特許第6209414号(P6209414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209414対数周期型アンテナ及び対数周期型アンテナの加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209414
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】対数周期型アンテナ及び対数周期型アンテナの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 11/10 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   H01Q11/10
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-212333(P2013-212333)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-76759(P2015-76759A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】312012287
【氏名又は名称】株式会社日立国際八木ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利拓
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭38−009954(JP,Y1)
【文献】 実公昭51−006039(JP,Y1)
【文献】 特公昭52−011194(JP,B1)
【文献】 米国特許第02981951(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ給電線路を兼ねた導電性のアームの側方に複数の対数周期アンテナ素子を交互に配置してなる第1の対数周期アンテナ素子部及び第2の対数周期アンテナ素子部を相対向させ、且つ、電波放射側である先端部側を基準として後端部側を所定角度開いて配置し、H面半値幅を狭くして鋭い指向性が得られるように構成した対数周期型アンテナであって、
前記第1の対数周期アンテナ素子部及び第2の対数周期アンテナ素子部の各アーム先端
部の内側に所定の長さで相対向して設けられる第1及び第2の給電部と、前記第1及び第
2の給電部の先端部近傍に設けられる給電点と
を具備し、
前記第1及び第2の給電部は、同一面上にある平板であり、先端部側の幅が狭く、後端部側に行くに従って徐々に広くなるように前記対数周期型アンテナの開き角度に合わせてテーパ状にそれぞれ形成され、相互の間隔を略一定に保持してなることを特徴とする対数周期型アンテナ。
【請求項2】
略直角三角形に形成された金属板に対し、底辺部に沿って給電線路を兼ねた所定長さのアームのパターンを設定すると共に、前記アームの一方の側方に全ての対数周期アンテナ素子が位置するようにアンテナ素子パターンを設定し、且つ前記金属板の底辺部に前記対数周期アンテナ素子の電波放射側の先端近傍に前記アンテナ素子パターンとは反対の方向に突出するように給電部を一体に形成する素子パターン設定工程と
前記金属板に設定された前記アーム及び前記アンテナ素子を打ち抜く素子打ち抜き工程と
前記打ち抜き工程によって得られた前記アンテナ素子を前記アームの両側に交互に略90° 折り曲げ加工し、前記給電部を備えた第1の対数周期アンテナ素子部及び第2の対数周期アンテナ素子部を作成する工程と
前記第1の対数周期アンテナ素子部及び第2の対数周期アンテナ素子部を相対向させ、且つ、電波放射側である先端部側を基準として後端部側を所定角度開いて配置するアンテナ素子配置工程と
を具備し、
前記第1及び第2の対数周期アンテナ素子部の前記給電部を、略一定の間隔を保って相対向させ、且つ所定の長さに設けることを特徴とする対数周期型アンテナの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システム等における基地局用アンテナとして使用することができる対数周期型アンテナ及び対数周期型アンテナの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、UHF帯(Lバンド)において広い周波数帯域を持つ指向性アンテナとして対数周期型アンテナ(ログペリオディックアンテナ)が知られている(例えば、特許文献1乃至4参照。)。一般的に使用されている対数周期型アンテナには、例えば図6(a)、(b)に示すようなプレーナ型のものがある。図6(a)は対数周期型アンテナの正面図、(b)は同側面図である。
