(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209431
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】車両用ルームミラーのワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20170925BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20170925BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B60R16/02 645Z
H02J50/12
B60R1/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-244108(P2013-244108)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-101244(P2015-101244A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 信吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真吾
【審査官】
三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−294920(JP,A)
【文献】
実開平04−041428(JP,U)
【文献】
特開2011−243772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 1/04
B60K 37/00
H02J 50/00 − 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラスに取り付けられたルームミラーに設けられる受電部と、
前記受電部に非接触状態で電力を伝送可能な前記車両内の位置に設けられる送電部と、
を備え、
前記受電部により受電された前記電力を前記ルームミラー内の各種装置に供給し、
前記送電部が、前記車両の前記フロントガラスの下方に配置されたインストルメントパネル部に設けられ、
前記ルームミラーは、取り付け軸によって前記フロントガラスに回動可能に支持されており、
前記受電部が、前記ルームミラーの回動中心を含む領域に設けられることを特徴とする車両用ルームミラーのワイヤレス給電システム。
【請求項2】
前記受電部が、前記送電部と対向する前記ルームミラーの面の全域に亘り設けられることを特徴とする、請求項1項に記載の車両用ルームミラーのワイヤレス給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のルームミラーには、例えばモニターや自動防眩機能などを搭載し、電源が必要となっているものがある。このようなルームミラーには給電線を接続する必要がある。また、近年のルームミラーは、その取り付け位置が車体ではなく、前面窓ガラス(フロントガラス、ウィンドシールド)上にあるものが増えている。このため、車両の本体側とルームミラー間のフロントガラス上に有線配線が必要となる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−224121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のフロントガラスに設置されたルームミラーへ電力を供給するための有線配線は、フロントガラスの中央近傍に配置されるため、運転者の視界の邪魔になる虞があり、また、配線の見栄えが損なわれる場合もあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、運転者の視界の邪魔にならずにルームミラーへ電力を供給できる車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムは、車両のフロントガラスに取り付けられたルームミラーに設けられる受電部と、前記受電部に非接触状態で電力を伝送可能な前記車両内の位置に設けられる送電部と、を備え、前記受電部により受電された前記電力を前記ルームミラー内の各種装置に供給
し、前記送電部が、前記車両の前記フロントガラスの下方に配置されたインストルメントパネル部に設けられ、
前記ルームミラーは、取り付け軸によって前記フロントガラスに回動可能に支持されており、前記受電部が、前記ルームミラーの回動中心を含む領域に設けられることを特徴とする。
【0010】
また、上記の車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムにおいて、前記受電部が、前記送電部と対向する前記ルームミラーの面の全域に亘り設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムによれば、車両の本体側の送電部からルームミラー側の受電部に非接触で電力を伝送することができるので、車両の本体側とルームミラーとの間に電力供給のための有線配線を物理的に接続することが不要となる。このため、ルームミラーがフロントガラス上に直接取り付けられるタイプであっても、フロントガラス上に配線を配置する必要がなくなる。この結果、本発明に係る車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムは、運転者の視界の邪魔にならずにルームミラーへ電力を供給できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の第二実施形態に係る車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0014】
