(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態にかかる汚泥処理装置(汚泥凝集脱水装置)1−1の全体概略図である。同図に示すように、汚泥処理装置1−1は、水処理系からの汚泥を貯留する汚泥貯留槽10と、汚泥貯留槽10から送られてくる汚泥を凝集させる汚泥凝集装置30と、汚泥凝集装置30から送られてくる凝集汚泥を脱水する汚泥脱水機100とを具備して構成されている。
【0024】
また汚泥凝集装置30は、汚泥貯留槽10から移送されてくる汚泥を導入する第1凝集装置40と、第1凝集装置40に導入する汚泥に第1の高分子凝集剤の溶液を注入する第1薬注手段70と、第1凝集装置40で混合攪拌された混合汚泥(混合した汚泥と第1の高分子凝集剤)を導入する第2凝集装置80と、第2凝集装置80に導入する汚泥に第2の高分子凝集剤の溶液を注入する第2薬注手段90と、を具備して構成されている。
【0025】
汚泥貯留槽10は、水処理系からの汚泥を貯留するものである。貯留する汚泥(被処理物)としては、有機性汚泥、無気性汚泥の何れでも良い。
【0026】
有機性汚泥としては、例えば下水処理、し尿処理、各種産業廃水処理において発生する有機性汚泥などを挙げることができる。より具体的には、最初沈殿池汚泥、余剰汚泥、嫌気性消化汚泥、好気性消化汚泥、浄化槽汚泥、消化脱離液などを挙げることができる。有機性汚泥は無機物を含んでも良い。
【0027】
無機性汚泥としては、例えば浄水処理、建設工事廃水処理、各種産業廃水処理において発生する無機性汚泥などを挙げることができる。ここで、浄水処理で発生する汚泥とは、浄水処理施設における沈殿池、排泥池、濃縮槽などから排出される汚泥などである。無機性汚泥は有機物を含んでも良い。
【0028】
以上のように、この汚泥処理装置1−1では、有機性汚泥、無機性汚泥のいずれも被処理物とすることができるが、本発明の効果をより享受できるという観点からすると、有機性汚泥が好ましく、その中でも、難脱水性の嫌気性消化汚泥が特に好ましい。
【0029】
汚泥貯留槽10内に溜められた汚泥は、移送ポンプ20によって、第1凝集装置40に移送される。
【0030】
図2は第1凝集装置40の要部概略断面図である。同図に示すように第1凝集装置40は、動力付き攪拌機50の上流側に無動力攪拌機構60を設置して構成されている。
【0031】
動力付き攪拌機50は、この例では羽根型攪拌機であり、略T字配管状の第1攪拌部51と、第1攪拌部51内に設置される攪拌翼53と、攪拌翼53に連結されて第1攪拌部51外に引き出されるシャフト55と、シャフト55を回転駆動するモータ(駆動源)57とを具備している。そしてモータ57を駆動して攪拌翼53を回転することで、第1攪拌部51の上流側から第1攪拌部51内に導入された汚泥を攪拌し、攪拌した汚泥を下流側に排出する。攪拌翼53の回転数は、この例では850rpm以上の所定の回転数に設定されている。
【0032】
無動力攪拌機構60は、管状のハウジング61内に、板を右方向に捩じった右攪拌翼63と左方向に捩じった左攪拌翼65を交互に設置して構成されており、ハウジング61内を流れる混合汚泥の流れの力を利用して、これら攪拌翼63,65によって、汚泥の流れ方向を変更させ、無動力で汚泥を攪拌する機構である。この無動力攪拌機構60は、汚泥用に、し渣等のひっかかりが少ない、ツバやピンの無い無閉塞構造が望ましい。なお攪拌翼63,65の形状、構造は種々の変更が可能である。
【0033】
図1に戻って、第1薬注手段70は、第1の高分子凝集剤溶解槽71と、第1の高分子凝集剤溶解槽71から前記無動力攪拌機構60の上流側の配管に第1の高分子凝集剤を移送する第1の高分子凝集剤ポンプ73とを具備している。
【0034】
第1の高分子凝集剤としては、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤のいずれも用いることができる。有機性汚泥を処理する場合には、カチオン性高分子凝集剤又は両性高分子凝集剤を用いるのが特に好ましい。
【0035】
アニオン性高分子凝集剤としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合物、ポリメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムとアクリルアミドの共重合物などを挙げることができる。
【0036】
ノニオン性高分子凝集剤としては、例えばポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイドなどを挙げることができる。
【0037】
カチオン性高分子凝集剤としては、例えばアクリレート系高分子凝集剤(「DAA系高分子凝集剤」とも称する)、メタクリレート系高分子凝集剤(「DAM系高分子凝集剤」とも称する)、アミド基、ニトリル基、アミン塩酸塩、ホルムアミド基などを含むポリビニルアミジン(「アミジン系高分子凝集剤」とも称する)、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物などが挙げられる。DAA系高分子凝集剤には、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物の重合物、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドとの共重合物などがある。DAM系高分子凝集剤には、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物の重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物とアクリルアミドとの共重合物などがある。
