特許第6209400号(P6209400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209400
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】解析装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   G06F17/50 650Z
   G06F17/50 634Z
   G06F17/50 612H
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-178075(P2013-178075)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-46113(P2015-46113A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】中村 美徳
(72)【発明者】
【氏名】藤原 貞生
(72)【発明者】
【氏名】布目 敬
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】江幡 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 猛
【審査官】 合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−151383(JP,A)
【文献】 特開2009−205401(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/023988(WO,A1)
【文献】 特開2001−250438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテクタ本体の開口を通してハーネスが内部に収容された状態で、前記開口を覆う蓋体を前記プロテクタ本体に装着可能であるか否かを評価する解析装置であって、
モデル化されたワイヤハーネスにおける、前記ハーネスの一部をなす要素の物性値、前記プロテクタ本体の一部をなす要素の物性値及び前記蓋体の一部をなす要素の物性値、が要素毎に記憶された記憶部と、
ある要素または要素間の関係を規定する条件に基づく解析手順を表現するプログラムが記録された記録部と、
前記記憶部に記憶された要素毎の物性値及び前記記録部に記録されたプログラムを参照して、前記プロテクタ本体の内部に前記ハーネスが収容され、且つ前記蓋体が前記プロテクタ本体の前記開口を覆った状態を再現した場合における、前記プロテクタ本体と前記蓋体の接触の有無を判定する演算部と、
を備えることを特徴とする解析装置。
【請求項2】
前記記憶部には、第1の蓋体と第2の蓋体とに分割されてモデル化された前記蓋体の一部をなす要素の物性値が要素毎に記憶され、
前記演算部は、前記プロテクタ本体と前記第1の蓋体との接触の有無及び前記プロテクタ本体と前記第2の蓋体との接触の有無を、それぞれ判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記記憶部には、第1の係止部及び第2の係止部を有する前記プロテクタ本体の一部をなす要素の物性値、及び第1の被係止部を有する前記第1の蓋体と第2の被係止部を有する前記第2の蓋体とに分割されてモデル化された前記蓋体の一部をなす要素の物性値が要素毎に記憶され、
前記演算部は、前記第1の係止部と前記第1の被係止部との接触の有無、及び前記第2の係止部と前記第2の被係止部との接触の有無を、それぞれ判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
コンピュータを、請求項1から3のいずれか1項に記載の前記記憶部、前記記録部及び前記演算部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの形状を演算処理によって画像構築する解析装置、及びその解析装置が実行するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
実際のワイヤハーネスを製造する前に、仮想上のワイヤハーネスをコンピュータにてモデル化しその仮想上のワイヤハーネスに対して設計段階で検討することがなされている。この種のシミュレーションの例が、特許文献1または2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−132102号公報
【特許文献2】特開2009−181746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のシミュレーションを活用し、ハーネスを外部から保護するプロテクタが、該プロテクタの内部空間からハーネスがはみ出すことなく該内部空間にハーネスを収容し得る形状か否か、を評価したいという要求がある。このようなシミュレーションを実現するため、出願人は次の手法を想到した。すなわち、まず、ワイヤハーネスとして一つのモデルを定める。ここでは、例えばワイヤハーネスが電線、コネクタ、クランプ及びプロテクタで構成される場合、電線の径、長さ、本数、電線の材質により特定される物性値などの電線を規定する条件が初期パラメータとして与えられ、コネクタの形状、電線に対する取り付け位置、コネクタの材質により特定される物性値などのコネクタを規定する条件が初期パラメータとして与えられ、クランプの形状、電線に対する取り付け位置、クランプの材質により特定される物性値などのクランプを規定する条件が初期パラメータとして与えられ、プロテクタの形状、電線に対する取り付け位置、プロテクタの材質により特定される物性値などのプロテクタを規定する条件が初期パラメータとして与えられる。
