特許第6209430号(P6209430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209430誘電体を用いたアクチュエータのための電圧制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209430
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】誘電体を用いたアクチュエータのための電圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20170925BHJP
   H02N 2/06 20060101ALI20170925BHJP
   H02N 2/14 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H02N11/00 Z
   H02N2/06
   H02N2/14
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-242276(P2013-242276)
(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2015-104197(P2015-104197A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 仁
(72)【発明者】
【氏名】平井 利博
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/023875(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/048948(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N11/00
H02N 2/06
H02N 2/14
H01L41/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体に対する電圧の印加を電圧発生装置に指示する電圧制御装置であって、自装置の指示に従い前記電圧発生装置が行った電圧の印加により誘電体を含む回路を流れた電流と、前記電圧発生装置が行った電圧に応じて予め定められた閾値との比較の結果に基づき、前記誘電体の帯電状態を判定し、当該判定の結果に基づき、前記電圧発生装置に対し予め定められた規則に従う電圧の印加の指示を行うか否かを決定する
電圧制御装置。
【請求項2】
前記予め定められた規則に従い、時間の経過に伴い上昇するように変化する電圧の印加を前記電圧発生装置に指示する
請求項1に記載の電圧制御装置。
【請求項3】
前記予め定められた規則に従い、前記回路を流れた電流と前記閾値との差に応じた電圧の印加を前記電圧発生装置に指示する
請求項1または2に記載の電圧制御装置。
【請求項4】
前記予め定められた規則に従い、少なくとも予め定められた下限電圧および上限電圧の印加を前記電圧発生装置に対し指示する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電圧制御装置。
【請求項5】
前記予め定められた規則に従い、前記電圧発生装置に間欠的に電圧の印加を指示する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電圧制御装置。
【請求項6】
前記電圧発生装置により最後に前記誘電体に電圧の印加が行われた後の経過時間および前記電圧発生装置により最後に電圧の印加が行われた時の前記誘電体の帯電状態の少なくとも一方に基づき、前記比較を行うか否かを決定する
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電圧制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電圧制御装置と、
前記電圧発生装置と、
前記電圧制御装置が前記比較に用いる電流を計測する電流計測装置と
を備え、
電圧の印加により前記誘電体に生じる変位を利用するアクチュエータを駆動する駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体を用いたアクチュエータの駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体ポリマーを用いたアクチュエータ(以下、「ポリマーアクチュエータ」という)がある。図13は、従来技術にかかるポリマーアクチュエータの一例の基本構成を示した図である。図13に例示のポリマーアクチュエータ11は、板形状の陰電極111と、メッシュ板形状の陽電極112との間に配置された誘電体ポリマー113を備える。
【0003】
ポリマーアクチュエータ11の陰電極111および陽電極112には、駆動装置18の陽電極および陰電極が各々接続される。駆動装置18は電源181と、回路を開閉するスイッチ182を備える。図13(a)はスイッチ182により回路が開かれている状態を示している。
【0004】
スイッチ182が回路を閉じると(図13(b))、誘電体ポリマー113に電圧が印加される。当該電圧の印加により負に帯電した誘電体ポリマー113はクーロン力により陽電極112側へと引き寄せられ、その一部がメッシュ板形状の陽電極112の隙間から外側(図13における上側)へと押し出される(図13(c))。その結果、陽電極112の外側に接するように配置された被駆動体9が誘電体ポリマー113により押される。
【0005】
本願において誘電体ポリマーとは、電圧の印加により負に帯電し、クーロン力により変位を生じるポリマーを意味する。
【0006】
誘電体ポリマーを用いたアクチュエータを開示する文献の例として、特許文献1がある。特許文献1には、全面に無数の網孔を有するステンレス鋼製網板で構成される正電極板と網孔を有さないステンレス鋼箔で構成される負電極板を交互に複数積層し、互いに隣接する正電極板と負電極板の間に誘電性高分子と可塑剤が混合されてなる高分子ゲルを配置した構成の高分子アクチュエータが記載されている。特許文献1に記載の高分子アクチュエータは、正電極板と負電極板の間に電圧が印加されると、正電極板および負電極板に垂直な方向に縮まるように変形する。
【0007】
また、誘電体ポリマーを用いたアクチュエータを開示する文献の他の例として、特許文献2がある。特許文献2には、陽極と陰極との間に誘電性高分子材料からなるゲルを介装し、陽極と陰極との間に電圧を印加することにより厚さ方向に収縮する収縮型ゲルアクチュエータが記載されている。特許文献2に記載の収縮型ゲルアクチュエータは、印加する電圧と当該電圧による変位についてのサンプリング値から、印加する電圧をフィードバック制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−125087号公報
【特許文献2】特開2012−130201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの誘電体ポリマーを用いたアクチュエータは最後に使用された後の経過時間の長短に応じて、当該ポリマーアクチュエータの誘電体ポリマーに対しある電圧を印加した際に回路を流れる電流が異なることが知られている。例えば、長時間(例えば、数時間〜数日程度)、使用されていないポリマーアクチュエータの誘電体ポリマーに対し一定の電圧を印加し続けると、回路を流れる電流は時間の経過に伴い徐々に低下した後、一定値で概ね安定する。その後、電圧の印加を停止し、短時間(例えば、数分〜数時間程度)の経過の後に再度、同じ電圧を同じ誘電体ポリマーに印加し続けた場合は、回路を流れる電流が時間の経過に伴い低下する現象が顕著に生じることはなく、電圧の印加の開始時点から上記の一定値で概ね変化しない。
