(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜
図5を参照して、
図1に示す開度決定装置1について説明する。
【0011】
開度決定装置1は、レバー操作量(後述)と建設機械用方向切換弁の開度との相関関係(この相関関係を「建設機械用方向切換弁の開度」という)を決定するための装置である。開度決定装置1は、作業者による建設機械用方向切換弁の開度の決定を支援する装置である。建設機械には、例えばショベル、ドーザ、及びクレーンなどがある。この建設機械は、アクチュエータ11(後述)を駆動させることで動作する。建設機械用方向切換弁は、アクチュエータ11の動作を制御する弁である。建設機械用方向切換弁は、アクチュエータ11と、油圧源13(後述)と、タンク15(後述)との間で流れる油の流量や方向を制御する弁である。建設機械用方向切換弁は、スプール弁である。スプール弁は、スプールを移動(ストローク)させることで、油の流量や方向を制御する弁である。開度決定装置1は、アクチュエータ制御回路10と、開度決定支援装置20と、試作スプール製造機器50と、試験用機器70と、を備える。
【0012】
アクチュエータ制御回路10は、アクチュエータ11の動作を制御する回路である。アクチュエータ制御回路10は、例えば実機(建設機械)に設けられる。アクチュエータ制御回路10は、実機を模したものでもよい。アクチュエータ制御回路10は、アクチュエータ11と、油圧源13と、タンク15と、電動弁17と、を備える。
【0013】
アクチュエータ11は、油が供給されることで駆動する油圧アクチュエータである。アクチュエータ11は、複数設けられる。アクチュエータ11は、例えば油圧モータ(図示なし)であり、また例えば油圧シリンダである。油圧シリンダであるアクチュエータ11には、単動式のアクチュエータ11Aと、複動式のアクチュエータ11Bと、がある。例えば建設機械がショベルの場合、アクチュエータ11の用途には、ブーム起伏、アーム起伏、バケット回動、走行、及び旋回(下部走行体に対する上部旋回体の旋回)等がある。
【0014】
油圧源13は、アクチュエータ11に油(作動油、圧油)を供給する。油圧源13は、タンク15から油を吸い込む。油圧源13は、油圧ポンプである。
【0015】
タンク15には、油圧源13から吐出された油が戻される。油圧源13から吐出された油は、アクチュエータ11を通って、又は、アクチュエータ11を通らずに、タンク15に戻る。
【0016】
電動弁17は、実機に搭載される建設機械用方向切換弁を模擬した弁である。電動弁17は、電動弁17に入力される電気信号に応じて、開度(絞り)を変えることが可能な弁である。この電気信号は、例えば電圧値、また例えば所定の信号パターン等である。電動弁17は、スプール弁以外の弁である。例えば、電動弁17は、モータの動作により開度が変わる弁である。また例えば、電動弁17は、電磁力により開度が変わる弁(電磁比例弁など)である。具体的には例えば、電動弁17は、IMV(Independent Metering Valve;独立メータリングバルブ)である。IMVは、アクチュエータ11にかかる負荷が変わっても、一定の流量を流すように自動的に制御される弁である。なお、IMVについては、例えば特許文献2などに記載されている。
【0017】
この電動弁17は、アクチュエータ11の動作を制御する弁である。電動弁17は、制御部27(後述)に制御される。電動弁17は、アクチュエータ11と油圧源13との間に配置される。電動弁17は、アクチュエータ11とタンク15との間に配置される。「間」とは、「間をつなぐ通路(油路)上」を意味する。電動弁17は、複数のアクチュエータ11A、11B、及び11Dそれぞれに接続される。1つの単動式のアクチュエータ11Aには、1単位の電動弁17Aが接続される。1つの複動式のアクチュエータ11Bには、2単位の電動弁17(電動弁17Bおよび電動弁17C)が接続される。1単位の電動弁17は、第1電動弁17aと、第2電動弁17bと、を備える。
【0018】
第1電動弁17aは、アクチュエータ11と油圧源13との間に配置される。
【0019】
第2電動弁17bは、アクチュエータ11とタンク15との間に配置される。なお、
図1では、1単位の電動弁17と制御部27とが1本の線(信号線)でつながれるように示しているが、第1電動弁17aと第2電動弁17bとは独立して制御部27に制御される。
【0020】
この電動弁17の動作は次の通りである。第1電動弁17aを開くとともに、第2電動弁17bを閉じると、油圧源13からアクチュエータ11に油が供給される。第1電動弁17aを閉じるとともに、第2電動弁17bを開くと、アクチュエータ11からタンク15に油が戻る。第1電動弁17a及び第2電動弁17bそれぞれを開くと、油圧源13から吐出された油は、アクチュエータ11を通らずに、タンク15に戻る。
【0021】
開度決定支援装置20は、電動弁17の開度の決定を支援する装置である。開度決定支援装置20は、電動弁17の開度の決定を支援することで、建設機械用方向切換弁の開度の決定を支援する。開度決定支援装置20は、本体部21(
図2参照)と、レバー23と、操作量変換器25と、制御部27と、モニタ30と、グラフ切換部41と、開度変更部43と、を備える。
【0022】
この開度決定支援装置20は、
図2に示すように、ひとまとまりの装置(一体的に構成された装置)として構成される。このひとまとまりの装置である開度決定支援装置20は、例えば次の[装置の配置A]または[装置の配置B]のように配置される。[装置の配置A]開度決定支援装置20は、実機の運転室内に配置される。例えば、開度決定支援装置20は、運転室内に配置された台の上に配置される。[装置の配置B]開度決定支援装置20は、運転室外(例えば実機の外部)に配置される。開度決定支援装置20が実機の外部に配置される場合、例えば無線電気通信が利用される。なお、開度決定支援装置20の構成要素は、次の[要素の配置A]または[装置の配置B]のように配置されてもよい。[要素の配置A]開度決定支援装置20の構成要素の一部が、他の部分とは別個に設けられてもよい。例えば、
図1に示す制御部27以外の構成要素がひとまとまりの装置を構成し、このひとまとまりの装置とは別個に制御部27が配置される。また例えば、レバー23以外の構成要素がひとまとまりの装置を構成し、このひとまとまりの装置とは別個にレバー23(例えば実機のレバー)が配置される。[要素の配置B]開度決定支援装置20の構成要素の全部が別個に配置されてもよい。
【0023】
本体部21は、
図2に示すように、ひとまとまりの装置としての開度決定支援装置20の本体部分である。本体部21は、例えば板状である。
