(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示された流量制御バルブでは、弁開度θと差圧ΔPが変わったときの流量係数Cvを低差圧時の特性テーブルや高差圧低開度時の特性テーブルから求めることで計測流量の信頼性を高めることができるが、管路内を流れる流体を液体(非圧縮性流体)とした場合、液体の温度が大きく変わると、液体の動粘性係数(動粘度)が変わることから、算出される流量と実際の流量との差異が大きくなってしまうため、精度良く流量計測することが困難となる。
【0008】
なお、特許文献2には、流体の温度を検出して制御流量を補正するようにしたディジタル弁制御装置が示されている。このディジタル弁制御装置では、修正レイノルズ数Rm=k・v・A/ν(k:弁の変位で変わる変数、v:流体の流速、ν:動粘度、A:弁の開口面積)と流量係数Cvとの関係は、弁開度によらず同一であるとしている。
【0009】
しかし、実際にはレイノルズ数の変化に対する流れの様相の変化は、必ずしも弁開度によらず同一であるとは限らない。このため、修正レイノルズ数Rmと流量係数Cvとの関係がテーブルで定義した関係と異なる部分があると、その部分は流量計測の誤差となる。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高精度で流体(液体)の流量を測定することが可能な流量測定装置を提供することにある。また、高精度で流体(液体)の流量を測定することが可能な流量測定装置を内蔵した流量制御バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために本発明は、測定対象の流体を液体とし、弁体の開度調整によって制御される流体の流量を測定する流量測定装置において、弁体の開度と流量係数との関係を示す流量係数テーブルを記憶する流量係数テーブル記憶部と、流量係数テーブルより弁体の現在の開度に応じた流量係数を現在の流量係数として取得する流量係数取得部と、弁体の上下流間の現在の差圧と流量係数テーブルより取得された現在の流量係数とから流体の流量を仮流量として求める流量演算部と、流体の温度と流体の動粘度との関係を示す動粘度テーブルを記憶する動粘度テーブル記憶部と、弁体の開度毎に作成された流量補正係数とこの流量補正係数に対応する流量補正係数決定値との関係を示す流量補正テーブルを記憶する流量補正テーブル記憶部と、動粘度テーブルより流体の現在の温度に応じた動粘度を現在の動粘度として取得する動粘度取得部と、弁体の上下流間の現在の差圧と動粘度テーブルより取得された現在の動粘度とを含む情報から現在の流量補正係数決定値を求める流量補正係数決定値算出部と、流量補正テーブルより弁体の現在の開度および流量補正係数決定算出部によって求められた現在の流量補正係数決定値に応じた流量補正係数を取得する流量補正係数取得部と、流量演算部によって求められた仮流量をこの仮流量に流量補正係数取得部によって取得された流量補正係数を乗じることによって補正して補正流量とする流量補正部とを備えることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
この発明によれば、弁体の現在の開度θに応じた流量係数Cvが現在の流量係数として流量係数テーブルより取得され、弁体の上下流間の現在の差圧ΔPと流量係数テーブルより取得された現在の流量係数Cvとから流体の仮流量Q’が求められる。また、流体の現在の温度Tに応じた動粘度νが現在の動粘度として動粘度テーブルより取得され、弁体の上下流間の現在の差圧と動粘度テーブルより取得された現在の動粘度とを含む情報から現在の流量補正係数決定値が求められ、弁体の現在の開度θおよび求められた現在の流量補正係数決定値に応じた流量補正係数F
Rが流量補正テーブルより取得される。そして、流量補正テーブルより取得された流量補正係数F
Rによって仮流量Q’が補正されて、補正流量Q(Q=F
R・Q’)とされる。
【0013】
なお、本発明において、流体の温度と流体の密度比との関係を示す密度比テーブルを記憶する密度比テーブル記憶部と、密度比テーブルより流体の現在の温度に応じた密度比を現在の密度比として取得する密度比取得部とを設け、流量演算部において、弁体の上下流間の現在の差圧と、流量係数テーブルより取得された現在の流量係数と、密度比テーブルより取得された現在の密度比とから流体の流量を仮流量として求めるようにし、流量補正係数決定値算出部において、弁体の上下流間の現在の差圧と、密度比テーブルより取得された現在の密度比と、動粘度テーブルより取得された現在の動粘度とを含む情報から現在の流量補正係数決定値を求めるようにしてもよい(請求項2)。
【0014】
請求項2に係る発明では、弁体の現在の開度θに応じた流量係数Cvが現在の流量係数として流量係数テーブルより取得され、流体の現在の温度Tに応じた密度比ρ
1/ρ
0(ρ
1:流体温度における流体の密度、ρ
0:基準温度における流体の密度)が現在の密度比として密度比テーブルより取得され、弁体の上下流間の現在の差圧ΔPと流量係数テーブルより取得された現在の流量係数Cvと密度比テーブルより取得された現在の密度比ρ
1/ρ
0とから流体の仮流量Q’が求められる。また、流体の現在の温度Tに応じた動粘度νが現在の動粘度として動粘度テーブルより取得され、弁体の上下流間の現在の差圧と、密度比テーブルより取得された現在の密度比と、動粘度テーブルより取得された現在の動粘度とを含む情報から現在の流量補正係数決定値が求められ、弁体の現在の開度θおよび求められた現在の流量補正係数決定値に応じた流量補正係数F
Rが流量補正テーブルより取得される。そして、流量補正テーブルより取得された流量補正係数F
Rによって仮流量Q’が補正されて、補正流量Q(Q=F
R・Q’)とされる。
【0015】
本発明の一形態として、例えば、流体の仮流量Q’と流体の動粘度νとの比Q’/νを流量補正係数決定値fとする流量補正テーブルを記憶するようにし、流量演算部によって求められた仮流量Q’と動粘度テーブルより取得した現在の動粘度νとの比Q’/νを現在の流量補正係数決定値fとして求め、弁体の現在の開度θおよび求めた現在の流量補正係数決定値f=Q’/νに応じた流量補正係数F