【0010】
本願において、以下、一定の電圧を印加した際に回路を流れる電流が安定しない帯電状態の誘電体ポリマーを「未安定動作状態の誘電体ポリマー」のように記載し、一定の電圧を印加した際に回路を流れる電流が安定している帯電状態の誘電体ポリマーを「安定動作状態の誘電体ポリマー」のように記載する。
【0011】
上述のように、未安定動作状態の誘電体ポリマーに電圧の印加を行うと、安定動作状態の誘電体ポリマーに電圧の印加を行う場合と比較し、多くの電流が回路を流れる。従って、誘電体ポリマーが未安定動作状態と安定動作状態のいずれであるかを考慮しない従来技術に従う場合、ポリマーアクチュエータに対し電力を供給する電圧発生装置には、未安定動作状態の誘電体ポリマーに電圧の印加を行う際に回路を流れる電流に応じた電力供給能力を持たせなければならない。
【0012】
しかしながら、いったん誘電体ポリマーが安定動作状態となれば、上記の電力供給能力は過剰となる。過剰な電力供給能力を持つ電圧発生装置の採用は、装置自体のコスト増や待機電力の増加に伴うコスト増をもたらすとともに、装置全体の小型化や軽量化の妨げとなる。
【0013】
また、誘電体ポリマーが未安定動作状態においては、ポリマーアクチュエータが十分な性能を示すとは限らない。
【0014】
以上、誘電体ポリマーを用いたアクチュエータに関し述べたが、最後に電圧を印加した後の経過時間の長短に応じて、ある電圧を印加した際に回路を流れる電流が異なる、という特性を示すポリマー以外の誘電体を用いたアクチュエータに関しても同様の問題がある。
【0015】
本発明は上述の背景に鑑みてなされたもので、過剰な電力供給能力を備えた電圧発生装置を要さず、長時間の不使用後においても安定した性能を示す、誘電体を用いたアクチュエータを実現する手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明は、誘電体に対する電圧の印加を電圧発生装置に指示する電圧制御装置であって、自装置の指示に従い前記電圧発生装置が行った電圧の印加により誘電体を含む回路を流れた電流と、前記電圧発生装置が行った電圧に応じて予め定められた閾値との比較の結果に基づき、前記誘電体の帯電状態を判定し、当該判定の結果に基づき、前記電圧発生装置に対し予め定められた規則に従う電圧の印加の指示を行うか否かを決定する、電圧制御装置を、第1の態様として提供する。
第1の態様の電圧制御装置によれば、誘電体の帯電状態が、印加される電圧と当該電圧により流れる電流との関係が不安定な帯電状態であれば、予め定められた規則に従う電圧の印加により、安定な帯電状態へと移行される。その結果、電圧発生装置は不安定な帯電状態の誘電体に印加を行うための過度な電力供給能力を備える必要がない。
【0017】
第1の態様の電圧制御装置において、前記予め定められた規則に従い、時間の経過に伴い上昇するように変化する電圧の印加を前記電圧発生装置に指示する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
第2の態様の電圧制御装置によれば、不安定な帯電状態の誘電体に対し高い電圧が印加されて回路に過大な電流が流れるという危険が回避される。
【0018】
また、第1または第2の態様の電圧制御装置において、前記予め定められた規則に従い、前記回路を流れた電流と前記閾値との差に応じた電圧の印加を前記電圧発生装置に指示する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
第3の態様の電圧制御装置によれば、誘電体の帯電状態が、安定した帯電状態から乖離している程度に応じて、安定した帯電状態へ誘電体を移行させるために誘電体に印加する電圧が決定される。従って、例えば、誘電体が安定した帯電状態に近い程、誘電体を安定した帯電状態へ移行させるための電圧を高くすることにより、移行に要する時間を短縮することができる。
【0019】
また、第1乃至第3のいずれかの態様の電圧制御装置において、前記予め定められた規則に従い、少なくとも予め定められた下限電圧および上限電圧の印加を前記電圧発生装置に対し指示する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
第4の態様の電圧制御装置によれば、下限電圧以上かつ上限電圧以下の範囲内において誘電体が安定な帯電状態を示すことが確認される。
【0020】
また、第1乃至第4のいずれかの態様の電圧制御装置において、前記予め定められた規則に従い、前記電圧発生装置に間欠的に電圧の印加を指示する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
本願発明者は、不安定な帯電状態の誘電体を安定な帯電状態へと移行させる際、連続的に電圧を印加するよりも間欠的に電圧を印加する方が短時間で移行を完了できる場合があることを発見した。そのような場合、第5の態様の電圧制御装置によれば、誘電体を不安定な帯電状態から安定な帯電状態へ移行するための時間が短縮される。
【0021】
また、第1乃至第5のいずれかの態様の電圧制御装置において、前記電圧発生装置により最後に前記誘電体に電圧の印加が行われた後の経過時間および前記電圧発生装置により最後に電圧の印加が行われた時の前記誘電体の帯電状態の少なくとも一方に基づき、前記比較を行うか否かを決定する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
第5の態様の電圧制御装置によれば、誘電体に最後に電圧の印加が行われた後の経過時間の長短や最後に電圧の印加が行われた際の誘電体の帯電状態に応じて、当該誘電体を安定な帯電状態へと移行させるための電圧の印加の処理の要否が決定される。従って、不要な処理の実行が回避され望ましい。
【0022】
また、本発明は、第1乃至6のいずれかの態様の電圧制御装置と、前記電圧発生装置と、前記電圧制御装置が前記比較に用いる電流を計測する電流計測装置とを備え、電圧の印加により前記誘電体に生じる変位を利用するアクチュエータを駆動する駆動装置を、第7の態様として提供する。
第7の態様の駆動装置によれば、過度な電力供給能力を備えないアクチュエータの駆動装置が実現される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、不安定な帯電状態の誘電体に対する電圧の印加に伴う電力に応じるための過度な電力供給能力を持たない電圧発生装置を備える、低コスト、低電力消費、小型、軽量で、安定した性能を示すアクチュエータが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態にかかる駆動システムのハードウェア構成を示した図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる電圧制御装置の機能構成を示した図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる下限電圧データおよび上限電圧データの構成を示した図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる電源特性データ、使用可能特性データおよび安定動作特性データが示す電圧と電流の関係を示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態にかかる電源特性データ、使用可能特性データおよび安定動作特性データが示す電圧と電流の関係を示すグラフの他の例である。
