特許第6209438号(P6209438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209438
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20170925BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61Q19/00
   A61K8/81
   A61K8/31
   A61K8/891
   A61K8/06
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-262153(P2013-262153)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-117209(P2015-117209A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】住田 泰輝
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−506921(JP,A)
【文献】 特開2009−286757(JP,A)
【文献】 特表2002−542199(JP,A)
【文献】 特表2005−533059(JP,A)
【文献】 特開2006−052175(JP,A)
【文献】 特開2004−051505(JP,A)
【文献】 特開2005−325088(JP,A)
【文献】 特開2014−031337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
(A)未処理のデンプン及びエーテル化デンプンから選ばれる1種又は2種以上 水に対して1.2質量%以上3.5質量%以下、
(B)ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上 組成物全体に対して0.01質量%以上0.25質量%以下、
(C)ポリアクリルアミド化合物 組成物全体に対して0.1質量%以上1.4質量%以下、
(D)揮発性油剤及び不揮発性シリコーン油から選ばれる1種又は2種以上 組成物全体に対して4質量%以上30質量%以下
【請求項2】
成分(D)の含有量が、油剤総量に対して50質量%以上である請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
水の含有量が組成物全体に対して、40質量%以上、90質量%以下である請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の化粧料として有用な水中油型乳化組成物に関する。
【0002】
デンプン類は、天然由来の原料であり、安全性が高くしかも安価であるという長所を有している点から、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品の増粘ゲル化剤として、幅広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。デンプン類を増粘ゲル化剤として使用した場合、水溶時の濃度に依存してゲル化し、油状から、ヨーグルト状、クリーム状を介してロウ状までの範囲にわたり、種々の性状を取り得る。
【0003】
しかしながら、加熱処理により糊化したデンプン類を水の存在下で長時間保持すると、デンプンの「老化」という現象が見られ、ゲルが脆弱化し、外観の濁りや沈殿、離水を生じるといった問題点があった。さらに、肌への塗布時にベタつき感、ヌルつき感が生じやすい、未溶解のデンプン粒子によるざらざらした感触を与えるといった使用時の欠点もあった。
【0004】
この様なデンプン類を含有する組成物の経時による保存安定性を改善させるために、グリセリン脂肪酸エステル、トレハロース及びアミノ酸を使用するなど多くの提案がなされている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
また、肌への塗布後のベタつき感やヌルつき感を軽減又は防止するために、特定のノニオン性界面活性剤にさらに高級アルコール等の高融点の固体脂を配合することが提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2000−514435号公報
【特許文献2】特開2013−169161号公報
【特許文献3】特開平11−18701号公報
【特許文献4】特許第4336270号公報
【特許文献5】特許第4336271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2、3に記載されるようにデンプン類に、グリセリン脂肪酸エステル、トレハロース及びアミノ酸等の物質を添加しても、糊化したデンプンの老化を防止する効果は決して充分でなかった。
また、特許文献4、5では、肌への塗布後のベタつき感やヌルつき感を軽減又は防止するため、高級アルコール等の高融点の固形油が用いられているが、高融点の固形油は、水中油型乳化組成物中に配合すると時間の経過により析出しやすく、使用感および安定性に影響を及ぼす場合があり、これらの軽減又は防止手段のさらなる改善が必要であった。
一方、揮発性油剤及び不揮発性シリコーン油はさらさらとした感触の軽い油剤であるが、特許文献2〜5に記載される組成物中に揮発性油剤及び不揮発性シリコーン油を多量に併用した場合には、著しい使用感および安定性の低下が見られることがあった。
【0008】
従って、本発明は、デンプン類を含有する水中油型乳化組成物において、揮発性油剤及び不揮発性シリコーン油を多量に配合しても経時安定性に優れ、肌への塗布後のベタつき感やヌルつき感を軽減又は防止する優れた使用感を有した水中油型乳化組成物を提供することを課題とする。特に製剤自体が低粘性ゼリーやヨーグルトのような特異的な外観になる程度にデンプン類を配合しても、使用時に高分子カスの発生等、使用感触への影響を出すことなく、不快なベタつき感やヌルつき感がなく、保存安定性を有した水中油型乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、揮発性油又は不揮発性シリコーン油を多量に含有しても、経時安定性及び使用感に優れたデンプン類を含有する水中油型乳化組成物を開発すべく、種々検討した結果、高分子化合物としてデンプン類と、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアクリルアミド化合物とを一定量の範囲で組み合わせて使用し、これに揮発性油剤又は不揮発性シリコーン油を配合することにより、特異的な外観を有する粘度を保ちつつも使用時に高分子カスが発生せず、実質的に固形油を配合しなくとも、優れた使用感と保存安定性を有する水中油型乳化組成物が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(D)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物を提供するものである。
