(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可燃性ガス生成触媒(2)と排気処理部(10)とを備え、可燃性ガス生成触媒(2)での発熱を伴う触媒反応により可燃性ガス(8)が生成され、可燃性ガス(8)がエンジン排気経路(4)を通過する排気(9)に混入され、可燃性ガス(8)の燃焼で昇温された排気(9)が排気処理部(10)に供給されるように構成された、エンジンの排気処理装置において、
可燃性ガス生成触媒(2)は、可燃性ガス生成触媒(2)の中心軸線(2c)に沿う垂直な合わせ面(2b)を備えた複数の触媒部分(2a)(2a)の集合体で構成され、
可燃性ガス生成触媒(2)の上部中央部に可燃性ガス(8)の原料(7)の入口となる入口凹部(12)が設けられ、隣り合う触媒部分(2a)(2a)の合わせ面(2b)(2b)同士の隙間(2d)のうち、入口凹部(12)の内底面(12a)に沿う横向き部分を横向き隙間端縁(2e)とし、入口凹部(12)の内周面(12b)に沿う立向き部分を立向き隙間端縁(2f)(2f)として、
入口凹部(12)の内底面(12a)上に横向き隙間端縁(2e)を覆うガイド底板(13)が配置され、ガイド底板(13)の周縁部に立向き隙間端縁(2f)(2f)を覆う立壁(13a)(13a)が立設されることにより、
入口凹部(12)に流入した可燃性ガス(8)の原料(7)が、ガイド底板(13)と立壁(13a)(13a)とで覆われた横向き隙間端縁(2e)と立向き隙間端縁(2f)(2f)とを避けて、ガイド底板(13)でその周囲方向に分流されるように構成されている、ことを特徴とするエンジンの排気処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《問題点》 触媒部分の合わせ面で熱損傷が起こることがある。
特許文献1のものでは、可燃性ガス生成触媒が複数の触媒部分の集合体で構成され、可燃性ガス生成触媒の成型の容易化が図られているが、隣合う触媒部分の合わせ面で熱損傷が起こることがある。
【0007】
本発明の課題は、可燃性ガス触媒を構成する触媒部分の合わせ面の熱損傷を防止することができるエンジンの排気処理装置を提供することにある。
【0008】
本発明の発明者らは、研究の結果、隣り合う触媒部分の合わせ面同士の隙間のうち、入口凹部に沿う部分を隙間端縁として、入口凹部に流入した可燃性ガスの原料が隙間端縁に直接に進入するのを避けることにより、触媒部分の合わせ面の熱損傷を防止することができることを見出し、この発明に至った。
その理由は、次のように推定される。
すなわち、可燃性ガスの原料が抵抗の少ない合わせ面同士の隙間に集中して流れ、触媒反応による過熱で触媒部分の合わせ面の熱損傷が引き起こされる。このため、入口凹部に流入した可燃性ガスの原料が入口凹部に沿う隙間端縁に直接に進入するのを避けることにより、可燃性ガスの原料が隙間に集中して流れることがなくなり、触媒反応による過熱で引き起こされる合わせ面の熱損傷を防止することができた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1に例示するように、可燃性ガス生成触媒(2)と排気処理部(10)とを備え、可燃性ガス生成触媒(2)での発熱を伴う触媒反応により可燃性ガス(8)が生成され、可燃性ガス(8)がエンジン排気経路(4)を通過する排気(9)に混入され、可燃性ガス(8)の燃焼で昇温された排気(9)が排気処理部(10)に供給されるように構成された、エンジンの排気処理装置において、
図3(A)〜(C)、
図4(A)〜(B)に例示するように、可燃性ガス生成触媒(2)は、可燃性ガス生成触媒(2)の中心軸線(2c)に沿う垂直な合わせ面(2b)を備えた複数の触媒部分(2a)(2a)の集合体で構成され、
図3(A)、