【0038】
両性高分子凝集剤としては、例えばジメチルアミノメチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドとアクリル酸との共重合物、ジメチルアミノメチルメタクリレートの四級化物とアクリルアミドとアクリル酸との共重合物などを挙げることができる。
【0039】
但し、以上は第1の高分子凝集剤の例示であり、これらに限定するものではない。
【0040】
第1の高分子凝集剤の分子量は450万以上であるのが好ましい。より好ましい分子量は500万以上である。ここでの分子量は、粘度法により求められた平均分子量である。高速攪拌によって高分子凝集剤を汚泥中に分散させる場合、高速攪拌により高分子凝集剤の分子鎖が切断されることが生じるため、高分子凝集剤の分子量が低すぎると高分子凝集剤の凝集力が弱まってしまう。このため、分子量が450万以上の高分子凝集剤を使用することにより、たとえ高速攪拌により分子鎖が切断されてもある程度の高分子凝集剤の凝集力を維持することができる。
【0041】
第1の高分子凝集剤の粘度は、分子量と同じ観点から、150mPa・s以上であるのが好ましく、特に175mPa・s以上、その中でも200mPa・s以上であるのが好ましい。この際の粘度は、高分子凝集剤を純水に2g/Lで溶解し、B型粘度計を使用し、25℃、60rpmの回転速度で測定した値である。
【0042】
第1の高分子凝集剤の分子量が450万以上である場合、第1の高分子凝集剤の注入量は、第1の高分子凝集剤と下記する第2の高分子凝集剤の合計注入量の45〜95質量%となるように調整して加えるのが好ましく、中でも50〜95質量%、その中でも特に55〜90質量%を占めるように調整して加えるのが好ましい。
【0043】
第1の高分子凝集剤の注入量の割合が高すぎると、第2の高分子凝集剤の注入量が少なすぎるようになるため、凝集フロックは成長しない可能性がある。この結果、濃縮処理や脱水処理において、ろ過性が悪化する。一方、第1の高分子凝集剤の注入量の割合が低すぎると、第1凝集装置40(動力付き攪拌機50)において、高速攪拌により汚泥に均一に分散する高分子凝集剤の割合が少なくなるため、高速攪拌の効果は低下するようになる。このため第1の高分子凝集剤の注入量は、合計注入量の45〜95質量%に制御することにより、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させるとともに凝集フロックを成長させることができる。
【0044】
第1の高分子凝集剤の溶液における溶媒は、純水、水道水、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水、海水などを挙げることができるが、高分子凝集剤の凝集力を最大限発揮させる観点からは純水が好ましい。この点は下記する第2の高分子凝集剤の溶液についても同様である。一方、経済性の観点からは、水道水、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水が好ましい。この点も、第2の高分子凝集剤の溶液についても同様である。
【0045】
第1の高分子凝集剤の溶液における高分子凝集剤濃度は1〜3g/Lであってもよいが、3g/L以上であるのが好ましく、より好ましくは5g/L以上、さらにより好ましくは10g/L以上である。高分子凝集剤による汚泥の凝集において、高分子凝集剤の溶液は1〜3g/Lに調製するのが一般的であり、通常は3g/L以上の高分子凝集剤の溶液を使用することはない。この理由は、高分子凝集剤濃度が3g/L以上になると、高分子凝集剤の溶液は高粘度になるため、従来の凝集槽で使用される攪拌機の回転速度(10〜500rpm程度)では、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させることが難しいからである。一方、第1凝集装置40(動力付き攪拌機50)における高速攪拌では、3g/L以上の高濃度溶液を使用しても、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させることができる。この結果、高分子凝集剤の溶解水量を削減できるメリットが生じる。高濃度の高分子凝集剤の溶液を使用する別のメリットとして、高分子凝集剤を加えた汚泥中の高分子凝集剤の濃度を高めることができるため、高分子凝集剤の注入量を削減でき、脱水処理後の脱水ケーキの含水率を低減できる点を挙げることができる。例えば、1Lの汚泥に2g/Lの高分子凝集剤の溶液を200mL注入(高分子凝集剤として0.4g注入)した場合、汚泥中の高分子凝集剤の濃度は333mg/Lである。一方、1Lの汚泥に10g/Lの高分子凝集剤を40mL注入(高分子凝集剤として0.4g注入)した場合、汚泥中の高分子凝集剤の濃度は385mg/Lである。このように、同じ0.4gの高分子凝集剤を加える場合であっても、2g/Lの高分子凝集剤の溶液を使用するよりも、10g/Lの高分子凝集剤の溶液を使用する方が汚泥中の高分子凝集剤の濃度を高められ、高分子凝集剤の注入量を削減でき、脱水処理後の脱水ケーキの含水率を低減することができる。
【0046】