図6】本発明の一実施形態にかかる履歴データの構成を示した図である。
図7】本発明の一実施形態にかかる経過時間乗数データが示す経過時間と経過時間乗数の関係を示したグラフである。
図8】本発明の一実施形態にかかる駆動特性データの構成を示した図である。
図9】本発明の一実施形態にかかる駆動装置が行う初期化処理の要否判定の動作を示したフロー図である。
図10A】本発明の一実施形態にかかる駆動装置が行う初期化処理の動作を示したフロー図である。
図10B】本発明の一実施形態にかかる駆動装置が行う初期化処理の動作を示したフロー図である。
図11】本発明の一実施形態にかかる駆動装置が行う駆動処理の動作を示したフロー図である。
図12】本発明の一変形例にかかる電圧制御装置が電圧発生装置に印加を指示する電圧の時間的変化を例示した図である。
図13】従来技術にかかるポリマーアクチュエータの一例の基本構成およびその動作を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施形態]
以下、図を参照しながら本発明の一実施形態にかかる駆動システム1を説明する。図1は駆動システム1のハードウェア構成を示した図である。駆動システム1は、被駆動体(図示略)を駆動するポリマーアクチュエータ11と、ポリマーアクチュエータ11の誘電体ポリマー113に電圧を印加してポリマーアクチュエータ11を駆動する駆動装置12と、駆動装置12に対し駆動要求を行う要求元装置17を備えている。
【0026】
ポリマーアクチュエータ11は従来技術のポリマーアクチュエータであり、その構成と動作は既述のとおりである。要求元装置17はポリマーアクチュエータ11により被駆動体の駆動を要求する要求信号を駆動装置12に対し出力する装置であり、その形態は問わない。
【0027】
駆動装置12は、電圧発生装置121と、電圧制御装置122と、電流計測装置123を備えている。電圧発生装置121は、電圧制御装置122から指示される電圧を誘電体ポリマー113に印加する。
【0028】
電圧制御装置122は、要求元装置17からの駆動要求に応じて、電圧発生装置121に誘電体ポリマー113への電圧の印加を指示する。電圧制御装置122は、いわゆるコンピュータのハードウェア構成を備えている。具体的には、電圧制御装置122は、メモリ1221と、プロセッサ1222と、クロック1223と、通信IF(Interface)1224を備えている。メモリ1221、プロセッサ1222、クロック1223および通信IF1224は、バス1229を介して互いに接続されている。
【0029】
メモリ1221はRAM等の揮発性メモリやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを備え、プロセッサ1222により実行されるプログラムや後述する各種データを記憶するとともに、プロセッサ1222が行うデータ処理の作業領域として使用される。プロセッサ1222はメモリ1221に記憶されているプログラムに従い、各種データ処理を行う。クロック1223は基準時刻からの経過時間を継続的に計測し、プロセッサ1222の要求に応じて現在時刻を示す現在時刻データを生成する。
【0030】
通信IF1224はプロセッサ1222と要求元装置17との間の各種データの受け渡しを行う。なお、通信IF1224と要求元装置17の間のデータ通信は有線、無線のいずれで行われてもよい。駆動システム1において、プロセッサ1222は通信IF1224を介して要求元装置17から駆動要求を示す駆動要求データを受信する。また、プロセッサ1222は通信IF1224を介して要求元装置17に対し、各種通知を示す通知データを送信する。
【0031】
電流計測装置123は、電圧発生装置121による誘電体ポリマー113への電圧の印加により回路を流れる電流を継続的に計測し、当該計測の結果を示す電流データを生成する。
【0032】
図2は、電圧制御装置122の機能構成を示した図である。すなわち、電圧制御装置122のプロセッサ1222がメモリ1221に記憶されているプログラムを実行することにより、図2に示す機能構成部を備える装置が実現される。なお、図2には、電圧制御装置122と駆動システム1の他の構成部との関係を示すために、ポリマーアクチュエータ11、要求元装置17、電圧発生装置121および電流計測装置123も併せて示している。以下に電圧制御装置122の機能構成部を説明する。
【0033】
駆動装置12は、機能構成部として、誘電体ポリマー113に印加すべき電圧を決定し、当該決定した電圧の印加を電圧発生装置121に指示する電圧制御手段124と、各種データを記憶する記憶手段125と、現在時刻を計時して計時結果を示す現在時刻データを生成する計時手段126と、記憶手段125から各種データを読み出すとともに、電流計測装置123から電流データを、電圧制御手段124から誘電体ポリマー113に印加された電圧を示す電圧データを、また、計時手段126から現在時刻データを取得するデータ取得手段127と、データ取得手段127により取得された現在時刻データ、電圧データおよび電流データを用いて履歴データを生成する履歴データ生成手段128と、電圧制御装置122の他の機能構成部を制御する制御手段129と、要求元装置17との間で各種データの送受信を行う通信手段130を備える。
【0034】
記憶手段125には、予め、下限電圧データ、上限電圧データ、電源特性データ、使用可能特性データ、安定動作特性データ、放電常数データおよび駆動特性データが記憶されている。また、記憶手段125には誘電体ポリマー113に対する電圧の印加が行われる毎に更新される履歴データが記憶される。以下に、記憶手段125に記憶される各種データを説明する。
【0035】
図3は、下限電圧データおよび上限電圧データの構成を示した図である。下限電圧データはポリマーアクチュエータ11に印加可能な下限の電圧Vmin(以下、「下限電圧Vminという」)を示すデータである。上限電圧データはポリマーアクチュエータ11に印加可能な上限の電圧Vmax(以下、「上限電圧Vmaxという」)を示すデータである。電圧制御装置122はこれらのデータにより示される下限電圧Vmin以上かつ上限電圧Vmax以下の範囲内の電圧の印加を電圧発生装置121に指示する。
【0036】
図4は、電源特性データ、使用可能特性データおよび安定動作特性データが示す電圧と電流の関係を示すグラフである。なお、図4には参考として、電圧発生装置121の出力限界における電圧と電流の関係を示すグラフも図示している。図4の上から1番目のグラフは、出力限界における電圧と電流の関係を示すグラフである。すなわち、当該グラフが示す電圧Vに応じた電流Ilim(以下、電圧Vに応じた電流Iを「I(V)」のように記載する。また、以下、図4の上から1番目のグラフが示す電流を「出力限界電流Ilim(V)」という。)は、電圧発生装置121が電圧Vの印加を行った際に出力限界に達する電流を意味する。
【0037】
図4の上から2番目のグラフは、電源特性データが示す電圧と電流の関係を示すグラフである。当該グラフが示す電圧Vに応じた電流Imax(V)(以下、「上限電流Imax(V)」という)は、電圧発生装置121が電圧Vの印加を行った際に安全な動作を保証する上限の電流を意味する。上限電流Imax(V)は、例えば、出力限界電流Ilim(V)に1未満の所定の乗数を乗じた値をとる。
【0038】
