(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<回転電機の構成>
まず、
図1及び
図2を用いて、本実施形態に係る回転電機1の構成について説明する。
図1に示すように、回転電機1は、固定子2と、回転子3とを備え、回転子3を固定子2の内側に備えたインナーロータ型のモータである。また当該回転電機1は、エンコーダなどの機械的なセンサを用いずに、電気的な処理によってその磁極位置を検出、制御するいわゆるセンサレス制御用の3相交流モータである(センサレス制御については、後の
図3で詳述する)。固定子2は、回転子3と径方向に対向するようにフレーム4の内周面に環状の積層鉄心リング30を介して設けられている。この固定子2は、固定子鉄心5と、固定子鉄心5に装着されたボビン6と、ボビン6に巻回されたコイル線7(固定子巻線に相当)とを有している。ボビン6は、固定子鉄心5とコイル線7とを電気的に絶縁するために、絶縁性材料で構成されている。ボビン6の軸方向一方側(
図1中左側)には基板8が設けられており、この基板8に設けられた回路とボビン6に巻き回されたコイル線7とが、角棒状の2つのピン端子9を介して電気的に接続されている。コイル線7の巻き始め及び巻き終わりの端部7aは、対応するピン端子9に巻き付けられ、図示を省略する半田等によって固定されている。
【0012】
回転子3は、シャフト10の外周面に設けられている。シャフト10は、フレーム4の負荷側(
図1中右側)に設けられた負荷側ブラケット11に外輪が嵌合された負荷側軸受12と、フレーム4の反負荷側(負荷側の反対側。
図1中左側)に設けられた反負荷側ブラケット13に外輪が嵌合された反負荷側軸受14とにより回転自在に支持されている。また、回転子3は、回転子鉄心20と、回転子鉄心20に複数設けられてシャフト10を中心として放射状に配置された永久磁石21と、を備えている。
【0013】
固定子鉄心5は、円筒状のヨーク15と、このヨーク15の内周側で等間隔に配置されたティース18を複数(図示する例では12個)備え、各ティース18にコイル線7が集中巻きで巻回されたボビン6が装着される。
図2に示すように、それぞれのティース18に装着したボビン6のコイル線7の巻回層は、相対する側部同士が間隙19を空けて配置される。固定子2は、コイル線7が巻き回されたボビン6を固定子鉄心5に装着した後、当該固定子鉄心5を環状の積層鉄心リング30の内周に固定することにより組み立てられ、フレーム4の内周面に取り付けられる。その後、間隙19内に樹脂が圧入され、ボビン6やコイル線7等が樹脂でモールドされる。また、各ティース18は、円筒状のヨーク15より内周側に突出するように設けられた本体部18aと、その本体部18aの内周側先端に設けられ円周方向の幅が拡大された拡幅部18bと、を有する。隣り合う拡幅部18bどうしは、円周方向で先端が接触せずに離間している。また、固定子鉄心5全体は、この例ではいわゆる電磁鋼板からなる。
【0014】
<回転子鉄心の構成>
回転子鉄心20は、
図2に示すように、シャフト10を囲む円筒部20Aと、円筒部20Aの半径方向外側に設けられた複数(図示する例では10個)の磁極部20Bと、永久磁石挿入用穴20bと、漏洩磁束防止用穴20dと、を有する。円筒部20Aは、その内周側にシャフト10が貫通する中心穴20aを有する。
【0015】
永久磁石挿入用穴20bは、円筒部20Aの半径方向外側における磁極部20Bの相互間に軸方向(
図1中左右方向)に沿って貫通して設けられ、永久磁石21が軸方向に挿入されて接着剤により固定される。永久磁石挿入用穴20bは、中心穴20aの中心を基準として放射状に延びている。永久磁石挿入用穴20bの大きさ(軸方向から見た面積)は、永久磁石21の大きさ(軸方向直交断面積)とほぼ同じである。このように本実施形態の例においては、回転子3は永久磁石21が回転子鉄心20に埋め込まれた、いわゆるIPM型(Internal Permanent Magnet)で構成されている。また、各永久磁石21は、回転子鉄心20の磁極部20Bの相互間において、円筒部20Aの外周近傍より回転子鉄心20の外周近傍まで半径方向に沿って配置される、いわゆるI字型配置で設けられている。
【0016】
漏洩磁束防止用穴20dは、磁極部20Bのうち、半径方向内側の部位において永久磁石挿入用穴20bの相互間に設けられた、漏洩磁束防止用の空隙である。漏洩磁束防止用穴20dは、永久磁石21からの磁束が当該漏洩磁束防止用穴20dよりも半径方向内側へと漏れるのを抑制し、回転トルクの発生に寄与する磁束の減少を防止する。
【0017】
