特許第6209411号(P6209411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209411コークス炉ガス回収装置及びコークス炉ガス回収用スプレーノズル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209411
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】コークス炉ガス回収装置及びコークス炉ガス回収用スプレーノズル
(51)【国際特許分類】
   C10B 27/06 20060101AFI20170925BHJP
   B05B 1/34 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C10B27/06 Z
   B05B1/34 101
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-199205(P2013-199205)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-63630(P2015-63630A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142023
【氏名又は名称】株式会社共立合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129403
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】土岐 正弘
(72)【発明者】
【氏名】吉松 崇
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐基
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 徹也
(72)【発明者】
【氏名】下世 昭一
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−62508(JP,U)
【文献】 特開昭58−38785(JP,A)
【文献】 実開昭50−1556(JP,U)
【文献】 特開平9−327641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 27/06
B05B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンド管の一端とドライメンの開口部との接続部に設けられたスロート部に向けて流体を噴射するスプレーノズルと、該スプレーノズルに供給する前記流体の圧力を調整する圧力調整部と、を有し、前記スプレーノズルから前記流体を噴射することにより、炭化室から発生するコークス炉ガスを冷却するとともに前記ベンド管及び前記ドライメンを介して前記コークス炉ガスを吸引して回収するコークス炉ガス回収装置であって、
前記スプレーノズルは、噴射した前記流体の噴霧形状が中空円錐をなし、前記流体の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度が小さくなる構成とされており、
前記圧力調整部における前記流体の供給圧力が1.0MPa以上2.5MPa以下の条件で、前記スロート部の内径Dと前記スロート部における前記スプレーノズルの噴射径dとの比d/Dが0.70以上0.95以下の範囲内とされていることを特徴とするコークス炉ガス回収装置。
【請求項2】
前記スプレーノズルの内部には、流体に旋回流を与える流路指向体が配設されており、
前記流路指向体は、一対の板状部材が互いに斜めに交差するように組み合わせられた構造とされ、前記一対の板状部材の交差角度が、60°以上85°以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉ガス回収装置。
【請求項3】
前記スプレーノズルの内部には、オリフィス部が設けられており、このオリフィス部の内径d2が、15mm以上25mm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコークス炉ガス回収装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコークス炉ガス回収装置において使用されるコークス炉ガス回収用スプレーノズルであって、
噴霧形状が中空円錐をなしており、流体の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度が小さくなる構成とされていることを特徴とするコークス炉ガス回収用スプレーノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化室に装入された石炭を加熱してコークスを生成するコークス炉において、炭化室から発生するコークス炉ガスを回収するコークス炉ガス回収装置及びこのコークス炉ガス回収装置において使用されるコークス炉ガス回収用スプレーノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述のコークス炉としては、例えば特許文献1に示すように、複数の炭化室と燃焼室とが交互に配置された構造とされたものが提供されている。このコークス炉では、炭化室内に装入された石炭を高温で乾留することでコークスを製造する。