(A)デンプン及びエーテル化デンプンから選ばれる1種又は2種以上 水に対して1.2質量%以上4質量%以下、
(B)ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上 組成物全体に対して0.01質量%以上0.25質量%以下、
(C)ポリアクリルアミド化合物 組成物全体に対して0.1質量%以上1.6質量%以下、
(D)揮発性油剤及び不揮発性シリコーン油から選ばれる1種又は2種以上 組成物全体に対して4質量%以上30質量%以下
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中油型乳化組成物は、低粘性ゼリーやヨーグルトのような特異的な外観になる程度に高分子化合物を配合しても、使用時に高分子カスの発生等、使用感触への影響を出すことなく、肌への塗布後のベタつき、ヌルつきのない優れた使用感触及び保存安定性を有し、皮膚化粧料及び毛髪化粧料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に用いる成分(A)は、デンプン及びエーテル化デンプンから選ばれる1種又は2種以上である。このうち、エーテル化デンプンを用いることが、経時安定性の点から好ましい。デンプン又はエーテル化デンプンに含まれるデンプンはブドウ糖を単位として数百個から数千個、あるいは数万個の鎖状または房状に連なった高分子物質であることが知られ、アミロース及びアミロペクチンで構成されている。
【0013】
デンプンとしては、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、モチトウモロコシデンプン、カンショデンプン、タピオカデンプン、サゴデンプン、コメデンプン、モチゴメデンプン、アマランサスデンプン、小麦デンプン等の未処理(天然)デンプンが挙げられる。また、これらの酸処理澱粉、酵素処理澱粉、デキストリン、酸化澱粉、湿熱処理澱粉等の加工デンプンも挙げられる。このうち、未処理のデンプン、特に未処理のバレイショデンプンが経時安定性、使用感(ベタつき、ヌルつきのなさ)の点で適している。
【0014】
エーテル化デンプンとしては、カルボキシメチル化デンプンやヒドロキシアルキル(ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル)化デンプン、カチオン化デンプン等が挙げられる。このうち、ヒドロキシプロピル化デンプンおよび/またはカルボキシメチル化デンプンが経時安定性、使用感(ベタつき、ヌルつきのなさ)の点で好ましい。エーテル化デンプンのデンプンとしては、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン等が好ましい。エーテル化デンプンの置換度(デンプンの構成成分であるグルコース単位当たりの官能基数)は、経時安定性、水への加熱溶解性の点から、0.02以上、0.15以下であることが好ましい。これらのエーテル化デンプンは市販されており、バイオスターチH、K5、LT(日澱化学社製)などを挙げることができる。
【0015】
本発明の(A)成分の含有量は、低粘性ゼリーやヨーグルトのような特異的な外観とするために、組成物中の水に対して1.2質量%以上4質量%以下であることが必要であり、経時安定性の点、感触面(高分子カスの発生度合い、ベタつき・ヌルつきのなさ、肌仕上がり)の点から、組成物中の水に対して1.4質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、また3.5質量%以下が好ましく、3.2質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、1.2〜4質量%であり、1.4〜4質量%が好ましく、1.5〜4質量%がより好ましく、1.5〜3.5質量%がさらに好ましく、1.5〜3.2質量%がさらに好ましく、1.5〜3.0質量%がさらに好ましい。
【0016】
本発明に用いられる成分(B)は、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上である。ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸の両者を意味する。これらのポリマーは、化粧料の汎用原料であり、増粘・ゲル化剤として使用されている。これらのうち、使用感(肌仕上がり)の点から、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩が好ましい。
【0017】
ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩としては、架橋型ポリアクリル酸又はその塩、すなわちカルボキシビニルポリマー又はその塩が好ましい。カルボキシビニルポリマーの塩を形成させるための塩基残基としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩等が好ましく例示できる。かかる塩基残基は、その含有量をカルボキシビニルポリマーに対して、2当量以下、より好ましくは1.5当量以下に調整することが好ましい。この様な形態を取ることにより、耐塩性の高いゲルが形成するためである。
具体的には、カーボポール940、カーボポール941、カーボポール980、カーボポール981(以上、Noveon Inc.社)、シンタレン(和光純薬工業株式会社)、AQPEC HV−501E(住友精化株式会社)などの市販品を使用することができる。
【0018】
