(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護シート着脱部が、前記転写ロールから前記保護シートを取り外す取り外しロールと、前記転写ロールに前記保護シートを装着する装着ロールを備える請求項1または2に記載のフィルム部材の製造装置。
前記取り外しロールの外周面と前記保護シートの外側面との間の粘着力をF1、前記転写ロールと前記保護シートの内側面の間の粘着力をF2、前記保護シートの前記内側面と前記保護シートの前記外側面との間の粘着力をF3とすると、F3<F2且つF3<F1である請求項3〜5のいずれか一項に記載のフィルム部材の製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが鋭意研究した結果、フィルム基材の搬送速度とロール状モールド(転写ロール)の周速度とが一致している状態であっても、フィルム基材とモールドとの間で擦れが発生することがあり、特許文献3の提案では傷つきの防止が不十分であることが判明した。この定常状態における転写ロールの擦れは、次のようにして引き起こされると発明者らは考えている。フィルム基材上への硬化性樹脂の塗布を開始する前、および樹脂の塗布を終了した後に塗布装置を通過したフィルム基材には、樹脂が塗布されていない。そのため、このフィルム基材は転写ロールに直接当接する。このとき、転写ロールが必ずしも真円状ではないこと、周辺の装置の稼働による振動、転写ロールの駆動モータの速度のムラなどにより、転写ロールの周速度がばらつくことがある。そのため、フィルム基材の搬送速度と転写ロールの周速度とが設定上一致している状態であっても、フィルム基材と転写ロールが擦れ、転写ロール表面に傷が生じ、凹凸パターンに欠陥が生じる恐れがある。その結果、欠陥のある凹凸パターンがフィルム基材に転写され、製造されるフィルム状部材が所望の特性を有さなくなることがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、転写ロールとフィルム基材の擦れに起因する凹凸パターンの欠陥の発生を防止することができる、凹凸パターンを有するフィルム状部材の製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、凹凸パターンを有する帯状のフィルム部材の製造装置であって、
帯状のフィルム基材上に凹凸形成材料を塗布して塗膜を形成する塗布部と、
凹凸パターンを有する転写ロールを有し、前記凹凸パターンを前記塗膜に転写する転写部と、
前記塗布部から前記転写部に向かって前記フィルム基材を連続的に搬送する搬送部と、
前記転写ロール表面を保護するための保護シートを前記転写ロールの表面に対して着脱させる保護シート着脱部とを備え、
該保護シート着脱部は、前記凹凸形成材料が塗布された前記フィルム基材が前記転写部に搬送されてきたときに前記保護シートを前記転写ロールから取り外し、前記凹凸形成材料が塗布されていない前記フィルム基材が前記転写部に搬送されてきたときに前記保護シートを前記転写ロールに装着する前記フィルム部材の製造装置が提供される。
【0009】
前記フィルム部材の製造装置において、前記塗布部及び前記保護シート着脱部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記塗布部における前記凹凸形成材料の前記フィルム基材への塗布タイミングと、前記保護シート着脱部における前記保護シートの着脱タイミングを制御してよい。
【0010】
前記フィルム部材の製造装置において、前記保護シート着脱部が、前記転写ロールから前記保護シートを取り外す取り外しロールと、前記転写ロールに前記保護シートを装着する装着ロールを備えてよい。
【0011】
前記フィルム部材の製造装置において、前記保護シート着脱部において、前記取り外しロールが待機位置と取り外し位置とに択一的に変位され、前記装着ロールが待機位置と装着位置とに択一的に変位されてよい。
【0012】
前記フィルム部材の製造装置において、前記取り外しロール及び/又は前記装着ロールが前記転写ロールの回転に従動して回転してよい。
【0013】
前記フィルム部材の製造装置において、前記取り外しロールの外周面と前記保護シートの外側面との間の粘着力をF1、前記転写ロールと前記保護シートの内側面の間の粘着力をF2、前記保護シートの前記内側面と前記保護シートの前記外側面との間の粘着力をF3とすると、F3<F2且つF3<F1であってよい。
【0014】
前記フィルム部材の製造装置において、さらに、F3<F2<F1であってよい。
【0015】
前記フィルム部材の製造装置において、前記転写ロールの回転情報を検出する検出装置をさらに備えてよく、前記制御部は前記回転情報に基づいて前記塗布部及び前記保護シート着脱部を制御してよい。
【0016】
前記フィルム部材の製造装置において、前記転写ロールが金属製のロール状モールドまたは樹脂製のロール状モールドであってよい。前記金属製のロール状モールドは電鋳法によって作製されたモールドであってよい。
【0017】
前記フィルム部材の製造装置において、前記転写部は、前記凹凸パターンが転写された前記膜を硬化する硬化装置を備えてよい。
【0018】
本発明の第2の態様に従えば、凹凸パターンを有する帯状のフィルム部材の製造方法であって、
帯状のフィルム基材を搬送しながら当該フィルム基材上に凹凸形成材料を塗布して塗膜を形成する塗布工程と、
転写ロールの表面を保護するための保護シートを前記転写ロールの表面から取り外す取り外し工程と、
前記フィルム基材を搬送しながら前記転写ロールの凹凸パターンを前記塗膜に転写する転写工程と、
前記転写ロールの前記表面に別の保護シートを装着する装着工程を含み、
前記取り外し工程において、前記凹凸形成材料が塗布された前記フィルム基材が前記転写部に搬送されてきたときに前記保護シートを前記転写ロールから取り外し、
前記装着工程において、前記凹凸形成材料が塗布されていない前記フィルム基材が前記転写部に搬送されてきたときに前記別の保護シートを前記転写ロールに装着するフィルム部材の製造方法が提供される。
【0019】
前記フィルム部材の製造方法において、前記取り外し工程において前記転写ロールに巻回されている前記保護シートを取り外しロールで巻き取ることで、前記転写ロールの表面から前記保護シートを取り外してもよい。
【0020】
前記フィルム部材の製造方法において、前記装着工程において装着ロールに巻回されている前記別の保護シートを前記転写ロールで巻き取ることで、前記転写ロールの表面に前記別の保護シートを装着してもよい。
【0021】
前記フィルム部材の製造方法は、さらに、前記転写ロールの回転状態を検出する検出工程を含んでよく、
前記検出工程で検出された回転状態に基づき、前記塗布工程において前記フィルム基材上に前記凹凸形成材料を塗布するタイミング、前記転写ロールの前記表面から前記保護シートを取り外すタイミング、及び前記転写ロールの前記表面に前記別の保護シートを装着するタイミングを制御してもよい。
【0022】
本発明の第3の態様に従えば、凹凸パターンを有する基板の製造方法であって、
基板上にゾルゲル材料層を形成することと、
第2の態様のフィルム部材の製造方法により製造されたフィルム部材を凹凸パターンを有するモールドとして用いて、前記モールドの前記凹凸パターンを前記ゾルゲル材料層に転写することを含む基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の凹凸パターンを有するフィルム部材の製造装置及び製造方法において、フィルム基材上の凹凸形成材料の塗膜が形成された領域(塗工部)を転写ロールに重ね合わせて押圧することにより、転写ロールの凹凸パターンを塗膜に転写し、フィルム基材上の凹凸形成材料の塗膜が形成されていない領域(未塗工部)は、保護シートが巻回された転写ロールに対向させて、転写ロール表面の凹凸パターンにフィルム基材が直接当接しないようにすることで、転写ロール表面の凹凸パターンが基材に擦れて破損することを防止しながら、凹凸パターンを有するフィルム部材を製造することができる。そのため、本発明の製造装置及び製造方法により、良好な凹凸パターンを有するフィルム部材を製造することができる。また、保護シートの取り外しおよび装着は自動化することができる、自動化により、良好な凹凸パターンを有するフィルム部材を連続して製造することが可能となり、生産性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の凹凸パターンを有する帯状のフィルム部材の製造装置及び製造方法、並びにそのフィルム部材を用いて製造された凹凸パターンを有する部材の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
<凹凸パターンを有するフィルム部材の製造装置>
実施形態の凹凸パターンを有する帯状のフィルム部材の製造装置100は、
図1に示すように、主に、フィルム基材80を連続的に送り出すフィルム搬送部120と、フィルム搬送部120により送り出されたフィルム基材80上に凹凸形成材料の塗膜84を形成する塗布部140と、塗布部140の下流側に位置し凹凸形成材料の塗膜84に凹凸パターンを転写する転写部160と、転写部160の転写ロール90に対して保護シートを着脱する保護シート着脱部170を備える。また、フィルム部材の製造装置100はさらに、転写部160の動きを検出する検出装置190と、フィルム搬送部120、塗布部140及び保護シート着脱部170を制御する制御部180とを備えてもよい(
図5参照)。実施形態の製造装置100により、凹凸パターンが付された凹凸形成材料を備えるフィルム基材(以下、フィルム部材という)80aが製造される。
【0027】
<フィルム搬送部>
フィルム搬送部120は、
