(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では発電機において生じる損失について十分考慮されておらず、発電効率が必ずしも高くない問題がある。例えば、一般的なシリーズハイブリッドの構成のようにエンジンと発電機が直結している場合、エンジン停止時には必ず発電機も停止するためエンジン停止時の引きずり損を考慮する必要がないが、後述する
図1に示すような構成のハイブリッド自動車等ではエンジンが停止した状態で走行する場合に発電機が連れ回される。このため、エンジン停止状態では発電機の引きずり損を抑制し、発電機でエンジンをクランキングして始動する時には発電機をモータとして機能させてそのトルクを増大させ、エンジン運転中にはエンジンの運転状況に応じて発電機のトルクを時々刻々制御するために誘起電圧定数を動的に変更する必要があるところ、従来技術ではこれら種々の状況において発電効率向上の観点からの誘起電圧定数変更については考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、回転電機の発電効率を一層向上させることができる回転電機の制御装置及び回転電機制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、可変界磁型の回転電機を制御する制御装置であって、前記回転電機は、ステータと、前記ステータと対向配置され、かつ、回転軸方向に互いに対向配置された第1ロータ要素及び第2ロータ要素を含み、前記第2ロータ要素は前記第1ロータ要素に対して相対回転可能なロータとを備えて構成され、前記回転電機の少なくとも角速度、要求トルク、及び前記回転電機が搭載される車両の運転状況
としてのエンジンの停止、クランキング、運転の状態を入力する入力手段と、前記角速度、要求トルク及び運転状況に基づき、発電効率を最大化するように前記回転電機の目標界磁磁束を演算する演算手段と、前記目標界磁磁束に基づき、前記第1ロータ要素に対する前記第2ロータ要素の位相角を制御するための制御指令を出力する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の1つの実施形態では、前記演算手段は、前記回転電機の発電量Wのモデル
W=T(φ,ω)ω−Q(T(φ,ω),φ,ω)
但し、T:要求トルク
φ:界磁磁束
ω:角速度
Q:損失
に基づき前記目標界磁磁束を演算することを特徴とする。
【0008】
本発明の他の実施形態では、前記回転電機はエンジンのクランク軸に連結され、前記エンジンの動力により発電するものであり、前記演算手段は、前記エンジンの停止状態では最小界磁磁束を前記目標界磁磁束として演算し、前記エンジンの運転状態では前記エンジンのトルクに応じた界磁磁束を前記目標界磁磁束として演算することを特徴とする。
【0009】
本発明のさらに他の実施形態では、前記演算手段は、前記エンジンのクランキング状態では前記クランキングに必要な界磁磁束を前記目標界磁磁束として演算することを特徴とする。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態では、前記制御手段は前記エンジンのクランキングの開始に先立って前記回転電機の界磁磁束を前記目標界磁磁束に制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、可変界磁型の回転電機と、前記回転電機を制御する制御装置とを備え、前記回転電機は、ステータと、前記ステータと対向配置され、かつ、回転軸方向に互いに対向配置された第1ロータ要素及び第2ロータ要素を含み、前記第2ロータ要素は前記第1ロータ要素に対して相対回転可能なロータとを有し、前記制御装置は、前記回転電機の少なくとも角速度、要求トルク、及び前記回転電機が搭載される車両の運転状況
としてのエンジンの停止、クランキング、運転の状態を入力する入力手段と、前記角速度、要求トルク及び運転状況に基づき、発電効率を最大化するように前記回転電機の目標界磁磁束を演算する演算手段と、前記目標界磁磁束に基づき、前記第1ロータ要素に対する前記第2ロータ要素の位相角を制御するための制御指令を出力する制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の回転電機制御システムは、エンジンと回転電機で走行するハイブリッド自動車等の車両に搭載され得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搭載される車両の運転状況に応じ、回転電機の発電効率を一層向上させることができる。