Rを流量補正テーブルより取得するようにする。そして、流量演算部によって求められた仮流量Q’を流量補正テーブルより取得した流量補正係数F
Rによって補正して、補正流量Q(Q=F
R・Q’)とする(請求項7)。
【0016】
本発明において、仮流量Q’を下記(1)式によって求めるようにした場合(請求項3)、この仮流量Q’は現在の差圧ΔPを含む情報であり、現在の流量補正係数決定値f=Q’/νは現在の差圧ΔPと現在の動粘度νとを含む情報から求められていると言える。
Q’=N・Cv・(ΔP)
1/2 ・・・・(1)
但し、ΔPは弁体の上下流の間の差圧、Cvは流量係数、Nは数値定数。
【0017】
本発明において、仮流量Q’を下記(2)式によって求めるようにした場合(請求項4)、この仮流量Q’は現在の差圧ΔPと現在の密度比ρ
1/ρ
0とを含む情報であり、現在の流量補正係数決定値f=Q’/νは現在の差圧ΔPと現在の密度比ρ
1/ρ
0と現在の動粘度νとを含む情報から求められていると言える。
Q’=N・Cv・(ΔP/(ρ
1/ρ
0))
1/2 ・・・・(2)
但し、ΔPは弁体の上下流の間の差圧、Cvは流量係数、ρ
1/ρ
0は流体の密度比(ρ
1:流体温度における流体の密度、ρ
0:基準温度における流体の密度)、Nは数値定数。
【0018】
本発明において、流量補正係数決定値fをQ’/νとする場合、補正流量Qをそのまま計測流量として出力するようにしてもよいが、補正流量Qを仮流量Q’に置き換えて、流量動粘度比算出部における流量補正係数決定値f=Q’/νの算出、流量補正係数取得部における流量補正係数F
Rの取得、流量補正部における流量演算部で求められた仮流量Q’に対する補正を、ブラシュアップ処理として繰り返させるようにしてもよい(請求項8)。この場合、例えば、流量補正部における仮流量Q’の補正回数が所定回数に達するまでブラシュアップ処理を繰り返させるようにしたり(請求項9)、流量補正部における前回の補正流量Q(Q
BF)と今回の補正流量(Q
AF)との差が所定値以下となるまでブラシュアップ処理を繰り返させるようしたり(請求項10)するなどの方法が考えられる。
【0019】
また、本発明において、下記(3)式で表される値fを流量補正係数決定値とする流量補正テーブルを記憶するようにし、弁体の上下流間の現在の差圧ΔPと、動粘度テーブルより取得された現在の動粘度νとから、下記(3)式で表される値fとして現在の流量補正係数決定値を求め、弁体の現在の開度θおよび求めた現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/νに応じた流量補正係数F
Rを流量補正テーブルより取得するようにし、流量演算部によって求められた仮流量Q’を流量補正テーブルより取得した流量補正係数F
Rによって補正して補正流量Q(Q=F
R・Q’)とするようにしてもよい(請求項5)。
f=(ΔP)
1/2/ν ・・・・(3)
但し、ΔPは弁体の上下流の間の差圧、νは流体の動粘度。
【0020】
また、本発明において、下記(4)式で表される値fを流量補正係数決定値とする流量補正テーブルを記憶するようにし、弁体の上下流間の現在の差圧ΔPと、密度比テーブルより取得された現在の密度比ρ
1/ρ
0と、動粘度テーブルより取得された現在の動粘度νとから、下記(4)式で表される値fとして現在の流量補正係数決定値を求め、弁体の現在の開度θおよび求めた現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/(ν(ρ
1/ρ
0)
1/2)に応じた流量補正係数F
Rを流量補正テーブルより取得するようにし、流量演算部によって求められた仮流量Q’を流量補正テーブルより取得した流量補正係数F
Rによって補正して補正流量Q(Q=F
R・Q’)とするようにしてもよい(請求項6)。
f=(ΔP)
1/2/(ν(ρ
1/ρ
0)
1/2) ・・・・(4)
但し、ΔPは弁体の上下流の間の差圧、νは流体の動粘度、ρ
1/ρ
0は流体の密度比(ρ
1:流体温度における流体の密度、ρ
0:基準温度における流体の密度)。
【0021】
また、本発明の流量測定装置は、流量制御バルブに内蔵してもよいし、流量制御バルブに接続してもよい。本願の請求項11に係る発明は、請求項1〜請求項10に係る発明の流量測定装置を流量制御バルブに内蔵するようにしたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、弁体の現在の開度に応じた流量係数を現在の流量係数として流量係数テーブルより取得し、弁体の上下流間の現在の差圧と、流量係数テーブルより取得した現在の流量係数とから流体の流量を仮流量として求め、流体の現在の温度に応じた動粘度を現在の動粘度として動粘度テーブルより取得し、弁体の上下流間の現在の差圧と、動粘度テーブルより取得された現在の動粘度とを含む情報から現在の流量補正係数決定値を求め、弁体の現在の開度および求められた現在の流量補正係数決定値に応じた流量補正係数を流量補正テーブルより取得し、弁体の上下流間の現在の差圧と現在の流量係数とから求めた仮流量を取得した流量補正係数を乗じて補正流量とするようにしたので、流体の現在の温度に応じた動粘度を用い、また弁体の現在の開度と現在の流量補正性係数決定値(Q’/νや(ΔP)
1/2/νなど)とから求められる流量補正係数を用い、高精度で流体(液体)の流量を測定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態において、測定対象の流体は液体であり、「流体」という言葉は全て液体を意味している。
【0025】
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係る流量測定装置を内蔵した流量制御バルブの一実施の形態の概略を示す図である。同図において、100は流量制御バルブであり、弁本体1と、この弁本体1に取り付けられたアクチュエータ2とで構成されている。
