特許第6209429号(P6209429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209429
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】電気化学キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/10 20130101AFI20170925BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20170925BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01G11/10
   H01G11/78
   H01G11/74
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-241652(P2013-241652)
(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2015-103596(P2015-103596A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 潤
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−28009(JP,A)
【文献】 特開2001−338687(JP,A)
【文献】 特開2009−199825(JP,A)
【文献】 特開2013−197430(JP,A)
【文献】 特開2009−26999(JP,A)
【文献】 特開2015−103596(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/068291(WO,A1)
【文献】 特開2004−296520(JP,A)
【文献】 特開2011−222902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/10
H01G 11/74
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を並列に接続した電極群及び電解液を各々が収容する複数の内ケースと、
開口部を有し、前記複数の内ケースを収容する外ケースと、
前記外ケースの前記開口部を覆う封口体とを備え、
前記電極群は、直列に接続され、
前記封口体は、前記内ケースの数より1多い数の外部端子を有し、
前記内ケースは、密封されていないことを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学キャパシタにおいて、前記内ケースは、袋状であり上部が解放されていることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学キャパシタにおいて、各々の前記内ケースは、前記電解液に浸っている部分において、前記電解液が通り抜けるための少なくとも1つの開口部を有することを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気化学キャパシタにおいて、前記封口体は、さらに、1つだけのガスリーク弁を有することを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気化学キャパシタにおいて、前記封口体は、さらに、前記電解液を注入する1つだけの注液口を有することを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気化学キャパシタにおいて、隣接する前記電極群間の抵抗が、100kΩ〜10MΩであることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気化学キャパシタにおいて、前記外ケースは、金属製であることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気化学キャパシタにおいて、前記内ケースの数は2つであることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電気化学キャパシタにおいて、前記複数の内ケースは、前記外ケースの厚み方向に並べて配置されていることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電気化学キャパシタにおいて、前記複数の内ケースは、前記外ケースの幅方向に並べて配置されていることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタなどの電気化学キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、薄板状の正極と負極とをこれらの間にセパレータを介在させて相互に積層した電極群を電解液に浸し、これらを容器に収容・密閉することにより形成される。
【0003】
高電圧の用途に電気二重層キャパシタを用いる場合は、通常、複数の電気二重層キャパシタを直列に接続してモジュールを構成し、モジュールによって高電圧を供給する。以後、モジュールを構成する個々の電気二重層キャパシタを「セル」とも称することとする。
【0004】
しかしながら、単純に電気二重層キャパシタの単セルを直列接続してモジュールを構成すると、1つの電極群に対して1つの容器が必要となるため、モジュール全体の体積は大きくなり重量は重くなる。また、セル間を接続する部品やセル間を絶縁する部材がセル間毎に必要となることなどからコストも高くなる。例えば自動車、鉄道、建設機械などの移動体に電気二重層キャパシタを使用する場合、狭い空間に配置ができ、また重量も軽く、低コストであることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−222902号公報
