(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209432
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】火災延焼防止方法及び火災延焼防止装置
(51)【国際特許分類】
A62C 2/00 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
A62C2/00 A
A62C2/00 X
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-247951(P2013-247951)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-104525(P2015-104525A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512158480
【氏名又は名称】株式会社トレイス
(73)【特許権者】
【識別番号】507107350
【氏名又は名称】株式会社ティーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博之
(72)【発明者】
【氏名】栗田 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 守
【審査官】
首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−154165(JP,A)
【文献】
特開2001−146800(JP,A)
【文献】
特開2001−279843(JP,A)
【文献】
特開平11−319132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00
E04B 1/94
B05D 1/02
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延焼防止対象物の延焼を防止する火災延焼防止方法であって、
発泡固化する発泡剤を吐出し、前記延焼防止対象物に形成される前の吐出中の前記発泡剤に難燃材を吐出することにより難燃性発泡剤を前記延焼防止対象物に形成する形成工程、を含む火災延焼防止方法。
【請求項2】
前記発泡剤は、発泡ウレタンである、請求項1に記載の火災延焼防止方法。
【請求項3】
前記難燃材は、炭素材、ポリリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アルミニウムのうち1以上を含む、請求項1又は2に記載の火災延焼防止方法。
【請求項4】
延焼防止対象物の延焼を防止する火災延焼防止装置であって、
発泡固化する発泡剤を吐出する第1ノズルと、
難燃剤を吐出する第2ノズルとを備え、
前記第1ノズルは発泡剤を吐出し、前記第2ノズルは前記延焼防止対象物に形成される前の吐出中の前記発泡剤に対して前記難燃材を吐出することにより難燃性発泡剤を前記延焼防止対象物に形成する、
火災延焼防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災延焼防止方法及び火災延焼防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高硬度且つ粗粒の耐火粉末原料(難燃材)を配合した発泡ポリウレタンの溶液濃度を、特定条件を満たす有機溶剤によって希釈することにより、この耐火断熱被覆材の吹き付け塗装を可能とする耐火断熱被覆材の吹き付け方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、沸点が130℃以下の有機溶剤、例えば、沸点70℃程度のエステル系及びケトン系の溶剤を用いることにより、2液性ポリウレタン発泡樹脂を主成分とした耐火断熱被覆材を簡便に吹き付け施工することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−31235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1の耐火断熱被覆材では、有機溶剤によりその粘性を低減するよう工夫しているが、それでも十分でなく、難燃剤を添加した発泡剤を用いると、吹きつけの際にノズルが詰まりやすいこともあり、更なる改良が望まれていた。また、特許文献1の被覆材では、沸点がより低い有機溶剤を用いることから、比較的高温な場所、例えば、火事現場などでは吹き付け処理に用いることが困難な場合があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、難燃性発泡剤をより容易に吹き付け処理することができる火災延焼防止方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、発泡剤に難燃剤を混合すると吹き付けやすさは激減するが、これらを別々に吹き付けるものとすると、より容易に吹き付け処理を実施することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の火災延焼防止方法は、
延焼防止対象物の延焼を防止する火災延焼防止方法であって、
発泡固化する発泡剤を吐出し、吐出した前記発泡剤に難燃材を吐出することにより難燃性発泡剤を前記延焼防止対象物に形成する形成工程、を含むものである。
【0008】
