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特許6209350ニキビ抑制用組成物、皮膚外用剤及び化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209350
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ニキビ抑制用組成物、皮膚外用剤及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20170925BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20170925BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/08 20060101ALI20170925BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20170925BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61K8/44
   A61Q19/00
   A61K31/195
   A61K31/08
   A61P17/10
   A61P43/00 121
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-73522(P2013-73522)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196277(P2014-196277A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112266
【氏名又は名称】ピアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】藤本 智美
(72)【発明者】
【氏名】丸山 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂久
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和彦
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−214418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/34
A61K 8/44
A61K 31/08
A61K 31/195
A61P 17/10
A61P 43/00
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラネキサム酸類と、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールとを含有し、
前記トラネキサム酸類は、トラネキサム酸、トラネキサム酸のアミノ基をアルキルアミド化したもの、トラネキサム酸のカルボキシル基をアルキルエステル化したもの、又は、それらの塩である、ニキビ抑制用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニキビ抑制用組成物、皮膚外用剤及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ニキビは、正式な名称を尋常性ざ瘡といい、主に思春期に発生する炎症性の皮膚疾患である。その発生病理には複数の要因が複雑に関与すると考えられているが、ホルモンバランスの変化による皮脂の過剰分泌、皮膚常在菌であるアクネ菌(Propionibacterium acnes)の増殖や活性化、毛嚢周辺部の角化促進などが深く関わっているとされる。
【0003】
ニキビの発生初期段階では、男性ホルモンであるアンドロゲンの影響により、毛胞に存在する皮脂腺細胞から過剰に分泌された皮脂が毛胞を塞ぎ、毛胞内部に絶対嫌気性菌であるアクネ菌が増殖する。増殖したアクネ菌は、生体成分を分解する酵素であるリパーゼ、ヒアルロニダーゼ、プロテアーゼ等を分泌する。その結果、リパーゼが皮脂を分解して遊離脂肪酸や過酸化脂質を発生させ、さらにヒアルロニダーゼ、プロテアーゼが皮膚内部の組織を分解することにより、炎症が発生し、皮膚が赤みを帯びた状態となる。また、炎症が重症化した場合には、産生された炎症性物質が皮膚におけるメラニンの合成を促し、炎症が治まった後も色素沈着として皮膚に残り続けることもある。
【0004】
従来から、ニキビの発生の予防、治療、あるいは、炎症後の色素沈着を抑制する成分を含む組成物等がある。
例えば、特許文献1には、甘草抽出物、角質の軟化、剥離を促進する角質剥離剤及び抗炎症剤を有効成分として含むニキビ治療用組成物が記載されている。
特許文献2には、トリクロサン、レゾルシン及びサリチル酸を有効成分として含む抗菌性組成物が記載されている。
特許文献3には、シス−6−ヘキサデセン酸、イソプロピルメチルフェノール、トリクロカルバニリドを含む抗アクネ菌組成物が記載されている。
特許文献4には、リパーゼ阻害剤、アンドロゲン受容体結合阻害剤、ニキビ菌抗菌剤として植物抽出物を含むニキビ皮膚用化粧料が記載されている。
特許文献5には、アスコルビン酸誘導体等を含む抗菌性、リパーゼ及びアルロニダーゼ等の酵素阻害性、抗酸化性、及び色素沈着防止性を有するニキビ予防用剤等が記載されている。
特許文献6には、オクトオキシグリセロールを含む抗微生物活性を示すざ瘡及び過脂漏症等の皮膚疾患用の組成物が記載されている。
特許文献7には、ベタイン酸、ピリドキシン、トラネキサム酸を含むニキビ治療用皮膚外用剤が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1乃至及び7に記載の組成物等は、ニキビの発生や重症化、及び炎症後の色素沈着を十分に抑制できないという問題がある。また、特許文献1に記載されているような角質剥離剤は、皮膚に対する刺激が強く長期間使用することで、肌荒れやカサツキなどの皮膚疾患を生じさせるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−100324