第2凝集装置80は、槽状の第2攪拌部81と、第2攪拌部81内に設置される攪拌翼83と、攪拌翼83に連結されて第2攪拌部81外に引き出されるシャフト85と、シャフト85を回転駆動するモータ(駆動源)87とを具備している。そしてモータ87を駆動して攪拌翼83を回転することで、上流側から第2攪拌部81内に導入された汚泥を攪拌し、攪拌した汚泥を下流側に排出する。攪拌翼83の回転数は、従来の汚泥の凝集装置において一般的な回転速度、すなわち10〜500rpmであればよい。その理由は、第2凝集装置80では第2の高分子凝集剤を第1凝集装置40において調整した混合汚泥に緩やかに接触させ、凝集フロックを成長させる必要があるからである。かかる観点から、第2凝集装置80において攪拌する際の回転速度は、10〜500rpmであればよく、中でも20rpm以上或いは400rpm以下、その中でも30rpm以上或いは300rpm以下であるのがさらに好ましい。なお、第2凝集装置80における攪拌する際の回転速度は、汚泥の種類、汚泥の性状、高分子凝集剤の分子量、高分子凝集剤の溶解濃度などに合わせて、10〜500rpmにおいて調整するのが好ましい。
【0047】
第2薬注手段90は、第2の高分子凝集剤溶解槽91と、第2の高分子凝集剤溶解槽91から前記第2凝集装置80の第2攪拌部81内に第2の高分子凝集剤を移送する第2の高分子凝集剤ポンプ93とを具備している。
【0048】
第2の高分子凝集剤としては、前記第1の高分子凝集剤と同様のものを用いることができる。この場合、第2の高分子凝集剤は、第1の高分子凝集剤と同一種類の高分子凝集剤を用いることもできるし、異なる種類の高分子凝集剤を用いることもできる。第1、第2の高分子凝集剤溶解槽71,91を共用できる観点からは、第2の高分子凝集剤は、第1の高分子凝集剤と同一種類の高分子凝集剤を用いるのが好ましい。第2の高分子凝集剤の溶液における高分子凝集剤濃度は1〜3g/Lであってもよいが、3g/L以上であるのが好ましく、より好ましくは5g/L以上、さらに好ましくは10g/L以上である。
【0049】
汚泥脱水機100としては、スクリュープレス脱水機を使用しているが、従来から知られた他の各種の脱水機を使用することもできる。例えば、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、真空脱水機、フィルタプレス脱水機、多重円板脱水機などを使用しても良い。
【0050】
次に汚泥処理装置1−1の動作を説明する。まず汚泥貯留槽10内に溜められた汚泥が、移送ポンプ20によって、第1凝集装置40に移送される。同時に第1の高分子凝集剤ポンプ73によって、第1の高分子凝集剤の溶液が、第1の高分子凝集剤溶解槽71から無動力攪拌機構60の上流側の配管内に供給され、汚泥に注入される。
【0051】
そして第1の高分子凝集剤が注入された混合汚泥は、無動力攪拌機構60に導入され、攪拌翼63,65によって汚泥の流れ方向が複数回様々な方向に変更させられることで、無動力にて攪拌される。
【0052】
無動力攪拌機構60によって攪拌された混合汚泥は、動力付き攪拌機50に導入され、この動力付き攪拌機50の攪拌翼53の850rpm以上の高速回転により、さらに混合・攪拌される。この高速攪拌によって、第1の高分子凝集剤を汚泥中に均一に分散させることができ、第1の高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることができる。
【0053】
第1凝集装置40(第1凝集工程)によれば、動力付き攪拌機50(動力を用いて攪拌する工程)の他に無動力攪拌機構60(無動力にて攪拌する工程)を設置したので、混合汚泥の攪拌効果がより大きくなり、その分、動力付き攪拌機50の駆動動力を小さくでき、省エネルギー化を図ることができる。具体的にこの例で言えば、同一の混合状態を得るように、動力付き攪拌機50のみ(無動力攪拌機構60を設置しない)で攪拌を行った場合と、本第1凝集装置40で攪拌を行った場合とを比較した場合、本第1凝集装置40では動力付き攪拌機50の攪拌翼53の回転数を約15%低減化でき、その駆動動力を約15%低減化できた。つまり第1凝集装置40によれば、動力付き攪拌機50のみで攪拌を行った場合に1000rpmの回転数が必要であった攪拌効果を、850rpmの回転数で達成できた。もちろん本第1凝集装置40の動力付き攪拌機50の駆動動力を1000rpmのままとすれば、混合汚泥の攪拌効果がさらに増大することは言うまでもなく、この場合は下記する脱水ケーキの含水率が、850rpmの回転数の場合に比べて、1〜2%程度さらに低減化できる。
【0054】
特にこの第1凝集装置40によれば、動力付き攪拌機50は攪拌翼53によって混合汚泥を攪拌し(回転流)、無動力攪拌機構60は混合汚泥の流れの力を利用して混合汚泥の流れ方向を変更させることで攪拌する(渦流)構成であり、両者による混合汚泥の攪拌状態(回転流と渦流)は大きく異なる。従って、混合汚泥の混合状態をより複雑な流れにすることができ、より混合汚泥の攪拌効果を大きくすることができる。
【0055】
ところで、無動力攪拌機構60による混合汚泥の攪拌は、動力付き攪拌機50による攪拌に比べて、一般に攪拌による混合力が小さい。そこでこの第1凝集装置40では、まず無動力攪拌機構60によって混合汚泥の予備攪拌を行った上で、さらに動力付き攪拌機50によってより強い攪拌を行う構成とし、これによって、より効果的に混合汚泥を攪拌するようにしている。
【0056】
以上のように、第1凝集装置40によれば、予備攪拌と高速攪拌及び異なる攪拌方法による複雑な攪拌により、第1の高分子凝集剤を汚泥中に均一に分散させることができ、第1の高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることができるため、汚泥の表面電荷の中和と、高分子の吸着又は架橋作用による凝集とを同時に行わせることができる。
【0057】