図1に示すように、主に、帯状のフィルム基材80を繰り出す繰り出しロール72と、転写部160の下流に設けられてフィルム部材80aを巻き取る巻き取りロール87と、フィルム基材80及びフィルム部材80aを搬送方向に搬送するための搬送ロール78を有する。繰り出しロール72と巻き取りロール87は、それらを着脱可能にする支持台(不図示)に回転可能に取り付けられている。繰り出しロール72と巻き取りロール87の回転駆動によりフィルム基材80を搬送方向に搬送することができる。
【0028】
フィルム基材80は、搬送しながら連続的な処理を可能とするために帯状あるいは長尺状のフィルム基材である。フィルム基材80として、例えば、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレートのような有機材料で形成される。フィルム基材80とその表面に形成される凹凸形成材料の塗膜との密着性を高めるために、フィルム基材80は表面に易接着処理が施されてもよい。フィルム基材80の寸法は、適宜設定することができるが、例えば、フィルム基材80の幅を50〜3000mm、厚みを1〜500μmにし得る。
【0029】
<塗布部>
塗布部140において、フィルム基材80に凹凸形成材料を塗布して塗膜84を形成する。塗布部140は、例えば、グラビアコート法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法等の各種コート方法により塗布を行うための機構を備える。例えばグラビアコート法による塗布を行う場合、
図1に示すように、塗布部140は、塗布ロール40及び凹凸形成材料が貯留されている容器82を備えている。塗布ロール40は、フィルム基材80の表面(凹凸形成材料を塗布する面)に対向し、容器82に貯留された液体状の凹凸形成材料に一部が浸漬した状態で回転する。塗布ロール40を凹凸形成材料に浸漬しながら回転すると、塗布ロール40の外周面(側面)に凹凸形成材料が担持される。塗布ロール40に担持された凹凸形成材料が基材80に接触することにより、基材80上に凹凸形成材料の塗膜84が形成される。
【0030】
塗布ロール40の寸法は、適宜設定することができる。フィルム基材80の左右の端部から凹凸形成材料がはみ出してフィルム基材80の裏面へ回り込むことを防止する観点から、塗布ロールの塗布面の回転軸方向の長さは、フィルム基材80の幅より小さくしてよい。また、凹凸形成材料の塗膜84の全面に凹凸パターンを転写するために、塗布ロールの回転軸方向の長さは、転写ロール90の凹凸パターンの軸方向の長さより小さくしてよい。
【0031】
<転写部>
転写部160は、
図1に示されるように、転写ロール90及びそれに対向する押圧ロール(ニップロール)74を備える。
【0032】
転写ロール90は、
図2に示すように、外周面に凹凸パターン90pを有するロール状(円柱状、円筒状)のモールドである。転写ロール90は、駆動軸90dを有し、モータ等の駆動装置により軸90dを中心として回転駆動される。転写ロールの凹凸パターン90pの寸法は、製造するフィルム部材の寸法等によって適宜設定することができるが、例えば、直径を50〜1000mm、軸方向の長さを50〜3000mmにし得る。なお、
図2、
図3(a)〜(d)及び
図4(a)〜(d)において、転写ロールの凹凸パターン90pは、説明のため誇張して大きく描かれているが、実際の転写ロールの凹凸パターン90pは、後述の如く微細な凹凸パターンを意図している。
【0033】
本実施形態で用いる転写ロール90は、円柱状の基体ロール90aの外周面に、表面に凹凸パターン90pを有する薄板状モールド90bを取り付けて構成されている。基体ロール90aの材料としては例えば鉄、銅、チタン、ステンレス、アルミ等を用いることができる。また、基体ロール90aは、一例として直径を50〜1000mm、軸方向の長さを50〜3000mmにし得る。薄板状モールド90bとしては、例えば、後述する方法で製造される板状の金属モールド又はフィルム状の樹脂モールド等が含まれる。樹脂モールドを構成する樹脂には、天然ゴム又は合成ゴムのようなゴムも含まれる。薄板状モールド90bの凹凸パターン90pは、製造するフィルム部材の用途により、マイクロレンズアレイ構造や光拡散や回折等の機能を有する構造など、任意のパターンにし得る。例えば、凹凸のピッチが均一ではなく、凹凸の向きに指向性がないような不規則な凹凸パターンにしてよい。例えば、フィルム部材を可視光の回折や散乱の用途に用いる光学基板の製造に用いる場合には、凹凸の平均ピッチとしては、100〜1500nmの範囲にすることができ、200〜1200nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の平均ピッチが前記下限未満では、可視光の波長に対してピッチが小さくなりすぎるため、凹凸による光の回折が不十分になる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折角が小さくなり、回折格子のような光学素子としての機能が失われてしまう傾向にある。同様な用途においては、凹凸の深さ分布の平均値(平均高さ)は、20〜200nmの範囲であることが好ましく、30〜150nmの範囲であることがより好ましい。凹凸深さの標準偏差は、10〜100nmの範囲であることが好ましく、15〜75nmの範囲であることがより好ましい。
【0034】
このような凹凸パターンから散乱及び/または回折される光は、単一のまたは狭い帯域の波長の光ではなく、比較的広域の波長帯を有し、散乱光及び/または回折される光は指向性がなく、あらゆる方向に向かう。但し、「不規則な凹凸パターン」には、表面の凹凸の形状を解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施して得られるフーリエ変換像が円もしくは円環状の模様を示すような、すなわち、上記凹凸の向きの指向性はないものの凹凸のピッチの分布は有するような疑似周期構造を含む。このような疑似周期構造を有する部材は、その凹凸ピッチの分布が可視光線を回折する限り、有機EL素子のような面発光素子などに使用される部材や太陽電池の透明導電性基板などに用いられる部材、又はそれらの製造に用いられる部材として好適である。
【0035】
薄板状モールド90bとして一枚のモールドを用いて、これを基体ロール90aに巻きつけて取り付けてよい。または、薄板状モールド90bとして2枚以上のモールド板を用い、これらが基体ロール90aの外周面を巻回するように取り付けてもよい。薄板状モールド90bの巻回方向の長さの合計は、基体ロール90aの周方向の長さよりも短く設計してもよい。薄板状モールド90bは、接着剤、マグネット又はねじ等を用いて基体ロール90aに固定することができる。また、薄板状モールド90bとして金属製のモールド(金属モールド)を用いる場合、例えば、金属モールドを基体ロール90aに巻きつけて、金属モールドの端部を基体ロール90aに溶接することにより、金属モールドを基体ロール90aに固定することができる。上記のようにして薄板状モールド90bを基体ロール90aに固定することにより、薄板状モールド90bの端部同士を繋ぎ合わせることができる。本文中において、薄板状モールド90bの端部同士を繋ぎ合わせるとは、薄板状モールド90bの端部同士が接触させることのみならず薄板状モールド90bの端部同士が所定の間隔を隔てて対向していることも意味する。基体ロール90aに薄板状モールド90bを固定することにより繋ぎ合わせられた薄板状モールド90bの端部同士の接触部または対向する端部の間の領域を、「繋ぎ目部」90cという。なお、薄板状モールド90bの端部に、薄板状モールド90bを基体ロール90aに固定するためにねじなどが設けられている場合は、そのねじなどが設けられている領域もまた繋ぎ目部90cに該当するものとする。すなわち、本文中で使用する用語「繋ぎ目部」とは薄板状モールド90bを基体ロール90aに取り付けたために生じたモールドの凹凸パターンとして使用できなくなった領域(主に、基体ロールの軸方向に延在する領域)をいう。二枚のモールド板を薄板状モールド90bとして用いる場合、
図2に示されるような、凹凸パターン90pを有する2枚のモールド板からなる薄板状モールド90bが基体ロール90aの外周面に半周(180度)ずつ取り付けられている転写ロール90を得ることができる。
図2に示される転写ロール90において、繋ぎ目部90cには樹脂が充填されている。必要に応じて、凹凸パターン面90pに離型処理を施してもよい。
【0036】
凹凸パターンを有する薄板状モールドの製造方法の例について説明する。最初にモールドの凹凸パターンを形成するための母型パターンの作製を行う。母型の凹凸パターンは、例えば、本出願人らによるWO2012/096368号に記載されたブロック共重合体の加熱による自己組織化(ミクロ相分離)を利用する方法(以下、適宜「BCP(Block Copolymer)熱アニール法」という)や、WO2013/161454号に記載されたブロック共重合体の溶媒雰囲気下における自己組織化を利用する方法(以下、適宜「BCP溶媒アニール法」という)、又は、WO2011/007878A1に開示されたポリマー膜上の蒸着膜を加熱・冷却することによりポリマー表面の皺による凹凸を形成する方法(以下、適宜「BKL(Buckling)法」という)を用いて形成することが好適である。BCP熱アニール法、BCP溶媒アニール法及びBKL法に代えて、フォトリソグラフィ法で形成してもよい。そのほか、例えば、切削加工法、電子線直接描画法、粒子線ビーム加工法及び操作プローブ加工法等の微細加工法、並びに微粒子の自己組織化を使用した微細加工法によっても、母型の凹凸パターンを作製することができる。BCP熱アニール法でパターンを形成する場合、パターンを形成する材料は任意の材料を使用することができるが、ポリスチレンのようなスチレン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートのようなポリアルキルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、及びポリ乳酸からなる群から選択される2種の組合せからなるブロック共重合体が好適である。