(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体は、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルとの共重合体である。ここでアルキル基の炭素数は1〜30であるが、8〜30が好ましい。このうち、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が好ましく、アクリル酸・メタクリル酸C8−30アルキル共重合体がさらに好ましい。例えば、ペムレンTR−1、ペムレンTR−2、カーボポールEDT2020、カーボポール1382(以上、Noveon Inc.社)、などの市販品を使用することができる。
【0019】
本発明の(B)成分の含有量は、保存安定性の点から、組成物全体に対して、0.01質量%以上0.25質量%以下である。保存安定性及び特異的な外観の点から、(B)成分の含有量は組成物全体に対して0.02質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.04質量%以上がさらに好ましく、また0.20質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。具体的な範囲としては、0.02〜0.25質量%が好ましく、0.02〜0.20質量%がより好ましく、0.03〜0.2質量%がさらに好ましく、0.03〜0.15質量%がさらに好ましく、0.04〜0.15質量%がさらに好ましく、0.05〜0.15質量%がさらに好ましい。
【0020】
本発明で用いられる(C)ポリアクリルアミド化合物としては、ポリアクリルアミド、アクリルアミドコポリマーが含まれ、アクリルアミドコポリマーとしては、アクリルアミド及び/又はアクリロイルジメチルタウリンを構成単位として含むコポリマーが挙げられる。
【0021】
アクリルアミド及び/又はアクリロイルジメチルタウリンを構成単位として含むコポリマーとしては、アクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体、アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体、アクリルアミドとアクリル酸塩との共重合体、アクリル酸とアクリルアミドとアクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩の共重合体、アクリロイルジメチルタウリン塩とN−ビニルピロリドンの共重合体等を挙げることができる。
【0022】
これらの成分は市販されており、ポリアクリルアミドとしては、SEPIGEL 305(ポリアクリルアミド、水添ポリイソブテン(または(C13,14)イソパラフィン)、ラウレス−7、水);アクリル酸ヒドロキシエチルとアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体としては、SEPINOV EMT 10((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー)、SIMULGEL NS((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、スクワラン、ポリソルベート60、水)、SIMULGEL FL((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート60、水)、SEPIPLUS S((アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリイソブテン、PEG−7トリメチロールプロパンヤシ油アルキルエーテル、水);アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体としては、SIMULGEL EG((アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート80、水);アクリルアミドとアクリル酸塩との共重合体としては、SEPIPLUS 265((アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、ポリイソブテン、ポリソルベート20、水);アクリル酸とアクリル酸アミドとアクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩の共重合体としては、SEPIPLUS 400(ポリアクリレート−13、ポリイソブテン、ポリソルベート20、水)が挙げられる(以上、SEPPIC社製)。
アクリロイルジメチルタウリン塩とN−ビニルピロリドンの共重合体としては、Aristoflex AVC((アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/N−ビニルピロリドン)コポリマー)が挙げられる(以上、クラリアント社製)。
【0023】
これらのうち好ましくは、アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体が挙げられ、特に好ましくは、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/N−ビニルピロリドン)コポリマーが挙げられる。
【0024】
(C)成分の含有量は、組成物全体に対して、経時安定性、高分子カスの発生度合いの点で、0.1質量%以上1.6質量%以下必要である。(C)成分の含有量は、組成物全体に対して0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、また1.4質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。具体的な範囲としては、0.2〜1.4質量%が好ましく、0.3〜1.0質量%がより好ましい。なお、(C)成分の含有量は、市販品を用いる場合、市販品には溶媒、乳化剤等が含まれているので、市販品中の有効成分の含有量である。
【0025】
本発明の(A)成分及び(B)成分の含有量比((B)/(A))は、高分子カスの発生度合い、使用感(ベタつき・ヌルつきのなさ、肌仕上がり)の点から、0.01〜0.2が好ましく、0.02〜0.15がより好ましく、0.03〜0.1がさらに好ましい。
【0026】
本発明の(B)成分及び(C)成分の含有量比((B)/(C))は、高分子カスの発生度合い、使用感(ベタつき・ヌルつきのなさ、肌仕上がり)の点から、0.01〜0.9が好ましく、0.1〜0.5がより好ましく、0.2〜0.4がさらに好ましい。
【0027】