これにより、車両の燃費を向上し得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は可変界磁型の回転電機を搭載したハイブリッド自動車の構成を示す。回転電機として発電機200及びモータ300が搭載される。発電機200はエンジン100のクランク軸にプラネタリギヤを介して連結され、モータ300もプラネタリギヤに連結する。プラネタリギヤの出力軸はディファレンシャルギヤを介してタイヤ(駆動輪)400に連結される。発電機200及びモータ300はそれぞれ図示しないバッテリに電気的に接続され、電力送受が行われる。発電機200はエンジン100の動力により発電するとともに、発電された電力をモータ300及びバッテリに供給する。モータ300はバッテリからの電力と発電機からの電力を用いて走行用駆動力を発生してタイヤ400を駆動する。
【0017】
エンジン100、発電機200、モータ300及びタイヤ400は動力分配機構により接続され、車両の走行状態に応じてアクセル操作量に対する走行用駆動力の出力特性を変更して、モータ300のみで駆動力を発生するモード(EV走行モード)と、モータ300とエンジン100の両方で駆動力を発生するモードを選択的に切り替える。
【0018】
発電機200は可変界磁型の回転電機であり、界磁磁束(ステータの鎖交磁束)が可変の回転電機である。発電機200の具体的構成については後述する。
【0019】
電子制御装置(ECU)500はマイクロコンピュータで構成され、各種検出信号を入力して発電機200及びモータ300を制御する。特に、ECU500はハイブリッド自動車の運転状況、具体的にはエンジン100の停止、クランキング、運転の各状態に応じて発電機200での発電効率が最大となるように界磁磁束(ステータの鎖交磁束)を可変する。ECU500はハイブリッド自動車全体を制御するハイブリッド用ECUと協働で動作する。
【0020】
図2及び
図3は本実施形態における回転電機としての発電機200の基本構成を示す。
図2は発電機200の回転軸方向と直交する方向から見た断面図を示し、
図3は
図2のA−A断面に相当する図を示す。
【0021】
発電機200はケーシングに固定されたステータ24と、径方向においてステータ24と所定のギャップを空けて対向し、ステータ24に対して相対回転可能なロータ28を備える。
図2の例では、ロータ28がステータ24の内周側の位置でステータ24と対向配置される。
【0022】
ステータ24はステータコア36と、ステータコア36にその周方向に沿って配設された複数相であるU相、V相、W相の3相のステータコイル38u,38v,38wを含む。3相のステータコイル38u,38v,38wに3相の交流電流が流れることでステータ周方向に回転する回転磁界が生じる。
【0023】
ロータ28は回転軸方向に隣接した状態でステータ24と径方向に対向配置された主ロータ(第1ロータ要素)40と副ロータ(第2ロータ要素)42を含む。主ロータ40と副ロータ42は回転軸方向にギャップを空けて対向配置される。
図2では、主ロータ40が副ロータ42よりも回転軸方向一方側(図の左側)に配置され、主ロータ40がステータコア36の回転軸方向一方側と径方向に対向し、副ロータ42がステータコア36の回転軸方向他方側(図の右側)と径方向に対向する。
【0024】
主ロータ40は複数の電磁鋼板が回転軸方向に積層された主ロータコア46と、主ロータコア46にその周方向に沿って互いに等間隔で配設された複数の主永久磁石48n,48sを含む。
図3では、主ロータ40の主永久磁石48n,48sを透視して示している。
図3では、主永久磁石48n,48sは、主ロータコア46の周方向の複数位置に2つを1組としてV字型に埋設されるが、これに限定されない。主永久磁石48nは外周側がN極であり、主永久磁石48sは外周側がS極である。主永久磁石48n,48sが周方向に交互に配置されることで、主永久磁石48n,48sの極性が周方向に交互に異なる。
【0025】
副ロータ42は複数の電磁鋼板が回転軸方向に積層された副ロータコア54と、副ロータコア54にその周方向に沿って互いに等間隔で配設された複数の副永久磁石56n,56sを含む。副永久磁石56n,56sは、副ロータコア54の周方向の複数位置に2つを1組としてV字型に埋設されるが、これに限定されない。副永久磁石56nは外周側がN極であり、副永久磁石56sは外周側がS極である。副永久磁石56n,56sが周方向に交互に配置されることで、副永久磁石56n,56sの極性が周方向に交互に異なる。副永久磁石56n,56sの周方向間隔は主永久磁石48n,48sの周方向間隔に等しい。