【0037】
パターンの母型をBCP熱アニール法、BCP溶媒アニール法又はBKL法等により形成した後、以下のようにして電鋳法などにより、パターンをさらに転写したモールドを形成することができる。最初に、電鋳処理のための導電層となるシード層を、無電解めっき、スパッタまたは蒸着等によりパターンを有する母型上に形成することができる。シード層は、後続の電鋳工程における電流密度を均一にして後続の電鋳工程により堆積される金属層の厚みを一定にするために10nm以上が好ましい。シード層の材料として、例えば、ニッケル、銅、金、銀、白金、チタン、コバルト、錫、亜鉛、クロム、金・コバルト合金、金・ニッケル合金、ホウ素・ニッケル合金、はんだ、銅・ニッケル・クロム合金、錫ニッケル合金、ニッケル・パラジウム合金、ニッケル・コバルト・リン合金、またはそれらの合金などを用いることができる。次に、シード層上に電鋳(電界めっき)により金属層を堆積させる。金属層の厚みは、例えば、シード層の厚みを含めて全体で10〜3000μmの厚さにすることができる。電鋳により堆積させる金属層の材料として、シード層として用いることができる上記金属種のいずれかを用いることができる。形成した金属層は、後続のモールドの形成のための樹脂層の押し付け、剥離及び洗浄などの処理の容易性からすれば、適度な硬度及び厚みを有することが望ましい。
【0038】
上記のようにして得られたシード層を含む金属層を、凹凸構造を有する母型から剥離して金属基板を得る。剥離方法は物理的に剥がしても構わないし、パターンを形成する材料を、それらを溶解する有機溶媒、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどを用いて溶解して除去してもよい。金属基板を母型から剥離するときに、残留している材料成分を洗浄にて除去することができる。洗浄方法としては、界面活性剤などを用いた湿式洗浄や紫外線やプラズマを使用した乾式洗浄を用いることができる。また、例えば、粘着剤や接着剤を用いて残留している材料成分を付着除去するなどしてもよい。こうして得られる、母型からパターンが転写された金属基板(金属モールド)は、本実施形態の薄板状モールドとして用いられ得る。
【0039】
さらに、得られた金属基板を用いて、金属基板の凹凸構造(パターン)をフィルム状の支持基板に転写することでフィルム状の樹脂モールドを作製することができる。例えば、硬化性樹脂を支持基板に塗布した後、金属基板の凹凸構造を樹脂層に押し付けつつ樹脂層を硬化させる。支持基板として、例えば、ガラス、シリコン基板等の無機材料からなる基板やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート等の樹脂基板、ニッケル、銅、アルミ等の金属材料からなる基材が挙げられる。支持基板は透明でも不透明でもよい。基板上には密着性を向上させるために、表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよいし、ガスバリア層を設けるなどしてもよい。また、支持基板の厚みは、1〜500μmの範囲にし得る。
【0040】
硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系、ポリアミド系、等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂が挙げられる。硬化性樹脂の厚みは0.5〜500μmの範囲内であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、硬化樹脂層の表面に形成される凹凸の高さが不十分となり易く、前記上限を超えると、硬化時に生じる樹脂の体積変化の影響が大きくなり凹凸形状が良好に形成できなくなる可能性がある。
【0041】
硬化性樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。さらに、硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm
2〜5J/cm
2の範囲内であることが好ましい。
【0042】
次いで、硬化後の硬化樹脂層から金属基板を取り外す。金属基板を取り外す方法としては、機械的な剥離法に限定されず、公知の方法を採用することができる。こうして得ることができる支持基板上に凹凸が形成された硬化樹脂層を有するフィルム状の樹脂モールドは、本実施形態の薄板状モールドとして用いられ得る。
【0043】
また、上述の方法で得られた金属基板の凹凸構造(パターン)上にゴム系の樹脂材料を塗布し、塗布した樹脂材料を硬化させ、金属基板から剥離することにより、金属基板の凹凸パターンが転写されたゴムモールドを作製することができる。得られたゴムモールドは本実施形態の薄板状モールドとして用いられ得る。
【0044】
転写部160において、押圧ロール74は、転写ロール90とともに凹凸形成材料の塗膜84が形成されたフィルム基材80を挟み込んで、基材80の裏面(凹凸形成材料の塗膜が形成された面の反対側の面)から基材80を押圧する。また、
図1に示される実施形態において、転写部160の上流側と下流側の搬送ロール78は、基材80が転写ロール90のほぼ半周分に巻きつけられるように配置されている。この実施形態において、基材80は、押圧ロール74の正面またはその近傍で転写ロール90に接し、転写ロール90の約半周分を巻回した後に転写ロール90から離れ、転写ロール90から剥離される。それによりフィルム部材80aが得られる。また、この実施形態において、押圧ロール74の下流側且つ基材80が転写ロール90から剥離する位置より上流側にUV照射光源85を備える。UV照射光源85の代わりに加熱ヒータのような凹凸形成材料の塗膜84を硬化させるための装置を備えてもよい。
【0045】
フィルム部材製造装置100の稼働前(停止時)には、転写ロール90の表面には予め保護シート70が巻かれており、凹凸パターン90pは保護シート70によって被覆されている。製造装置100の稼働を開始すると、後述の保護シート着脱部170によって保護シート70が転写ロール90の表面から剥離される(取り外される)。製造装置100の稼働を終了するときには、後述の保護シート着脱部170によって保護シート70’が転写ロール90の表面に装着され、凹凸パターン90pは保護シート70’に被覆される。
【0046】
保護シート70は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびこれらの共重合体、シリコーン樹脂、ゴム等の各種の材料からなるフィルムであって、シワが入り難く、傷付きの原因となる凹凸が少ないものを広く適用することができる。また厚みは、例えば10μm以上、500μm以下の範囲で、必要に応じて選定することができる。
【0047】
保護シート70の幅(巻回方向に直交する方向の長さ)は、フィルム基材80の幅より大きくしてよい。保護シート70の巻回方向の長さは、転写ロール90を1周巻回する長さより長くてもよく、その場合、転写ロール90に巻き付けられた保護シート70は、一方の端部がもう一方の端部と一定の距離だけ重なり合うように配置される。保護シート70の巻回方向の長さは、転写ロール90を1周巻回する長さと等しくてもよい。転写ロール90が
図2に例示するように繋ぎ目部90cを備える場合繋ぎ目部90cには凹凸パターンが存在しないので、保護シート70の巻回方向の長さは転写ロール90を1周巻回する長さより短くしてもよく、その場合、転写ロール90に巻き付けられた保護シート70の両端部は、転写ロール90の繋ぎ目部90c上に配置されることが好適である。これらの配置において、転写ロール90の全周に渡って保護シート70が凹凸パターン90pを覆っているため、フィルム基材80と転写ロール90の凹凸パターン90pが擦れることにより転写ロール90の凹凸パターン90pに欠陥が生じることを防止することができる。
【0048】
また、保護シート70は、内側面(転写ロール90に当接する面)が粘着面である片面粘着フィルムを用いてよい。保護シート21を粘着フィルムとすることにより、転写ロール90の保管時等における保護シート70の剥がれを防止して、転写ロール90表面の傷付きを防止する効果、さらには異物の付着を防止する効果を向上することができる。具体的に保護シート70として、例えば東レフィルム加工株式会社製のトレテック7332(ポリエチレンとプロピレン重合体との配合物)を使用することができる。
【0049】
<保護シート着脱部>
保護シート着脱部170は、保護シート70を転写ロール90に対して着脱する機構を備え、該機構は、例えばロール状の部材を備えてよく、
図1に示すように取り外しロール71及び装着ロール73を備える。
【0050】
取り外しロール71及び装着ロール73は、転写ロール90の回転に従動して回転する従動ロールである。取り外しロール71及び装着ロール73の回転軸方向の長さは、フィルム基材80の幅より大きくしてよい。また、フィルム部材製造装置100の設置スペースを小さくするため、取り外しロール71及び装着ロール73の直径は転写ロール90より小さくしてよい。
【0051】
取り外しロール71は、
図3(a)〜(d)に示すように、待機位置(
図3(d)に示される位置)と取り外し位置(
図3(a)〜(c)に示される位置)とに択一的に変位される。取り外しロール71は取り外し位置において、