本発明に用いられる(D)揮発性油剤及び/又は不揮発性シリコーン油は、医薬品、医薬部外品、化粧料に利用される原料であれば、特に制限されない。なお、揮発性とは、1気圧下における沸点が260℃以下の物質であることを表すものとする。
【0028】
揮発性油剤には、1気圧下における沸点が260℃以下の炭化水素油及び1気圧における沸点が260℃以下のシリコーン油が含まれる。1気圧下における沸点が260℃以下の炭化水素油としては、直鎖状、分岐状のいずれの炭化水素を用いてもよく、具体例としては、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等のC12−C16アルカン類、イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン等のC8−C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)類が挙げられる。1気圧下における沸点が260℃以下のシリコーン油としては、メチルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン(動粘度1.5cs)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン等の環状ポリシロキサン類、またはカプリリルメチコン等が挙げられる。
これらのうち、好ましくはドデカン、イソドデカン、メチルトリメチコン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン(動粘度1.5cs)であり、より好ましくはイソドデカン、メチルトリメチコン、デカメチルシクロペンタシロキサンである。これらの成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0029】
不揮発性シリコーン油は、1気圧下における沸点が260℃を超えるシリコーン油であり、そのようなシリコーン油の構造は特に制限されず、環状、直鎖状、分岐状のいずれでもあってもよい。シリコーン油として具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0030】
揮発性油剤及び不揮発性シリコーン油の合計量に対する、1気圧下における沸点が260℃以下の炭化水素油の含有量は、塗布時のべたつき・ヌルつきのなさ、塗布後の肌仕上がりの良さの点から、15質量%以上であることが好ましく、18質量%以上であることがさらに好ましく、また30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。具体的な範囲としては、15質量%以上が好ましく、15〜30質量%がより好ましく、18〜25質量%がさらに好ましい。
【0031】
(D)成分の含有量は、組成物全体に対して、4質量%以上30質量%以下必要であり、高分子カスの発生度合い、ベタつき・ヌルつきのなさの点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、また25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、5〜25質量%が好ましく、7〜20質量%がより好ましく、10〜15質量%がさらに好ましい。
【0032】
本発明の水中油型乳化組成物においては、油剤の総量に対して、成分(D)の含有量が50質量%以上であるのが経時安定性、使用感(べたつき、ぬるつき、肌仕上がり)の点で好ましく、50質量%以上100質量%以下とすることが必要であり、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、また、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。具体的には、60〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、80〜98質量%がさらに好ましく、90〜95質量%がさらに好ましい。
【0033】
本発明の水中油型乳化組成物における(D)成分以外の油剤としては、α−オレフィンオリゴマー、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油;トリオクタン酸グリセリル、アボカド油、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、ダイズ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマシ油、綿実油、ミンク油等のトリグリセリド;オレイン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸イソデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2−エトキシエチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸2−エチルヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ホモメンチル、オクトクリレン、ジメチルジエチルベンザルマロネート等のエステル油;2−オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の分岐又は不飽和の高級アルコール等の25℃、1気圧下にて流動性を有する液状油剤(ペースト状の油剤を含む);及びパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、オゾケライト、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、モクロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ミツロウ(ビーズワックス)、ジョジョバロウ、セラックロウ等のロウ類、硬化ホホバ油、硬化牛脂、硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油等の硬化油、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ブラシン酸、コレステロール、フィトステロール等の高級脂肪酸、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール、バチルアルコール、キミルアルコール等のアルキルグリセリルエーテル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル等の固形エステル等の25℃、1気圧下で流動性のない固形の油剤(融点が55℃以上の油剤から選択することができる)が挙げられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
