特許第6209387号(P6209387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209387
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170925BHJP
   F21V 29/74 20150101ALI20170925BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20170925BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170925BHJP
【FI】
   F21S8/10 160
   F21V29/74
   F21S8/10 151
   F21W101:10
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-161580(P2013-161580)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-32472(P2015-32472A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 雄治
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−098185(JP,A)
【文献】 特開2011−081967(JP,A)
【文献】 特開2000−124508(JP,A)
【文献】 特開2009−245643(JP,A)
【文献】 特開2006−156440(JP,A)
【文献】 特開2011−156440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21V 29/74
F21W 101/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される灯具であって、
発光部、第1端子、および第2端子を有する発光素子と、
第1の面に前記発光素子が搭載された回路基板と、
前記回路基板の前記第1の面に形成されており、前記発光素子の前記第1端子と電気的に接続されている第1導電回路パターンと、
前記回路基板の前記第1の面に形成されており、前記発光素子の前記第2端子と電気的に接続されている第2導電回路パターンと、
前記発光部から出射された光を、前記発光素子の前方を含む方向へ反射するリフレクタとを備え、
前記第1端子は前記発光部に給電し、
前記第2端子は前記発光部を支持し、
前記第1端子と前記第2端子は前後方向に配列され、
前記第2端子は、前記第1端子の後方に配置されており、
前記リフレクタは、前記第2導電回路パターン上に設置されている、灯具。
【請求項2】
前記第1端子と前記発光部は、金ワイヤを介して電気的に接続されている、
請求項1に記載の灯具。
【請求項3】
前記発光素子と前記回路基板の前端までの距離は、前記発光素子と前記回路基板の後端までの距離よりも短い、請求項1または2に記載の灯具。
【請求項4】
前記発光部は、電極部を形成するための切欠き部を有しており、
前記切欠き部は、前記回路基板の前端に近い側に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の灯具。
【請求項5】
前記第1の面と反対側である前記回路基板の第2の面に装着された放熱部材を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の灯具として、光源としての発光素子が回路基板の第1の面上に搭載され、当該回路基板の第2の面上に金属板が固定されたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。金属板は、第2の面に接触するように配置されており、発光素子から発生した熱を放散する。放熱が適切になされることにより、発光素子の動作が安定し、良好な配光特性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−146817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光源としての発光素子が回路基板に搭載された車両用灯具において、配光特性と放熱性をさらに向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目標を達成するために、本発明がとりうる一態様は、車両に搭載される灯具であって、
発光部、第1端子、および第2端子を有する発光素子と、
第1の面に前記発光素子が搭載された回路基板と、
前記発光部から出射された光を、前記発光素子の前方を含む方向へ反射するリフレクタとを備え、
前記第1端子は前記発光部に給電し、
前記第2端子は前記発光部を支持し、