炭化室には、複数の装入孔が設けられており、これらの装入孔を介して石炭装入車から石炭が装入される。ここで、炭化室においては、石炭に含まれる揮発成分が揮発することによりコークス炉ガスが発生する。
【0003】
炭化室において発生したコークス炉ガスは、各炭化室の天井部に設けられた上昇管からベンド管を介して集合管であるドライメンへ排出される。ドライメンは、オフテークメンを介してサクションメンに接続されており、前述のコークス炉ガスは、オフテークメン及びサクションメンを介して、ガス処理施設へと移送される。
ここで、特許文献2、3に示すように、ベンド管には、ベンド管の内部に向けて流体を噴射する流体噴射手段が設けられており、この流体噴射のエジェクタ効果によってコークス炉ガスがドライメン側に吸引される構成とされている。なお、これら特許文献2,3に記載された流体噴射手段においては、噴射形状が中実円錐をなすいわゆるフルコーン型のスプレーノズルが用いられている。また、流体として安水(アンモニア水)が用いられている。
【0004】
ところで、石炭を炭化室に装入した際には、高温の炭化室の側面や底面に石炭が接触し、石炭に含まれる揮発成分が速やかに揮発するとともに多くの粉塵が発生し、コークス炉ガスの発生量が多くなる。
一方、石炭の装入が完了して乾留を実施している際には、揮発成分の揮発が安定するとともに粉塵の発生が抑制されることから、コークス炉ガスの発生量が少なくなる。
このため、石炭の装入時には流体噴射手段から高圧で流体を噴射することによりコークス炉ガスを積極的に吸引しており、石炭の乾留時には流体噴射手段から低圧で流体を噴射することによりコークス炉ガスの冷却が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−249453号公報
【特許文献2】特開昭52−057201号公報
【特許文献3】特開平11−005981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では、コークス炉の炉寿命延長が図られており、石炭室の耐火材の使用期間も長くなってきている。また、製造コスト低減の観点から、低品位な石炭の利用も促進されている。このため、石炭を炭化室に装入した際に、従来にも増して粉塵の発生量が多くなってきており、コークス炉ガスの発生量が増加する傾向にある。
石炭の装入時に多量のコークス炉ガスを確実に吸引するためには、流体噴射手段から高圧で流体を噴射し、エジェクタ効果を十分に作用させる必要がある。しかしながら、特許文献2,3に記載された従来の流体噴射手段においては、噴射形状が中実円錐をなすいわゆるフルコーン型のスプレーノズルが用いられていることから、流体の供給圧力を高圧としても、ベンド管内面の近傍に向けて噴射される流体の流速を十分に高くすることができず、エジェクタ効果を十分に作用することができないおそれがあった。また、ベンド管内面の近傍に向けて噴射される流体の流速を確保するためには、流体の供給圧力をさらに高圧にする必要があり、ポンプや配管等の設備費が増大してしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、炭化室から多量のコークス炉ガスが発生した場合であっても、コークス炉ガスを確実に吸引することができ、安定した操業を行うことが可能なコークス炉ガス回収装置及びこのコークス炉ガス回収装置において使用されるコークス炉ガス回収用スプレーノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るコークス炉ガス回収装置は、ベンド管の一端とドライメンの開口部との接続部に設けられたスロート部に向けて流体を噴射するスプレーノズルと、該スプレーノズルに供給する前記流体の圧力を調整する圧力調整部と、を有し、前記スプレーノズルから前記流体を噴射することにより、炭化室から発生するコークス炉ガスを冷却するとともに前記ベンド管及び前記ドライメンを介して前記コークス炉ガスを吸引して回収するコークス炉ガス回収装置であって、前記スプレーノズルは、噴射した前記流体の噴霧形状が中空円錐をなし、前記流体の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度が小さくなる構成とされており、前記圧力調整部における前記流体の供給圧力が1.0MPa以上2.5MPa以下の条件で、前記スロート部の内径Dと前記スロート部における前記スプレーノズルの噴射径dとの比d/Dが0.70以上0.95以下の範囲内とされていることを特徴としている。
【0009】
この構成のコークス炉ガス回収装置においては、噴霧形状が中空円錐をなすいわゆるホロコーン型のスプレーノズルを用いているので、スプレーノズルへ供給された流体は、ベンド管の中心領域には噴射されず、ベンド管の内面近傍の領域に向けて噴射されることになる。このため、スプレーノズルへの流体の供給圧力を上昇した場合には、ベンド管の内面近傍の領域を通過する流体の流速が速くなり、エジェクタ効果を十分に作用させることが可能となる。よって、石炭装入時に発生する多量のコークス炉ガスを確実に吸引することができる。また、流体の供給圧力を必要以上に高圧とする必要がないので、ポンプや配管等の設備費を抑えることができる。