このうち、固形の油剤の含有量は、経時安定性、使用感の点から、組成物全体に対して3質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
また、油剤の合計量は、組成物全体に対して1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。具体的には1〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。
【0034】
本発明の水中油型乳化組成物には、さらに(E)非イオン界面活性剤を用いるのが好ましく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのうち、より好ましくは、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステルであり、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は水素添加したヒマシ油とポリオキシエチレン鎖をエステル結合したものであり、ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖(スクロース)の水酸基に脂肪酸がエステル結合してなるノニオン界面活性剤である。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ポリオキシエチレンの付加モル数が20以上のものが好ましく、より好ましくは40〜100である。ショ糖脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が10以上のものが好ましく、脂肪酸の炭素数がより好ましくは10〜24、更に好ましくは12〜20である。また、ショ糖脂肪酸エステルのエステル組成としては、モノエステルが60%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上である。
【0035】
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ステアリン酸スクロース、オレイン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ラウリン酸スクロース等を挙げることができる。これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
ノニオン性界面活性剤のHLBは、8以上18以下であることが好ましく、10以上16以下がより好ましく、12以上16以下がさらに好ましい。
ここで、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)とは、油−水系で界面活性剤の両液体に対する相対的親和力の比を表す指標であり、グリフィン(GRIFFIN)の定義による、25℃におけるHLB値を意味する。グリフィンによるHLB値は、J.Soc.Cosm.Chem.,1954,5:249−256において定義されている。
【0037】
成分(E)の含有量は、組成物全体に対して、0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。当該範囲内であれば、経時安定性が良好で、べたつきやヌルつき感がなく、使用感が良好となり、好ましい。
【0038】
本発明では、さらに(F)多価アルコールを含有することが好ましい。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量650未満)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(平均分子量650未満)、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンが挙げられる。これらの多価アルコールは、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
これらのうち、経時安定性及び使用性の点から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが好適に利用でき、特に好ましくはジプロピレングリコール、グリセリンである。
【0039】
成分(F)の含有量は、組成物全体に対して3〜20質量%が好ましく、より好ましくは5〜15質量%である。当該範囲内であれば、不快なベタつき・ヌルつきがなく、しっとり感が良好で好ましい。
【0040】
本発明では、さらに(G)炭素数1〜3の飽和1価アルコールを含有する事が好ましい。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、好ましくはエチルアルコールである。
【0041】
成分(G)の含有量は、特に限定されるものではないが、塗布時のベタつき・ヌルつきを抑え、さっぱり感を向上させる点から、組成物全体に対して、好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは3〜8質量%である。
【0042】
本発明では、さらに(H)糖アルコールを含有することが好ましい。糖アルコールとしては、単糖類〜六糖類のアルドース又はケトースのカルボニル基が還元されたものが挙げられる。構成糖の数は、1〜6であるものが好ましく、より好ましくは1〜3である。これらはD体、L体のいずれであってもよく、またその混合物であってもよく、いずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0043】
前記糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ガラクチトール、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、パラチニット、マルチトール、ラクチトール、イソマルトース、マルトトリイトール、マルトテトライトール、マルトペンタイトール、マルトヘキサトリイトール等が挙げられる。好ましい糖アルコールとしては、キシリトール、ソルビトール、マルチトールであり、より好ましくはソルビトール、マルチトールである。