【0026】
弁本体1は、流体流路を形成する管路1−1と、この管路1−1内を流れる流体の流量を規制する弁体1−2とを備えており、弁体1−2に対してはその上下流間の差圧ΔPを検出する差圧センサS1が設けられている。また、弁体1−2の上流側には管路1−1内を流れる流体の温度Tを検出する温度センサS2が設けられている。
【0027】
アクチュエータ2は、CPU2−1と、メモリ2−2と、表示部2−3と、モータ2−4とを備えており、モータ2−4の駆動軸は弁体1−2に連結されている。モータ2−4の駆動軸と弁体1−2との連結部には、弁体1−2の開度θを検出する開度センサS3が設けられている。
【0028】
アクチュエータ2のCPU2−1には、差圧センサS1が検出する弁体1−2の上下流間の差圧ΔP、温度センサS2が検出する管路1−1内を流れる流体の温度T、開度センサS3が検出する弁体1−2の開度θ、上位装置からの設定流量Qspが与えられる。
【0029】
アクチュエータ2のメモリ2−2には、弁体1−2の開度θと流量係数Cvとの関係を示す流量係数テーブル(Cvテーブル)TB1(
図2(a)参照)と、流体の温度Tと流体の動粘度νとの関係を示す動粘度テーブルTB3(
図2(b)参照)と、弁体1−2の開度毎に作成された流体の仮流量Q’(後述)と流体の動粘度νとの比Q’/ν(流量補正係数決定値f)と流量補正係数(レイノルズ数係数)F
Rとの関係を示す流量補正テーブルTB4(
図2(c)参照)とが格納されている。
図3にある開度θにおける流量補正係数決定値f=Q’/νと流量補正係数(レイノルズ数係数)F
Rとの関係を表す流量補正曲線を例示する。
【0030】
以下、
図4に示すフローチャートを参照して、メモリ2−2に格納されているプログラムに従ってアクチュエータ2のCPU2−1が実行する本実施の形態(実施の形態1)特有の処理動作について説明する。
【0031】
CPU2−1は、開度センサS3からの弁体1−2の開度θ(現在の開度θ)を読み込む(ステップS101)。また、差圧センサS1からの弁体1−2の上下流間の差圧ΔP(現在の差圧ΔP)を読み込む(ステップS102)。また、温度センサS2からの管路1−1内を流れる流体の温度T(流体の現在の温度T)を読み込む(ステップS103)。
【0032】
そして、ステップS101で読み込んだ現在の開度θから、メモリ2−2中の流量係数テーブルTB1より現在の開度θに応じた流量係数Cvを現在の流量係数として取得する(ステップS104)。
【0033】
次に、CPU2−1は、下記の(5)式によって表される流量演算式に、ステップS102で読み込んだ弁体1−2の上下流間の現在の差圧ΔPと、ステップS104で流量係数テーブルTB1より取得した現在の流量係数Cvとを代入して、管路1−1を流れる流体の流量を仮流量Q’として求める(ステップS105)。
【0034】
Q’=N・Cv・(ΔP)
1/2 ・・・・(5)
なお、この(5)式において、Nは数値定数である。
【0035】
次に、CPU2−1は、ステップ103で読み込んだ流体の現在の温度Tから、メモリ2−2中の動粘度テーブルTB3より流体の現在の温度Tに応じた動粘度νを流体の現在の動粘度として取得する(ステップS106)。
【0036】
そして、この取得した流体の現在の動粘度νとステップS105で求めた仮流量Q’との比Q’/νを現在の流量補正係数決定値fとして求め(ステップS107)、この求めた現在の流量補正係数決定値f=Q’/νとステップS101で読み込んだ現在の開度θとから、メモリ2−2中の流量補正テーブルTB4より現在の開度θおよび現在の流量補正係数決定値f=Q’/νに応じた流量補正係数F
Rを取得する(ステップS108)。
【0037】
そして、CPU2−1は、この取得した流量補正係数F
RをステップS105で求めた仮流量Q’に乗じることによって補正流量Q(Q=Q’・F
R)とし(ステップS109)、この補正流量Qを計測流量Qpvとして表示部2−3に表示する(ステップS110)。
【0038】
そして、CPU2−1は、上位装置からの設定流量Qspを読み込み、計測流量Qpvと設定流量Qspとを比較し、計測流量Qpvが設定流量Qspに一致するように、弁体1−2の開度θを制御する(ステップS111)。CPU2−1は、このステップS101〜S111の処理動作を定周期で繰り返す。
【0039】
この実施の形態1では、計測流量Qpvの算出に、流体の現在の温度Tに応じた動粘度νを用いているので、また弁体1−2の現在の開度θと現在の流量補正係数決定値f=Q’/νとから求められる流量補正係数F
Rを用いているので、高精度で流体(液体)の流量を測定することができ、弁体1−2の開度θの制御を的確に行うことができるものとなる。
【0040】
図5にCPU2−1の処理動作として実現される流量測定部3(3A)の機能ブロック図を示す。この流量測定部3Aは、流量係数取得部3aと、流量演算部3cと、動粘度取得部3dと、流量補正係数決定値算出部3eと、流量補正係数取得部3fと、流量補正部3gとから構成されている。
【0041】
流量測定部3Aにおいて、流量係数取得部3aは、開度センサS3からの弁体1−2の開度(現在の開度)θを入力とし、メモリ2−2中の流量係数テーブルTB1より、弁体1−2の現在の開度θに応じた流量係数Cvを現在の流量係数として取得する。
【0042】
流量演算部3cは、差圧センサS1からの弁体1−2の上下流間の差圧(現在の差圧)ΔPと、流量係数取得部3aが流量係数テーブルTB1より取得した現在の流量係数Cvとを入力とし、前記の(5)式によって表される流量演算式に従って、管路1−1を流れる流体の流量を仮流量Q’として算出する。
【0043】
動粘度取得部3dは、温度センサS2からの流体の温度(現在の温度)Tを入力とし、メモリ2−2中の動粘度テーブルTB3より、流体の温度Tに応じた動粘度νを現在の動粘度として取得する。流量補正係数決定値算出部3eは、流量演算部3cにおいて求められた仮流量Q’と、動粘度取得部3dが動粘度テーブルTB3より取得した現在の動粘度νとを入力とし、仮流量Q’と現在の動粘度νとの比Q’/νを現在の流量補正係数決定値fとして求める。