【0024】
レバー23は、
図1に示す電動弁17を操作するため、また、アクチュエータ11を操作するためのリモートコントローラー(リモコン)である。レバー23は、作業者によって操作される。この作業者とは、建設機械用方向切換弁の開度の決定作業を行う作業者であり、電動弁17の開度の決定作業を行う作業者であり、アクチュエータ11を操縦する操縦者である。
図2に示すように、レバー23は、例えば実機のレバーを模したものである。また例えば、レバー23は、実機に設けられたレバーでもよい。レバー23は、本体部21から上に突出する。本体部21に取り付けられるレバー23の数(本数)は、例えば2であり、また例えば1や3以上でもよい。
【0025】
操作量変換器25は、
図1に示すレバー23の操作量(「レバー操作量」)を電気的数値に変換する。電気的数値は、例えば電圧値であり、また例えば数値を表す信号パターン等である。以下では、特に断らない限り、操作量変換器25により電気的数値に変換されたレバー操作量を、単に「レバー操作量」という。操作量変換器25は、レバー23の位置(操作位置)を検出する位置センサである。操作量変換器25は、レバー23の角度(操作角度)を検出する角度センサでもよい。操作量変換器25は、ポテンショメータである。操作量変換器25とレバー23とで、電気式レバー(ジョイスティック)が構成される。
【0026】
制御部27は、電気信号の入出力および演算等を行う。制御部27は、マイコン(マイクロコントローラ)である。制御部27は、レバー23のレバー操作量や電動弁17の開度に関する情報を処理する。制御部27には、操作量変換器25から上記の電気的数値が入力される。制御部27は、グラフ表示部31(後述)の表示を制御する。制御部27は、アクチュエータ名表示部33(後述)の表示を制御する。制御部27には、グラフ切換部41からグラフの切換(後述)を指示する信号が入力される。制御部27には、開度変更部43から電動弁相関関係(後述)の変更を指示する信号が入力される。制御部27は、電動弁相関関係に基づいて電動弁17の開度を制御する。制御部27は、例えば本体部21(
図2参照)の内部に配置される。
【0027】
モニタ30は、各種情報を表示する装置(表示装置)である。
図2に示すように、モニタ30は、本体部21の上面に配置(固定)される。モニタ30は、グラフ表示部31と、アクチュエータ名表示部33と、を備える。
【0028】
グラフ表示部31は、グラフ(線図)を表示する部分である。グラフ表示部31は、電動弁相関関係(後述)に関するグラフを表示する。
図3に示すように、グラフ表示部31が表示するグラフは、レバー操作量に関する値と、電動弁17の開度に関する値と、の関係を示すグラフである。例えば、グラフの横軸は「レバー操作量に関する値」を示し、グラフの縦軸は「電動弁17の開度に関する値」を示す。「レバー操作量に関する値」は、レバー操作量(操作量変換器25により電気的数値に変換されたレバー操作量)である。「レバー操作量に関する値」は、レバー操作量を換算した値でもよい。レバー操作量を換算した値には、レバー操作量を、建設機械用方向切換弁のスプールのストローク量に換算した値がある。上記「電動弁17の開度に関する値」は、電動弁17の開度(開口面積/全開時の開口面積)である。「電動弁17の開度に関する値」は、電動弁17の開度から導出可能な値でもよく、例えば電動弁17の開口面積でもよい。
【0029】
このグラフ表示部31が表示するグラフの具体例は次の通りである。
図3に例示するグラフは、アクチュエータ11(11B)(
図1参照)が複動式の場合のグラフである。グラフ表示部31の左半分に、アクチュエータ11Bの一方側動作時のグラフが表示され、グラフ表示部31の右半分に、アクチュエータ11Bの他方側動作時のグラフが表示される。アクチュエータ11Bの一方側動作および他方側動作は、例えば、ブーム上げ動作およびブーム下げ動作などである。グラフ表示部31には、第1電動弁17a(
図1参照)のグラフ31aと、第2電動弁17b(
図1参照)のグラフ31bと、が同時に表示される。グラフ表示部31には、建設機械用方向切換弁のセンタバイパスの開度に対応するグラフ31cが表示される。グラフ31cは、
図1に示す油圧源13から吐出された油がアクチュエータ11を通らずにタンク15に戻る場合の、第1電動弁17aおよび第2電動弁17bのグラフである。
図3に示すように、グラフ31cとして、いわば無負荷の場合のグラフと、有負荷の場合のグラフと、が表示されてもよい。「いわば無負荷の場合」とは、アクチュエータ11(11B)による動作対象(例えばブーム等)の自重のみがアクチュエータ11(11B)にかかっている場合である。有負荷の場合とは、「いわば無負荷の場合」よりも大きい負荷がアクチュエータ11(11B)にかかっている場合である。
【0030】
このグラフ表示部31は、アクチュエータ11(11A、11B、11C)(
図1参照)ごとにグラフを切り換え可能である。グラフ表示部31は、グラフ切換部41の操作に応じて、グラフを切り換える。
【0031】
アクチュエータ名表示部33は、グラフ表示部31が表示しているグラフに対応するアクチュエータ11(
図1参照)の名称を表示する部分である。アクチュエータ名表示部33は、開度を調整中の電動弁17(
図1参照)が制御するアクチュエータ11の名称を表示する。
図3ではアクチュエータ名を省略している。アクチュエータ名表示部33は、モニタ30の外部(グラフ表示部31を有するモニタ30とは別の表示装置)に配置されてもよい。
【0032】
グラフ切換部41は、グラフ表示部31に表示されるグラフを、アクチュエータ11(11A、11B、11D)(
図1参照)ごとに切り換える。
図2に示すように、グラフ切換部41は、物理的ボタン(キー)である。グラフ切換部41は、本体部21の表面に配置され、本体部21の上面に配置される。グラフ切換部41は、モニタ30に表示されるとともにタッチパネル43a(後述)により操作可能なボタンでもよい(図示なし)。
【0033】
開度変更部43(
図1参照)は、レバー操作量に対する電動弁17の開度を変更する。
図1に示す開度変更部43は、電動弁相関関係を変更する。電動弁相関関係は、制御部27に入力される電気的数値(操作量変換器25の出力値)と、電動弁17の開度と、の相関関係(相関関係αとする)である。また、電動弁相関関係には、上記相関関係αから換算可能な相関関係も含まれる。相関関係αから換算可能な相関関係には、例えば、グラフ表示部31に表示された相関関係(レバー操作量に関する値と、電動弁17の開度に関する値と、の相関関係)が含まれる。開度変更部43は、第1電動弁17a及び第2電動弁17bの電動弁相関関係を変更する。