【特許文献2】特開2008−110993
【特許文献3】特許第4220769号
【特許文献4】特許第4199743号
【特許文献5】特開2000−212082
【特許文献6】特許第3553615号
【特許文献7】特許第3582951号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点等に鑑み、皮膚を強く刺激することなく、ニキビの発生、重症化の予防及び炎症後の色素沈着を十分に抑制できるニキビ抑制用組成物、皮膚外用剤及び化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るニキビ抑制用組成物は、トラネキサム酸類と、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールとを含有し、前記トラネキサム酸類は、トラネキサム酸、トラネキサム酸のアミノ基をアルキルアミド化したもの、トラネキサム酸のカルボキシル基をアルキルエステル化したもの、又は、それらの塩である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、皮膚を強く刺激することなく、ニキビの発生、重症化の予防及び炎症後の色素沈着を十分に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るニキビ抑制用組成物(以下、単に組成物ともいう)の一実施形態について以下に説明する。
【0013】
本実施形態のニキビ抑制用組成物は、トラネキサム酸類と3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールとを含有するものである。
【0014】
本実施形態のニキビ抑制用組成物は、皮膚に塗布することで、ニキビを抑制することができる。
尚、本実施形態において「ニキビ抑制」とは、ニキビの発生を抑制すること、発症しているニキビの症状を改善すること、ニキビの重症化を抑制すること、ニキビの炎症による皮膚の色素沈着を防止すること、及び、色素沈着を薄化させ又は消失させて皮膚の状態を改善することを意味する。
すなわち、本実施形態のニキビ抑制用組成物は、ニキビ抑制の目的で、ニキビが発症する前の健全な皮膚に用いる、あるいは、ニキビが発症した皮膚に用いることができる。
【0015】
(トラネキサム酸類)
本実施形態で用いるトラネキサム酸類は、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体及びそれらの塩を意味する。
トラネキサム酸は、下記式で示されるアミノ酸であり、抗プラスミン効果による止血作用、抗炎症作用の他、皮膚の色素沈着抑制作用があることが知られている。
【0016】
【化1】
【0017】
トラネキサム酸の誘導体としては、例えば、トラネキサム酸のアミノ基をアルキルアミド化したもの、カルボキシル基をアルキルエステル化したもの等が挙げられる、
トラネキサム酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
トラネキサム酸誘導体の塩としては、例えば、アルキルアミド体のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルキルエステル体のリン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
本実施形態の組成物において、前記トラネキサム酸類を単独で、または複数を組み合わせて使用してもよい。
トラネキサム酸類としては、トラネキサム酸を用いることが、ニキビ抑制作用を十分に発揮しうるため好ましい。
【0018】
本実施形態のニキビ抑制用組成物におけるトラネキサム酸類の含有量(総量)は、特に限定されるものではないが、例えば、0.001重量%以上7.5重量%以下、好ましくは0.01重量%以上5.0重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上2.5重量%以下程度である。
【0019】
(3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール)
本実施形態で用いる3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールは、下記式で示されるグリセリンの一種であり、抗菌作用、消臭作用、保湿作用があることが知られている。
【0020】
【化2】
【0021】
本実施形態のニキビ抑制用組成物における3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールの含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、0.001重量%以上10.0重量%以下、好ましくは0.005重量%以上7.5重量%以下、より好ましくは0.01重量%以上5.0重量%以下である。
3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールの含有量が前記範囲であれば、ニキビ抑制作用を十分に発揮しうる。
【0022】
本実施形態のニキビ抑制用組成物において、トラネキサム酸類と3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールとの量比は特に限定されるものではないが、例えば、トラネキサム酸類(総量):3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール(重量比)=1:3〜3:1程度が望ましい。
前記重量比が前記範囲であることにより二つの成分の十分な相乗効果が期待できる。
【0023】
本実施形態のニキビ抑制用組成物は、トラネキサム酸類と、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール以外にも、さらに、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、セタノール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類;流動パラフィン、スクワラン等の非極性油剤類;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル系油剤類;小麦胚芽油やオリーブ油等の植物油類;トリメチルシロキシケイ酸、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコン化合物類;パーフルオロポリエーテル等のフッ素化合物類;界面活性剤等が挙げられる。