【0005】
次に、こうして定められた一つのモデルに対し、コネクタまたは電線に所定の座標を与え、ある要素または要素間の関係を規定する条件に基づき電線を構成する各要素が位置する座標を演算する。ここで、コネクタまたは電線に与えられる所定の座標として、電線がプロテクタの内部空間に向かって進入する過程の3次元座標が与えられる。この座標の与え方は、作業者がプロテクタへ電線を収容する過程を想定したものである。また、ある要素または要素間の関係を規定する条件とは、例えば各要素に作用する重力による影響、各要素に作用する応力による影響、隣接する要素が互いに作用を及ぼしあう弾性力による影響、境界条件等、モデル化されたワイヤハーネスの各要素が従うべき物理現象が基礎方程式として定式化されたものである。
【0006】
このように、仮想上のワイヤハーネスをコンピュータにてモデル化し、そのモデル化したワイヤハーネスを形状が視認可能な状態で再現することによって、プロテクタが、内部空間にハーネスを収容し得る形状か否かを評価する。すなわち、解析者が、シミュレーションにより再現されたワイヤハーネスの像を視認し、プロテクタの内部空間から電線がはみ出していないかを評価する。しかしながら、この評価手法は、解析者(人間)が目視により判断するものである。このため、この評価手法は、主観的なものになってしまう。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハーネスを外部から保護するプロテクタが、該プロテクタの内部空間からハーネスがはみ出すことなく該内部空間にハーネスを収容し得る形状か否かを客観的に評価することできる解析装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る解析装置は、下記(1)から(3)を特徴としている。
(1) プロテクタ本体の開口を通してハーネスが内部に収容された状態で、前記開口を覆う蓋体を前記プロテクタ本体に装着可能であるか否かを評価する解析装置であって、
モデル化されたワイヤハーネスにおける、前記ハーネスの一部をなす要素の物性値、前記プロテクタ本体の一部をなす要素の物性値及び前記蓋体の一部をなす要素の物性値、が要素毎に記憶された記憶部と、
ある要素または要素間の関係を規定する条件に基づく解析手順を表現するプログラムが記録された記録部と、
前記記憶部に記憶された要素毎の物性値及び前記記録部に記録されたプログラムを参照して、前記プロテクタ本体の内部に前記ハーネスが収容され、且つ前記蓋体が前記プロテクタ本体の前記開口を覆った状態を再現した場合における、前記プロテクタ本体と前記蓋体の接触の有無を判定する演算部と、
を備えること。
(2) 上記(1)の構成の解析装置であって、
前記記憶部には、第1の蓋体と第2の蓋体とに分割されてモデル化された前記蓋体の一部をなす要素の物性値が要素毎に記憶され、
前記演算部は、前記プロテクタ本体と前記第1の蓋体との接触の有無及び前記プロテクタ本体と前記第2の蓋体との接触の有無を、それぞれ判定する
こと。
(3) 上記(2)の構成の解析装置であって、
前記記憶部には、第1の係止部及び第2の係止部を有する前記プロテクタ本体の一部をなす要素の物性値、及び第1の被係止部を有する前記第1の蓋体と第2の被係止部を有する前記第2の蓋体とに分割されてモデル化された前記蓋体の一部をなす要素の物性値が要素毎に記憶され、
前記演算部は、前記第1の係止部と前記第1の被係止部との接触の有無、及び前記第2の係止部と前記第2の被係止部との接触の有無を、それぞれ判定する、
こと。
【0009】
上記(1)の構成の解析装置によれば、ハーネスを外部から保護するプロテクタが、該プロテクタの内部空間からハーネスがはみ出すことなく該内部空間にハーネスを収容し得る形状か否かを客観的に評価することできる。
上記(2)の構成の解析装置によれば、プロテクタの内部空間からハーネスがはみ出している場合、そのハーネスがはみ出している箇所を特定することができる。
上記(3)の構成の解析装置によれば、プロテクタの内部空間からハーネスがはみ出している場合、そのハーネスがはみ出している箇所を特定することができる。
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係るプログラムは、下記(4)を特徴としている。
(4) コンピュータを、上記(1)から(3)のいずれか1つの構成の前記記憶部、前記記録部及び前記演算部として機能させるためのプログラム。
【0011】
