特許第6209458号(P6209458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209458
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】移動局及び移動通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/34 20090101AFI20170925BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20170925BHJP
【FI】
   H04W52/34
   H04W72/04 111
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-18456(P2014-18456)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-146510(P2015-146510A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100117064
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 市太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169797
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 桂
(72)【発明者】
【氏名】梅田 大將
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀俊
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−517747(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/094573(WO,A2)
【文献】 特開2007−110210(JP,A)
【文献】 Qualcomm Incorporated,Pcmax Tolerance for CA[online], 3GPP TSG-RAN WG4♯64bis R4-125826,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_64bis/Docs/R4-125826.zip>,2012年10月
【文献】 NTT DOCOMO,Pcmax on 2UL inter-band CA[online], 3GPP TSG-RAN WG4♯69 R4-136359,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_69/Docs/R4-136359.zip>,2013年11月
【文献】 Huawei,TP for TR 36.860 v0.5.0: UE configured transmit power tolerance for 2UL inter-band CA[online], 3GPP TSG RAN WG4 adhoc_TSGR4_69_UE_RF_AH R4-69AH-0043,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_AHs/TSGR4_69_UE_RF_AH/Docs/R4-69AH-0043.zip>,2014年 1月
【文献】 Huawei,Discussion on UE configured transmit power for 2UL inter-band CA[online], 3GPP TSG-RAN WG4♯68 R4-133344,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_68/Docs/R4-133344.zip>,2013年 8月
【文献】 Qualcomm Incorporated,PCMAX tolerance for UL inter-band CA CMAX[online], 3GPP TSG-RAN WG4♯69 R4-136250,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_69/Docs/R4-136250.zip>,2013年11月
【文献】 NTT DOCOMO, INC.,Pcmax for UL-MIMO and 2UL inter-band CA[online], 3GPP TSG-RAN WG4♯70 R4-140673,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_70/Docs/R4-140673.zip>,2014年 2月 6日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04L 27/26
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上りリンクにおいて複数のコンポーネントキャリアを用いて通信を行うことができる移動局であって、
前記上りリンクにおける送信電力を制御するように構成されている送信電力制御部を具備しており、