さらに、流体の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度が小さくなる構成とされているので、高圧で噴射した流体がベンド管の内面に接触してエジェクタ効果が低減することを抑制でき、コークス炉ガスを確実に吸引することができる。
【0010】
また、本発明のコークス炉ガス回収装置においては、前記スプレーノズルに供給する流体の圧力を調整する圧力調整部を有しているので、前記コークス炉ガスの吸引時には、前記流体の供給圧力を高圧とすることで噴霧角度が小さくなり、高圧で噴射した流体がベンド管の内面に接触してエジェクタ効果が低減することなく、コークス炉ガスを効果的に吸引することができる。一方、前記コークス炉ガスの冷却時には、前記流体の供給圧力を低圧とすることで噴霧角度が大きくなり、ベンド管内部に広く流体を分散させることができ、ベンド管内を通過するコークス炉ガスを効果的に冷却することができる。
【0011】
また、本発明のコークス炉ガス回収装置においては、前記圧力調整部における前記流体の供給圧力が1.0MPa以上2.5MPa以下の条件で、前記スロート部の内径Dと前記スロート部における前記スプレーノズルの噴射径dとの比d/Dが0.70以上0.95以下の範囲内とされているので、エジェクタ効果を十分に作用させることができ、石炭装入時の多量のコークス炉ガスを確実に吸引することができる。
【0012】
ここで、本発明のコークス炉ガス回収装置においては、前記スプレーノズルの内部には、流体に旋回流を与える流路指向体が配設されており、前記流路指向体は、一対の板状部材が互いに斜めに交差するように組み合わせられた構造とされ、前記一対の板状部材の交差角度が、60°以上85°以下の範囲内とされている構成としてもよい。
この場合、流体に旋回流を与える流路指向体が一対の板状部材が互いに斜めに交差するように組み合わせられた構造とされているので、噴霧形状が中空円錐をなすとともに、流体圧力の上昇に応じて噴霧角度が小さくなる。また、一対の板状部材の交差角度が60°以上85°以下の範囲内とされているので、噴霧形状及び噴霧角度が安定し、コークス炉ガスの吸引及び冷却を安定して実施することができる。
【0013】
また、本発明のコークス炉ガス回収装置においては、前記スプレーノズルの内部には、オリフィス部が設けられており、このオリフィス部の内径d2が、15mm以上25mm以下の範囲内とされている構成としてもよい。
この場合、スプレーノズルの内部に設けられたオリフィス部の内径d2が15mm以上25mm以下の範囲内とされているので、噴霧形状を中空円錐に安定させることができ、コークス炉ガスの吸引及び冷却を安定して実施することができる。
【0014】
本発明のコークス炉ガス回収用スプレーノズルは、上述のコークス炉ガス回収装置において使用されるコークス炉ガス回収用スプレーノズルであって、噴霧形状が中空円錐をなしており、流体の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度が小さくなる構成とされていることを特徴としている。
【0015】
この構成のコークス炉ガス回収用スプレーノズルによれば、噴霧形状が中空円錐をなしているので、エジェクタ効果を十分に作用させることができ、コークス炉ガスの吸引を効率的に行うことが可能となる。また、流体の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度が小さくなる構成とされているので、流体の供給圧力を高圧にした場合にはベンド管の内面と噴霧した流体との接触を抑制してエジェクタ効果を十分に奏功せしめることができ、流体の供給圧力を低圧にした場合にはベンド管の内部全体に流体を噴霧してコークス炉ガスの冷却を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
上述のように、本発明によれば、炭化室から多量のコークス炉ガスが発生した場合であっても、コークス炉ガスを確実に吸引することができ、安定した操業を行うことが可能なコークス炉ガス回収装置及びこのコークス炉ガス回収装置において使用されるコークス炉ガス回収用スプレーノズルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態であるコークス炉ガス回収装置が設けられたコークス炉の概略説明図である。
図2図1に示すコークス炉における炭化室の断面説明図である。
図3】本発明の一実施形態であるコークス炉ガス回収装置の概略説明図である。
図4】本発明の一実施形態であるコークス炉ガス回収用スプレーノズルの概略説明図である。
図5図4に示すコークス炉ガス回収用スプレーノズルの部分断面説明図である。
図6図4に示すコークス炉ガス回収用スプレーノズルに設けられた流路指向体の概略説明図である。
図7図4に示すコークス炉ガス回収用スプレーノズルに設けられたオリフィスの概略説明図である。