【0026】
主ロータシャフト26には拘束板61,62が溶接等により固定される。拘束板61,62は、回転軸方向に互いに間隔をおいて配置され、拘束板62が拘束板61より回転軸方向一方側に配置され、主ロータ40が回転軸方向に拘束板61,62の間に挟持される。主ロータ40は、主ロータシャフト26とキー溝やスプライン等により係合し、主ロータシャフト26及び拘束板61,62と一体回転する。
【0027】
副ロータシャフト52には拘束板63,64が溶接等により固定される。拘束板63,64は、回転軸方向に互いに間隔をおいて配置され、拘束板63が拘束板64より回転軸方向一方側に配置され、副ロータ42が回転軸方向において拘束板63,64の間に挟持される。副ロータ42は副ロータシャフト52とキー溝やスプライン等により係合し、副ロータシャフト52及び拘束板63,64と一体回転する。副ロータシャフト52はベアリング50により主ロータシャフト26に対して相対回転可能に支持され、副ロータ42が主ロータ40に対して相対回転可能である。
【0028】
本実施形態の回転電機では、主ロータ40と副ロータ42の位相関係が変化することで、ステータ24に作用するロータ28の界磁磁束が変化する。主ロータ40と副ロータ42で同一極性の主永久磁石48nと副永久磁石56n(あるいは主永久磁石48sと副永久磁石56s)が周方向の同位相に配置される同極対向状態の場合、界磁磁束は最大となる。他方、副ロータ42が主ロータ40に対して相対回転し、主永久磁石48nと副永久磁石56n(あるいは主永久磁石48sと副永久磁石56s)が180度ずれる逆極対向状態の場合、界磁磁束は最小あるいはゼロとなる。
【0029】
図4は主ロータ40及び副ロータ42のみを取り出した斜視図を示す。
図4(a)は主ロータ40と副ロータ42が同極対向状態であり、位相角をγとすると、γ=0度(deg)の状態である。このとき、ステータ24に作用するロータ28の界磁磁束は最大となる。
図4(b)は、主ロータ40と副ロータ42が逆極対向状態であり、γ=180度(deg)の状態である。このとき、ステータ24に作用するロータ28の界磁磁束は最小となる。このように、本実施形態の発電機200は主ロータ40と副ロータ42の位相関係を変化させる、つまり主ロータ40と副ロータ42を相対回転させて位相角γを変化させることでステータ24に作用するロータ28の界磁磁束を変化させる可変界磁型の回転電機として機能する。
【0030】
図5はECU500の機能ブロック図を示す。発電機200を制御する機能ブロック図である。
【0031】
ECU500は機能ブロックとして、発電機の目標界磁特性設定部502、発電機トルク制御部506、目標位相角生成部508、及び位相角制御部510を備える。
【0032】
発電機の目標界磁特性設定部502は発電機の要求トルク、電圧、運転状況としてのエンジン状態(エンジンの動作/停止)、及び発電機200の角速度(回転数)に応じ、要求トルクを出力するために必要な発電機200の目標界磁特性(目標界磁磁束)を設定する。すなわち、発電機の目標界磁特性設定部502は、ハイブリッドECUから供給された要求トルク、電圧、エンジン状態、角速度に基づき、発電機200の発電効率が最大となるように界磁特性を設定する。発電機200の発電量をW、発電機200の要求トルクをT、発電機200の角速度(回転数)をω、界磁磁束(ステータの鎖交磁束)をφとすると、トルクTは界磁磁束φ及び角速度ωの関数であり、発電機200の損失Qは要求トルクT、界磁磁束φ、角速度ωに依存するから、発電モデルは一般に
W=T(φ,ω)ω−Q(T(φ,ω),φ,ω)
と表すことができ、発電量Wが最大となるようなφを演算する。要求トルクTは車両の駆動力やバッテリの残容量(SOC)等に応じて設定される。要求トルクT及び角速度ωは入力して与えられるから、上記の発電量モデルを用いてWが最大となるような界磁磁束φを逆演算するといえる。上記の式において、例えば、エンジンが停止状態にあり要求トルクがゼロである場合には損失Qを最小とすべく界磁磁束φを最小とする。また、エンジンが運転状態にあり要求トルクが増大した場合には界磁磁束φを最大とする等である。T(φ,ω)及びQ(T(φ,ω),φ,ω)は、実験により、あるいはシミュレーション等により予め決定してメモリに記憶しておく。一例として、要求トルク、角速度、エンジン状態と界磁磁束との対応関係をテーブルとしてメモリに記憶しておき、テーブルを参照して発電量Wを最大化する界磁磁束を読み出す。発電機の目標界磁特性設定部502は設定した目標界磁特性(目標界磁磁束)を目標位相角生成部508及び発電機トルク制御部506に出力する。