前記移動局が、前記上りリンクにおいて第1コンポーネントキャリア及び第2コンポーネントキャリアを用いて通信を行う場合に、前記送信電力制御部は、該上りリンクにおける送信電力の上限値を「A」とし、該第1コンポーネントキャリアにおける最大許容送信電力値を「PCMAX1」とし、該第2コンポーネントキャリアにおける最大許容送信電力値を「PCMAX2」とし、該「PCMAX1」に対応する送信電力の許容変動値を「Δ」とし、該「PCMAX2」に対応する送信電力の許容変動値を「Δ」とした際に、(PCMAX1+Δ)に基づく値と(PCMAX2+Δ2)に基づく値との和の常用対数を求め、該上限値「A」と該常用対数の所定整数倍の値との差分を、該許容変動値のダウンシフト量「Δshift」として算出するように構成されていることを特徴とする移動局。
【請求項2】
記送信電力制御部は
【数1】
として規定されているアルゴリズムに基づいて、前記許容変動値のダウンシフト量「Δshift」を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の移動局。
【請求項3】
前記送信電力制御部は、ネットワークによって前記上限値「A」が指定された際、或いは、他の目的で該上限値が予め設定されている際に、前記許容変動値のダウンシフト量「Δshiftを算出するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動局。
【請求項4】
移動局が、上りリンクにおいて複数のコンポーネントキャリアを用いて通信を行う移動通信方法であって、
前記移動局が、上りリンクにおける送信電力を制御する工程を有しており、
前記移動局が、前記上りリンクにおいて第1コンポーネントキャリア及び第2コンポーネントキャリアを用いて通信を行う場合に、前記工程において、移動局は、該上りリンクにおける送信電力の上限値を「A」とし、該第1コンポーネントキャリアにおける最大許容送信電力値を「PCMAX1」とし、該第2コンポーネントキャリアにおける最大許容送信電力値を「PCMAX2」とし、該「PCMAX1」に対応する送信電力の許容変動値を「Δ」とし、該「PCMAX2」に対応する送信電力の許容変動値を「Δ」とした際に、(PCMAX1+Δ)に基づく値と(PCMAX2+Δ2)に基づく値との和の常用対数を求め、該上限値「A」と該常用対数の所定整数倍の値との差分を、該許容変動値のダウンシフト量「Δshift」として算出することを特徴とする移動通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局及び移動通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のLTE(Long Term Evolution)方式では、移動局UEが、「UL-MIMO(Uplink-Multi-Input and Multi-Output)」や「2UL CA(Carrier Aggregation)」等のように、2つのCC(Component Carrier、コンポーネントキャリア)#1/CC#2を用いて通信を行う場合、ネットワークからの指示によって、CC#1/CC#2における最大許容送信電力値PCMAX1/PCMAX2を設定するように構成されている。
【0003】
Release-8のLTE方式における「PCMAX」の規定では、かかる最大許容送信電力値PCMAXが小さくなるほど、最大許容送信電力値PCMAXに対応するトレランス(送信電力の許容変動値)Δが大きくなるように規定されている。
【0004】
ここで、移動局UEが、2つのCC#1/CC#2を用いて通信を行う際に、CC#1/CC#2の各々が、かかるRelease-8のLTE方式における「PCMAX」の規定に従うと、上りリンクにおける送信電力が、干渉の影響を回避するために規定されている上りリンクにおける送信電力の上限値Aを超えてしまうケースが出てくる。かかるケースでは、上述のトレランスΔを低減することが必要になる。
【0005】
例えば、図8に示すように、CC#1/CC#2の各々が、Release-8のLTE方式における「PCMAX」の規定に従う場合、ある送信条件の下では、上りリンクにおける送信電力の上限値A(図8の例では、25dBm)を超えてしまうケースが出てくる。
【0006】
かかるケースを回避するために、最大許容送信電力値PCMAXに対応するトレランスΔ自体を低減させることによって、上りリンクにおける送信電力を上りリンクにおける送信電力の上限値Aを超えないようにするシミュレーション計算方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP寄書R4-125826
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のシミュレーション計算方法では、必要以上に、最大許容送信電力値PCMAXに対応するトレランスΔ自体を低減してしまい、ネットワーク品質や移動局UEのバッテリの持ちにインパクトを与えてしまう可能性があるという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、上りリンクにおける送信電力を上りリンクにおける送信電力の上限値Aを超えることなく、最大許容送信電力値PCMAXに対応するトレランスのダウンシフト量Δshiftを必要最小限に抑えることができる移動局及び移動通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴は、上りリンクにおいて複数のコンポーネントキャリアを用いて通信を行うことができる移動局であって、前記上りリンクにおける送信電力を制御するように構成されている送信電力制御部を具備しており、前記送信電力制御部は、前記上りリンクにおける送信電力の上限値、前記コンポーネントキャリアの各々における最大許容送信電力値及び該最大許容送信電力値の各々に対応する送信電力の許容変動値を用いる所定アルゴリズムに基づいて、該許容変動値のダウンシフト量を算出するように構成されていることを要旨とする。