図8】ベンド管のスロート部の内径Dとスロート部におけるスプレーノズルの噴射径dとの比d/Dと、吸引圧力比と、の関係を示すグラフである。
図9】本発明例1のスプレーノズルのノズル背圧と噴霧角度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態であるコークス炉ガス回収装置及びコークス炉ガス回収用スプレーノズルについて、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態であるコークス炉ガス回収装置50は、コークス炉1の炭化室10から発生するコークス炉ガスを回収するとともに、このコークス炉ガスの冷却を行うものである。
【0019】
まず、本実施形態であるコークス炉ガス回収装置50が用いられるコークス炉1について、図1及び図2を参照して説明する。
コークス炉1は、図1に示すように、並列された複数の炭化室10を備えており、隣接する2つの炭化室10の間には、図示しない燃焼室が配置されている。
炭化室10は、図1に示すように、上面視して、一方向(図1において左右方向)に延在しており、一端に上昇管11が配設され、他端にスタンドパイプ15が配設されている。また、上昇管11とスタンドパイプ15との間には、複数の装入孔16が形成されている。
【0020】
並列された複数の炭化室10の上部には、レール19が炭化室10の並列方向に向けて延在するように配設されている。このレール19の上には、石炭装入車20が載置されている。石炭装入車20はレール19に沿って移動する構成とされている。
図2に示すように、石炭装入車20には、炭化室10に設けられた複数の装入孔16にそれぞれ対応する装入スリーブ21が設けられており、この装入スリーブ21を装入孔16に接続した状態で、石炭を炭化室10内に装入する構成とされている。
また、石炭装入車20は、炭化室10のスタンドパイプ15に接続されるジャンパパイプ22を備えている。このジャンパパイプ22は、図1に示すように、石炭を装入する炭化室10(装入窯10a)と、装入窯10aに隣接する炭化室10(隣接窯10b)とを連結する構成とされている。
なお、炭化室10のスタンドパイプ15及び石炭装入車20のジャンパパイプ22を備えていないコークス炉においても、本発明は有効である。
【0021】
ここで、図2に示すように、複数の炭化室10に設けられた上昇管11は、それぞれ本実施形態であるコークス炉ガス回収装置50を介して、集合管であるドライメン30に接続されている。
また、図1に示すように、各炭化室10と接続されたドライメン30には、オフテークメン32を介して、ガス処理施設(図示なし)に連結されたサクションメン35に接続されている。
【0022】
そして、本実施形態であるコークス炉ガス回収装置50は、上述のように、炭化室10の上昇管11とドライメン30との間に配置され、炭化室10から発生するコークス炉ガスを回収してドライメン30へと移送するものである。
本実施形態であるコークス炉ガス回収装置50の概略図を図3に示す。このコークス炉ガス回収装置50は、上昇管11とドライメン30とを接続するベンド管51と、このベンド管51内に安水を噴射する安水噴射手段60と、を備えている。
【0023】
ベンド管51は、図3に示すように、90°に曲げられた曲管とされており、一端が鉛直方向上方に開口したドライメンの開口部に接続され、他端が水平方向に開口した上昇管11の開口部に接続されている。
ベンド管51のうちドライメンの開口部に接続する一端側には、スロート部52が設けられている。本実施形態では、スロート部52の内径Dが400mm以上550mm以下の範囲内に設定されている。
【0024】
安水噴射手段60は、コークス炉ガス回収用スプレーノズル61(以下、スプレーノズルと称す)と、このスプレーノズル61への安水の供給圧力を調整する圧力調整部69
と、を備えている。
スプレーノズル61は、図4に示すように、噴霧形状が中空円錐70をなすいわゆるホロコーン型のスプレーノズルとされており、図9に示すように、安水の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度αが小さくなるように構成されている。
【0025】
このスプレーノズル61は、図5に示すように、ノズル本体62と、ノズル本体62の内部に配設されて供給される流体(本実施形態では安水)に旋回流を与える流路指向体64と、ノズル本体62の内部において流路指向体64よりも噴射口側(図5で下側)に配置されたオリフィス部66と、を備えている。
【0026】
流路指向体64は、図5及び図6に示すように、一対の板状部材65a,65bが互いに斜めに交差するように組み合わせられた構造とされ、側面視してX字形状をなしている。そして、一対の板状部材65a,65bの交差角度θが60°以上85°以下の範囲内とされている。なお、交差角度θは、図5及び図6に示すように、流路指向体64を側面視した場合に、スプレーノズル61の噴射口側に向けて開口する部分の角度とした。
【0027】
オリフィス部66は、図5及び図7に示すように、噴射口側に向けて一段内径が小さくされた構成とされており、本実施形態では、オリフィス部66の内径d2が、15mm以上25mm以下の範囲内とされている。