前記第1端子と前記第2端子は前後方向に配列され、
前記第2端子は、前記第1端子の後方に配置されている。
【0006】
リフレクタによる反射光が遮られるのを防止するため、発光素子の前方に配置される要素部品は最少限とされることが望ましい。換言すると、灯具の要素部品は発光素子の後方に配置される傾向にあるため、発光素子の後方には比較的広いスペースを確保しやすい。上記のような構成によれば、第2端子と接続される回路パターンの面積を、発光素子の後方のスペースを利用して大きくすることが容易となる。発光に伴って発光部から発生する熱は、発光部を支持する第2端子を通じ、第2端子に接続された回路パターンを通じて放散される。この回路パターンの面積を大きく確保できるため、放熱効率を向上させることが可能である。これにより発光素子の動作がより安定し、良好な配光特性を維持することが可能である。
【0007】
前記発光素子と前記回路基板の前端までの距離は、前記発光素子と前記回路基板の後端までの距離よりも短い構成としてもよい。
【0008】
このような構成によれば、回路基板の前後方向の寸法が一定である条件下において、第2端子に接続された回路パターンの面積を大きく確保することが可能である。一方、第2端子に接続された回路パターンの前後方向の寸法が一定である条件下において、発光素子と回路基板の前端との距離を最小限にできるため、灯具の小型化が可能である。
【0009】
前記発光部は、電極部を形成するための切欠き部を有しており、前記切欠き部は、前記回路基板の前端に近い側に配置されている構成としてもよい。
【0010】
車両に搭載される灯具は、車両の左側に配置されるものと、車両の右側に配置されるものとが対をなすのが一般的である。当該一対の灯具において、発光素子が搭載される回路基板は、左右対称の構成を有するように形成される。一方、電極部を形成するために切欠き部を有する発光素子のように、発光面の形状が非対称性を有する場合であっても、同じ発光素子が左右の灯具に用いられることが一般的である。上記の構成によれば、発光素子の第1端子と第2端子が前後方向に配列されているため、切欠き部の位置を左右の回路基板の間で一致させることができる。したがって、左右の灯具に同一の発光素子を使用できることにより部品コストを抑制しつつ、両者の間に生じる配光特性の相違を抑制することができる。
【0011】
前記第2端子に接続された回路パターン上に、前記リフレクタが設置されている構成としてもよい。
【0012】
この場合、リフレクタの設置に必要なスペースを、放熱に寄与する回路パターンの形成スペースとして有効活用できる。大面積の回路パターンにより放熱効率が向上するため、発光素子の動作が安定し、良好な配光特性を維持することが可能である。
【0013】
前記第1の面と反対側である前記回路基板の第2の面に装着された放熱部材を備える構成としてもよい。
【0014】
発光素子やリフレクタが配置されている回路基板の第1の面の反対側である第2の面は、放熱部材を装着するためのスペースを確保しやすい。したがって、放熱部材が放熱に寄与する面積を大きく確保することができる。これにより放熱効率がさらに向上するため、発光素子の動作が安定し、良好な配光特性を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る灯具ユニットを備える前照灯を示す図である。
図2】灯具ユニットが備える発光素子の構成を示す図である。
図3】灯具ユニットが備える回路基板を下方から見た図である。
図4】左右の前照灯が備える一対の回路基板を下方から見た図である。
図5】比較例に係る一対の回路基板を下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照しつつ本発明に係る実施形態の例について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。また以降の説明に用いる「右」および「左」は、運転席から見た左右の方向を示している。
【0017】
図1は、車両に搭載される照明装置の一例としての前照灯装置1の一部を、垂直面で切断して左側方から見た状態を示す図である。前照灯装置1は、車両の前部左側に搭載され、前方を照明するための装置である。前照灯装置1は、ハウジング2と、当該ハウジング2に装着されて灯室3を区画する透光カバー4とを備えている。透光カバー4は、封止接着剤を介してハウジング2に装着されている。ハウジング2は、例えば樹脂からなる。透光カバー4は、例えば透明な樹脂からなる。
【0018】
灯室3内には、灯具の一例としての灯具ユニット10が配置されている。灯具ユニット10は、発光素子11、回路基板12、リフレクタ13、放熱シート15、および放熱板16を備えている。
【0019】
発光素子11は、回路基板12の第1の面12aに搭載されている。回路基板12は、例えば樹脂からなる。本実施形態において発光素子11は、白色発光ダイオードである。本実施形態において第1の面12aは下方を向いている。
