特許第6209392号(P6209392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209392
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】干渉確認装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4069 20060101AFI20170925BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20170925BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G05B19/4069
   G05B19/18 X
   B23Q15/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-167368(P2013-167368)
(22)【出願日】2013年8月12日
(65)【公開番号】特開2015-36833(P2015-36833A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】三橋 進
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】淺田 哲志
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲男
(72)【発明者】
【氏名】作田 譲
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−205301(JP,A)
【文献】 特開平05−008152(JP,A)
【文献】 特開平08−016225(JP,A)
【文献】 特開平10−055209(JP,A)
【文献】 特開2003−108205(JP,A)
【文献】 特開2006−004128(JP,A)
【文献】 特開2007−286688(JP,A)
【文献】 特開2009−054043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18−19/4097
B23Q 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具及びワークをそれぞれ保持する少なくとも2つの構造体が含まれる複数の構造体と、該複数の構造体の内、動作可能に設けられた移動構造体を駆動する駆動機構部と、加工プログラムを解析して、前記移動構造体に係る位置制御信号を生成し、生成した位置制御信号を基に前記駆動機構部を制御して、前記移動構造体の位置を制御する数値制御装置と、操作に関する信号を前記数値制御装置に入力する入力装置と、を備えた工作機械に接続される干渉確認装置であって、
前記移動構造体の位置制御のために生成される前記位置制御信号を基に、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも1つの2次元モデル又は3次元モデルを仮想的に移動させて、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じるか否かを確認する干渉確認処理部と、
前記入力装置に入力される操作に関する信号を基に、該操作を行うことによって、前記位置制御信号に従い前記移動構造体を位置制御した際に、前記構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じる可能性が高まるか否についての指標である影響度合いを評価する操作影響度評価部とを備え、
前記干渉確認処理部は、
最初のワークを加工するときに、所定の時間間隔又は移動距離間隔で前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも1つの2次元モデル又は3次元モデルを仮想的に移動させて、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じるか否かを確認する第1の確認処理と、
前記最初のワークの加工を完了後、これに続いて1又は複数の後続するワークを加工する際に、該後続ワークを加工する前又は該後続ワークを加工する間に、前記入力装置に操作に関する信号が入力された場合に、前記操作影響度評価部により評価された影響度に応じて設定される時間間隔又は移動距離間隔であって、干渉の可能性が高いことを示す高い影響度ほど短く設定された時間間隔又は移動距離間隔で前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも1つの2次元モデル又は3次元モデルを仮想的に移動させて、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じるか否かを確認する第2の確認処理とを実行するように構成されていることを特徴とする干渉確認装置。
【請求項2】
前記干渉確認処理部は、前記第2の確認処理を実行する際に、前記操作影響度評価部の評価影響度に応じて設定された、前記時間間隔又は移動距離間隔が異なる複数のモードの内のいずれかのモードで、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じるか否かを確認するように構成されるとともに、
前記干渉確認装置は、更に、モード切替処理部を備えてなり、
前記モード切替処理部は、前記操作影響度評価部により評価された影響度に応じて、前記干渉確認処理部の第2の確認処理で実行される前記モードを切り替えるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の干渉確認装置。
【請求項3】