図3(a)に示すように転写ロール90に巻回されている保護シート70に当接し、次いで
図3(b)、(c)に示すように転写ロール90の回転に従動して回転しながら保護シート70を巻き取り、転写ロール90から保護シートを剥離させる(取り外す)ことができる。すなわち、取り外しロール71が、保護シート70が付され且つ回転している転写ロール90に当接すると保護シート70が転写ロール90から取り外しロール71に移動する。装着ロール73は、予め外周面に保護シート70’が巻回されており、
図4(a)〜(d)に示すように、待機位置(
図4(d)に示される位置)と装着位置(
図4(a)〜(c)に示される位置)とに択一的に変位される。装着ロール73が装着位置に位置する時、
図4(a)に示すように、装着ロール73に巻回された保護シート70’が転写ロール90に接触し、次いで
図4(b)、(c)に示すように、装着ロール73が転写ロール90の回転に従動して回転しながら、転写ロール90の凹凸パターン90pに保護シート70’を装着させることができる。すなわち、保護シート70’が付された装着ロール73を、回転している転写ロール90に当接すると、保護シート70’は装着ロール73から転写ロール90に移動する。取り外しロール71及び装着ロール73の位置はアクチュエータ等を用いて変更することができる。なお、
図3(a)〜(d)において、説明のため装着ロール73及び転写ロール90の繋ぎ目部90cは省略している。また、
図4(a)〜(d)において、説明のため取り外しロール71及び転写ロール90の繋ぎ目部90cは省略している。
【0052】
本実施形態において、
図3(a)〜(d)及び
図4(a)〜(d)に示されるように、保護シート70、70’の巻回方向の長さは転写ロール90を1周巻回する長さとほぼ等しく、取り外しロール71及び装着ロール73の直径は転写ロール90より小さいため、保護シート70、70’は、
図3(c)、(d)及び
図4(a)に示されるように、取り外しロール71及び装着ロール73に多重に巻回される。
【0053】
上記のような保護シート70、70’の転写ロール90と取り外しロール71又は装着ロール73との間の移動を可能とするには、それらのロール表面と保護シート70、70’の表面及び裏面との間、及び保護シート70、70’の内側面(転写ロール90に当接する面)と外側面(転写ロール90に当接する面の裏面)との間の付着力又は粘着力を調製すればよい。取り外しロール71の外周面と保護シート70、70’の外側面(転写ロール90に当接する面の裏面)との間の粘着力をF1、転写ロール90と保護シート70、70’の内側面(転写ロール90に当接する面)の間の粘着力をF2、保護シート70、70’の内側面と保護シート70の外側面との間の粘着力をF3とすると、保護シート70、70’の巻回方向の長さが転写ロール90を1周巻回する長さを超え、保護シート70、70’の一方の端部がもう一方の端部と一定の距離だけ重なり合うように配置される場合には、F3<F1且つF3<F2であることが好ましい。F3<F1であることにより、取り外しロール71が取り外し位置に変位したときに、転写ロール90に巻回され、もう一方の端部と重なりあっている保護シート70の端部が、転写ロール90側から取り外しロール73側に移動することができる。F3<F2であることにより、装着ロール73が装着位置に変位したときに、装着ロール73に多重に巻回された保護シート70’の最外周面に位置する端部(後述の巻き始め側端部)70’aが、装着ロール73側から転写ロール90側に移動することができる。それにより、引き続いて転写ロール90及び装着ロール73が回転することにより、保護シート70’を装着ロール73から転写ロール90に巻き取ることができる。
【0054】
また、保護シート70、70’の巻回方向の長さが転写ロール90を1周巻回する長さ以下である場合には、F3<F2<F1であることが好ましい。F2<F1であることにより、取り外しロール71が取り外し位置に変位したときに、転写ロール90に付されている保護シート70の端部が、転写ロール90の外表面から取り外しロール73の外表面に移動することができる。F3<F2であることにより、装着ロール73が装着位置に変位したときに、装着ロール73に多重に巻回された保護シート70’の最外周面に位置する端部(後述の巻き始め側端部)70’aが、装着ロール73側から転写ロール90側に移動することができる。それにより、引き続いて転写ロール90及び取り外しロール71が回転することにより、保護シート70を転写ロール90から取り外しロール71に巻き取ることができる。
【0055】
上記のような粘着力を実現するために、例えば両面テープを用いることができる。例えば、取り外しロール71の外周面に上記のような粘着力の関係を満たすような両面テープを貼りつけてよい。また、保護シート70、70’の表面の一部に上記のような粘着力の関係を満たすような両面テープを付してもよい。例えば、保護シート70’の転写ロール90への装着時において、保護シート70’の内側面(転写ロール90に当接する面)の転写ロール90に対する付着力よりも転写ロール90に対する付着力が大きい面を有する両面テープを用意し、装着ロール73に巻回された保護シート70’の最外周面に位置する端部70’aにおいて、用意した両面テープの前記面の反対側の面を該保護シート70’の内側面に貼りつければよい。また、保護シート70の取り外し時において、保護シート70の外側面(取り外しロール71に当接する面)の取り外しロール71に対する付着力よりも取り外しロール71に対する付着力が大きい面を有する両面テープを用意し、転写ロール90に巻回された保護シート70の前端部(転写ロール90の回転方向の前方側に位置する端部)70aにおいて、用意した両面テープの前記面の反対側の面を該保護シート70の外側面に貼りつければよい。
【0056】
このような両面テープとしてはシリコーン系等の粘着剤を用いた任意の両面テープを用いることができるが、例えば、カプトン両面テープ(寺岡製作所製)を用いることができる。
【0057】
<検出装置>
前述のように実施形態のフィルム部材の製造装置は、
図5に示すように、転写ロール90に巻き付けられた保護シート70の前端部(転写ロール90の回転方向の前方側に位置する端部)70a及び後端部(転写ロール90の回転方向の後方側に位置する端部)70bの位置を検出する検出装置190を備えてよい。例えば、
図5に示すように、転写ロールの駆動軸90dに、保護シート70の前端部70a及び後端部70bの位置に対応する位置にそれぞれ反射板92a及び92bを設け、光学センサ62の光照射部から照射した光を光学センサ62の受光部で受光することで、反射板92a、92bの位置すなわち保護シート70の前端部70a及び後端部70bの位置、及び転写ロール90の回転速度等の転写ロールの回転情報を検出することができる。また、サーボモータ又はエンコーダ等を使用することによっても、保護シート70の前端部70a及び後端部70bの位置及び転写ロール90の回転速度等の転写ロールの回転情報を検出することができる。
【0058】
<制御部>
図5に示すように、制御部180は、塗布部140における塗布開始のタイミング及び取り外しロール71及び装着ロール73の変位のタイミングを制御するためのコンピュータ64を備えてよい。以下、
図3〜5を参照しながら、塗布部140における塗布開始のタイミング、並びに取り外しロール71及び装着ロール73の変位のタイミングの制御方法を説明する。
【0059】
まず、実施形態のフィルム部材製造装置100の稼働開始時(立ち上げ時)において、制御部180は、光学センサ62で検出した保護シートの前端部70aの位置、転写ロール90の回転速度、塗布ロール40から転写ロール90までのフィルム基材80の距離及び搬送速度等の情報に基づいて、保護シートの前端部70aに対向するフィルム基材80の位置を計算する。その計算結果に基づいて、転写部160において塗布部140で塗布を開始することにより形成される凹凸形成材料の塗膜の始端部(未塗工部と塗工部の境界位置)84bに保護シート70の前端部70aが取り外された転写ロール90の前端部に重ねられ得るように、塗布部140における塗布開始のタイミングを制御する。例えば、塗布ロール40の正面から押圧ロール74の直下までのフィルム基材80の進行距離と、転写ロール90の押圧ロール74に対向する位置から保護シート70の前端部70aが位置する位置までの転写ロール74の回転方向の弧の長さの合計が、転写ロール90の円周長さの所定の整数倍となった時に、塗布部140において塗布を開始してよい。次いで、
図3(a)に示すように、塗膜の始端部84bから押圧ロール74の直下までのフィルム基材の長さと、転写ロール74の保護シートの前端部70aが位置する位置から押圧ロール74に対向する位置までの転写ロール74の回転方向の弧の長さが等しくなった後、取り外しロール73が取り外し位置に到達したときに保護シート70の前端部70aが取り外しロール71の取り外し位置の直下に位置して取り外しロール71に接触するように、取り外しロール71を取り外し位置に変位させる。引き続いて転写ロール90が回転し、その回転に従動して取り外しロール71が回転することにより、保護シート70は前端部70aから後端部70bに向かって取り外しロール71に巻きとられ、転写ロール90から剥離されていく。フィルム基材80上の凹凸形成材料の塗膜の始端部84bは、
図3(b)に示すように、保護シート70の前端部70aが取り外された転写ロール90の前端部に対向し、引き続いて押圧ロール74の直下に搬送される凹凸形成材料の塗膜84は、保護シート70が剥離されて露出した転写ロール90の凹凸パターン90pに対向して押圧され、凹凸パターン90pの転写が行われる。