なお、漏洩磁束防止用穴20dは、半径方向外側に尖った横断面形状とするのが好ましい。このような形状とすることにより、その漏洩磁束防止用穴20dの両側に位置する永久磁石21からの磁束を、半径方向外側への尖り形状に沿ってそれぞれ円滑に回転子鉄心20の外周側へと導くことができる。本実施形態では、漏洩磁束防止用穴20dを略五角形とすることにより、上記効果を得ると共に、永久磁石21の磁束発生面である側面と、当該側面と対向する漏洩磁束防止用穴20dの面との間隙を狭くし、内周側への漏洩磁束の低減効果を高めることができる。
【0018】
<センサレス制御の具体例>
図3は、上記回転電機1に対してセンサレス制御により速度制御を行う回転電機制御装置300の構成の一例を表している。なお、
図3に示す制御ブロック図は伝達関数形式で表記されている。この
図3において、回転電機制御装置300は、減算器321と、ベクトル制御器322と、電圧制御器323と、電流検出器324と、矩形波電圧発生器325と、座標変換器326と、磁極位置演算器327と、速度演算器328とを備えている。
【0019】
この
図3では示していない上位制御装置から、回転電機1の駆動を制御するための磁束指令値と速度指令値ωr*が入力されている。速度指令値ωr*は、減算器321により後述する速度推定値ωr^との偏差が取られる。この偏差と磁束指令値がベクトル制御器322に入力される。ベクトル制御器322は、負荷状態によらず速度推定値ωr^が速度指令値ωr*に一致するように電動機電流の磁束成分(d軸成分)とトルク成分(q軸成分)とを定めて回転電機1の速度及び電流を制御するための電圧指令値を回転直交座標系(d−q軸座標系)における2相電圧指令値ΔVsd*、ΔVsq*で出力する。電圧制御器323は、入力された2相電圧指令値ΔVsd*、ΔVsq*に基づいて、回転電機1に3相駆動電圧を出力する。これにより回転電機制御装置300は、任意の速度とそれに対応するトルクで回転電機1を駆動制御できる(位置制御も行うが図示を省略)。
【0020】
また一方、図示していない上位制御装置から、磁極位置検出制御信号が矩形波電圧発生器325に入力される。磁極位置検出制御信号を入力された矩形波電圧発生器325は、任意に設定した時間周期の矩形波電圧(パルス波電圧)で電圧指令ΔVhと位相指令Δθhを出力する。これら電圧指令ΔVhと位相指令Δθhが、電圧制御器323内で上記の電圧指令値ΔVsd*に重畳され、回転電機1に出力する電圧の振幅と位相を操作する。
【0021】
電流検出器324は、回転電機1に入力される電流を3相iu、iv、iwそれぞれで検出する。座標変換器326は、これら3相電流値iu、iv、iwを、2相電流値isα、isβに変換する。これら2相電流値isα、isβは、u相を基準軸のα軸としてそれに直交するβ軸との直交座標系における各軸の電流値である。ここで、回転電機1のd軸とq軸のそれぞれのインダクタンスに偏差がある場合、すなわち、当該回転電機1が磁気突極性を有する場合、この2相電流値isα、isβの振幅は磁極位置θの情報を含んでいる。磁極位置演算器327は、上記矩形波電圧発生器325から出力された電圧指令ΔVhを参照しつつ、2相電流値isα、isβに基づいて回転電機1の磁極位置θを演算し出力する。この磁極位置θの演算手法については、公知の手法に従って行えばよく(例えば特開2010−172080号公報参照)、ここでは詳細な説明を省略する。
【0022】
磁極位置演算器327が出力する磁極位置信号θは、電圧制御器323に入力されるとともに、速度演算器328にも入力される。速度演算器328は、磁極位置θを微分演算することで回転電機1の推定速度ωr^を演算する。この速度推定値ωr^は、上記減算器321で速度指令値ωr*から減算して偏差を取ることで、速度フィードバック制御に利用される。そして、特に図示しないが、磁極位置θはU相を基準とした回転電機1の回転位置としてみなすことができ、上位制御装置内でこの磁極位置信号θを利用した位置フィードバック制御も行う。以上から、回転電機1の磁極位置θを高い精度で検出するためには、回転電機1の磁気突極性が高いことが要求される。
【0023】
なお、上記では、探査信号である矩形波電圧をd軸(電圧指令値ΔVsd*)に重畳し、q軸成分だけに負荷交流電流を入力(d軸成分には磁束成分だけ入力)したが、これに限定されない。負荷交流電流についてはq軸成分だけに入力すべきだが、探査信号はq軸あるいはd軸とq軸の両方に重畳入力してもよい。しかし、q軸に高周波電圧信号を重畳するとトルクに脈動を生じさせる原因となるため、できるだけd軸だけに探査信号を重畳入力するのが望ましい。また、上記回転電機1のd、q軸インダクタンスは、基本波電流に対するインダクタンスではなく、高周波重畳電圧信号とそれに対応する電流から定義される高周波インダクタンスのことであり、以後の説明でも高周波インダクタンスを単にインダクタンスと呼ぶ。