上記(4)の構成のプログラムによれば、ハーネスを外部から保護するプロテクタが、該プロテクタの内部空間からハーネスがはみ出すことなく該内部空間にハーネスを収容し得る形状か否かを客観的に評価することできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の解析装置及びプログラムによれば、ハーネスを外部から保護するプロテクタが、該プロテクタの内部空間からハーネスがはみ出すことなく該内部空間にハーネスを収容し得る形状か否かを客観的に評価することできる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)は、本発明の実施形態に適用されるワイヤハーネスのプロテクタ本体の斜視図であり、図1(b)は、本発明の実施形態に適用されるワイヤハーネスのプロテクタ本体の正面図である。
図2図2(a)は、本発明の第1実施形態に適用されるワイヤハーネスの蓋体の斜視図であり、図2(b)は、本発明の第1実施形態に適用されるワイヤハーネスの蓋体の正面図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に適用されるワイヤハーネスのプロテクタの分解斜視図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に適用されるワイヤハーネスの、プロテクタ本体にハーネスが収容された状態を示す、プロテクタ本体の正面図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態におけるハーネスの収容状態の判定を説明する図である。
図6図6(a)は、本発明の第3実施形態に適用されるワイヤハーネスの蓋体の斜視図であり、図6(b)は、本発明の第3実施形態に適用されるワイヤハーネスの蓋体の正面図である。
図7図7は、本発明の第3実施形態に適用されるワイヤハーネスのプロテクタの分解斜視図である。
図8図8は、本発明の実施形態の解析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態について説明する。
[ワイヤハーネスの形状を画像構築するアルゴリズム]
本発明の実施形態では、有限要素法を用いて仮想上のワイヤハーネスをコンピュータにてモデル化し、そのモデル化したワイヤハーネスを形状が視認可能な状態で再現することによって、プロテクタが、内部空間にハーネスを収容し得る形状か否かを評価する。尚、本発明の実施形態では、数値解析手法として有限要素法を適用した場合について説明するが、ワイヤハーネスの形状を画像構築する本発明のアルゴリズムは有限要素法を基にしたものに限られない。
【0017】
[ワイヤハーネスの構造]
次に、有限要素法を用いてモデル化される仮想上のワイヤハーネスの構造について説明する。図1(a)は、本発明の実施形態に適用されるワイヤハーネスのプロテクタ本体の斜視図であり、図1(b)は、本発明の実施形態に適用されるワイヤハーネスのプロテクタ本体の正面図である。図2(a)は、本発明の第1実施形態に適用されるワイヤハーネスの蓋体の斜視図であり、図2(b)は、本発明の第1実施形態に適用されるワイヤハーネスの蓋体の正面図である。図3は、本発明の第1実施形態に適用されるワイヤハーネスのプロテクタの分解斜視図である。図4は、本発明の第1実施形態に適用されるワイヤハーネスの、プロテクタ本体にハーネスが収容された状態を示す、プロテクタ本体の正面図である。
【0018】
本発明の第1実施形態の解析装置及びプログラムによって形状が特定されるワイヤハーネスは、プロテクタ1、及びハーネス9を含んで構成される。
【0019】
プロテクタ1は、例えば自動車等の車両内部の所定の取付け箇所に取付けられて使用される。プロテクタ1は、一本の電線または少数本のサブハーネスを束ねることにより構成されるハーネス9を内部に収容し、ハーネス9を保護する。図4は、プロテクタ1にハーネス9が収容された状態を示し居ている。プロテクタ1は、プロテクタ本体2と、蓋体3と、を備えている。
【0020】
プロテクタ本体2は、樹脂製の部材を想定しており、図1(a)及び図1(b)に示すように、平板状の底壁4と、底壁4から起立して底壁4に対して垂直に延びる平板状の2つの側壁5,6と、を備え、全体として樋状に形成されている。以下、本明細書中では、底壁4から側壁5,6が延びる向きを上、当該向きとは逆向きを下として説明する。樋状に形成されているプロテクタ本体2は、上向きに開口している。即ち、プロテクタ本体2は、上面が開口している。プロテクタ本体2は、内部に形成されている収容空間内にハーネス9を収容する。この他に、プロテクタ本体2は、4つの開口部において開口している。ハーネス9は、図4に示すように、これら4つの開口部から導出される。また、側壁5、6の上部先端には、係止部としての係止穴5a、6aが形成されている。
【0021】
蓋体3は、樹脂製の部材を想定しており、図2(a)及び図2(b)に示すように、全体として平板状に形成されている。また、蓋体3には、被係止部として係止爪3aが形成されている。係止爪3aは、プロテクタ本体2の側壁5、6に形成された係止穴5a、6aと係合する。蓋体3は、プロテクタ本体2の上面の開口を覆い、且つ対向する係止穴5a、6aに係止爪3aが係合した状態で、プロテクタ本体2に対して固定される。尚、蓋体3がプロテクタ本体2の上面の開口を覆うことを閉じると称し、覆っていない状態を開いた状態と称する。