前記操作影響度評価部は、前記入力装置から、前記影響度の異なる複数の操作に関する信号が入力された場合に、各操作に対応した影響度の内、最も大きい影響度をもって評価結果とするように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の干渉確認装置。
【請求項4】
前記操作影響度評価部は、同一の操作に関する影響度の評価について、その操作内容に応じて差を設けた評価とするように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかの干渉確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御される工作機械(NC工作機械)の構造体,工具及びワークといった構成物間に干渉が生じるか否かを確認する干渉確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、上記NC工作機械は、予め作成された加工プログラムに従って、数値制御装置による制御の下、その駆動機構部(例えば、送り機構部や主軸モータなど)の作動が制御される。
【0003】
そして、従来、加工プログラムに従って前記駆動機構部を動作させる際に、前記駆動機構部により駆動される移動構造体(例えば、刃物台、サドル、テーブル、主軸頭など)の移動によって、工作機械を構成する構造体(固定構造体及び前記移動構造体を含む),工具及びワークの相互間に干渉が生じるか否かを確認するといったことが行われている。これは、加工プログラムに誤りがある場合に、この加工プログラムに従って前記駆動機構部を動作させると、前記構造体,工具及びワークの相互間に干渉が生じて、前記構造体,工具或いはワークに甚大な損傷を生じる虞があるからである。
【0004】
このような干渉確認を行う装置の好適な従来例として、例えば、特開平10−55209号公報(特許文献1)や特開2009−54043号公報(特許文献2)に開示されるものが提案されている。
【0005】
上記特許文献1に開示された数値制御装置は、加工プログラムの工具干渉チェックを行う工具干渉チェック処理手段と、工具干渉チェックの要否を判定する工具干渉チェック要否判定手段とを備えており、前記工具干渉チェック要否判定手段は、工具干渉チェックの実施日時と工具関連データの設定変更日時とを比較することにより、工具関連データの設定変更後に、工具干渉チェックが実施されていない場合には、工具干渉チェックが必要であると判定するように構成され、前記工具干渉チェック処理手段は、前記工具干渉チェック要否判定手段の判定結果により、工具干渉チェックが必要な場合にのみ工具干渉チェックを実行するように構成されている。
【0006】
この特許文献1の数値制御装置によれば、工具関連データの設定変更後、即ち、工具干渉チェックが必要な場合にのみ、工具干渉チェックが実行されるので、工具干渉チェックが重複して無駄に行われることが回避され、数値制御装置の処理速度が向上するといった効果が得られるとのことである。
【0007】
また、特許文献2に開示された数値制御装置は、複数の機械構造物の干渉領域を各々定義し、補間処理で更新される機械構造物の機械座標値を基に干渉領域を移動させ、前記各々の機械構造物の干渉領域がそれぞれ干渉するか否かをチェックする機能を有するもので、干渉チェック処理にかかる演算時間を1補間処理周期内における干渉チェック処理の占有時間で除算することにより干渉チェック計算周期を自動調整する干渉チェック計算周期自動調整手段と、各軸の送り速度の最大速度と干渉チェック計算周期から干渉領域を拡張する干渉領域拡張手段と、拡張された干渉領域同士が干渉するか否かをチェックする手段とを備える。
【0008】
この特許文献2の数値制御装置によれば、干渉チェック計算周期が自動調整されるので、干渉チェック量が増大しても、数値制御装置の補間処理に影響を及ぼさずに、干渉チェック計算を確実に完了させることができるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−55209号公報
【特許文献2】特開2009−54043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述した干渉確認は、一般的に、前記NC工作機械の構造体、並びにこれに装着される工具及びワークの2次元モデル又は3次元モデル(以下、この項においては、単に「モデル」という)を用い、これらを前記加工プログラムに従って所定の時間間隔又は移動距離間隔(以下、この項においては、単に「間隔」という)で移動させた状態のモデルを生成し、生成した前記構造体,工具及びワークのモデル相互間で、それらに重なり合いが生じたかどうかを確認することにより行われる。
【0011】
したがって、前記モデルを生成する間隔を短くすれば、図7に示すように、より細かく移動させた状態のモデルを生成することができ、より精緻な、即ち、精度の高い干渉確認を行うことができるが、この場合、モデルの生成処理に時間を要し、干渉確認に長時間を要するというデメリットがある。尚、図7において、101は主軸、102はチャック、Wはワーク、103は刃物台であり、同図7には、刃物台103が位置Paから位置Peに移動する際に、この位置Pa及び位置Pe含め、その中間位置として、位置Pb、位置Pc、位置Pdに移動した状態の主軸101、チャック102、ワークW及び刃物台103のモデルを示している。この例では、同図7から分かるように、刃物台103が位置Pcに移動したときに、当該刃物台103とワークWとの間に干渉が生じる。
【0012】
一方、モデルの生成間隔を長くすれば、モデル生成処理に要する時間を短縮することができ、干渉確認を短時間で行うことができるメリットがある反面、図8に示すように、生成されるモデルが少なくなり、精度の高い干渉確認を行うことができないというデメリットがある。尚、この図8においても、刃物台103を位置Paから位置Peに移動させているが、この例では、刃物台103が位置Pa及び位置Peに移動した状態の主軸101、チャック102、ワークW及び刃物台103のモデルしか生成されず、これらのモデルでは、いずれも刃物台103とワークWとが重なり合っていないため、この間隔でモデルを生成したのでは、実際には生じる刃物台103とワークWとの干渉を確認(検出)することができない。