図2に示すように、開度変更部43は、タッチパネル43aを備える。
【0034】
タッチパネル43aは、モニタ30の表面に取り付けられ、グラフ表示部31の表面に取り付けられる。タッチパネル43aのタッチ操作に応じたグラフの変更に基づいて、開度変更部43が電動弁相関関係を変更する。さらに詳しくは、開度変更部43は、次の[開度変更A]〜[開度変更C]のように動作する。[開度変更A]作業者は、グラフ表示部31に表示されたグラフ(線図、カーブ)のうち、電動弁相関関係を変更したい部分をタッチする。[開度変更B]作業者は、上記のタッチをしたまま、タッチ位置を変える(例えば作業者が指をスライドさせる)。すると、移動後のタッチ位置まで、グラフ表示部31に表示されたグラフが動く(カーブが変化する)。[開度変更C]変更後のグラフに基づいて、変更後の電動弁相関関係が決定される。なお、開度変更部43は、キー等(テンキー等)の入力装置により電動弁相関関係を変更してもよい。
【0035】
試作スプール製造機器50(
図4参照)は、電動弁相関関係を元に、試作スプール73(後述)の製造等を行うための機器である。
図4に示すように、試作スプール製造機器50は、データベース51と、演算部53と、入力部55と、スプール情報表示部57と、加工機59と、を備える。試作スプール製造機器50の各構成要素は互いに電気的に接続される。
【0036】
データベース51には、スプールに関する情報が蓄積される。データベース51は、「スプールに関する情報」を複数のスプールそれぞれについて予め蓄積する。上記「スプールに関する情報」は、過去に作られたスプールの情報である。「スプールに関する情報」には、スプール相関関係がある。スプール相関関係とは、レバー操作量と弁の開度との相関関係である。「スプールに関する情報」には、スプールの形状の情報がある。スプールの形状の情報には、ノッチ(切欠き)の形状、スプールの長さ、及び、スプールの径などがある。スプールに関する情報には、スプールを識別するための情報(番号、符号など)などが含まれてもよい。
【0037】
演算部53は、電気信号の入出力および演算などを行う。演算部53は、試作スプール73に関する情報を処理する。演算部53には、制御部27から電動弁相関関係が入力される。演算部53には、データベース51からスプールに関する情報が入力される。演算部53には、入力部55から修正データ(後述)が入力される場合がある。演算部53は、スプール情報表示部57の表示を制御する。演算部53は、加工データ(後述)を加工機59に出力する。
【0038】
この演算部53は、類似スプールを選択する。類似スプールとは、データベース51に情報が蓄積された複数のスプールのうち、制御部27から入力された電動弁相関関係に類似するスプール相関関係を有するスプールである。演算部53による類似スプールの選択は次の[選択A]〜[選択C]のように行われる。[選択A]演算部53は、制御部27から入力された電動弁相関関係と、データベース51に蓄積された複数のスプール相関関係と、を比較する。必要に応じて、演算部53は、各相関関係の比較ができるように、各相関関係が表す内容(レバー操作量と開度との関係や、ストローク量と開口面積との関係など)を換算することで統一する。[選択B]演算部53は、制御部27から入力された電動弁相関関係に類似するスプール相関関係を選択する。[選択C]その結果、演算部53は、上記[選択B]で選択されたスプール相関関係を有するスプール(類似スプール)を選択する。上記[選択A]〜[選択C]により選択される類似スプールの数は、例えば1であり、また例えば2以上でもよい。具体的には例えば、演算部53は、入力された電動弁相関関係に最も類似する、1つのスプール相関関係を選択する結果、1つの類似スプールを選択する。また例えば、演算部53は、入力された電動弁相関関係によく類似しているものから順に複数のスプール相関関係を選択する結果、複数の類似スプールを選択する。
【0039】
この演算部53は、修正データを決定する。修正データとは、類似スプールの形状に対する試作スプール73の形状の相違を示すデータである。修正データの決定は、入力部55での入力による決定と、演算部53での生成による決定とがある(詳細は後述)。
【0040】
入力部55は、修正データを作業者が入力するための部分(装置)である。入力部55は、例えばキー等(テンキー等)である。
【0041】
スプール情報表示部57は、類似スプールに関する情報を表示する。スプール情報表示部57に表示される「類似スプールに関する情報」は、データベース51に蓄積された「スプールに関する情報」(上述)の一部または全部である。例えば、スプール情報表示部57は、類似スプールのスプール形状を表示する。また例えば、スプール情報表示部57は、類似スプールのスプール相関関係を示すグラフ(例えばグラフ表示部31(
図3参照)に表示されるグラフと同様のもの等)を表示する。
【0042】
加工機59は、試作スプール73を加工する。加工機59には、試作スプール73の加工に必要なデータ(「加工データ」)が演算部53から入力される。加工機59は、加工データに基づき、試作スプール73を加工する。上記「加工データ」は、例えば演算部53に決定された修正データである。また例えば「加工データ」は、修正データを元に生成されたデータ等である。「加工データ」は、具体的には3次元のCADデータ(CAD;Computer Aided Design)等である。加工機59は、例えばマシニングセンターであり、また例えば3Dプリンターである。
【0043】
試験用機器70は、
図1に示す試作方向切換弁71(後述)の試験を行うための機器である。試験用機器70は、試作方向切換弁71と、切換装置75と、ストロークセンサ77と、を備える。
【0044】
試作方向切換弁71は、試作の建設機械用方向切換弁である。試作方向切換弁71は、試作スプール73を備える方向切換弁である。試作方向切換弁71は、電動弁17(電動弁17D)と並列的に配置される。試作方向切換弁71は、電動弁17と同様に、アクチュエータ11と油圧源13との間およびアクチュエータ11とタンク15との間に配置される。試作方向切換弁71は、試作方向切換弁71に入力されるパイロット油圧に応じて動作する(パイロット油圧に応じて、試作スプール73がストロークする)。試作方向切換弁71は、上述したレバー23(電動弁17の開度の決定に用いられたレバー23)により操作される。試作方向切換弁71は、レバー23以外のレバーにより操作されてもよい。レバー23及び操作量変換器25が電気式レバーを構成する場合、変換器74(後述)が用いられる。なお、試作方向切換弁71は、電動弁17に代えて配置されてもよい。すなわち、試作方向切換弁71があるとき、電動弁17はなくてもよい。以下では、試作方向切換弁71および電動弁17がある場合について説明する。試作方向切換弁71は、試作スプール73を備える。試作方向切換弁71は、試作スプール73を入れ換え可能に構成される。
