特許第6209356号(P6209356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209356
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20170925BHJP
   H01R 13/533 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01R13/42 B
   H01R13/533 D
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-94465(P2013-94465)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-216256(P2014-216256A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長坂 尚一
(72)【発明者】
【氏名】室 隆志
【審査官】 山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−183199(JP,A)
【文献】 特開2002−033149(JP,A)
【文献】 特開2003−092162(JP,A)
【文献】 実開昭57−178383(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
H01R 13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の雌端子金具と、前記雌端子金具を収容する樹脂製のハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記雌端子金具が挿入される端子収容孔と、該端子収容孔に臨んで配置されて前記端子収容孔に挿入された前記雌端子金具を抜け止めする端子係止ランスと、を備えるコネクタであって、
前記雌端子金具は、単一の金属構成部材で一体に構成され、雄端子金具が嵌合する端子嵌合部と、前記端子嵌合部の後側に連設されて電線を固定する電線固定部と、を有し、
前記ハウジングは、単一の樹脂構成部材で一体に構成され、前記端子収容孔は、前記雌端子金具の前記端子嵌合部及び前記電線固定部の双方を収容・保持するように前記雌端子金具の挿入方向に沿って連続して延び、
前記ハウジングには、前記端子収容孔に臨む位置において前記雌端子金具の挿入方向に沿って延設された端子係止溝を設け、
前記雌端子金具の前記端子嵌合部には、前記端子係止溝に係合することで、前記雌端子金具の挿入方向と直交する上下方向への移動を規制するガタ止め用突起を、前記上下方向の上側寄りの位置にて一体に設け
前記端子係止ランスと係合するランス係合部は、前記端子嵌合部の前記上下方向の下側に位置する下面板における前記ガタ止め用突起より後側の位置に形成されたランス嵌入孔の前側縁部から前記上下方向の下側へ隆起した構造を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記端子係止溝は、前記雌端子金具の前記端子嵌合部の前端が突き当たる前記端子収容孔の前端壁に形成され、
前記ガタ止め用突起は、前記雌端子金具の角筒状の前記端子嵌合部の前記上下方向の上側に位置する上面板、及び側面板の前端から延出する、横断面形状がL字型の突片である、
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子係止溝は、前記端子収容孔の側部を覆う隔壁に、前記雌端子金具の挿入方向に沿って延設された溝であり、
前記ガタ止め用突起は、前記雌端子金具の角筒状の前記端子嵌合部の側面から突出した突起で、前記雌端子金具の端子収容孔への挿入時に、前記端子係止溝を摺動し、
前記雌端子金具を前記端子収容孔に前記上下方向において上下逆に挿入した場合に前記ガタ止め用突起が前記端子係止溝に入らないように、前記ガタ止め用突起が、前記端子嵌合部の側面における前記上下方向の上側寄りの位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車載のワイヤハーネスに使用されるコネクタでは、振動環境下における端子金具のガタ付きに起因した電気的接続性能の低下を抑止することから、ガタ付きを防止する手段を講じることが重要である。
【0003】
下記の特許文献1及び特許文献2には、コネクタにおけるガタ付きを防止する技術が開示されている。
【0004】
