤが、カーメーカーからワイヤハーネスの先行図面、及び(正式)図面(以下、前者の先行図面と区分けするため、後者の図面を正式図面と称する)を受領し、ワイヤハーネスの製造図面を完成させ、製造したワイヤハーネスをカーメーカーに納入する形態がある。図6は、従来の、サプライヤとカーメーカーとの間でやりとりされる工程を説明する概念図である。
【0005】
まず、サプライヤは、今回の工程において、カーメーカーによって作成されたワイヤハーネスの先行図面を受領する(今回の工程と、今回の工程のひとつ前の前回の工程及び今回の工程のひとつ後の次回の工程と、の関係については、今回の工程について説明した後に説明する。)。サプライヤは、ワイヤハーネスの先行図面を受領すると、ワイヤハーネスの先行図面を検証し、ワイヤハーネスの性能またはワイヤハーネスの製造に関して改善点となる事項があれば、その事項をカーメーカーに通知する。その後、カーメーカーによって、サプライヤから通知された改善点が反映されたワイヤハーネスの正式図面が作成され、サプライヤは、カーメーカーによって作成されたワイヤハーネスの正式図面を受領する。
【0006】
サプライヤは、ワイヤハーネスの正式図面を受領すると、ワイヤハーネスの正式図面を検証し、ワイヤハーネスの性能またはワイヤハーネスの製造に関して改善点となる事項があれば、その事項をカーメーカーに通知する。さらに、サプライヤは、ワイヤハーネスの正式図面を基にそのサプライヤ独自のワイヤハーネスの製造図面を作成する。そして、サプライヤは、その製造図面にしたがってワイヤハーネスを製造し、その製造したワイヤハーネスをカーメーカーに納入する。サプライヤは、ワイヤハーネスを製造した過程において、ワイヤハーネスがカーメーカーから受領した正式図面通りのものにならないことが判明した場合や、製造されたワイヤハーネスの品質を向上させることができる別の構造があることが判明した場合等には、それらの事項をカーメーカーに通知し、ワイヤハーネスの設計変更を依頼する。
【0007】
カーメーカーは、今回の工程においてサプライヤが正式図面に対して指摘した、ワイヤハーネスの性能またはワイヤハーネスの製造に関する改善点、またはワイヤハーネスの設計変更の内容を、次回の工程の先行図面に対する設計変更として反映させる。このため、今回の工程の先行図面には、前回の工程の正式図面に対してサプライヤが指摘した改善点または設計変更の内容が反映されている。
【0008】
上述の工程において、サプライヤには、ワイヤハーネスの正式図面をカーメーカーから受領してからワイヤハーネスを納入するまでの期間が定められている。この期間を守るため、ワイヤハーネスの正式図面をカーメーカーから受領してからの検証に伴う負荷を如何に軽減させつつ、且つ欠陥の無い独自のワイヤハーネスの製造図面を完成させてワイヤハーネスの製造に着手することができるか、がサプライヤにとって重要となる。
【0009】
ところで、カーメーカーへ納入されるワイヤハーネスは、電線の所定の箇所が折り曲げられ、所定の箇所がテープ巻きされることによって電線が束ねられた状態で搬入されるが、電線が折り曲げられる適正な箇所、電線が折り曲げられる適正な向き、テープ巻きされる適正な箇所等は、実物のワイヤハーネスが製造された後、そのワイヤハーネスを確認して検証される。
【0010】
より詳細に説明すると、カーメーカーから受領するワイヤハーネスの先行図面または正式図面には、ワイヤハーネスに備わる全ての電線が同一平面上に展開された状態で描かれた製品図、及び製品図の図上では表記しきれない、ワイヤハーネスの所定の一部に関して詳細に描かれた詳細図が用意されている。このうち、詳細図のなかには、電線が折り曲げられる箇所、電線が折り曲げられる向き、テープ巻きされる箇所が特定された、カーメーカーへ搬入される際のワイヤハーネスの形状が描かれた荷姿詳細図がある(以下、カーメーカーへ搬入される際のワイヤハーネスの形状のことを「ワイヤハーネスの荷姿」と称する。)。しかし、製品図には各電線の線長が数値として記載されているが、描画領域の都合上、ワイヤハーネスがその数値に対応した形状で描かれているものではないため、描かれた電線からはテープ巻きされる箇所を正確に読み解くことができない。また、荷姿詳細図は、電線の形状が簡略して描かれているため、電線が折り曲げられる箇所、電線が折り曲げられる向き、テープ巻きされる箇所が描かれているものの、それらの情報が図中に充分反映されていないことがある。こうした事情から、カーメーカーへ搬入されるワイヤハーネスの荷姿は、実物のワイヤハーネスが製造された後、そのワイヤハーネスを確認して検証されている。
【0011】