【0022】
[ワイヤハーネスのモデル化]
ここでは、[ワイヤハーネスの構造]にて説明した仮想上のワイヤハーネスの構造を、有限要素法による数値解析が可能なようにモデル化する。ワイヤハーネスを構成するプロテクタ1及びハーネス9それぞれの寸法を条件として設定し、各部材の構造を要素(メッシュ)によって細分化する。
【0023】
さらに、各部材における各要素に対して物性値を割り当てる。この物性値は、ワイヤハーネスの形状を数値解析によって再現するにあたって、各要素が従うべき物理現象を定式化した基礎方程式に代入されるパラメータである。プロテクタ1に関しては、プロテクタ本体2及び蓋体3にそれぞれ固有の物性値が割り当てられる。ハーネス9に関しては、内部導体、外被及び外部導体それぞれに固有の物性値が割り当てられる。
【0024】
[プロテクタにハーネスが収容されたワイヤハーネスの形状の算出]
次に、上述したようにモデル化されたワイヤハーネス、すなわち、各部材の構造が要素によって細分化され、各部材における各要素に対して物性値が割り当てられたワイヤハーネスを用いて、プロテクタにハーネスが収容されたワイヤハーネスの形状を数値解析によって特定する。有限要素法を用いてワイヤハーネスの形状を数値解析するアルゴリズムは、例えば特開2009−205401号公報に開示されている。本発明の実施形態においても、基本的には、この種のアルゴリズムを適用し、ワイヤハーネスの形状を算出する。
【0025】
さて、ワイヤハーネスの形状を上述のアルゴリズムによって特定するためには、プロテクタにハーネスが収容された状況を再現し、その状況におけるワイヤハーネスの形状を算出する必要がある。このような状況を再現するために、ワイヤハーネスに次のような外部条件を付加し、その条件を満たすように逐次、ワイヤハーネスの形状を上述のアルゴリズムに従う数値解析によって算出する。
【0026】
図3に示すようにプロテクタ本体2にハーネス9が収容されておらず、且つプロテクタ本体2に蓋体3が固定されていない状態のワイヤハーネスが、ワイヤハーネスの形状の初期状況である。より具体的には、プロテクタ本体2及び蓋体3にそれぞれ、初期の座標が割り当てられている。
【0027】
この初期状況から、まず、ハーネス9のうちのあるサブハーネスを所定の座標に向かって、すなわち、プロテクタ本体2の開口から側壁5、6の中央に向かって、移動させる外部条件を付加し、その条件を満たすように逐次、ワイヤハーネスの形状を算出する。さらに、ハーネス9のうちの別のサブハーネスを所定の座標に向かって移動させる外部条件を付加し、その条件を満たすように逐次、ワイヤハーネスの形状を算出する。この外部条件の付加とワイヤハーネスの形状の算出を、ハーネス9を構成する全てのサブハーネスに対して実行する。このような外部条件は、実際のワイヤハーネスを製造する工程における、作業者によるハーネスのプロテクタへの収容作業を定式化したものである。このため、サブハーネスを所定の座標に向かって移動させる順序は、実際のサブハーネスをプロテクタへ収容する順序に従う。
【0028】
サブハーネスを所定の座標に向かって移動させる過程において、各要素に作用する重力による影響、各要素に作用する応力による影響、隣接する要素が互いに作用を及ぼしあう弾性力による影響など、が上述のアルゴリズムによってワイヤハーネスの形状に反映される。あるサブハーネスが所定の座標に到達し、且つ上述のアルゴリズムにおける演算の収束条件を満たしたとき、そのサブハーネスの移動が完了したとみなす。そして、次のサブハーネスを所定の座標に向かって移動させ、この処理を、ハーネスを構成するサブハーネスのうちの最後のサブハーネスの移動が完了するまで繰り返す。こうして、作業者によるハーネスの収容作業を再現する。図4は、プロテクタ本体にハーネスがこうして収容された状態を示している。
【0029】
全てのサブハーネスの移動が完了した後、続いて、蓋体を所定の座標に向かって移動させる外部条件を付加し、その条件を満たすように逐次、ワイヤハーネスの形状を算出する。このような外部条件は、実際のワイヤハーネスを製造する工程における、作業者によるプロテクタ本体を蓋体で閉じる作業を定式化したものである。このため、蓋体3を移動させる所定の座標は、係止爪3aそれぞれが対応する係止穴5a、6aに係合したときに位置する座標である。
【0030】
蓋体3を所定の座標に向かって移動させる過程において、各要素に作用する重力による影響、各要素に作用する応力による影響、隣接する要素が互いに作用を及ぼしあう弾性力による影響など、が上述のアルゴリズムによってワイヤハーネスの形状に反映される。さらに、作業者が蓋体を押圧して係止爪3aそれぞれを係止穴5a、6aに嵌め込む状況を再現するため、蓋体3の上面には、下向きに所定の外力を作用させている。蓋体3が所定の座標に到達し、且つ上述のアルゴリズムにおける演算の収束条件を満たしたとき、蓋体3の移動が完了、すなわち、作業者によるプロテクタ本体を蓋体で閉じる作業が完了したものとみなす。こうして、作業者によるプロテクタ本体を蓋体で閉じる作業を再現する。
【0031】
[ハーネスの収容状態の判定]