【0013】
このように、モデルを用いた干渉確認では、干渉確認の精度とその処理時間とが相反する関係にあり、これを生成する間隔を短くするほど、精度の高い干渉確認を行うことができるが、処理時間が長くなるというデメリットがあり、これとは逆に、モデルを生成する間隔を長くするほど、処理時間を短くすることができるものの、高精度な干渉確認を行うことができないというデメリットがあるのである。
【0014】
そして、干渉確認を行う必要性は、加工実績の無い加工プログラムを用いて加工する場合に限られるものではなく、加工実績の有る加工プログラムを用いた連続加工においても、一旦、連続加工を停止して所定の操作を行った後、当該連続加工を再開する場合には、干渉確認を行う必要がある。例えば、加工中の機械を一時的に停止させ、これを手動で操作した後、再稼働させる際に、当該機械が停止直後の状態にない場合や、加工プログラムを再開させるブロックに誤りがある場合には、干渉を生じる虞がある。
【0015】
このような操作によって干渉が生じる可能性は、操作の種類によって異なる。例えば、刃物台を手動で原点に復帰させる操作は、その後、加工を行っても比較的干渉が生じる可能性は低いが、工具のオフセット値を変更した場合や、ブロックデリートなどの操作を行った場合には、干渉を生じる可能性が高い。
【0016】
したがって、以上の背景からすれば、干渉が生じる可能性の高い操作が行われた後には、処理時間は長くなるが、より精度の高い干渉確認を行うことができるように、モデルを生成する間隔をより短くした干渉確認を行うのが好ましく、一方、干渉が生じる可能性の低い操作が行われた後には、精度は低くなるが、モデルの生成間隔をより長くし、処理時間を短くした干渉確認を行うのが好ましい。
【0017】
ところが、上述した特許文献1及び特許文献2に開示される従来の数値制御装置では、いずれも、モデルを生成する間隔が一定であり、オペレータの操作に応じた効率的な干渉確認を行うことができない。特許文献2の数値制御装置では、干渉チェックのための立体図形の組み合わせ数と、干渉チェック対象となる立体図形の数によって、干渉チェックの計算周期を自動調整するように構成されているが、これらの数に変更がない、即ち、同じ工作機械で、同じ加工プログラムを用いて加工する場合には、モデルの生成間隔は一定である。
【0018】
また、特許文献1に開示された数値制御装置では、工具関連データの設定が変更された場合には、干渉チェックを行うように構成されているが、その他の操作がオペレータによって実行された場合には、干渉チェックが行われない。
【0019】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、数値制御装置に入力される操作に応じて設定された時間間隔又は移動距離間隔でモデルを移動させて干渉確認を行うことにより、操作に応じた効率的な干渉確認を行うことができる干渉確認装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するための本発明は、
工具及びワークをそれぞれ保持する少なくとも2つの構造体が含まれる複数の構造体と、該複数の構造体の内、動作可能に設けられた移動構造体を駆動する駆動機構部と、加工プログラムを解析して、前記移動構造体に係る位置制御信号を生成し、生成した位置制御信号を基に前記駆動機構部を制御して、前記移動構造体の位置を制御する数値制御装置と、操作に関する信号を前記数値制御装置に入力する入力装置と、を備えた工作機械に接続される干渉確認装置であって、
前記移動構造体の位置制御のために生成される前記位置制御信号を基に、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも1つの2次元モデル又は3次元モデルを仮想的に移動させて、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じるか否かを確認する干渉確認処理部と、
前記入力装置に入力される操作に関する信号を基に、該操作を行うことによって、前記位置制御信号に従い前記移動構造体を位置制御した際に、前記構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じる可能性が高まるか否についての指標である影響度合いを評価する操作影響度評価部とを備え、
前記干渉確認処理部は、
最初のワークを加工するときに、所定の時間間隔又は移動距離間隔で前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも1つの2次元モデル又は3次元モデルを仮想的に移動させて、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じるか否かを確認する第1の確認処理と、
前記最初のワークの加工を完了後、これに続いて1又は複数の後続するワークを加工する際に、該後続ワークを加工する前又は該後続ワークを加工する間に、前記入力装置に操作に関する信号が入力された場合に、前記操作影響度評価部により評価された影響度に応じて設定される時間間隔又は移動距離間隔であって、干渉の可能性が高いことを示す高い影響度ほど短く設定された時間間隔又は移動距離間隔で前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも1つの2次元モデル又は3次元モデルを仮想的に移動させて、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じるか否かを確認する第2の確認処理とを実行するように構成された干渉確認装置に係る。
【0021】