【0024】
<回転電機の軸方向直交断面における磁極配置>
次に、
図4用いて軸方向直交断面における固定子2及び回転子3それぞれの磁極配置について説明する。なお、上記
図2の軸方向直交断面における磁極配置はシャフト10の回転軸心に関して180°で点対称の配置となるため、
図4では、上方の半円部だけが図示され、下方の半円部は図示が省略されている(後述の
図5、
図7〜
図11においても同様)。上述のように本実施形態の回転電機1は、固定子2全体に12個のティース18を備え、回転子3全体に10個の磁極部20Bを備えた、いわゆる10P12S(P:ポール=磁極部数、S:スロット=ティース数)のスロットコンビネーション構成となっている。従ってこの
図4では、固定子2側の半円部で6個のティース18が示され、回転子3側の半円部で6個の永久磁石21に挟まれた5個の磁極部20Bが示されている。
【0025】
まず固定子2側では、隣り合う2つのティース18どうしがコイル線7をそれぞれ逆方向に巻回されている。そして、隣り合う2つのティース18が一つの組となって同一の電流相に対応する。また各組の単位で時計方向順にU、V、Wの電流相が配置されている。つまりシャフト10の回転軸心を原点とした機械的な静止座標において、配置が互いに60°ずれて隣り合う2組のティース18どうしは、電気的に120°ずれた位相差で交番磁界が発生する(但し、回転子3の回転に伴い後述するd軸とq軸の移動に応じて各相の振幅は変化する)。ティース18を12個(6組)備える本実施形態の固定子2においては、供給される3相交流の各相U、V、Wにそれぞれ2組のティース18が対応し、それらの2組の間は静止座標における180°ずれた位置に配置されている。
【0026】
次に回転子3側では、各永久磁石21が、略円周方向に沿って、隣り合う2つの永久磁石21どうしが互いに向かい合う方向(図中の矢印ブロックの方向)で着磁されている。これにより、N極どうしが向かい合う位置の磁極部20Bは、半径方向外側にN極の磁極を向かわせるN型磁極部20BNとなる。また、S極どうしが向かい合う位置の磁極部20Bは、半径方向外側にS極の磁極を向かわせるS型磁極部20BSとなる。これらN型磁極部20BNとS型磁極部20BSは5個ずつ存在し、回転子鉄心20の円周方向に沿って交互に配置される。このように隣り合う2つの永久磁石21から発生する磁束を1つの磁極部20Bへ集中させることにより磁力を高め、磁極部20Bとティース18が対抗した位置において、ティース18を十分に磁気飽和させることが可能となる。
【0027】
以上の磁極配置において、隣り合うS型磁極部20BSからN型磁極部20BNへ向かう方向でそれぞれの円周方向中央位置を渡るようにd軸が配置される。つまり、シャフト10の回転軸心よりN型磁極部20BNの中心方向に延びる軸がd軸となり、その磁極の中心方向と電気角において90度ずれた方向に延びる軸をq軸とする。したがって、隣り合う3つの永久磁石21の間の機械的な72°の角度範囲が、電気的に直交するdq軸座標における360°の電気角範囲に相当する。そして、dq軸座標は、静止座標において回転子3の回転中心に対し回転する回転直交座標として機能する。
【0028】
ここで上述したように、固定子2側における各相U、V、Wが静止座標において60°の間隔で配置され、回転子3側における各dq軸座標が静止座標において72°の間隔で配置されている。このように10P12Sの構成では、固定子2側と回転子3側との間に静止座標で12°に相当する設置間隔差が設けられている。
【0029】
<回転電機の軸方向直交断面における磁束分布>
図5は、以上のような磁極配置の回転電動機1における、磁束の発生分布を表している。なお、回転子3が回転動作している最中のうち、1つのN型磁極部20BNの中心(及びそれを跨ぐq軸)がV相とW相の間の中間に位置するとともに、1つの永久磁石21の中心(及びそれを跨ぐd軸)がU相の中央位置に一致している状態を示している(後述の
図7〜
図11においても同様)。また、三相交流電動機では、U,V,Wの各相に互いに120°の位相差を持つ交流電流を印加するが、
図5では、U相の電流瞬時値が0であり、V相からW相に瞬時電流が流れている状態の磁束分布を示している。
【0030】
以下、本発明の原理説明を
図5の状態の磁束分布を用いて説明する。なお、
図5に示すように、1相コイルの磁石磁束が最大となる固定子2と回転子3の配置関係は機械角で12°毎(電気角60°毎)に現れるが、その間の位置関係に対しても同様に本発明の原理が適用できる。ここでは説明の簡単なため、