本発明の火災延焼防止装置は、
延焼防止対象物の延焼を防止する火災延焼防止装置であって、
発泡固化する発泡剤を吐出する第1ノズルと、
難燃剤を吐出する第2ノズルとを備え、
前記第1ノズルは発泡剤を吐出し、前記第2ノズルは前記吐出した前記発泡剤に難燃材を吐出することにより難燃性発泡剤を前記延焼防止対象物に形成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、難燃性発泡剤をより容易に吹き付け処理することができる。例えば、難燃性又は不燃性の材料を発泡材の原料に加えると、粘度が上昇するだけでなく、原料中に比較的大きな無機粉末を含むことになる。そして、吹きつけの際にこの無機粉末と固化した発泡剤とが集まりやすく、ノズルを閉塞しやすくなり、吹き付けが困難になることがある。本発明では、発泡剤と難燃剤とを別々に吐出するため、このようなノズルの閉塞をより抑制することができる。したがって、難燃性発泡剤をより容易に吹き付け処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】発泡固化中の発泡剤に対して難燃材を吐出する説明図。
【
図3】吐出中の発泡剤に対して難燃材を吐出する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の火災延焼防止方法の概要の説明図である。
図2は、発泡固化中の発泡剤に対して難燃材を吐出する説明図である。
図3は、吐出中の発泡剤に対して難燃材を吐出する説明図である。本発明の火災延焼防止方法は、
図1に示すように、延焼防止装置20が、発泡固化する発泡剤を吐出し、吐出した発泡剤に難燃材を吐出することにより、難燃性発泡剤30を延焼防止対象物10に形成する形成工程、を含む。例えば、近隣に火災の建造物がある場合、延焼を防止するために他の建物に放水することがある。しかしながら、窓ガラスが割れたり、放水の効果が得られないこともあり得る。ここでは、延焼防止対象物10に対して、延焼防止装置20を用いて難燃性発泡剤30の層を延焼防止対象物の外壁に形成することにより、延焼を防止するのである。なお、「難燃材」は、燃えにくいものをいい、準不燃材や不燃材を含むものとする。
【0012】
本発明の延焼防止装置20は、発泡剤を収容し発泡剤に圧力を加える第1吐出装置22と、第1吐出装置22により加圧された発泡剤を吐出する第1ノズル23と、難燃剤を収容し難燃剤に圧力を加える第2吐出装置24と、第2吐出装置24により加圧された難燃剤を吐出する第2ノズル25とを備えているものとしてもよい。このとき、延焼防止装置20は、第1ノズル23は発泡剤を吐出し、第2ノズル25は吐出した発泡剤に難燃材を吐出することにより難燃性発泡剤30を延焼防止対象物10に形成する。この延焼防止装置20は、消防自動車に搭載するものとしてもよい。
【0013】
本発明の火災延焼防止方法において、形成工程では、
図2に示すように、延焼防止対象物10に形成され発泡固化中の発泡剤に対して難燃材を吐出するものとしてもよい。こうすれば、発泡剤の表面に難燃材の層ができるから、延焼防止対象物10の延焼を防止することができる。また、発泡剤と難燃材とを別々のノズルから吐出するため、ノズル詰まりの発生をより抑制することができ、難燃性発泡剤をより容易に吹き付け処理することができる。
【0014】
本発明の火災延焼防止方法において、形成工程では、
図3に示すように、延焼防止対象物10に形成される前の吐出中の発泡剤に対して難燃材を吐出するものとしてもよい。こうすれば、発泡剤と難燃材とがある程度混合した層ができるから、延焼防止対象物10の延焼を防止することができる。また、発泡剤と難燃材とを別々のノズルから吐出するため、ノズル詰まりの発生をより抑制することができ、難燃性発泡剤をより容易に吹き付け処理することができる。
【0015】
本発明の火災延焼防止方法において、発泡剤は、発泡固化するものであれば特に限定されないが、例えば、発泡ウレタンであることが好ましい。発泡ウレタンは、吹き付け及び発泡固化が比較的早く、取り扱いが容易であり好ましい。この発泡ウレタンは、例えば、第1液と第2液とを混合する2液系発泡ウレタンとしてもよい。このとき、第1液はポリオールを含む液としてもよいし、第2液はポリイソシアネートを含む液としてもよい。第1液に含まれるポリオールは、例えば、有機ジカルボン酸と多価アルコールから誘導されるポリエステルポリオール、ラクトンから誘導されるポリエステルポリオール、ヒマシ油、ヒマシ油変性ポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシ変性ポリオール、シリコン系ポリオールなどが挙げられる。これらのポリオールは、1種又は2種以上を併用してもよい。有機ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、アジピン酸、二量化リノレイン酸、マレイン酸などが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリブチロラクトン、ポリバレロラクトンなどが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリ(オキシプロピレン)グリコールなどが挙げられる。第1液は、架橋剤を含有するものとしてもよい。この架橋剤は、例えば、エチレングリコール及びプロピレングリコールなどの脂肪族ジオール類、エチレンジアミン及びプロピレンジアミンなどの脂肪族ジアミン類、アニリン及びフェニレンジアミンなどの芳香族アミン類などが挙げられる。第2液中に含まれるポリイソシアネートは、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。第1液と第2液との配合割合は、特に限定されないが、例えば、第1液中のポリオールおよび架橋剤の活性水素の全モル数と、第2液中のポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数とがほぼ等しくなる割合とすることが好ましい。