図4(A)〜(C)に例示するように、可燃性ガス生成触媒(2)の上部中央部に可燃性ガス(8)の原料(7)の入口となる入口凹部(12)が設けられ、隣り合う触媒部分(2a)(2a)の合わせ面(2b)(2b)同士の隙間(2d)のうち、入口凹部(12)の内底面(12a)に沿う横向き部分を横向き隙間端縁(2e)とし、入口凹部(12)の内周面(12b)に沿う立向き部分を立向き隙間端縁(2f)(2f)として、
図3(A)、
図4(A)〜(C)に例示するように、入口凹部(12)の内底面(12a)上に横向き隙間端縁(2e)を覆うガイド底板(13)が配置され、ガイド底板(13)の周縁部に立向き隙間端縁(2f)(2f)を覆う立壁(13a)(13a)が立設されることにより、
図3(A)に例示するように、入口凹部(12)に流入した可燃性ガス(8)の原料(7)が、ガイド底板(13)と立壁(13a)(13a)とで覆われた横向き隙間端縁(2e)と立向き隙間端縁(2f)(2f)とを避けて、ガイド底板(13)でその周囲方向に分流されるように構成されている、ことを特徴とするエンジンの排気処理装置。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 触媒部分の合わせ面の熱損傷を防止することができる。
図3(A)に例示するように、入口凹部(12)流入した可燃性ガス(8)の原料(7)が、ガイド底板(13)と立壁(13a)(13a)とで覆われた横向き隙間端縁(2e)と立向き隙間端縁(2f)(2f)とを避けて、ガイド底板(13)でその周囲方向に分流されるように構成されているので、可燃性ガス(8)の原料(7)が触媒部分(2a)(2a)の合わせ面(2b)(2b)の隙間(2d)を通過しにくくなり、触媒反応による過熱で引き起こされる触媒部分(2a)(2a)の合わせ面(2b)(2b)の熱損傷を防止することができる。
【0011】
《効果》 可燃性ガス生成触媒の成型が容易になる。
図4(A)〜(D)に例示するように、可燃性ガス生成触媒(2)が、複数の触媒部分(2a)(2a)の集合体で構成されているので、可燃性ガス生成触媒(2)の成型が容易になる。
【0012】
《効果》 可燃性ガスの生成効率が高まる。
図3(A)に例示するように、入口凹部(12)に流入した可燃性ガス(8)の原料(7)がガイド底板(13)でその周囲方向に分流されるので、原料(7)が可燃性ガス生成触媒(2)の全体に分散され、可燃性ガス(8)の生成効率が高まる。
【0013】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 触媒部分の合わせ面の熱損傷を防止することができる。
図4(A)に例示するように、立壁(13a)(13a)が入口凹部(12)の周方向に対して廻り止めされているので、立壁(13a)(13a)のずれによる、立向き隙間端縁(2f)(2f)からの可燃性ガス(8)の原料(7)の進入が防止され、触媒部分(2a)(2a)の合わせ面(2b)(2b)の熱損傷を防止することができる。
【0014】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 可燃性ガス生成触媒の製造が容易になる。
図3(A)〜(C)、
図4(A)〜(C)に例示するように、2個の触媒部分(2a)(2a)が同一形状となるように構成されているので、同じ成形型で形成した2部品を用いて可燃性ガス生成触媒(2)を構成することができ、可燃性ガス生成触媒(2)の製造が容易になる。
【0015】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 排気処理部の熱損傷を防止することができる。
図1に示すように、排気経路(4)に酸化触媒(3)が配置され、可燃性ガス(8)が酸化触媒(3)で触媒燃焼され、酸化触媒(3)での触媒燃焼で昇温された排気(9)が酸化触媒(3)の下流の排気処理部(10)に供給されるように構成されているので、酸化触媒(3)の触媒燃焼で排気(9)の温度を緩やかに昇温することができ、排気処理部(10)の熱損傷を防止することができる。