下記特許文献1に開示されたガタ付き防止技術では、図18に示すように、雌端子金具110を収容するハウジング100を、雌端子金具110を収容保持した樹脂製の端子収容部材120と、該端子収容部材120を挿抜可能な樹脂製のケース130と、で構成している。
【0005】
また、端子収容部材120は、雌端子金具110が挿入される端子収容孔121を画成している上壁122に、端子係止ランス123を備えている。
【0006】
端子係止ランス123は、端子収容孔121に対する雌端子金具110の挿抜方向(図18の矢印X1方向)と直交する方向(図18では、矢印Y1方向)に撓み変形可能な弾性片123aと、この弾性片123aから端子収容孔121内に突出した端子係止突起123bと、端子係止突起123bから外方に突出したガタ止め用突起123cと、を備えている。
【0007】
特許文献1における端子係止ランス123は、端子係止突起123bを雌端子金具110の段差部111に係合させることで、雌端子金具110を抜け止めする。また、端子係止ランス123は、端子収容部材120がケース130に挿入された際に、ガタ止め用突起123cがケース130の上部壁131により押圧されて、雌端子金具110側に弾性変形した状態になり、このときにガタ止め用突起123cから上部壁131に作用する弾性反力により、端子収容部材120をガタ止めする。
【0008】
下記特許文献2に開示されたガタ付き防止技術は、ハウジングの端子収容孔の前端部に、雌端子金具の挿入方向に沿って突出した支持突部を設ける一方、雌端子金具の前端部には、前記支持突部が係合する被支持溝部を設けたもので、前記支持突部と前記被支持溝部との係合によって、雌端子金具の挿入方向と直交する方向へのガタつきを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−140806号公報
【特許文献2】特開2004−63078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に開示の技術では、雌端子金具を収容するハウジングが端子収容部材120とケース130との組立構造であり、ハウジング構成部品が増加するという問題があった。
【0011】
また、特許文献2に開示の技術では、雌端子金具を固定するための小型部品である支持突部が、金属と比較して強度の低い樹脂製となるため、雌端子金具の固定強度を高めることが難しく、固定強度の不足のためにガタ付きを確実に無くすことが難しいという問題があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、構成部品の増加を招くことがなく、しかも雌端子金具の固定強度を高めることが容易で、振動環境下における雌端子金具のガタ付きを確実に抑制して、安定した電気的接続性能を維持することのできるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 金属製の雌端子金具と、前記雌端子金具を収容する樹脂製のハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記雌端子金具が挿入される端子収容孔と、該端子収容孔に臨んで配置されて前記端子収容孔に挿入された前記雌端子金具を抜け止めする端子係止ランスと、を備えるコネクタであって、
前記雌端子金具は、単一の金属構成部材で一体に構成され、雄端子金具が嵌合する端子嵌合部と、前記端子嵌合部の後側に連設されて電線を固定する電線固定部と、を有し、
前記ハウジングは、単一の樹脂構成部材で一体に構成され、前記端子収容孔は、前記雌端子金具の前記端子嵌合部及び前記電線固定部の双方を収容・保持するように前記雌端子金具の挿入方向に沿って連続して延び、
前記ハウジングには、前記端子収容孔に臨む位置において前記雌端子金具の挿入方向に沿って延設された端子係止溝を設け、
前記雌端子金具の前記端子嵌合部には、前記端子係止溝に係合することで、前記雌端子金具の挿入方向と直交する上下方向への移動を規制するガタ止め用突起を、前記上下方向の上側寄りの位置にて一体に設け
前記端子係止ランスと係合するランス係合部は、前記端子嵌合部の前記上下方向の下側に位置する下面板における前記ガタ止め用突起より後側の位置に形成されたランス嵌入孔の前側縁部から前記上下方向の下側へ隆起した構造を有することを特徴とするコネクタ。
【0014】
(2) 前記端子係止溝は、前記雌端子金具の前記端子嵌合部の前端が突き当たる前記端子収容孔の前端壁に形成され、
前記ガタ止め用突起は、前記雌端子金具の角筒状の前記端子嵌合部の前記上下方向の上側に位置する上面板、及び側面板の前端から延出する、横断面形状がL字型の突片である、
ことを特徴とする上記(1)に記載のコネクタ。