【0020】
リフレクタ13は、放物面を基調とする形状の内面13aを有している。内面13aは反射面とされている。リフレクタ13は、内面13aが発光素子11に対向するように、回路基板12の第1の面12aの側に配置される。発光素子11から出射された光は、リフレクタ13の内面13aにより前方を含む方向へ反射され、透光カバー4を通じて前照灯装置1の前方に至る。これにより、前照灯装置1の前方における所定の領域が照明される。
【0021】
リフレクタ13は、例えば金属あるいは樹脂からなる。後者の場合、その表面にアルミニウムなどの金属が蒸着されることにより、上記の反射面が形成される。回路基板12の第1の面12aとリフレクタ13の間には、絶縁膜14が形成されている。絶縁膜14は、第1の面12aに形成されて導電性を有する回路パターン(詳しくは後述する)と、リフレクタ13の金属部分との間に絶縁性を確保する。
【0022】
回路基板12の第1の面12aの反対側である第2の面12bの側には、放熱シート15を介して放熱板16が装着されている。放熱シート15と放熱板16(放熱部材の一例)は、発光素子11の発光に伴い発生する熱を放散する。放熱シート15は、例えばシリコンやアクリルからなり、高い熱伝導性を有している。放熱板16は、所望の形状を有するように、金属板を折り曲げ加工することにより形成されている。放熱シート15は柔軟性を有しているため、放熱板16の密着性が高まり、回路基板12から放熱板16への良好な熱伝達が可能となる。放熱シート15は、放熱グリースで代えてもよい。
【0023】
図2は、発光素子11の構成を模式的に示す図である。図2の(a)は、発光素子11を下方から見た平面図である。図2の(b)は、図2の(a)における線IIB−IIBに沿う断面図である。
【0024】
発光素子11は、ダイオードチップ110(発光部の一例)、第1リードフレーム111(第1端子の一例)、第2リードフレーム112(第2端子の一例)、および樹脂封止部113を備えている。ダイオードチップ110は、アノード電極部110a、カソード電極部110b、および蛍光体110cを備えている。
【0025】
第1リードフレーム111と第2リードフレーム112は、例えば金属などの導電性材料からなる。ダイオードチップ110は、第2リードフレーム112に搭載されている。より具体的には、カソード電極部110bが第2リードフレーム112と電気的に接続されている。発光面を形成する蛍光体110cの一部に切欠き110dが形成され、アノード電極部110aが露出している。当該部分により非発光部が形成されている。アノード電極部110aと第1リードフレーム111は、金ワイヤ114を介して電気的に接続されている。
【0026】
樹脂封止部113は、ダイオードチップ110、第1リードフレーム111、第2リードフレーム112、および金ワイヤ114を覆うように成形されている。樹脂封止部113は、蛍光体110cを通じて出射される光が通過可能に透明とされている。
【0027】
図3は、回路基板12を第1の面12aの側から見た外観を示す平面図である。第1の面12a上には、上記第1リードフレーム111と第2リードフレーム112が半田付けされる領域を除き、ほぼ全面に絶縁膜14が形成されている。なお第2の面12bにも絶縁膜14が形成されていてもよい。
【0028】
第1の面12aには、4つの発光素子211、311、411、511が搭載されている。これら4つの発光素子の各々は、図2を参照して説明した発光素子11と同一の構造を有している。必要に応じて、これら4つの発光素子を「発光素子11」と総称する。
【0029】
本実施形態においては、発光素子211、311は、灯具ユニット10が搭載される車両の前方にハイビームパターンを形成する光源として使用される。また発光素子411、511は、当該車両の前方にロービームパターンを形成する光源として使用される。ハイビームパターンは、車両の前方の広範囲を比較的遠方まで照明する配光パターンである。ロービームパターンは、例えば水平線よりも下方における車両の比較的近距離前方を照明する配光パターンである。
【0030】
第1の面12aには、導電性を有する材料により、回路パターンが形成されている。回路パターンは、第1パターン121、第2パターン122、第3パターン123、第4パターン124、第5パターン125、第6パターン126、ハイビーム用給電端子127、ロービーム用給電端子128、およびグランド端子129を含む。
【0031】
ハイビーム用給電端子127は、回路基板12の右側後端部に設けられている。第1パターン121は、第1部分121a、第2部分121b、および第3部分121cを有している。第1部分121aは、ハイビーム用給電端子127より前方へ延びている。第2部分121bは、当該第1部分121aの前端より左方へ延びている。第3部分121cは、当該第2部分121bの左端より後方へ延び、発光素子211の第1リードフレーム111と電気的に接続されている。