【0016】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 触媒部分の合わせ面の熱損傷を防止する機能が顕在化する。
図1に例示するように、酸化触媒(3)に堆積したPMの燃焼除去時には、
可燃性ガス生成触媒(2)の触媒反応により、高着火性の可燃性ガス(8)が生成され、触媒部分(2a)(2a)の合わせ面(2b)(2b)の発熱量が高くなる傾向にあるため、ガイド底板(13)と立壁(13a)(13a)により、各触媒部分(2a)(2a)の合わせ面(2b)(2b)の熱損傷を防止する機能が顕在化する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜
図9は本発明の実施形態に係るエンジンの排気処理装置を説明する図であり、この実施形態では、ディーゼルエンジンの排気処理装置について説明する。
【0019】
排気処理装置の主要な構成は、次の通りである。
図1に示すように、可燃性ガス生成触媒(2)と排気処理部(10)とを備え、可燃性ガス生成触媒(2)での発熱を伴う触媒反応により可燃性ガス(8)が生成され、可燃性ガス(8)がエンジン排気経路(4)を通過する排気(9)に混入され、可燃性ガス(8)の燃焼で昇温された排気(9)排気処理部(10)に供給されるように構成されている。
【0020】
排気処理部(10)はDPF(19)である。DPFはディーゼル・パティキュレート・フィルタの略称である。DPF(19)では排気(9)に含まれるPMが捕捉されて堆積し、DPF(19)のPM堆積推定値が所定の再生開始値に至ると、ガス(8)の燃焼で昇温された排気(9)の熱で、PMが焼却除去され、DPF(19)が再生される。排気処理部(10)には、DPF(19)の他、排気浄化触媒(SCR触媒やNO
X吸蔵触媒等)を用いることもできる。SCR触媒は選択還元触媒の略称、NO
Xは窒素酸化物の略称である。
【0021】
可燃性ガス生成触媒の構成は、次の通りである。
図3(A)〜(C)、
図4(A)〜(B)に示すように、可燃性ガス生成触媒(2)は、可燃性ガス生成触媒(2)の中心軸線(2c)に沿う垂直な合わせ面(2b)を備えた複数の触媒部分(2a)(2a)の集合体で構成されている。
図3(A)、
図4(A)〜(C)に示すように、可燃性ガス生成触媒(2)の上部中央部に可燃性ガス(8)の原料(7)の入口となる入口凹部(12)が設けられ、隣り合う触媒部分(2a)(2a)の合わせ面(2b)(2b)同士の隙間(2d)のうち、入口凹部(12)の内底面(12a)に沿う横向き部分を横向き隙間端縁(2e)とし、入口凹部(12)の内周面(12b)に沿う立向き部分を立向き隙間端縁(2f)(2f)とする。
図3(A)、
図4(A)〜(C)に示すように、入口凹部(12)の内底面(12a)上に横向き隙間端縁(2e)を覆うガイド底板(13)が配置され、ガイド底板(13)の周縁部に立向き隙間端縁(2f)(2f)を覆う立壁(13a)(13a)が立設される。
これにより、
図3(A)に示すように、入口凹部(12)に流入した可燃性ガス(8)の原料(7)が、ガイド底板(13)と立壁(13a)(13a)とで覆われた横向き隙間端縁(2e)と立向き隙間端縁(2f)(2f)とを避けて、ガイド底板(13)でその周囲方向に分流されるように構成されている。
【0022】
図4(A)に示すように、立壁(13a)(13a)に外向きに突出する突部(13b)(13b)が設けられ、この
突部(13b)(13b)が立向き隙間端縁(2f)(2f)に進入して、立壁(13a)(13a)が入口凹部(12)の周方向に対して廻り止めされている。
【0023】
図3に示すように、触媒温度検出装置(14)を備え、可燃性ガス生成触媒(2)に触媒温度検出装置(14)の温度検出部(14a)を挿入する挿入孔(15)が貫通状に設けられている。
図4(A)(B)に示すように、可燃性ガス生成触媒(2)が2個の触媒部分(2a)(2a)で構成されている。