上述した[プロテクタにハーネスが収容されたワイヤハーネスの形状の算出]にて蓋体3の移動が完了した後、続いて、ハーネス9の収容状態を判定する。すなわち、ハーネス9を外部から保護するプロテクタ1が、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出すことなく該内部空間にハーネス9を収容し得る形状か否かを評価する。図5は、本発明の第1実施形態におけるハーネスの収容状態の判定を説明する図である。
【0032】
図5は、蓋体3の移動が完了した後の、係止穴5a及び係止爪3aを含む面を視た横断面図を示している。本発明の第1実施形態では、ハーネス9の収容状態を判定するにあたって、蓋体3の移動が完了した後のプロテクタ本体2の側壁5,6の上端面と蓋体3の下面との接触の有無を判別する。具体的には、図5に示すように、プロテクタ本体2の側壁5の上端面に位置する要素、及び蓋体3の下面に位置する要素において、同一の大きさで向きが反対の応力を互いに及ぼし合う一対の要素の有無を判別する。同様に、プロテクタ本体2の側壁6の上端面に位置する要素、及び蓋体3の下面に位置する要素において、同一の大きさで向きが反対の応力を互いに及ぼし合う一対の要素の有無を判別する。このような一対の要素が、側壁5、6それぞれにあれば、プロテクタ本体2の開口が蓋体3によって覆われ、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出していないとみなす。こうして、プロテクタ本体2及び蓋体3から構成されるプロテクタ1が、内部空間にハーネス9を収容し得る形状であると判定する。
【0033】
一方、側壁5,6の一方、または両方において、上述の一対の要素が存在しない場合、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出しているとみなす。
【0034】
プロテクタ本体2の側壁5,6の上端面と蓋体3の下面との接触の有無によって、ハーネス9の収容状態を判定する手法について上述した。この手法以外に、次の手法もある。すなわち、図5に示すように、プロテクタ本体2の側壁5、6の係止穴5a、6aと蓋体3の係止爪3aとの接触の有無を判別する。具体的には、図5に示すように、プロテクタ本体2の側壁5の係止穴5a内面に位置する要素、及び蓋体3の係止爪3a外面に位置する要素において、同一の大きさで向きが反対の応力を互いに及ぼし合う一対の要素の有無を判別する。同様に、プロテクタ本体2の側壁6の係止穴6a内面に位置する要素、及び蓋体3の係止爪3a外面に位置する要素において、同一の大きさで向きが反対の応力を互いに及ぼし合う一対の要素の有無を判別する。このような一対の要素が、側壁5、6それぞれにあれば、プロテクタ本体2の開口が蓋体3によって覆われ、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出していないとみなす。
【0035】
さらに、プロテクタ本体2の側壁5、6の係止穴5a、6aと蓋体3の係止爪3aとの接触の有無を判別する手法としては、別の手法として、次の手法もある。すなわち、側壁5の係止穴5a内部に係止爪3aの一部または全部が位置しているか否かを判別する。同様に、側壁6の係止穴6a内部に係止爪3aの一部または全部が位置しているか否かを判別する。このような状態の係止穴5a,6a及び係止爪3aが、側壁5、6それぞれにあれば、プロテクタ本体2の開口が蓋体3によって覆われ、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出していないとみなす。
【0036】
以上、本発明の第1実施形態によれば、ハーネスを外部から保護するプロテクタが、該プロテクタの内部空間からハーネスがはみ出すことなく該内部空間にハーネスを収容し得る形状か否かを客観的に評価することできる。このため、従来の、解析者(人間)が目視により判断する評価手法に比して、解析者にかける負担を軽減することができる。
【0037】
[第2実施形態]
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。
[第1実施形態]では、図5を参照して、プロテクタ本体2の側壁5,6の上端面と蓋体3の下面との接触の有無によって、ハーネス9の収容状態を判定する手法について上述した。また、プロテクタ本体2の側壁5、6の係止穴5a、6aと蓋体3の係止爪3aとの接触の有無を判別する手法について説明した。これらの手法を応用すると、次の手法も有効である。
【0038】
すなわち、プロテクタ本体2の側壁5,6の上端面全面が蓋体3の下面に接触している場合、プロテクタ本体2の開口が蓋体3によって覆われ、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出していないとみなす。一方、プロテクタ本体2の側壁5,6の上端面に、蓋体3の下面に接触していない一部がある場合、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出しているとみなす。
【0039】