動力付き攪拌機50での回転速度は、上述のように、850rpm以上の高速であることが好ましいが、より好ましい回転速度は1000rpm以上、さらに好ましい回転速度は2000rpm以上、さらにより好ましい回転速度は3000rpm以上である。この回転速度は、汚泥の種類、汚泥の性状、高分子凝集剤の分子量、高分子凝集剤の溶解濃度などに合わせて、850rpm以上において調整するのが好ましい。回転速度を高めた場合には、攪拌時間をより短くすればよいので、回転速度の上限は特にないが、現状では15000rpmまで実験的に効果があることを確認している。
【0058】
動力付き攪拌機50における攪拌時間、即ち第1の高分子凝集剤の溶液と汚泥を混合攪拌する時間は、20秒以下、特に1秒〜20秒とするのが好ましく、より好ましくは1秒〜15秒、さらにより好ましくは1秒〜10秒である。高速攪拌による攪拌時間が長すぎると、高分子凝集剤の凝集力が弱まる程度まで高分子凝集剤の分子鎖は切断されてしまう。このため、攪拌時間を20秒以下に制御することにより、高分子凝集剤の凝集力を弱めることなく、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させ、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることができる。
【0059】
以上のように、第1凝集装置40によれば、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させることにより、無駄な高分子凝集剤を削減でき、高分子凝集剤の注入量を削減することができる。また、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることにより、凝集汚泥が緻密になるため、脱水処理後の脱水ケーキの含水率を低減できる。なお、高分子凝集剤の溶液は高粘度の液体であり、一般的な凝集槽で使用される攪拌機の回転速度(10〜500rpm程度)では、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させることが難しい上、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることができなかった。このため、高分子凝集剤の注入量の増加や脱水ケーキの含水率の悪化が生じていた。一方、上記第1凝集装置40では、無動力攪拌機構60による予備攪拌と、動力付き攪拌機50による高速攪拌とによって、高分子凝集剤を均一に汚泥に分散させることができる上、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることができる。このため、高分子凝集剤の注入量を削減でき、脱水ケーキの含水率を低減することができる。
【0060】
また、高速攪拌によって高濃度の高分子凝集剤を使用できるため、高分子凝集剤の使用量を削減することができ、設備の小型化、省エネルギー化を図ることができる。さらには、脱水ろ液を水処理系に返流する際、返流水量を削減することができるため、水処理系全体の省エネルギー化及び省スペース化を図ることができる。
【0061】
次に、
図1において、第1凝集装置40を通過した混合汚泥は、第2凝集装置80の第2攪拌部81内に導入される。同時に第2攪拌部81内には、第2の高分子凝集剤ポンプ93によって、第2の高分子凝集剤溶解槽91から第2の高分子凝集剤が注入される。第2凝集装置80では、第1凝集装置40での攪拌速度よりも低速の攪拌速度(10〜500rpm、以下「通常攪拌」とも称する)によって攪拌翼83を回転し、前記混合汚泥と前記第2の高分子凝集剤の溶液とを混合攪拌し、凝集フロックを形成させて凝集汚泥を得る(第2凝集工程)。
【0062】
第1凝集装置40において高分子凝集剤を汚泥の細部まで均一に分散させ、汚泥の表面電荷の中和と、高分子の吸着又は架橋作用による凝集とを同時に行わせることができるため、第2凝集装置80では、第1凝集装置40で得られた混合汚泥に対して高分子凝集剤を比較的ゆっくりと攪拌混合することにより、大きな凝集フロックを形成させることができ、ろ過性のよい凝集汚泥を形成できる。
【0063】
第2攪拌部81における攪拌時間、即ち第2の高分子凝集剤の溶液と混合汚泥を混合攪拌する時間は1分〜20分であるのが好ましい。その理由は、第2凝集装置80では、高分子凝集剤を第1凝集装置40において調整した混合汚泥に緩やかに接触させ、凝集フロックを成長させる必要があるからである。かかる観点から、第2凝集装置80における攪拌の攪拌時間は、1分〜20分であるのが好ましく、中でも2分以上或いは15分以下、その中でも3分以上或いは10分以下であるのがさらに好ましい。
【0064】
次に、第2凝集装置80で凝集フロックを形成させて得た凝集汚泥は、汚泥脱水機100に移送され、この汚泥脱水機100において固液分離され、固体として脱水ケーキを得、液体として脱水ろ液を得る。
【0065】
本汚泥処理装置1−1によれば、脱水ケーキの含水率を低減することができるから、廃棄物量を削減することができる。
【0066】
ところで、必ずしも汚泥を高速攪拌する必要がない場合(例えば処理する汚泥の量が少ないような場合)は、第1凝集装置40の動力付き攪拌機50の駆動を停止し、無動力攪拌機構60のみによって攪拌することで凝集を行うことも可能である。即ち、処理する汚泥の量に応じて効率的な運転を行うことが可能になり、この点からも省エネルギー化を図ることができる。
【0067】
さらに動力付き攪拌機50が故障したような場合でも、無動力攪拌機構60による攪拌は行えるので、効率は低下するが第1凝集装置40の運転を継続することができる。
【0068】
なお第1の高分子凝集剤と第2の高分子凝集剤とが同じ高分子凝集剤の場合は、第1の高分子凝集剤溶解槽71と第2の高分子凝集剤溶解槽91とを、1つの高分子凝集剤溶解槽で兼用しても良い。
【0069】