さらなるその他の成分としては、例えば、保湿柔軟化剤、抗酸化剤、収斂剤、美白剤、抗菌剤、抗炎症剤、殺菌剤、抗アレルギー剤、ステロイド剤、紫外線吸収剤類、紫外線散乱剤、ビタミン類、酵素等の医薬部外品原料規格、化粧品種別配合成分規格、化粧品原料基準、日本薬局方、食品添加物公定書規格等に記載の成分等が挙げられる。
【0024】
前記保湿柔軟化剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1、3−ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、グルコース、ショ糖、果糖、キシリトール、トレハロース、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解コラーゲン、加水分解エラスチン、タンパク加水分解物、尿素、アルキル化トレハロース、アラニン、プロリン、グリシン、シトルリン、テアニン等のアミノ酸類、これらの化学修飾体等が挙げられる。
【0025】
前記抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、サポニン、リンゴエキスやチョウジエキスなどの酸化防止効果の認められる植物エキス等が挙げられる。
【0026】
本実施形態のニキビ抑制用組成物は、従来公知の一般的な方法によって製造することができる。具体的には、例えば、油剤に溶解する成分を油剤に溶解させた油相と、水に溶解する成分を水に溶解させた水相とを混合することによりニキビ抑制用組成物として製造することができる。
【0027】
(剤型)
本実施形態のニキビ抑制用組成物の剤型としては、ジェル状、ローション状、乳液状、クリーム状、軟膏状、半固形状等の剤型とすることができる。
これらの剤型とするために、目的に応じて一般的に用いられる成分は本実施形態の組成物の効果や機能性を阻害しない範囲で広く配合できる。
【0028】
(用途)
本実施形態のニキビ抑制用組成物は、例えば、皮膚外用剤、化粧料等の用途で好適に用いられる。
【0029】
本実施形態の皮膚外用剤は、上述したような、トラネキサム酸類と3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールとを含有する。
また、本実施形態の化粧料は、上述したような、トラネキサム酸類と3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールとを含有する。
化粧料としては、化粧水、ローション、乳液等の基礎化粧品、ファンデーション、口紅等のメイクアップ化粧品、ボディ用化粧品、頭髪用化粧品等が挙げられる。
皮膚外用剤としては、軟膏、ローション等が挙げられる。
【0030】
前記各実施形態にかかるニキビ抑制用組成物、皮膚外用剤および化粧料は以上のとおりであるが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0031】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
表1に示す配合で実施例及び比較例のクリーム状の組成物を作製した。
使用した材料は市販品を用いた。尚、材料中、トラネキサム酸は商品名:トラネキサム酸、東京化成工業社製を、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールは商品名:アデカノールGE−RF、株式会社ADEKA製を用いた。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1の製造方法は以下のとおりである。
まず、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、スクワラン、トリエチルヘキサノイン等の油相成分を75℃で均一に溶解させた油相と、トラネキサム酸、水添レシチン、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等の水相成分を75℃で精製水に均一に溶解させた水相とを作製し、それぞれを混合してから、高速乳化分散機(装置名「ホモミクサーMARKII」、PRIMIX社製)によって攪拌後、増粘剤としてのカルボマーを混合して、冷水にて攪拌後、水酸化ナトリウム水溶液を添加、攪拌することでクリーム状の組成物を得た。尚、精製水は水酸化ナトリウム水溶液の水も含む。
【0035】
比較例1は、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にしてクリーム状の組成物を調製した。
比較例2は、トラネキサム酸を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にしてクリーム状の組成物を調製した。
比較例3は、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール及びトラネキサム酸を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にしてクリーム状の組成物を調整した。
比較例4は、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール及びトラネキサム酸を用いず、代わりにニキビに対する効果が公知であるレチノイン酸を0.1重量%用いたこと以外は、実施例1と同様にしてクリーム状の組成物を調製した。
比較例5は、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール及びトラネキサム酸を用いず、代わりにニキビに対する効果が公知である過酸化ベンゾイルを2.5重量%用いたこと以外は、実施例1と同様にしてクリーム状の組成物を調製した。