図4の上から3番目のグラフは、使用可能特性データが示す電圧と電流の関係を示すグラフである。当該グラフが示す電圧Vに応じた電流Ip(V)(以下、「使用可能電流Ip(V)」という)は、まだ不安定ではあるが使用に耐え得る程度の性能で動作する帯電状態(以下、「使用可能状態」という)の誘電体ポリマー113に対し電圧Vを印加した場合に回路を流れる電流の上限値を示す。すなわち、電圧Vを誘電体ポリマー113に印加した場合、電流計測装置123により計測される電流(以下、「電流Ic」とする)が使用可能電流Ip(V)以下であれば、誘電体ポリマー113は使用可能な帯電状態である、と判断される。
【0039】
図4の上から4番目のグラフは、安定動作特定データが示す電圧と電流の関係を示すグラフである。当該グラフが示す電圧Vに応じた電流Is(V)(以下、「安定動作電流Is(V)」という)は、安定動作状態の誘電体ポリマー113に対し電圧Vを印加した場合に回路を流れる電流を示す。すなわち、電圧Vを誘電体ポリマー113に印加した場合、電流計測装置123により計測される電流Icが安定動作電流Is(V)以下であれば、誘電体ポリマー113は安定動作状態である、と判断される。なお、誘電体ポリマー113が正常な特性を維持している限り、誘電体ポリマー113に対し電圧Vを印加した場合、回路を流れる電流が安定動作電流Is(V)を大きく下回ることはない。
【0040】
なお、図4に示したグラフは一例であって、本発明を限定するものではない。図5は、電源特性データ、使用可能特性データおよび安定動作特性データが示す電圧と電流の関係を示すグラフの他の例である。なお、図5においても、参考として、電圧発生装置121の出力限界における電圧と電流の関係を示すグラフを図示している。
【0041】
図4に例示した上から1番目および2番目のグラフは、電圧発生装置121が、電圧Vにかかわらず一定の出力限界電流Ilim(V)および上限電流Imax(V)を示す特性を持つことを示している。これに対し、図5に例示した上から1番目および2番目のグラフは、電圧発生装置121が、電圧Vの増加に伴い、出力限界電流Ilim(V)および上限電流Imax(V)が低下する特性を持つことを示している。
【0042】
図6は、履歴データの構成を示した図である。履歴データは誘電体ポリマー113に最後に電圧が印加された時刻と、印加された電圧と、当該電圧の印加により回路を流れた電流を示すデータである。
【0043】
図7は、経過時間乗数データが示す経過時間Tと経過時間乗数W(T)の関係を示したグラフである。経過時間乗数データは、誘電体ポリマー113に最後に電圧の印加が行われた後の経過時間に応じた、放電に伴う電流の増加の程度を示すデータである。具体的には、経過時間乗数W(T)は、経過時間Tの経過に伴い、同じ電圧Vを誘電体ポリマー113に印加した場合に回路を流れる電流が増加する程度を示す1以上の数値であり、経過時間Tの単純増加関数である。
【0044】
履歴データ(図6)が示す時刻から現在時刻までの時間を経過時間Tとし、経過時間乗数データが示す当該経過時間Tに応じた経過時間乗数W(T)を履歴データが示す電流に乗じると、現時点において、履歴データが示す電圧を誘電体ポリマー113に印加した場合に回路を流れる電流の推定値が得られる。
【0045】
なお、本実施形態においては例として、放電に伴う電流の増加の程度は電圧Vの高低にかかわらず同じものとみなし、経過時間乗数Wを経過時間Tのみの関数とする構成を採用している。これに代えて、経過時間乗数Wを経過時間Tと電圧Vの関数とする構成が採用されてもよい。
【0046】
図8は、駆動特性データの構成を示した図である。駆動特性データは、特定の電圧を特定の時間だけ印加した場合に、誘電体ポリマー113に生じる変位の量と当該変位の速度を示す。
【0047】
駆動特性データは、電圧制御装置122が要求元装置17からの駆動要求に応じた変位量および変位速度の駆動を得るために印加すべき電圧と時間を決定する際に用いられる。以上が記憶手段125に記憶される各種データの説明である。
【0048】
データ取得手段127は、既述のように、記憶手段125から上述した各種データを読み出すとともに、電流計測装置123から電流データを、電圧制御手段124から誘電体ポリマー113に印加された電圧を示す電圧データを、また、計時手段126から現在時刻データを取得する。そのため、データ取得手段127は取得するデータの各々に応じた手段、例えば使用可能特性データを取得する使用可能特性データ取得手段、安定動作特性データを取得する安定動作特性データ取得手段、履歴データを取得する履歴データ取得手段、現在時刻データを取得する現在時刻データ取得手段等(図示略)を備えている。以上が駆動システム1の構成の説明である。
【0049】
続いて、駆動システム1の動作を、電圧制御装置122の動作を中心に説明する。電圧制御装置122は、例えば自装置の起動等の特定のイベントの発生をトリガとして、まず、誘電体ポリマー113を未安定動作状態から使用可能状態へと移行させる処理(以下、「初期化処理」という)の要否を判定する。本実施形態において、電圧制御装置122は、履歴データが示す最後に誘電体ポリマー113に対し電圧の印加が行われた際の電圧および電流と、安定動作特性データ(図4の上から4番目のグラフ)が示す電圧と電流の関係とに基づき、誘電体ポリマー113が現在、安定動作状態であるか否かを推定する。そして、電圧制御装置122は、安定動作状態でないと推定した場合に限り初期化処理を電圧発生装置121に指示し、不要な初期化処理の実行を回避する。また、電圧制御装置122は誘電体ポリマー113の帯電状態の推定において、履歴データが示す電流を経過時間乗数データ(図7)に従い補正し、最後に誘電体ポリマー113に電圧の印加が行われた後の経過時間の影響を反映することで、より正確に誘電体ポリマー113の現在の帯電状態を推定する。
【0050】
図9は、当該判定のために駆動装置12が行う動作を示したフロー図である。まず、データ取得手段127が備える履歴データ取得手段(図示略)は記憶手段125から履歴データ(図6)を読み出す。また、データ取得手段127が備える経過時間乗数データ取得手段(図示略)は記憶手段125から経過時間乗数データ(図7)を読み出す。また、データ取得手段127が備える現在時刻データ取得手段(図示略)は、計時手段126から現在時刻データを取得する。データ取得手段127は履歴データ、経過時間乗数データおよび現在時刻データを電圧制御手段124に引き渡す(ステップS101)。
【0051】
続いて、電圧制御手段124は、履歴データが示す時刻から現在時刻データが示す現在時刻までの経過時間Tに応じた経過時間乗数W(T)を経過時間乗数データに従い特定し、特定した経過時間乗数W(T)を履歴データが示す電流に乗じることにより、補正履歴データを生成する(ステップS102)。以下、補正履歴データが示す電圧を電圧Vc’、補正履歴データが示す電流を電流Ic’とする。
【0052】
続いて、データ取得手段127が備える安定動作特性データ取得手段(図示略)は記憶手段125から安定動作特性データ(図4の上から4番目のグラフ)を読み出し、電圧制御手段124に引き渡す(ステップS103)。続いて、電圧制御手段124は安定動作特性データに従い、安定動作状態の誘電体ポリマー113に対し補正履歴データが示す電圧Vc’を印加した場合の安定動作電流Is(Vc’)を特定し、補正履歴データが示す電流Ic’と比較することにより、現在の誘電体ポリマー113が安定動作状態であるか否かを推定する(ステップS104)。
【0053】