【0044】
成分(H)の含有量は、組成物全体に対して、0.5〜8質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。当該範囲内であれば、不快なベタつき・ヌルつきがなく、しっとり感が良く好ましい。
【0045】
本発明では、さらに(I)キサンタンガム、ジェランガム、カラギーナン、ヒアルロン酸ナトリウム、サクシノグルカンから選択される1種以上を用いるのが好ましい。これらのうち、好ましくはキサンタンガム及び/又はヒアルロン酸ナトリウムである。
成分(I)の含有量は、組成物全体に対して、0.1〜0.2質量%であるのが好ましい。当該範囲内であれば、低粘性ゼリーやヨーグルトのような外観に調整しやすく、経時安定性に優れるため、好ましい。
【0046】
また本発明の水中油型乳化組成物における水相と油相の質量比率(水相/油相)は、経時安定性、使用感の点から、2以上が好ましく、4.5以上がより好ましく、また、15以下が好ましく、7.5以下がより好ましい。具体的な範囲としては2〜15が好ましく、4.5〜7.5がより好ましい。
また、水の含有量は組成物全体に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。また90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましく、60〜75質量%がさらに好ましい。
【0047】
また、本発明の水中油型乳化組成物には、上記成分の他に、目的に応じて本発明の効果を損なわない範囲内で、他の界面活性剤、水溶性高分子、植物エキス、ビタミン類、酸化防止剤、防菌防腐剤、消炎剤、昆虫忌避剤、生理活性成分、塩類、キレート剤、中和剤、pH調整剤、香料等を配合することができる。
【0048】
本発明の水中油型乳化組成物の用途としては、化粧料、医薬部外品、医薬品等に特に制限なく用いることができるが、使用感の良さから化粧料、医薬部外品として好適に用いることが出来る。具体的にはシャンプー、リンス、コンディショナーなどの毛髪化粧料、洗顔料、クレンジング化粧料、ローション、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め化粧料、パック、マッサージ化粧料などの皮膚化粧料として好適に利用できる。これらのうち、特に乳液、クリーム、美容液等のスキンケア化粧料として適用するのが好ましい。
【0049】
本発明の水中油型乳化組成物の外観形態としては、水を含む任意の液状媒体に粘性を付与した組成物であり、特に低粘性ゼリーやヨーグルトのような外観を持つ化粧料、医薬部外品、医薬品として有用である。
ここで、低粘性ゼリーやヨーグルトのような外観とは、静置した状態では流動性を有さないが、攪拌することにより乳液のような流動性が生じ、さらに放置すると再度流動性がなくなるという外観を有することをいう。
【0050】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の組成物を開示する。
【0051】
<1>次の成分(A)〜(D)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
(A)デンプン及びエーテル化デンプンから選ばれる1種又は2種以上 水に対して1.2質量%以上4質量%以下、
(B)ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上 組成物全体に対して0.01質量%以上0.25質量%以下、
(C)ポリアクリルアミド化合物 組成物全体に対して0.1質量%以上1.6質量%以下、
(D)揮発性油剤及び不揮発性シリコーン油から選ばれる1種又は2種以上 組成物全体に対して4質量%以上30質量%以下
【0052】
<2>成分(A)が、デンプン、カルボキシメチル化デンプン、ヒドロキシアルキル化デンプン及びカチオン化デンプンから選ばれる1種又は2種以上である<1>記載の水中油型乳化組成物。
<3>成分(A)が、デンプン、カルボキシメチル化デンプン及びヒドロキシアルキル化デンプンから選ばれる1種又は2種以上である<1>又は<2>記載の水中油型乳化組成物。
<4>成分(A)の含有量が、組成物中の水に対して、好ましくは1.4質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、また好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3.2質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下である<1>〜<3>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<5>成分(A)の含有量が、組成物中の水に対して、好ましくは1.4〜4質量%、より好ましくは1.5〜4質量%、さらに好ましくは1.5〜3.5質量%、さらに好ましくは1.5〜3.2質量%、さらに好ましくは1.5〜3.0質量%である<1>〜<4>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<6>成分(B)が、カルボキシビニルポリマー、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくはカルボキシビニルポリマー、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体、及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上である<1>〜<5>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<7>成分(B)の含有量が、組成物全体に対して、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.04質量%以上であり、また好ましくは0.20質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下である<1>〜<6>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