特許第6209440号(P6209440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209440
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】エアクリーナ
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/08 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   F02M35/08 F
   F02M35/08 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-264777(P2013-264777)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-121128(P2015-121128A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】株式会社マーレ フィルターシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】福島 多聞
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−227425(JP,A)
【文献】 特開2008−190515(JP,A)
【文献】 実開昭60−069357(JP,U)
【文献】 実開平04−071760(JP,U)
【文献】 実開昭62−066719(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した箱状のケース本体と、
前記ケース本体の上面開口に着脱可能に取り付けられたフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントを覆うように前記ケース本体に取り付けられたカバーと、
を備え、
前記ケース本体の底面と前記フィルタエレメントとの間にダストサイド室が画定され、前記カバーと前記フィルタエレメントとの間にクリーンサイド室が画定されており、
前記ケース本体の側壁に吸気取入口が開口し、前記カバーに吸気出口が開口しており、
前記ケース本体の底面には、頂角部が前記吸気取入口に対向するようにV字形のガイド壁が立設されているとともに、このガイド壁の内側領域内にダスト回収穴が開口形成されており、
前記ケース本体の底部には、ダスト回収室を形成するように、前記ダスト回収穴を覆ってアンダーカバーが取り付けられていることを特徴とするエアクリーナ。
【請求項2】
前記ダスト回収穴よりも開口面積が小さく、かつ前記ダストサイド室と前記ダスト回収室とを連通する連通口が前記ケース本体の底面に開口形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項3】
前記アンダーカバーの底面にバキュエータバルブが取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のエアクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンに用いられるエアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用エンジンに用いられるエアクリーナとして、特許文献1に記載されているように、矩形のフィルタエレメントをケース本体とカバーとの間に配置した構成のものが知られている。特許文献1のエアクリーナでは、フィルタエレメントの長手方向の一端側においてケース本体に吸気取入口が設けられており、他端側においてカバーに吸気出口が設けられている。また、ケース本体の底部にはダストを排出するための排塵弁が取り付けられている。このように構成されたエアクリーナにおいては、吸気取入口から吸気出口へとフィルタエレメントを横切って吸気が流れ、吸気中のダストがフィルタエレメントに捕集される。また、ダストの一部はエンジン運転中に排塵弁を介してフィルタエレメント外へと排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−330826
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
矩形のフィルタエレメントを用いたエアクリーナにおいては、一般に、特許文献1に開示されているように、フィルタエレメントの長手方向に沿って互いに離れた位置に吸気取入口と吸気出口とが配置され、フィルタエレメントの長手方向に沿って吸気が案内される形となるが、このような場合、吸気は吸気取入口から吸気出口へと比較的直線的に流れるので、ダストの捕集が主にフィルタエレメントの下流側領域(吸気出口に近い領域)で行われる傾向にある。つまり、実際にダストを捕集するフィルタエレメントの領域が限られていた。そのため、フィルタエレメントの下流側部分がすぐに目詰まりしてフィルタエレメント全体のダスト捕集性能が低下することとなり、比較的早期にフィルタエレメントを清掃又は交換しなければならなかった。
【0005】