この干渉確認装置によれば、前記干渉確認処理部により、前記移動構造体の位置制御のために生成される位置制御信号を基に、或る時間間隔又は移動距離間隔(以下、この項においては、単に「間隔」という)で前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも1つの2次元モデル又は3次元モデル(以下、この項においては、単に「モデル」という)を仮想的に移動させて、言い換えれば、前記間隔ごとに移動させた状態のモデルを生成し、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じるか否か、即ち、少なくとも2つのモデル間に重なり合いが生じるか否かが確認される。
【0022】
その際、前記干渉確認処理部は、最初のワークを加工するときに、所定の第1の間隔で前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも1つのモデルを仮想的に移動させる第1の確認処理と、前記最初のワークの加工を完了後、これに続いて1又は複数の後続するワークを加工する際に、この後続ワークを加工する前又は後続ワークを加工する間に、前記入力装置に操作に関する信号が入力された場合に、前記操作影響度評価部により評価された影響度に応じて設定される第2の間隔で前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも1つのモデルを仮想的に移動させる第2の確認処理を実行する。
【0023】
前記第1の確認処理は、最初のワークを加工する際の確認処理であって、この最初のワークの加工は、通常、工作機械を立ち上げ後、或いは、新しい加工プログラムを用いて、初めてワークを加工する場合が相当し、この場合には、第1の間隔、即ち、例えば比較的短い間隔で移動させた前記モデルが生成され、これを用いて干渉確認が行われる。これにより、確認処理に相応の時間を要するものの、細かな間隔で干渉確認を行うことで、精度の高い干渉確認を行うことができる。工作機械を立ち上げ後や、新しい加工プログラムを用いて加工する場合には、加工の安全性が確認されていないため、このような精度の高い干渉確認を行うことにより、加工の安全性を確保することができる。
【0024】
そして、前記後続ワークを加工する前又は前記後続ワークを加工する間(即ち、加工途中)に、前記入力装置に操作に関する信号(停止信号や一時停止信号や加工プログラムの編集にかかる入力信号)が入力された場合には、前記第2の確認処理が実行される。この第2の確認処理では、上記のように、前記操作影響度評価部により評価された影響度に応じて設定された第2の間隔で前記モデルを仮想的に移動させたモデルを生成し、生成したモデルを基に干渉確認が行われる。
【0025】
前記入力装置から入力される信号を介した操作は、その種類によって、加工の安全性に与える影響度が異なる。例えば、NCの電源を入り切りする操作、前記刃物台を原点に復帰させる操作、加工を一時停止させる操作は、この後、加工を開始或いは加工を再開させても、その安全性は損なわれていないが、加工を停止した後に前記刃物台を適宜位置に移動させる操作や、加工プログラムを編集する操作を行った後に加工を開始或いは加工を再開させる場合には、加工の安全性が損なわれている可能性が高い。
【0026】
そこで、本発明に係る干渉確認装置では、当該操作により干渉が生じる可能性に対する影響度合いを、前記操作影響度評価部によって評価し、第2の確認処理では、この操作影響度評価部によって評価された影響度に応じて、即ち、例えば、干渉が生じる可能性が低いと判断される操作の場合には、処理効率を考慮して、相応に長い間隔を第2の間隔に設定し、干渉が生じる可能性が高いと判断される操作の場合には、これよりも短い間隔を第2の間隔に設定して、上述した干渉確認が行われる。これにより、干渉確認のための処理効率と加工効率との双方を満足させながら、操作内容に応じた最適な干渉確認を実施することができる。
【0027】
斯くして、本発明に係る干渉確認装置によれば、工作機械の状態に応じた最適な干渉確認を行うことができる。
【0028】
尚、本発明において、前記干渉確認装置は、更に、モード切替処理部を備え、
前記干渉確認処理部は、前記第2の確認処理を実行する際に、前記操作影響度評価部の評価影響度に応じて設定された、前記間隔が異なる複数のモードの内のいずれかのモードで、前記各構造体,工具及びワークのうち少なくとも2つの間に干渉が生じるか否かを確認するように構成されるとともに、
前記モード切替処理部は、前記操作影響度評価部により評価された影響度に応じて、前記干渉確認処理部の第2の確認処理で実行される前記モードを切り替えるように構成されていても良い。
【0029】
また、前記操作影響度評価部は、前記入力装置から、前記影響度の異なる複数の操作に関する信号が入力された場合に、各操作に対応した影響度の内、最も大きい影響度をもって評価結果とするように構成されているのが好ましい。このようにすることで、前記第2の確認処理において、最も精度の高い干渉確認が実行され、操作の危険度に応じた最適な干渉確認を実現することができる。
【0030】
また、前記操作影響度評価部は、同一の操作に関する影響度の評価について、その操作内容に応じて差を設けた評価とするように構成されていても良い。例えば、同じ操作でも、これを複数回繰り返して実行する場合には、操作回数が多いほどNC工作機械の不確実性が増すことになり、また、プログラムを編集する操作においても、1行編集する場合と、10行編集する場合とを比較すると、10行編集した方がNC工作機械の不確実性が増すことになる。したがって、このような場合に、前記操作影響度評価部は、同一の操作にであっても、操作内容によって干渉の影響度(可能性)が高まる場合には、影響度を高く評価して、前記干渉確認処理部において、より細かな間隔で干渉確認が行われるようにする。これにより、より確実な干渉確認を実現することができ、加工の安全性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明に係る干渉確認装置によれば、工作機械の状態に応じた最適な干渉確認を行うことができる。特に、入力装置から操作に関する信号が入力されたときには、その操作によって干渉が生じる可能性に応じた間隔で干渉確認を行うようにしているので、干渉確認のための処理効率と加工効率との双方を満足させながら、操作内容に応じた最適な干渉確認を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る干渉確認装置などの概略構成を示したブロック図である。
