(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る均質化装置100について説明する。
【0010】
均質化装置100は、食品や医薬品等の原料を微細化する均質化を行う装置であり、装置内で用いられる作動流体として水を採用している。
【0011】
均質化装置100は、微小隙間11から原料を噴出することにより原料を均質化する均質化バルブ10と、微小隙間11の間隔を調整する微小隙間調整機構30と、を備える。
【0012】
均質化バルブ10は、微小隙間11へ原料を供給する原料供給路13が形成されたシート部材12と、シート部材12とともに微小隙間11を画定するバルブ部材14と、微小隙間11を通過した原料が衝突するブレーカリング15と、均質化された原料を排出する原料排出路17が形成されたハウジング16と、を備える。
【0013】
シート部材12はハウジング16に固定され、シート部材12には、原料供給路13が形成される。原料供給路13の一端には、図示しない原料昇圧装置と連通する原料流入ラインが接続される。図示しない原料昇圧装置によって昇圧された原料は、原料供給路13の一端から供給され他端から流出する。シート部材12から原料が流出する側には微小隙間11を画定するための端面12aが形成される。
【0014】
バルブ部材14は、シート部材12の端面12aに対抗して配置される隙間形成部14aと、ハウジング16に形成された摺動孔18に摺動自在に支持される摺動部14bと、を有する。隙間形成部14aのシート部材12側の端面14cとシート部材12の端面12aとにより微小隙間11が画定される。バルブ部材14は、ハウジング16に対して摺動する摺動部14bを有しているので、微小隙間11の間隔が変化する方向に移動可能である。
【0015】
シート部材12の端面12aとバルブ部材14の隙間形成部14aの端面14cは共に平面であり、微小隙間11は原料供給路13の軸方向に対して垂直に形成されている。なお、微小隙間11を画定する端面の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、原料供給路13の軸方向に対して端面が傾斜しているものや端面に凹凸があるものなど、端面同士が対抗して配置され、原料が通過する隙間が形成されればどのような形状でもよい。
【0016】
ブレーカリング15は、原料の微細化を促進するものであり、微小隙間11を通過した原料が衝突する位置に配置される。
【0017】
ハウジング16には、バルブ部材14の摺動部14bを支持する摺動孔18と、この摺動孔18と連通し、摺動孔18よりも大径のシリンダ室19が形成される。シリンダ室19内には伝達ピストン22aが摺動自在に配置されており、シリンダ室19は伝達ピストン22aによって圧力伝達室19aとスプリング室19bとに区画される。
【0018】
伝達ピストン22aには、先端側が摺動孔18内に摺動自在に挿入される伝達ロッド22bが結合される。伝達ロッド22bの先端は摺動孔18内でバルブ部材14の摺動部14bの端面に当接している。
【0019】
圧力伝達室19aには、微小隙間調整機構30で増圧された水圧が作用しており、この圧力は、伝達ピストン22a及び伝達ロッド22bを介してバルブ部材14に作用する。
【0020】
スプリング室19bは、ハウジング16に形成された呼吸孔21を通じて大気に開放されており、その内部には伝達ピストン22aを圧力伝達室19aの容積が減少する方向に付勢するスプリング23が配置されている。スプリング室19b内には呼吸孔21を通じて空気が自由に出入りするので、伝達ピストン22aが移動することによりスプリング室19bの容積が変化しても、スプリング室19b内の空気が伝達ピストン22aの動きを妨げることはない。
【0021】
本実施形態では、圧力伝達室19a内の水圧をバルブ部材14に伝達するために伝達ピストン22a及び伝達ロッド22bを設けている。これに代えて、伝達ピストン22a及び伝達ロッド22bを介さずに圧力伝達室19a内の水圧をバルブ部材14の摺動部14bの端面に直接作用させる構成としてもよい。その場合、スプリング室19b、スプリング23、呼吸孔21は設けられず、摺動孔18に連通する圧力伝達室19aのみが設けられ、圧力伝達室19a内の水圧が摺動孔18を通じてバルブ部材14の摺動部14bの端面に作用することになる。
【0022】