〔第2実施形態〕
図3は本発明の第2実施形態にかかる汚泥処理装置(汚泥凝集脱水装置)1−2の全体概略図である。同図に示す汚泥処理装置1−2において、前記
図1,
図2に示す汚泥処理装置1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し添え字「−2」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1,
図2に示す実施形態と同じである。
【0070】
同図に示す汚泥処理装置1−2において、上記汚泥処理装置1−1と相違する点は、汚泥凝集装置30−2の構成であり、具体的に言えば、第1凝集装置40―2の上流側に、汚泥貯留槽10−2からの汚泥を導入する無機凝集剤添加装置110−2と、無機凝集剤添加装置110−2に無機凝集剤を供給する第3薬注手段120−2とを設置した点のみである。
【0071】
無機凝集剤添加装置110−2は、槽状の無機凝集剤攪拌部111−2と、無機凝集剤攪拌部111−2内に設置される攪拌翼113−2と、攪拌翼113−2に連結されて無機凝集剤攪拌部111−2外に引き出されるシャフト115−2と、シャフト115−2を回転駆動するモータ(駆動源)117−2とを具備している。そしてモータ117−2を駆動して攪拌翼113−2を回転することで、上流側から無機凝集剤攪拌部111−2内に導入された汚泥を攪拌し、攪拌した汚泥を下流側に排出する。攪拌翼113−2の回転数は、従来の汚泥の凝集装置において一般的な回転速度、すなわち10〜500rpmであればよい。なお、無機凝集剤添加装置110−2における攪拌する際の回転速度は、汚泥の種類、汚泥の性状などに合わせて、10〜500rpmにおいて調整するのが好ましい。また、攪拌時間は適宜設定すればよい。
【0072】
第3薬注手段120−2は、無機凝集剤貯槽121−2と、無機凝集剤貯槽121−2から前記無機凝集剤攪拌部111−2に無機凝集剤を移送する無機凝集剤ポンプ123−2とを具備している。
【0073】
添加する無機凝集剤としては、例えば塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄などを挙げることができる。
【0074】
無機凝集剤は、粘度を低下させて汚泥中に分散させ易くするとともに、希釈することによりボリュームを増やして均一分散させ易くする観点から、希釈水で希釈して添加することが好ましい。上記観点から、無機凝集剤の希釈倍率は2〜5倍が好ましい。より好ましい希釈倍率は3〜4倍である。希釈液には、純水、水道水、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水、海水などが使用できるが、経済性の観点からは、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水が好ましい。
【0075】
無機凝集剤は、汚泥のTSに対して1.0質量%(Fe換算)以上添加すれば、脱水効果を高めることができる一方、10質量%(Fe換算)を超えて添加しても無機凝集剤の無駄である。よって、かかる観点から、無機凝集剤の添加量は、汚泥に対して1.0〜10質量%(Fe換算)で添加するのが好ましく、中でも1.5質量%(Fe換算)以上或いは8.0質量%(Fe換算)以下、その中でも2質量%(Fe換算)以上或いは6.0質量%(Fe換算)以下の割合で添加するのがより一層好ましい。
【0076】
以上のように、無機凝集剤添加装置110−2及び第3薬注手段120−2を設置すれば、汚泥貯留槽10から送られてくる汚泥は、無機凝集剤攪拌部111−2に供給され、同時に第3薬注手段120−2から無機凝集剤ポンプ123−2によって無機凝集剤が加えられ、攪拌翼113−2によって攪拌されて汚泥に無機凝集剤が混合された後、第1凝集装置40―2に供給され、前記汚泥処理装置1−1の場合と同様の凝集、脱水処理が行われる。
【0077】
このように第1,第2凝集装置40−2,80−2を用いて、回転速度が異なる2段階の攪拌工程により汚泥を凝集させることに加えて、無機凝集剤添加装置110−2を設置することで、無機凝集剤を前添加することにより、脱水ケーキの含水率をさらに低減できるばかりか、脱水ろ液の色度を低減することができる。
【0078】
なお上記汚泥凝集装置30−2では、攪拌翼113−2を用いて無機凝集剤攪拌部111−2内の汚泥と無機凝集剤とを攪拌混合したが、攪拌をせず、単に汚泥中に無機凝集剤を添加するだけの構成としても良い。この場合、無機凝集剤添加装置110−2を省略し、第3薬注手段120−2から第1凝集装置40−2の上流側の配管に直接無機凝集剤を注入しても良い。
【0079】
〔第3実施形態〕
図4は本発明の第3実施形態にかかる汚泥処理装置(汚泥凝集脱水装置)1−3の全体概略図である。同図に示す汚泥処理装置1−3において、前記
図1,
図2に示す汚泥処理装置1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し添え字「−3」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1,
図2に示す実施形態と同じである。
【0080】
同図に示す汚泥処理装置1−3において、上記汚泥処理装置1−1と相違する点は、汚泥凝集装置30−3の構成のみであり、具体的に言えば、第2凝集装置80―3の下流側に、第2凝集装置80−3で得られた凝集汚泥を濃縮して濃縮汚泥を得る濃縮装置130−3と、濃縮装置130−3で得た濃縮汚泥に無機凝集剤を加える無機凝集剤添加装置140−3とを設置した点のみである。
【0081】