ステップS104において、電流Ic’が安定動作電流Is(Vc’)以下であれば、電圧制御手段124は現在の誘電体ポリマー113が安定動作状態であると推定する(ステップS104;「Yes」)。この場合、電圧制御手段124は初期化処理を行うことなく、通常動作のための準備が完了した旨を示す通知データを生成し、通信手段130を介して要求元装置17に送信する(ステップS105)。その後、電圧制御装置122は要求元装置17から駆動要求データが送信されてくるまで待機する。
【0054】
ステップS104において、電流Ic’が安定動作電流Is(Vc’)より大きければ、電圧制御手段124は現在の誘電体ポリマー113が未安定動作状態であると推定する(ステップS104;「No」)。この場合、電圧制御手段124は初期化処理を開始する旨の通知データを生成し、通信手段130を介して要求元装置17に送信する(ステップS106)。そして、駆動装置12は初期化処理を実行する(ステップS107)。
【0055】
本実施形態において、駆動装置12は誘電体ポリマー113に対し電圧を間欠的に印加することで、誘電体ポリマー113を未安定動作状態から安定動作状態に移行させる。その際、駆動装置12は低い電圧で印加を開始し、印加した電圧と当該電圧の印加により回路を流れた電流との組み合わせと、電源特性データ(図4の上から2番目のグラフ)、使用可能特性データ(図4の上から3番目のグラフ)および安定動作特性データ(図4の上から4番目のグラフ)が示す電圧と電流の関係とを比較することで、誘電体ポリマー113の現在の帯電状態を判定する。そして、駆動装置12は、判定した誘電体ポリマー113の現在の帯電状態に応じた上昇幅で電圧を上昇させながら誘電体ポリマー113に対する電圧の印加を繰り返すことにより、電源特性データが示す上限電流Imax(V)を超えることなく安全に、かつ、短時間で初期化処理を行う。
【0056】
図10Aおよび図10B(以下、これらを総称して「図10」という)は、駆動装置12が行う初期化処理の動作を示したフロー図である。まず、データ取得手段127が備える下限電圧データ取得手段(図示略)、上限電圧データ取得手段(図示略)、電源特性データ取得手段(図示略)、使用可能特性データ取得手段(図示略)は各々、下限電圧データ(図3の上段)、上限電圧データ(図3の下段)、電源特性データ(図4の上から2番目のグラフ)、使用可能特性データ(図4の上から3番目のグラフ)を読み出し、電圧制御手段124に引き渡す(ステップS201)。続いて、電圧制御手段124は誘電体ポリマー113に印加する電圧(以下、「印加電圧Vc」とする)に初期駆動電圧として下限電圧Vminを設定する(ステップS202)。
【0057】
続いて、電圧制御手段124は経過時間を示すタイマTM1に「0」をセットする(ステップS203)。このタイマTM1は、電圧の印加時間を計測するためのタイマである。続いて、電圧制御手段124は印加電圧Vcの印加を電圧発生装置121に指示する。この指示に従い、電圧発生装置121は誘電体ポリマー113に対する印加電圧Vcの印加を開始する(ステップS204)。続いて、電圧制御手段124はタイマTM1が示す経過時間が予め定められた時間T1に達したか否かを判定する(ステップS205)。ステップS205の判定は、タイマTM1が示す経過時間が時間T1に達するまでループ処理される(ステップS205;「No」)。タイマTM1が示す経過時間が時間T1に達すると(ステップS205;「Yes」)、電圧制御手段124は電圧発生装置121に電圧の印加の停止を指示し、電圧発生装置121は電圧の印加を停止する(ステップS206)。
【0058】
続いて、電圧制御手段124は経過時間を示すタイマTM2に「0」をセットする(ステップS207)。このタイマTM2は、初期化処理に伴う電圧の印加の終了後の経過時間を計測するためのタイマである。
【0059】
上述したステップS203〜S207の処理と並行して、履歴データ生成手段128は経過時間を示すタイマTM3に「0」をセットする(ステップS208)。このタイマTM3は、ステップS204において開始され、ステップS206において終了される電圧の印加において電圧発生装置121から出力される電力が上限値を超えていないかを所定時間経過毎にチェックするために、最後にチェックを行った時刻からの経過時間を計測するためのタイマである。
【0060】
続いて、履歴データ生成手段128はタイマTM3が示す経過時間が予め定められた時間T3に達したか否かを判定する(ステップS209)。なお、時間T3は時間T1よりも短い。ステップS209の判定は、タイマTM3が示す経過時間が時間T3に達するまでループ処理される(ステップS209;「No」)。タイマTM3が示す経過時間が時間T3に達すると(ステップS209;「Yes」)、履歴データ生成手段128はデータ取得手段127に現在時刻データ、電圧データおよび電流データの取得を指示する。
【0061】
この指示に従い、データ取得手段127が備える現在時刻データ取得手段(図示略)は、計時手段126から現在時刻データを取得する。また、データ取得手段127が備える電圧データ取得手段(図示略)は、電圧制御手段124からその時点で誘電体ポリマー113に印加されている印加電圧Vcを示す電圧データを取得する。また、データ取得手段127が備える電流データ取得手段(図示略)は、電流計測装置123からその時点で誘電体ポリマー113に流れ込んでいる電流Icを示す電流データを取得する。データ取得手段127は取得した現在時刻データ、電圧データおよび電流データを履歴データ生成手段128に引き渡す(ステップS210)。
【0062】
履歴データ生成手段128はデータ取得手段127から引き渡されたそれらのデータを用いて、新たな履歴データを生成し、記憶手段125に記憶されている履歴データを更新する(ステップS211)。
【0063】
履歴データが更新されると、電圧制御手段124はステップS201においてデータ取得手段127が取得した電源特性データに基づき、更新された履歴データが示す電圧Vcにおける上限電流Imax(Vc)を特定し、履歴データが示す電流Icが上限電流Imax(Vc)を超えているか否かを判定する(ステップS212)。
【0064】
ステップS212の判定において、電流Icが上限電流Imax(Vc)を超えていると判定した場合(ステップS212;「Yes」)、電圧制御手段124は電圧発生装置121に対し電圧の印加の停止を指示し、電圧発生装置121は当該指示に従い誘電体ポリマー113に対する電圧の印加を停止する(ステップS213)。この電圧の印加の停止は、何らかのエラーにより電圧発生装置121が出力限界を超えた電力の出力を行うことで故障することを回避するための初期化処理の強制停止である。電圧制御手段124はエラーにより初期化処理を強制停止した旨を示す通知データを生成し、通信手段130を介して要求元装置17に送信する(ステップS214)。
【0065】
一方、ステップS212の判定において、電流Icが上限電流Imax(Vc)を超えていないと判定した場合(ステップS212;「No」)、電圧制御手段124はタイマTM1が時間T1に達しているか否かを判定する(ステップS215)。タイマTM1が時間T1に達していない場合、すなわち電圧発生装置121による誘電体ポリマー113への電圧の印加が継続している場合(ステップS215;「No」)、駆動装置12は処理をステップS208に戻し、ステップS208〜S215の処理を繰り返す。タイマTM1が時間T1に達している場合、すなわち電圧発生装置121による誘電体ポリマー113への電圧の印加が終了している場合(ステップS215;「Yes」)、駆動装置12は次のステップS216へと処理を進める。
【0066】