【0015】
(3) 前記端子係止溝は、前記端子収容孔の側部を覆う隔壁に、前記雌端子金具の挿入方向に沿って延設された溝であり、
前記ガタ止め用突起は、前記雌端子金具の角筒状の前記端子嵌合部の側面から突出した突起で、前記雌端子金具の端子収容孔への挿入時に、前記端子係止溝を摺動し、
前記雌端子金具を前記端子収容孔に前記上下方向において上下逆に挿入した場合に前記ガタ止め用突起が前記端子係止溝に入らないように、前記ガタ止め用突起が、前記端子嵌合部の側面における前記上下方向の上側寄りの位置に設けられている、
ことを特徴とする上記(1)に記載のコネクタ。
【0016】
上記(1)の構成によれば、雌端子金具をハウジングの端子収容孔に挿入した際に、雌端子金具に一体装備したガタ止め用突起が、ハウジングに形成されている端子係止溝に係合することで、雌端子金具の挿入方向と直交する方向への移動が規制されて、雌端子金具のガタ付きが抑制される。
【0017】
即ち、上記(1)の構成によれば、雌端子金具のガタ付きの抑制は、雌端子金具とハウジングとの間の直接的な係合によって行っており、別部品を使用していないため、構成部品の増加を招くことがない。
【0018】
しかも、雌端子金具のガタ付きを抑制するための小型部品であるガタ止め用突起は、機械的強度の高い金属製となるため、雌端子金具の固定強度を高めることが容易で、振動環境下における雌端子金具のガタ付きを確実に抑制して、安定した電気的接続性能を維持することができる。
【0019】
上記(2)の構成によれば、雌端子金具をハウジングの端子収容孔に挿入した際に、雌端子金具の前端に突設されたガタ止め用突起が、ハウジングの端子収容孔の前端壁に形成されている端子係止溝に係合することで、雌端子金具の挿入方向と直交する方向への移動が規制されて、雌端子金具のガタ付きが抑制される。
【0020】
そして、ガタ付きの抑制のための雌端子金具の固定が、雌端子金具の前端部で行われるため、雌端子金具の前端部を端子収容孔の前端に高精度に位置決めすることも可能になる。
【0021】
上記(3)の構成によれば、雌端子金具をハウジングの端子収容孔に挿入した際に、雌端子金具の側面に突設されたガタ止め用突起が、ハウジングの端子収容孔の側部の隔壁に形成されている端子係止溝に係合することで、雌端子金具の挿入方向と直交する方向への移動が規制されて、雌端子金具のガタ付きが抑制される。また、端子係止溝に係合したガタ止め用突起は、雌端子金具の挿入操作に伴い、端子係止溝上を摺動する。従って、ガタ止め用突起が挿入方向を規制するガイドとしても機能し、雌端子金具の斜め挿入等を抑止して、雌端子金具の挿入操作を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるコネクタによれば、構成部品の増加を招くことがなく、しかも雌端子金具の固定強度を高めることが容易で、振動環境下における雌端子金具のガタ付きを確実に抑制して、安定した電気的接続性能を維持することができる。
【0023】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は本発明に係るコネクタの第1実施形態における雌端子金具の斜視図である。
図2図2図1に示した雌端子金具の別の角度から視た斜視図である。
図3図3図1のB部の拡大図である。
図4図4は本発明の第1実施形態のハウジングの斜視図である。
図5図5図4に示したハウジングの端子収容孔の斜視図である。
図6図6図5のB−B断面図である。
図7図7図6に示した端子収容孔に雌端子金具が嵌合した状態の断面図である。
図8図8は第1実施形態の雌端子金具の変形例の要部拡大斜視図である。
図9図9は本発明に係るコネクタの第2実施形態における雌端子金具の斜視図である。
図10図10図9に示した雌端子金具の別の角度から視た斜視図である。
図11図11図9のC部の拡大図である。
図12図12は本発明に係るコネクタの第2実施形態のハウジングに雌端子金具を上下逆に挿入途中の状態を示す断面図である。
図13図13図12のD−D断面図である。
図14図14図12に示したハウジングの端子収容孔の斜視図である。
図15図15図14のE−E断面図である。
図16図16は第2実施形態の雌端子金具がハウジングの端子収容孔に嵌合した状態の断面図である。
図17図17は第2実施形態の端子金具のガタ止め用突起が端子係止溝に係合している状態の断面図である。
図18図18は従来のコネクタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るコネクタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