濃縮装置130−3は、例えば遠心濃縮機、スクリュー濃縮機、楕円板型濃縮機、ふるいなどを使用して、加圧せずに凝縮汚泥を濃縮する装置を採用することも可能であるし、また例えばベルトプレス濃縮機、フィルタープレス濃縮機などを使用して、加圧しながら凝集汚泥を濃縮する方法を採用することも可能である。水分量をより減らすことができ、無機凝集剤添加効果をより一層高めることができる観点から、加圧しながら濃縮する装置を採用するのがより一層好ましい。
【0082】
本濃縮装置130−3では、濃縮汚泥のTSが50〜150g/Lとなるように濃縮するのが好ましく、中でも濃縮汚泥のTSが80g/L以上或いは140g/L以下となるようにするのがより一層好ましい。「TS」とは、蒸発残留物のことであり、この場合は、汚泥を105〜110℃で蒸発乾固したときに残留する物質の濃度である。濃縮汚泥のTSが50g/Lより低い場合、次工程で無機凝集剤を分散させ易くなるものの、濃縮ろ液側に流出する無機凝集剤が増加し、無機凝集剤を有効利用できなくなり、無機凝集剤の添加量が増加する。このため、濃縮汚泥のTSが50g/L以上となるように濃縮するのが好ましい。一般的に80g/L以上のTSまで凝集汚泥を濃縮するには、重力濃縮、すなわち凝集汚泥の自重によって濃縮する方法では、濃縮圧力が不十分であるため、加圧しながら濃縮する必要がある。他方、濃縮汚泥のTSが150g/Lより高い場合、濃縮汚泥は固体に近くなり、濃縮汚泥内部に無機凝集剤を分散させることができず、無機凝集剤の効果が十分発揮できなくなるため、やはり無機凝集剤の添加量が増加する。このような観点から、上述のように、濃縮汚泥のTSが50〜150g/Lとなるように濃縮するのが好ましい。
【0083】
凝集汚泥を加圧しながら濃縮する場合、凝集汚泥にかける圧力は、濃縮汚泥のTSが上記範囲になるように適宜調整すればよい。凝集汚泥にかける加圧圧力の目安としては、0.5〜50kPaの圧力を凝集汚泥にかけるのが好ましく、特に1kPa以上40kPa以下、中でも特に3kPa以上或いは30kPa以下の圧力を凝集汚泥にかけるのがより一層好ましい。
【0084】
本濃縮装置130−3で形成される濃縮汚泥の形状は、特に限定するものではない。例えば無機凝集剤の分散性を考慮すると、平板状とするのが好ましい。
【0085】
無機凝集剤添加装置140−3は、濃縮装置130−3からの濃縮汚泥に無機凝集剤を添加する装置である。
【0086】
この汚泥処理装置1−3においては、前記濃縮装置130−3で得られた濃縮汚泥に、無機凝集剤を添加することにより、脱水効果をさらに高めることができる。
【0087】
使用する無機凝集剤としては、例えば塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄などを挙げることができる。
【0088】
無機凝集剤は、粘度を低下させて濃縮汚泥内に含浸及び分散させ易くすると共に、希釈することによりボリュームを増やして均一分散させ易くする観点から、希釈水で希釈後、濃縮汚泥に添加することが好ましい。上記観点から、濃縮汚泥のTSが100〜150g/Lであれば、無機凝集剤の希釈倍率は2〜5倍が好ましい。より好ましい希釈倍率は3〜4倍である。希釈水には、純水、水道水、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水、海水などが使用できるが、経済性の観点からは、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水が好ましい。
【0089】
無機凝集剤は、有機性汚泥のTSに対して1.0質量%(Fe換算)以上添加すれば、脱水効果を高めることができる一方、10質量%(Fe換算)を超えて添加しても無機凝集剤の無駄である。よって、かかる観点から、無機凝集剤の添加量は、有機性汚泥に対して1.0〜10質量%(Fe換算)で添加するのが好ましく、中でも1.5質量%(Fe換算)以上或いは8.0質量%(Fe換算)以下、その中でも2質量%(Fe換算)以上或いは6.0質量%(Fe換算)以下の割合で添加するのがより一層好ましい。
【0090】
無機凝集剤・後添加工程後、脱水工程の前に、必要に応じて、無機凝集剤が添加された濃縮汚泥を加圧するか、或いは、緩やかに混合するかして、無機凝集剤を濃縮汚泥中に分散させるようにしてもよい。但し、必ずしも無機凝集剤分散工程を導入する必要はない。
【0091】
無機凝集剤添加装置140−3には、無機凝集剤ポンプ143−3を介して無機凝集剤貯槽141−3が接続されている。
【0092】
そして第2凝集装置80−3から排出された凝集フロックを含む凝集汚泥は、濃縮装置130−3に導入される。濃縮装置130−3では、凝集汚泥が濃縮されて濃縮汚泥となって無機凝集剤添加装置140−3に供給され、濃縮汚泥に無機凝集剤が添加され、汚泥脱水機100に移送される。そしてこの汚泥脱水機100において固液分離され、固体として脱水ケーキを得、液体として脱水ろ液を得る。
【0093】
〔他の各種第1凝集装置〕
上記第1凝集装置40(40−2,40−3)の他にも、各種構造の第1凝集装置が考えられる。
図6、図8、図9はそれぞれ本発明の他の実施形態にかかる第1凝集装置40−
5,7,8を示す図であ
り、図5、図7、図10、図11はそれぞれ参考例にかかる第1凝集装置40−4,6,9,10を示す図である。以下それぞれについて説明する。各図に示す第1凝集装置40−4,5,6,7,8,9,10において、前記
図1,
図2に示す第1凝集装置40と同一又は相当部分には同一符号を付す(但しそれぞれに添え字「−4,5,6,7,8,9,10」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1,