或いは、蓋体3に備わる係止爪3aの全てが、該係止爪3aに対応する位置にあるプロテクタ本体2の側壁5、6の係止穴5a、6aに接触している場合、プロテクタ本体2の開口が蓋体3によって覆われ、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出していないとみなす。一方、蓋体3に備わる係止爪3aのいずれかが、該係止爪3aに対応する位置にあるプロテクタ本体2の側壁5、6の係止穴5a、6aに接触していない場合、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出しているとみなす。
【0040】
これらの手法により、プロテクタの内部空間にハーネスを収容し得る形状か否かを客観的に評価するにあたって、より厳しい評価をすることができる。
【0041】
[第3実施形態]
以下、本発明に係る第3実施形態について説明する。
【0042】
あるプロテクタに関して内部空間にハーネスを収容し得る形状か否かを客観的に評価するにあたり、収容できる形状でないと評価されたときにそのプロテクタのどの部分に問題があるのかを特定することもまた重要な点である。ここでは、この点について留意した本発明の第3実施形態について詳細に説明する。図6(a)は、本発明の第3実施形態に適用されるワイヤハーネスの蓋体の斜視図であり、図6(b)は、本発明の第3実施形態に適用されるワイヤハーネスの蓋体の正面図である。図7は、本発明の第3実施形態に適用されるワイヤハーネスのプロテクタの分解斜視図である。
【0043】
[ワイヤハーネスの形状を画像構築するアルゴリズム]
[第1実施形態]の同項目にて説明したとおりであるため、説明を省略する。
【0044】
[ワイヤハーネスの構造]
[第1実施形態]の同項目にて説明したとおりであるため、説明を省略する。
【0045】
[ワイヤハーネスのモデル化]
ここでは、[ワイヤハーネスの構造]にて説明した仮想上のワイヤハーネスの構造を、有限要素法による数値解析が可能なようにモデル化する。ワイヤハーネスを構成するプロテクタ1及びハーネス9それぞれの寸法を条件として設定し、各部材の構造を要素(メッシュ)によって細分化する。
【0046】
第3実施形態は、モデル化されたワイヤハーネスの構造が第1実施形態または第2実施形態にて説明したものと異なる。すなわち、第1実施形態または第2実施形態にてモデル化されたワイヤハーネスの構造は蓋体3がプロテクタ本体2の開口全体を覆うものであるのに対し、第3実施形態にてモデル化されたワイヤハーネスの構造は、図6(a)及び図6(b)に示されるように、蓋体3が5つの蓋部31〜35に分割され、蓋部31〜35のそれぞれがプロテクタ本体2の開口の一部を覆うものである。蓋部31〜35にはそれぞれ、プロテクタ本体2の側壁5、6に形成された係止穴5a、6aに係合する係止爪3aが形成されている。
【0047】
さらに、各部材における各要素に対して物性値を割り当てる。この物性値は、ワイヤハーネスの形状を数値解析によって再現するにあたって、各要素が従うべき物理現象を定式化した基礎方程式に代入されるパラメータである。プロテクタ1に関しては、プロテクタ本体2及び蓋体3にそれぞれ固有の物性値が割り当てられる。ハーネス9に関しては、内部導体、外被及び外部導体それぞれに固有の物性値が割り当てられる。
【0048】
[プロテクタにハーネスが収容されたワイヤハーネスの形状の算出]
次に、上述したようにモデル化されたワイヤハーネス、すなわち、各部材の構造が要素によって細分化され、各部材における各要素に対して物性値が割り当てられたワイヤハーネスを用いて、プロテクタにハーネスが収容されたワイヤハーネスの形状を数値解析によって特定する。有限要素法を用いてワイヤハーネスの形状を数値解析するアルゴリズムは、例えば特開2009−205401号公報に開示されている。本発明の実施形態においても、基本的には、この種のアルゴリズムを適用し、ワイヤハーネスの形状を算出する。
【0049】
さて、ワイヤハーネスの形状を上述のアルゴリズムによって特定するためには、プロテクタにハーネスが収容された状況を再現し、その状況におけるワイヤハーネスの形状を算出する必要がある。このような状況を再現するために、ワイヤハーネスに次のような外部条件を付加し、その条件を満たすように逐次、ワイヤハーネスの形状を上述のアルゴリズムに従う数値解析によって算出する。
【0050】
図7に示すようにプロテクタ本体2にハーネス9が収容されておらず、且つプロテクタ本体2に蓋部31〜35それぞれが固定されていない状態のワイヤハーネスが、ワイヤハーネスの形状の初期状況である。より具体的には、プロテクタ本体2及び蓋部31〜35にそれぞれ、初期の座標が割り当てられている。
【0051】
この初期状況から、まず、ハーネス9のうちのあるサブハーネスを所定の座標に向かって、すなわち、プロテクタ本体2の開口から側壁5、6の中央に向かって、移動させる外部条件を付加し、その条件を満たすように逐次、ワイヤハーネスの形状を算出する。さらに、ハーネス9のうちの別のサブハーネスを所定の座標に向かって移動させる外部条件を付加し、その条件を満たすように逐次、ワイヤハーネスの形状を算出する。この外部条件の付加とワイヤハーネスの形状の算出を、ハーネス9を構成する全てのサブハーネスに対して実行する。このような外部条件は、実際のワイヤハーネスを製造する工程における、作業者によるハーネスのプロテクタへの収容作業を定式化したものである。このため、サブハーネスを所定の座標に向かって移動させる順序は、実際のサブハーネスをプロテクタへ収容する順序に従う。