【0003】
一般的な対数周期型アンテナは、図6(a)、(b)に示すように、それぞれ平面上に形成された(−)給電側の第1の対数周期アンテナ素子部11aと、(+)給電側の第2の対数周期アンテナ素子部11bとが、一定の間隔で対向配置される。第1の対数周期アンテナ素子部11aと第2の対数周期アンテナ素子部11bとは同形状であり、保持部材と給電線路を兼ねた導電性のアーム12a、12bと、アーム12a、12bの両側に略垂直に互い違いに突出して設けられる素子群と、をそれぞれ備える。素子群は、それぞれの周波数帯の電波を放射する長さの異なる複数のアンテナ素子がアームの両側に互い違いに配置されたもので、第1の対数周期アンテナ素子部11aと第2の対数周期アンテナ素子部11bを組み合わせた時に、自己相似の理に基づく対数周期ダイポールアレイを構成する。或いは、変形された自己補対構造とみることができる。給電点は、アンテナ素子長が短くなる先端部近傍に設けられ、この給電部よりアーム12a、12bを介して各アンテナ素子に給電される。
【0004】
上記対数周期型アンテナを板金等で製造する場合、一般的には図7に示すように金属板15から素子部16を切り取って(板金抜き)、対数周期アンテナ素子群11a(11b)を構成している。対数周期型アンテナでは、複数のアンテナ素子を、長さと間隔の両方を指数関数的に変化させながらアームの両側に配置するので、従来では素子部16を得るために略二等辺三角形の形状の金属板15を必要とする。
【0005】
上記のように対数周期アンテナ素子群11a、11bを所定の間隔で平行配置してなる対数周期型アンテナの指向性は、図8(a)に示すようなH面(磁界面)半値幅となっており、緩やかな指向性となっている。
【0006】
上記対数周期型アンテナにおいては、使用状況によって、例えば通信エリアを調整するために鋭い指向性が要求される場合がある。対数周期型アンテナの指向性を鋭くする方法としては、(1)アンテナを長手方向に大きくする方法や、(2)図9に示すように第1の対数周期アンテナ素子部11aと第2の対数周期アンテナ素子部11bとを開く方法、すなわち電波放射側である素子の短いアンテナ先端部を頂点として素子が長い後端部側を所定角度θ開く方法がある。このような対数周期型アンテナは、trapezoid、pyramidal、或いはNon-planar型と呼ばれる。図8(b)は、第1の対数周期アンテナ素子部11aと第2の対数周期アンテナ素子部11bとを約30°開いた場合の指向性(H面半値幅)を示し、第1の対数周期アンテナ素子部11aと第2の対数周期アンテナ素子部11bとを所定の間隔で平行配置した図8(a)の特性に比較して鋭い指向性となっている。
【0007】
しかし、前者(1)の方法で指向性を鋭くした場合には、アンテナ自身の長さが大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
また、後者(2)の方法で指向性を鋭くした場合には、図10に示すようにVSWR特性がかなり劣化してしまうという問題がある。図10は、図9に示すように第1の対数周期アンテナ素子部11aと第2の対数周期アンテナ素子部11bとを開いて配置した対数周期型アンテナのVSWR特性を横軸に周波数[MHz]をとり、縦軸にVSWRをとって示しており、高周波側のVSWRが悪化していることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8,164,535号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開2011/0148729号明細書
【特許文献3】特開2011−41318号公報
【特許文献4】実公平3−9515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように対数周期型アンテナの指向性を鋭くする方法としては、(1)アンテナを長手方向に大きくする方法や、(2)アンテナ先端部を基準として素子が長い後端部側を所定角度θ開く方法があるが、前者(1)の方法では、アンテナ自身の長さが大きくなる問題があり、また、後者(2)の方法では、VSWR特性が劣化する問題がある。