【0032】
第2パターン122は、第1部分122a、第2部分122b、第3部分122c、第4部分122d、および第5部分122eを有している。第1部分122aは、発光素子211の第2リードフレーム112と電気的に接続され、発光素子211の後方へ延びている。第2部分122bは、当該第1部分122aの前端より第1パターン121の第3部分121cの右端に沿って前方に延びている。第3部分122cは、当該第1部分122aの前端より第1パターン121の第3部分121cの左端に沿って前方に延びている。第4部分122dは、当該第3部分122cの前端より左方に延びている。第5部分122eは、当該第4部分122dの左端より後方に延び、発光素子311の第1リードフレーム111と電気的に接続されている。
【0033】
第3パターン123は、第1部分123a、第2部分123b、および第3部分123cを有している。第1部分123aは、発光素子311の第2リードフレーム112と電気的に接続され、発光素子311の後方へ延びている。第2部分123bは、当該第1部分123aの前端より第2パターン122の第5部分12eの右端に沿って前方に延びている。第3部分123cは、当該第1部分123aの前端より第2パターン122の第5部分12eの左端に沿って前方に延びている。
【0034】
ロービーム用給電端子128は、回路基板12の左側前端部に設けられている。第4パターン124は、第1部分124aと第2部分124bを有している。第1部分124aは、ロービーム用給電端子128より右方へ延びている。第2部分124bは、当該第1部分124aの右端より後方へ延び、発光素子511の第1リードフレーム111と電気的に接続されている。
【0035】
第5パターン125は、第1部分125a、第2部分125b、第3部分125c、第4部分125d、および第5部分125eを有している。第1部分125aは、発光素子511の第2リードフレーム112と電気的に接続され、発光素子511の後方へ延びている。第2部分125bは、当該第1部分125aの前端より第4パターン124の第2部分124bの左端に沿って前方に延びている。第3部分125cは、当該第1部分125aの前端より第4パターン124の第2部分124bの右端に沿って前方に延びている。第4部分125dは、当該第3部分125cの前端より右方に延びている。第5部分125eは、当該第4部分125dの右端より後方に延び、発光素子411の第1リードフレーム111と電気的に接続されている。
【0036】
第6パターン126は、第1部分126a、第2部分126b、第3部分126c、および第4部分126dを有している。第1部分126aは、発光素子411の第2リードフレーム112と電気的に接続され、発光素子411の後方へ延びている。第2部分126bは、当該第1部分126aの前端より第5パターン125の第5部分125eの左端に沿って前方に延びている。第3部分126cは、当該第1部分126aの前端より第5パターン125の第5部分125eの右端に沿って前方に延びている。第4部分126dは、当該第1部分126aの後端より左方に延びている。
【0037】
グランド端子129は、回路基板12の左側後端部に設けられている。第6パターン126の第4部分126dの左端は、グランド端子129に到達している。また第3パターン123の第1部分123aの後端部と、第6パターン126の第1部分126aの後端部は接続されている。したがって、第3パターン123の第1部分123aと第6パターン126の第1部分126aは、グランド端子129と同電位とされる。
【0038】
すなわち、ハイビーム用給電端子127から電力が供給されると、発光素子211、311の各第1リードフレーム111より各ダイオードチップ110に給電がなされ、発光素子211、311より光が出射される。またロービーム用給電端子128から電力が供給されると、発光素子411、511の各第1リードフレーム111より各ダイオードチップ110に給電がなされ、発光素子411、511より光が出射される。
【0039】
図3に示す放物線状の破線は、リフレクタの設置位置を表している。4つの発光素子211、311、411、511のそれぞれに対向するように、リフレクタ213、313、413、513が配置される。これら4つのリフレクタは、図1を参照して説明したリフレクタ13と同一の構造を有している。必要に応じて、これら4つのリフレクタを「リフレクタ13」と総称する。各発光素子211、311、411、511から出射された光は、対応するリフレクタ213、313、413、513により、各発光素子211、311、411、511の前方を含む方向に反射される。
【0040】