このように実物のワイヤハーネスが製造された後そのワイヤハーネスを確認して検証するとなると、一度実物のワイヤハーネスを製造する必要があるためにこの検証に伴う負荷が大きくなってしまう。このような事情を踏まえ、ワイヤハーネスの正式図面に基づきワイヤハーネスの3次元画像を構築し、その3次元画像を参照してワイヤハーネスの荷姿を検証することが考えられる。しかし、この手法であっても、ワイヤハーネスの正式図面をカーメーカーから受領してからワイヤハーネスを納入するまでの期間において、依然としてそのワイヤハーネスの検証に伴う負荷は残る。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カーメーカーからワイヤハーネスの正式図面を受領してからカーメーカーにワイヤハーネスを納入するまでの期間において、そのワイヤハーネスの検証に伴う負荷をより低減することができる解析装置、解析方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る解析装置は、下記(1)を特徴としている。
(1) 先行図面データに基づくワイヤハーネスの経路レイアウトが記録された記録部と、
前記記録部に記録された前記ワイヤハーネスの経路レイアウトに基づいて、ワイヤハーネスの3次元画像を構築する演算部と、
前記演算部によって構築された前記ワイヤハーネスの3次元画像を出力する出力部と、
前記出力部によって出力された前記ワイヤハーネスの3次元画像に対する電線の経路の変更を受け付ける入力部と、
を備え、
前記演算部は、正式図面データに反映されるべき事項を解析者に把握させるために、前記入力部によって入力された前記電線の経路の変更が反映されて前記ワイヤハーネスの荷姿が表現された前記ワイヤハーネスの3次元画像を構築し、
前記記録部は、前記ワイヤハーネスを製造するための治具板レイアウトの上に配索された状態の形状であって前記ワイヤハーネスを構成する各電線が直線的に延びる形状を有する前記ワイヤハーネスの経路レイアウトを記録しており、
前記演算部は、前記入力部からの前記電線の経路の変更を受け付ける前の段階では、前記各電線が直線的に延びる形状を有する前記ワイヤハーネスの3次元画像を構築すると共に、前記入力部からの前記電線の経路の変更を受け付けた後は、前記各電線が屈曲した形状を有する前記ワイヤハーネスの荷姿が表現された前記ワイヤハーネスの3次元画像を構築する
こと。
【0014】
前述した目的を達成するために、本発明に係る解析方法は、下記(2)を特徴としている。
(2) コンピュータが、先行図面データに基づくワイヤハーネスの経路レイアウトを取り込み、
記ワイヤハーネスの経路レイアウトに基づいて構築されたワイヤハーネスの3次元画像を出力し、
前記ワイヤハーネスの3次元画像に対する電線の経路の変更を受け付け、
正式図面データに反映されるべき事項を解析者に把握させるために、前記電線の経路の変更が反映されて前記ワイヤハーネスの荷姿が表現されたワイヤハーネスの3次元画像を出力
前記コンピュータは、前記ワイヤハーネスの経路レイアウトを取り込む際、前記ワイヤハーネスを製造するための治具板レイアウトの上に配索された状態の形状であって前記ワイヤハーネスを構成する各電線が直線的に延びる形状を有する前記ワイヤハーネスの経路レイアウトを取り込み、
前記電線の経路の変更を受け付ける前の段階では、前記各電線が直線的に延びる形状を有する前記ワイヤハーネスの3次元画像を出力すると共に、前記電線の経路の変更を受け付けた後は、前記各電線が屈曲した形状を有する前記ワイヤハーネスの荷姿が表現された前記ワイヤハーネスの3次元画像を出力する
こと。
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係るプログラムは、下記(3)を特徴としている。
(3) 前記コンピュータに、上記(2)に記載の各手順を実行させるためのプログラム。
【0017】
上記(1)の構成の解析装置、上記(2)の構成の解析方法、及び上記(3)の構成のプログラムによれば、サプライヤは、カーメーカーからワイヤハーネスの正式図面を受領する前に受領したワイヤハーネスの先行図面に基づいてワイヤハーネスの荷姿に対する検証を実施することができる。ワイヤハーネスの先行図面に基づくワイヤハーネスの荷姿の検証をしておけば、ワイヤハーネスの先行図面に基づく検証においてなされた検証項目については、ワイヤハーネスの正式図面を受領して以降の検証時に行う必要が無くなる、または必要性が低くなる。