(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209405
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】キャビネットの組み立て方法
(51)【国際特許分類】
H02B 1/30 20060101AFI20170925BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H02B1/30 B
H02B1/40 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-194390(P2013-194390)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-61433(P2015-61433A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 典夫
【審査官】
山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−092407(JP,U)
【文献】
実開昭56−141509(JP,U)
【文献】
特開平01−181970(JP,A)
【文献】
特開昭57−047585(JP,A)
【文献】
実開平03−127427(JP,U)
【文献】
特開2004−331703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/30
H02B 1/40
B23K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背板部、天板部、底板部、及び一対の側板部を一体的に有する一枚板状の部材を折り曲げてなり、前面を除く他の5面を閉塞するキャビネット本体と、前記キャビネット本体の前面開口を開閉する前扉とを備えたキャビネットの組み立て方法であって、
前記キャビネット本体に対して、
一の板部に対して他の板部を折り曲げ、一方の前記板部の端面を所定量露出させつつ、当該一方の端面上に他方の前記板部の外縁部における内面側を当接させた状態とする第1工程と、
前記当接部に沿ってレーザー溶接を行い、両前記板部の端面を溶接箇所で覆う第2工程と
を実行することを特徴とするキャビネットの組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば分電盤や配電盤等を収納するためのキャビネット
の組み立て方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば分電盤や配電盤等を収納するためのキャビネットとしては、特許文献1に記載されているように、前面を除く他の5面を閉塞するキャビネット本体と、当該キャビネット本体の前面開口を開閉する扉体とを備えてなるものが知られている。
また、そのようなキャビネット本体を形成するにあたっては、背板、天板、底板、及び一対の側板を夫々別途成形するとともに、それらの板体を溶接して一体化することにより形成することが多い。そして、板体同士を溶接するにあたっては、
図4(b)に示すように、一方の板体の端面を他方の板体の内面側に当接させた状態(たとえば、天板31の端面を側板32の内面側に当接させた状態)で、板体同士を隅肉溶接(
図4(b)のハッチング部)して一体化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−172900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記隅肉溶接により背板、天板、底板、及び一対の側板を一体化しようとすると、溶接箇所となる合わせ面(
図4(b)では、側板32における天板31のの当接箇所が合わせ面となる)として広い面積を確保する必要があるため、キャビネット本体の内部空間における有効スペースが減少するという問題がある。また、溶接箇所の周辺部、特にキャビネット本体の外面に露出した板体の端面には塗装がのりにくいため、当該端面から錆が発生してしまうという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、合わせ面として確保する面積を削減することができ、キャビネット本体の外面に錆も発生しにくいキャビネット
の組み立て方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、
背板部、天板部、底板部、及び一対の側板部を一体的に有する一枚板状の部材を折り曲げてなり、前面を除く他の5面を閉塞するキャビネット本体と、前記キャビネット本体の前面開口を開閉する前扉とを備えたキャビネット
の組み立て方法であって、前記キャビネット本体に対して、一の板部に対して他の板部を折り曲
げ、一方の前記板部の端面を所定量露出させつつ、当該一方の端面上に他方の前記板部の外縁部における内面側を当接させた状態とする第1工程と、前記当接部に沿って
レーザー溶接を行
い、両前記板部の端面を溶接箇所で覆
う第2工程とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キャビネット本体を、背板部、天板部、底板部、及び一対の側板部を一体的に有する一枚板状に形成し、一の板部に対して他の板部を折り曲げるとともに、板部同士の当接部を溶接することによって形成した。また、当接部の溶接については、一方の板部の端面を所定量露出させつつ、当該一方の端面上に他方の板部の外縁部における内面側を当接させた状態で、当接部に沿って溶接を行い、両板部の端面を溶接箇所で覆った。したがって、従来のキャビネットと比べると、溶接箇所において合わせ面として確保する面積を削減することができ、キャビネット本体の内部空間における有効スペースを増大することができる。また、両板部の端面が溶接箇所に覆われて露出しない上に溶接箇所がR状となることから、当該溶接箇所及びその周辺部に塗装がのりやすく、従来の如く溶接箇所の周辺部から錆が発生するという事態を抑制することができる。さらに、全ての板部を別個に準備するものと比べて溶接箇所を少なくすることができ、組み立て作業の簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】キャビネットの外観を示した斜視説明図である。