【0052】
サブハーネスを所定の座標に向かって移動させる過程において、各要素に作用する重力による影響、各要素に作用する応力による影響、隣接する要素が互いに作用を及ぼしあう弾性力による影響など、が上述のアルゴリズムによってワイヤハーネスの形状に反映される。あるサブハーネスが所定の座標に到達し、且つ上述のアルゴリズムにおける演算の収束条件を満たしたとき、そのサブハーネスの移動が完了したとみなす。そして、次のサブハーネスを所定の座標に向かって移動させ、この処理を、ハーネスを構成するサブハーネスのうちの最後のサブハーネスの移動が完了するまで繰り返す。こうして、作業者によるハーネスの収容作業を再現する。
【0053】
全てのサブハーネスの移動が完了した後、続いて、蓋部31〜35それぞれを所定の座標に向かって移動させる外部条件を付加し、その条件を満たすように逐次、ワイヤハーネスの形状を算出する。このような外部条件は、実際のワイヤハーネスを製造する工程における、作業者によるプロテクタ本体を蓋体で閉じる作業を定式化したものである。このため、蓋部31〜35を移動させる所定の座標は、蓋部31〜35それぞれに備わる係止爪3aが対応する係止穴5a、6aに係合したときに位置する座標である。
【0054】
蓋部31〜35を所定の座標に向かって移動させる過程において、各要素に作用する重力による影響、各要素に作用する応力による影響、隣接する要素が互いに作用を及ぼしあう弾性力による影響など、が上述のアルゴリズムによってワイヤハーネスの形状に反映される。さらに、作業者が蓋体を押圧して係止爪3aそれぞれを係止穴5a、6aに嵌め込む状況を再現するため、蓋部31〜35それぞれの上面には、下向きに所定の外力を作用させている。蓋部31〜35のうちのいずれか一つが所定の座標に到達し、且つ上述のアルゴリズムにおける演算の収束条件を満たしたとき、該蓋部の移動が完了したとみなし、別の蓋部31〜35を所定の座標に向かって移動させる。そして、全ての蓋部31〜35の移動が完了したとき、作業者によるプロテクタ本体を蓋体で閉じる作業が完了したものとみなす。こうして、作業者によるプロテクタ本体を蓋体で閉じる作業を再現する。
【0055】
[ハーネスの収容状態の判定]
上述した[プロテクタにハーネスが収容されたワイヤハーネスの形状の算出]にて蓋部31〜35の移動が完了した後、続いて、ハーネス9の収容状態を判定する。すなわち、ハーネス9を外部から保護するプロテクタ1が、プロテクタ本体2及び蓋部31〜35によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出すことなく該内部空間にハーネス9を収容し得る形状か否かを評価する。
【0056】
本発明の第3実施形態では、ハーネス9の収容状態を判定するにあたって、蓋部31〜35の移動が完了した後のプロテクタ本体2の側壁5,6の上端面と蓋部31〜35それぞれの下面との接触の有無を判別する。具体的には、第1実施形態にて図5を参照して説明したように、プロテクタ本体2の側壁5の上端面に位置する要素、及び蓋部31〜35の下面に位置する要素において、同一の大きさで向きが反対の応力を互いに及ぼし合う一対の要素の有無を判別する。同様に、プロテクタ本体2の側壁6の上端面に位置する要素、及び蓋部31〜35の下面に位置する要素において、同一の大きさで向きが反対の応力を互いに及ぼし合う一対の要素の有無を判別する。ある蓋部31〜35に関して、このような一対の要素が側壁5、6それぞれにあれば、プロテクタ本体2の開口のうちの一部が蓋部31〜35によって覆われているとみなす。そして、全ての蓋部31〜35に関して、上述の一対の要素が側壁5、6それぞれにあれば、プロテクタ本体2及び蓋部31〜35によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出していないとみなす。こうして、プロテクタ本体2及び蓋体3から構成されるプロテクタ1が、内部空間にハーネス9を収容し得る形状であると判定する。
【0057】
一方、ある蓋部31〜35に関して、側壁5,6の一方、または両方において、上述の一対の要素が存在しない場合、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出しているとみなす。さらに、上述の一対の要素が存在しない蓋部が特定されることにより、その蓋部とプロテクタ本体とに挟まれる内部空間からハーネス9がはみ出していると評価する。このようにして、プロテクタ1におけるハーネス9がはみ出す箇所を特定することができる。
【0058】