図2】本実施形態に係るNC旋盤の概略構成を示した正面図である。
図3】本実施形態に係るモード切替処理部における処理を示したフローチャートである。
図4】本実施形態の各モードにおける処理間隔を説明するための説明図である。
図5】本実施形態に係る操作影響度記憶に格納されるデータを示した説明図である。
図6】本実施形態に係る重み付データ記憶部に格納されるデータを示した説明図である。
図7】干渉確認処理の間隔と干渉確認の精度との関係を説明するための説明図である。
図8】干渉確認処理の間隔と干渉確認の精度との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本例の干渉確認装置1は、数値制御装置30を備えたNC旋盤20(NC工作機械)の当該数値制御装置30に接続されている。
【0034】
[NC旋盤の構成]
まず、このNC旋盤20の概略構成について説明する。図1及び図2に示すように、本例のNC旋盤20は、ベッド21、主軸台(図示せず)、主軸台(図示せず)に回転自在に保持された主軸22、この主軸22に取付けられたチャック23、ベッド21上に矢示Z軸方向に移動自在に配設された往復台24、この往復台24上に矢示X軸方向に移動自在に配設された刃物台25といった複数の構造体と、前記往復台24を前記Z軸方向に移動させる第1送り機構部26、前記刃物台25を前記X軸方向に移動させる第2送り機構部27及び前記主軸22を回転させる主軸モータ28などの駆動機構部と、この駆動機構部の作動を制御する数値制御装置30と、入力装置41及び画面表示装置42を備えた操作盤40などから構成される。そして、前記チャックに23にはワークWが把持され、前記刃物台25には工具Tが装着されている。斯くして、本例のNC旋盤20では、前記往復台24及び刃物台25が移動構造体を構成する。
【0035】
前記数値制御装置30は、図1に示すように、プログラム記憶部31、プログラム実行部32、プログラマブルコントローラ33及び位置制御部34などから構成され、前記プログラム記憶部31には、予め作成されたNCプログラムが格納される。
【0036】
前記プログラム実行部32は、前記プログラム記憶部31に格納されたNCプログラムをブロック毎に順次解析して、刃物台25の移動位置や送り速度、主軸モータ44の回転速度などに関する動作指令を抽出し、抽出した刃物台25の動作指令を基に、当該刃物台25の位置制御に係る制御信号を所定の時間間隔で生成し、生成した位置制御信号を前記位置制御部34に送信するとともに、主軸モータ44に係る動作指令をプログラマブルコントローラ33に送信する処理を行う。
【0037】
前記プログラマブルコントローラ33は、プログラム実行部32から前記動作指令を順次受信して、主軸22の回転を制御する処理を行う。具体的には、前記主軸モータ44からフィードバックされる現在回転速度データ及び前記動作指令を基に制御信号を生成し、生成した制御信号を主軸モータ44に送信してこれを制御する。
【0038】
また、前記位置制御部34は、前記プログラム実行部32から前記位置制御信号を順次受信して、刃物台25の移動などを制御する処理を行う。具体的には、前記第1送り機構部26及び第2送り機構部27からフィードバックされる現在位置データ、並びに前記位置制御信号を基に、駆動信号を生成し、生成した駆動信号を前記第1送り機構部26及び第2送り機構部27に送信してこれを制御する。
【0039】
[干渉確認装置の構成]
次に、前記干渉確認装置1の構成について説明する。図1に示すように、前記干渉確認装置1は、干渉確認処理部2、モデルデータ記憶部3、干渉データ記憶部4、モード切替処理部5、操作影響度評価部6、操作影響度記憶部7、重み付データ記憶部8、操作情報入力・更新部9、操作情報記憶部10及び表示制御部11などから構成される。
【0040】
前記モデルデータ記憶部3には、3次元CADシステムなどを用いて予め適宜生成された、少なくとも工具T,ワークW,主軸22,チャック23,往復台24及び刃物台25に係る3次元モデルデータが格納される。
【0041】
また、前記干渉データ記憶部4には、予め設定された、工具T,ワークW,主軸22,チャック23,往復台24及び刃物台25の相互間における干渉関係を定義した干渉データが格納される。本例のNC旋盤20では、主軸22,チャック23及びワークW間、並びに往復台24,刃物台25及び工具T間においては、それぞれ干渉関係は生じず、一方、主軸22,チャック23及びワークWと、往復台24,刃物台25及び工具Tとの間においては干渉関係が成立する。但し、ワークWと工具Tの切れ刃であるチップTaとの間については、干渉関係を生じない。本例では、このような干渉関係を定義した干渉データが前記干渉データ記憶部4に格納される。
【0042】
前記干渉確認処理部2は、数値制御装置30が起動されると、これに合わせて処理を開始し、前記モデルデータ記憶部3に格納された工具T,ワークW,主軸22,チャック23,往復台24及び刃物台25に係る3次元モデルデータを読み出し、これらの3次元モデルを適宜仮想の3次元空間内に配置して待機状態に入る。そして、前記プログラム実行部32の処理を監視し、当該プログラム実行部32によって加工プログラムが開始されると、以下の干渉確認処理を実行する。
【0043】