微小隙間調整機構30は、作動流体となる水を貯留する水タンク31と、加圧水を供給する加圧水供給源としての加圧ポンプ32と、加圧ポンプ32から供給される加圧水の圧力を調整する圧力調整弁43と、加圧水が供給されることで圧力伝達室19aに密閉された水を増圧する増圧シリンダ36と、増圧シリンダ36に対する加圧水の給排を制御する増圧制御弁34と、加圧ポンプ32から圧力伝達室19aへの加圧水の供給を制御する給水制御弁45と、圧力伝達室19aから水タンク31への水の排水を制御する排水制御弁47と、微小隙間11の間隔に関連する値を検出する検出器としてのバルブ部材位置センサ49と、バルブ部材位置センサ49の検出値に基づいて微小隙間11の間隔が予め定められた所定の間隔となるように増圧制御弁34を制御する制御装置48と、を備える。
【0023】
加圧ポンプ32は、吐出通路33を通じて増圧シリンダ36へ加圧水を供給する。加圧ポンプ32は、電動モータにより駆動される。これに代えて、水蒸気により駆動されるポンプやその他の媒体により駆動されるポンプを用いてもよい。
【0024】
圧力調整弁43は、吐出通路33から分岐した流路に配置され、加圧ポンプ32から供給される加圧水の圧力が所定の圧力に達した場合に、タンク通路42を通じて加圧水の一部を水タンク31へ戻す。
【0025】
増圧シリンダ36は、増圧室37と加圧水室38とが形成されたシリンダ部材39と、加圧水室38内に摺動自在に挿入され、加圧水室38を第1加圧水室38aと第2加圧水室38bとに仕切る増圧ピストン40aと、一端が増圧ピストン40aに結合され他端側が増圧室37内に摺動自在に挿入される増圧ロッド40bと、を備える。
【0026】
増圧室37は、均質化バルブ10のハウジング16内に形成された圧力伝達室19aと連通路41を通じて連通している。連通路41を通じて連通した形態に代えて、増圧室37と圧力伝達室19aとを一体的に形成してこれらを一つの圧力室とした形態としてもよい。
【0027】
増圧制御弁34は、吐出通路33を通じて加圧ポンプ32と連通する供給ポート、タンク通路42を通じて水タンク31と連通する排出ポート、第1給排通路35aを通じて第1加圧水室38aと連通する第1給排ポート、及び第2給排通路35bを通じて第2加圧水室38bと連通する第2給排ポート、の4ポートを有する。また、増圧制御弁34は、給排を遮断する中立位置34aと、増圧室37内の圧力を上昇させる方向に増圧ピストン40aを移動する第1位置34bと、増圧室37内の圧力を低下させる方向に増圧ピストン40aを移動する第2位置34cとの3位置を有する電磁弁である。
【0028】
給水制御弁45は、圧力伝達室19a、増圧室37及び連通路41からなる密閉空間と吐出通路33とを連通する給水流路44に設けられる。制御装置48により給水制御弁45が開位置に切り換えられると給水流路44を通じて密閉空間へ加圧水が供給される。
【0029】
排水制御弁47は、圧力伝達室19a、増圧室37及び連通路41からなる密閉空間と水タンク31とを連通する排水流路46に設けられる。制御装置48により排水制御弁47が開位置に切り換えられると密閉空間内の水が排水流路46を通じて水タンクへ戻る。
【0030】
圧力伝達室19a、増圧室37及び連通路41からなる密閉空間には、その内部圧力を検出する増圧圧力センサ50が取り付けられる。シリンダ部材39には、増圧ピストン40aの位置を検出する増圧ピストン位置センサ51が取り付けられる。増圧圧力センサ50及び増圧ピストン位置センサ51の検出値はそれぞれ制御装置48に入力される。
【0031】
バルブ部材位置センサ49は、均質化バルブ10のハウジング16に取り付けられる。バルブ部材位置センサ49は、ハウジング16に対するバルブ部材14の位置を検出するものであり、バルブ部材14の隙間形成部14aとハウジング16との間の距離を検出している。これに代えて、バルブ部材14の他の部分とハウジング16との間の距離を検出するセンサや、バルブ部材14とシート部材12との間の距離である微小隙間11の間隔を直接検出するセンサを採用してもよい。
【0032】
バルブ部材位置センサ49の検出値は制御装置48に入力され、制御装置48において、この検出値に基づいて微小隙間11の間隔が算出される。制御装置48は、算出された微小隙間11の間隔が予め定められた所定の間隔となるように増圧制御弁34を制御する。制御装置48は、均質化バルブ10に昇圧された原料を供給する、図示しない原料昇圧装置も制御している。
【0033】
均質化装置100内の摺動する部材には、原料や高圧水、増圧水の漏れや混合を防止するために、図示しないシール部材が設けられる。
【0034】
次に、
図1を参照して均質化装置100の動作について説明する。
【0035】