【0044】
流量補正係数取得部3fは、開度センサS3からの弁体1−2の開度(現在の開度)θと、流量補正係数決定値算出部3eで求められた現在の流量補正係数決定値f=Q’/νとを入力とし、メモリ2−2中の流量補正テーブルTB4より、現在の開度θおよび現在の流量補正係数決定値f=Q’/νに応じた流量補正係数F
Rを取得する。
【0045】
流量補正部3gは、流量演算部3cにおいて求められた仮流量Q’と、流量補正係数取得部3fが流量補正テーブルTB4より取得した流量補正係数F
Rを入力とし、仮流量Q’に流量補正係数F
Rを乗じることによって仮流量Q’を補正して補正流量Q(Q=Q’・F
R)とする。この補正流量Qが計測流量Qpvとして出力される。
【0046】
なお、この実施の形態1では、現在の流量補正係数決定値fの算出に仮流量Q’を用いるが、この仮流量Q’は前記した(5)式からも分かるように、現在の差圧ΔPを含む情報であり、現在の流量補正係数決定値f=Q’/νは現在の差圧ΔPと現在の動粘度νとを含む情報から求められていると言える。また、流体の仮流量Q’と流体の動粘度νとの比Q’/νはレイノルズ数に相当し、流量補正係数決定値算出部3eでは現在の流量補正係数決定値fとしてレイノルズ数を求めているとも言える。
【0047】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、弁体1−2の開度θと流量係数Cvとの関係を示す流量係数テーブルTB1と、流体の温度Tと流体の動粘度νとの関係を示す動粘度テーブルTB3と、弁体1−2の開度毎に作成された流体の仮流量Q’と流体の動粘度νとの比Q’/ν(流量補正係数決定値f)と流量補正係数(レイノルズ数係数)F
Rとの関係を示す流量補正テーブルTB4とを用いたが、実施の形態2では、この流量係数テーブルTB1,動粘度テーブルTB3,流量補正テーブルTB4に加えて、流体の温度Tと流体の密度比ρ
1/ρ
0(ρ
1:流体温度における流体の密度、ρ
0:基準温度における流体の密度)との関係を示す密度比テーブルTB2(
図6(b)参照)を用いる。
【0048】
以下、
図7に示すフローチャートを参照して、メモリ2−2に格納されているプログラムに従ってアクチュエータ2のCPU2−1が実行する本実施の形態(実施の形態2)特有の処理動作について説明する。なお、この実施の形態2において、密度比テーブルTB2はテーブルTB1,TB3,TB4と共に、メモリ2−2に格納されていることは言うまでもない。
【0049】
CPU2−1は、開度センサS3からの弁体1−2の開度θ(現在の開度θ)を読み込む(ステップS201)。また、差圧センサS1からの弁体1−2の上下流間の差圧ΔP(現在の差圧ΔP)を読み込む(ステップS202)。また、温度センサS2からの管路1−1内を流れる流体の温度T(流体の現在の温度T)を読み込む(ステップS203)。
【0050】
そして、ステップS201で読み込んだ現在の開度θから、メモリ2−2中の流量係数テーブルTB1より現在の開度θに応じた流量係数Cvを現在の流量係数として取得する(ステップS204)。
【0051】
また、ステップS203で読み込んだ流体の現在の温度Tから、メモリ2−2中の密度比テーブルTB2より流体の現在の温度Tに応じた密度比ρ
1/ρ
0を現在の密度比として取得する(ステップS205)。
【0052】
そして、CPU2−1は、下記の(6)式によって表される流量演算式に、ステップS202で読み込んだ弁体1−2の上下流間の現在の差圧ΔPと、ステップS204で流量係数テーブルTB1より取得した現在の流量係数Cvと、ステップS205で密度比テーブルTB2より取得した現在の密度比ρ
1/ρ
0とを代入して、管路1−1を流れる流体の流量を仮流量Q’として求める(ステップS206)。
【0053】
Q’=N・Cv・(ΔP/(ρ
1/ρ
0))
1/2 ・・・・(6)
なお、この(6)式において、Nは数値定数である。
【0054】
次に、CPU2−1は、ステップ103で読み込んだ流体の現在の温度Tから、メモリ2−2中の動粘度テーブルTB3より流体の現在の温度Tに応じた動粘度νを流体の現在の動粘度として取得する(ステップS207)。
【0055】
そして、この取得した流体の現在の動粘度νとステップS206で求めた仮流量Q’との比Q’/νを現在の流量補正係数決定値fとして求め(ステップS208)、この求めた現在の流量補正係数決定値f=Q’/νとステップS201で読み込んだ現在の開度θとから、メモリ2−2中の流量補正テーブルTB4より現在の開度θおよび現在の流量補正係数決定値f=Q’/νに応じた流量補正係数F
Rを取得する(ステップS209)。
【0056】
そして、CPU2−1は、この取得した流量補正係数F
RをステップS206で求めた仮流量Q’に乗じることによって補正流量Q(Q=Q’・F
R)とし(ステップS210)、この補正流量Qを計測流量Qpvとして表示部2−3に表示する(ステップS211)。
【0057】
そして、CPU2−1は、上位装置からの設定流量Qspを読み込み、計測流量Qpvと設定流量Qspとを比較し、計測流量Qpvが設定流量Qspに一致するように、弁体1−2の開度θを制御する(ステップS212)。CPU2−1は、このステップS201〜S112の処理動作を定周期で繰り返す。
【0058】
この実施の形態2では、計測流量Qpvの算出に、流体の現在の温度Tに応じた密度比ρ
1/ρ
0や動粘度νを用いているので、また弁体1−2の現在の開度θと現在の流量補正係数決定値f=Q’/νとから求められる流量補正係数F
Rを用いているので、高精度で流体(液体)の流量を測定することができ、弁体1−2の開度θの制御を的確に行うことができるものとなる。
【0059】