ステップS216において、電圧制御手段124は、ステップS213における初期化処理の強制停止を行ったか否かを判定する。初期化処理の強制停止を行った場合(ステップS216;「Yes」)、駆動装置12は一連の処理を終了する。
【0067】
一方、ステップS213における初期化処理の強制停止を行わなかった場合(ステップS216;「No」)、電圧制御手段124は履歴データ(図6)が示す電圧Vcと電流Icとの組み合わせと、電源特性データ(図4の上から2番目のグラフ)、使用可能特性データ(図4の上から3番目のグラフ)および安定動作特性データ(図4の上から4番目のグラフ)とを比較することで、誘電体ポリマー113が現在、未安定動作状態かつ使用可能状態でない帯電状態(以下、「使用不可状態」という)、使用可能状態、安定動作状態のいずれであるかを判定する(ステップS217)。
【0068】
電流Icが使用可能電流Ip(Vc)よりも大きい場合、電圧制御手段124は誘電体ポリマー113が使用不可状態であると判定し(ステップS217;「1」)、印加電圧Vcの上昇量を示すΔVcに定数Vsをセットする(ステップS218)。定数Vsは0以上である。また、電流Icが使用可能電流Ip(Vc)以下であり、安定動作電流Is(Vc)より大きい場合、電圧制御手段124は誘電体ポリマー113が使用可能状態であると判定し(ステップS217;「2」)、ΔVcに定数Vmをセットする(ステップS219)。定数Vmは定数Vsより大きい。また、電流Icが安定動作電流Is(Vc)以下である場合、電圧制御手段124は誘電体ポリマー113が安定動作状態であると判定し(ステップS217;「3」)、ΔVcに定数Vlをセットする(ステップS220)。定数Vlは定数Vmより大きい。
【0069】
このように、本実施形態においては、誘電体ポリマー113の帯電状態が安定動作状態に近い程、印加電圧Vcの上昇幅を大きくすることで、初期化処理が加速される構成が採用されている。
【0070】
続いて、電圧制御手段124は印加電圧VcにΔVcを加算して印加電圧Vcを更新する(ステップS221)。電圧制御手段124は更新後の印加電圧Vcが上限電圧Vmaxを超えているか否かを判定する(ステップS222)。印加電圧Vcが上限電圧Vmaxを超えていない場合(ステップS222;「No」)、電圧制御手段124はステップS207において「0」をセットしたタイマTM2が示す経過時間が予め定められた時間T2に達したか否かを判定する(ステップS223)。ステップS223の判定は、タイマTM2が示す経過時間が時間T2に達するまでループ処理される(ステップS223;「No」)。タイマTM2が示す経過時間が時間T2に達すると(ステップS223;「Yes」)、駆動装置12は処理をステップS203およびステップS208に戻し、ステップS203以降の処理を繰り返す。その結果、ステップS220において更新された印加電圧Vcが誘電体ポリマー113に印加されることになる。
【0071】
ステップS213における強制停止が行われない限り、ステップS203〜S223の処理は、印加電圧Vcが上限電圧Vmaxに達するまで繰り返される。その後、印加電圧Vcが上限電圧Vmaxを超えると(ステップS222;「Yes」)、電圧制御手段124は履歴データが示す電流Icが、履歴データが示す印加電圧Vcに応じた使用可能電流Ip(Vc)以下であるか否かを判定する(ステップS224)。
【0072】
電流Icが使用可能電流Ip(Vc)より大きい場合(ステップS224;「No」)、電圧制御手段124は初期化処理がエラー終了した旨の通知データを生成し、通信手段130を介して要求元装置17に送信し(ステップS225)、初期化処理を終了する。この場合、一連の初期化処理が完了してもなお誘電体ポリマー113が使用不可状態に留まっているため、エラー終了となる。
【0073】
一方、電流Icが使用可能電流Ip(Vc)以下である場合(ステップS224;「Yes」)、電圧制御手段124は通常動作のための準備が完了した旨を示す通知データを生成し、通信手段130を介して要求元装置17に送信する(ステップS226)。その後、駆動装置12は要求元装置17から駆動要求データが送信されてくるまで待機する。以上が初期化処理の動作の説明である。
【0074】
駆動装置12は、通常動作のための準備が完了した旨を示す通知データを要求元装置17に送信した後(図9のステップS105、図10のステップS226)、要求元装置17から駆動要求データが送信されてくるまで待機する。その後、要求元装置17から駆動要求データが送信されてくると、駆動装置12は当該駆動要求データに従い誘電体ポリマー113に対する電圧の印加を行うことでポリマーアクチュエータ11を駆動する。
【0075】
図11は駆動装置12が駆動要求データに応じてポリマーアクチュエータ11を駆動する際に行う動作を示したフロー図である。駆動装置12の電圧制御手段124は通信手段130を介して駆動要求データを受信する(ステップS301)。駆動要求データには、要求元装置17が要求する誘電体ポリマー113の変位量および変位速度が示される。
【0076】
電圧制御手段124はデータ取得手段127が備える駆動特性データ取得手段を介して記憶手段125から駆動特性データ(図8)を読み出し(ステップS302)、駆動要求データに示される変位量および変位速度に応じた印加電圧および印加時間を特定する(ステップS303)。以下、ステップS303において特定された印加電圧を印加電圧Vc、ステップS303において特定された印加時間を印加時間Tcとする。
【0077】
続いて、電圧制御手段124は電圧発生装置121に対し、誘電体ポリマー113に印加電圧Vcを印加時間Tc、印加するように指示する(ステップS304〜S307)。ステップS304〜S306の処理は、図10のステップS203〜S206の処理と比較し、ステップS306においてタイマTM1の値と比較される時間がT1に代えてTcである点を除き同じであるため、その説明を省略する。
【0078】
上記のステップS304〜S307の処理と並行して、履歴データ生成手段128は時間T3で示される時間が経過する毎に履歴データを更新する(ステップS308〜S311)。また、電圧制御手段124は履歴データが更新される毎に、電流Icが上限電流Imax(Vc)を超えていないか判定し、超えている場合は電圧発生装置121に電圧の印加を強制停止させる(ステップS312〜S314)。これらの処理(ステップS308〜S314)は、電圧制御手段124により電圧発生装置121に対する電圧の印加が指示され、電圧発生装置121により誘電体ポリマー113に対する電圧の印加が行われている間、繰り返される(ステップS315)。ステップS308〜S315の処理は、図10のステップS208〜S215の処理と比較し、ステップS315においてタイマTM1の値と比較される時間がT1に代えてTcである点を除き同じであるため、その説明を省略する。
【0079】
続いて、電圧制御手段124は、ステップS313における電圧の印加の強制停止を行ったか否かを判定する(ステップS316)。電圧の印加の強制停止を行った場合(ステップS316;「Yes」)、駆動装置12は一連の処理を終了する。一方、ステップS316における電圧の印加の強制停止を行わなかった場合(ステップS316;「No」)、電圧制御手段124は駆動要求に応じた駆動処理を完了した旨の通知データを生成し、通信手段130を介して要求元装置17に送信する(ステップS317)。以上が駆動要求に応じた駆動処理の動作の説明である。
【0080】