図5の状態の磁束分布を用いる。
【0031】
まず固定子2側において、各相に対応する同一組の2つのティース18に巻回するコイル線7に対応する相の交流電流を流した場合、その組の2つのティース18とヨーク15を通過する経路で交番磁界(図中の細破線矢印参照)が循環するように発生する。ただし本実施形態の例では、上述したように隣り合う拡幅部18bの先端どうしが円周方向で離間している。このため、上記交番磁界による生じる交番磁束は、半径方向で近接する回転子3側の磁極部20Bを通過して循環する。
【0032】
また一方、回転子3側の各磁極部20BN、20BSの外周側先端から半径方向に発生する一定磁束(図中の太実線矢印参照)が、半径方向に対向する各ティース18を通過して循環する。この各磁極部20BN、20BSからの一定磁束が各ティース18を通過する通過経路としては、主に2通りある。1つ目の通過経路は、隣り合う2つのティース18の本体部18aとヨーク15を循環するよう通過する本体部通過経路である。2つ目の通過経路は、1つのティース18の拡幅部18bだけを通過して漏れるように循環する拡幅部通過経路である。
【0033】
そして固定子2側の各ティース18には、上述したように各コイル線7に流れる交流電流によって発生する交番磁束と、半径方向に対向する各磁極部20BN、20BSから流入する一定磁束とを合成した磁束が通過する。ここで、交流電流による交番磁束と永久磁石21による一定磁束の方向が一致する場合には、ティース18内の磁気飽和が強まる。また、交番磁束と一定磁束の方向が逆向きの場合には、ティース18内の磁気飽和が弱まる。
【0034】
一方、瞬時電流値が0となっているU相に対応する1組のティース18においては交番磁束が発生せず、当該U相の中央位置に一致する永久磁石21の両隣の2つの磁極部20BN、20BSからの一定磁束だけがティース本体部18aの内部を通過する。なお、永久磁石21の円周方向位置が、隣り合う拡幅部18bの先端の間に位置しているため、拡幅部通過経路を通過する漏れ磁束はほとんどなく、一定磁束が通過する経路は上記の本体部通過経路だけとなる。このように、当該U相の中央位置に一致する永久磁石21を跨ぐ配置のd軸、つまり瞬時電流値が0となっている相に一致するd軸方向のティース本体部18aが、他のティース18と比較して最も磁気飽和し易い。
【0035】
一方、V相とW相の間の中間に位置するN型磁極部20BNからの一定磁束は、V相側とW相側に分岐し、さらにそれぞれ本体部通過経路と拡幅部通過経路に分岐する。ここで、当該N型磁極部20BNの両隣の2つの永久磁石21は、それぞれの円周方向位置が拡幅部18bの略中心位置に位置する。このため、V相側とW相側にそれぞれ分岐する一定磁束のうち、本体部通過経路よりも拡幅部通過経路の方に磁束が集中しやすくなる(漏れ磁束となる割合が大きい)。つまり、V相とW相の間を跨ぐ配置のq軸周辺では、ティース18全体のうち内周側の拡幅部18bでは磁束密度が高くなり、本体部18aでは磁束密度が低くなる。
【0036】
また、V相側の本体部通過経路を通過する一定磁束については、V相で発生する交番磁束と通過方向が一致するため、ティース本体部18a内の磁気飽和を強める傾向がある。しかし、V相側の拡幅部通過経路を通過する一定磁束(つまりV相側への漏れ磁束)については、V相で発生する交番磁束と通過方向が逆向きとなるため、ティース18の拡幅部18b先端の磁気飽和を弱める傾向がある。
【0037】
また、W相側の本体部通過経路を通過する一定磁束については、W相で発生する交番磁束と通過方向が逆向きとなるため、ティース本体部18a内の磁気飽和を弱める傾向がある。しかし、W相側の拡幅部通過経路を通過する一定磁束(つまりW相側への漏れ磁束)については、W相で発生する交番磁束と通過方向が一致するため、ティース18の拡幅部18b先端の磁気飽和を強める傾向がある。
【0038】
V相、W相の両方の各ティース拡幅部18bにおいても、一定磁束と交番磁束の向きが一致する磁束を強める箇所18b1と磁束を弱める箇所18b2が存在する。磁束を弱める箇所18b2は負荷電流が大きくなるほど、磁気飽和が緩和されて、磁束が通りやすい領域となる。
【0039】
以上を総合すると、d軸方向のティースは本体部18aが全体的に磁気飽和し、V相とW相の間を跨ぐ配置のq軸近傍、すなわち、瞬時電流値が流れている2つの相の間を跨ぐq軸方向近傍のティース18では、拡幅部18bが磁気飽和する。さらに、負荷電流をq軸に印加したとき、磁束を強める箇所18b1と磁束を弱める箇所18b2が発生する。
【0040】
<本実施形態の特徴>
回転子3の磁気突極比をρ、q軸のインダクタンスをLq、d軸のインダクタンスをLdとすると、