図2に示す実施形態と同じである。
【0094】
図5は第1凝集装置40−4の要部概略断面図である。同図に示す第1凝集装置40−4において、前記
図2に示す第1凝集装置40と相違する点は、動力付き攪拌機50−4の下流側に無動力攪拌機構60−4を設置した点である。動力付き攪拌機50−4自体の構造と、無動力攪拌機構60−4自体の構造は、前記
図2に示すものと同一なので、その詳細な説明は省略する。
【0095】
この第1凝集装置40−4の場合は、第1の高分子凝集剤が注入された混合汚泥は、まず動力付き攪拌機50−4に導入され、攪拌翼53−4の高速回転により、高速で混合された後、無動力攪拌機構60−4に導入され、攪拌翼63−4,65−4によって汚泥の流れ方向が複数回様々な方向に変更させられることで、無動力にて攪拌される。
【0096】
この第1凝集装置40−4の場合も、動力付き攪拌機50−4の他に無動力攪拌機構60−4を設置したので、混合汚泥の攪拌効果がより大きくなり、その分、動力付き攪拌機50−4の駆動動力を小さくでき、省エネルギー化を図ることができる。
【0097】
この第1凝集装置40−4の場合も、動力付き攪拌機50−4は攪拌翼53−4によって混合汚泥が攪拌され(回転流)、無動力攪拌機構60−4は混合汚泥の流れの力を利用して混合汚泥の流れ方向を変更させることで攪拌する(渦流)構成であり、両者による混合汚泥の攪拌状態(回転流と渦流)は大きく異なる。従って、混合汚泥の混合状態をより複雑な流れにすることができ、より混合汚泥の攪拌効果を大きくすることができる。
【0098】
以上のように、第1凝集装置40−4によれば、高速攪拌及び異なる攪拌方法による複雑な攪拌により、高分子凝集剤を汚泥中に均一に分散させることができ、高分子凝集剤を汚泥の細部まで行き渡らせることができるため、汚泥の表面電荷の中和と、高分子の吸着又は架橋作用による凝集とを同時に行わせることができる。
【0099】
なお動力付き攪拌機50(50−4)の上流側と下流側の両方に、無動力攪拌機構60(60−4)を設置しても良い。このように構成すればさらに攪拌効果が増大し、動力付き攪拌機50(50−4)の動力の低減化を図ることができる。
【0100】
図6は第1凝集装置40−5を示す図であり、
図6(a)は要部概略断面図、
図6(b)は
図6(a)のA−A断面矢視図である。同図に示す第1凝集装置40−5では、略T字配管状の第1攪拌部51−5と、第1攪拌部51−5内に設置される攪拌翼53−5と、攪拌翼53−5に連結されて第1攪拌部51−5外に引き出されるシャフト55−5と、シャフト55−5を回転駆動するモータ(駆動源)57−5とを具備して動力付き攪拌機50−5が構成され、さらに第1攪拌部51−5を構成する上流側の配管中に、平板状の流体混合板59−5を設置することで、無動力攪拌機構60−5を構成している。
【0101】
つまりこの第1凝集装置40−5は、動力付き攪拌機50−5(その第1攪拌部51−5の本体筐体)の内部に一体的に無動力攪拌機構60−5を組み込んだ構造となっており、これによって省スペース化と高効率化を図っている。
【0102】
無動力攪拌機構60−5は、第1攪拌部51−5を構成する上流側の配管内側壁に、円周状に等間隔に4枚の平板状の流体混合板59−5を設置することで構成されている。各流体混合板59−5は略二等辺三角形状である。なお、流体混合板59−5の形状としては、略二等辺三角形状以外の形状、枚数でも良いが、使用流体が汚泥なので、汚泥用にし渣等の引っ掛かりが少ない、ツバやピンのない形状が好ましく、構造は種々変更が可能である。
【0103】
第1凝集装置40−5をこのように構成すれば、第1凝集装置40−5に導入された混合汚泥は、まず無動力攪拌機構60−5によってその流れが乱されて無動力にて攪拌混合された後、動力付き攪拌機50−5の攪拌翼53−5の850rpm以上の高速回転によって、高速攪拌され、さらに混合される。
【0104】
この第1凝集装置40−5においても、動力付き攪拌機50−5の他に無動力攪拌機構60−5を設置したので、混合汚泥の攪拌効果がより大きくなり、その分、動力付き攪拌機50−5の駆動動力を小さくでき、省エネルギー化を図ることができる。この例の場合も、無動力攪拌機構60−5による混合汚泥の攪拌が、動力付き攪拌機50−5による高速攪拌の予備攪拌になるので、より効果的に混合汚泥を攪拌することができる。また動力付き攪拌機50−5の前段(上流側)に無動力攪拌機構60−5を設置したので、攪拌翼53−5による上流側への混合汚泥の戻り現象も防止できる。
【0105】
なおこの例では、流体混合板59−5を1列設けたが、流体の流れ方向に向かって間隔をあけて複数列設けても良い。また円周状に設置する流体混合板59−5の枚数は上述のように4枚に限られず、1枚以上の枚数であればよく、また流体混合板59−5の形状も種々の変更が可能であり、また必ずしも平板状でなくても良い。
【0106】
図7は第1凝集装置40−6の要部概略断面図である。同図に示す第1凝集装置40−6において、前記
図6に示す第1凝集装置40−5と相違する点は、流体混合板59−6によって構成される無動力攪拌機構60−6を、動力付き攪拌機50−6の下流側に設置した点のみである。つまり第1攪拌部51−6を構成する下流側の配管中に、平板状の流体混合板59−6を設置することで、無動力攪拌機構60−6を構成している。
【0107】
このように構成した場合、混合汚泥は、まず動力付き攪拌機50−6に導入されて攪拌翼53−6の高速回転により、高速で混合された後、無動力攪拌機構60−6に導入されて流体混合板59−6によって汚泥の流れ方向が変更させられることで、無動力にて攪拌される。両者の混合攪拌により、効果的な攪拌が実現できる。