[第1実施形態]
図1図7は本発明に係るコネクタの第1実施形態を示したもので、図1は本発明に係るコネクタの第1実施形態における雌端子金具の斜視図、図2図1に示した雌端子金具の別の角度から視た斜視図、図3図1のB部の拡大図、図4は第1実施形態のハウジングの斜視図、図5図4に示したハウジングの端子収容孔の斜視図、図6図5のB−B断面図、図7図6に示した端子収容孔に雌端子金具が嵌合した状態の断面図である。
【0027】
この第1実施形態のコネクタ1は、図1図3に示す金属製の雌端子金具10と、図4図6に示す樹脂製のハウジング20と、を備えている。
【0028】
本実施形態の雌端子金具10は、金属板のプレス成形品で、雄端子金具が嵌合する角筒状の端子嵌合部11と、電線の芯線を圧着する芯線加締め片12と、電線の被覆部の上に加締め付けられて電線を固定する被覆加締め片13と、を備えている。
【0029】
また、図2に示すように、端子嵌合部11の底面部11aには、ランス係合部15と、ランス嵌入孔16と、が装備されている。
【0030】
ランス係合部15は、端子嵌合部11の底面部11aから下方(図2では、矢印X2方向)に隆起した構造で、後述するハウジング20内の端子係止ランス213と係合することで、抜け止めを果たす。
【0031】
ランス嵌入孔16は、ランス係合部15に係合する端子係止ランス213の外面側が没入可能な開口である。
【0032】
本実施形態の雌端子金具10は、図3に示すように、角筒状の端子嵌合部11の前端に、ガタ止め用突起18が設けられている。
【0033】
このガタ止め用突起18は、端子嵌合部11の上面板11bの前端から延出した突片である。このガタ止め用突起18の延出方向は、当該雌端子金具10のハウジング20への挿入方向に沿っている。このガタ止め用突起18は、後述するハウジング20の端子係止溝に係合することで、該雌端子金具10の挿入方向と直交する方向への移動を規制する。
【0034】
本実施形態のハウジング20は、図4に示すように、雌端子金具10を保持する雌端子収容部21と、該雌端子収容部21の上面に装備されたロックアーム22と、を備える。
【0035】
雌端子収容部21は、図5及び図6に示すように、雌端子金具10を収容する端子収容孔211と、雄端子挿入孔212と、端子係止ランス213と、端子係止溝214と、を備えている。
【0036】
端子収容孔211は、図5に示すように、ハウジング20の後端部に開放していて、ハウジング20の後方から雌端子金具10が挿入される。
【0037】
雄端子挿入孔212は、図4図6に示すように、雌端子収容部21の先端面に開口した孔で、端子収容孔211と連通している。この雄端子挿入孔212は、雌端子金具10の嵌合相手である雄端子金具が挿通可能な孔である。
【0038】
端子係止ランス213は、図5及び図6に示すように、雌端子金具10の底面部11aと対向する端子収容孔211の底面に、装備されている。即ち、端子係止ランス213は、端子収容孔211の底面から端子収容孔211に臨んで配置されている。この端子係止ランス213は、端子収容孔211への雌端子金具10の挿入方向に沿って延在する弾性片である。
【0039】
本実施形態の端子係止ランス213は、図5に示すように、先端側が一対の可撓片213aを介して雌端子収容部21の前端部に接続されると共に、基端側が端子収容孔211の底壁211aに繋がって、両持ち梁構造に支持されている。
【0040】
この端子係止ランス213は、雌端子金具10の挿入途中では、雌端子金具10の底面部11aとの干渉によって端子収容孔211の外側(図6では、矢印X3側)に弾性変位し、雌端子金具10の挿入が完了した時には弾性復元力で端子収容孔211内に突出した状態に戻って、図7に示すように雌端子金具10のランス係合部15と係合した状態になり、雌端子金具10を抜け止めする。
【0041】
端子係止溝214は、図6に示すように、端子収容孔211に臨む端子収容孔211の前端壁211bに装備されている。端子収容孔211の前端壁211bは、端子収容孔211に挿入された雌端子金具10の前端が突き当たる壁部である。本実施形態の端子係止溝214は、雌端子金具10の挿入方向(図6では、矢印Y3方向)に沿って延設されている。
【0042】
本実施形態の端子係止溝214は、図7に示すように、端子収容孔211に挿入された雌端子金具10のガタ止め用突起18が係合することで、雌端子金具10の挿入方向と直交する方向(図7では、矢印X4方向)への移動を規制する。
【0043】