【特許文献2】特開2004−296520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1及び2は、1つのケースの中に、直列に接続された複数の電極群(キャパシタ)を配置することを開示している。しかしながら、特許文献1及び2に記載されている構成は、各キャパシタを個別に密封した状態でケースに収容する構成であるため、各電極群に個別に電解液を注入し、密封するための手間やコストがかかる。また、隣接する電極群間の絶縁性を確保するための部材や、使用中に発生するガスを外部に放出する工夫も各電極群毎に必要となるため、部材コスト・製造コストがかかるという問題がある。
【0007】
なお、このような課題は電気二重層キャパシタに限らず、電気化学キャパシタ一般にも同様にあてはまる課題である。
【0008】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、コンパクトかつ低コストに高電圧を供給することができる電気化学キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る電気化学キャパシタは、複数の電極を並列に接続した電極群及び電解液を各々が収容する複数の内ケースと、開口部を有し、前記複数の内ケースを収容する外ケースと、前記外ケースの前記開口部を覆う封口体とを備え、前記電極群は、直列に接続され、前記封口体は、前記内ケースの数より1多い数の外部端子を有し、前記内ケースは、密封されていないことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る電気化学キャパシタにおいて、前記内ケースは、袋状であり上部が解放されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る電気化学キャパシタにおいて、各々の前記内ケースは、前記電解液に浸っている部分において、前記電解液が通り抜けるための少なくとも1つの開口部を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る電気化学キャパシタにおいて、前記封口体は、さらに、1つだけのガスリーク弁を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る電気化学キャパシタにおいて、前記封口体は、さらに、前記電解液を注入する1つだけの注液口を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る電気化学キャパシタにおいて、隣接する前記電極群間の抵抗が、100kΩ〜10MΩであることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る電気化学キャパシタにおいて、前記外ケースは、金属製であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る電気化学キャパシタにおいて、前記内ケースの数は2つであることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る電気化学キャパシタにおいて、前記複数の内ケースは、前記外ケースの厚み方向に並べて配置されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る電気化学キャパシタにおいて、前記複数の内ケースは、前記外ケースの幅方向に並べて配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コンパクトかつ低コストに高電圧を供給することができる電気化学キャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの分解斜視図である。
図2】複数の内ケースを外ケースの厚み方向に並べて配置した場合の本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
図3】複数の内ケースを外ケースの幅方向に並べて配置した場合の本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの内ケースにおいて、電解液に浸っている部分に開口部がある様子を示す図である。
図5】実施例の測定方法を説明するための図である。
図6】実施例の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態においては、電気化学キャパシタとして電気二重層キャパシタを例に挙げて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る電気二重層キャパシタの分解斜視図である。電気二重層キャパシタ10は、外ケース12と、外ケース12に収容される複数の内ケース14と、内ケース14に収納される電極群16と、外ケース12の開口部を覆う封口体18とを備える。また、内ケース14には電解液(図示せず)が収容されている。
【0023】
電解液としては、例えば、電解質水溶液、及び、有機溶媒を使用した非水電解質溶液などを使用することができる。特に非水電解質溶液が好ましく、代表的な例としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレイトのような4級アンモニウム塩からなる電解質を、プロピレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、アセトニトリルなどの有機溶媒に溶解したものが挙げられる。また、電解質としてイオン液体を用い、これを上述の有機溶媒に溶かしたものも使用することができる。さらには、イオン液体を有機溶媒に溶解させずにそのまま電解質溶液として用いることもできる。
【0024】
外ケース12は、材質を特に限定するものではないが、耐食性、加工性及びレーザ溶接性などに優れるものが好ましい。例えば、A1000番台のアルミニウム、A3003、A3004又はステンレス鋼などの金属性の材質であることが好ましい。また、このような材質の板材を深絞り加工又はインパクト加工したものを外ケース12として用いることが好ましい。つなぎ目のないケースを得ることができるため、高い気密性を得ることができるからである。
【0025】
また、外ケース12は、形状を特に限定するものではなく、直方体形状や円筒形状などとすることができる。外ケース12の典型的な寸法は、例えば、100mm×100mm×10mmである。外ケース12の開口部は、典型的には、図1のように狭幅部に設けられた長方形の形状であり、例えば、100mm×10mmの寸法である。