<8>成分(B)の含有量が、組成物全体に対して、好ましくは0.02〜0.25質量%、より好ましくは0.02〜0.20質量%、さらに好ましくは0.03〜0.2質量%、さらに好ましくは0.03〜0.15質量%、さらに好ましくは0.04〜0.15質量%、さらに好ましくは0.05〜0.15質量%である<1>〜<7>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<9>成分(C)が、ポリアクリルアミド、又はアクリルアミド及び/又はアクリロイルジメチルタウリンを構成単位として含むコポリマーであり、好ましくは、ポリアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチルとアクロイルジメチルタウリン塩との共重合体、アクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩との共重合体、アクリルアミドとアクリル酸塩との共重合体、又はアクリル酸とアクリルアミドとアクリル酸塩とアクリロイルジメチルタウリン塩の共重合体である<1>〜<8>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<10>成分(C)の含有量が、組成物全体に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また好ましくは1.4質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である<1>〜<9>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<11>成分(C)の含有量が、組成物全体に対して、好ましくは0.2〜1.4質量%、より好ましくは0.3〜1.0質量%である<1>〜<10>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<12>成分(D)が、1気圧下における沸点が260℃以下の炭化水素油、1気圧下における沸点が260℃以上のシリコーン油及び1気圧下における沸点が260℃を超えるシリコーン油から選ばれる1種又は2種以上である<1>〜<11>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<13>成分(D)の含有量が、組成物全体に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、また好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である<1>〜<12>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<14>成分(D)の含有量が、組成物全体に対して、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは7〜20質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である<1>〜<13>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<15>成分(A)と成分(B)の含有量比(B/A)が、好ましくは0.01〜0.2であり、より好ましくは0.02〜0.15であり、さらに好ましくは0.03〜0.1である<1>〜<14>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<16>成分(B)と成分(C)の含有量比(B/C)が、好ましくは0.01〜0.9、より好ましくは0.1〜0.5、さらに好ましくは0.2〜0.4であるである<1>〜<15>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<17>成分(D)の含有量が、油剤の総量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは80〜98質量%、さらに好ましくは90〜95質量%である<1>〜<16>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<18>油剤の合計量が、組成物全体に対して、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である<1>〜<17>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<19>水分の含有量が、組成物全体に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、また好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下でである<1>〜<18>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<20>さらに非イオン界面活性剤、多価アルコール、炭素数1〜3の飽和1価アルコール、糖アルコール、キサンタンガム、ジュランガム、カラギーナン、ヒアルロン酸ナトリウム及びサクシノグルカンから選ばれる1種又は2種以上を含む<1>〜<19>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
<21>化粧料、医薬部外品又は医薬である<1>〜<20>のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【実施例】
【0053】
実施例1〜11、及び比較例1〜8
表1及び表2に示した処方に従い、水中油型乳化組成物を調製した。これらを用いて、下記の(1)経時安定性試験(高温及び低温)、(2)外観確認、(3)官能性試験を実施し、それぞれ評価した。結果は表1及び表2に併せて示した。
なお、実施例4は参考例であって、本発明の範囲に含まれるものではない。
【0054】
(1)経時安定性試験
表1及び表2に示した水中油型乳化組成物をガラス瓶に入れ、それぞれの試料を45℃又は−10℃の恒温槽に3ヶ月間保管した。調製直後の状態を基準として、3ヶ月後の外観の変化を目視により下記基準に基づいて判定した。
【0055】
(経時安定性(45℃、3ヶ月)評価基準)
○:問題なし
△1:極めて軽微な分離が見られる