【
図2】前扉を開いた状態のキャビネットを示した斜視説明図である。
【
図3】キャビネット本体を展開した状態を示した説明図である。
【
図4】溶接箇所を示した説明断面図であり、(a)は本実施形態における溶接箇所を、(b)は従来の溶接箇所を夫々示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となるキャビネットについて、図面にもとづき詳細に説明する。
【0010】
図1は、キャビネット1の外観を示した斜視説明図であり、
図2は、前扉3を開いた状態のキャビネット1を示した斜視説明図である。
【0011】
キャビネット1は、前面を除く他の5面を閉塞するキャビネット本体2と、キャビネット本体2の前面開口4を開閉する前扉3とを備えてなるものであって、キャビネット本体2の内部空間には、分電盤や配電盤等の図示しない電気機器を収納可能となっている。また、前扉3は、上下方向を軸として回動自在にキャビネット本体2に蝶着されており、その後面には、キャビネット本体2への水の浸入等を防止するためのシール部材5が取り付けられている。
【0012】
ここで、本発明の要部となるキャビネット本体2について、
図3をもとに説明する。
図3は、キャビネット本体2を展開した状態を示した説明図である。
キャビネット本体2は、金属製の板状部材であって、略中心に位置する背板部11と、背板部11から上方へ突出する天板部12と、背板部11から下方へ突出する底板部13と、背板部11から左右両側方へ突出する一対の側板部14、14とを有する一枚板状に成形されてなる。なお、天板部12、底板部13、及び側板部14、14の外縁部には、曲げ起こしたり折り返したりした折り曲げ部20a、20b、20cが夫々設けられている。当該折り曲げ部20a〜20cは、後述の如くキャビネット本体2を組み立てた際に一連となり、
図2に示す如く、キャビネット本体2の前面開口4を囲むような水切り部20が形成されるようになっている。
【0013】
そして、上記キャビネット本体2は、背板部11に対し、天板部12、底板部13、及び側板部14、14を夫々前側へ折り曲げるとともに、背板部12と側板部14、14との当接部15(
図1や
図2に示す)、及び底板部13と側板部14、14との当接部15を夫々溶接することによって組み立てられる。この溶接にあたっては、
図4(a)に示すように、一方の板部の端面を半分程度露出させつつ、当該一方の端面上に他方の板部の外縁部における内面側を当接させた状態(たとえば、側板部14の端面を半分程度露出させるような状態で、側板部14の端面上に天板部12の外縁部における内面側を当接させた状態)とする。そして、該当接部15に沿ってレーザー溶接を行い、両板部の端面を溶接箇所(
図4(a)のハッチング部)により覆う。
【0014】
以上のような構成を有するキャビネット1によれば、キャビネット本体2が、背板部11、天板部12、底板部13、及び側板部14、14を有する一枚板状に形成されている。そして、当該キャビネット本体2は、背板部11に対して、天板部12や底板部13、側板部14、14を折り曲げ、天板部12と側板部14、14との当接部15、及び底板部13と側板部14、14との当接部15を溶接することにより組み立てられる。また、当接部15の溶接については、一方の板部の端面を半分程度露出させつつ、当該一方の端面上に他方の板部の外縁部における内面側を当接させた状態とし、該当接部15に沿ってレーザー溶接を行い、両板部の端面を溶接箇所により覆うようにした。したがって、従来のキャビネットと比べると、溶接箇所において合わせ面として確保する面積を削減することができる(上記実施形態では、合わせ面の面積を従来の略半分とすることができる)ことになり、キャビネット本体2の内部空間における有効スペースを増大することができる。また、両板部の端面が溶接箇所に覆われて露出しない上に溶接箇所がR状となることから、当該溶接箇所及びその周辺部に塗装がのりやすく、従来の如く溶接箇所の周辺部から錆が発生するという事態を抑制することができる。さらに、キャビネット本体2を、背板部11、天板部12、底板部13、及び側板部14、14を有する一枚板状に形成したことで、全ての板部を別個に準備するものと比べて溶接箇所を少なくすることができ、組み立て作業の簡易化を図ることができる。
【0015】
なお、本発明に係るキャビネットは、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、キャビネットの全体的な構成は勿論、キャビネット本体の形状等について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0016】
たとえば、上記実施形態では、キャビネット本体を、背板部を中心に、天板部、底板部、及び側板部が突出してなるものとしているが、たとえば天板部を中心に、背板部、及び側板部が突出し、背板部から底板部が突出するように形成することも可能であり、背板部、天板部、底板部、及び側板部を有する一枚板状であるなら、キャビネット本体の形状は適宜変更設計可能である。
また、当接部において、上記実施形態では、一方の板部の端面を半分程度露出させつつ、当該一方の端面上に他方の板部の外縁部における内面側を当接させた状態としているが、どの程度露出させるかは、板部の厚みや求められている強度等に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0017】
1・・キャビネット、2・・キャビネット本体、3・・前扉、4・・前面開口、11・・背板部、12・・天板部、13・・底板部、14・・側板部、15・・当接部。