図3(C)に示すように、挿入孔(15)の中心軸線(15a)が、可燃性ガス生成触媒(2)の中心軸線(2c)と直交し、かつ、触媒部分(2a)(2a)の合わせ面(2b)(2b)と平行な向きに沿う向きに形成されることにより、2個の触媒部分(2a)(2a)が同一形状となるように構成されている。
【0024】
図4(C)に示すように、可燃性ガス生成触媒(2)は逆さ円錐台形状であり、触媒部分(2a)(2a)はこの可燃性ガス生成触媒(2)を中心軸線(2c)に沿って分割した2つ割り形状とされている。
可燃性ガス生成触媒(2)の各触媒部分(2a)(2a)は、鉄クロム線を織って、逆さ円錐台の2つ割り形状にプレス成形したもので、鉄クロム線にはロジウム触媒成分が担持されている。
【0025】
図1に示すように、排気経路(4)に酸化触媒(3)が配置され、可燃性ガス(8)が酸化触媒(3)で触媒燃焼され、酸化触媒(3)での触媒燃焼で昇温された排気(9)が酸化触媒(3)の下流の排気処理部(10)に供給されるように構成されている。
酸化触媒(3)はDOC(10)である。DOCはディーゼル酸化触媒の略称である。
【0026】
図1に示すように、着火装置(16)と制御装置(17)とを備え、着火装置(16)が酸化触媒(3)よりも排気上流側に配置され、酸化触媒(3)に所定量のPMが堆積した場合には、
可燃性ガス生成触媒(2)の触媒反応により、高着火性の可燃性ガス(8)が生成され、着火装置(16)で着火された高着火性の可燃性ガス(8)の火炎燃焼熱で排気(9)が昇温され、この排気(9)の熱で酸化触媒(3)に堆積したPMが燃焼除去されるように構成されている。
可燃性ガス(8)の原料(7)には、液体燃料(5)と空気(6)とを混合した空燃混合気が用いられ、酸化触媒(3)に所定量のPMが堆積した場合には、制御装置(17)により、
可燃性ガス生成器(1)への空燃混合気の空気(6)の混合比が高く設定されて、可燃性ガス生成触媒(2)の発熱量が高くなる触媒反応により、高着火性の可燃性ガス(8)が生成される。
排気処理装置の主要な構成は、以上の通りである。
【0027】
次に、排気処理装置の全体構成を説明する。
図1に示すように、排気処理装置は、可燃性ガス生成混合器(22)と排気処理ケース(23)と制御装置(17)とを備えている。
可燃性ガス生成混合器(22)は。可燃性ガス生成器(1)と可燃性ガス供給通路(24)と可燃性ガス混合通路(25)とを備えている。
排気処理ケース(23)には、酸化触媒(3)とDPF(19)とが収容されている。
【0028】
図2に示すように、可燃性ガス生成混合器(22)は、可燃性ガス生成器(1)と可燃性ガス供給通路(24)と可燃性ガス混合通路(25)とが一体化された鋳物のブロック体である。
可燃性ガス生成混合器(22)の外観は、
図5、
図6(A)、
図7(A)、
図8に示す通りである。
図2に示すように、可燃性ガス生成器(1)は、上部のミキサ部(1a)と下部の触媒収容部(1b)とを備え、ミキサ部(1a)にはガスケット(1c)を挟んで上から蓋(1d)が取り付けられ、蓋(1d)のボス(1e)には触媒暖機用ヒータ(26)が取り付けられ、ボス(1e)の周囲には、ミキサ室(1f)が形成されている。触媒暖機用ヒータ(26)には、電熱式のグロープラグが用いられている。
図1または
図6(B)に示すように、ミキサ部(1a)の上面に設けられた燃料供給溝(27)と空気供給溝(28)からガスケット(1c)の燃料供給口(27a)と空気供給口(28a)を介してミキサ室(1f)に液体燃料(5)と空気(6)とが供給され、これらがミキサ室(1f)で混合され、空燃混合気となり、これが可燃性ガス(8)の原料(7)となる。
【0029】
図2に示すように、触媒収容部(1b)には可燃性ガス生成触媒(2)が収容されている。
図2に示すように、可燃性ガス生成触媒(2)は、上側が径大の逆さ円錐台形状で、