また、特許文献1は、ダストを排出するための排塵弁をケース底部に備えているが、ケース底部に堆積したダストが吸気の流れに乗って再び舞い上がり、フィルタエレメントに付着しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエアクリーナは、上面が開口したケース本体と、ケース本体の上面開口に着脱可能に取り付けられたフィルタエレメントと、フィルタエレメントを覆うように取り付けられたカバーと、を備えている。ケース本体の底面とフィルタエレメントとの間にはダストサイド室が画定され、カバーとフィルタエレメントとの間にはクリーンサイド室が画定されている。ケース本体の側壁には吸気取入口が開口しており、カバーには吸気出口が開口している。ケース本体の底面には、頂角部が吸気取入口に対向するようにガイド壁が立設されており、このガイド壁の内側領域内においてケース本体の底面にダスト回収穴が開口形成されている。ケース本体の底部には、ダスト回収室を形成するように、ダスト回収穴を覆ってアンダーカバーが取り付けられている。
【0007】
このように、吸気取入口に対向するようにV字形のガイド壁を設けたことにより、流入空気は、ガイド壁に衝突し、ガイド壁に沿って左右に分流しつつ上昇するので、フィルタエレメントの上流領域にも流れが案内され、広い範囲で捕集が行われる。ここで、一部のダストは、V字形ガイド壁の内側領域に集まり、ダスト回収穴を通ってダスト回収室に落下する。
【0008】
一つの好ましい態様では、ダスト回収穴よりも開口面積が小さく、かつダストサイド室とダスト回収室とを連通する連通口がケース本体の底面に開口形成されている。
【0009】
このような構成では、ダスト回収室がダスト回収穴と連通口との2箇所でダストサイド室と連通するので、両者間で効果的に空気の流動が得られる。したがって、ダスト回収穴を介したダストの落下が促進される。
【0010】
また、他の好ましい態様では、アンダーカバーの底面にバキュエータバルブが取り付けられている。
【0011】
このような構成では、フィルタエレメントによって捕集されずにダスト回収室内に回収されたダストがバキュエータバルブを介してエアクリーナの外部に排出される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルタエレメントのダスト捕集可能な領域を拡大することができるとともに、一部のダストがフィルタエレメントに付着せずに回収されるので、より長期間の間、良好なダスト捕集能力を維持することができ、フィルタエレメントの使用寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るエアクリーナの断面図。
図2図1のエアクリーナの分解斜視図。
図3図1のエアクリーナのケース本体の平面図。
図4】本発明のエアクリーナにおける透過損失(TL)を比較例のものと対比した音響性能特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図3に基づいて、本発明に係るエアクリーナ1の一実施例について詳細に説明する。エアクリーナ1は、箱状をなす合成樹脂製のケース本体2と、濾紙等の濾材を複数回折り返して矩形のフレームと一体化して構成したフィルタエレメント4と、合成樹脂製のカバー6と、を備える。ケース本体2は、矩形でかつ平坦な底面8を有し、上面が開口している。この開口部分内において、底面8と実質的に平行をなすようにフィルタエレメント4が着脱可能に取り付けられている。カバー6は、下面が開口しており、フィルタエレメント4を覆うようにケース本体2に対して取り付けられている。フィルタエレメント4は、エアクリーナ1の内部をケース本体2側のダストサイド室10と、カバー6側のクリーンサイド室12と、に仕切っている。ケース本体2における長手方向の一端となる側壁14aには吸気取入口20を有する入口管22が取り付けられており、入口管22は、ケース本体2の長手方向の中心線L(図3)に沿って延びている。入口管22の一端は、図示しない外気導入ダクトに接続されている。一方、カバー6の側面となる一側壁には吸気出口24を有する出口管26が取り付けられており、出口管26は、長手方向の中心線Lに直交する幅方向に沿って延びている。出口管26の一端は、図示しない内燃機関の吸気マニホールドに接続されている。したがって、吸気は、基本的に、図1左側の吸気取入口20から図1右側の吸気出口24に向かってエアクリーナ1の長手方向(中心線Lに沿った方向)に沿って流れることとなり、エアクリーナ1の長手方向については、図1図3の左側が「上流側」、右側が「下流側」となる。
【0015】
ケース本体2の底面8には、V字状のガイド壁30が立設されている。ガイド壁30は、フィルタエレメント4の長手方向の略中央に位置し、頂角部31が吸気取入口20に対向するように配置されている。図3に示すように、ガイド壁30は、矩形をなす一対の板状壁部32からなり、これらの板状壁部32が頂角部31において所定の角度(例えば、約60°)をなして互いに突き合わされている。ガイド壁30の頂点は長手方向の中心線L上に位置している。図3に示すように、各板状壁部32は、頂角部31からケース本体2の側壁14b近傍までそれぞれ延びており、下流側端部34と側壁14bとの間には流路36がそれぞれ形成されている。また、図1に示すように、フィルタエレメント4と平行をなすガイド壁30の上端38は、吸気取入口20よりも上方に位置するとともに、フィルタエレメント4から所定の間隔を隔てて離間しており、ガイド壁30の上端38とフィルタエレメント4の底面との間にクリアランスが形成されている。ガイド壁30は、ケース本体2と一体に成形してもよく、あるいは別体に成形したものをケース本体2の底面8に取り付けるようにしてもよい。
【0016】
図3に示すように、ガイド壁30のV字の内側領域において、ケース本体2の底面8に円形のダスト回収穴40が開口形成されている。ダスト回収穴40は、ガイド壁30の頂角部31に近接して配置され、中心が長手方向の中心線L上に位置している。さらに、ケース本体2の底面8には、ダスト回収穴40から離間した下流側の位置において、ダスト回収穴40よりも開口面積の小さい円形の連通口42が開口形成されている。連通口42は、例えば、ケース本体2における長手方向の他端となる側壁14cの近傍に配置されている。連通口42は、エンジンの運転中にダスト回収穴40の開口位置よりも圧力が低くなる位置を選択して配置することが望ましく、また、中心が長手方向の中心線L上に位置することが望ましい。