【0033】
目標位相角生成部508は演算された目標界磁特性(目標界磁磁束)に基づき、目標界磁特性に対応する目標位相角を演算して位相角制御部510に出力する。目標界磁磁束が最大であれば目標位相角γとしてγ=0度に設定し、目標界磁磁束が最小であれば目標位相角γとしてγ=180度に設定し、目標界磁磁束が最小と最大の間であればその値に応じた目標位相角度γ(例えばγ=90度)とする。目標位相角生成部508は予め界磁磁束と位相角γとの対応関係をテーブルとしてメモリに記憶しておき、このテーブルを参照して目標界磁磁束に対応する目標位相角を設定してもよい。
【0034】
位相角制御部510は目標位相角、主ロータ40の角度、副ロータ42の角度に基づき、現在の主ロータ40及び副ロータ42の位相角から目標位相角に移行するために必要な電流値を演算して駆動回路に出力する。駆動回路が副ロータ42を主ロータ40に対して機械的に回転させるアクチュエータの場合、当該アクチュエータに対して電流指令を出力する。駆動回路としてアクチュエータを用いることなく、ステータ電流により副ロータ42を主ロータ40に対して相対回転させることもできる。この場合、位相角制御部510は主ロータ40及び副ロータ42に対して互いに逆方向に回転させる方向にトルクを発生させ、ロータ28全体に対しては回転に寄与しないトルクを発生させるようにステータ電流をベクトル演算する。
【0035】
発電機トルク制御部506は要求トルク、角速度(回転数)、ステータ電流及び目標界磁特性に基づき、目標界磁特性を満たしつつ要求トルクを満たす電圧を演算し、発電機200のU相、V相、W相の3相ステータコイルに3相交流電流を供給するインバータに供給する。目標界磁特性が固定的であれば、発電機トルク制御部506は単に要求トルクを満たす電圧を演算してインバータに出力するが、本実施形態では目標界磁特性が変化するため、これに応じてインバータに出力する電圧値も変化する。すなわち、発電効率を最大化するための目標界磁特性に依存して発電機200で発電するための制御パラメータも適応的に変化する。なお、発電機トルク制御部506に目標界磁特性を入力しているが、目標値ではなく測定値(例えば主ロータと副ロータの位相角度を測定して求めた界磁特性)を用いることもできる。
【0036】
図6は本実施形態のエンジン100の回転数、エンジン100のトルク、発電機200のトルク、発電機200の界磁磁束のタイミングチャートである。
【0037】
図6(a)はエンジン100の回転数であり、時間の経過とともにエンジン停止、エンジンクランキング、エンジン運転、及びエンジン停止の各状態に順次遷移する。エンジンクランキング状態ではエンジン回転数が増大し、エンジン運転状態では運転者のアクセル操作やバッテリの残容量(SOC)に応じてエンジン回転数が増減する。エンジン停止状態ではエンジン回転数が減少しやがてゼロとなる。
【0038】
図6(b)はエンジン100のトルクであり、エンジン停止及びエンジンクランキングの各状態ではトルクはゼロであり、エンジン運転中は運転者のアクセル操作やバッテリのSOCに応じてエンジントルクが変動する。エンジン停止状態ではトルクは再びゼロとなる。エンジン100に対する要求トルクはハイブリッド自動車全体を制御するハイブリッド用ECUで演算される。ハイブリッドECUはバッテリのSOC等に基づいて発電が必要と判定すると発電指令をECU500に出力する。
【0039】
図6(c)は発電機200のトルクであり、
図6(d)は発電機200の界磁磁束である。
図6(c)の縦軸上方向(正方向)は電動トルクを示し、下方向(負方向)は発電トルクを示す。また、
図6(d)の縦軸は界磁磁束の最大値を100%、最小値を0%としている。エンジン停止状態ではエンジン回転数及びエンジントルクはゼロであり、発電機200のトルクもゼロである。このとき、発電機200の界磁磁束は最小値の0%に設定される。これは、ハイブリッド自動車がモータ300のみで走行する際(EV走行モード)に発電機200の界磁磁束を最小として発電機200での引きずり損失(鉄損)を最小化するためである。
【0040】