【0036】
[ニキビの改善性の評価試験]
ニキビの発生が認められる10代から30代の女性被験者40名を、1群10名として4群に分け、それぞれ実施例1、比較例1〜3の各クリーム状組成物を使用させた。
使用方法は、毎日、朝、夕1回ずつ、のクリーム状組成物を適量ずつ顔面に塗布することを1ヶ月間行なった。
その後、下記の評価基準に従って、試験開始時に存在するニキビに対する改善効果を評価した。また、試験期間中に新たに発生したニキビの数を被験者毎に計測し、各群の平均値を算定し、ニキビの発生抑制効果を評価した。
《ニキビ改善の評価基準》
有効:ニキビの改善が認められる。
やや有効:ニキビの改善がやや認められる。
無効:ニキビの改善が認められない
結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2に示すように、実施例1を使用した群では、比較例1乃至3を使用した群に比べてニキビの改善評価が高かった。また、ニキビの発生数も、実施例1を使用した群は、比較例1乃至3を使用した群に比べて非常に少なかった。
【0039】
[炎症後色素沈着の評価試験]
ニキビの改善後に発生した炎症後色素沈着が認められる10代から30代の女性被験者40名を、1群10名として4群に分け、それぞれ実施例1、比較例1〜3の各クリーム状組成物を使用させた。
使用方法は、毎日、朝、夕1回ずつ、のクリーム状組成物を適量ずつ顔面に塗布することを1ヶ月間行なった。
その後、下記の評価基準に従って、色素の薄化、又は消失が認められるかどうかを目視で確認し、色素沈着の抑制効果を評価した。
《炎症後色素沈着の改善の評価基準》
有効:炎症後色素沈着の改善が認められる。
やや有効:炎症後色素沈着の改善がやや認められる。
無効:炎症後色素沈着の改善が認められない。
結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
表3に示すように、実施例1を使用した群では、比較例1乃至3を使用した群に比べて、色素沈着に対する改善効果が高かった。
【0042】
[刺激性の評価試験]
10代から30代の被験者計20名(男性13名、女性7名)の顔面に、実施例1、比較例1〜5の全てを順番に塗布し、下記の評価基準に従って刺激性を採点した。
尚、塗布の順序による影響を除去するために、被験者毎に実施例1、比較例1〜5を塗布する順序を変更した。
《刺激性の評価基準》
非常に強い刺激性が認められる:4点
強い刺激性が認められる :3点
弱い刺激性が認められる :2点
刺激性がかすかに認められる :1点
刺激性は全く認められない :0点

実施例、比較例のクリーム状の組成物の合計点を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
表4の結果から明らかなように、実施例1では、トラネキサム酸、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールのいずれか一方、あるいは両方を配合しない場合(比較例1〜3)と同等の刺激性であったが、レチノイン酸を配合した比較例4、過酸化ベンゾイルを配合した比較例5では、皮膚に対する刺激性が実施例1に比べて高かった。
【0045】
以上の結果より、実施例1の組成物では、刺激性が低く、且つニキビ改善性及びニキビの発生抑制性が高く、さらに、色素沈着に対する改善効果も高かったことが明らかである。
【0046】
《処方例》
本発明のニキビ抑制用組成物を含む化粧料の処方例を以下に示す。
【0047】
(処方例1)
化粧料として表5に示すような配合のニキビ用化粧水を製造した。
【0048】
【表5】
【0049】
ニキビ用化粧水の調製は次のようにして行った。すなわち、トラネキサム酸、アルブチン、グリセリン等から構成される水相に、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオールを加えて溶解させた後、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を徐々に添加、均一に分散、溶解させ、濾過することにより、ニキビ用化粧水を得た。
【0050】
(処方例2)
化粧料として表6に示すような配合のニキビ用乳液を製造した。
【0051】
【表6】
【0052】
ニキビ用乳液の調製は次のようにして行った。すなわち、油相であるスクワラン、エチルヘキサン酸セチル、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール等を75℃で加熱溶解後、トラネキサム酸、水添レシチン、グリセリン等から構成され、75℃で加熱溶解した水相に徐々に添加し、ホモミキサー(3,000rpm、2分処理)で均一に分散させ、脱気、濾過することにより、ニキビ用乳液を得た。
【0053】
(処方例3)
化粧料として表7に示すような配合のニキビ用クリームを製造した。
【0054】
【表7】
【0055】
ニキビ用クリームの調製は次のようにして行った。すなわち、油相であるトリエチルヘキサノイン、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸、3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール等を75℃で加熱溶解後、トラネキサム酸、グリセリン、ユキノシタエキス、ノバエキス等から構成され、75℃で溶解した水相に徐々に添加し、ホモミキサー(5,000rpm、3分処理)で均一に分散させ、増粘剤としてカルボマーを添加した後、攪拌し、水酸化ナトリウム水溶液を添加後、均一攪拌し、脱気、濾過することにより、ニキビ用クリームを得た。
【0056】
(処方例4)
化粧料として表8に示すような配合のニキビ用化粧下地を製造した。
【0057】
【表8】
【0058】
ニキビ用化粧下地の調製は次のようにして行った。すなわち、油相であるシクロメチコン、メトキシケイヒ酸オクチル、ジメチコン、ミリスチン酸オクチルドデシル、酸化チタン等を均一に攪拌後、トラネキサム酸、クエン酸、塩化ナトリウム等から構成される水相に徐々に添加させ、ホモミキサー(5,000rpm、5分処理)で均一に分散させ、脱気、濾過することにより、ニキビ用化粧下地を得た。