【0026】
内ケース14は、袋状の形状であり、中に電極群16を収容する。内ケース14は、外ケース12に複数個収容されている。図1に示す例においては、外ケース12の中に、2つの内ケース14が収納されている。内ケース14は、各々が、1つの電極群16を収容する。なお、外ケース12に収容される内ケース14の数は2つに限るものではなく、2以上の任意の数であってよい。
【0027】
内ケース14は、材質を特に限定するものではないが、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムのような薄い材質とすることにより、外ケース12内に複数の内ケース14をコンパクトに収納することができ、また重量を軽くすることもできるからである。
【0028】
複数個の内ケース14は、外ケース12の厚み方向に並べて配置してもよいし、外ケース12の幅方向に並べて配置してもよい。図2に、2つの内ケース14を、外ケース12の厚み方向に並べて配置した場合の断面図を示す。図2(a)は、外ケース12の幅広の方向から見た断面図であり、図2(b)は、外ケース12の幅狭の方向から見た断面図である。また、図3に、2つの内ケース14を、外ケース12の幅方向に並べて配置した場合の断面図を示す。図3(a)は、外ケース12の幅広の方向から見た断面図であり、図3(b)は、外ケース12の幅狭の方向から見た断面図である。
【0029】
内ケース14は、図2及び図3に示すように、密封されておらず上部が解放されている。これにより、内ケース14内で発生したガスは、各々の内ケース14中に独立して存在するのではなく、共通して外ケース12内に充満している。したがって、後述するガスリーク弁26を内ケース14毎に設ける必要がなく、電気二重層キャパシタ10全体で1つのガスリーク弁26を設けるだけでよい。
【0030】
電極群16は、複数の電極を並列に接続して構成されている。具体的には、電極群16は、薄板状の正極と負極とを交互に積層し、これらの間に両者を絶縁する薄板状の絶縁材が挿入された積層体となっている。そして、複数の正極は、リード部でまとめられて並列に接続されている。同様に、複数の負極も、リード部でまとめられて並列に接続されている。正極と負極とは同じ構成で、厚さ15〜50μmのアルミニウム箔からなる集電体に、活性炭、導電材、バインダー、溶剤等を混合してスラリー状にしたものをリード部以外の部分の片面又は両面に塗布して乾燥したものである。絶縁材は各電極が直接接触しないように絶縁するもので、紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス繊維などの絶縁性素材からなる不織布や多孔性フィルムである。
【0031】
図1に示す例においては、手前側の内ケース14に収納されている電極群16の複数の負極はリード部17aでまとめられており、複数の正極はリード部17bでまとめられている。また、奥側の内ケース14に収納されている電極群16の複数の負極はリード部17cでまとめられており、複数の正極はリード部17dでまとめられている。リード部17bとリード部17cとは外ケース12内で接続されており、これにより、2つの電極群16は直列に接続されている。以下、リード部17a〜17dについて、特に区別する必要がない場合は、単にリード部17と称する。
【0032】
封口体18は、外ケース12の開口部を覆う。封口体18は、外部端子20(20a〜20c)と、端子板22(22a〜22c)と、注液口24と、ガスリーク弁26とを有する。
【0033】
外部端子20は、負極端子20a、正極端子20b及び中間端子20cなどとして機能する。外部端子20については、特に区別する必要がない場合は外部端子20と称し、機能毎に区別する必要がある場合は、負極端子20a、正極端子20b、中間端子20cなどと称する。
【0034】
中間端子20cは、電極群16間を接続した部分に外部からアクセスすることを可能とする端子である。中間端子20cにアクセスすることにより、電極群16間における電圧の監視や、電極群16の特性を均等化するための制御などが可能となる。
【0035】
外部端子20の数は、内ケース14の数(すなわち電極群16の数)より1多い数である。例えば、図1に示す例においては、内ケース14の数が2つであるため、外部端子20の数は3つである。これは、電極群16間を接続する部分においては、例えば、リード部17bとリード部17cのそれぞれについて外部端子20を設けるのではなく、リード部17bとリード部17cを接続して共通の外部端子20を1つだけ設ける構成としていることによる。
【0036】
端子板22(22a〜22c)は、電極群16のリード部17を外部端子20に接続する。図1に示す例においては、端子板22aは、手前側の内ケース14に収納されている電極群16のリード部17a(負極)を負極端子20aに接続する。また、端子板22bは、奥側の内ケース14に収納されている電極群16のリード部17d(正極)を正極端子20bに接続する。また、端子板22cは、手前側の内ケース14に収納されている電極群16のリード部17b(正極)と、奥側の内ケース14に収納されている電極群16のリード部17c(負極)とを合わせて中間端子20cに接続する。
【0037】
注液口24は、内ケース14に電解液を注入するために用いられる。電解液は内ケース14内部のみではなく、外ケース12と内ケース14の間に存在してもよい。
【0038】
ガスリーク弁26は、電気二重層キャパシタ10を使用中に外ケース12内部で発生したガスによって内圧が上昇した場合に、ガスをリークして外ケース12の内圧を緩和するために用いられる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、1つの外ケース12に、電極群16を収容する内ケース14が複数個収容されていることにより、電極群毎に外ケースなどを設ける必要がなく、コンパクト、低重量かつ低コストに高電圧を供給することができる。また、さらなる高電圧を供給するため、モジュールとして使用する場合も、コンパクト、低重量かつ低コストにモジュールを構成することができる。
【0040】