【0011】
本発明の第2の特徴は、移動局が、上りリンクにおいて複数のコンポーネントキャリアを用いて通信を行う移動通信方法であって、前記移動局が、上りリンクにおける送信電力を制御する工程を有しており、前記工程において、前記移動局は、前記上りリンクにおける送信電力の上限値、前記コンポーネントキャリアの各々における最大許容送信電力値及び該最大許容送信電力値の各々に対応する送信電力の許容変動値を用いる所定アルゴリズムに基づいて、前記許容変動値のダウンシフト量を算出することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、上りリンクにおける送信電力を上りリンクにおける送信電力の上限値Aを超えることなく、最大許容送信電力値PCMAXに対応するトレランスのダウンシフト量Δshiftを必要最小限に抑えることができる移動局及び移動通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの全体構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る移動局の機能ブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る移動局によって行われる送信電力の制御方法について説明するための図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る移動局によって行われる送信電力の制御方法について説明するための図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る移動局によって行われる送信電力の制御方法について説明するための図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の第1の実施形態に係る移動局によって行われる送信電力の制御方法の効果について説明するための図である。
図8】従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システム)
図1乃至図7を参照して、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムについて説明する。
【0015】
本実施形態に係る移動通信システムは、LTE方式(或いは、LTE-Advanced方式)の移動通信システムであって、図1に示すように、無線基地局eNBと、移動局UEとを具備している。
【0016】
本実施形態に係る移動通信システムでは、移動局UEは、CC#1及びCC#2を用いて、「UL-MIMO」や「2UL CA」等の通信を行うことができるように構成されている。
【0017】
なお、本実施形態に係る移動通信システムでは、移動局UEは、複数のCC(例えば、N個のCC)を用いて通信を行うことができるように構成されているが、説明の便宜上、本明細書では、移動局UEが、2個のCCを用いて通信を行う場合を例に挙げて説明することとする。
【0018】
ここで、本実施形態に係る移動通信システムにおいて、CC#1及びCC#2は、同一の無線基地局eNB配下のCCであってもよいし、異なる無線基地局eNB配下のCCであってもよい。
【0019】
図2に示すように、本実施形態にかかる移動局UEは、受信部11と、送信電力制御部12と、送信部13とを具備している。
【0020】
受信部11は、無線基地局eNBから各種信号を受信するように構成されており、送信部13は、無線基地局eNBに対して各種信号を送信するように構成されている。
【0021】
例えば、受信部11は、無線基地局eNBから、上りリンクにおける送信電力の上限値Aを指定する制御信号を受信するように構成されている。
【0022】
また、送信部13は、無線基地局eNBに対して、送信電力制御部12によって制御された送信電力で、データ信号を送信するように構成されている。
【0023】
送信電力制御部12は、上りリンクにおける送信電力を制御するように構成されている。
【0024】
具体的には、移動局UEが、上りリンクにおいて、CC#1及びCC#2を用いて通信を行っている場合、送信電力制御部12は、所定アルゴリズムに基づいて、CC#1/CC#2の各々に対応する最大許容送信電力値PCMAX1/PCMAX2の各々に対応するトレランスのダウンシフト量Δshiftを算出し、かかるトレランスのダウンシフト量Δshiftに基づいて、上りリンクにおける送信電力を決定するように構成されている。
【0025】
ここで、所定アルゴリズムは、上りリンクにおける送信電力の上限値A、CC#1/CC#2の各々における最大許容送信電力値PCMAX1/PCMAX2及び最大許容送信電力値PCMAX1/PCMAX2の各々に対応するトレランスΔを用いるように構成されている。
【0026】
例えば、移動局UEが、上りリンクにおいてCC#1/CC#2を用いて通信を行う場合に、送信電力制御部12は、図3(a)に示す式によって規定されている所定アルゴリズムに基づいて、上述のトレランスのダウンシフト量Δshiftを算出するように構成されていてもよい。
【0027】
ここで、「A」は、干渉の影響を回避するためにネットワーク(無線基地局eNB)によって指定されている上りリンクにおける送信電力の上限値A、或いは、他の目的で移動局UEに予め設定された上りリンクにおける送信電力の上限値Aであり、「PCMAX1」は、CC#1における最大許容送信電力値であり、「PCMAX2」は、CC#2における最大許容送信電力値である。
【0028】