本実施形態においては、発光素子11の第1リードフレーム111と第2リードフレーム112は、前後方向に配列されている。またダイオードチップ110を支持する第2リードフレーム112は、第1リードフレーム111の後方に配置されている。
【0041】
リフレクタ13による反射光が遮られるのを防止するため、発光素子11の前方に配置される要素部品は最少限とされることが望ましい。換言すると、灯具ユニット10の要素部品は発光素子11の後方に配置される傾向にあるため、発光素子11の後方には比較的広いスペースを確保しやすい。上記のような構成によれば、第2リードフレーム112と接続される回路パターンの面積を、発光素子11の後方のスペースを利用して大きくすることが容易となる。発光に伴ってダイオードチップ110から発生する熱は、ダイオードチップ110を支持する第2リードフレーム112を通じ、第2リードフレーム112に接続された回路パターンを通じて放散される。この回路パターンの面積を大きく確保できるため、放熱効率を向上させることが可能である。これにより発光素子11の動作がより安定し、良好な配光特性を維持することが可能である。
【0042】
第1リードフレーム111と第2リードフレーム112が前後方向に配列されているため、これらに接続される回路パターンは、前後方向に延びる形状を基調としやすくなる。例えば第1パターン121の第部分121のように実質的に放熱に寄与しない部分は、前後方向に細長く延びる形状とし、第2パターン122の第2部分122と第3部分122cのように放熱に寄与する部分を、その両側に配置することができる。これにより放熱面積を大きく確保することができる。
【0043】
図3に示すように、発光素子11と回路基板12の前端12cまでの距離は、発光素子11と回路基板12の後端12dまでの距離よりも短い。
【0044】
このような構成によれば、回路基板12の前後方向の寸法が一定である条件下において(灯室3の前後方向の寸法が予め定められている場合などに対応)、第2リードフレーム112に接続された回路パターンの面積を大きく確保することが可能である。一方、第2リードフレーム112に接続された回路パターンの前後方向の寸法が一定である条件下において(灯具ユニット10の要素部品を配置するための寸法が予め定められている場合などに対応)、発光素子11と回路基板12の前端12cとの距離を最小限にできるため、灯具ユニット10の小型化が可能である。これにより灯室3の容積が抑制され、前照灯装置1の小型化や軽量化にも寄与する。
【0045】
図3に示すように、リフレクタ13は、発光素子11の第2リードフレーム112に接続された回路パターン上に設置されている。
【0046】
換言すると、リフレクタ13の設置に必要なスペースを、放熱に寄与する回路パターンの形成スペースとして有効活用している。大面積の回路パターンにより放熱効率が向上するため、発光素子11の動作が安定し、良好な配光特性を維持することが可能である。
【0047】
図1を参照して説明したように、放熱シート15と放熱板16は、回路基板12の第2の面12bに装着されている。
【0048】
発光素子11やリフレクタ13が配置されている回路基板12の第1の面12aの反対側である第2の面12bは、放熱シート15や放熱板16を装着するためのスペースを確保しやすい。したがって、放熱シート15や放熱板16が放熱に寄与する面積を大きく確保することができる。これにより放熱効率がさらに向上するため、発光素子11の動作が安定し、良好な配光特性を維持することが可能である。
【0049】
図3に示すように、発光素子11が備えるダイオードチップ110に形成された切り欠き部110dは、回路基板12の前端12cに近い側に配置されている。
【0050】
車両に搭載される灯具は、車両の左側に配置されるものと、車両の右側に配置されるものとが対をなすのが一般的である。当該一対の灯具において、発光素子が搭載される回路基板は、左右対称の構成を有するように形成される。図4においては、図1から図3を参照して説明した回路基板12(車両の左側に配置される前照灯装置1に装備されるもの)を、符号12Lで示している。回路基板12Rは、車両の右側に配置される前照灯装置(上記の前照灯装置1と左右対称の構成を有する)に装備されるものであり、回路パターンの形状や図示しない回路要素の配置は、回路基板12Lと左右対称とされている。
【0051】
一方、アノード電極部110aを形成するために切欠き部110dを有するダイオードチップ110のように、発光面の形状が非対称性を有する場合であっても、同じ発光素子11が左右の灯具に用いられることが一般的である。本実施形態の構成によれば、発光素子11の第1リードフレーム111と第2リードフレーム112が前後方向に配列されているため、切欠き部110dの位置を左右の回路基板12L、12Rの間で一致させることができる。
【0052】