図8にCPU2−1の処理動作として実現される流量測定部3(3B)の機能ブロック図を示す。この流量測定部3Bは、流量係数取得部3aと、密度比取得部3bと、流量演算部3cと、動粘度取得部3dと、流量補正係数決定値算出部3eと、流量補正係数取得部3fと、流量補正部3gとから構成されている。
【0060】
流量測定部3Bにおいて、流量係数取得部3aは、開度センサS3からの弁体1−2の開度(現在の開度)θを入力とし、メモリ2−2中の流量係数テーブルTB1より、弁体1−2の現在の開度θに応じた流量係数Cvを現在の流量係数として取得する。密度比取得部3bは、温度センサS2からの流体の温度(現在の温度)Tを入力とし、メモリ2−2中の密度比テーブルTB2より、流体の現在の温度Tに応じた密度比ρ
1/ρ
0を現在の密度比として取得する。
【0061】
流量演算部3cは、差圧センサS1からの弁体1−2の上下流間の差圧(現在の差圧)ΔPと、流量係数取得部3aが流量係数テーブルTB1より取得した現在の流量係数Cvと、密度比取得部3bが密度比テーブルTB2より取得した現在の密度比ρ
1/ρ
0とを入力とし、前記の(6)式によって表される流量演算式に従って、管路1−1を流れる流体の流量を仮流量Q’として算出する。
【0062】
動粘度取得部3dは、温度センサS2からの流体の温度(現在の温度)Tを入力とし、メモリ2−2中の動粘度テーブルTB3より、流体の温度Tに応じた動粘度νを現在の動粘度として取得する。流量補正係数決定値算出部3eは、流量演算部3cにおいて求められた仮流量Q’と、動粘度取得部3dが動粘度テーブルTB3より取得した現在の動粘度νとを入力とし、仮流量Q’と現在の動粘度νとの比Q’/νを現在の流量補正係数決定値fとして求める。
【0063】
流量補正係数取得部3fは、開度センサS3からの弁体1−2の開度(現在の開度)θと、流量補正係数決定値算出部3eで求められた現在の流量補正係数決定値f=Q’/νとを入力とし、メモリ2−2中の流量補正テーブルTB4より、現在の開度θおよび現在の流量補正係数決定値f=Q’/νに応じた流量補正係数F
Rを取得する。
【0064】
流量補正部3gは、流量演算部3cにおいて求められた仮流量Q’と、流量補正係数取得部3fが流量補正テーブルTB4より取得した流量補正係数F
Rを入力とし、仮流量Q’に流量補正係数F
Rを乗じることによって仮流量Q’を補正して補正流量Q(Q=Q’・F
R)とする。この補正流量Qが計測流量Qpvとして出力される。
【0065】
なお、この実施の形態2では、現在の流量補正係数決定値fの算出に仮流量Q’を用いるが、この仮流量Q’は前記した(6)式からも分かるように、現在の差圧ΔPと現在の密度比ρ
1/ρ
0とを含む情報であり、現在の流量補正係数決定値f=Q’/νは現在の差圧ΔPと現在の密度比ρ
1/ρ
0と現在の動粘度νとを含む情報から求められていると言える。また、流体の仮流量Q’と流体の動粘度νとの比Q’/νはレイノルズ数に相当し、流量補正係数決定値算出部3eでは現在の流量補正係数決定値fとしてレイノルズ数を求めているとも言える。
【0066】
〔実施の形態3〕
上述した実施の形態1では、流量補正部3g(
図5)で補正流量Qが求められると、その補正流量Qを直ちに計測流量Qpvとして出力するようにしているが、補正流量Qを仮流量Q’に置き換えて、流量補正係数決定値算出部3eにおける流量補正係数決定値f=Q’/νの算出、流量補正係数取得部3fにおける流量補正係数F
Rの取得、流量補正部3gにおける流量演算部3cで求められた仮流量Q’に対する補正を、ブラシュアップ処理として繰り返させるようにしてもよい。
【0067】
実施の形態1では、Q=Q’・F
R として、補正流量Qを算出している。これは、Q=Q’・F
R =N・Cv・(ΔP)
1/2・F
Rとして、計測流量Qpvを算出していることを意味している。すなわち、仮にF
R=1として求めたQをQ’とし、Q’を用いてF
Rを決定し、決定したF
Rを用いてQを求めていることを意味している。
【0068】
これに対し、実施の形態3では、補正流量Qを仮流量Q’に置き換えて、流量補正係数決定値算出部3eにおける流量補正係数決定値f=Q’/νの算出、流量補正係数取得部3fにおける流量補正係数F
Rの取得、流量補正部3gにおける流量演算部3cで求められた仮流量Q’に対する補正を繰り返すことによって、流量補正係数F
Rを適切な値に近づけ(
図9参照)、計測流量Qpvを真値に近づけて行くようにする(
図10参照)。なお、
図10において、横軸は補正回数、縦軸は流量を示す。
【0069】
図11にCPU2−1が実行する実施の形態3の第1例のフローチャートを示す。
図11において、ステップS301〜S309の処理動作は
図4におけるステップS101〜S109の処理動作と同じであるので、その説明は省略する。
【0070】
CPU2−1は、補正流量Q(Q=Q’・F
R)を求めると(ステップS309)、カウント値N(補正回数)をN=N+1とし(ステップS310)、このカウント値Nが所定値Nth以上(N≧Nth)であるか否かを確認する(ステップS311)。なお、カウント値Nの初期値は0とされている。また、所定値NthはNth>1とされている。
【0071】
この場合、N≧Nthではないので(ステップS311のNO)、ステップS309で求められた補正流量Qを仮流量Q’に置き換えて(ステップS312)、ステップS307の処理へと戻る。これにより、CPU2−1は、ステップS307での流量補正係数決定値f=Q’/νの算出、ステップS308での流量補正係数F
Rの取得、ステップS309での補正流量Qの算出を繰り返す。
【0072】
なお、ステップS309での補正流量Qの算出では、ステップS312で置き換えた仮流量Q’(前回の補正流量Q)ではなく、ステップS305で求めた最初の仮流量Q’を用いる。
【0073】
CPU2−1は、このステップS307〜S312の処理をブラシュアップ処理として繰り返し、カウント値Nが所定値Nthに達すると(ステップS311のYES)、その時の補正流量Qを計測流量Qpvとして表示部2−3に表示し(ステップS313)、計測流量Qpvが設定流量Qspに一致するように、弁体1−2の開度θを制御する(ステップS314)。