ハウジング20に装備されたロックアーム22は、図4に示すように、雌端子収容部21の先端側から後端に向かって延出した可撓アーム221に係合突起222を突設した構造である。このロックアーム22は、当該ハウジング20を相手コネクタのハウジング(不図示)に嵌合させたときに、係合突起222が相手のハウジングの係止突起(ロックビーク)と係合することで、ハウジング相互の接続状態をロックする。
【0044】
以上に説明した第1実施形態のコネクタ1の場合、雌端子金具10をハウジング20の端子収容孔211に挿入した際に、図7に示すように、雌端子金具10に一体装備したガタ止め用突起18が、ハウジング20に形成されている端子係止溝214に係合することで、雌端子金具10の挿入方向と直交する方向への移動が規制されて、雌端子金具10のガタ付きが抑制される。
【0045】
即ち、第1実施形態のコネクタ1の構成によれば、雌端子金具10のガタ付きの抑制は、雌端子金具10とハウジング20との間の直接的な係合によって行っており、別部品を使用していないため、構成部品の増加を招くことがない。
【0046】
しかも、雌端子金具10のガタ付きを抑制するための小型部品であるガタ止め用突起18は、機械的強度の高い金属製となるため、雌端子金具10の固定強度を高めることが容易で、振動環境下における雌端子金具10のガタ付きを確実に抑制して、安定した電気的接続性能を維持することができる。
【0047】
また、第1実施形態のコネクタ1の場合、雌端子金具10をハウジング20の端子収容孔211に挿入した際に、雌端子金具10の前端に突設されたガタ止め用突起18が、ハウジング20の端子収容孔211の前端壁211bに形成されている端子係止溝214に係合することで、雌端子金具10の挿入方向と直交する方向への移動が規制されて、雌端子金具10のガタ付きが抑制される。
【0048】
そして、ガタ付きの抑制のための雌端子金具10の固定が、雌端子金具10の前端部で行われるため、雌端子金具10の前端部を端子収容孔211の前端に高精度に位置決めすることも可能になる。その結果、雄端子挿入孔212から挿入される雄端子金具が、雌端子金具10の前端に衝突するといった不都合の発生を防止することができる。
【0049】
[雌端子金具10の変形例]
図8は、第1実施形態の雌端子金具の変形例の要部拡大斜視図である。
ここに示した雌端子金具10Aにおけるガタ止め用突起18は、角筒状の端子嵌合部11の上面板11b及び側面板11cの前端から延出した突片で、横断面形状がL字型になっている。図示はしていないが、ハウジング20の端子収容孔211の前端壁211bに形成される端子係止溝214も、同様に横断面形状がL字型の溝となる。
【0050】
このように、ガタ止め用突起18を、横断面形状がL字型になる構造とすると、機械的な強度が更に高くなり、ガタ止め性能を更に向上させることができる。
【0051】
[第2実施形態]
図9図17は本発明に係るコネクタの第2実施形態を示したもので、図9は本発明に係るコネクタの第2実施形態における雌端子金具の斜視図、図10図9に示した雌端子金具の別の角度から視た斜視図、図11図9のC部の拡大図、図12は本発明に係るコネクタの第2実施形態のハウジングに雌端子金具を上下逆に挿入途中の状態を示す断面図、図13図12のD−D断面図、図14図12に示したハウジングの端子収容孔の斜視図、図15図14のE−E断面図、図16は第2実施形態の雌端子金具がハウジングの端子収容孔に嵌合した状態の断面図、図17は第2実施形態の端子金具のガタ止め用突起が端子係止溝に係合している状態の断面図である。
【0052】
第2実施形態のコネクタ1Bは、雌端子金具10Bと、該雌端子金具10Bを収容するハウジング20Bと、を備える。
【0053】
この第2実施形態における雌端子金具10Bは、第1実施形態の雌端子金具10の一部を改良したものである。改良点は、第1実施形態におけるガタ止め用突起18の代わりに、ガタ止め用突起18Bを備えた点である。改良点以外の構成は、第1実施形態の雌端子金具10と共通で良く、第1実施形態と共通の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施形態のガタ止め用突起18Bは、図9図11に示すように、角筒状の端子嵌合部11の両側面から突出した突起で、該雌端子金具10Bをハウジング20Bの端子収容孔211へ挿入した際に、後述する端子係止溝214Bを摺動する。ガタ止め用突起18Bは端子嵌合部11の上部寄りに設けられている。
【0055】