即ち、前記干渉確認処理部2は、前記プログラム実行部32から位置制御信号(位置情報)を受信し、受信した位置制御信号を基に、所定の時間間隔で前記往復台24,刃物台25及び工具Tの3次元モデルを仮想的に移動させた3次元モデルを生成するとともに、生成した主軸22,チャック23及びワークWに係る3次元モデルと、往復台24,刃物台25及び工具Tに係る3次元モデルとの間に重なり合いが生じるか否かを確認し、重なり合いが生じた場合には、前記干渉データ記憶部4に格納された干渉データを参照して、干渉の有無を判断する。そして、干渉が確認された場合には、アラーム信号を前記数値制御装置30に送信して加工を停止させる。
【0044】
尚、この干渉確認処理では、前記刃物台25の位置制御のために生成される位置制御信号よりも、所定時間先の移動位置に係る位置制御信号を順次前記プログラム実行部32から入力し、入力した位置制御信号を基に、実際の加工よりも所定時間先行した処理が実行される。
【0045】
そして、前記干渉確認処理は、前記3次元モデルを移動させる時間間隔がそれぞれ異なる試作モード1,試作モード2及び試作モード3と、加工プログラムで指令された位置に前記3次元モデルを移動させる量産モードとの4つのモードのいずれかによって実行される。図4に示すように、試作モード1,試作モード2,試作モード3は、この順に順次時間間隔が短くなっており、同図4に示した例では、前記プログラム実行部32から入力する位置制御信号の1秒当たりの数(位置の数)を、試作モード1では3点、試作モード2では7点、試作モード3では10点としており、それぞれの間について補間処理を行って、設定された時間間隔で前記3次元モデルを移動させる。
【0046】
尚、図4に示した例における補間処理の条件は、前記第1送り機構部26及び第2送り機構部27の最大送り速度を基準に決定され、この最大の送り速度で前記刃物台25が移動した際に、試作モード1では移動間隔が20mm以下となり、試作モード2では移動間隔が15mm以下となり、試作モード3では移動間隔が10mm以下となるような条件に設定されている。また、補間処理を行うようにしているのは、一つの位置制御信号を前記プログラム実行部32から入力する処理時間と、補間処理によって一つの位置制御信号を算出する処理時間とでは、補間処理によって算出する処理時間の方が短いからであり、このような補間処理を行うことによって、必要な数の位置制御信号を得るための処理時間を短くすることができる。
【0047】
また、前記表示制御部11は、前記干渉確認処理部2によって順次所定の時間間隔で生成される各3次元モデルを前記画像表示装置42に表示させる処理を行う。
【0048】
前記操作情報記憶部10は、図5に示すような操作に関する情報を記憶する機能部であり、前記入力装置41から前記数値制御装置30に操作に関する信号が入力された場合に、当該操作情報が前記操作情報入力・更新部9によって入力され、また、既に記憶された操作情報が更新される。尚、この操作情報記憶部10には、操作がプログラム編集である場合には、前記操作情報入力・更新部9を介して、図6に示すような、編集の行数や、編集内容も記憶される。
【0049】
前記操作影響度記憶部7は、操作と影響度との関係を、図に示すようなデータテーブルとして記憶する機能部であり、このデータテーブルは、予め前記入力装置41を通して当該操作影響度記憶部7に格納され、オペレータが前記入力装置41を介して適宜設定,変更できるようになっている。操作は、その種類によって、加工の安全性に与える影響度が異なり、例えば、NCの電源を入り切りする操作、前記刃物台を原点に復帰させる操作、加工を一時停止させる操作は、この後、加工を開始或いは加工を再開させても、その安全性は損なわれていないが、加工を停止した後に前記刃物台を適宜位置に移動させる操作や、加工プログラムを編集する操作を行った後に加工を開始或いは加工を再開させる場合には、加工の安全性が損なわれている可能性が高い。前記影響度は、前記操作によって干渉が生じる可能性に対する影響度合いを示す指標であり、同図5に示すように、各操作ごとに予め設定され、前記操作影響度記憶部7に格納される。尚、本例では、数字が大きいものほど、干渉を生じる可能性が高いことを表している。
【0050】
前記重み付データ記憶部8は、図6に示すような、操作内容に応じた重み付けに関するデータを記憶する機能部である。例えば、操作がプログラムの編集である場合に、編集する行数が多いほど、干渉を生じる可能性が高く、また、1行を編集した場合でも、送り速度を編集した場合には干渉が生じる可能性は低いが、座標値を編集した場合には干渉を生じる可能性が高い。前記重み付けは、同一の操作における、干渉が発生する可能性の相違を考慮して、前記影響度を調整するための指標であり、操作内容に応じて予め設定される。
【0051】
前記操作影響度評価部6は、前記干渉確認処理部2を介して前記プログラム実行部32の処理を監視し、プログラム実行部32が加工プログラムを実行するタイミングで、操作情報記憶部10に記憶された操作情報を読み出し、操作影響度記憶部7及び重み付データ記憶部8に格納されたデータを参照して、当該操作に関する影響度を評価し、評価した影響度に係るデータを前記モード切替処理部6に送信し、送信後、操作情報記憶部10に記憶されたデータをリセットする処理を行う。
【0052】
例えば、操作情報記憶部10に記憶された操作情報がプログラム編集であり、その編集行数が2行である場合には、前記操作影響度評価部6は、操作影響度記憶部7に格納された図5に示すデータテーブルを参照して、プログラム編集に該当する影響度3を読み出すとともに、重み付データ記憶部8に格納されたデータテーブルを参照して、重み付データである0.8を読み出し、これらを乗算して影響度を評価し(影響度ED=3×0.8=2.4)、得られた影響度(ED=2.4)を前記モード切替処理部6に送信する。
【0053】