【0028】
圧力調整部69は、コークス炉1の操業状態に応じてスプレーノズル61に供給する安水の供給圧力を調整する。具体的には、コークス炉ガスの吸引時には安水の供給圧力を高圧とし、コークス炉ガスの冷却時には安水の供給圧力を低圧とするように構成されている。本実施形態では、コークス炉ガスの吸引時における安水の供給圧力が1.0MPa以上2.5MPa以下の範囲内、コークス炉ガスの冷却時における安水の供給圧力が0.2MPa以上0.5MPa以下の範囲内に設定されている。
【0029】
ここで、安水噴射手段60のスプレーノズル61は、図3に示すように、ベンド管51のスロート部52に向けて安水を噴射するように配置されている。詳述すると、スプレーノズル61は、スロート部52の水平断面中心を通る中心軸C上に配置されており、スプレーノズル61の噴射口が鉛直方向下方側に向けられている。なお、本実施形態では、スロート部52とスプレーノズル61の噴射口との距離Hが、850mm以上1100mm以下の範囲内に設定されている。
【0030】
スプレーノズル61から噴射された安水は、上述のように、噴霧形状が中空円錐70をなす。ここで、コークス炉ガスの吸引時(安水の供給圧力が1.0MPa以上2.5MPa以下の範囲内)において、スロート部52におけるスプレーノズル61の噴射径dは、300mm以上525mm以下の範囲内に設定されている。
そして、コークス炉ガスの吸引時(安水の供給圧力が1.0MPa以上2.5MPa以下の範囲内)において、スロート部52の内径Dとスロート部52におけるスプレーノズル61の噴射径d(スプレーノズル61から噴射された安水がなす中空円錐70の径)との比d/Dが、0.70以上0.95以下の範囲内に設定されている。
【0031】
次に、上述のような構成とされたコークス炉1の操業方法の一形態について説明する。
まず、コークス炉1の炭化室10(装入窯10a)に石炭を装入する。石炭装入車20を、装入窯10aの上にまで移動し、装入窯10a及び隣接窯10bのスタンドパイプ15の蓋を開放してジャンパパイプ22を接続するとともに、装入窯10aの各装入孔16の蓋を開放して装入スリーブ21を接続する。そして、装入スリーブ21を介して、装入窯10aの内部に石炭を装入する。
【0032】
このとき、装入窯10a及び隣接窯10bにおいては、石炭の装入によって粉塵が発生するとともに石炭の揮発成分が急激に揮発し、多量のコークス炉ガスが発生する。
そこで、本実施形態では、装入窯10a及び隣接窯10bに接続されたコークス炉ガス回収装置50において、圧力調整部69がスプレーノズル61への安水の供給圧力を高圧とし、スプレーノズル61から安水を高圧で噴射する。すると、スプレーノズル61の噴射角度αが小さくなり、ベンド管51の内面と噴霧された安水がなす中空円錐70の外面との間に空隙が確保され、エジェクタ効果によって前記空隙を通じて多量のコークス炉ガスがドライメン30へと吸引される。
【0033】
石炭の装入が終了した後、炭化室10において石炭の乾留が実施される。このとき、石炭の揮発成分がさらに揮発されてコークス炉ガスが発生する。ただし、発生するコークス炉ガスは、石炭装入時に比べて少量である。
このように乾留を実施している炭化室10に接続されたコークス炉ガス回収装置50においては、圧力調整部69がスプレーノズル61への安水の供給圧力を低圧として、スプレーノズル61から安水を噴射する。すると、スプレーノズル61の噴射角度αが大きくなり、ベンド管51内に広く安水が供給されることになり、コークス炉ガスの冷却が効率的に実施される。
【0034】
このように、本実施形態では、石炭装入時と乾留時において、圧力調整部69によってスプレーノズル61への安水の供給圧力を変更することにより、コークス炉ガスの吸引及び冷却を実施している。
【0035】
以上のような構成とされた本実施形態であるコークス炉ガス回収装置50においては、安水を噴射するスプレーノズル61として、噴霧形状が中空円錐70をなすいわゆるホロコーン型のスプレーノズルを用いているので、ベンド管51の中心領域には安水が噴射されず、ベンド管51の内面近傍の領域にのみ安水が噴射される。このため、ベンド管51の内面近傍の領域を通過する安水の流速が速くなり、エジェクタ効果によってコークス炉ガスを効率的に吸引することが可能となる。よって、石炭装入時に発生する多量のコークス炉ガスを確実に吸引することができる。
また、安水の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度αが小さくなる構成とされているので、高圧で噴射した安水がベンド管51の内面に接触することを抑制でき、エジェクタ効果を十分に作用させてコークス炉ガスを確実に吸引することができる。
【0036】