プロテクタ本体2の側壁5,6の上端面と蓋部31〜35それぞれの下面との接触の有無によって、ハーネス9の収容状態を判定する手法について上述した。この手法以外に、次の手法もある。すなわち、第1実施形態にて図5を参照して説明したように、プロテクタ本体2の側壁5、6の係止穴5a、6aと蓋部31〜35の係止爪3aとの接触の有無を判別する。具体的には、プロテクタ本体2の側壁5の係止穴5a内面に位置する要素、及び蓋部31〜35の係止爪3a外面に位置する要素において、同一の大きさで向きが反対の応力を互いに及ぼし合う一対の要素の有無を判別する。同様に、プロテクタ本体2の側壁6の係止穴6a内面に位置する要素、及び蓋部31〜35の係止爪3a外面に位置する要素において、同一の大きさで向きが反対の応力を互いに及ぼし合う一対の要素の有無を判別する。このような一対の要素が、全ての蓋部31〜35に関して側壁5、6それぞれにあれば、プロテクタ本体2の開口が蓋体3によって覆われ、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出していないとみなす。
【0059】
さらに、プロテクタ本体2の側壁5、6の係止穴5a、6aと蓋部31〜35の係止爪3aとの接触の有無を判別する手法としては、別の手法として、次の手法もある。すなわち、側壁5の係止穴5a内部に係止爪3aの一部または全部が位置しているか否かを判別する。同様に、側壁6の係止穴6a内部に係止爪3aの一部または全部が位置しているか否かを判別する。このような状態の係止穴5a,6a及び係止爪3aが、全ての蓋部31〜35に関して側壁5、6それぞれにあれば、プロテクタ本体2の開口が蓋体3によって覆われ、プロテクタ本体2及び蓋体3によって囲まれる内部空間からハーネス9がはみ出していないとみなす。
【0060】
以上、本発明の第3実施形態によれば、ハーネスを外部から保護するプロテクタが、該プロテクタの内部空間からハーネスがはみ出すことなく該内部空間にハーネスを収容し得る形状か否かを客観的に評価することできる。このため、従来の、解析者(人間)が目視により判断する評価手法に比して、解析者にかける負担を軽減することができる。
【0061】
また、本発明の第3実施形態によれば、プロテクタ本体2に固定されていない蓋部31〜35を特定することにより、プロテクタ1の内部空間からハーネス9がはみ出している箇所を特定することができる。このため、プロテクタのどの部分に問題があるのかまで評価の対象とすることができる。
【0062】
ところで、本発明の第3実施形態のように蓋体3を分割し、各蓋部31〜35毎に内部空間からハーネス9のはみ出しを評価する場合、次の点でも有効である。すなわち、第1実施形態または第2実施形態で説明したように蓋体3がプロテクタ本体2の開口全体を覆う場合であって、ある一箇所(例えば、プロテクタ1の長手方向中央)でハーネス9が大きくはみ出したとき、蓋体3の下面のいずれの箇所も、プロテクタ本体2の側壁5,6の上端面に接触しないことがある。一方、第3実施形態で説明したように蓋部31〜35がプロテクタ本体2の開口全体を覆う場合であって、ある一箇所(例えば、プロテクタ1の長手方向中央)でハーネス9が大きくはみ出したとき、ある蓋部の下面がプロテクタ本体2の側壁5,6の上端面に接触しないものの、別の蓋部の下面がプロテクタ本体2の側壁5,6の上端面に接触する。このように、第3実施形態は、プロテクタのどの部分に問題があるのかを特定できるものであるが、逆に捉えれば、問題の無い部分を特定できる手法であるともいえる。第3実施形態は、プロテクタのどの部分に問題が有るか、または、プロテクタのどの部分に問題が無いか、のいずれを評価の結果としてもよい。
【0063】
[ハードウェアの構成]
図8は、本発明の実施形態の解析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。本発明に係る実施形態の解析装置は、入力部811、データベース部812、プログラム記録部813、データ記憶部814、表示部815、処理部816を含んで構成される。本発明の解析装置は、例えば汎用PCによって構成される場合、入力部811はキーボード、マウス、テンキーなどの各種入力インタフェースによって実現され、データベース部812及びプログラム記録部813は、ハードディスクドライブ(HDD)によって実現され、データ記憶部818はRAM(Random Access Memory)によって実現され、表示部815はCRTディスプレイ、液晶ディスプレイなどの各種出力デバイスによって実現され、処理部816、CPU(Central Processing Unit)によって実現される。
【0064】
データベース部812には、ワイヤハーネスをモデル化する際に利用されるプロテクタ1及びハーネス9の形状及び物性値についての情報が記憶されている。また、プログラム記録部813には、上述の[ワイヤハーネスの形状を画像構築するアルゴリズム]にて説明したアルゴリズムがコード化されたプログラムが記録されている。また、データ記憶部814には、[プロテクタにハーネスが収容されたワイヤハーネスの形状の算出]にて説明した演算を実行している処理部816から入出力されるデータが記録される。
【符号の説明】
【0065】
1 プロテクタ
2 プロテクタ本体
3 蓋体
3a 係止爪
4 底壁
5、6 側壁
5a、6a 係止穴
9 ハーネス
811 入力部
812 データベース部
813 プログラム記録部
814 データ記憶部
815 表示部
816 処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8