この結果、カーメーカーからワイヤハーネスの正式図面を受領してからカーメーカーにワイヤハーネスを納入するまでの期間において、そのワイヤハーネスの検証に伴う負荷をより低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の解析装置、解析方法、及びプログラムによれば、カーメーカーからワイヤハーネスの正式図面を受領してからカーメーカーにワイヤハーネスを納入するまでの期間において、そのワイヤハーネスの検証に伴う負荷をより低減することができる。このように当該期間におけるワイヤハーネスの検証、例えばワイヤハーネスの荷姿の検証、に伴う負荷が低減される分を、ワイヤハーネスのその他の項目の検証に充当することにより、ワイヤハーネスの品質の向上を高めることができる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態の解析装置によるワイヤハーネスの荷姿の検証が実施された場合の、サプライヤとカーメーカーとの間でやりとりされる工程を説明する概念図である。
図2図2は、本発明の実施形態の解析装置の機能ブロック図である。
図3図3(a)は、ワイヤハーネスの先行図面に含まれる製品図であり、図3(b)は、ワイヤハーネスの先行図面に含まれる荷姿詳細図である。
図4図4(a)は、ワイヤハーネスの経路レイアウトの表示例を示す図であり、図4(b)は、本発明に係る実施形態の解析装置によって構築されたワイヤハーネスの荷姿の3次元画像の表示例を示す図である。
図5図5は、本発明に係る実施形態の解析装置による解析後の荷姿詳細図である。
図6図6は、従来の、サプライヤとカーメーカーとの間でやりとりされる工程を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記の項目[発明が解決しようとする課題]にて説明したように、これまで、カーメーカーへ搬入されるワイヤハーネスの荷姿は、実物のワイヤハーネスが製造された後、そのワイヤハーネスを確認して検証されていた。本発明者は、ワイヤハーネスの荷姿の従来の検証手法がカーメーカーからワイヤハーネスの正式図面を受領してからカーメーカーにワイヤハーネスを納入するまでの期間においてそのワイヤハーネスの検証に伴う負荷を増大させている一要因である、との知見を得、ワイヤハーネスの荷姿の3次元画像を構築してその荷姿の検証をすることの重要性を認識し、本発明の解析装置、解析方法、及びプログラムを発明するに至った。以下、本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0023】
[ワイヤハーネスを納入するまでの全工程と、その全工程における本発明の位置付け]
本発明の実施形態の解析装置の構成について説明する前に、本発明の実施形態の解析装置によるワイヤハーネスの荷姿の解析が実施された場合の、サプライヤとカーメーカーとの間でやりとりされる一連の工程について説明する。図1は、本発明の実施形態の解析装置によるワイヤハーネスの荷姿の検証が実施された場合の、サプライヤとカーメーカーとの間でやりとりされる工程を説明する概念図である。図1に示される、先行図面によるワイヤハーネスの検証以外の工程は、図6を参照して説明したとおりであるため、ここでは詳細な記載を省略する。
【0024】
本発明の実施形態の解析装置によって実施されるワイヤハーネスの荷姿の解析は、図1における、カーメーカーから受領したワイヤハーネスの先行図面による検証において実施される。本発明の実施形態の解析装置によってワイヤハーネスの先行図面に対するワイヤハーネスの荷姿の検証が実施され、ワイヤハーネスの荷姿に関する改善点をカーメーカーに通知することにより、サプライヤは、その改善点が反映されたワイヤハーネスの正式図面をカーメーカーから得られる。このようにワイヤハーネスの先行図面に基づいてワイヤハーネスの荷姿を検証しておけば、既にワイヤハーネスの先行図面に基づく検証においてなされた検証項目については、ワイヤハーネスの正式図面を受領して以降の検証時に行う必要が無くなる、または必要性が低くなる。この結果、カーメーカーからワイヤハーネスの正式図面を受領してからカーメーカーにワイヤハーネスを納入するまでの期間において、そのワイヤハーネスの検証に伴う負荷をより低減することができる。
【0025】
尚、本発明者は、ワイヤハーネスの正式図面に対してワイヤハーネスの荷姿の解析を実施することも検討した。正式図面に対するワイヤハーネスの荷姿の解析をすることにより、実物のワイヤハーネスを確認して検証する従来の検証手法と比較して、ワイヤハーネスの正式図面をカーメーカーから受領してからワイヤハーネスを納入するまでの期間において、そのワイヤハーネスの検証に伴う負荷は低減される。しかし、この場合は、上述した、ワイヤハーネスの先行図面に対してワイヤハーネスの荷姿を解析する場合に比べて、ワイヤハーネスの荷姿の解析に要する負荷、及びその解析による検証結果をワイヤハーネスの正式図面に反映するために要する負荷の分だけ、カーメーカーからワイヤハーネスの正式図面を受領してからカーメーカーにワイヤハーネスを納入するまでの期間における負荷が大きくなると予想される。このため、ワイヤハーネスの荷姿の解析を実施するタイミングは、ワイヤハーネスの先行図面をカーメーカーから受領したタイミングがより好ましいとの見解に発明者は至った。