また、本実施形態では、スプレーノズル61に供給する安水の圧力を調整する圧力調整部を69有しており、この圧力調整部69が、コークス炉ガスの吸引時に安水の供給圧力を高圧とし、コークス炉ガスの冷却時に安水の供給圧力を低圧とする構成としているので、コークス炉ガスの吸引時には安水の噴霧角度αが小さくなり、高圧で噴射した安水がベンド管51の内面に接触することを抑制でき、エジェクタ効果を十分に作用させてコークス炉ガスを効果的に吸引することができる。一方、コークス炉ガスの冷却時には噴霧角度αが大きくなり、ベンド管51内を通過するコークス炉ガスを効果的に冷却することができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、コークス炉ガスの吸引時(安水の供給圧力が1.0MPa以上2.5MPa以下の範囲内)において、ベンド管51のスロート部52の内径Dとこのスロート部52におけるスプレーノズル61の噴射径dとの比d/Dが、0.70≦d/D≦0.95の範囲内に設定されているので、ベンド管51の内面と噴射された安水がなす中空円錐70との間に空隙を確保でき、エジェクタ効果によって効率的にコークス炉ガスを吸引することができる。
【0038】
また、本実施形態では、スプレーノズル61の内部に配設された流路指向体64が、一対の板状部材65a,65bを互いに斜めに交差するように組み合わせられた構造とされているので、噴霧形状が中空円錐70をなすとともに、安水の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度αが小さくなる。
さらに、一対の板状部材65a,65bの交差角度が60°以上85°以下の範囲内とされているので、噴霧形状及び噴霧角度αが安定し、コークス炉ガスの吸引及び冷却を安定して実施することができる。
【0039】
また、本実施形態では、スプレーノズル61の内部にオリフィス部66が設けられており、このオリフィス部66の内径d2が15mm以上25mm以下の範囲内とされているので、中空円錐70の噴霧形状を安定させることができ、コークス炉ガスの吸引及び冷却を安定して実施することができる。
【0040】
本実施形態であるコークス炉ガス回収用スプレーノズル61においては、上述のように、噴霧形状が中空円錐70をなし、図9に示すように安水の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度αが小さくなる構成とされているので、エジェクタ効果を十分に作用させることができ、コークス炉ガスの吸引を効率的に行うことができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態であるコークス炉ガス回収装置及びコークス炉ガス回収用スプレーノズルについて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、炭化室の配置や石炭装入車の構造及びジャンパパイプの有無等については、本実施形態に例示されたものに限定されることはない。
【0042】
また、流体として安水(アンモニア水)を用いるものとして説明したが、これに限定されることはなく、水等の他の流体を用いてもよい。
さらに、本実施形態では、スプレーノズルの内部に配置された流路指向体として、一対の板状部材が互いに斜めに交差するように組み合わせられた構造としたものを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、噴霧形状が中空円錐をなし、流体の供給圧力の上昇に応じて噴霧角度が小さくなる構成とされていればよい。
【実施例】
【0043】
以下に本発明の効果を確認すべく実施した確認実験の結果について説明する。
実施形態に例示したコークス炉ガス回収装置を用いて、スプレーノズルを表1に示すように変更して吸引圧を評価した。
【0044】
ここで、ベンド管のスロート径Dを490mm、スロート部とスプレーノズルの噴射口との距離Hを1035mm、スプレーノズルへの安水の供給圧力を2.5MPa、安水の供給量を380L/minとした。
【0045】
また、吸引圧Pは、ベンド管の水平開口部における圧力P1と、スプレーノズルから噴射された安水がなす中空円錐とベンド管内面との間における圧力P2と、を測定し、
P=(P1+P2)/2
によって算出した。なお、表1に示す従来例のスプレーノズルを使用した際の吸引圧Pを基準圧力Pとし、吸引圧比P/Pで評価した。評価結果を表1及び図8に示す。
また、図9に、本発明例1で用いたスプレーノズルのノズル背圧と噴霧角度との関係を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
図9に示すように、本発明例1で用いたスプレーノズルにおいては、ノズル背圧(ノズルへの安水の供給圧力)の上昇に応じて噴霧角度αが小さくなることが確認された。
そして、表1及び図8に示すように、中空円錐ノズルを用いた本発明例1〜4においては、中実円錐ノズルを用いた比較例と比較して吸引圧比が大きくなっており、コークス炉ガスの回収が促進されることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1 コークス炉
50 コークス炉ガス回収装置
51 ベンド管
52 スロート部
60 安水噴射手段(流体噴射手段)
61 スプレーノズル(コークス炉ガス回収用スプレーノズル)
64 流路指向体
66 オリフィス部
69 圧力調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9