図3(c)に示すように、転写ロール90からの保護シート70の剥離を開始した時点から転写ロール90が一回転すると、転写ロール90に巻回されていた保護シート70が全て取り外しロール71に巻き取られる。その後、制御部180は、
図3(d)に示すように、保護シート70が巻回された取り外しロール71を取り外し位置から待機位置に変位させる。
【0060】
装置稼働終了時(立ち下げ時)において、制御部180は、装着ロール73の変位のタイミングを以下のように制御する。まず、塗布部140において塗布を停止することによって形成された凹凸形成材料の塗膜の終端部(塗工部と未塗工部の境界位置)84cが、転写ロール90のどの位置に対向するかを、転写ロール90の回転速度、塗布ロール40から転写ロール90までのフィルム基材80の距離及び搬送速度等の情報に基づいて計算する。その計算結果に基づいて、転写部160において塗膜の終端部84cが保護シート70’の巻き始め側端部70’aに重ね合わせられ得るように、装着ロール73を装着位置に変位させる。例えば、制御部180は、
図4(a)に示すように、塗膜の終端部84cから押圧ロール74の直下までのフィルム基材の長さが、転写ロール90の装着ロール73の装着位置の直下から押圧ロール74に対向する位置までの転写ロール90の回転方向の弧の長さと等しくなったときに装着ロール73に巻回された保護シート70’が転写ロール90に接触するように、装着ロール73を装着位置に変位させる。引き続いて転写ロール90が回転し、その回転に従動して装着ロール73が回転することにより、保護シート70’は、転写ロール90に巻回されていく。フィルム基材80上の凹凸形成材料の塗膜の終端部84cは、
図4(b)に示すように、保護シート70’の巻き始め側端部70’aに対向する。引き続いて押圧ロール74の直下に搬送される、フィルム基材80上の凹凸形成材料の塗膜が形成されていない領域(未塗工部)は、転写ロール90に巻回された保護シート70’に対向して押圧される。
【0061】
以上のように制御することで、フィルム基材上の凹凸形成材料の塗膜が形成された領域(塗工部)が転写ロールに重ね合わせて押圧され、転写ロールの凹凸パターンを塗膜に転写することができる。フィルム基材上の凹凸形成材料の塗膜が形成されていない領域(未塗工部)は、保護シートが巻回された転写ロールに対向して、転写ロール表面の凹凸パターンにフィルム基材が直接当接することがないため、転写ロール表面の凹凸パターンが基材に擦れて破損することを防止しながら、凹凸パターンを有するフィルム部材を製造することができる。また、上記のように検出装置190で検出した情報を元に制御部180によりフィルム部材製造装置100の動作を自動で制御することで、良好な凹凸パターンを有するフィルム部材を連続して製造することが可能となり、生産性が向上する。
【0062】
フィルム部材製造装置100には、さらに、繰り出しロール72から繰り出されたフィルム基材80及び巻き取りロール87に巻き取られる前のフィルム部材80aをそれぞれ除電するための除電器が設けられていてもよい。
【0063】
フィルム部材製造装置100は、さらに、塗布部140で形成された塗膜の厚さや状態を観察する検査装置や、転写ロール90から剥離された後の塗膜84の凹凸パターンを観察する検査装置などを備えることができる。
【0064】
<フィルム部材製造方法>
次に、フィルム部材製造装置100の動作及びフィルム部材の製造方法の実施形態について
図2、
図3(a)〜(d)、
図4(a)〜(d)、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0065】
まず、搬送部120による搬送を開始し、フィルム基材80を繰り出しロール72から搬送ロール78を介して塗布部140へ送り出す。このとき転写部160において保護シート70が巻き付けられた転写ロール90を回転させ、保護シート70の前端部70a及び後端部70bの位置を検出装置により検出する。
【0066】
塗布部140において、フィルム基材80上に塗膜84を形成すべき部分(塗工部になる部分)が塗布ロール40の正面に搬送されてきたときに、凹凸形成材料の塗布を開始する。例えば、塗布ロール40の正面から押圧ロール74の直下までのフィルム基材80の進行距離と、転写ロール90の押圧ロール74に対向する位置から保護シート70の前端部70aが位置する位置までの転写ロール74の回転方向の弧の長さの合計が、転写ロール90の円周長さの所定の整数倍となった時に、塗布部140において塗布を開始する。塗布の開始は、例えば、予め離間させておいた塗布ロール40とフィルム基材80を接触させることによって行うことができる。
【0067】
凹凸形成材料としては、光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が使用でき、例えば、エポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系、ポリアミド系、等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂が挙げられる。
【0068】
凹凸形成材料は、耐熱性に優れることから無機材料から形成されてもよく、特に、シリカ、Ti系の材料やITO(インジウム・スズ・オキサイド)系の材料、ZnO、ZrO
2、Al
2O
3等のゾルゲル材料を使用し得る。例えば、フィルム基材上にシリカからなる凹凸パターン層をゾルゲル法で形成する場合は、金属アルコキシド(シリカ前駆体)のゾルゲル材料を調製する。シリカの前駆体として、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランに代表されるテトラアルコキシドモノマーや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、トリルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランに代表されるトリアルコキシドモノマー、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−i−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−t−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−i−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−t−ブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジプロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−i−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−t−ブトキシシラン等のジアルコキシシランに代表されるジアルコキシドモノマーを用いることができる。さらに、アルキル基の炭素数がC4〜C18であるアルキルトリアルコキシシランやジアルキルジアルコキシシランを用いることもできる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するモノマー、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するモノマー、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するモノマー、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基を有するモノマー、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基を有するモノマー、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するモノマー、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するモノマー、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するモノマー、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するモノマー、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するモノマー、これらモノマーを少量重合したポリマー、前記材料の一部に官能基やポリマーを導入したことを特徴とする複合材料などの金属アルコキシドを用いてもよい。また、これらの化合物のアルキル基やフェニル基の一部、あるいは全部がフッ素で置換されていてもよい。さらに、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、オキシ塩化物、塩化物や、それらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。金属種としては、Si以外にTi、Sn、Al、Zn、Zr、Inなどや、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。上記酸化金属の前駆体を適宜混合したものを用いることもできる。さらに、シリカの前駆体として、分子中にシリカと親和性、反応性を有する加水分解基および撥水性を有する有機官能基を有するシランカップリング剤を用いることができる。例えば、n−オクチルトリエトキシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のシランモノマー、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン等のサルファーシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、これらモノマーを重合したポリマー等が挙げられる。