【0045】
試作スプール73は、電動弁17を用いて決定された電動弁相関関係に基づいて製造されたものである。試作スプール73は、例えば、試作スプール製造機器50により製造されたものである。試作スプール73は、試作スプール製造機器50とは別の装置で製造されたものでもよい。
【0046】
変換器74は、試作方向切換弁71を操作するためのレバー23及び操作量変換器25が、電気式レバーを構成する場合に設けられる。変換器74は、操作量変換器25が出力した電気信号をパイロット油圧に変換し、このパイロット圧を試作方向切換弁71に出力する。変換器74は、例えば電磁比例弁である。
【0047】
切換装置75は、アクチュエータ11(11D)の制御を行う弁を、電動弁17(17D)と試作方向切換弁71との間で切り換える(どちらか一方を選択する)。切換装置75は、電動弁17Dと試作方向切換弁71とに接続される。切換装置75は、油の通路を切り換える弁である。切換装置75による通路の切り換えは、例えば制御部27により制御される。切換装置75は、第1切換装置75aと、第2切換装置75bと、を備える。第1切換装置75aは、油圧源13から吐出された油を、電動弁17Dおよび試作方向切換弁71のいずれか一方に流す。第2切換装置75bは、電動弁17Dおよび試作方向切換弁71のいずれか一方から、アクチュエータ11Dに油を流す。第2切換装置75bは、アクチュエータ11Dからタンク15に戻る油を、電動弁17Dおよび試作方向切換弁71のいずれか一方に流す。
【0048】
ストロークセンサ77は、試作スプール73の位置を検出することで、試作スプール73のストローク量を検出する。ストロークセンサ77は、位置センサである。ストロークセンサ77は、試作方向切換弁71に取り付けられる。
【0049】
(動作)
主に
図5を参照して、開度決定装置1を用いた開度決定方法S1について説明する(上述した開度決定装置1の各構成要素については、特に断らない限り
図1を参照)。
【0050】
開度決定方法S1は、蓄積工程S11と、電動弁開度決定工程S20と、方向切換弁開度決定工程S30と、方向切換弁製造工程S60と、を有する。
【0051】
蓄積工程S11は、データベース51(
図4参照)にスプールに関する情報を予め蓄積させる工程である。蓄積工程S11は、例えば、建設機械用方向切換弁の製造者により行われる。
【0052】
電動弁開度決定工程S20は、適切な電動弁相関関係(後述)を作業者が決定する工程である。電動弁開度決定工程S20は、アクチュエータ制御回路10(例えば実機)と、開度決定支援装置20と、により行われる。電動弁開度決定工程S20は、例えば、方向切換弁の使用者(例えば建設機械の製造者等)と、方向切換弁の製造者と、により行われる。電動弁開度決定工程S20は、グラフ表示工程S21と、開度変更工程S23と、グラフ切換工程S25と、を有する。
【0053】
グラフ表示工程S21は、上述したグラフ表示部31にグラフを表示させる工程である。
【0054】
開度変更工程S23は、作業者がレバー23を操作して、作業者が操作フィーリングを確かめながら、作業者が開度変更部43で電動弁相関関係を変更する工程である。開度変更工程S23は、次の[調整A]及び[調整B]のように行われる。[調整A]作業者は、レバー23を操作することで、電動弁17を操作し、アクチュエータ11を動作させる。そして、作業者は、操作フィーリングを確認する。操作フィーリングとは、レバー23の操作に対する、アクチュエータ11の動作のフィーリング(作業者により把握される感覚)である。[調整B]作業者は、所望の操作フィーリングが得られるように、開度変更部43を用いて電動弁相関関係を変更する。上記[調整A]及び[調整B]を繰り返すことで、作業者は、適切な電動弁相関関係(作業者が適切であると考える電動弁相関関係)を決定する。
【0055】
この開度変更工程S23では、上記[調整A]の際、次に述べる複合操作確認工程が行われることが好ましい。複合操作確認工程は、作業者が複数のアクチュエータ11を操作(複合操作)しながら、作業者が操作フィーリングを確認する工程である。複合操作確認工程が行われることが好ましい理由は、次の通りである。複数のアクチュエータ11が同時に動作する場合、負荷がより軽いアクチュエータ11に油がより多く流れ、負荷がより軽いアクチュエータ11の動作速度がより速くなる。よって、単一のアクチュエータ11のみ操作(単一操作)される場合と、複数のアクチュエータ11が操作(複合操作)される場合とで、操作フィーリングが異なる。よって、複合操作確認工程が行われることが好ましい。
【0056】
グラフ切換工程S25は、グラフ表示部31に表示されるグラフを、アクチュエータ11ごとに切り換える工程である。グラフ切換工程S25では、作業者は、アクチュエータ名表示部33に表示されたアクチュエータ名を確認しながら、グラフ切換部41を操作することで、グラフ表示部31に表示されるグラフの切り換えを行う。そして、作業者は、切換後のグラフに対応する電動弁17について、開度変更工程S23を行う。
【0057】
方向切換弁開度決定工程S30は、建設機械用方向切換弁の開度(レバー操作量に対する建設機械用方向切換弁の開度)を作業者が決定する工程である。方向切換弁開度決定工程S30では、電動弁開度決定工程S20により決定された電動弁17の電動弁相関関係に基づいて、建設機械用方向切換弁の開度が決定される。方向切換弁開度決定工程S30は、試作方向切換弁製造工程S40と、試験工程S50と、を有する。
【0058】
試作方向切換弁製造工程S40は、試作方向切換弁71を製造する工程である。試作方向切換弁製造工程S40は、試作スプール73を製造する工程である。試作方向切換弁71が試作スプール73を入れ換え可能である場合は、試作方向切換弁製造工程S40では、試作スプール73のみ製造すれば足りる。試作方向切換弁製造工程S40では、電動弁開度決定工程S20で決定された電動弁相関関係に基づいて、試作方向切換弁71が製造される。試作方向切換弁製造工程S40では、電動弁開度決定工程S20で決定された電動弁相関関係を満たす(又はほぼ満たす)ような、試作方向切換弁71が製造される。試作方向切換弁製造工程S40は、例えば建設機械用方向切換弁の製造者により行われる。試作方向切換弁製造工程S40は、類似スプール選択工程S41と、スプール情報表示工程S43と、修正データ決定工程S45と、加工工程S47と、を有する。
【0059】
類似スプール選択工程S41は、上述したように演算部53(