ρ=Lq/Ld ・・・(1)
の関係となる。上述したように、センサレス制御において回転電機1の磁極位置θを高い精度で検出するためには、当該回転子3における磁気突極比ρが高いことが要求される。
【0041】
ここで、インダクタンスLは、磁束φと電流iより、式(2)で定義され、電流に対する発生磁束が多いほどインダクタンスが大きくなる。
φ=Li ・・・(2)
また、電圧v、電流iとインダクタンスLの関係は式(3)で表されるため、交流電圧に対する交流電流が大きいほどインダクタンスは小さくなる。
v=dφ/dt=Ldi/dt ・・・(3)
以上のインダクタンスの性質を利用し、センサレス制御では、矩形波電圧発生器325から出力される矩形波電圧(高周波電圧信号)を2相電圧指令値ΔVsd*、ΔVsq*に重畳し、d軸とq軸の間のインダクタンス偏差により生じる2相電流値isα、isβの振幅偏差に基づいて磁極位置θを推定する。
【0042】
本実施形態の例では、回転子3にd軸とq軸がそれぞれ5カ所配置されており、それぞれティース18や交番磁束との配置関係によってインダクタンスが異なる。そのうち、瞬時電流値が0となっている相(U相)に一致するd軸方向のティース18が最も磁気飽和し易く、すなわち最もインダクタンスの小さいd軸となる。また、瞬時電流値が流れている2つの相(V相、W相)の間を跨ぐ配置のq軸方向のティース18が最も磁気飽和しにくく、すなわち最もインダクタンスの大きいq軸となる。回転子3全体におけるd軸インダクタンスLd((1)式の分母)とq軸インダクタンスLq((1)式の分子)は、それぞれ12コイルによるd軸インダクタンスの総量、12コイルによるq軸インダクタンスの総量となる。
【0043】
回転子3に回転トルクを与えるには、q軸成分の負荷電流だけを印加させればよい(d軸成分はトルクには影響しない)。しかし、q軸成分の負荷電流を大きく増加すると、ロータコアの磁気飽和が大きくなり、ロータコア形状に起因する磁気突極比ρが低下する。すなわち、回転電機1の磁極位置θの検出精度が低下してしまう。
【0044】
これに対し、回転電動機1の磁気突極比ρを高めるに、ティース18の磁気飽和を利用することで、磁気突極比ρを高めることができる。すなわち、瞬時電流値が0となっている相(U相)に一致するd軸のインダクタンスをさらに小さくし、瞬時電流値が流れている2つの相(V相、W相)の間を跨ぐ配置のq軸のインダクタンスをさらに大きくすればよい。
【0045】
このために本実施形態では、固定子2の各コイル線7の無通電状態(以下適宜「無負荷状態」ともいう)において、磁極部20Bと半径方向に対向したティース18が永久磁石21からの一定磁束のみにより実質的に磁気飽和するよう、各ティース18が構成される。その具体的な手段として、磁極部20Bと対向したティース18が実質的に磁気飽和するように、各ティース18の円周方向の幅寸法が設定される。
【0046】
ここで、一般的にティース18を構成する電磁鋼板は、
図6のB−H曲線に示すような磁気飽和特性を有している。すなわち、電磁鋼板にかける磁界強度を0から次第に増加させた場合、磁界強度が低いうちはそれにほぼ比例するように磁束密度が上昇する。しかし、磁界強度をある程度以上に増加させると、磁束密度の上昇率は低下し、最後にはほとんど磁束密度が上昇しなくなる。本実施形態では、磁束密度が1.6T(テスラ)以上となった状態を、「実質的に磁気飽和」した状態とする。なお、実質的に磁気飽和した状態の磁束密度はこの値に限定されるものではなく、ティース18を構成する材質等に応じて適宜変更される。
【0047】
また、ティース18と磁極部20とが「半径方向に対向」した状態は、ティース18のうち少なくともティース本体部18aが磁極部20Bと半径方向に対向した状態を言う。具体的には、本体部18aが円周方向における磁極部20の角度範囲内にあることを言う。
【0048】
これにより、瞬時電流値が0となっている相(U相)に一致するd軸では、対向するティース本体部18aが永久磁石21からの一定磁束線だけでほぼ磁気飽和して(磁束の通過余裕をなくして)インダクタンスを最小にできる。すなわち、回転子3全体のd軸のインダクタンスの総量Ldを小さくできる。また、瞬時電流値が流れている2つの相(V相、W相)の間を跨ぐ配置のq軸では、対向するティース本体部18aが磁気飽和を弱めてインダクタンスを増加できる(この点については後の
図7〜
図11で詳述する)。すなわち、回転子3全体のq軸のインダクタンスの総量Ldを大きくできる。以上により、上記(1)式の右辺の分母(Ld)を小さくし、右辺の分子(Lq)を大きく取れるため、回転子3の磁気突極比ρを高めることができる。
【0049】