[第一実施形態]
まず、
図1を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムの概略構成を示す模式図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の車両用ルームミラーのワイヤレス給電システム1(以下では単に「ワイヤレス給電システム」とも表記する)は、フロントガラス2と、車両用ルームミラー3(以下では単に「ルームミラー」とも表記する)と、ルーフ部4と、Aピラー部5、インパネ部11とを備える自動車等の車両10において、車両10の本体側からルームミラー3に対して非接触状態での電力の伝送、すなわちワイヤレス給電を行うためのシステムである。ワイヤレス給電システム1は、電源ユニット6と、給電線7と、送電コイル8(送電部)と、受電コイル9(受電部)とを備える。
【0016】
フロントガラス2は、車両10の車室の上方を覆うルーフ部4の前縁端から、車両10の前方かつ下方に延在するよう形成されている。つまりルーフ部4は、フロントガラスの上方に配置されている。Aピラー部5は、ルーフ部4を支える車両10のピラー(柱)のうち、フロントガラス2の左右側方に配置されたものである。インパネ(インストルメントパネル)部11は、車両10の車室内において、フロントガラス2の下方、かつ、前席(運転席及び助手席)の正面に配置される車両10の内装部品全体を指すものである。
【0017】
ルームミラー3は、運転者が車両10の後方の状態を視認するためのミラーであり、車両10の車室内に設けられる。ルームミラー3は、ミラー本体部3aと、取り付け軸3b(回動軸)とを有する。取り付け軸3bは、その一端部がフロントガラス2の車室側表面に接着固定されている。ミラー本体部3aは、取り付け軸3bの他端部に回動自在に取り付けられている。つまり、ルームミラー3は、車両10のルーフ部4に取り付けられるのではなく、フロントガラス2に取り付けられている。ルームミラー3は、取り付け軸3bによってフロントガラス2に回動可能に支持されている。つまり取り付け軸3bの軸心がルームミラー3の回動中心である。ルームミラー3には、例えば各種情報を表示するモニターや自動防眩機構など、作動のために電力供給を必要とする各種装置が設置されている。
【0018】
ワイヤレス給電システム1の電源ユニット6は、車両10に搭載される電力供給源であり、例えばバッテリ等の蓄電装置によって構成される。電源ユニット6は、例えば車室の前方や下方など車両10内の任意の位置に配置される。給電線7は、電源ユニット6と送電コイル8とを電気的に接続するものであり、種々のケーブル、コネクタ等によって構成される。送電コイル8は、ルーフ部4に設けられ、電源ユニット6からの電力が給電線7を介して供給される。つまり、給電線7は、車両10内の任意の位置に搭載される電源ユニット6から、Aピラー部5の内部を通って、ルーフ部4に設けられている送電コイル8まで延在している。送電コイル8は、電源ユニット6からの電力を受電コイル9に伝送可能である。
【0019】
受電コイル9は、ルームミラー3に設けられ、送電コイル8と非接触の状態で送電コイル8から電力を受電可能である。受電コイル9は、ルームミラー3に設置される上述の各種装置と電気的に接続されており、電源ユニット6から給電線7及び送電コイル8を介して受電した電力をこれらの各種装置に供給する。
【0020】
送電コイル8及び受電コイル9は、例えば共に渦巻状に巻かれた導体コイルによって構成され、軸方向に互いに対向することで、一組の非接触給電用トランスを構成する。非接触給電用トランスは、例えば、電磁誘導方式、電磁界共鳴方式等、種々の方式によって送電コイル8から受電コイル9に非接触で電力を伝送することができる。ここで、電磁誘導方式とは、送電コイル8に交流電流を流すことで発生する磁束を媒体として受電コイル9に起電力を発生させる電磁誘導を用いて、送電コイル8から受電コイル9に電力を伝送する方式である。また、電磁界共鳴方式とは、送電コイル8に交流電流を流すことで送電コイル8と受電コイル9とを特定の周波数で共鳴させ、電磁界の共鳴現象を用いて送電コイル8から受電コイル9に電力を伝送する方式である。
【0021】
より詳細には、非接触給電用トランスでは、送電コイル8から受電コイル9に電力を伝送する場合、送電コイル8と受電コイル9とが軸方向に互いに間隔をあけて対向した状態で、電源ユニット6からの直流電流が、給電線7、インバータ等を含んで構成される送電回路等を介して、任意の周波数の交流電流に変換されて送電コイル8に供給される。送電コイル8に交流電流が供給されると、例えば、送電コイル8と受電コイル9とが電磁誘導結合し、送電コイル8からの電力が電磁誘導や電磁界共鳴により非接触で受電コイル9に受電される。受電コイル9が受電した電力は、整流器等を含んで構成される受電回路等を介して、交流電流から直流電流に変換されて、各種装置で利用される。