【0108】
図8は第1凝集装置40−7の要部概略断面図である。同図に示す第1凝集装置40−7において、前記
図6に示す第1凝集装置40−5と相違する点は、流体混合板59−7によって構成される無動力攪拌機構60−7を、動力付き攪拌機50−7の第1攪拌部51−7を構成する配管とは別体として、第1攪拌部51−7の上流側に接続・設置した点である。
【0109】
即ちこの第1凝集装置40−7の場合、配管状の本体部67−7の内部に、平板状の流体混合板59−7を設置することで、単体の無動力攪拌機構60−7を構成している。本体部67−7の両端にはフランジが設けられ、その一端は第1攪拌部51−7の上流側端部に設けられたフランジとフランジ接続され、その他端は無動力攪拌機構60−7の上流側の配管とフランジ接続される。
【0110】
前記
図6に示す略T字型配管状の第1攪拌部51−5と流体混合板59−5の一体構造は、鋳物を製作する上で容易ではない。一方
図8に示す第1凝集装置40−7のように、流体混合板59−7を形成する無動力攪拌機構60−7を、第1攪拌部51−7とは別に製作すれば、第1攪拌部51−7及び無動力攪拌機構60−7の両者を何れも容易に製作でき、好適である。言い換えれば、標準の装置として生産されている動力付き攪拌機50−7に無動力攪拌機構60−7を接続するだけで、容易に第1凝集装置40−7を構成することができる。
【0111】
また、動力付き攪拌機50−7と無動力攪拌機構60−7とを別々に構成したので、例えば、流体混合板59−7が劣化してその取り換えが必要になった場合や、より効果的な構造を有する無動力攪拌機構に更新したいような場合に、無動力攪拌機構60−7の部分のみを入れ替えればよくなり、取り換え作業性が向上し、メンテナンスコストも低廉化できる。
【0112】
さらに、無動力攪拌による効果を増加させるために、流体混合板59−7を流れの方向に向かって複数列設置するような場合でも、前記単体の無動力攪拌機構60−7を直列に複数個接続するだけで良いので、必要に応じた構造変更が容易に行える。
【0113】
なお、
図8に示す第1凝集装置40−7では、動力付き攪拌機50−7の上流側に無動力攪拌機構60−7を設置したが、動力付き攪拌機50−7の下流側に無動力攪拌機構60−7を設置しても良いことは、前記
図7に示す第1凝集装置40−6の場合と同様である。更に動力付き攪拌機50−7の上流側及び下流側に無動力攪拌機構60−7を設置しても良い。
【0114】
図9は第1凝集装置40−8の要部概略断面図である。同図に示す第1凝集装置40−8において、前記
図8に示す第1凝集装置40−7と相違する点は、単体とした無動力攪拌機構60−8の構造である。
【0115】
即ちこの第1凝集装置40−8の場合、配管状の本体部67−8はフランジレスであって、その両端にフランジを設けていない。この例の場合、第1攪拌部51−8の上流側端部に設けられたフランジと、無動力攪拌機構60−8の上流側に接続する配管端部のフランジ間を、例えば図示しないボルトナットで連結することで、無動力攪拌機構60−8を挟持する構成となっている。このように構成しても、前記
図8に示す第1凝集装置40−7の場合と同様の効果を生じる。
【0116】
またこの第1凝集装置40−8の場合も、動力付き攪拌機50−8の下流側又は上流側及び下流側に無動力攪拌機構60−8を設置しても良い。
【0117】
図10は第1凝集装置40−9の側面図である。第1凝集装置40−9は、同図に示すように、動力付き攪拌機50−9の配管状の第1攪拌部51−9を、L字状に屈曲させ、これによってこの第1攪拌部51−9自体を無動力攪拌機構60−9としている。
【0118】
即ち、第1攪拌部51−9をL字状に屈曲することで、屈曲部分において汚泥の流れを乱す構成としている。つまりこの無動力攪拌機構60−9は、第1攪拌部51−9の筐体構造自体に無動力攪拌機能を持たせたものである。
【0119】
汚泥の流れ方向は、
図10の実線矢印のような上方向(上向流)でも良いし、点線矢印のような下方向(下降流)でも良いが、ガス溜まり防止のためには上向流が望ましい。即ち例えば、
図2に示す第1攪拌部51においては、攪拌翼53のシャフト55への付け根部分近傍に、ガスが溜まり易く、攪拌翼53を高速回転するとキャビテーションなどを起こす恐れがあるが、上記上向流に構成すれば、上記ガス溜まりが生じ易い部分に流体の流れが入り込み、ガスが持ち去られ易くなるので、ガス溜まりが生じにくくなる。
【0120】
以上のように無動力攪拌機構60−9を構成すれば、配管形状自体によって混合汚泥の流れ方向を変化させ、これによって内部構造を複雑化することなく攪拌効果を得ることができる。
【0121】
なおこの無動力攪拌機構60−9に、前記
図2,
図5に示す無動力攪拌機構60,60−4や、
図6,
図7,
図8,
図9に示す無動力攪拌機構60−5,60−6,60−7,60−8を組み合わせて設置しても良い。
【0122】
図11は第1凝集装置40−10の側面図である。第1凝集装置40−10において、前記
図10に示す第1凝集装置40−9と相違する点は、動力付き攪拌機50−10のL字配管状の第1攪拌部51−10の縦側部分の長さ寸法を長く形成し、その中に収納する攪拌翼53−10の枚数を2枚とした点である。
【0123】
攪拌翼53−10を多段にすれば、混合流体の攪拌混合が、より効果的に行える。なお
図10,
図11に示す攪拌翼53−9,10の回転軸は、流体の流れに平行に設置されるので、攪拌翼53−10を平板状ではなく、スクリュー構造とすること等も容易に行える。
【0124】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。