【0069】
凹凸形成材料としてTEOSとMTESの混合物を用いる場合には、それらの混合比は、例えばモル比で1:1にすることができる。このゾルゲル材料は、加水分解及び重縮合反応を行わせることによって非晶質シリカを生成する。合成条件として溶液のpHを調整するために、塩酸等の酸またはアンモニア等のアルカリを添加する。pHは4以下もしくは10以上が好ましい。また、加水分解を行うために水を加えてもよい。加える水の量は、金属アルコキシド種に対してモル比で1.5倍以上にすることができる。
【0070】
ゾルゲル材料からなる凹凸形成材料の溶液の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、ブトキシエチルエーテル、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、フェノール、クロロフェノール等のフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、二硫化炭素等の含ヘテロ元素化合物、水、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。特に、エタノールおよびイソプロピルアルコールが好ましく、またそれらに水を混合したものも好ましい。
【0071】
ゾルゲル材料からなる凹凸形成材料の添加物としては、粘度調整のためのポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールや、溶液安定剤であるトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、アセチルアセトンなどのβジケトン、βケトエステル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサンなどを用いることが出来る。
【0072】
形成する凹凸形成材料の塗膜84の厚みは0.5〜500μmの範囲内であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、凹凸形成材料の表面に形成される凹凸の高さが不十分となり易く、前記上限を超えると、硬化時に生じる凹凸形成材料の体積変化の影響が大きくなり凹凸形状が良好に形成できなくなる可能性がある。
【0073】
次いで、凹凸形成材料の塗膜84が形成された基材80が塗布部140の下流の搬送ロール78上に掛け渡されて搬送され、転写部160の転写ロール90及び押圧ロール74へ向かう。この間に、
図3(a)に示すように、塗膜の始端部84bから押圧ロール74の直下までのフィルム基材の長さと、転写ロール74の保護シートの前端部70aが位置する位置から押圧ロール74に対向する位置までの転写ロール74の回転方向の弧の長さが等しくなった後、取り外しロール73が取り外し位置に到達したときに保護シート70の前端部70aが取り外しロール71の取り外し位置の直下に位置して取り外しロール71に接触するように、取り外しロール71を取り外し位置に変位させる。このとき、取り外しロール71に設けられている両面テープの粘着力により、保護シートの前端部70aが取り外しロール71に付着する。引き続いて、転写ロール90が回転し、その回転に従動して取り外しロール71が回転することにより、保護シート70は前端部70aから後端部70bに向かって取り外しロール71に巻きとられ、転写ロール90から剥離されていく。上記のように保護シート70の剥離を進行させながら、基材80が搬送方向に進行することにより、フィルム基材80上の凹凸形成材料の塗膜の始端部84bが、保護シート70の前端部70aが取り外された転写ロール90の前端部に対向して押圧される。引き続いて押圧ロール74の直下に搬送される凹凸形成材料の塗膜84は、
図3(b)に示すように、保護シート70が剥離されて露出した転写ロール90の凹凸パターン90pに対向して重ね合わされ、押圧ロール74で押圧されて、凹凸パターン90pが塗膜84に転写される。転写ロール90からの保護シート70の剥離を開始した時点から転写ロール90が一回転すると、
図3(c)に示すように、転写ロール90に巻回されていた保護シート70が全て取り外しロール71に巻き取られる。その後、
図3(d)に示すように、保護シート70が巻回された取り外しロール71を取り外し位置から待機位置に変位させる。
【0074】
押圧ロール74により凹凸パターンが転写された基材80に、転写ロール90を押し付けたままの状態でUV照射光源85からのUV光を照射し、それにより塗膜84の硬化を促進させてよい。凹凸形成材料を硬化させる条件としては、凹凸形成材料として使用する材料の種類により異なるが、例えば、加熱により凹凸形成材料を硬化させる場合は硬化温度が室温〜250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm
2〜5J/cm
2の範囲内であることが好ましい。
図3(b)〜(d)に示した例においては、転写ロール90の下方に配置したUV照射光源85により凹凸形成材料の塗膜84にUV光を照射することができる。
【0075】
硬化した凹凸形成材料の塗膜84aを有するフィルム基材(フィルム部材80a)を、転写ロール90の外周に沿って進路を変更し、次いで転写ロール90から離間する方向に搬送して転写ロール90から剥離する。この後、フィルム部材80aを巻き取りロール87に巻き取る。フィルム部材80aを転写ロール90から剥離する方法としては、機械的な剥離法に限定されず、任意の知られた方法を採用することができる。例えば
図3(d)においては、硬化後の凹凸形成材料の塗膜(凹凸パターン層)84aを有するフィルム部材80aを押圧ロール74の下流側で転写ロール90から離間する方向に搬送することにより、フィルム部材80aを転写ロール90から剥離できる。こうして、フィルム基材80上に凹凸が形成された硬化した凹凸パターン層84aを有するフィルム部材80aを得ることができる。
【0076】
上記のような塗布部140における塗布及び転写部160における転写を継続し、所望の長さの凹凸パターンを有するフィルム部材80aが形成された後、塗布部140における塗布を停止する。塗布の停止は、例えば、塗布ロール40とフィルム基材80を離間させることによって行うことができる。
【0077】
塗布部140において塗布を停止することによって凹凸形成材料の塗膜の終端部(塗工部と未塗工部の境界位置)84cが形成される。終端部84cが形成されたフィルム基材80を塗布部140の下流の搬送ロール78上に掛け渡し、転写部160の転写ロール90及び押圧ロール74へ向かって搬送する。この間に、
図4(a)に示すように、塗膜の終端部84cから押圧ロール74の直下までのフィルム基材の長さが、転写ロール90の装着ロール73の装着位置の直下から押圧ロール74に対向する位置までの転写ロール90の回転方向の弧の長さと等しくなったときに装着ロール73に巻回された保護シート70’が転写ロール90に接触するように、装着ロール73を装着位置に変位させる。このとき、転写ロール90と保護シート70’の粘着力により、保護シート70’の巻き始め側端部70a’が転写ロール90に付着する。引き続いて、転写ロール90が回転し、その回転に従動して装着ロール73が回転することにより、保護シート70’は巻き始め側端部70’aから転写ロール90に巻きとられ、装着ロール73から剥離されていく。上記のように保護シート70’の転写ロール90への装着を進行させながら、フィルム基材80が搬送方向に進行することにより、フィルム基材80上の凹凸形成材料の塗膜の終端部84cが、保護シート70’の巻き始め側端部70’aに対向して押圧される。引き続いて押圧ロール74の直下に搬送される、凹凸形成材料の塗膜84が形成されていない(未塗工の)フィルム基材80は、
図4(b)に示すように、転写ロール90に装着された保護シート70’に対向して重ね合わされ、押圧ロール74で押圧される。転写ロール90への保護シート70’の装着を開始した時点(装着ロール73を装着位置に変位させた時点)から転写ロール90が一回転すると、
図4(c)に示すように、装着ロール73に巻回されていた保護シート70’が転写ロール90に巻き取られ、転写ロール90の全周に渡って凹凸パターン90pが保護シート70’で被覆される。その後、
図4(d)に示すように、装着ロール73を装着位置から待機位置に変位させ、搬送部120によるフィルム基材80の搬送を停止させる。
【0078】
本実施形態の製造方法において、上記のように、塗膜の始端部84bよりも前に押圧ロール71の直下を通過するフィルム基材には、凹凸形成材料の塗膜が形成されていないが、この未塗工部は、転写ロール90のうち保護シート70が巻回された部分に対向する(保護シート70を介して転写ロール90の凹凸パターン90pと対向する)ため、フィルム基材80は転写ロール90の凹凸パターン90pに直接当接しない。そのため、フィルム基材80と擦れることにより転写ロール90の凹凸パターン90pが破損することを防止することができる。フィルム基材上の塗膜84は転写ロール90の凹凸パターン90pに当接して押圧されるが、未硬化の塗膜84は液状で軟質であるため、転写ロール90の凹凸パターン90pと凹凸形成材料の塗膜84が接触しても、塗膜84と凹凸パターン90pとの擦れにより凹凸パターン90pに傷が生じることはない。さらに、塗膜の終端部84cよりも後に押圧ロール71の直下を通過するフィルム基材にも、凹凸形成材料の塗膜が形成されていないが、この未塗工部は、転写ロール90のうち保護シート70’が巻回された部分に対向する(保護シート70’を介して転写ロール90の凹凸パターン90pと対向する)ため、フィルム基材80は転写ロール90の凹凸パターン90pに直接当接しない。そのため、フィルム基材80と擦れることにより転写ロール90の凹凸パターン90pが破損することを防止することができる。したがって、この転写ロール90を繰り返し用いてフィルム部材を製造しても、製造されるフィルム部材に欠陥が発生することが防止される。なお、上記の動作を繰り返してフィルム部材を製造する場合、製造装置100の立ち下げ時における保護シート70’、巻き始め端部70a’、巻き終わり端部70b’はそれぞれ、次のランの開始時において保護シート70、前端部70a、後端部70bに相当することになる。