<ティース幅の変更による磁気突極比への具体的な影響>
図7〜
図11は、上述したティース幅の変更による磁気突極比ρへの影響を具体的に示している。
図7〜
図11それぞれの(a)図は本実施形態に対応しており、各ティース本体部18aの円周方向幅がW1に設定されている。W1は、無負荷状態において磁極部20Bと対向したティース18が永久磁石21からの一定磁束のみにより実質的に磁気飽和するような値に設定されている。一方、
図7〜
図11それぞれの(b)図は比較例に対応しており、各ティース本体部18aの円周方向幅が上記W1よりも広いW2に設定されている。この比較例では、無負荷状態において磁極部20Bと対向したティース18は、永久磁石21からの一定磁束のみによって実質的に磁気飽和しない。また、
図7は固定子2に交流電流を全く供給していない無負荷状態の磁束分布を示し、
図8はq軸成分(トルク成分)の負荷交流電流(負荷電流に相当)を定格の50%供給した状態、
図9は負荷交流電流を定格の100%供給した状態、
図10は負荷交流電流を150%供給した状態、
図11は負荷交流電流を200%供給した状態をそれぞれ示している。なお上記各図には、
図5と同様にインダクタンスが最小となるd軸と、インダクタンスが最大となるq軸が示されている。
【0050】
上述したように比較例では、各ティース本体部18aの円周方向の幅寸法W2が比較的大きく設定されている(
図7(b)〜
図11(b)参照)。そのため、瞬時電流値が0となっているU相に一致するd軸では、磁極部20BN、20BSに対向するティース本体部18aが磁気飽和に至っておらず、さらに磁束が通過できる余裕がある。このため、負荷交流電流を増加した場合には、他のV相、W相の交番磁束から影響を受けてd軸のインダクタンスが変動する。つまり、上記(1)式中にある回転子3全体のd軸インダクタンスの総量Ldが変動しやすくなる。
【0051】
これに対し、上述したように本実施形態では、各ティース本体部18aの円周方向の幅寸法がW1に設定されている(
図7(a)〜
図11(a)参照)。そのため、瞬時電流値が0となっているU相に一致するd軸では、磁極部20BN、20BSに対向するティース本体部18aがすでに永久磁石21からの一定磁束線だけで実質的に磁気飽和している。つまり、さらなる磁束の通過余裕がないため、負荷交流電流を大きく増加させても他のV相、W相の交番磁束から影響を受けず、d軸のインダクタンスは小さいまま維持される(磁束密度が大きいまま維持される)。つまり、負荷交流電流を増加させても、上記(1)式中にある回転子3全体のd軸インダクタンスの総量Ldが小さいまま維持される。
【0052】
また一方、比較例では、負荷交流電流を0%から200%に順次大きくすると、V相とW相の全体においても磁気飽和が進んでしまい、それらの間を跨ぐ配置のq軸のインダクタンスが総合的に低下する。
【0053】
これに対し、本実施形態では、負荷交流電流を0%から200%に順次大きくすると、瞬時電流値が流れているV相とW相の間を跨ぐ配置のq軸のインダクタンスは次第に増加する。これは、負荷交流電流を大きくするに従い、図中のP1、P2、P3で示すティース拡幅部18bの先端において磁気飽和を弱める効果が大きくなるためである。前述の
図5に示すように、P1の箇所は、当該q軸の周囲で拡幅部通過経路を通過する一定磁束(漏れ磁束)が交番磁束と逆向きになることで、磁気飽和が弱められる箇所である。また、P2の箇所は、当該q軸の周囲でW相側の本体部通過経路及び拡幅部通過経路を通過する一定磁束が交番磁束と逆向きになることで、磁気飽和が弱められる箇所である。また、P3の箇所は、W相側の本体部通過経路を循環して磁極部20BSへ戻る一定磁束が交番磁束と逆向きになって磁気飽和が弱められる箇所である。このように、負荷交流電流を大きくするに従い、V相とW相の全体において磁気飽和が進むものの、上記P1、P2、P3の箇所では磁気飽和が大きく弱められるので、その結果当該q軸におけるインダクタンスが総合的には増加する(
図7(a)〜
図11(a)参照)。これにより、上記(1)式中にある回転子3全体のq軸インダクタンスの総量Lqを、負荷交流電流の増加に合わせて増大させることができる。
【0054】
なお、比較例においても、負荷交流電流を大きくするに従い上記P1、P2、P3に対応する箇所において磁気飽和を弱める現象が見られる。しかし、本実施形態の場合は、各ティース本体部18aの円周方向の幅寸法W1がW2よりも小さく設定されている分だけ、d軸方向のティース本体部18aで磁気飽和が進んでおり、d軸磁束とq軸磁束による相互的な干渉を受けにくい。以上から、比較例では負荷交流電流を増加すると磁気突極比ρが低下しやすいが、本実施形態では負荷交流電流(モータ負荷)を増加しても磁気突極比ρを大きく取ることができる。