【0074】
図12にCPU2−1が実行する実施の形態3の第2例のフローチャートを示す。
図12において、ステップS401〜S409の処理動作は
図4におけるステップS101〜S109の処理動作と同じであるので、その説明は省略する。
【0075】
CPU2−1は、補正流量Q(Q=Q’・F
R)を求めると(ステップS409)、前回の補正流量Q
BFと今回の補正流量Q
AFとの差(Q
BF−Q
AF)が所定値α以下であるか否かを確認する(ステップS410)。
【0076】
この場合、最初は前回の補正流量Q
BFが存在しないので、CPU2−1は、前回の補正流量Q
BFと今回の補正流量Q
AFとの差(Q
BF−Q
AF)は所定値α以下ではないとみなし(ステップS410のNO)、ステップS409で求められた補正流量Qを仮流量Q’に置き換えて(ステップS411)、ステップS407の処理へと戻る。
【0077】
これにより、CPU2−1は、ステップS407での流量補正係数決定値f=Q’/νの算出、ステップS408での流量補正係数F
Rの取得、ステップS409での補正流量Qの算出を繰り返す。なお、ステップS409での補正流量Qの算出では、ステップS411で置き換えた仮流量Q’(前回の補正流量Q)ではなく、ステップS405で求めた最初の仮流量Q’を用いる。
【0078】
CPU2−1は、このステップS407〜S411の処理をブラシュアップ処理として繰り返し、前回の補正流量Q
BFと今回の補正流量Q
AFとの差(Q
BF−Q
AF)が所定値α以下となると(ステップS410のYES)、その時の補正流量Qを計測流量Qpvとして表示部2−3に表示し(ステップS412)、計測流量Qpvが設定流量Qspに一致するように、弁体1−2の開度θを制御する(ステップS413)。
【0079】
なお、この例では、ステップS410において、前回の補正流量Q
BFと今回の補正流量Q
AFとの差を「Q
BF−Q
AF」として求めているが、|Q
AF−Q
BF|として求めるようにしてもよい。
【0080】
この実施の形態3の第2例において、流量補正係数F
Rは最初は「1」とされ、ブラシュアップ処理によって徐々に小さくなり収束して行くので(
図9参照)、今回の補正流量Q
AFは前回の補正流量Q
BFよりも小さくなる。このため、「Q
BF−Q
AF」は正の値となり、「Q
AF−Q
BF」は負の値となる。したがって、所定値αを正の値とした場合、前回の補正流量Q
BFと今回の補正流量Q
AFとの差は「Q
BF−Q
AF」として求めるか、|Q
AF−Q
BF|として求めるようにすればよい。
【0081】
図13に実施の形態3における流量測定部3(3C)の機能ブロック図を示す。この流量測定部3Cは、実施の形態1における流量測定部3Aの構成(
図5)に加え、繰り返し判断部(繰り返し部)3hを有している。
【0082】
実施の形態3の第1例の場合、繰り返し判断部3hは、流量補正部3gからの補正流量Qを仮流量Q’に置き換えて、流量補正係数決定値算出部3eにおける流量補正係数決定値f=Q’/νの算出、流量補正係数取得部3fにおける流量補正係数F
Rの取得、流量補正部3gにおける流量演算部3cで求められた仮流量Q’に対する補正をブラシュアップ処理として、流量補正部3gにおける仮流量Q’の補正回数Nが所定回数Nthに達するまで繰り返させる。
【0083】
実施の形態3の第2例の場合、繰り返し判断部3hは、流量補正部3gからの補正流量Qを仮流量Q’に置き換えて、流量補正係数決定値算出部3eにおける流量補正係数決定値f=Q’/νの算出、流量補正係数取得部3fにおける流量補正係数F
Rの取得、流量補正部3gにおける流量演算部3cで求められた仮流量Q’に対する補正をブラシュアップ処理として、流量補正部3gにおける前回の補正流量Q
BFと今回の補正流量Q
AFとの差(Q
BF−Q
AF)が所定値α以下となるまで繰り返させる。
【0084】
〔実施の形態4〕
実施の形態3においても、実施の形態2と同様、流量係数テーブルTB1,動粘度テーブルTB3,流量補正テーブルTB4に加えて、密度比テーブルTB2を用いるようにしてもよい。
図14に、密度比テーブルTB2を用いるようにした場合の
図11に対応する図を実施の形態4の第1例のフローチャートとして、
図15に、密度比テーブルTB2を用いるようにした場合の
図12に対応する図を実施の形態4の第2例のフローチャートとして示す。また、
図16に、実施の形態4における流量測定部3(3D)の機能ブロック図を示す。
【0085】
この実施の形態4の流量測定部3Dにおいて、流量演算部3cは、差圧センサS1からの弁体1−2の上下流間の差圧(現在の差圧)ΔPと、流量係数取得部3aが流量係数テーブルTB1より取得した現在の流量係数Cvと、密度比取得部3bが密度比テーブルTB2より取得した現在の密度比ρ
1/ρ
0とを入力とし、前記の(6)式によって表される流量演算式に従って、管路1−1を流れる流体の流量を仮流量Q’として算出する。流量補正係数決定値算出部3eは、流量演算部3cにおいて求められた仮流量Q’と、動粘度取得部3dが動粘度テーブルTB3より取得した現在の動粘度νとを入力とし、仮流量Q’と現在の動粘度νとの比Q’/νを現在の流量補正係数決定値fとして求める。
【0086】
〔実施の形態5〕
実施の形態3では、ブラシュアップ処理を繰り返すことによって流量補正係数F
Rを適切な値に近づけ、計測流量Qpvを真値に近づけて行くようにしたが、実施の形態5では1回の処理で、流量補正係数F
Rを適切な値とし、計測流量Qpvとして真値に近い値を得るようにする。すなわち、実施の形態5では、実施の形態3のような繰り返しの計算を不要とする。
【0087】
図17にCPU2−1が実行する実施の形態5のフローチャートを示す。
図17において、ステップS701〜S706の処理動作は
図4におけるステップS101〜S106の処理動作と同じであるので、その説明は省略する。
【0088】