【0079】
こうして、実施形態のフィルム部材製造装置100を用いて、転写ロール90の凹凸パターン90pの破損を防止しつつ、転写ロール90の凹凸パターンが塗膜84aに転写されたフィルム部材80aを得ることができる。得られたフィルム部材80aを電鋳法によって形成した金属モールド等の代わりに用い、これを薄板状モールドとしてロール体に巻きつけ固定することで、別の形態の転写ロールを製造することも可能である。
【0080】
なお、転写ロール90に巻き付ける保護シート70、70’の巻回方向の長さは、転写ロール90を1周巻回する長さより長くしてもよく、その場合、保護シート70、70’は、前端部70aと後端部70b、または巻き始め端部70a’と巻き終わり端部70b’が一定の距離だけ重なり合うようにして、転写ロール90上に配置されてもよい。製造装置100を用いてフィルム部材80aを繰り返し製造する場合は、製造終了時または製造再開時に、保護シート70’の端部を剥がして、巻き始め端部70a’と巻き終わり端部70b’の上下関係を入れ替える。これにより製造装置100の稼働を再開した時に、保護シート70を取り外しロール71で剥離できるようになる。
【0081】
なお、上記の実施形態では、塗膜84の始端部84bは保護シート70の前端部70aが取り外された転写ロール90上の凹凸パターンの前端部に対向し、塗膜の終端部84cは保護シート70’の巻き始め端部70a’に対向して押圧されるが、
図6、7に示すように、保護シート70、70’と塗膜84が重なって押圧されてもよい。すなわち、製造装置100の稼働開始時において、塗膜の始端部84bが保護シート70の後端部70bに対向してよく、製造装置100の稼働終了時において、塗膜の終端部84cが保護シート70’の巻き始め端部70’aに対向してよい。このような場合においては、保護シート70、70’と塗膜84の付着力をF4とすると、F4<F2となる条件とすることが好ましく、塗膜84から保護シート70、70’を良好に剥離することができる。保護シート70、70’と塗膜84が重なって押圧されることにより、塗膜84の始端部84b及び終端部84c、並びに保護シート70、70’の前端部70a及び巻き始め端部70’aの位置が前後にずれても、転写ロール90の凹凸パターン90pとフィルム基材80が直接接触することがないため、確実に転写ロール90の傷つきを防止することができる。なお、保護シート70、70’に重なって押圧された領域の塗膜には凹凸パターンが転写されていないため、この部分はフィルム部材としては使用されない。
【0082】
フィルム部材の製造装置100に、転写ロール90の回転状態を検出するセンサが設けられていない場合には、取り外しロール71及び装着ロール73の変位のタイミング及び塗布部140における塗布の開始及び停止のタイミングを、例えば以下のようにすることで、転写ロール90の凹凸パターン90pがフィルム基材80に直接接触することなく、転写ロール90の凹凸パターン90pが転写されたフィルム部材80aを製造することができる。
【0083】
装置稼働開始時において、まず、塗布部140において凹凸形成材料の塗布を開始する。フィルム基材80の塗膜の始端部84bが転写部160の押圧ロール74の直下を通過した後、転写ロール90に巻回されている保護シート70の前端部70aが取り外し位置の直下に位置する時に、取り外しロール73を待機位置から取り外し位置に変位させ、転写ロール90上の保護シート70の取り外しを開始する。保護シート70が剥離されて露出した転写ロール90の凹凸パターン90pには、凹凸形成材料の塗膜84が当接して押圧され、凹凸パターン90pが塗膜84に転写される。次いで、所定の長さのフィルム部材80aが形成された後、装置稼働停止動作を開始する。まず、装着ロール73を待機位置から装着位置に変位させ、保護シート70’を転写ロール90に装着し始める。転写ロール90が全周にわたって保護シート70’に被覆された後、塗布部140における凹凸形成材料の塗布を停止する。塗膜の終端部84cの後に転写部160に搬送されるフィルム基材80は転写ロール90に巻回された保護シート70’に当接する。以上の方法では、転写ロール90の凹凸パターン90pがフィルム基材80に直接接触することないため、転写ロール90の凹凸パターン90pの傷つきを防止しながら、転写ロール90の凹凸パターン90pが転写されたフィルム部材80aを製造することができる。
【0084】
<凹凸構造層を備える基板の製造方法>
さらに、上記のような方法及び製造装置を用いて製造されたフィルム部材をフィルム状モールドとして用いることで、フィルム部材の凹凸パターンが転写された凹凸構造層を備える基板を製造することができる。この方法について、詳細を以下に説明する。
【0085】
フィルム状モールドの凹凸パターンが転写された凹凸構造層をゾルゲル法により形成するため、最初にゾルゲル材料の溶液を調製する。凹凸構造層は、耐熱性に優れることから無機材料から形成されることが好ましく、特に、シリカ、Ti系の材料やITO(インジウム・スズ・オキサイド)系の材料、ZnO、ZrO
2、Al
2O
3等のゾルゲル材料を使用し得る。ゾルゲル材料の溶液の調製のために用いる金属アルコキシド(前駆体)、溶媒、及び添加物としては、上述の帯状のフィルム部材の製造方法の実施形態において、凹凸形成材料として用いることができる金属アルコキシド(前駆体)、溶媒、及び添加物として例示したものと同様のものを使用することができる。
【0086】
調製したゾルゲル材料の溶液を基板上に塗布する。基板として、ガラスや石英、シリコン基板等の無機材料からなる基板やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート等の樹脂基板を用い得る。基板は透明でも不透明でもよい。この基板から得られた凹凸パターン基板を有機EL素子の製造に用いるのであれば、基板は耐熱性、UV光等に対する耐光性を備える基板が望ましい。この観点から、基板として、ガラスや石英、シリコン基板等の無機材料からなる基板がより好ましい。特に、基板が無機材料から形成されると、基板と凹凸構造層との間で屈折率の差が少なく、光学基板内での意図しない屈折や反射を防止することができるので好ましい。基板上には密着性を向上させるために、表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよいし、水分や酸素等の気体の浸入を防ぐ目的で、ガスバリア層を設けるなどしてもよい。また、基板は、凹凸構造層を形成する面とは反対側の面に、集光、光拡散等の種々の光学機能を有する光学機能層が形成されていてもよい。ゾルゲル材料の塗布方法として、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法などの任意の塗布方法を使用することができるが、比較的大面積の基板にゾルゲル材料を均一に塗布可能であること、ゾルゲル材料がゲル化する前に素早く塗布を完了させることができることからすれば、バーコート法、ダイコート法及びスピンコート法が好ましい。なお、後の工程でゾルゲル材料からなる所望の凹凸パターンが形成されるため基板の表面(表面処理や易接着層がある場合にはそれらも含めて)は平坦でよく、基板自体は所望の凹凸パターンを有さない。塗布するゾルゲル材料の膜厚は、例えば100〜500nmにしてよい。
【0087】
ゾルゲル材料の塗布後、塗膜(以下、適宜、「ゾルゲル材料層」とも言う)中の溶媒を蒸発させるために基板を大気中もしくは減圧下で保持してもよい。この保持時間が短いと、塗膜の粘度が低くなりすぎて、後続の押圧工程において凹凸パターンの転写ができず、保持時間が長すぎると、前駆体の重合反応が進み塗膜の粘度が高くなりすぎて、押圧工程において凹凸パターンの転写ができなくなる。また、ゾルゲル材料を塗布後、溶媒の蒸発の進行とともに前駆体の重合反応も進行し、ゾルゲル材料の粘度などの物性も短時間で変化する。凹凸パターン形成の安定性の観点から、パターン転写が良好にできる乾燥時間範囲が十分広いことが望ましく、これは乾燥温度(保持温度)、乾燥圧力、ゾルゲル材料種、ゾルゲル材料種の混合比、ゾルゲル材料調製時に使用する溶媒量(ゾルゲル材料の濃度)等によって調整することができる。
【0088】
次いで、上述の方法及び製造装置で製造されたフィルム部材を凹凸パターン転写用のフィルム状モールドとして用いて、フィルム状モールドの凹凸パターンをゾルゲル材料層に転写することで、凹凸構造層を形成する。この際、押圧ロールを用いてモールドをゾルゲル材料層に押し付けてもよい。押圧ロールを用いたロールプロセスでは、プレス式と比較して、モールドと塗膜とが接する時間が短いため、モールドや基板及び基板を設置するステージなどの熱膨張係数の差によるパターンくずれを防ぐことができること、ゾルゲル材料溶液中の溶媒の突沸によってパターン中にガスの気泡が発生したり、ガス痕が残ったりすることを防止することができること、基板(塗膜)と線接触するため、転写圧力及び剥離力を小さくでき、大面積化に対応し易いこと、押圧時に気泡をかみ込むことがないなどの利点を有する。また、モールドを押し付けながら基板を加熱してもよい。押圧ロールを用いてモールドをゾルゲル材料層に押し付ける例として、