図4参照)により類似スプールが選択される工程である。
【0060】
スプール情報表示工程S43は、上述したように類似スプールに関する情報をスプール情報表示部57(
図4参照)に表示させる工程である。
【0061】
修正データ決定工程S45は、類似スプールの形状に対する試作スプール73の形状の修正データ(上述)を演算部53(
図4参照)が決定する工程である。修正データ決定工程S45には、修正データ入力工程S45aと、修正データ生成工程S45bと、がある。修正データ決定工程S45では、修正データ入力工程S45a及び修正データ生成工程S45bのうち少なくとも一方が行われる。
【0062】
修正データ入力工程S45aは、作業者が、入力部55(
図4参照)により修正データを入力(手入力)する工程である。修正データ入力工程S45aは、次のように行われる。作業者は、電動弁開度決定工程S20で決定された電動弁相関関係のグラフと、演算部53に選択された類似スプールのスプール相関関係のグラフと、を比較する。作業者は、この比較により、開度が異なる部分を把握する。作業者は、修正後のスプールのスプール相関関係が、電動弁相関関係と一致する(又はほぼ一致する)ように、類似スプールの形状を修正する。作業者は、この修正を行うためのデータ(修正データ)を、入力部55(
図4参照)により入力する。
【0063】
修正データ生成工程S45bは、演算部53(
図4参照)が修正データを生成する工程である。この生成は、制御部27から演算部53に入力された電動弁相関関係と、演算部53に選択された類似スプールのスプール相関関係と、に基づいて行われる。修正後のスプールのスプール相関関係が、電動弁相関関係と一致する(又はほぼ一致する)ように、演算部53は修正データを生成する。修正データ生成工程S45bが行われる場合は、修正データ入力工程S45a(作業者による修正データの手入力)は不要である。なお、修正データ生成工程S45bで演算部53に生成された修正データが、さらに修正データ入力工程S45aで修正されてもよい。
【0064】
加工工程S47は、加工機59(
図4参照)が試作スプール73を加工(製造)する工程である。加工工程S47は、例えば、電動弁開度決定工程S20が行われたのと同じ場所で(開度を決定した、その場で)行われる(他の場所で行われてもよい)。
【0065】
試験工程S50は、試作方向切換弁71の動作試験(性能の確認)を行う工程である。試験工程S50は、試験用機器70により行われる。試験工程S50には、ベンチテストS51と、実機テストS53と、がある。
【0066】
ベンチテストS51は、例えば建設機械用方向切換弁の製造者により行われる。ベンチテストS51では、試作方向切換弁71の動作試験が、様々な観点から行われる。この動作試験には、例えば、ストローク量試験と、操作フィーリング試験と、がある(これら以外の動作試験が行われてもよい)。
【0067】
ストローク量試験は、レバー23のレバー操作量に対する、試作スプール73のストローク量が適切であるかを確認する試験である。この試験は、具体的には例えば次の[手順A]〜[手順F]のように行われる。[手順A]レバー23をあるレバー操作量にする。操作量変換器25が、このレバー操作量を電気的数値に変換する。この電気的数値が、試作スプール73のストローク量に換算される。この換算は、例えば制御部27により行われる。[手順B]上記の[手順A]と同時に、ストロークセンサ77が、試作スプール73のストローク量を検出する。[手順C]上記[手順A]で換算されたストローク量(換算値)と、上記[手順B]で検出されたストローク量(検出値)と、が比較される。この比較は例えば制御部27により行われる。[手順D]上記[手順C]で、換算値と検出値とがずれている場合は、試作スプール73の形状が修正される。換算値と検出値とのずれの原因は、フローフォース(作動油が試作スプール73に当たって発生する力)や、試作スプール73の摺動抵抗などである。換算値と検出値とのずれがある場合、レバー操作量が同じでも、電動弁17と試作方向切換弁71とで開度が相違する。そのため、電動弁17で得られた適切な操作フィーリングが、試作方向切換弁71で得られない。そこで、換算値と検出値とのずれをなくす(又は減らす)ように、試作スプール73の形状(例えばノッチ形状)が修正される。[手順E]上記[手順D]での試作スプール73の形状の修正は、電動弁17の電動弁相関関係や、試作スプール73のスプール相関関係を、作業者が確認(参照)しながら行われる。[手順F]ベンチテストS51を行った試作スプール73に対する、修正後の試作スプール73の形状の修正データが決定される。この修正データは、例えば入力部55(
図4参照)により入力される。そして、加工工程S47と同様に、修正後の試作スプール73が作られ、修正後の試作スプール73についてベンチテストS51が行われる。
【0068】
操作フィーリング試験は、電動弁17で得られた(作業者が所望する)操作フィーリングが、試作方向切換弁71で得られるかを確認する試験である。操作フィーリング試験は、次の[手順a]〜「手順c]のように行われる。[手順a]電動弁17を動作させたときの操作フィーリングと、試作方向切換弁71を動作させたときの操作フィーリングと、が作業者により比較される。このとき、切換装置75により、アクチュエータ11の制御を行う弁が、電動弁17と試作方向切換弁71との間で切り換えられる(弁切換工程)。[手順b]上記[手順a]の際、例えば、試作スプール73のストローク量、試作スプール73のスプール相関関係、及び電動弁17の電動弁相関関係が参照(確認される)。この[手順b]で参照される試作スプール73のストローク量は、換算値(上記[手順A]参照)または検出値(上記[手順B]参照)である。この[手順b]で参照される試作スプール73のストローク量は、換算値よりも正確な検出値であることが好ましい。[手順c]上記[手順a]での操作フィーリングの比較の結果、試作方向切換弁71での操作フィーリングが電動弁17での操作フィーリングと異なる場合がある。この場合、これらの操作フィーリングが等しくなるように、試作スプール73の形状が修正される(上記[手順F]参照)。
【0069】
実機テストS53は、実機で行われる試験である。実機テストS53では、ベンチテストS51で行われる動作試験の一部または全部が行われる。実機テストS53は、例えば建設機械用方向切換弁の使用者により行われる。開度決定方法S1では、電動弁開度決定工程S20を開始してから、方向切換弁開度決定工程S30を完了するまでに要する時間を、例えば数時間、また例えば1日等とすることができる(2日以上かかってもよい)。
【0070】