△2:極めて軽微な過剰固化が見られる
×1:分離、離油、離水が見られる
×2:過剰固化が見られる
(経時安定性(−10℃、3ヶ月)評価基準)
○:問題なし
△1:極めて軽微な分離が見られる
△2:極めて軽微な過剰固化が見られる
×1:分離、離油、離水が見られる
×2:過剰固化が見られる
【0056】
(2)外観確認
10名の評価パネラーに「低粘性ゼリー、ヨーグルトのような特異的外観」について、下記評価基準に基づき判断した。
○:低粘性ゼリー、ヨーグルトのような特異的外観といえる。
×:低粘性ゼリー、ヨーグルトのような特異的外観といえない。
【0057】
(3)官能性試験
10名の評価パネラーに「塗布時の高分子カスの発生度合い」、「塗布時のベタつき・ヌルつき」及び「塗布後の肌仕上がり」について、下記評価基準に基づき、それぞれ評価した。評価結果は、10名の評価パネラーの平均点を示した。
【0058】
(塗布時の高分子カス発生度合い評価基準)
3:高分子カスは発生しなかった。
2:極僅かに高分子カスが発生するが、問題にならない程度である。
1:使用時に不快に感じる程度の高分子カスが発生する。
【0059】
(塗布時のベタつき・ヌルつき評価基準)
5:ベタつき・ヌルつきを感じない
4:どちらとも言えない
3:僅かにベタつき・ヌルつきを感じる
2:ベタつき・ヌルつきを感じる
1:ベタつき・ヌルつきを強く感じる
【0060】
(塗布後の肌仕上がり評価基準)
5:肌収まりが良く、良好な保湿感と肌感触を感じることができる
4:極僅かに肌収まりが良くないが、良好な保湿感を感じ、ベタつきはない
3:僅かに肌収まりが良くないが、通常の保湿感を感じ、ベタつきはない
2:僅かに肌収まりが悪く、過剰な保湿感とベタつきを感じる
1:肌収まりが悪く、過剰な保湿感とベタつきを感じる
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
※1:パイオスターチ H(日澱化学(株))
※2:シンタレンK(和光純薬工業(株))
※3:SEPIGEL 305 (SEPPIC S.A.)ポリアクリルアミド、ラウレス-7、(C13,14)イソパラフィン、水の混合物であり、ポリアクリルアミドを40%含む
※4:コスメライクM-160(第一工業製薬(株))
※5:KF-96A-5CS(信越化学工業(株))
※6:KF-96A-100CS(信越化学工業(株))
※7:TMF-1,5(信越化学工業(株))
※8:CREASIL ID-CG(CIT S.a.r,l)
※9:サラコス99(日清オイリオグループ(株))
※精製水の含有量については、混合成分中の水含有量も含む形式で記載しているため、括弧表示としている。
【0064】
(調製方法)
冷水中にヒドロキシプロピルデンプンを投入、分散し、75℃付近まで加熱して溶解する。その後、SEPIGEL305以外の水相成分を順次投入して溶解する。溶解を確認できた後、SEPIGEL305を投入してホモミキサーで分散する。当該水相を45℃付近まで冷却後、予め混合しておいた油相を当該水相に投入し、ホモミキサーで分散、乳化する。その後、アルコール相、エキス、中和剤(最終調製物のpHが5〜7の範囲になる)を順次投入してホモミキサーで分散し、30℃まで冷却して調製終了とする。
【0065】
表1及び表2から明らかなように、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を一定量含有する本発明の水中油型乳化組成物は、経時安定性に優れ、低粘性ゼリーやヨーグルトの様な特異的な外観を有し、かつ塗布時及び塗布後の感触及び肌仕上がりが良好であった。一方、成分(A)が水に対して1.2〜4質量%の範囲外の場合(比較例1、2)、成分(B)が組成物全体に対して0.01〜0.25質量%の範囲外(比較例3、4)、成分(C)が組成物全体に対して0.1〜1.6質量%の範囲外(比較例5、6)、成分(D)が組成物全体に対して4〜30質量%の範囲外(比較例7)及び成分(D)を含有しない場合(比較例8)は、経時安定性、特異的な外観、塗布時及び塗布後の感触のいずれかが良くなかった。
【0066】
次に、以下の処方に従い、常法にて水中油乳化組成物を調製した。いずれも官能効果に優れ、良好な経時安定性が期待されるものでる。
【0067】
【表3】
【0068】
※10 STRUCTURE XL (Akzo Nobel Surface Chemistry LLC)
※11 PEMULEN TR-1 (Lubrizol Advanced Materials, Inc.)
※12 SIMULGEL EG (SEPPIC S.A.)
(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーを37.5%含む、イソヘキサデカン、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタン、水との混合物である
※13 コスメライクL-160(第一工業製薬(株))
※14 TSF-405(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)
※15 KF-96A-6CS(信越化学工業(株))
※16 T.I.O(日清オイリオグループ(株))
※17 プラスチックパウダーD-800(東色ピグメント(株))
【0069】
(調製方法)
水相1を加温溶解後、水相2を投入してホモミキサーにて分散する。更に油相を投入してホモミキサーで分散し乳化する。最後にアスコルビン酸2グルコシドの水溶液を水酸化カリウムで中和後(最終調製物のpHが5〜7の範囲になる)、アルコール相及びエキスとともに投入して攪拌混合して調製する。
【0070】
【表4】
【0071】
※18 馬鈴薯でん粉(東部十勝農産加工農業協同組合連合会)
※19 シンタレンL(和光純薬工業(株))
※20 ARISTOFLEX AVC (Clariant Produkte (Deutschland) GmbH)
※21 KF-96H-1000000CS(信越化学工業(株))
※22 KF-96A-200CS(信越化学工業(株))
※23 KF-96A-1CS(信越化学工業(株))
※24 スーパーMCオイル(日興リカ(株))
【0072】
(調製方法)
水相を加温溶解後、油相を投入してホモミキサーで分散し乳化する。その後エキスを投入し混和し、最後に水酸化カリウム(最終調製物のpHが5〜7の範囲となる量)を投入し攪拌混合して調製する。