図3(A)に示すように、中央上部に入口凹部(12)が下向きに凹入され、その内底面(12a)にガイド底板(13)が設けられ、その上部に可燃性ガス生成開始用触媒(29)が収容され、この可燃性ガス生成開始用触媒(29)に触媒暖機用ヒータ(26)が差し込まれている。可燃性ガス生成開始用触媒(29)は、アルミナ繊維のマットで、表面にロジウム触媒成分が担持されている。可燃性ガス生成開始用触媒(29)は、可燃性ガス生成触媒(2)に比べ、液体燃料(5)の保持性が高い。ガイド底板(13)と立壁(13a)(13a)は、ステンレス鋼の平板で構成されている。
【0030】
図2に示すように、可燃性ガス生成触媒(2)の周面と触媒収容部(1b)の周壁の間、可燃性ガス生成触媒(2)の上面とミキサ部(1a)の底面との間には、それぞれ断熱クッション材(30)が介設されている。この断熱クッション材(30)はアルミナ繊維のマットで構成されている。
可燃性ガス生成触媒(2)の下部には、触媒温度検出装置(14)の温度検出部(14a)を挿入する挿入孔(15)が貫通状に設けられている。触媒温度検出装置(14)にはサーミスタが用いられている。ガイド
底板(13)は、温度検出部(14a)の真上に配置されている。
【0031】
図2に示すように、可燃性ガス供給通路(24)は触媒収容部(1b)の真下から水平に導出されている。可燃性ガス供給通路(24)の終端部にはガスノズル(31)が設けられている。ガスノズル(31)は、二次空気混合室(32)に突出されている。
図7(B)に示すように、可燃性ガス供給通路(24)と並行して、二次空気供給通路(33)が設けられ、二次空気混合室(32)には、ガスノズル(31)と二次空気供給通路(33)からそれぞれ可燃性ガス(8)と二次空気(34)とが供給され、二次空気混合室(32)でこれらが混合される。可燃性ガス(8)はガスノズル(31)から二次空気混合室(32)の径方向に放射状に噴出され、二次空気(34)はガスノズル(31)の周囲を旋回する。
【0032】
二次空気混合室(32)の下流には着火装置収容室(35)が配置され、ここに着火装置(16)が配置されている。着火装置(16)には、電熱式のグロープラグが用いられている。着火装置収容室(35)に流入した可燃性ガス(8)は、所定条件下、着火装置(16)で着火される。
図6(A)、
図7(A)に示すように、可燃性ガス生成混合器(22)の壁(22a)の外側に突出された着火装置(16)の外側突出部(16a)に放熱板(16b)が取り付けられている。これにより、着火装置(16)に伝導された可燃性ガス(8)の燃焼熱が、放熱板(16b)を介して放熱され、着火装置(16)の熱損傷が抑制される。
【0033】
図6(A)に示すように、放熱板(16b)がエンジン冷却ファン(図外)の冷却風路(50)に配置され、冷却風路(50)を通過する冷却風(51)が放熱板(16b)に吹き当たるように構成されている、放熱板(16b)はU字状に折り曲げられ、着火装置(16)の外側突出部(16a)が放熱板(16b)に囲まれ、放熱板(16b)の通風入口(16c)が冷却風路(50)の上流寄りに設けられ、放熱板(16b)の遮風壁(16d)が冷却風路(50)の下流寄りに設けられている。
遮風壁(16d)から冷却風路(50)の上流側に延びる放熱板(16b)の両側壁(16e)( 16e)に排風口(16f)(16f)が設けられている。
【0034】
図6(A)、
図7(A)に示すように、着火装置(16)が差し込まれた可燃性ガス生成混合器(22)の壁(22a)に通風隙間(22b)が形成され、可燃性ガス生成混合器(22)の壁(22a)に差し込まれた着火装置(16)の差し込み部(16g)の一部が通風隙間(22b)内に露出され、通風隙間(22b)が冷却風路(50)に配置され、冷却風路(50)を通過する冷却風(51)が通風隙間(22b)に流入し、着火装置(16)の差し込み部(16g)の一部に吹き当たるように構成されている。これにより、着火装置(16)に伝導された可燃性ガス(8)の燃焼熱が、通風隙間(22b)を通過する冷却風(51)に放熱され、着火装置(16)の熱損傷が抑制される。
【0035】