方向切換弁製造工程S60は、方向切換弁開度決定工程S30で決定された開度に基づいて、実機に搭載される建設機械用方向切換弁を製造(量産)する工程である。方向切換弁製造工程S60は、開度決定装置1によって決定された開度に基づいて、建設機械用方向切換弁を製造する工程である。
【0071】
(効果1)
図1に示す開度決定装置1による効果を説明する。開度決定装置1は、建設機械用方向切換弁の開度を決定するための装置である。開度決定装置1は、操作量変換器25と、制御部27と、電動弁17と、開度変更部43と、を備える。操作量変換器25は、作業者に操作されるレバー23のレバー操作量を電気的数値に変換する。制御部27には、操作量変換器25から電気的数値が入力される。電動弁17は、制御部27に制御され、アクチュエータ11と油圧源13との間およびアクチュエータ11とタンク15との間に配置される。開度変更部43は、制御部27に入力される電気的数値と電動弁17の開度との相関関係である電動弁相関関係を変更する。
[構成1−1]開度決定装置1は、作業者がレバー23を操作して操作フィーリングを確かめながら、作業者が開度変更部43で電動弁相関関係を変更することで、適切な電動弁相関関係を作業者が決定することを支援する装置である。
[構成1−2]開度決定装置1は、上記[構成1−1]により決定された電動弁相関関係に基づいて建設機械用方向切換弁の開度を作業者が決定することを、支援する装置である。
【0072】
上記[構成1−1]のように、作業者が開度変更部43により電動弁相関関係を変更することで、適切な電動弁相関関係が決定される。適切な電動弁相関関係の決定を行う際、スプールを作る(試作する)必要が無い。よって、適切な電動弁相関関係の決定を行う際には、次の[作業A]〜[作業C]が不要である。[作業A]スプールを設計し、作る作業。[作業B]作ったスプールを方向切換弁に取り付ける(又は入れ換える)作業。[作業C]作業者がレバー操作を行うことで、上記[作業B]で作ったスプールでの操作フィーリングが適切かどうか、作業者が確認する作業。さらに、上記[作業C]で適切な操作フィーリングが得られないと作業者が判断した場合の[作業A]〜[作業C]を繰り返す作業が不要である。よって、上記[作業A]〜[作業C]に要する時間および手間を省略できる。また、上記[構成1−2]では、上記[構成1−1]により決定された電動弁相関関係に基づいて、建設機械用方向切換弁の開度が決定される。よって、建設機械用方向切換弁の開度を決定するのに要する時間および手間を抑制できる。
【0073】
(効果2)
開度決定装置1は、
図3に示すグラフ表示部31を備える。
[構成2]グラフ表示部31は、レバー操作量に関する値と電動弁17(
図1参照)の開度に関する値との関係(電動弁相関関係)を示すグラフを表示する。
【0074】
上記[構成2]のグラフ表示部31により、作業者は、電動弁相関関係の調整を視覚的に容易に行える。
【0075】
(効果3)
図1に示すように、アクチュエータ11は、複数設けられる。
[構成3]グラフ表示部31は、アクチュエータ11ごとにグラフを切り換えて表示可能である。
【0076】
上記[構成3]により、アクチュエータ11が複数ある場合でも、アクチュエータ11に接続された電動弁17の電動弁相関関係を、作業者は容易に調整(変更および決定)できる。
【0077】
(効果4)
開度決定装置1は、
図3に示すアクチュエータ名表示部33を備える。
[構成4]アクチュエータ名表示部33は、グラフ表示部31が表示しているグラフに対応するアクチュエータ11(
図1参照)の名称を表示する。
【0078】
上記[構成4]により、電動弁相関関係を調整中の電動弁17(
図1参照)が、どのアクチュエータ11(
図1参照)に接続されたものであるかを、作業者は容易に把握できる。
【0079】
(効果5)
[構成5]開度変更部43は、グラフ表示部31の表面に取り付けられたタッチパネル43aを備える。開度変更部43は、タッチパネル43aのタッチ操作に応じたグラフの変更に基づいて電動弁相関関係を変更する。
【0080】
上記[構成5]により、作業者は、電動弁相関関係を直感的に容易に調整できる。
【0081】
(効果6,効果22)
[構成6]
図1に示す操作量変換器25は、レバー23の位置を検出する位置センサ、又は、レバー23の角度を検出する角度センサである。
【0082】
操作量変換器25が圧力センサの場合([場合α]とする)に比べ、上記[構成6]では、操作量変換器25が小さく、軽く、安価であり、また、操作量変換器25及びレバー23の構成(電気式レバー)が簡易である。上記[場合α]の具体例は、レバー23が油圧式レバー(後述する変形例参照)の場合である。この場合、操作量変換器25は、パイロット油圧を電気的数値に変換する圧力センサである必要がある。通常、圧力センサは、位置センサや角度センサに比べ、大きく、重く、高価である。また、レバー23が油圧式レバーの場合、油圧式レバーと操作量変換器25とを、パイロット油路(ホース等の配管)でつなぐ必要がある。この、パイロット油路は、電線に比べ、高価であり、配置スペースが大きく、配置自由度が低い。
なお、(効果7)は後述する。
【0083】
(効果8)
開度決定装置1は、
図4に示すように、演算部53と、データベース51と、を備える。演算部53には、制御部27から電動弁相関関係が入力される。データベース51は、演算部53に接続される。データベース51には、複数のスプールに関する情報が蓄積される。データベース51は、レバー操作量と弁の開度との相関関係であるスプール相関関係を、複数のスプールそれぞれについて予め蓄積する。
[構成8]演算部53は、類似スプールを選択する。類似スプールは、データベース51に情報が蓄積された複数のスプールのうち、制御部27から入力された電動弁相関関係に類似するスプール相関関係を有するスプールである。
【0084】
上記[構成8]での類似スプールの選択結果を、例えば試作スプール73の加工、また例えば類似スプールの表示等に利用できる。
【0085】
(効果9)
開度決定装置1(
図1参照)は、スプール情報表示部57を備える。
[構成9]スプール情報表示部57は、演算部53に選択された類似スプールに関する情報を表示する。
【0086】
上記[構成9]により、作業者は、類似スプールに関する情報を容易に入手できる。その結果、作業者は、類似スプールの情報に基づいた作業(例えば類似スプールを元にした試作スプールの製造など)を行うことができる。
【0087】
(効果10)
[構成10]開度決定装置1(
図1参照)は、演算部53に接続される加工機59を備える。演算部53は、類似スプールの形状に対する試作スプール73の形状の修正データを決定する。加工機59は、修正データに基づき試作スプール73を加工する。