また、「Δ」は、「PCMAX1」に対応するトレランス(送信電力の許容変動値)であり、「Δ」は、「PCMAX2」に対応するトレランスであり、「Δshift」は、上りリンクにおけるトレランスのダウンシフト量である。
【0029】
ここで、図3(b)に、Release-8のLTE方式で規定されている最大許容送信電力値PCMAXとトレランスΔとの関係を示す。
【0030】
なお、送信電力制御部12は、ネットワーク(無線基地局eNB)によって上りリンクにおける送信電力の上限値Aが指定された際、或いは、他の目的で上りリンクにおける送信電力の上限値Aが移動局UEに予め設定されている際に、上述のトレランスのダウンシフト量Δshiftを算出するように構成されていてもよい。かかる場合、上述の所定アルゴリズムは、予め移動局UEのメモリに登録されていてもよい。
【0031】
或いは、送信電力制御部12は、移動局UEの設計時に、所定アルゴリズムに基づいて、上述のトレランスのダウンシフト量Δshiftを算出するように構成されていてもよい。
【0032】
或いは、送信電力制御部12は、メモリに所定アルゴリズムが登録される際に、かかる所定アルゴリズムに基づいて、上述のトレランスのダウンシフト量Δshiftを算出するように構成されていてもよい。
【0033】
ここで、図4を参照して、移動局UEがCC#1及びCC#2を用いて「UL-MIMO」を行うケースにおける送信電力制御部12による送信電力の制御方法(すなわち、トレランスのダウンシフト量Δshiftの算出方法)の一例について説明する。
【0034】
図4に示すように、かかるケースでは、CC#1及びCC#2は、同一の最大許容送信電力値PCMAX1/PCMAX2図4の例では、19.5dBm)となるように制御される。
【0035】
ここで、Release-8のLTE方式における「PCMAX」の規定に従うと、最大許容送信電力値PCMAX1と最大許容送信電力値PCMAX2との合計値(図4の例では、22.5dBm)及びトレランスΔ(図4の例では、上限値=+3.5dB/下限値=−3.5dB)を考慮すると、送信電力の上限値A(図4の例では、25dBm)を超える上りリンクにおける送信電力が許容されてしまうことになる。
【0036】
したがって、送信電力制御部12が、所定アルゴリズムに基づいて、トレランスのダウンシフト量Δshift図4の例では、0.5dB)を算出し、かかるトレランスのダウンシフト量ΔshiftだけトレランスΔの上限値及び下限値をダウンシフトさせることで(図4の例では、上限値=+3.0dB/下限値=−4.0dB)、送信電力の上限値A(図4の例では、25dBm)以下に、上りリンクにおける送信電力を収めることができる。
【0037】
次に、図5を参照して、移動局UEがCC#1及びCC#2を用いて「2UL CA」を行うケースにおける送信電力制御部12による送信電力の制御方法(すなわち、トレランスのダウンシフト量Δshiftの算出方法)の一例について説明する。
【0038】
かかるケースでは、CC#1及びCC#2は、同一の最大許容送信電力値PCMAX1/PCMAX2となるように制御されていてもよいし、図5に示すように、異なる最大許容送信電力値PCMAX1図5の例では、16dBm)/PCMAX2図5の例では、22dBm)となるように制御されていてもよい。
【0039】
ここで、Release-8のLTE方式における「PCMAX」の規定に従うと、最大許容送信電力値PCMAX1と最大許容送信電力値PCMAX2との合計値(図5の例では、22.97dBm)及びトレランスΔ(図5の例では、上限値=+2.79dB/下限値=−2.46dB)を考慮すると、送信電力の上限値A(図5の例では、25dBm)を超える上りリンクにおける送信電力が許容されてしまうことになる。
【0040】
したがって、送信電力制御部12が、所定アルゴリズムに基づいて、トレランスのダウンシフト量Δshift図5の例では、0.76dB)を算出し、かかるトレランスのダウンシフト量ΔshiftだけトレランスΔの上限値及び下限値をダウンシフトさせることで(図5の例では、上限値=+2.03dB/下限値=−3.22dB)、送信電力の上限値A(図5の例では、25dBm)以下に、上りリンクにおける送信電力を収めることができる。
【0041】
以下、図6を参照して、本実施形態に係る移動通信システムの具体的な動作の一例について説明する。
【0042】
図6に示すように、移動局UEは、ステップS101において、ネットワーク(無線基地局eNB)から送信電力の上限値Aが指定されると、ステップS102において、上りリンクにおける送信電力を変更する必要があるか否かについて判定する。
【0043】
上りリンクにおける送信電力を変更する必要があると判定された場合には、本動作はステップS103に進み、上りリンクにおける送信電力を変更する必要がないと判定された場合には、本動作はステップS104に進む。
【0044】
ステップS103において、移動局UEは、トレランスのダウンシフト量Δshiftを算出し、かかるトレランスのダウンシフト量Δshiftに基づいて、上りリンクにおける送信電力を設定する。
【0045】
一方、ステップS104において、移動局UEは、通信開始時に設定した送信電力を維持する。
【0046】
ステップS105において、移動局UEは、現在設定されている送信電力で、「UL-MIMO」や「2UL CA」等の通信を行う。
【0047】
ステップS106において、移動局UEは、「UL-MIMO」や「2UL CA」等の通信を継続するか否かについて判定する。
【0048】
「UL-MIMO」や「2UL CA」等の通信を継続すると判定された場合、本動作はステップS102に戻り、「UL-MIMO」や「2UL CA」等の通信を継続しないと判定された場合、本動作はステップS107に進む。