図2に示すように、着火装置収容室(35)の上方には連通口(36)が設けられ、着火装置収容室(35)が連通口(36)を介して可燃性ガス混合通路(25)に連通されている。着火装置収容室(35)の終端には、保炎板(37)が立向きに設けられ、保炎板(37)の上端部は、連通口(36)から可燃性ガス混合通路(25)に突出され、排気下流側に向けて上り傾斜され、着火装置(16)によって発生した火炎が可燃性ガス混合通路(25)を通過する排気(9)で吹き消されないようにしている。可燃性ガス混合通路(25)には、着火検出装置(38)が配置されている。着火検出装置(38)には、サーミスタが用いられている。
図1に示すように、可燃性ガス混合通路(25)は、エンジン排気経路(4)の一部を構成し、過給機(39)のコンプレッサ出口(39a)と排気処理ケース(23)の排気入口(23a)との間に配置されている。
【0036】
図1に示すように、エンジン排気経路(4)の一部を構成する排気処理ケース(23)には、上流側に酸化触媒(3)が、下流側にDPF(19)がそれぞれ収容されている。酸化触媒(3)はセラミック製のハニカム形の担体に、酸化触媒成分が担持され、セル(3a)の両端が開口されたフロースルーモノリスで、セル(3a)の内部を排気(9)が通過するように構成されている。
DPF(19)はセラミック製のハニカム形の担体に、酸化触媒成分が担持され、隣合うセル(19a)(19a)の端部を交互に目封じしたウォールフローモノリスで、隣合うセル(19a)(19a)間の壁(19b)を排気(9)が通過し、排気(9)に含まれるPMが壁(19b)に捕捉される。PMは、粒子状物質の略称である。
【0037】
図1に示すように、排気処理ケース(23)には、酸化触媒入口の排気温度検出装置(40)、DPF入口の排気温度検出装置(41)、DPF出口の排気温度検出装置(42)が設けられている。可燃性ガス生成器(1)の可燃性ガス混合通路(25)には酸化触媒上流側の排気圧検出装置(43)が設けられている。これら検出装置(40)(41)(42)(43)はいずれも制御装置(17)に接続されている。制御装置(17)はエンジンECUである。ECUは、電子制御ユニットの略称である。
制御装置(17)には、触媒暖機用ヒータ(26)、燃料タンク(44)から液体燃料(5)をミキサ部(1a)に供給する燃料ポンプ(45)、ブロワ(46)、ブロワ(46)からミキサ部(1a)への空気(6)の供給量を調節する空気調節用電磁弁(47)、ブロワ(46)から二次空気混合室(32)への二次空気(34)の供給量を調節する二次空気調節用電磁弁(48)、着火装置(16)、着火検出装置(38)が接続されている。
【0038】
図9に示すように、DPF(19)と酸化触媒(3)のPM堆積総量の推定値が所定の再生必要値に至ると、制御装置(17)により再生処理が許可される。PM堆積推定総量は、酸化触媒上流側の排気圧検出装置(43)による酸化触媒上流側の排気圧に基づいて制御装置(17)が推定する。制御装置(17)は、再生許可と同時に、この再生許可がDPF再生に対するものか、酸化触媒再生に対するものかを判定する。
図9に示すように、制御装置(17)は、前回の再生終了から再生許可までのインターバル(49)が所定時間以上である場合には、DPF再生の許可と判定し、所定時間未満である場合には、酸化触媒再生の許可と判定する。
【0039】
DPF(19)に蓄積されたPMは、1回のDPF再生処理や1回の酸化触媒再生処理で、ほぼ全量が除去されるが、酸化触媒(3)に蓄積されたPMは、複数回のDPF再生処理でも除去されず、次第に蓄積されるため、前記インターバル(49)が所定時間未満の場合には、酸化触媒(3)に再生が必要なに所定量のPMが堆積していると推定することができる。このため、前記インターバル(49)の長短により、DPF再生と酸化触媒再生の必要性とを判別し、DPF再生の許可と酸化触媒再生の許可を決定する。
【0040】
図1に示すように、DPF再生、酸化触媒再生のいずれの場合にも、制御装置(17)により、再生開始時には、触媒