【0088】
上記[構成10]により、
図1に示す開度決定装置1では、電動弁17の電動弁相関関係の決定だけでなく、試作スプール73の加工も行える。よって、適切な電動弁相関関係を決定した時から、試作スプール73を用いた作業を開始するまで(例えば、
図5の電動弁開度決定工程S20完了時から、試験工程S50の開始まで)に要する時間を抑制できる(開度決定装置1とは別の装置で試作スプール73を加工する場合に比べた場合)。
【0089】
(効果11)
[構成11]
図4に示すように、開度決定装置1(
図1参照)は、修正データを作業者が入力するための入力部55を備える。
【0090】
上記[構成11]の入力部55により、試作スプール73の形状を、作業者の所望の形状に修正できる。
【0091】
(効果12)
[構成12]演算部53は、制御部27から入力された電動弁相関関係と類似スプールのスプール相関関係(データベース51に蓄積されたスプール相関関係)とに基づいて、修正データを生成する。
【0092】
上記[構成12]により、作業者による入力のみによって修正データが決定される場合に比べ、作業者の手間を抑制できる。
【0093】
(効果13)
図1に示すように、開度決定装置1は、試作方向切換弁71を備える。
[構成13]試作方向切換弁71は、電動弁17に代えて配置される、又は、電動弁17と並列的に配置される。試作方向切換弁71は、試作スプール73を入れ換え可能に構成される。
【0094】
上記[構成13]により、試作スプール73の動作試験(試作方向切換弁71の動作試験)を行うことができる。
【0095】
(効果14)
試作方向切換弁71は、電動弁17(17D)と並列的に配置される。開度決定装置1は、切換装置75を備える。切換装置75は、試作方向切換弁71及び電動弁17Dに接続される。
[構成14]切換装置75は、アクチュエータ11Dの制御を行う弁を、電動弁17Dと試作方向切換弁71との間で切り換える。
【0096】
上記[構成14]の切換装置75により、電動弁17Dを用いた場合と試作方向切換弁71を用いた場合との操作フィーリングの比較を、作業者は容易に行える。
【0097】
(効果15)
開度決定装置1は、ストロークセンサ77を備える。
[構成15]ストロークセンサ77は、試作スプール73の位置を検出することで試作スプール73のストローク量を検出する。
【0098】
上記[構成15]では、試作スプール73のストローク量が検出されるので、試作方向切換弁71のストローク量が適切か否かの動作試験(例えば上述したストローク量試験など)を行える。
また、上記[構成15]では、試作スプール73のストローク量を検出するために、試作スプール73の位置が検出される。よって、試作スプール73のストローク量を検出するために、ストローク量に換算可能な量(レバー23のレバー操作量など)が検出される場合よりも、試作スプール73のストローク量を正確に検出できる。
また、上記[構成15]では、ストロークセンサ77は、位置センサである。よって、次の[場合β]に比べ、試作スプール73のストローク量を検出するための構成を、小さく、軽く、安価にできる。[場合β]試作スプール73のストローク量を検出するために、ストローク量に換算可能なパイロット油圧が検出され、このパイロット油圧の検出のために、圧力センサが用いられる場合。なお、圧力センサと位置センサとの対比については、上述した「(効果6)」を参照。
【0099】
(効果16)
開度決定装置1によって決定された開度で製造された、建設機械用方向切換弁による効果を説明する。上述したように、上記[構成1−1]により、適切な電動弁相関関係を決定するのに要する時間および手間を省略できる。その結果、作業者は、電動弁17で適切な操作フィーリングが得られるまで、妥協せずに(細かく、納得がいくまで)電動弁相関関係の調整を行いやすい。その結果、建設機械用方向切換弁の開度が、作業者にとってより適切な(より納得できる、より満足できる)ものになりやすい。
【0100】
(効果17)
図5に示す建設機械用方向切換弁の開度決定方法S1による効果を説明する(上述した開度決定装置1の各構成要素については、特に断らない限り
図1を参照)。開度決定方法S1は、開度決定装置1を用いた開度決定方法である。開度決定装置1は、操作量変換器25と、制御部27と、電動弁17と、開度変更部43と、を備える。操作量変換器25は、作業者に操作されるレバー23のレバー操作量を電気的数値に変換する。制御部27には、操作量変換器25から電気的数値が入力される。電動弁17は、制御部27に制御され、アクチュエータ11と油圧源13との間およびアクチュエータ11とタンク15との間に配置される。開度変更部43は、制御部27に入力される電気的数値と電動弁17の開度との相関関係である電動弁相関関係を変更する。開度決定方法S1は、電動弁開度決定工程S20と、方向切換弁開度決定工程S30と、を有する。電動弁開度決定工程S20は、適切な電動弁相関関係を作業者が決定する工程である。方向切換弁開度決定工程S30は、電動弁開度決定工程S20により決定された電動弁相関関係に基づいて、建設機械用方向切換弁の開度を作業者が決定する工程である。電動弁開度決定工程S20は、開度変更工程S23を有する。開度変更工程S23は、作業者がレバー23を操作して操作フィーリングを確かめながら、作業者が開度変更部43で電動弁相関関係を変更する工程である。
この開度決定方法S1により、上記(効果1)と同様の効果が得られる。
【0101】
(効果18)
開度決定方法S1は、グラフ表示工程S21を有する。グラフ表示工程S21は、レバー操作量に関する値と電動弁17の開度に関する値との関係を示すグラフをグラフ表示部31に表示する工程である。
このグラフ表示工程S21により、上記(効果2)と同様の効果が得られる。
【0102】
(効果19)
アクチュエータ11は、複数設けられる。開度決定方法S1は、グラフ切換工程S25を有する。グラフ切換工程S25は、グラフ表示部31に表示されるグラフをアクチュエータ11ごとに切り換える工程である。
このグラフ切換工程S25により、上記(効果3)と同様の効果が得られる。
【0103】
(効果20)
開度決定方法S1は、グラフ表示部31が表示しているグラフに対応するアクチュエータ11の名称を、アクチュエータ名表示部33に表示するアクチュエータ名表示工程を有する。
このアクチュエータ名表示工程により、上記(効果4)と同様の効果が得られる。
【0104】
(効果21)
図2に示すように、開度変更部43は、グラフ表示部31の表面に取り付けられたタッチパネル43aを備える。
図5に示す開度変更工程S23では、タッチパネル43aのタッチ操作に応じたグラフの変更に基づいて電動弁相関関係が変更される。