この第2実施形態におけるハウジング20Bは、第1実施形態のハウジング20の一部を改良したものである。改良点は、第1実施形態における端子係止溝214の代わりに、端子係止溝214Bを備えた点である。改良点以外の構成は、第1実施形態のハウジング20と共通で良く、第1実施形態と共通の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施形態における端子係止溝214Bは、図14及び図15に示すように、端子収容孔211の側部を覆う左右両側の隔壁211cに、形成された溝である。この端子係止溝214Bは、端子収容孔211に挿入される雌端子金具10Bのガタ止め用突起18Bが摺動可能なように、雌端子金具10Bの挿入方向(図15の矢印Y4方向)に沿って、隔壁211cに延設されている。
【0057】
この第2実施形態のコネクタ1Bの場合、雌端子金具10Bをハウジング20Bの端子収容孔211に挿入した際に、雌端子金具10Bの側面に突設されたガタ止め用突起18Bが、ハウジング20Bの端子収容孔211の側部の隔壁211cに形成されている端子係止溝214Bに係合することで、雌端子金具10の挿入方向と直交する方向への移動が規制されて、雌端子金具10のガタ付きが抑制される。
【0058】
この第2実施形態のコネクタ1Bの場合も、雌端子金具10Bのガタ付きの抑制は、雌端子金具10Bとハウジング20Bとの間の直接的な係合によって行っており、別部品を使用していないため、構成部品の増加を招くことがない。また、雌端子金具10Bのガタ付きを抑制するための小型部品であるガタ止め用突起18Bは、機械的強度の高い金属製となるため、雌端子金具10Bの固定強度を高めることが容易で、振動環境下における雌端子金具10Bのガタ付きを確実に抑制して、安定した電気的接続性能を維持することができる。
【0059】
また、第2実施形態のコネクタ1Bの場合、端子係止溝214Bに係合したガタ止め用突起18Bは、雌端子金具10Bの挿入操作に伴い、端子係止溝214B上を摺動する。従って、ガタ止め用突起18Bが挿入方向を規制するガイドとしても機能し、雌端子金具10Bの斜め挿入等を抑止して、雌端子金具10Bの挿入操作を容易にすることもできる。
【0060】
また、雌端子金具10Bを端子収容孔211に上下逆に挿入した場合、ガタ止め用突起18Bは端子係止溝214Bに入らないので、雌端子金具10Bは端子収容孔211の奥まで完全に挿入されない。従って、雌端子金具10Bの逆挿入を容易に検知することができる。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0062】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0063】
[1] 金属製の雌端子金具(10)と、前記雌端子金具(10)を収容する樹脂製のハウジング(20)と、を備え、前記ハウジング(20)は、前記雌端子金具(10)が挿入される端子収容孔(211)と、該端子収容孔(211)に臨んで配置されて前記端子収容孔(211)に挿入された前記雌端子金具(10)を抜け止めする端子係止ランス(213)と、を備えるコネクタ(1)であって、
前記ハウジング(20)には、前記端子収容孔(211)に臨む位置において前記雌端子金具(10)の挿入方向に沿って延設された端子係止溝(214)を設け、
前記雌端子金具(10)には、前記端子係止溝(214)に係合することで、前記雌端子金具(10)の挿入方向と直交する方向への移動を規制するガタ止め用突起(18)を設けたことを特徴とするコネクタ(1)。
【0064】
[2] 前記端子係止溝(214)は、前記雌端子金具(10)の前端が突き当たる前記端子収容孔(211)の前端壁(211b)に形成され、
前記ガタ止め用突起(18)は、前記雌端子金具(10)の前端から延出した突片である、
ことを特徴とする上記[1]に記載のコネクタ(1)。
【0065】
[3] 前記端子係止溝(214B)は、前記端子収容孔(211)の側部を覆う隔壁(211c)に、前記雌端子金具(10)の挿入方向に沿って延設された溝であり、
前記ガタ止め用突起(18B)は、前記雌端子金具(10B)の側面から突出した突起で、前記雌端子金具(10B)の端子収容孔(211)への挿入時に、前記端子係止溝(214B)を摺動する、
ことを特徴とする上記[1]に記載のコネクタ(1B)。
【符号の説明】
【0066】
1,1B コネクタ
10,10B 雌端子金具
18,18B ガタ止め用突起
20,20B ハウジング
211 端子収容孔
211b 前端壁
211c 隔壁
213 端子係止ランス
214,214B 端子係止溝
図1
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