用暖機ヒータ(26)で可燃性ガス生成触媒(2)が暖機され、可燃性ガス生成器(1)に液体燃料(5)と空気(6)とが供給され、ミキサ部(1a)で空燃混合気が形成され、この空燃混合気を原料(7)として可燃性ガス生成触媒(2)での発熱を伴う触媒反応により可燃性ガス(8)が生成される。
【0041】
DPF再生で、酸化触媒入口の排気温度が酸化触媒(3)の活性化温度以上である場合には、制御装置(17)の制御に基づき、着火装置(16)による着火なしで、可燃性ガス(8)が二次空気(34)とともに可燃性ガス
混合通路(25)を通過する排気(9)に混入され、可燃性ガス(8)が二次空気(34)と排気(9)中の空気により酸化触媒(3)で触媒燃焼され、酸化触媒(3)での触媒燃焼で昇温された排気(9)が酸化触媒(3)の下流のDPF(10)に供給される。
【0042】
DPF再生で、酸化触媒入口の排気温度が酸化触媒(3)の活性化温度未満である場合には、制御装置(17)の制御に基づき、着火装置(16)による着火で、可燃性ガス(8)が二次空気(34)により火炎燃焼され、火炎燃焼による熱で可燃性ガス混合通路(25)を通過する排気(9)が昇温され、酸化触媒入口の排気温度が酸化触媒(3)の活性化温度に至り、酸化触媒(3)が暖機されると、火炎燃焼が終了され、着火装置(16)による着火なしで、可燃性ガス(8)が二次空気(34)とともに可燃性ガス混合通路(25)を通過する排気(9)に混入され、可燃性ガス(8)が二次空気(34)と排気(9)中の空気により酸化触媒(3)で触媒燃焼され、酸化触媒(3)での触媒燃焼で昇温した排気(9)が酸化触媒(3)の下流のDPF(10)に供給される。
DPF入口の排気温度が所定温度を超えた時間の累積が所定値に至ると、DPF再生は終了する。
【0043】
着火装置(16)による着火や火炎燃焼の終了は、次のようにして行われる。
着火装置(16)による着火は、制御装置(17)に制御に基づき、着火装置(16)が通電によって発熱されるとともに、可燃性ガス生成触媒(2)で、高着火性の可燃性ガス(8)が生成されることにより行われる。高着火性の可燃性ガス(8)は、酸化触媒(3)で触媒燃焼させる低着火性の可燃性ガス(8)の場合に比べ、可燃性ガス生成触媒(2)に供給する空燃混合気の空気(6)の混合比が高く設定されて、発熱量が高くなる触媒反応により生成される。火炎燃焼の終了は、可燃性ガス生成触媒(2)で、低着火性の可燃性ガス(8)が生成され、火炎燃焼が低着火性の可燃性ガス(8)で吹き消されることにより行われる。
可燃性ガス(8)の生成は、制御装置(17)に制御に基づき、可燃性
ガス生成触媒(2)の目標温度と触媒温度検出装置(14)で検出される検出温度との偏差を小さくするフィードバック制御により、液体燃料(5)と空気(6)の供給量や混合比を調節して行なわれる。高着火性の可燃性ガス(8)の生成時は、可燃性
ガス生成触媒(2)の目標温度が高く設定され、空燃混合気の空気(6)の混合比が高くなり、低着火性の可燃性ガス(8)の生成時は、触媒温度が目標値が低く設定され、空燃混合気の空気(6)の混合比が低くなる。
【0044】
酸化触媒再生は、制御装置(17)に制御に基づき、着火装置(16)による着火で、可燃性ガス(8)が二次空気(34)により火炎燃焼され、火炎燃焼による熱で可燃性ガス混合通路(25)を通過する排気(9)が昇温されることにより行われる。着火装置(16)による着火は、着火装置(16)が通電によって発熱されるとともに、可燃性ガス生成触媒(2)で、高着火性の可燃性ガス(8)が生成されることにより行われる。高着火性の可燃性ガス(8)は、酸化触媒(3)で触媒燃焼させる低着火性の可燃性ガス(8)の場合に比べ、可燃性ガス生成触媒(2)に供給する空燃混合気の空気(6)の混合比が高く設定されて、発熱量が高くなる触媒反応により生成される。酸化触媒入口の排気温度が目標温度に到達したまま所定時間が経過すると、酸化触媒再生は終了する。酸化触媒再生の排気触媒入口の目標温度は、酸化触媒(3)の活性化温度よりも高い。