図8に示すように押圧ロール122とその直下に搬送されている基板10との間にフィルム状モールド80aを送り込むことでフィルム状モールド80aの凹凸パターンを基板10上のゾルゲル材料層12に転写することができる。すなわち、フィルム状モールド80aを押圧ロール122によりゾルゲル材料層12に押し付ける際に、フィルム状モールド80aと基板10を同期して搬送しながらフィルム状モールド80aを基板10上のゾルゲル材料層12の表面に被覆する。この際、押圧ロール122をフィルム状モールド80aの裏面(凹凸パターンが形成された面と反対側の面)に押しつけながら回転させることで、フィルム状モールド80aと基板10が進行しながら密着する。なお、帯状のフィルム状モールド80aを押圧ロール122に向かって送り込むには、帯状のフィルム状モールド80aが巻き付けられたフィルムロールからそのままフィルム状モールド80aを繰り出して用いるのが便利である。
【0089】
ゾルゲル材料層にモールドを押し付けた後、ゾルゲル材料層を仮焼成してもよい。仮焼成することによりゾルゲル材料層のゲル化を進め、パターンを固化し、剥離の際に崩れにくくする。仮焼成を行う場合は、大気中で40〜150℃の温度で加熱することが好ましい。なお、仮焼成は必ずしも行う必要はない。
【0090】
モールドの押圧またはゾルゲル材料層の仮焼成の後、ゾルゲル材料層からモールドを剥離する。モールドの剥離方法として公知の剥離方法を採用することができる。加熱しながらモールドを剥離してもよく、それによりゾルゲル材料層から発生するガスを逃がし、ゾルゲル材料層内に気泡が発生することを防ぐことができる。ロールプロセスを使用する場合、プレス式で用いるプレート状モールドに比べて剥離力は小さくてよく、ゾルゲル材料層がモールドに残留することなく容易にモールドをゾルゲル材料層から剥離することができる。特に、ゾルゲル材料層を加熱しながら押圧するので反応が進行し易く、押圧直後にモールドはゾルゲル材料層から剥離し易くなる。さらに、モールドの剥離性の向上のために、剥離ロールを使用してもよい。
図8に示すように剥離ロール123を押圧ロール122の下流側に設け、剥離ロール123によりフィルム状モールド80aをゾルゲル材料層12に付勢しながら回転支持することで、フィルム状モールド80aがゾルゲル材料層(塗膜)12に付着された状態を押圧ロール122と剥離ロール123の間の距離だけ(一定時間)維持することができる。そして、剥離ロール123の下流側でフィルム状モールド80aを剥離ロール123の上方に引き上げるようにフィルム状モールド80aの進路を変更することでフィルム状モールド80aは凹凸が形成されたゾルゲル材料層12から引き剥がされる。なお、フィルム状モールド80aがゾルゲル材料層12に付着されている期間に前述のゾルゲル材料層12の仮焼成や加熱を行ってもよい。なお、剥離ロール123を使用する場合には、例えば40〜150℃に加熱しながら剥離することによりモールド80aの剥離を一層容易にすることができる。
【0091】
ゾルゲル材料層からモールドを剥離した後、ゾルゲル材料層を硬化してもよく、こうして凹凸構造層を形成する。本実施形態では、本焼成によりゾルゲル材料層を硬化させることができる。本焼成によりゾルゲル材料層(塗膜)を構成するシリカ(アモルファスシリカ)中に含まれている水酸基などが脱離してゾルゲル材料層がより強固となる。本焼成は、200〜1200℃の温度で、5分〜6時間程度行うのが良い。こうしてゾルゲル材料層が硬化して、モールドの凹凸パターンに対応する凹凸パターンを有する基板、すなわち、平坦な基板上にゾルゲル材料からなる凹凸構造層が直接形成された基板が得られる。この時、凹凸構造層がシリカからなる場合、焼成温度、焼成時間に応じて非晶質または結晶質、または非晶質と結晶質の混合状態となる。
【0092】
なお、凹凸構造層の表面に疎水化処理を行ってもよい。疎水化処理の方法は知られている方法を用いればよく、例えば、シリカ表面であれば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等で疎水化処理することもできるし、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチルシリル化剤とシリコーンオイルで疎水化処理する方法を用いてもよいし、超臨界二酸化炭素を用いた金属酸化物粉末の表面処理方法を用いてもよい。凹凸構造層の表面を疎水性にすることにより、実施形態の製造方法により製造した凹凸パターン基板を有機EL素子等のデバイスの製造に用いる場合に、製造工程において基板から水分を容易に除去できるため、有機EL素子におけるダークスポットのような欠陥の発生や、デバイスの劣化を防止することができる。
【0093】
また、上記実施形態では、凹凸構造層の材料としてゾルゲル材料を用いたが、上述の無機材料のほか、硬化性樹脂材料を用いてもよい。硬化性樹脂としては、例えば、光硬化および熱硬化、湿気硬化型、化学硬化型(二液混合)等の樹脂を用いることができる。具体的にはエポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系、ポリアミド系、等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂が挙げられる。
【0094】
硬化性樹脂を用いて凹凸構造層を形成する場合、例えば、硬化性樹脂を基板に塗布した後、塗布した硬化性樹脂層に微細な凹凸パターンを有するモールドを押し付けつつ塗膜を硬化させることによって、硬化性樹脂層にモールドの凹凸パターンを転写することができる。硬化性樹脂は有機溶剤で希釈してから塗布してもよい。この場合に用いる有機溶剤としては硬化前の樹脂を溶解するものを選択して使用することができる。例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、などのケトン系溶剤等の公知のものから選択できる。硬化性樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm
2〜5J/cm
2の範囲内であることが好ましい。
【0095】
また、凹凸構造層の材料としてシランカップリング剤を用いてもよい。それにより、実施形態の凹凸パターン(凹凸構造)を有する基板を用いて有機EL素子を製造する場合、凹凸構造層とその上に形成される電極などの層との間の密着性を向上させることができ、有機EL素子の製造工程における洗浄工程や高温処理工程での耐性が向上する。凹凸構造層に用いられるシランカップリング剤は、その種類が特に制限されるものではないが、例えばRSiX
3(Rは、ビニル基、グリシドキシ基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる少なくとも1種を含む有機官能基であり、Xは、ハロゲン元素またはアルコキシル基である)で示される有機化合物を用いることができる。シランカップリング剤を塗布する方法としては例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法,カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。その後、各材料に応じて適正な条件で乾燥させることにより硬化した膜を得ることができる。例えば、100〜150℃で15〜90分間加熱乾燥してもよい。
【0096】
凹凸構造層の材料は、無機材料または硬化性樹脂材料に紫外線吸収材料を含有させたものであってもよい。紫外線吸収材料は、紫外線を吸収し光エネルギーを熱のような無害な形に変換することにより、膜の劣化を抑制する作用がある。紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。
【0097】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明の凹凸パターンを有するフィルム部材の製造方法及び製造装置並びにそれにより製造されたフィルム部材を用いた凹凸パターンを有する基板の製造方法は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で適宜改変することができる。また、本発明の製造方法は、上記で説明した実施形態の製造装置によって実行される範囲に限定されるものではなく、転写ロールを保護シートで被覆してフィルム基材に直接接触しないようにすることにより転写ロールの凹凸パターンを保護するのであれば、どのような装置を用いて実行してもよい。例えば、上記実施形態では、取り外しロール71及び装着ロール73を用いたが、単一のロールで保護シートの取り外しと装着を行ってもよい。また、本発明の製造装置は上記の実施形態の構成に限定されず、転写ロールを保護シートで被覆してフィルム基材に直接接触しないようにすることにより転写ロールの凹凸パターンを保護することができる装置構成であればよい。その限りにおいては、例えば搬送ロールの等の各種要素の配置が本願の図面に示された配置と異なっていてもよい。また、保護シートの脱装着に用いる部材がロール部材でなくてもよい。また、本発明の凹凸パターンを有するフィルム部材は、種々の用途に使用することができ、例えば、有機EL素子、マイクロレンズアレイ、ナノプリズムアレイ、光導波路、LEDなどの光学素子、レンズなどの光学部品、太陽電池、反射防止フィルム、半導体チップ、パターンドメディア、データストレージ、電子ペーパー、LSIなどの製造、製紙、食品製造、免疫分析チップ、細胞培養シートなどのバイオ分野等における用途で使用される部材にも適用することができる。