エンジン停止状態からエンジンクランキング状態に遷移する場合、エンジン100のクランク軸に連結された発電機200をモータとして機能させてエンジン100をクランキングする。すなわち、ハイブリッドECUからトルク指令がECU500に出力され、ECU500は発電機200をモータとして機能させる。このため発電機200のトルクも電動トルクが増大する。このとき、発電機200の界磁磁束は増大する。これは、界磁磁束を増大させて発電機200でのトルク電流を抑制し効率的にモータとして駆動させるためである。より詳細には、発電機200の要求トルクに応じて第1所定値aまで界磁磁束を急峻に増大させ、その後比較的穏やかに増大させて第2所定値b(a<b)とする。エンジンクランキングに成功すると、エンジン100が始動してエンジン回転数及びエンジントルクが増大し始める。エンジンクランキングが終了すると、発電機200のトルクは再びゼロとなり、発電に備える。
【0041】
エンジンクランキング状態からエンジン運転状態に遷移する場合、エンジン100の動力により発電すべく、ECU500は発電機200のトルクを制御する。具体的には、ハイブリッドECUはバッテリのSOCに基づきバッテリが充電すべきパワーとしてバッテリ要求パワーを算出し、バッテリ要求パワーと車両の駆動力に基づきエンジン100から出力すべきエンジン要求パワーを設定する。そして、このエンジン要求パワーに基づきエンジン100の目標回転数と目標トルクを設定し、エンジン100の目標回転数に基づき発電機200の目標回転数を設定する。さらに、発電機200の目標回転数と現在の回転数に基づき発電機200の要求トルクを設定する。エンジントルク及び発電機トルクが増大すると、これに応じて界磁磁束を増大させる。また、エンジントルク及び発電機トルクが減少すると、これに応じて界磁磁束を減少させる。エンジントルク及び発電機トルクが最大となる場合、界磁磁束を最大化(100%)にする。これにより、発電機200での発電効率を最大化できる。なお、エンジン運転中は常に界磁磁束を最大化してもよいが、この場合には発電機200に要求されるトルクに比して過剰な界磁磁束となり、発電効率が低下する。従って、発電機200の要求トルクに応じ、要求トルクに見合うだけの界磁磁束とするのが望ましい。
【0042】
エンジン運転状態から再びエンジン停止状態に遷移する場合、エンジン回転数及びエンジントルクはゼロとなり、発電機200のトルクもゼロとなる。このとき、発電機200の界磁磁束を最小として引きずり損を最小化する。
【0043】
このように、発電機200の要求トルク(電動トルク及び発電トルクのいずれも含む)及びエンジン100の状態に応じ、発電機200の界磁磁束を適応的に制御して発電効率を最大化することで発電機200の効率的な運用が可能となり、結果として燃費が向上する。
【0044】
なお、
図6のタイミングチャートでは、
図6(d)に示すようにエンジンクランキングの開始と同時に発電機200の界磁磁束を最小値から増大させているため、エンジン100の始動に時間を要することになる。このためエンジン100の始動を早くすべく、発電機200の界磁磁束をより早めに増大させてもよい。
【0045】
図7は他のタイミングチャートである。
図6と異なるのは、エンジンクランキング状態での界磁磁束の時間変化である。すなわち、
図6(d)ではエンジンクランキングの開始と同時に界磁磁束を最小値から増大させているが、
図7(d)ではクランキングの開始タイミングより前に界磁磁束を増大させ始め、界磁磁束が十分な値に達した後で発電機トルクを出力してクランキングを行う。要するに、エンジンクランキングの開始と同時に界磁磁束を変化させるのではなく、エンジンクランキングに必要な界磁磁束に達した後にエンジンクランキングを行う。これにより、エンジン100を迅速に始動できる。
【0046】
以上説明したように、発電機200での発電効率が最大となるように発電機200の界磁磁束を適応的に可変制御するので、エンジン100の動力により高効率で発電してバッテリを充電し、あるいはモータ300に電力を供給できる。特に、エンジン停止状態では界磁磁束を最小として発電機200での損失を最小化できるとともに、エンジン運転状態では界磁磁束を増大させて発電機200での発電効率を最大化できる。
【0047】
本実施形態では、
図5に示すように、発電機の要求トルク、角速度(回転数)、電圧、運転状況(エンジン状態)に基づき目標界磁特性を設定しているが、より簡易に要求トルク、角速度、運転状況に基づき目標界磁特性を設定してもよく、より高精度に要求トルク、角速度、電圧、運転状況、発電機の温度に基づき目標界磁特性を設定してもよい。この場合、電圧や温度のパラメータはテーブル(あるいはマップ)に反映させてECU500のメモリに記憶しておけばよい。また、運転状況についても、エンジン停止、エンジンクランキング、エンジン運転と識別するのではなく、モータ300のみの走行モード、エンジン100及びモータ300での走行モード、エンジン100及び発電機200での発電モード(バッテリの充電モード)等と識別してもよい。