【0022】
このように、本実施形態のワイヤレス給電システム1は、車両10のフロントガラス2に取り付けられたルームミラー3に設けられる受電コイル9と、この受電コイル9に非接触状態で電力を送信可能な車両10内の位置、より詳細にはルーフ部4に設けられる送電コイル8と、を備え、受電コイル9により受電された電力をルームミラー内の各種装置に供給する。
【0023】
この構成により、車両10の本体側の送電コイル8からルームミラー3側の受電コイル9に非接触で電力を伝送することができるので、車両10の本体側とルームミラー3との間に電力供給のための有線配線を物理的に接続することが不要となる。このため、本実施形態のようにルームミラー3がフロントガラス2上に直接取り付けられるタイプであっても、フロントガラス2上に配線を配置する必要がないので、運転者の視界の邪魔にならずにルームミラー3へ電力を供給することが可能となる。また、フロントガラス2上に有線配線が無いので、ルームミラー3への電力供給の適用によって配線の見栄えが損なわれることがない。さらに、ルームミラー3との距離が近いルーフ部4に送電コイル8が設けられるので、送電コイル8と受電コイル9との距離が比較的短くなるよう両者を配置することが可能であり、ワイヤレス給電による損失を低減できる。
【0024】
受電コイル9は、ルームミラー3の回動中心を含む領域、すなわち、取り付け軸3bの近傍に設けられる。つまり、受電コイル9の設置位置は、ルームミラー3のミラー本体部3a上において、ミラー本体部3aの回動中心である取り付け軸3bにより近いことが好ましく、ルームミラー3の取り付け軸3b上であることがさらに好ましい。これにより、運転者がルームミラー3を回動させた場合でも、送電コイル8と受電コイル9との間の距離が変化しにくいので、ワイヤレス給電の伝送効率の変化を抑制でき、電力の供給量を安定化させることができる。
【0025】
[第二実施形態]
次に、
図2を参照して、第二実施形態について説明する。
図2は、本発明の第二実施形態に係る車両用ルームミラーのワイヤレス給電システムの概略構成を示す模式図である。
【0026】
図2に示すように、第二実施形態のワイヤレス給電システム1aは、送電コイル8aが車両10のフロントガラス2の下方に配置されたインパネ部11に設けられる点で、第一実施形態のワイヤレス給電システム1と異なるものである。
【0027】
本実施形態のワイヤレス給電システム1aでは、送電コイル8aが、車両10のフロントガラス2の上方に配置されたルーフ部4ではなく、フロントガラス2の下方に配置されたインパネ部11に設けられることにより、送電コイル8aの設置位置が車両10の車体中央側となって電源ユニット6の設置位置に近くなる。これにより、例えば、内部スペースが限定されるAピラー部5に給電線7aを配線する必要がなくなるなど、給電線7aの車両10内への取り付けの手間を低減できるので、本実施形態のワイヤレス給電システム1aは、第一実施形態と比べて車両10内への設置が容易となる。
【0028】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。上記実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0029】
上記実施形態では、ルームミラー3に設けられる受電コイル9は、ルームミラー3の回動中心を含む領域、すなわち取り付け軸3bの近傍に設けられる構成を例示したが、受電コイル9はルームミラー3上の任意の位置に配置されればよい。例えば、受電コイル9を、送電コイル8,8aと対向するルームミラー3の面の全域(たとえばルームミラー3の長手方向である左右幅方向の全域)に亘るように設け、送電コイル8,8aに対する受電コイル9の投影面積を増大させて、ワイヤレス給電の効率を向上させるよう構成してもよい。
【0030】
また、送電コイル8,8aと受電コイル9との対向の度合が正対(送電コイル8,8a及び受電コイル9の中心軸が同一となる状態)に近づくように、送電コイル8,8a及び受電コイル9のうち少なくとも一方の軸方向を調整して設置することで、送電コイル8,8aに対する受電コイル9の投影面積を増大させて、ワイヤレス給電の効率を向上させるよう構成してもよい。
【0031】
また、第一実施形態としてフロントガラス2の上方に配置されたルーフ部4に送電コイル8が設けられる構成と、第二実施形態としてフロントガラス2の下方に配置されたインパネ部11に送電コイル8aが設けられる構成とを例示したが、送電コイルは、受電コイル9に非接触状態で電力を伝送可能な車両10内の任意の位置に設けられていればよく、ルーフ部4やインパネ部11以外でもよい。
【符号の説明】
【0032】
1,1a ワイヤレス給電システム
2 フロントガラス
3 ルームミラー
3b 取り付け軸
4 ルーフ部
5 Aピラー部
6 電源ユニット
7,7a 給電線
8,8a 送電コイル(送電部)
9 受電コイル(受電部)
10 車両
11 インパネ部(インストルメントパネル部)