なお、この実施の形態5では、実施の形態1で用いていた流量補正テーブルTB4(
図2(c))に代えて、
図18に示すような流量補正テーブルTB4’を用いる。この流量補正テーブルTB4’は、弁体1−2の開度毎に作成された流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/νと流量補正係数F
Rとの関係を示している。
【0089】
CPU2−1は、メモリ2−2中の動粘度テーブルTB3より流体の現在の温度Tに応じた動粘度νを流体の現在の動粘度として取得すると(ステップS706)、ステップS702で読み込んだ弁体1−2の上下流間の現在の差圧ΔPと、ステップS706で取得した流体の現在の動粘度νとから現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/νを求める(ステップS707)。
【0090】
そして、この求めた現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/νとステップS701で読み込んだ現在の開度θとから、メモリ2−2中の流量補正テーブルTB4’より現在の開度θおよび現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/νに応じた流量補正係数F
Rを取得する(ステップS708)。
【0091】
そして、CPU2−1は、この取得した流量補正係数F
RをステップS705で求めた仮流量Q’に乗じることによって仮流量Q’を補正して補正流量Q(Q=Q’・F
R)とし(ステップS709)、この補正流量Qを計測流量Qpvとして表示部2−3に表示し(ステップS710)、計測流量Qpvが設定流量Qspに一致するように、弁体1−2の開度θを制御する(ステップS711)。CPU2−1は、このステップS701〜S711の処理動作を定周期で繰り返す。
【0092】
この実施の形態5では、計測流量Qpvの算出に、流体の現在の温度Tに応じた動粘度νを用いているので、また弁体1−2の現在の開度θと現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/νとから求められる流量補正係数F
Rを用いているので、実施の形態1よりもさらに高精度で流体(液体)の流量を測定することができ、弁体1−2の開度θの制御をより的確に行うことができるものとなる。
【0093】
図19に実施の形態5における流量測定部3(3E)の機能ブロック図を示す。この流量測定部3Eは、実施の形態1における流量測定部3A(
図5)における流量補正係数決定値算出部3eと流量補正係数取得部3fとに代えて、流量補正係数決定値算出部3e’と流量補正係数取得部3f’とを有している。
【0094】
この流量測定部3Eにおいて、流量補正係数決定値算出部3e’は、差圧センサS1からの弁体1−2の上下流間の差圧(現在の差圧)ΔPと、動粘度取得部3dが動粘度テーブルTB3より取得した現在の動粘度νとを入力とし、現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/νを求める。
【0095】
流量補正係数取得部3f’は、開度センサS3からの弁体1−2の開度(現在の開度)θと、流量補正係数決定値算出部3e’で求められた現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/νとを入力とし、メモリ2−2中の流量補正テーブルTB4’より、現在の開度θおよび現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/νに応じた流量補正係数F
Rを取得する。
【0096】
流量補正部3gは、流量演算部3Eにおいて求められた仮流量Q’と、流量補正係数取得部3fが流量補正テーブルTB4’より取得した流量補正係数F
Rを入力とし、仮流量Q’に流量補正係数F
Rを乗じることによって仮流量Q’を補正して補正流量Q(Q=Q’・F
R)とする。この補正流量Qが計測流量Qpvとして出力される。
【0097】
〔実施の形態6〕
実施の形態5においても、実施の形態4と同様、流量係数テーブルTB1,動粘度テーブルTB3,流量補正テーブルTB4に加えて、密度比テーブルTB2を用いるようにしてもよい。
図20に、密度比テーブルTB2を用いるようにした場合の
図17に対応する図を実施の形態6のフローチャートとして示す。
図21に、実施の形態6における流量測定部3(3F)の機能ブロック図を示す。
【0098】
なお、この実施の形態6では、実施の形態5で用いていた流量補正テーブルTB4’(
図18)に代えて、
図22に示すような流量補正テーブルTB4”を用いる。この流量補正テーブルTB4”は、弁体1−2の開度毎に作成された流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/(ν(ρ
1/ρ
0)
1/2)と流量補正係数F
Rとの関係を示している。
【0099】
この流量測定部3Fにおいて、流量補正係数決定値算出部3e’は、差圧センサS1からの弁体1−2の上下流間の差圧(現在の差圧)ΔPと、密度比取得部3bが密度比テーブルTB2より取得した現在の密度比ρ
1/ρ
0と、動粘度取得部3dが動粘度テーブルTB3より取得した現在の動粘度νとを入力とし、現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/(ν(ρ
1/ρ
0)
1/2)を求める。
【0100】
流量補正係数取得部3f’は、開度センサS3からの弁体1−2の開度(現在の開度)θと、流量補正係数決定値算出部3e’で求められた現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/(ν(ρ
1/ρ
0)
1/2)とを入力とし、メモリ2−2中の流量補正テーブルTB4”より、現在の開度θおよび現在の流量補正係数決定値f=(ΔP)
1/2/(ν(ρ
1/ρ
0)
1/2)に応じた流量補正係数F
Rを取得する。