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、アンテナの長さを変更することなく、且つ、良好なVSWR特性を維持したまま指向性を鋭くすることができる対数周期型アンテナ及び対数周期型アンテナの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためにこの発明に係る対数周期型アンテナの第1の観点は、それぞれ給電線路を兼ねた導電性のアームの両側方に複数の対数周期アンテナ素子を交互に配置してなる第1の対数周期アンテナ素子部及び第2の対数周期アンテナ素子部を相対向させ、且つ、電波放射側である先端部側を基準として後端部側を所定角度開いて配置し、H面半値幅を狭くして鋭い指向性が得られるように構成した対数周期型アンテナであって、前記第1の対数周期アンテナ素子群及び第2の対数周期アンテナ素子部の各アーム先端部の内側に所定の長さで相対向して設けられる第1及び第2の給電部と、前記第1及び第2の給電部の先端部近傍に設けられる給電点とを具備し、前記第1及び第2の給電部は、同一面上にある平板であり、先端部側の幅が狭く、後端部側に行くに従って徐々に広くなるように前記対数周期型アンテナの開き角度に合わせてテーパ状にそれぞれ形成され、相互の間隔を略一定に保持してなることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る対数周期型アンテナの加工方法は、略直角三角形に形成された金属板に対し、底辺部に沿って給電線路を兼ねた所定長さのアームのパターンを設定すると共に、前記アームの一方の側方に全ての対数周期アンテナ素子が位置するようにアンテナ素子パターンを設定し、且つ前記金属板の底辺部に前記対数周期アンテナ素子の電波放射側の先端近傍に前記アンテナ素子パターンとは反対の方向に突出するように給電部を一体に形成する素子パターン設定工程と、前記金属板に設定された前記アーム及び前記アンテナ素子を打ち抜く素子打ち抜き工程と、前記打ち抜き工程によって得られた前記アンテナ素子を前記アームの両側に交互に略90°折り曲げ加工し、前記給電部を備えた第1の対数周期アンテナ素子部及び第2の対数周期アンテナ素子部を作成する工程と、前記第1の対数周期アンテナ素子部及び第2の対数周期アンテナ素子部を相対向させ、且つ、電波放射側である先端部側を基準として後端部側を所定角度開いて配置するアンテナ素子配置工程とを具備し、前記第1及び第2の対数周期アンテナ素子部の前記給電部は、略一定の間隔を保って相対向し、且つ所定の長さ設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る対数周期型アンテナとその加工方法によれば、第1の対数周期アンテナ素子部と第2の対数周期アンテナ素子部とを所定角度開いて配置したときに、前記第1及び第2の対数周期アンテナ素子部の電波放射側の端部間に所定長さの給電部を略一定の間隔で相対向するように設けることにより、指向性の先鋭化を図りながら、広い周波数帯域に亘って安定したVSWR特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1に係る対数周期型アンテナの構成を示す斜視図である。
図2】同実施形態に係る対数周期型アンテナの給電部を拡大して示す側面図である。
図3】同実施形態に係る対数周期型アンテナのVSWR特性図である。
図4】本発明の実施例1に係る対数周期型アンテナを2組用いてクロス偏波化した場合の全体の概略構成を示す斜視図である。
図5】本発明の実施例2に係る対数周期型アンテナにおいて、第1の対数周期アンテナ素子部の製造工程を説明するための図である。
図6】従来の対数周期型アンテナの構成を示す平面図である。
図7】従来の対数周期型アンテナを板金で製作する場合の工程説明図である。
図8】(a)は第1の対数周期アンテナ素子部と第2の対数周期アンテナ素子部を平行配置した従来の対数周期型アンテナの指向性を示す図、(b)は第1の対数周期アンテナ素子部と第2の対数周期アンテナ素子部とを開いて配置した対数周期型アンテナの指向性を示す図である。
図9】第1の対数周期アンテナ素子部と第2の対数周期アンテナ素子部とを開いて配置した対数周期型アンテナの構成を示す斜視図である。
図10図9に示した対数周期型アンテナのVSWR特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[実施例1]
図1は本発明の実施例1に係る対数周期型アンテナ20の構成を示す斜視図である。