この事実について、図5に示す比較例を参照して説明する。回路基板212Lと回路基板212Rは、それぞれ車両の左側と右側に配置される前照灯装置に装備される。回路基板212Lと回路基板212Rに形成された回路パターンは、左右対称の形状を有している。発光素子11は、図1から図4を参照して説明したものと同一の構成を有している。本比較例においては、発光素子11は、第1リードフレーム111と第2リードフレーム112が左右方向に配列されるように、回路基板212L、212R上に搭載される。
【0053】
このような端子配列の場合、左右対称の構成を有する回路基板212L、212Rに対して同一構成の発光素子11を搭載すると、切欠き部110dの位置が左右の回路基板212L、212Rの間で一致しなくなる。特に切欠き部110dの位置が前後方向(リフレクタによる反射光の進行方向)について相違すると、両者の配光特性に差異が生じやすい。この問題を解消するために左右の回路基板で異なる発光素子(左右対称の構造を有する2種類の発光素子)を使用すると、部品コストが上昇する。
【0054】
図4を参照して説明したように、本実施形態の端子配列によれば、左右対称の構成を有する回路基板12L、12Rに対して同一構成の発光素子11を搭載しても、切欠き部110dに位置を一致させることができる。切欠き部110dの位置が左右対称となるのが配光特性の観点からは理想的であるが、切欠き部110dの位置が前後方向について相違する場合と比較すると、配光特性に与える影響は大幅に抑制される。したがって、左右の灯具に同一の発光素子11を使用できることにより部品コストを抑制しつつ、良好な配光特性を得ることができる。
【0055】
図2を参照して説明したように、切欠き部110dは、第1リードフレーム111とアノード電極部110aをワイヤボンディングするために形成されている。この切欠き部110dを回路基板12の前端12cに近い側に配置することにより、第1リードフレーム111を第2リードフレーム112よりも前方に配置することができる。第1リードフレームおよびこれに接続された回路パターンは、実質的に放熱に寄与しないため、回路基板12の前側のスペースは最小限とすることができる。
【0056】
この場合、回路基板12の前後方向の寸法が一定である条件下において(灯室3の前後方向の寸法が予め定められている場合などに対応)、第2リードフレーム112に接続された回路パターンの面積を大きく確保することが可能である。一方、第2リードフレーム112に接続された回路パターンの前後方向の寸法が一定である条件下において(灯具ユニット10の要素部品を配置するための寸法が予め定められている場合などに対応)、発光素子11と回路基板12の前端12cとの距離を最小限にできるため、灯具ユニット10の小型化が可能である。これにより灯室3の容積が抑制され、前照灯装置1の小型化や軽量化にも寄与する。
【0057】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0058】
回路基板12に搭載される発光素子11の数と配置は、上記の実施形態に示した例に限られるものではない。また回路基板12に形成された回路パターンの形状および配置も、上記の実施形態に示した例に限られるものではない。発光素子11の第1リードフレーム111と第2リードフレーム112が前後方向に配列され、第2リードフレーム112が第1リードフレームの後方に配置されている限りにおいて、灯具ユニット10の仕様に応じて適宜の変更が可能である。
【0059】
発光素子11は、白色発光ダイオードに限られるものではない。発光部と少なくとも2つの端子を有し、一方が発光部への給電に用いられ、他方が発光部を支持する限りにおいて、所定の色の光を出射する発光ダイオードであってもよく、有機EL素子やレーザダイオードといった半導体発光素子を用いてもよい。また蛍光体110cなどにより形成される発光面の形状は、必ずしも切欠き部110dなどによる非対称性を有していることを要しない。
【0060】
灯具ユニット10が搭載される照明装置は、前照灯装置1に限られるものではない。発光素子11から出射された光が、リフレクタ13により発光素子11の前方を含む方向に出射される限りにおいて、上記の灯具ユニット10は、適宜の車両用照明装置に搭載されうる。すなわち発光素子11の前方が、車両の前方と一致していることを要しない。
【符号の説明】
【0061】
10:灯具ユニット、11:発光素子、12:回路基板、12a:回路基板の第1の面、12b:回路基板の第2の面、12c:回路基板の前端、12d:回路基板の後端、13:リフレクタ、110:ダイオードチップ、110a:アノード電極部、110d:切欠き部、111:第1リードフレーム、112:第2リードフレーム、121:第1パターン、122:第2パターン、123:第3パターン、124:第4パターン、125:第5パターン、126:第6パターン
図1
図2
図3
図4
図5