【0055】
比較例においては、ティース18の幅寸法が大きく、永久磁石21による一定磁束のみでは、磁極部20BN、20BSに対向するティース本体部18aを実質的に磁気飽和させることができない。このような場合には、固定子2の各コイル線7にトルクに寄与しない正のd軸電流を流すことで、d軸方向のティース18を実質的に磁気飽和させることが可能となり、本実施形態と同様の磁気突極比が得られる。
【0056】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の回転電機1は、固定子鉄心5が、コイル線7の無通電状態において磁極部20Bと半径方向に対向したティース18が永久磁石21により実質的に磁気飽和するように構成される。これにより、d軸インダクタンスLdを小さく抑えることができる。
【0057】
一方、q軸方向のティース18においては先端部のみが磁気飽和し、永久磁石21による磁束と負荷交流電流による磁束の向きが一致する部位の磁気飽和が強くなるが、両磁束の向きが反対の部位(P1、P2、P3)は磁気飽和が弱くなる。磁気飽和が弱くなった部分においては磁束が通りやすくなるので、インダクタンスが増加する。本実施形態では、負荷交流電流を大きくするとq軸方向にあるティース18の先端部の磁気飽和を緩和することができるので、高負荷時にq軸インダクタンスLqを増加させることができる。
【0058】
以上により、回転電機1の体格を大型化することなく、高負荷時でも磁極突極比ρを確保することが可能となる。その結果、負荷トルクを大きくした場合でも精度の高い位置推定を行うことができる。
【0059】
図12は、本実施形態において、負荷電流をq軸に与えた状態(V相からW相に電流を印加した状態)で、探査信号を重畳入力した場合の高周波インダクタンスのシミュレーション結果を表している。なお、図の横軸は、dq軸座標の電気角範囲180°に渡る重畳電圧位相であり、0°がd軸、90°がq軸に相当する。また図の縦軸は、高周波インダクタンスであり、高周波電圧信号により発生する高周波磁束の通りやすさに相当する。
【0060】
この
図12において、いずれの負荷(交流負荷電流の大きさ)で作動させた場合でも、d軸の高周波インダクタンスは正弦波状の曲線で変化し、それらの位相がほぼ一致している。この正弦波のうちの最小値に対する最大値の比(最大値/最小値)が磁極突極比ρに相当する。つまり正弦波の振幅が大きいほど磁極突極比ρが高い。本実施形態の場合には、図示するように、無負荷時でも十分な磁極突極比ρを確保できる上、負荷が大きくなるほど磁極突極比ρが高くなることが分かる。
【0061】
これに対して
図13は、上述の比較例における同等の図である。この
図13においては、無負荷時の磁気突極比ρが低く、負荷を大きくしても本実施形態ほど高くならない。さらにこの比較例では、負荷が大きいほど正弦波の位相がずれてしまう。これは、d軸方向のティース18が十分に磁気飽和しておらず、q軸電流による磁束がd軸の磁束に影響を与えてしまうためである。このように、d軸インダクタンスの正弦波曲線の位相が変動すると、回転電機1の磁極位置θの検出精度が大きく損なわれる。以上より、本実施形態の方が、比較例よりも磁極突極比ρを高く確保でき、回転電機1の磁極位置θを高い精度で検出できる。
【0062】
また、本実施形態では特に、ティース18が本体部18aと拡幅部18bとを有する。ティース18が円周方向の幅を拡大した拡幅部18bを有することにより、固定子2と回転子3とが対向する面積が増大され、固定子2と回転子3との間の磁束の流れを円滑にできる。
【0063】
また、本実施形態では特に、永久磁石21が回転子鉄心20に埋め込まれて設けられる(IPM)。これにより、永久磁石21が回転子鉄心20の表面に設けられた回転電機(SPM)に比べ、磁石トルクに加えてリラクタンス・トルクを回転力とすることが可能となるので、小型且つ高トルクの回転電機を実現できる。
【0064】
また、本実施形態では特に、永久磁石21が、回転子鉄心20の磁極部相互間において、円筒部20Aの外周近傍より回転子鉄心20の外周近傍まで半径方向に沿う配置、いわゆるI字型配置で設けられている。このような配置構成とすることにより、永久磁石21の投入量を増大し、磁束を磁極部20Bに集中させることができる。
【0065】
また、本実施形態では特に、コイル線7がティース18に集中巻きにより巻回される。一般に、磁極突極比ρを高くする場合には分布巻きが採用されるが、この場合には回転電機1の体格が大きくなる。本実施形態では、d軸方向のティース18を磁気飽和させることにより磁極突極比ρを確保することができるので、コイル線7に集中巻きを採用することが可能となる。したがって、回転電機1を小型化することができる。