本例の対数周期型アンテナ20は、(−)給電側の第1の対数周期アンテナ素子部21aと、(+)給電側の第2の対数周期アンテナ素子部21bとで構成される。第1の対数周期アンテナ素子部21aと第2の対数周期アンテナ素子部21bは、略同一形状であり、それぞれ給電線路を兼ねた導電性のアーム22a、22bに対し、その両側方にそれぞれの周波数帯の電波を放射する長さの異なる複数のアンテナ素子(半波長ダイポールの一方)を交互に配置して素子群26を構成し、またアンテナとして自己相似構造となるようにしている。
【0018】
上記第1の対数周期アンテナ素子部21aと第2の対数周期アンテナ素子部21bとは、アンテナ素子の短い先端部(電波放射側)を頂点(基準)として素子が長い後端部側を所定角度θ開いて配置され、4角錐状の外形となる。これによりH面半値幅を狭くして鋭い指向性が得られる。
【0019】
そして、アーム22a、22bは、直線的な板状とし、その先端部内側には給電部23a、23bが相対向するように設けられる。本例では、アーム22a、22bは、素子群26と略直角で、板の端部が内側に互いに向かい合っており、給電部23a、23bも一体に形成されている。
【0020】
上記給電部23a、23bは、図2に詳細を示すように略一定の間隔tを保って相対向するように、先端部から所定の長さLだけ設けられる。図2は、上記給電部23a、23b部分を拡大して示す側面図である。給電部23a、23bは、先端部側の幅(素子群が設けられる面から見た高さ)が小さく、後端部側に行くに従って徐々に高さが高くなるようにテーパ状に形成され、このテーパ部でアーム22a、22bの元来の幅より一旦広くなった後、アーム22a、22bとの接続遷移部で、間隔がtから連続的に広がるように、曲線形状例えば円弧状に形成している。本例の給電部23a、23bは、対数周期型アンテナ20の開き角度θに合わせて直線的なテーパ状に形成することで、テーパ部において給電部23a、23b間の空隙を略一定に保っている。
【0021】
そして、給電部23a、23bの先端部近傍には、給電点24a、24bが設けられる。この給電点24a、24bには、給電用同軸ケーブルが半田付け等によって接続される。例えば、給電部23aに設けられた給電点24aには給電用同軸ケーブルの外導体が接続され、給電部23bに設けられた給電点24bには給電用同軸ケーブルの中心導体が接続される。つまり、非平衡給電が可能となっている。
【0022】
図1に示したように、対数周期アンテナ素子部21a、21bの後端部側を所定角度θ開いて配置した場合、対数周期アンテナ素子部を平行配置した場合に比較し、対数周期アンテナ素子部21a、21b間の間隔が広くなり、インピーダンスの変化等によりVSWRが劣化してしまうので、対数周期アンテナ素子部21a、21b間の空間部を補うように給電部23a、23bを設け、給電部23a、23bの間隔t、長さL等を調整し、VSWRが使用周波数帯域全般に亘って安定化するように設定する。なお、給電部23a、23bの厚さは、任意に設定することが可能である。
【0023】
図3は、上記実施例1に示すように構成された対数周期型アンテナ20のVSWR特性図であり、横軸に周波数[MHz]をとり、縦軸にVSWRをとって示した。上記実施例1に係る対数周期型アンテナ20は、広い周波数帯域に亘って安定したVSWR特性が得られ、特に移動通信で使用する800MHz帯、1500MHz帯、2100MHz帯の周波数帯域においては、2以下のVSWRが得られている。
【0024】
なお、本例の給電部23a、23bの形状は、テイパードスロットアンテナに類似するが、少なくとも使用帯域においてFB比(前方対後方比)の悪化はないことが確認されている。
【0025】
上記対数周期型アンテナ20では、第1の対数周期アンテナ素子部21aと第2の対数周期アンテナ素子部21bとの開き角度θを調整することにより、指向性(H面半値幅)を任意に設定することが可能である。
【0026】
なお、上記実施例1では、給電部23a、23b間の間隔tを一定に設定した場合について示したが、この間隔tはビームを放射する先端側を狭く、後端側に行くに従って僅かに広くなるように設定しても良い。給電線路にも自己相似を適用する思想に立てば、間隔tは、特に先端付近において指数関数的になるべきである。
【0027】
また、上記実施例1では、アーム22a、22bと給電部23a、23bとを同一部材で一体に形成した場合について示したが、予め別体に形成した給電部23a、23bをアーム22a、22bに半田付け等により接続するようにしても良く、これにより、厚さをアーム22a、22bと異ならせることも容易となる。
【0028】