図示しない原料昇圧装置によって昇圧され、均質化バルブ10に供給された原料は、原料供給路13を通じて微小隙間11に導かれ、微小隙間11から噴出した原料は、ブレーカリング15に衝突する。この過程を経て微細化された原料は、原料排出路17を通じて、均質化バルブ10の外に排出され、図示しない原料回収タンクに回収される。
【0036】
次に、微小隙間調整機構30による微小隙間11の調整方法について説明する。
【0037】
制御装置48は、微小隙間11を調整する前に、増圧圧力センサ50および増圧ピストン位置センサ51の検出値に基づいて、圧力伝達室19a、増圧室37及び連通路41からなる密閉空間に十分な水が注入されているか否かを判断する。増圧圧力センサ50の検出値が所定の圧力以上であり、かつ、増圧ピストン位置センサ51により増圧ピストン40aの位置が所定の範囲内にあることが検出されれば、十分な水が注入されていると判断し、増圧圧力センサ50の検出値が所定の圧力未満であるか、または、増圧ピストン位置センサ51により増圧ピストン40aの位置が所定の範囲内にないことが検出されれば、十分な水が注入されていないと判断する。十分な水が注入されていないと判断された場合には、給水制御弁45を開位置に切り換え、密閉空間内に加圧水を補充する。なお、増圧圧力センサ50および増圧ピストン位置センサ51の検出値に関わらず、微小隙間11を調整する前に必ず給水制御弁45を開位置に切り換えて密閉空間内へ加圧水を補充するようにしてもよい。
【0038】
密閉空間内に十分な水が注入されていると判断された場合、制御装置48は、バルブ部材位置センサ49の検出値に基づいて、微小隙間11の間隔が予め定められた所定の間隔となるように増圧制御弁34を制御する。
【0039】
具体的には、バルブ部材位置センサ49の検出値から微小隙間11の間隔を算出し、算出された微小隙間11の間隔が所定の間隔よりも大きいと判定された場合、制御装置48は、加圧ポンプ32から供給される加圧水が第1加圧水室38aに供給され、第2加圧水室38b内の水が水タンク31へ戻るように増圧制御弁34の位置を第1位置34bに切り換える。
【0040】
第1加圧水室38aの圧力が第2加圧水室38bの圧力よりも高くなることで、増圧ピストン40a及び増圧ロッド40bは、増圧室37内に密閉された水を加圧する方向(
図1における左方向)に移動する。増圧室37の圧力が上昇すると、増圧室37と連通している圧力伝達室19a内の圧力も上昇するため、圧力伝達室19a内の圧力が作用する伝達ピストン22a及び伝達ロッド22bは、スプリング23の付勢力に抗してスプリング23を圧縮する方向(
図1における左方向)に移動する。
【0041】
伝達ロッド22bはバルブ部材14と当接しているので、伝達ピストン22a及び伝達ロッド22bが移動することによりバルブ部材14も同じ方向に移動する。この結果、バルブ部材14の端面14cとシート部材12の端面12aとで画定される微小隙間11の間隔は狭くなる。
【0042】
一方、算出された微小隙間11の間隔が所定の間隔よりも小さいと判定された場合、制御装置48は、第2加圧水室38bに加圧水が供給され、第1加圧水室38a内の水が水タンク31へ戻るように増圧制御弁34の位置を第2位置34cに切り換える。
【0043】
第2加圧水室38bの圧力が第1加圧水室38aの圧力よりも高くなることで、増圧ピストン40a及び増圧ロッド40bは、増圧室37内に密閉された水を減圧する方向(
図1における右方向)に移動する。増圧室37の圧力が下がると、増圧室37と連通している圧力伝達室19a内の圧力も下がるため、圧力伝達室19a内の圧力が作用する伝達ピストン22a及び伝達ロッド22bは、スプリング23の付勢力により圧力伝達室19aの容積を減少させる方向(
図1における右方向)に移動する。
【0044】
伝達ロッド22bとバルブ部材14とは当接しており、バルブ部材14の隙間形成部14aの端面14cには、原料の供給圧力が作用しているのでバルブ部材14は伝達ピストン22a及び伝達ロッド22bと同じ方向に移動する。この結果、バルブ部材14の端面14cとシート部材12の端面12aとで画定される微小隙間11の間隔は広がる。
【0045】
このようにして、制御装置48は、微小隙間11が所定の間隔となるように増圧制御弁34を制御する。増圧制御弁34の制御は、上述のように単に増圧制御弁34の位置を切り換える以外に、バルブ部材位置センサ49の検出値の大きさに応じて、増圧制御弁34を比例的に制御し、第1加圧水室38a及び第2加圧水室38bに流出入する加圧水の流量及び圧力を調節するようにしてもよい。また、所定の間隔は、制御装置48に予め記憶させておいてもよく、または、外部から入力してもよい。