以上のように、駆動システム1によれば、ポリマーアクチュエータ11を駆動するために、通常必要な電力供給能力に比べて過剰な電力供給能力を有する電圧発生装置を要することなく、未安定動作状態の誘電体ポリマー113を安定動作状態に移行させることができる。その際、誘電体ポリマー113の帯電状態に応じて初期化処理の要否が判断され、また、初期化処理を要する場合は誘電体ポリマー113の帯電状態に応じて印加される電圧の上昇幅が変更されるため、初期化処理が不要に長引くことはない。
【0081】
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態および以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
【0082】
(1)上述した実施形態において、電圧制御装置122は、履歴データが示す最後に誘電体ポリマー113に電圧が印加された際の印加電圧および電流とその時刻から現在に至る経過時間に基づき、誘電体ポリマー113の現在の帯電状態を推定し、当該推定の結果に応じて初期化処理の要否を判定する。
【0083】
電圧制御装置122が誘電体ポリマー113の現在の帯電状態を推定する方法はこれに限られず、最後に誘電体ポリマー113に電圧の印加が行われた後の経過時間および最後に電圧の印加が行われた時の誘電体ポリマー113の帯電状態の少なくとも一方に基づく限り、他の方法が採用されてもよい。
【0084】
例えば、最後に誘電体ポリマー113に電圧が印加された際に誘電体ポリマー113が「安定動作状態」、「未安定動作状態」のいずれであったかを履歴データとして記録しておき、「安定動作状態」であれば初期化処理を不要と判定する、といった構成としてもよい。この例では、履歴データは誘電体ポリマー113の帯電状態を特定可能とする情報として、電圧および電流を示す代わりに、「安定動作状態」、「未安定動作状態」のいずれかを示す。
【0085】
また、例えば、最後に誘電体ポリマー113に電圧が印加された後の経過時間が「10時間以上」、「10時間未満」のいずれであるかを履歴データに記録するとともに時間の経過に応じてそれを更新し、「10時間未満」であれば初期化処理を不要と判定する、といった構成としてもよい。この例では、履歴データは最後に誘電体ポリマー113に電圧の印加が行われた後の経過時間を特定可能とする情報として、時刻を示す代わりに、「10時間以上」、「10時間未満」のいずれかを示す。
【0086】
また、上述した実施形態において、最後に誘電体ポリマー113に電圧が印加された後の経過時間を初期化処理の要否の判定に反映させるために、電圧制御装置122は経過時間に応じた経過時間乗数を電流に乗じる。電圧制御装置122が経過時間を初期化処理の要否の判定に反映させる方法はこれに限られない。例えば、経過時間が予め定められた閾値以内であり、かつ、履歴データが示す印加電圧および電流が安定動作状態を示す場合は初期化処理を不要と判定し、それ以外は初期化処理を必要と判定するなど、他の方法が採用されてもよい。
【0087】
また、初期化処理の要否の判定は必須ではない。例えば、駆動装置12の起動などの所定のイベントの発生時に常に駆動装置12が初期化処理を行う構成が採用されてもよい。
【0088】
(2)上述した実施形態において、電圧制御装置122は、誘電体ポリマー113の現在の帯電状態が安定動作状態であると推定される場合には初期化処理が不要であり、それ以外の場合は初期化処理が必要である、と判定する。初期化処理の要否の判定基準はこれに限られない。例えば、使用可能状態と推定される場合には初期化処理が不要である、と判定する構成が採用されてもよい。
【0089】
また、上述した実施形態において、駆動装置12は、初期化処理における印加電圧が上限電圧に達した時点で誘電体ポリマー113が使用不可状態であれば初期化処理をエラー終了し、それ以外の場合は正常終了する。初期化処理をエラー終了とする判定基準はこれに限られない。例えば、初期化処理における印加電圧が上限電圧に達した時点で安定動作状態でなければ、初期化処理をエラー終了とする構成が採用されてもよい。
【0090】
(3)上述した実施形態において、駆動装置12は、初期化処理に際し、誘電体ポリマー113の帯電状態に応じて印加する電圧の上昇幅を変化させる。この構成は必須ではない。従って、例えば駆動装置12が誘電体ポリマー113の帯電状態を判定することなく、一定の上昇幅で印加する電圧を上昇させる構成が採用されてもよい。
【0091】
(4)上述した実施形態において、電圧制御装置122は、誘電体ポリマー113の帯電状態を判定する基準として、安定動作特性データと使用可能特性データという2種類の特性データを用いる。誘電体ポリマー113の帯電状態を判定する基準の数はこれに限られない。例えば、電圧制御装置122が安定動作特性データおよび使用可能特性データのいずれか一方のみを誘電体ポリマー113の帯電状態を判定する基準として用いる構成が採用されてもよい。また、電圧制御装置122が初期化処理の要否の判定において誘電体ポリマー113の帯電状態の推定を行わず、かつ、初期化処理において誘電体ポリマー113の帯電状態の判定を行わない構成が採用される場合等においては、電圧制御装置122が安定動作特性データと使用可能特性データのいずれも使用しない構成が採用されてもよい。
【0092】
(5)上述した実施形態において、電圧制御装置122は誘電体ポリマー113の帯電状態が「安定動作状態」、「使用可能状態」、「使用不可状態」のような離散的な区分のいずれであるかを判定する。これに代えて、電圧制御装置122が誘電体ポリマー113の帯電状態を連続的な指標を用いて判定する構成が採用されてもよい。例えば、電圧制御装置122は図4に示されるような座標系において、誘電体ポリマー113の帯電状態の指標である印加電圧と電流を各々、X座標とY座標とする点Aから、安定動作特性データが示すグラフ(図4の上から4番目のグラフ)上の最短点までの距離Dを算出し、距離Dを誘電体ポリマー113の帯電状態を示す指標として用いる構成が採用されてもよい。この例では、安定動作特性データが示すグラフの上側の領域に点Aが位置する限り、距離Dが短い程、誘電体ポリマー113は安定動作状態に近いとみなすことができる。従って、電圧制御装置122は、例えば初期化処理における印加電圧の上昇幅を、距離Dが短い程大きく設定することにより、初期化処理に要する時間を短縮することができる。
【0093】
(6)上述した実施形態において、電圧制御装置122は安定動作特定データ、使用可能特性データ等の様々なデータを自装置が備える記憶手段から読み出すことにより取得する。電圧制御装置122が誘電体ポリマー113に対する印加電圧を決定するために要する各種データを取得する方法はこれに限られない。例えば、電圧制御装置122が通信手段を介して、外部の記憶装置に記憶されている各種データを取得する構成としてもよい。
【0094】
(7)上述した実施形態において、電源特性データ、使用可能特性データ、安定動作特性データおよび経過時間乗数データは、電圧と電流、もしくは経過時間と経過時間乗数の関係を関数として示す一方、駆動特性データは、印加電圧と印加時間に応じた変位量と変位速度を代表値により離散的に示す。本発明の実施において使用されるデータの形式はこれらに限られない。例えば、使用可能特性データ等を、電圧と電流の代表値を離散的に示す表形式のデータとし、駆動装置12が必要に応じてそれらの代表値間の値を既知の補完処理により算出する構成が採用されてもよい。また、駆動特性データを、印加電圧と印加時間の組み合わせと変位量の関係を示す関数、および印加電圧と印加時間の組み合わせと変位速度の関係を示す関数を示すデータとして構成してもよい。
【0095】