この開度変更工程S23により、上記(効果5)と同様の効果が得られる。
なお、(効果22)は上述した。また、(効果23)は後述する。
【0105】
(効果24)
図4に示すように、開度決定装置1(
図1参照)は、演算部53と、データベース51と、を備える。演算部53には、制御部27から電動弁相関関係が入力される。データベース51は、演算部53に接続される。データベース51には、複数のスプールに関する情報が蓄積される。
図5に示すように、開度決定方法S1は、蓄積工程S11と、類似スプール選択工程S41と、を有する。蓄積工程S11は、レバー操作量と弁の開度との相関関係であるスプール相関関係を、複数のスプールそれぞれについてデータベース51(
図4参照)に予め蓄積させる工程である。類似スプール選択工程S41は、演算部53(
図4参照)により類似スプールが選択される工程である。類似スプールは、データベース51に情報が蓄積された複数のスプールのうち、制御部27(
図4参照)から入力された電動弁相関関係に類似するスプール相関関係を有するスプールである。
この類似スプール選択工程S41により、上記(効果8)と同様の効果が得られる。
【0106】
(効果25)
開度決定方法S1は、スプール情報表示工程S43を有する。スプール情報表示工程S43は、演算部53(
図4参照)により選択された類似スプールに関する情報をスプール情報表示部57(
図4参照)に表示させる工程である。
このスプール情報表示工程S43により、上記(効果9)と同様の効果が得られる。
【0107】
(効果26)
図4に示すように、開度決定装置1(
図1参照)は、加工機59を備える。加工機59は、演算部53に接続されるとともに試作スプール73を加工する。
図5に示すように、開度決定方法S1は、修正データ決定工程S45と、加工工程S47と、を有する。修正データ決定工程S45は、類似スプールの形状に対する試作スプール73(
図4参照)の形状の修正データを、演算部53(
図4参照)が決定する工程である。加工工程S47は、修正データ(演算部53が決定した修正データ)に基づき試作スプール73を加工機59が加工する工程である。
これらの修正データ決定工程S45及び加工工程S47により、上記(効果10)と同様の効果が得られる。
【0108】
(効果27)
開度決定方法S1は、修正データ入力工程S45aを有する。修正データ入力工程S45aは、作業者が入力部55(
図4参照)により修正データを入力する工程である。
この修正データ入力工程S45aにより、上記(効果11)と同様の効果が得られる。
【0109】
(効果28)
開度決定方法S1は、修正データ生成工程S45bを有する。修正データ生成工程S45bは、制御部27(
図4参照)から演算部53(
図4参照)に入力された電動弁相関関係と類似スプールのスプール相関関係とに基づいて、演算部53が修正データを生成する工程である。
この修正データ生成工程S45bにより、上記(効果12)と同様の効果が得られる。
【0110】
(効果29)
図1に示す開度決定装置1は、試作方向切換弁71を備える。試作方向切換弁71は、電動弁17に代えて配置される、又は、電動弁17と並列的に配置される。試作方向切換弁71は、試作スプール73を入れ換え可能に構成される。
図5に示すように、開度決定方法S1は、試験工程S50を有する。試験工程S50は、試作方向切換弁71(
図1参照)の動作試験を行う工程である。
この試験工程S50により、上記(効果13)と同様の効果が得られる。
【0111】
(効果30)
試作方向切換弁71は、電動弁17と並列的に配置される。開度決定装置1は、切換装置75を備える。切換装置75は、試作方向切換弁71及び電動弁17に接続される。
図5に示す開度決定方法S1は、弁切換工程を有する。弁切換工程は、アクチュエータ11の制御を行う弁を、切換装置75により、電動弁17と試作方向切換弁71との間で切り換える工程である。
この切換装置75での弁切換工程により、上記(効果14)と同様の効果が得られる。
【0112】
(効果31)
開度決定方法S1は、ストローク量検出工程を有する。ストローク量検出工程は、試作スプール73の位置をストロークセンサ77で検出することで、試作スプール73のストローク量を検出する工程である。
このストロークセンサ77によるストローク量検出工程により、上記(効果15)と同様の効果が得られる。
【0113】
(変形例)
図6を参照して、変形例の開度決定装置101について、上記実施形態の開度決定装置1(
図1参照)との相違点を説明する。なお、開度決定装置101のうち、
図1に示す開度決定装置1との共通点には同一の符号を付した。上記実施形態の開度決定装置1では、レバー23と操作量変換器25とで、電気式レバーが構成された。一方、
図6に示す変形例の開度決定装置101は、この電気式レバーに代えて、油圧式のレバー123および操作量変換器125を備える。なお、開度決定装置101は、変換器74(
図1参照)を備えない。
【0114】
レバー123は、レバー操作量に応じたパイロット油圧を出力する油圧式レバーである。レバー123は、例えば実機に搭載されたレバーである。
【0115】
操作量変換器125は、レバー123が出力したパイロット油圧を電気信号に変換する圧力センサである。操作量変換器125は、位置センサ又は角度センサである操作量変換器25(
図1参照)や位置センサであるストロークセンサ77(
図1参照)に比べ、質量が大きく(例えば30kg等)、寸法が大きく、高価である。
【0116】
(効果7、効果23)
図6に示す開度決定装置101による効果、および、開度決定装置101を用いた開度決定方法S1(
図5参照)による効果を説明する。
[構成7]レバー123は、レバー操作量に応じたパイロット油圧を出力する油圧式レバーである。操作量変換器125は、レバー123が出力したパイロット油圧を電気的数値に変換する圧力センサである。
【0117】
上記[構成7]では、電動弁17の開度を決定するためのレバー123として、実機の油圧式レバーを用いやすい。なお、実機では、電気式レバーに比べ、油圧式レバーの方が多く用いられている。
【0118】
(その他の変形例)
上記実施形態および変形例は、さらに様々に変形できる。例えば、各図に示す構成は、各図に示す通りとされてもよく、また適宜変更されてもよい。具体的には例えば、
図5に示す各工程の順序は、適宜変更されてもよい。例えば、
図5では、電動弁開度決定工程S20および方向切換弁開度決定工程S30がそれぞれ1回ずつ行われるが、これらの工程が2回以上行われてもよい。例えば、実機テストS53の結果、操作フィーリングが適切でないと作業者が判断した場合、電動弁開度決定工程S20がやり直されてもよい。