一方、操作情報記憶部10に記憶された操作情報が重み付けを考慮しない操作、即ち、重み付データ記憶部8に格納されていない操作である場合、例えば、操作が早送り操作である場合には、前記操作影響度評価部6は、同様に、操作影響度記憶部7に格納された、図5に示すデータテーブルを参照して、早送りに該当する影響度2を読み出し、得られた影響度(ED=2)を前記モード切替処理部6に送信する。
【0054】
また、操作情報記憶部10に記憶された操作情報が異なる複数の操作に関するものである場合には、操作影響度評価部6は、それぞれの操作について、上記と同様にして影響度を評価し、最も大きい影響度を前記モード切替処理部6に送信する。
【0055】
前記モード切替処理部5は、前記干渉確認処理部2において実行される干渉確認処理のモードを切り替える処理を行う機能部であり、具体的には、図3に示した処理を実行する。
【0056】
即ち、前記モード切替処理部5は、前記数値制御装置30の起動に合わせて処理を開始し、まず、前記干渉確認処理部2における処理モードを試作モード3に設定する処理を行う(ステップS1)。ついで、干渉確認処理部2における処理を監視して、最初のワークの加工が正常に終了したか否かを監視し(ステップS2)、加工が正常に終了されたことが確認されると、干渉確認処理部2における処理モードを量産モードに設定する処理を行う(ステップS3)。尚、加工が正常に終了されたかどうかは、前記干渉確認処理部2が、前記プログラム実行部32から加工プログラムの終了信号を受信したかどうかを監視することによって、確認することができる。
【0057】
ついで、モード切替処理部5は、前記操作影響度評価部6から影響度に係るデータ(影響度データ)が送信されたかどうかを監視し(ステップS4,S13)、影響度データ(ED)を受信すると、受信した影響度データ(ED)が、ED≦1である場合には、干渉確認処理部2の処理モードを試作モード1に設定し(ステップS5,S6)、1<ED≦2である場合には、干渉確認処理部2の処理モードを試作モード2に設定し(ステップS7,S8)、2<EDである場合には、干渉確認処理部2の処理モードを試作モード3に設定する処理を行う(ステップS7,S9)。
【0058】
この後、モード切替処理部5は、最初のワークの加工に引き続いて実行される後続のワークの加工が正常に終了した否かを監視するとともに(ステップS10)、前記操作影響度評価部6から影響度データが送信されたかどうかを監視し(ステップS11)、加工途中で、影響度データ(ED)を受信すると、上述したステップS5〜S10の処理を実行する。一方、前記ステップS10において後続ワークの加工が正常に終了したことが確認されると、干渉確認処理部2における処理モードを量産モードに設定する処理を行う(ステップS3)。
【0059】
以後、モード切替処理部5は、ステップS4〜S13の処理を繰り返し、数値制御装置30の電源がOFFとなるタイミングで、処理を終了する(ステップS13)。以上の処理により、モード切替処理部5によって、干渉確認処理部2の処理モードが設定され、干渉確認処理部2は設定された処理モードで処理を実行する。
【0060】
[干渉確認装置の干渉確認動作]
以上の構成を備えた本例の干渉確認装置1によれば、NC旋盤20によりワークWを加工する際に、以下のようにして、主軸22,チャック23及びワークWと、往復台24,刃物台25及び工具Tとの間の干渉が確認される。尚、前記干渉確認処理部2において所定の時間間隔でもって逐次生成される3次元モデルは、前記表示制御部11を介して前記画像表示装置42に逐次表示される。
【0061】
前記干渉確認装置1は、前記数値制御装置30の起動に合わせて処理を開始し、まず、前記モード切替処理部5によって、前記干渉確認処理部2の処理モードを試作モード3に設定する。そして、干渉確認処理部2は、前記プログラム実行部32の処理を監視して、当該プログラム実行部32によって加工プログラムが開始される、即ち、最初のワークWの加工が開始されると、実加工に所定時間だけ先行して、試作モード3で干渉確認処理(第1の確認処理)を実行する。
【0062】
上述したように、干渉確認処理部2における処理モードは、試作モード1,試作モード2,試作モード3の順に順次時間間隔が短くなっている。したがって、試作モード3が最も高精度な干渉確認を行うことができて安全性が高いが、その反面、3次元モデルを生成する時間間隔が短い分だけ処理時間が長くなるというデメリットがある。上述した最初のワークWの加工については、予測されない不安定要素が内在している可能性があるため、本例では、最も高精度で安全性の高い試作モード3での干渉確認を行うようにしている。
【0063】
ついで、最初のワークWの加工を正常に完了すると、モード切替処理部5によって、前記干渉確認処理部2の処理モードが量産モードに設定され、以降の後続ワークWの加工の際には、干渉確認処理部2において、加工プログラムで指令された位置に前記3次元モデルを移動させる量産モードでの干渉確認が実行される。この量産モードでの干渉確認は、最も精度が低いが、最初のワークWの加工が正常に完了された場合には、当該加工の安全性が確認されているので、以降の後続ワークWの加工については、精度の低い量産モードで干渉確認を行うようにしても、加工の安全性を担保することができる。また、干渉確認処理を最も迅速に行うことができるので、この処理によって加工に支障を来すこともない。尚、最初のワークWを正常に完了するまでの間は、継続的に試作モード3により干渉確認が行われる。
【0064】
そして、連続的に加工が行われる各後続ワークWについては、これを加工する前に、又は当該後続ワークWの加工を開始した後に、前記入力装置41から前記数値制御装置30に何らかの操作に係る信号が入力されると、この操作に関する情報が前記操作情報入力・更新部9によって前記操作情報記憶部10に格納され、前記プログラム実行部32が加工プログラムを実行するタイミングで、前記操作影響度評価部6によって、前記操作情報記憶部10に記憶された操作情報、並びに操作影響度記憶部7及び重み付データ記憶部8に格納されたデータを基に、当該操作に関する影響度が評価されるとともに、評価された影響度に係るデータが前記モード切替処理部6に送信され、このモード切替処理部6によって、干渉確認処理部2における処理モードが、評価された影響度に応じた処理モードに設定される(第2の確認処理)。