(8)上述した実施形態において、電圧制御装置122は電流計測装置123および電圧発生装置121とともに駆動装置12を構成する。また、上述した実施形態において、要求元装置17およびポリマーアクチュエータ11は駆動装置12とは異なる装置として構成されている。本発明にかかる駆動システムの構成部の配置はこれに限られない。例えば、電流計測手段および直流電源の少なくとも一方を、電圧制御装置とは異なる筐体に配置された個別の装置として構成してもよい。また、例えば、電圧制御装置を、要求元装置の筐体内に一体として構成してもよい。また、上述した実施形態において電圧制御装置が備えるものとした記憶手段を、電圧制御装置とは異なる筐体に配置された外部の記憶装置として構成してもよい。
【0096】
(9)上述した実施形態において、駆動装置12は初期化処理における電圧の印加を間欠的に行う。すなわち、駆動装置12は時間T1だけ電圧の印加を行った後、時間T2だけ電圧の印加を行わない、という処理を繰り返す。これに代えて、駆動装置12が初期化処理における電圧の印加を連続して行う構成が採用されてもよい。なお、初期化処理における電圧の印加が連続して行われる場合、駆動装置12が時間の経過とともに印加電圧を段階的(非連続的)に上昇する構成としてもよいし、連続的に上昇する構成としてもよい。
【0097】
(10)上述した実施形態において、駆動装置12は初期化処理における電圧の印加を間欠的に行うが、その際に電圧を印加する時間は一定である。これに代えて、駆動装置12が初期化処理において電圧を印加する時間を変更する構成としてもよい。例えば、使用可能状態の誘電体ポリマー113に対する電圧の印加時間を使用不可状態の誘電体ポリマー113に対する電圧の印加時間よりも短くし、安定動作状態の誘電体ポリマー113に対する電圧の印加時間を使用可能状態の誘電体ポリマー113に対する電圧の印加時間よりも短くする、といった構成が採用されてもよい。
【0098】
(11)上述した実施形態において、ポリマーアクチュエータ11は板形状の陰電極111と、メッシュ板形状の陽電極112と、陰電極111と陽電極112の間にこれらの電極と接触するように配置された誘電体ポリマー113を備える。ポリマーアクチュエータの構成はこれに限られず、電圧の印加により変位を生じる誘電体ポリマーを用いたポリマーアクチュエータであれば、如何なる構成のものが採用されてもよい。
【0099】
(12)上述した実施形態において、電圧制御手段124は初期化処理の要否判定において、最後に誘電体ポリマー113に対し電圧の印加が行われた際の電圧および電流と、安定動作特性データが示す電圧と電流の関係とに基づき、誘電体ポリマー113が現在、安定動作状態であるか否かを推定する。これに代えて、電圧制御手段124が、電圧発生装置121に対し所定の電圧の印加を所定時間、指示し、印加を指示した電圧および当該電圧の印加の間に電流計測装置123により計測された電流と、安定動作特性データが示す電圧と電流の関係とに基づき、誘電体ポリマー113の帯電状態を特定し、初期化処理の要否を判定する構成としてもよい。
【0100】
この変形例において、初期化処理の要否判定のために電圧制御手段124が電圧発生装置121に対し印加を指示する時間は、短時間(例えば数ミリ秒〜数十ミリ秒程度)であることが望ましい。誘電体ポリマー113が初期化処理を要する帯電状態であれば、初期化処理の要否判定のための電圧の印加によって電圧発生装置121の出力限界電流を超える電流が回路を流れる可能性があるが、その時間が短ければ、実用上、電圧発生装置121が故障することはないためである。なお、初期化処理の要否判定のための電圧の印加時間が十分に短ければ、その電圧は上限電圧に近い値、もしくは上限電圧を超える値であってもよい。
【0101】
(13)上述した実施形態において、電圧制御手段124は初期化処理において、電圧発生装置121に対し、時間の経過に伴い上昇するように変化する電圧を印加するように指示する。初期化処理において誘電体ポリマー113に印加されるべき電圧の時間的変化はこれに限られない。例えば、電圧制御手段124が初期化処理において、電圧発生装置121に対し、下限電圧、もしくは下限電圧に近い比較的低い電圧を間欠的に、もしくは連続的に印加するように指示する構成としてもよい。
【0102】
(14)上述した実施形態において、電圧制御手段124は初期化処理において、電圧発生装置121に対し所定時間の電圧の印加を指示した後、電流計測装置により計測された電流に基づき誘電体ポリマー113の現在の帯電状態を判定し、判定した誘電体ポリマー113の現在の帯電状態に応じて次に電圧発生装置121に対し印加を指示する電圧を決定する。これに代えて、電圧制御手段124が初期化処理において誘電体ポリマー113の現在の帯電状態を判定せず、電圧発生装置121に対し、予め定められた規則に従い決定される電圧の印加を指示する構成としてもよい。図13は、この変形例において、電圧制御手段124が初期化処理時に電圧発生装置121に対し印加を指示する電圧の時間的変化を例示したグラフである。
【0103】
(15)上述した実施形態において、電圧制御手段124は初期化処理において、下限電圧から上限電圧に至る範囲の電圧の印加を電圧発生装置121に対し指示する。これにより、初期化処理において、下限電圧から上限電圧に至る全ての範囲において駆動装置12が安全に稼働可能であることが確認される。しかしながら、実用上、この確認が不要であれば、電圧制御手段124は初期化処理において、下限電圧から上限電圧に至る範囲の全てをカバーするような電圧の印加を電圧発生装置121に対し指示する必要はない。例えば、誘電体ポリマー113の現在の帯電状態が安定動作状態に至った時点で、その際の印加電圧が上限電圧に達していなくても、電圧制御手段124が初期化処理における電圧発生装置121に対する印加の指示を終了する構成としてもよい。
【0104】
(16)上述した実施形態において、電圧制御手段124は初期化処理の要否判定を行った後に、初期化処理が必要と判定した場合のみ、初期化処理を行う。これに代えて、電圧制御手段124が初期化処理の要否判定を行わず、例えば自装置の起動等の特定のイベントの発生時に常に初期化処理を行う構成としてもよい。
【0105】
(17)上述した実施形態において、駆動装置12は誘電体ポリマー113を用いたアクチュエータ(ポリマーアクチュエータ11)を駆動する。駆動装置12が駆動するアクチュエータは誘電体ポリマーを用いたアクチュエータに限られず、最後に電圧を印加した後の経過時間の長短に応じて、ある電圧を印加した際に回路を流れる電流が異なる、という特性を示すポリマー以外の誘電体を用いたアクチュエータであってもよい。
【0106】
(18)上述した実施形態において、電圧制御装置122はプロセッサがプログラムに従った処理を実行することにより実現される。これに代えて、電圧制御装置122をいわゆる専用装置としてハードウェアにより実現する構成が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1…駆動システム、11…ポリマーアクチュエータ、12…駆動装置、17…要求元装置、18…駆動装置、111…陰電極、112…陽電極、113…誘電体ポリマー、120…電圧印加手段、121…電圧発生装置、122…電圧制御装置、123…電流計測装置、124…電圧制御手段、125…記憶手段、126…計時手段、127…データ取得手段、128…履歴データ生成手段、129…制御手段、130…通信手段、1221…メモリ、1222…プロセッサ、1223…クロック、1224…通信IF、1229…バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13