【0026】
[本発明の解析装置の詳細]
ここまでは、サプライヤがカーメーカーにワイヤハーネスを納入するまでの全工程における、本発明の実施形態の解析装置によって実施される解析工程の位置付けを説明した。以下では、本発明の実施形態の解析装置の構成について詳細に説明する。図2は、本発明の実施形態の解析装置の機能ブロック図である。
【0027】
[本発明の解析装置の機能構成]
本発明に係る実施形態の解析装置は、入力部211、データベース部212、プログラム記憶部213、データ記憶部214、表示部215、処理部216を含んで構成される。本発明の解析装置は、例えば汎用PCによって構成される場合、入力部211はキーボード、マウス、テンキーなどの各種入力インタフェースによって実現され、データベース部212及びプログラム記憶部213は、ハードディスクドライブ(HDD)によって実現され、データ記憶部214はRAM(Random Access Memory)によって実現され、表示部215はCRTディスプレイ、液晶ディスプレイなどの各種出力デバイスによって実現され、処理部216は、CPU(Central Processing Unit)によって実現される。データベース部212には、後述するワイヤハーネスの経路レイアウトのデータが記憶されている。また、プログラム記憶部213には、後述の[本発明の解析アルゴリズム]を処理部216に実行するためのプログラムが記録されている。また、データ記憶部214には、後述の[本発明の解析アルゴリズム]を実行している処理部216から入出力されるデータが記録される。
【0028】
[本発明の解析アルゴリズム]
まず、ワイヤハーネスの先行図面に含まれる各種図面について説明する。カーメーカーから受領するワイヤハーネスの先行図面には、ワイヤハーネスに備わる全ての電線が同一平面上に展開された状態で描かれた製品図、及び製品図の図上では表記しきれない、ワイヤハーネスの所定の一部に関して詳細に描かれた詳細図が用意されている。図3(a)に、ワイヤハーネスの先行図面に含まれる製品図を、図3(b)に、ワイヤハーネスの先行図面に含まれる荷姿詳細図を、それぞれ示す。
【0029】
図3(a)に示されるように、製品図にはワイヤハーネスに備わる各種部品が描かれており、各電線の線長が数値として記載されている。図3(a)では、クランプP1からクランプP2までの電線の線長が320mm、クランプP2から電線の分岐点Dまでの電線の線長が40mm、分岐点DからコネクタC1までの電線の線長が210mm、分岐点DからコネクタC2までの電線の線長が120mm、分岐点DからコネクタC3までの電線の線長が150mm、分岐点DからコネクタC4までの電線の線長が225mm、として記載されている。製品図は、ワイヤハーネスがその数値に対応した形状で描かれているものではないため、描かれた電線からはテープ巻きされる箇所を正確に読み解くことができない。
【0030】
また、図3(b)に示されるように、荷姿詳細図には、テープTによって一部の電線が束ねられたワイヤハーネスの荷姿が描かれている。荷姿詳細図には、電線の形状が簡略化して描かれている、つまり、電線の線長及び線径が考慮されずに記載されているため、電線が折り曲げられる箇所、電線が折り曲げられる向き、テープ巻きされる箇所等のなかから実現性のあるものを荷姿詳細図から把握することは困難である。このため、これらの2つの図面からワイヤハーネスの荷姿の形状を特定することは困難である。
【0031】
そこで、本発明者は、ワイヤハーネスの経路レイアウトを基にワイヤハーネスの荷姿を検証することに思い至った。サプライヤは、ワイヤハーネスの先行図面を受領した後、その先行図面にてカーメーカーが要望するワイヤハーネスを製造するための治具板レイアウトを設計し、その治具板レイアウトによって製造可能なワイヤハーネスの経路レイアウトを設計し、その経路レイアウトをカーメーカーに提案する。このとき作成されるワイヤハーネスの経路レイアウトを利用し、本発明に係る実施形態の解析装置はワイヤハーネスの荷姿の解析を実施する。尚、ワイヤハーネスの経路レイアウトの設計手法については、例えば、本出願人が平成15年5月19日に出願した特願2003−141023(優先権主張番号 特願2002−147338、優先日 平成14年5月22日、特許出願公開番号 特開2004−46815号公報。)に記載されたワイヤハーネスの設計支援システムを参照されたい。尚、本発明が参照するワイヤハーネスの経路レイアウトは、特願2003−141023に記載されたものに限られない。3次元の位置情報等に基づくデータによって構成され、ワイヤハーネスの線長及び線径、ワイヤハーネスの端部や中間部に接続される支持部材としてのコネクタやクランプの形状、位置等のデータを含むものであればそれを用いることができる。