【0017】
ケース本体2の底部には、ケース本体2とは別体として形成された合成樹脂製のアンダーカバー50が溶着されている。上面が開口した箱状をなすアンダーカバー50は、矩形でかつ平坦な底面51を有し、この底面51とケース本体2の底面8との間にダスト回収室52が画定されている。底面51には円形のダスト排出穴54が開口形成されている。ダスト排出穴54は、ダスト回収穴40と連通口42との間に配置されている(図1参照)。また、ダスト排出穴54の中心は、長手方向の中心線L上に位置している。ダスト回収室52は、ダスト回収穴40及び連通口42によってダストサイド室10と連通しており、ダスト排出穴54によってエアクリーナ1の外部と連通している。
【0018】
ダスト排出穴54にはダスト排出管56が接続されており、ダスト排出管56の端部には、ゴム等の弾性を有する材料からなるバキュエータバルブ58が取り付けられている。バキュエータバルブ58はリップ状の開口部を有し、この開口部は、例えば、エンジン低速域での圧力脈動に応じて間欠的に開くようになっている。
【0019】
次に、本実施形態のエアクリーナ1の作用について図1図3を参照して説明する。エンジンの運転時において、空気は、図示しない外気導入ダクトから入口管22及び吸気取入口20を通ってダストサイド室10に流入する。流入した空気は、ガイド壁30に衝突して分流となり、板状壁部32に案内されて上昇してフィルタエレメント4を通過する。空気中のダストは、フィルタエレメント4に捕集され、ダストが除去された空気は、クリーンサイド室12に流入し、吸気出口24を通ってエアクリーナ1から流出する。
【0020】
このように上記実施例によれば、ケース本体2の底面8にガイド壁30を設けたことにより、ガイド壁30に衝突した空気が、より上流側で上昇し始め、フィルタエレメント4のより上流の領域においてもダストが捕集されるようになるので、フィルタエレメントを大型化することなく、フィルタエレメントのダスト捕集可能な領域を効果的に拡大することができる。
【0021】
一方、フィルタエレメント4に捕集されずに、ダストサイド室10内でケース本体底面8付近に滞留しているダストは、流路36を通ってガイド壁30の内側領域へと回り込む空気流により、ガイド壁30の内側領域へと導かれ、ダスト回収穴40を通ってダスト回収室52に落下する。したがって、ダスト回収室52に落下したダストは、再度フィルタエレメント4に付着することがない。
【0022】
特に、ダスト回収穴40の開口位置よりも連通口42の開口位置の方が低圧となるエンジン運転条件では、ダスト回収穴40と連通口42とを介して空気が効果的に循環するので、この空気流によりダスト回収穴40を通るダストの落下が促進されるとともに、ダストが下流へと運ばれてダスト排出管56内に集まる。その後、ダストは、例えば、低速域での運転時にバキュエータバルブ58の先端が開口することによって、この開口を通ってエアクリーナ1外に排出される。
【0023】
上記実施例によれば、ガイド壁30によりフィルタエレメント4のダスト捕集可能な領域を拡大することができることに加えて、ダストの一部をダスト回収室52に落としバキュエータバルブ58を介してエアクリーナ1の外部に排出するようにしているので、より長期間の間、良好なダスト捕集能力を維持することができ、フィルタエレメント4の使用寿命を延ばずことができる。例えば、実施例のエアクリーナ1によれば、ガイド壁30、ダスト回収穴40、連通口42及びダスト回収室52を備えていない構成のエアクリーナに比べて、捕集効率及び通気抵抗を悪化させることなく、ダスト捕集量が30%程度向上する。
【0024】
さらに、一例のエアクリーナ1では、適当なチューニングによって、ダスト回収室52を一種のレゾネータとして機能させることも可能である。図4は、本発明のエアクリーナの透過損失(TL)を、ダスト回収穴40、連通口42及びダスト回収室52を具備しない比較例のエアクリーナと対比して示したものである。図4において、横軸は周波数、縦軸は透過損失(TL)を示す。例えば、図4に示すように、実施例では、破線で囲んだ、150Hz付近の領域及び300Hz〜450Hzの間の領域において、比較例に対して数デシベル程度の透過損失の増加がみられた。
【0025】
以上、この発明の一実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限られず、種々の変更が可能である。
【0026】
図示の実施例では、ダスト回収穴40、連通口42及びダスト排出穴54を円形としているが、これに限定されず、三角形や矩形等の他の形状としてもよい。また、ダスト回収穴40及び連通口42を同一の形状とする必要はなく、それぞれ異なる形状としていてもよい。
【0027】
また、図示の実施例では、別体のアンダーカバー50をケース本体2の底部に取り付けているが、別体のアンダーカバー50を取り付けることなく、ケース本体2内に仕切板を設けて、ケース本体2内をダストサイド室10と、ダスト回収室52と、に仕切るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 エアクリーナ
2 ケース本体
4 フィルタエレメント
10 ダストサイド室
30 ガイド壁
40 ダスト回収穴
42 連通口
50 アンダーカバー
52 ダスト回収室
54 ダスト排出穴
図1
図2
図3
図4