【0016】
本発明の火災延焼防止方法において、難燃材は、発泡剤を難燃化あるいは不燃化するものであれば特に限定されないが、 炭素材、ポリリン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アルミニウムのうち1以上を含むことが好ましい。この難燃材は、発泡剤の100質量部に対して、10〜150質量部となるように吐出することが好ましい。炭素材としては、例えば、熱膨張性黒鉛を用いることが好ましい。膨張性黒鉛は、例えば、加熱すると黒鉛層間に存在する化合物が熱分解して全体が膨張する性質を持つ黒鉛である。この膨張性黒鉛は、例えば、黒鉛酸性硫酸塩、ナトリウム黒鉛、カリウム黒鉛、ハロゲン化黒鉛、黒鉛酸化物、塩化アルミニウム黒鉛化物、塩化第二鉄黒鉛などが黒鉛の層間に存在し熱分解することにより、熱膨張するものとしてもよい。ポリリン酸アンモニウムは、樹脂で被覆してマイクロカプセル化するものとしてもよい。また、難燃材としては、更に、メラミン化合物粉末やペンタエリスリトール粉末を含むものとしてもよい。また、難燃材としては、上述のもののほか、必要に応じて、補助成分を1種または2種以上含有させてもよい。補助成分としては、例えば、シリカ、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カオリン、リン酸水素カルシウム、ヘクトライト、亜硫酸ナトリウム・7水和物、エトリンジャイト、明礬石(アルナイト)、水滑石(ブルース石)、ダイアスポア、ギブス石(ハイドラーギライト)、カオリナイト、モンモリロナイト、蛇紋石、消石灰、石膏、リン酸亜鉛などが挙げられる。
【0017】
本発明の火災延焼防止方法において、難燃材の吐出方法は、例えば、圧縮空気により飛散させ第2ノズル25から吐出させるものとしてもよい。
【0018】
以上説明した本発明の火災延焼防止方法及び延焼防止装置20は、難燃性発泡剤をより容易に吹き付け処理することができる。例えば、難燃性又は不燃性の材料を発泡材の原料に加えると、粘度が上昇するだけでなく、原料中に比較的大きな無機粉末を含むことになる。そして、吹きつけの際にこの無機粉末と固化した発泡剤とが集まりやすく、ノズルを閉塞しやすくなり、吹き付けが困難になることがある。本発明では、発泡剤と難燃剤とを別々に吐出するため、このようなノズルの閉塞をより抑制することができる。したがって、難燃性発泡剤をより容易に吹き付け処理することができる。
【0019】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0020】
以下には、難燃性発泡剤を吹き付けた延焼防止対象物の加熱試験を行った結果を参考例として説明する。
【0021】
[参考例1]
熱膨張性黒鉛(市販品)と、ポリリン酸アンモニウム粉末をメラミン系樹脂により被覆したマイクロカプセルと、硫酸アルミニウム粉末と、水酸化アルミニウム粉末(市販品)とを混合し、不燃材とした。ポリウレタン樹脂の第1液としてポリオール水系発泡剤(市販品)を用い、ポリウレタン樹脂の第2液としてポリイソシアネート(市販品)を用い、2液混合したのち、市販の吹付器で延焼防止対象物に対して吹き付けた。このとき、不燃材も吹き付けた。第1液、第2液及び不燃材の比率は、第1液が25〜40質量%、第2液が25〜40質量%、難燃材が20〜50質量%とした。この範囲で配合を変えて複数の発泡剤の試料を作成した。延焼防止対象物としては、ベニヤ板、ガラス板、鋼板、アルミニウム板、ケイ酸カルシウム板、塩化ビニル板、FRP板、石膏ボード及びロックウールとした。
図4は、難燃性発泡剤の吹き付け後の写真である。
図4に示すように、すべての延焼防止対象物に対して吹き付け可能であった。
【0022】
(延焼防止実験)
吹き付けした試料に対し、ガスバーナにより火炎を最長20分間接触させ、外観を観察した。その結果、ガラス板、鋼板、アルミニウム板、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード及びロックウールの実験では、残炎なし、残じん無しであった。ベニヤ板の実験では、ベニヤ板が炭化した。これについては、吹付材の厚さを均一又は厚くすることにより炭化対策が可能であるものと推察された。塩化ビニル板及びFRP板では、これらが溶融したため、実験を途中で終了した。しかし、残炎なし、残じん無しであった。このように、本願発明の難燃性発泡剤では、延焼を防止することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、消火剤の技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 延焼防止対象物、20 延焼防止装置、22 第1吐出装置、23 第1ノズル、24 第2吐出装置、25 第2ノズル、30 難燃性発泡剤。