【0065】
即ち、評価影響度EDが、ED≦1であるような、干渉を生じる可能性が低い操作の場合には、処理モードが試作モード1に設定され、評価影響度EDが、1<ED≦2であるような、干渉を生じる可能性が中程度の操作の場合には、処理モードが試作モード2に設定され、評価影響度EDが、2<EDであるような、干渉を生じる可能性が高い操作の場合には、処理モードが試作モード3に設定される。
【0066】
そして、干渉確認処理部2では、このようにして設定された処理モードで干渉確認が行われる。これにより、当該操作により干渉が生じる可能性を考慮した適切な干渉確認を行うことができる。尚、干渉確認の精度とその処理速度は相反する関係にあり、高精度な干渉確認を行うとその処理時間が長くなり、干渉確認の精度を低くすると迅速な処理を行うことができるが、操作によって干渉が生じる可能性を考慮した精度で干渉確認を行うことで、いたずらに加工遅延を生じさせることなく、加工の安全性の確保と加工効率との双方を満足させながら、操作内容に応じた最適な干渉確認を実施することができる。
【0067】
一方、後続ワークWの加工の際に、前記入力装置41から前記数値制御装置30に操作信号が入力されない場合には、継続的に量産モードでの干渉確認が実行される。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る干渉確認装置1によれば、最初のワークWを加工する際には、安全を最も考慮した最も精度の高い試作モード3で干渉確認が行われるので、加工開始当初に不安定要素が内在されていても、高い安全性をもって加工を開始することができる。そして、一度、加工の安全性が確認され、これが確保されていることが判明した後には、最も精度の低い量産モードで干渉確認を行うようにしているので、予定された加工効率を損なうことなく、しかも安全を確保した状態での加工を行うことができる。
【0069】
また、最初のワークWにつづく後続ワークWを加工する際に、前記入力装置41から前記数値制御装置30に何らかの操作信号が入力された場合には、この操作によって干渉が生じる可能性を考慮した精度で干渉確認を行うようにしているので、いたずらに加工遅延を生じさせることなく、加工の安全性の確保と加工効率との双方を満足させながら、操作内容に応じた最適な干渉確認を実施することができる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は何らこれに限定されるものではない。
【0071】
例えば、上例では、量産モードより高精度な干渉確認処理モードとして、試作モード1〜3の3区分を設定したが、これに限られるものではなく、2区分でも、或いは、4区分以上であっても良い。要は、操作が干渉に与える影響を考慮した確認精度と、これに伴う処理速度との双方を考慮して、適切な区分を設定すれば良い。
【0072】
また、上例では、前記干渉確認処理部2において、3次元モデルを移動させる間隔を、時間を基準に設定したが、これに限るものではなく、3次元モデルを移動させる距離を基準に設定しても良い。即ち、前記干渉確認処理部2において干渉確認処理を行う際に、所定の移動距離間隔ごとに3次元モデルを生成するようにしても良い。この場合、試作モード1,試作モード2,試作モード3の順に順次移動距離間隔が短く設定される。
【0073】
また、上例では、前記影響度に対する重み付けを行う操作対象として、プログラム編集を例示したが、これに限られるものではなく、同一操作の操作回数によって、重み付けするようにしても良い。この場合、同一の操作であっても操作回数が増えるほど、加工の安定性が失われると考えられるから、操作回数が多いほど、重み付けを重くするようにすると良い。
【0074】
また、上例では、前記量産モードにおいて干渉確認を行うようにしたが、これに限られるものではなく、当該量産モードにおいて干渉確認を行わないようにしても良い。
【0075】
また、上例では、後続ワークWの加工前、又は後続ワークWの加工開始後に、前記入力装置41から操作に係る信号が入力された場合には、必ず、干渉確認処理部2における処理モードを切り替えるように構成したが、これに限られるものではなく、後続ワークWの加工前、又は後続ワークWの加工開始後に、前記入力装置41から操作に係る信号が入力され、且つ、加工プログラム中の特定の指令(例えば、先読み禁止指令の直後の指令など)を実行する際にのみ、前記干渉確認処理部2における処理モードを切り替えるように構成しても良い。
【0076】
また、上例では、主軸22,チャック23及びワークWと、往復台24,刃物台25及び工具Tとの間の干渉を確認するようにしたが、このような干渉関係は、NC工作機械の構成によって異なるものであり、通常は、NC工作機械を構成する構造体、工具及びワークの内、少なくとも2つの間の干渉が問題となる。
【0077】
また、上例では3次元モデルを用いて干渉確認を行うようにしたが、これに限られるものではなく、2次元モデルを用いても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 干渉確認装置
2 干渉確認処理部
3 モデルデータ記憶部
4 干渉データ記憶部
5 モード切替処理部
6 操作影響度評価部
7 操作影響度記憶部
8 重み付データ記憶部
9 操作情報入力・更新部
10 操作情報記憶部
20 NC旋盤
30 数値制御装置
31 プログラム記憶部
32 プログラム実行部
34 位置制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8