また、外ケース12に収容する電極群16の数や、一つの電極群16に含まれる電極の数を変えることにより、電圧の異なる様々な種類の電気二重層キャパシタ10を構成することができる。つまり、外ケース12に収容する電極の大きさと総数を一定とし、電極群16の数を変える、すなわち外ケース12に含まれる電極をいくつの電極群に分けるか選択することができる。この際、電極群内は並列に、電極群間は直列に接続するため、同じ外ケース12を使用して、異なる電圧・静電容量の電気二重層キャパシタを製造することができる。1種類の外ケースにおいて、電圧・静電容量の異なる電気二重層キャパシタを製造することができるため、様々な種類の製品を作成するにあたって、部品の共有化を図ることができ、製造コストを削減することができる。
【0041】
また、内ケース14が密封されておらず上部が解放されているため、電気二重層キャパシタ10全体で1つのガスリーク弁26を設けるだけで済み、低コスト化が可能となる。
【0042】
(電解液の共有化)
図4は、内ケース14に開口部30を設けて、複数の内ケース14で電解液28を共有(すなわち、複数の電極群16で電解液28を共有)している様子を示す図である。図4に示すように、電気二重層キャパシタ10は、内ケース14に開口部30を設ける構成としてもよい。
【0043】
図4に示す例においては、各内ケース14の電解液28に浸っている部分(内ケース14の底部)において、電解液28が通り抜けるための開口部30が設けられている。電解液28が開口部30を通り抜けることができるため、2つの内ケース14で電解液28が共有されている。すなわち、電気接続方法が直列接続である電極群間において、正極と負極の間で電解液28が通り抜けできる開口部30を設けている。
【0044】
なお、開口部30は、内ケース14の底部に限るものではなく、電解液28に浸る部分であれば他の場所でもよい。また、図4では、1つの内ケース14に1つの開口部30がある場合を示しているが、これは一例である。開口部30の数は、少なくとも1つの任意の数であってよい。
【0045】
このように、2つの内ケース14で電解液28が共有されていることにより、各内ケースに同量の電解液を注入する作業の手間を低減することができる。電気二重層キャパシタ10は、電極群毎に注液口を設けず、1つの注液口24だけで、電解液28を注入することもできる。これにより、低コスト化が可能になる。
【0046】
従来、電気接続方法が直列接続である複数の電極群間において、正極と負極の間で電解液を共有すると、電極群毎に電解液を完全に分離した場合と比べて、電気二重層キャパシタの特性が低下すると考えられていたため、電極群毎に電解液が完全に分離される構造となっていた。
【0047】
しかしながら、本発明者の検討により、電極群毎に電解液を完全に分離しなくても、内ケース14に設ける開口部30の数、形状、大きさ、位置などを適切なものに調整して、隣接する電極群16間の抵抗を適切な範囲に調整すれば、複数の電極群16で電解液28を共有しても電気二重層キャパシタ10の特性がほとんど低下しないことがわかった。この知見に基づき、電気二重層キャパシタ10の特性を、ほとんど低下させることなく、複数の電極群16で電解液28を共有する構成としたものであってもよい。
【0048】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0049】
なお、本実施形態においては、電極群を直列に接続して高電圧用途に用いる場合を例に挙げて説明したが、電極群を並列に接続する構成としても本発明は適用可能である。電極群を並列に接続した場合は、電気二重層キャパシタの容量を増やすことができる。
【0050】
また、本発明は電気二重層キャパシタに限定されるものではなく、同様の構成を有する他の電気化学キャパシタにも適用することができる。
【実施例】
【0051】
電気二重層キャパシタにおいて、電極群毎に電解液を完全に分離せず、電極群間で電解液を共有することの妥当性を確認する測定を行った。
【0052】
(試験方法)
図5に示すように、電極群16を2つ準備して、開口部30を設けた2つの内ケース14にそれぞれ収容した。また、2つの内ケース14は外ケース12に収容した。
【0053】
内ケース14の開口部30の大きさ及び電解液28の量を調整して、端子B−端子C間の抵抗が異なる10個のセルを作成した(セル番号1〜10)。また、比較用に、内ケース14に開口部30を設けず電極群間が絶縁となるセルを2個作成した(セル番号11及び12)。なお、端子B−端子C間の抵抗は、環境温度25℃において、AC0.1Hzで測定した。
【0054】
12個のセルのそれぞれについて、端子B−端子C間を導通させ、封口体18で外ケース12を覆い、図4に示すような構成で、端子A−端子D間の自己放電特性を環境温度25℃で測定した。自己放電特性は、
充放電条件:充電4C−6VCV2時間−休止12時間
の条件を与えた後、休止後の電圧を満充電時の電圧6Vで除算することにより、どの程度充電状態が維持されているかを算出した。ここで、「充電4C−6VCV2時間−休止12時間」の充放電条件とは、4C(1Cは公称容量値の容量を有するセルが1時間で充電終了となる電流値)の電流値でセル電圧が6Vになるまで定電流充電を実施し、その後2時間定電圧充電を実施し、この状態を満充電として、そのまま12時間放置する条件である。
【0055】
(試験結果)
測定結果を、表1及び図6に示す。図6に示されるように、端子B−端子C間抵抗が100kΩ付近のところが変曲点となっており、抵抗がそれ以上の範囲では自己放電特性が80%を超えて安定している。なお、端子B−端子C間抵抗が10MΩ以上になるように開口部30の大きさや電解液28の量を調整することは困難であった。
【0056】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の電気化学キャパシタによれば、コンパクトかつ低コストに高電圧を供給することができる。
【符号の説明】
【0058】
10 電気二重層キャパシタ(電気化学キャパシタ)
12 外ケース
14 内ケース
16 電極群
17a〜17d 電極群のリード部
18 封口体
20a〜20c 外部端子
22a〜22c 端子板
24 注液口
26 ガスリーク弁
28 電解液
30 内ケースの開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6