【0066】
また、本実施形態では特に、回転電機制御装置300がd軸に高周波電圧信号を付与し、q軸に負荷電流を付与するように構成される。これにより、高周波電圧信号を付与した際のインダクタンスの変化を利用して、回転電機1の磁極位置θを推定することができる。そして、回転電機1は高負荷時でも磁極突極比ρを確保することができる。したがって、回転電機1の負荷トルクを大きくした場合でも精度の高いセンサレス制御を行うことが可能な回転電機制御装置300を実現できる。
【0067】
永久磁石21による一定磁束のみでは、磁極部20BN、20BSに対向するティース本体部18aを実質的に磁気飽和させることができない場合、固定子2の各コイル線7にトルクに寄与しない正のd軸電流を流すことで、d軸方向のティース18を実質的に磁気飽和させることが可能となり、本実施形態と同様の磁気突極比ρが得られ、精度の高いセンサレス制御を行うことが可能な回転電機制御装置300を実現できる。
【0068】
<変形例>
なお、以上説明した実施形態は、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態では、隣り合う2つのティース18の拡幅部18bどうしが円周方向で先端が離間するよう構成されていたが、これに限られない。例えば、上記
図2に対応する
図14に示すように、拡幅部118bは、隣り合うティース118同士で相互に連結され、固定子鉄心105のヨーク115及び各拡幅部118bがティース118ごとに分割可能に構成されてもよい。
【0070】
本変形例のように、ティース118の拡幅部118bが隣り合うティース118同士で相互に連結された構造である場合、仮にd軸方向のティース118が磁気飽和しない構成とすると、隣り合うティース118間で漏れ磁束が生じ、d軸の漏れインダクタンスの増大により磁極突極比ρが小さくなる。このため、拡幅部118bの連結を分断する必要が生じる。
【0071】
一方、上記実施形態のようにd軸方向のティース118を磁気飽和させる場合、ティース先端まで磁気飽和させることで、隣り合うティース118間での漏れ磁束を低減できる。これにより、d軸の漏れインダクタンスが増大するのを防止できるので、磁極突極比ρを確保できる。その結果、本変形例のように、ヨーク115及び拡幅部118bがティース118ごとに分割可能に構成された固定子鉄心105を用いることが可能となるので、コイル線7を集中巻き且つ高占積率とすることが可能となり、小型且つ高トルクの回転電機101を実現できる。
【0072】
また例えば、上記実施形態では、10P12Sのスロットコンビネーション構成を一例として説明したが、この他のスロットコンビネーション構成でも各相U、V、Wどうしの配置間隔角度や各dq軸座標の配置間隔角度が変わるだけで、各相U、V、Wと各dq軸座標との間の配置関係性は変わらないので、同様の効果が得られる。
【0073】
また例えば、上記実施形態では、各ティース18の円周方向の幅寸法を適宜に設定することで、無負荷時に磁極部20Bと対向したティース18が永久磁石21からの磁束のみにより実質的に磁気飽和するようにしたが、これに限定されない。例えば、回転子3が備える永久磁石21の磁力を高める、あるいは、ティース18の幅寸法と永久磁石21の磁力の両方を適宜に設定するなどの手法をとってもよい。これらの手法が、各請求項記載の固定子巻線の無通電状態において磁極部と半径方向に対向したティースを実質的に磁気飽和させる手段に相当する。
【0074】
また例えば、上記実施形態では、回転電機1が回動型モータである場合を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、特に図示しないが、固定子に対して可動子が直線的に移動する直動型モータ(いわゆるリニアモータ)に本実施形態の手法を適用してもよい。この場合には、固定子と可動子のいずれか一方が永久磁石による磁極部を備え、他方で磁界を発生するコイル線とティースを備えるが、いずれの場合でも無負荷時に磁極部と対向したティースが永久磁石からの磁束のみにより実質的に磁気飽和するように構成すればよい。
【0075】
また以上では、回転電機1がモータである場合を一例として説明したが、本実施形態は、回転電機が発電機である場合にも適用することができる。
【0076】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0077】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。