【0101】
流量補正部3gは、流量演算部3cにおいて求められた仮流量Q’と、流量補正係数取得部3fが流量補正テーブルTB4’より取得した流量補正係数F
Rを入力とし、仮流量Q’に流量補正係数F
Rを乗じることによって仮流量Q’を補正して補正流量Q(Q=Q’・F
R)とする。この補正流量Qが計測流量Qpvとして出力される。
【0102】
〔実施の形態7〕
図23は本発明に係る流量測定装置を流量制御バルブに接続したシステムの一実施の形態(実施の形態7)の概略を示す図である。同図において、
図1と同一符号は
図1を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0103】
この実施の形態7では、流量制御バルブ101に流量測定装置5を接続し、流量測定装置5において実施の形態1と同様にして、流量制御バルブ101の管路1−1内を流れる流体(液体)の流量Q(計測流量Qpv)を算出するようにする。
【0104】
なお、この実施の形態7において、流量制御弁101におけるアクチュエータ4は、CPU4−1と、メモリ4−2と、モータ4−3とを備えた構成とし、アクチュエータ4のCPU4−1には、開度センサS3が検出する弁体1−2の開度θ、流量測定装置5からの計測流量Qpv、上位装置からの設定流量Qspを与えるようにする。
【0105】
また、流量測定装置5は、CPU5−1と、メモリ5−2と、表示部5−3と、インタフェース5−4とを備えた構成とし、流量測定装置5のCPU5−1に、インタフェース5−4を介して、差圧センサS1が検出する弁体1−2の上下流間の現在の差圧ΔPと、温度センサS2が検出する流体の温度T、開度センサS3が検出する弁体1−2の開度θを与える。
【0106】
流量測定装置5のメモリ5−2には、実施の形態1と同様に、流量係数テーブルTB1と、密度比テーブルTB2と、動粘度テーブルTB3と、流量補正テーブルTB4とを格納し、
図15に示すステップS901〜S909の処理動作(
図4に示したステップS101〜S109に対応する処理動作)をCPU5−1に行わせることによって、実施の形態1と同様にして、Q=Q’・F
Rとして補正流量Qを求める。
【0107】
CPU5−1は、この補正流量Qを計測流量Qpvとして表示部5−3に表示するとともに(ステップS910)、インタフェース5−4を介して流量制御バルブ101のアクチュエータ4へ送る(ステップS911)。CPU5−1は、このステップS901〜S911の処理動作を定周期で繰り返す。
【0108】
アクチュエータ4のCPU4−1は、流量測定装置5から計測流量Qpvが送られてくると、この送られてきた計測流量Qpvと設定流量Qspとを比較し、計測流量Qpvが設定流量Qspに一致するように、弁体1−2の開度θを制御する。この開度θの制御はメモリ4−2に格納されているプログラムに従って行われる。
【0109】
なお、上述した実施の形態7では、流量測定装置5において実施の形態1と同様の処理を行わせるようにしたが、実施の形態2〜6と同様の処理を行わせるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0110】
図25に、参考として、流量測定装置5において実施の形態2と同様の処理を行わせるようにした場合のフローチャートを示す。この場合、ステップS1005において、密度比テーブルTB2より流体の現在の温度Tに応じた密度比ρ
1/ρ
0を現在の密度比として取得し、ステップS1006において、前記の(6)式によって表される流量演算式に、テップS1002で読み込んだ弁体1−2の上下流間の現在の差圧ΔPと、ステップS1004で流量係数テーブルTB1より取得した現在の流量係数Cvと、ステップS1005で密度比テーブルTB2より取得した現在の密度比ρ
1/ρ
0とを代入して、管路1−1を流れる流体の流量を仮流量Q’として求める。
【0111】
また、上述した実施の形態1〜7では、差圧センサS1を設けて弁体1−2の上下流間の差圧ΔPを検出するようにしたが、弁体1−2の上流側の圧力と下流側の圧力を別々の圧力センサで検出するようにし、この上流側の圧力センサからの圧力と下流側の圧力センサからの圧力とから弁体1−2の上下流間の差圧ΔPを求めるようにしてもよい。
【0112】
また、上述した実施の形態1〜7では、流量係数テーブルTB1などをデータテーブルとして設けるようにしたが、データテーブルではなく近似式を用いるようにしてもよい。本発明において、テーブルの定義には近似式も含まれる。
【0113】
なお、本出願人は、先に特許文献3として、ガス流量測定装置を提案している。このガス流量測定装置では、ガスの流量と動粘度の比に対するレイノルズ数係数の関係を示す流量補正テーブルを用いて非乱流補正を行うことで、高精度でのガス流量の測定を可能としている。
【0114】
具体的には、特許文献3では、メモリにYC直線テーブルと流量補正テーブルとを記憶させておき、開度θと上下流間の差圧比x=ΔP/P1とからYC直線テーブルより現在のYC値を取得し、この取得したYC値と差圧比x=ΔP/P1とモル質量Mとガスの温度T1とを流量演算式に代入して、現在のガス流量Q’(非乱流補正前の演算流量)を算出し、ガスの温度から動粘度νを計算し、Q’/νを求め、Q’/νと開度θとから流量補正テーブルよりその時のレイノルズ数係数F
Rを取得し、このレイノルズ数係数F
Rを流量補正係数とし、Q=F
R・Q’として非乱流補正が施されたガス流量Qを得るようにしている。
【0115】
この特許文献3に示された方法は、測定対象の流体をガスとしたものであるため、測定対象の流体を液体(非圧縮性流体)とする本願発明とは、その流量を求めるロジックが全く異なっている。したがって、特許文献3に示された方法は、本願発明を示唆してはいない。
【0116】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施の形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。