また、上記実施例1では、給電部23a、23bの後端部を円弧状に形成した場合について示したが、直線状に形成しても良い。すなわち、給電部23a、23bの形状は、直線や曲線形状に限定されるものではなく、任意の形状に形成することが可能である。
【0029】
上記アンテナの構成部材は、例えば印刷基板、金属プレス、導電性フィルム等、導電性部材であれば使用することが可能である。なお、導電性フィルム等の柔軟性のある部材は、誘電体基板に貼付して使用することが望ましい。
【0030】
また、上記実施例1では、1組の対数周期アンテナ素子部21a、21bからなる対数周期型アンテナ20に実施した場合について示したが、その他、例えば図4に示すように実施例1に示したものと同様に構成した2組の対数周期型アンテナ20a、20bを用いてクロス偏波化した場合においても、各対数周期型アンテナ20a、20bに対して給電部を設けてVSWR特性を安定化することが可能である。また対数周期であることは必須ではない。
【0031】
[実施例2]
次に本発明の実施例2に係る対数周期型アンテナの加工方法について説明する。
この実施例2は、上記実施例1における対数周期アンテナ素子部21a、21bを効率的に加工する方法について示したものである。
【0032】
図5(a)〜(c)は、対数周期型アンテナ20における第1の対数周期アンテナ素子部11aの加工工程を説明するための図である。
上記対数周期型アンテナ20を板金等で製造する場合、先ず、図5(a)に示すように金属板の略直角三角形状の領域2525に対し、その底辺部に沿ってアーム22aのパターンを設定(描画)すると共に、このアーム22aの一方の側方に第1の対数周期アンテナ素子部21aを構成する全てのアンテナ素子(素子群)26が略直角に位置するように素子パターンを設定する。すなわち、交互に配置されるべきアンテナ素子が全て同一方向の配置となるように素子パターンを設定する。また、金属板25の底辺部には、アンテナ素子の先端近傍に図2に示したものと同様の形状の給電部23aをアンテナ素子とは反対の方向に突出するように一体に設ける。
そして、図5(b)に示すように上記金属板25から、アーム22a、素子群26、給電部23a等をパターンに従って切り取る。
【0033】
次に、図5(c)に示すように、アーム22aの一方の側方に設けられているアンテナ素子を交互に反対方向に略90°折曲げ、第1の対数周期アンテナ素子部21aを製作する。
また、第2の対数周期アンテナ素子部21bは、上記第1の対数周期アンテナ素子部21aと同一形状であるので、製作方法に違いはない。
【0034】
そして、上記第1の対数周期アンテナ素子部21aと第2の対数周期アンテナ素子部21bとを組み合わせ、実施例1で示したようにアンテナ素子の短い先端部(ビーム放射側)を基準として素子が長い後端部側を所定角度θ開いて配置することにより、対数周期型アンテナ20を完成する。
【0035】
上記のようにアーム22a(22b)の一方の側方に全てのアンテナ素子を形成し、金属板25から切り出した後、アンテナ素子を交互に反対方向に略90°折曲げ、第1の対数周期アンテナ素子部21a(21b)を製作することにより、金属板25の形状を略直角三角形の形状に形成でき、従来用いられていた二等辺三角形の金属板15(図7参照)に比較して、使用量(使用面積)を略半分に減らすことができ、非常に経済的である。また、アーム22a(22b)に対して給電部23a(23b)を一体に形成することができると共に、給電部23a(23b)の形状も曲線状やテーパ状など、アンテナ特性に合わせて任意の形状に形成することが可能であり、H面半値幅を狭くして鋭い指向性が得られ、且つ安定したVSWR特性を得ることができる。
【0036】
上記実施例2によれば、実施例1に係る対数周期型アンテナ、すなわち第1の対数周期アンテナ素子部21aと第2の対数周期アンテナ素子部21bとを所定角度開いて配置すると共に、対数周期アンテナ素子部21a、21b間に給電部23a、23bを備えた対数周期型アンテナ20を効率よく製作できると共に、製作コストを低減することができる。
【0037】
その他、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0038】
20、20a、20b…対数周期型アンテナ、21a…第1の対数周期アンテナ素子部、21b…第2の対数周期アンテナ素子部、22a、22b…アーム、23a、23b…給電部、24a、24b…給電点、25…金属板、26…素子群。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10