【0046】
また、制御装置48は、均質化装置100による原料の均質化を終了した後、排水制御弁47を開位置に制御することにより、圧力伝達室19a、増圧室37及び連通路41からなる密閉空間内の水を水タンクへ戻す。この制御は、均質化の終了の都度ではなく、所定のメンテナンス期間毎に行ってもよい。
【0047】
本実施形態では、微小隙間11の間隔に関連する値を検出する検出器としてバルブ部材位置センサ49を用いているが、これに代えて、圧力伝達室19a、増圧室37及び連通路41からなる密閉空間内の圧力を検出する増圧圧力センサ50、均質化バルブ10の上流側の原料圧力と下流側の原料圧力の圧力差を検出する図示しない差圧センサ、均質化バルブ10に供給される原料の圧力を検出する図示しない原料供給圧力センサを用いてもよい。
【0048】
増圧圧力センサ50を用いる場合には、圧力伝達室19a、増圧室37及び連通路41からなる密閉空間内の圧力の増減に応じて伝達ピストン22aの受圧面に作用する力と、スプリング23の付勢力と、のバランスにより微小隙間11の間隔は変化することから、制御装置48にこれらの相関を示すマップを格納しておく。制御装置48は、増圧圧力センサ50の検出値に基づいて、微小隙間11の間隔をマップから求め、この間隔が予め定められた所定の間隔となるように増圧制御弁34を制御する。制御方法はこれに限定されず、増圧圧力センサ50の検出値が所定の目標値となるようにフィードバック制御を行うなど、目標値に収束させる公知の制御方法を用いてもよい。
【0049】
差圧センサを用いる場合には、微小隙間11の間隔が小さくなると原料の流路抵抗が増加するため、均質化バルブ10の上流側の原料圧力と下流側の原料圧力の圧力差は大きくなり、微小隙間11の間隔が大きくなると原料の流路抵抗が低下するため、均質化バルブ10の上流側の原料圧力と下流側の原料圧力の圧力差は小さくなることから、制御装置48にこれらの相関を示すマップを格納しておく。制御装置48は、差圧センサの検出値に基づいて、微小隙間11の間隔をマップから求め、この間隔が予め定められた所定の間隔となるように増圧制御弁34を制御する。制御方法はこれに限定されず、差圧センサの検出値が所定の目標値となるようにフィードバック制御を行うなど、目標値に収束させる公知の制御方法を用いてもよい。
【0050】
原料供給圧力センサを用いる場合には、微小隙間11の間隔が小さくなると原料の流路抵抗が増加するため、原料の供給圧力が上昇し、微小隙間11の間隔が大きくなると原料の流路抵抗が低下するため、原料の供給圧力が低下することから、制御装置48にこれらの相関を示すマップを格納しておく。制御装置48は、原料供給圧力センサの検出値に基づいて、微小隙間11の間隔をマップから求め、この間隔が予め定められた所定の間隔となるように増圧制御弁34を制御する。制御方法はこれに限定されず、原料供給圧力センサの検出値が所定の目標値となるようにフィードバック制御を行うなど、目標値に収束させる公知の制御方法を用いてもよい。
【0051】
微小隙間11の間隔に関連する値を検出する検出器としては、微小隙間11の間隔に関連する値を検出するものであればどのようなセンサでもよく、上述のセンサに限定されるものではない。また、これらのセンサを複数組み合わせて用いてもよく、その場合、微小隙間11の間隔を精度よく求めることができる。
【0052】
以上の実施の形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0053】
作動流体として水圧を用いて均質化バルブ10の微小隙間11の調整を行っているため、均質化装置100をクリーンルーム内で使用した場合、作動流体の漏れや飛散が生じても清掃や排水が容易であり、高い衛生性を保つことができる。
【0054】
また、圧縮性の影響の少ない水を作動流体として微小隙間11の間隔を制御しているので、バルブ部材14の端面14cに作用する原料供給圧力が変化した場合でも微小隙間11の間隔が変動することがない。このため、安定した原料の均質化を実現することができる。
【0055】
また、微小隙間11を調整する前に、圧力伝達室19a、増圧室37、及び連通路41からなる密閉空間内の圧力に応じて、密閉空間内へ加圧水を補充し、均質化装置100による原料の均質化を終了した後、密閉空間内の水を排水するので、注水及び排水作業が不要になるなどメンテナンスを簡素化することができる。
【0056】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。