【0049】
ステップS107において、移動局UEは、「UL-MIMO」や「2UL CA」等の通信を終了する。
【0050】
図7に、従来のLTE方式を用いた場合のトレランスΔの下限値の変化(点線)及び本実施形態に係る移動通信システムにおける方式を用いた場合のトレランスのダウンシフト量Δshiftの変化(実線)を示す。
【0051】
図7に示すように、従来のLTE方式を用いた場合には、必要以上に、トレランスの下限値を下げてしまっているのに対して、本実施形態に係る移動通信システムにおける方式を用いた場合には、トレランスの下限値のダウンシフトを必要最小限に抑えることができる。
【0052】
以上に述べた本実施形態の特徴は、以下のように表現されていてもよい。
【0053】
本実施形態の第1の特徴は 上りリンクにおいてCC#1/CC#2(コンポーネントキャリア)を用いて通信を行うことができる移動局UEであって、上りリンクにおける送信電力を制御するように構成されている送信電力制御部12を具備しており、送信電力制御部12は、上りリンクにおける送信電力の上限値A、CC#1/CC#2の各々における最大許容送信電力値PCMAX1/PCMAX2及び最大許容送信電力値PCMAX1/PCMAX2の各々に対応するトレランス(許容変動値)Δを用いる所定アルゴリズムに基づいて、かかるトレランスのダウンシフト量Δshiftを算出するように構成されていることを要旨とする。
【0054】
かかる特徴によれば、移動局UEの上りリンクにおける送信電力が、干渉の影響を回避する等のためにネットワークから指定された送信電力の上限値A、或いは、他の目的で移動局UEに予め設定された上りリンクにおける送信電力の上限値Aを超えることなく、トレランスΔの下限値のダウンシフトを最小限に抑えることができる。
【0055】
その結果、干渉の影響を回避しつつ、ネットワーク品質や移動局UEのバッテリの持ちに対するインパクトを最小限に抑えることができる。
【0056】
本実施形態の第1の特徴において、移動局UEが、上りリンクにおいてCC#1/CC#2を用いて通信を行う場合に、送信電力制御部12は、
【数X】
として規定されている所定アルゴリズムに基づいて、上述のトレランスのダウンシフト量Δshiftを算出するように構成されていてもよい。
【0057】
かかる特徴によれば、移動局UEが、数式によって規定されている所定アルゴリズムを用いることで、図7に示すように、効率的に、最適なトレランスのダウンシフト量Δshiftを算出することができる。
【0058】
本実施形態の第1の特徴において、送信電力制御部12は、ネットワークによって、上述の上限値Aが指定された際、或いは、他の目的で上述の上限値Aが移動局UEに予め設定されている際に、上述のトレランスのダウンシフト量Δshiftを算出するように構成されていてもよい。
【0059】
かかる特徴によれば、移動局UEは、必要に応じて、上述のトレランスのダウンシフト量Δshiftを算出することによって、事前にトレランスのダウンシフト量Δshiftを登録する場合と比べて、メモリのサイズを小さくすることができる。
【0060】
本実施形態の第2の特徴は、移動局UEが、上りリンクにおいてCC#1及びCC#2を用いて通信を行う移動通信方法であって、移動局UEが、上りリンクにおける送信電力を制御する工程を有しており、かかる工程において、移動局UEは、上りリンクにおける送信電力の上限値A、CC#1/CC#2の各々における最大許容送信電力値PCMAX1/PCMAX2及び最大許容送信電力値PCMAX1/PCMAX2の各々に対応する送信電力の許容変動値Δを用いる所定アルゴリズムに基づいて、許容変動値のダウンシフト量Δshiftを算出することを要旨とする。
【0061】
なお、上述の移動局UE及び無線基地局eNBの動作は、ハードウェアによって実施されてもよいし、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールによって実施されてもよいし、両者の組み合わせによって実施されてもよい。
【0062】
ソフトウェアモジュールは、RAM(Random Access Memory)や、フラッシュメモリや、ROM(Read Only Memory)や、EPROM(Erasable Programmable ROM)や、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)や、レジスタや、ハードディスクや、リムーバブルディスクや、CD-ROMといった任意形式の記憶媒体内に設けられていてもよい。
【0063】
かかる記憶媒体は、プロセッサが当該記憶媒体に情報を読み書きできるように、当該プロセッサに接続されている。また、かかる記憶媒体は、プロセッサに集積されていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ASIC内に設けられていてもよい。かかるASICは、移動局UE及び無線基地局eNB内に設けられていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ディスクリートコンポーネントとして移動局UE及び無線基地局eNB内に設けられていてもよい。
【0064】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0065】
eNB…無線基地局
UE…移動局
11…受信部
12…送信電力制御部
13…送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8