【0032】
ワイヤハーネスの経路レイアウトは、ワイヤハーネスの線長及び線径、ワイヤハーネスの端部や中間部に接続される支持部材としてのコネクタやクランプの形状、位置等のデータによって構成され、これらのデータは、製品図に記載されている情報がデータ化されたものと言える。このため、本発明に係る実施形態の解析装置は、ワイヤハーネスの経路レイアウトに含まれるデータに基づいて、ワイヤハーネスの荷姿の3次元画像を構築する。図4(a)は、ワイヤハーネスの経路レイアウトの表示例を示す図であり、図4(b)は、本発明に係る実施形態の解析装置によって構築されたワイヤハーネスの荷姿の3次元画像の表示例を示す図である。
【0033】
本発明の実施形態の解析装置は、まず、データベース部212にワイヤハーネスの経路レイアウトを取り込む。そして、ワイヤハーネスの経路レイアウトに基づいて構築されたワイヤハーネスの3次元画像を表示部215に出力する。このとき、図4(a)に示されるように、後述する電線の経路の変更操作を受け付ける前のワイヤハーネスの経路レイアウトは、治具板レイアウト上に配索された状態の形状であるため、本発明に係る実施形態の解析装置による解析前には各電線が直線的に描かれる。
【0034】
さらに、本発明の実施形態の解析装置は、解析者による電線の経路の変更操作を受け付けて、上述のワイヤハーネスの経路レイアウトにおける各電線を屈曲させ、ワイヤハーネスの荷姿を描画する。このとき、解析者は、荷姿詳細図における電線の屈曲位置を参照して、ワイヤハーネスの荷姿の描画を試みる。この結果、図4(b)に示されるように、電線の経路の変更操作を受け付けて電線が屈曲したワイヤハーネスの経路レイアウトが描かれる。
【0035】
ここで、図3(b)に示される荷姿詳細図を参照すると、荷姿詳細図にはテープTがクランプP2の下方(図3(b)中の下方向)に位置するよう描かれている。しかし、図4(b)に示されるワイヤハーネスの荷姿を視ると、クランプP2の下方(図4(b)中の下方向)にはテープを巻き付けることができる程度の線長が確保されておらず、クランプP2の下方にテープを巻き付けることが困難であることがわかる。他方、クランプP2の上方(図4(b)中の上方向)にはテープを巻き付けることができる線長が確保されていることがわかる。このように、本発明の実施の形態の解析装置によってワイヤハーネスの荷姿を描画することにより、解析者は、荷姿詳細図に描かれているワイヤハーネスの荷姿の適否を判断することができる。さらに、解析者は、荷姿詳細図に描かれているワイヤハーネスの荷姿が適当でない場合、より適当なワイヤハーネスの荷姿を本発明の実施形態の解析装置によって再現することができる。例えば、解析者は、図3(b)に示される荷姿詳細図は、図5に示される荷姿詳細図がより適当であることが解析の過程で判断することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態の解析装置によれば、解析者は、ワイヤハーネスの荷姿を描画することにより、解析者は、荷姿詳細図に描かれているワイヤハーネスの荷姿の適否を判断することができる。本発明の実施形態の解析装置によってワイヤハーネスの先行図面に対するワイヤハーネスの荷姿の検証が実施され、ワイヤハーネスの荷姿に関する改善点をカーメーカーに通知することにより、サプライヤは、その改善点が反映されたワイヤハーネスの正式図面をカーメーカーから得られる。このようにワイヤハーネスの先行図面に基づいてワイヤハーネスの荷姿を検証しておけば、既にワイヤハーネスの先行図面に基づく検証においてなされた検証項目については、ワイヤハーネスの正式図面を受領して以降の検証時に行う必要が無くなる、または必要性が低くなる。この結果、カーメーカーからワイヤハーネスの正式図面を受領してからカーメーカーにワイヤハーネスを納入するまでの期間において、そのワイヤハーネスの検証に伴う負荷をより低減することができる。
【符号の説明】
【0037】
211 入力部
212 データベース部
213 プログラム記憶部
214 データ記憶部
215 表示部
216 処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6