(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209483
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】シャワーヘッドにおける散水構造
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20170925BHJP
B05B 1/18 20060101ALI20170925BHJP
B05B 1/28 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
A47K3/22
B05B1/18 101
B05B1/28
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-92584(P2014-92584)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-208527(P2015-208527A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社ケーブイケー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】国枝 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】藤城 達也
(72)【発明者】
【氏名】笠原 直之
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−267059(JP,A)
【文献】
特開2002−004368(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3179378(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/28
B05B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーヘッド本体の吐水側に設けられた面板部材には湯水を散水する複数のシャワー孔を開口し、面板部材の内面にはシャワー孔に対して湯水を接線方向に流入させて旋回させる湯水導入部を設けるとともに、前記シャワー孔の中心軸線を面板部材の中心軸線に対して面板部材の外面側ほど面板部材の外周側に位置するように傾斜させ、前記シャワー孔の外端部の周囲には湯水の散水範囲を規制する規制面を形成し、前記シャワーヘッド本体と前記面板部材との間にはリング部材を介装し、該リング部材の面板部材側の面にはシャワー孔に間隙を形成して入り込む突出部を備えたシャワーヘッドにおける散水構造。
【請求項2】
前記面板部材の中心軸線に対するシャワー孔の中心軸線の傾斜角度は3〜10°に設定されている請求項1に記載のシャワーヘッドにおける散水構造。
【請求項3】
前記シャワー孔は、面板部材の外面側ほど狭くなるテーパ状に形成されている請求項1又は請求項2に記載のシャワーヘッドにおける散水構造。
【請求項4】
前記リング部材の各突出部間には、湯水を面板部材内面の湯水導入部へ供給する湯水供給孔を開口した請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシャワーヘッドにおける散水構造。
【請求項5】
前記面板部材のシャワー孔より外周部には、前記シャワー孔から散水される湯水を保温するための複数の吐水孔を開口した請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシャワーヘッドにおける散水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば浴室、シャワー室等において使用され、湯、水又は湯水混合水(以下、総称して湯水という)をミスト状にして吐出することができるシャワーヘッドにおける散水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室等で使用されるミスト発生装置が特許文献1に開示されている。すなわち、このミスト発生装置は、湯水をノズルチップ内で旋回させることにより、湯水がミスト状になって吐出される。そして、この特許文献1においては、ノズルチップ内の流路及びノズル口がノズルチップの中心軸線方向を指向するように形成されている。このため、湯水はノズルチップの中心軸線方向に吐出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−200260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように特許文献1に記載されているミスト発生装置においては、ノズルチップの流路及びノズル口がノズルチップの中心軸線に沿って延びるように構成されている。このため、湯水がノズル口から肌に対して真っ直ぐに当たるように吐出される。従って、その湯水は肌に強く当たることから、シャワーの使用感が悪いという欠点があった。さらに、シャワーとしての湯水の散水範囲が狭くなることから、体の広い範囲に散水することができない。
【0005】
そこで本発明の目的とするところは、湯水の散水範囲を広げることができるとともに、湯水による肌当たりを優しくして使用感を向上させることができるシャワーヘッドにおける散水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のシャワーヘッドにおける散水構造は、シャワーヘッド本体の吐水側に設けられ
た面板部材には湯水を散水する複数のシャワー孔を開口し、面板部材の内面にはシャワー孔に対して湯水を接線方向に流入させて旋回させる湯水導入部を設けるとともに、前記シャワー孔の中心軸線を面板部材の中心軸線に対して面板部材の外面側ほど面板部材の外周側に位置するように傾斜させ、前記シャワー孔の外端部の周囲に
は湯水の散水範囲を規制する規制面を形成し
、前記シャワーヘッド本体と前記面板部材との間にはリング部材を介装し、該リング部材の面板部材側の面にはシャワー孔に間隙を形成して入り込む突出部を備えたものである。
【0007】
このように構成すれば、シャワー孔に対して湯水が接線方向に旋回されながら流入される。このため、シャワー孔から吐出される湯水が広がってミスト状になる。さらに、シャワー孔の中心軸線を面板部材の中心軸線に対して面板部材の外面側ほど面板部材の外周側に位置するように傾斜させた。このため、シャワー孔から散水される湯水の散水方向を面板部材の外周方向へ斜めに設定することができる。従って、肌に対してシャワーとして散水される湯水の面積を広げることができ、肌当たりを弱めることができる。また、前記シャワー孔の外端部の周囲には、環状の規制面が形成されている。従って、湯水の散水範囲が広がり過ぎないように規制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシャワーヘッドにおける散水構造によれば、シャワーの散水範囲を広げることができるとともに、肌当たりを優しくして使用感を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態におけるシャワーヘッドの構造を、面板部材の内面が見えるように分解して示す斜視図。
【
図2】シャワーヘッドの構造を、面板部材の外面が見えるように分解して示す斜視図。
【
図4】シャワーヘッドの面板部材の内面を示す正面図。
【
図5】面板部材内面の湯水導入部を拡大して示す正面図。
【
図6】シャワーヘッドの面板部材を拡大して示す断面図。
【
図7】面板部材のシャワー孔及びその関連部分を示す拡大図。
【
図8】シャワーヘッドの面板部材のシャワー孔を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を
図1〜
図7に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図3に示すように、シャワーヘッド10のシャワーヘッド本体(以下、本体という)11は把持部12を有するとともに、その内部には湯水を流通させる流路13が形成されている。本体11の前部には止水ボタン14が設けられ、該止水ボタン14を操作することにより、流路13を開閉できるようになっている。本体11の先端部には、前記流路13に連通する複数の連通路15が形成されている。
【0011】
図1〜
図3に示すように、前記本体11の先端部の吐水側には、面板部材17が嵌合されている。
図6に示すように、前記面板部材17の外周部には外周壁171が形成されるとともに、その外周壁171の内側に内周壁172が間隔をおいて形成されている。
図6及び
図7に示すように、外周壁171の内周側には外周段部173が形成されるとともに、内周壁172の外周側には内周段部174が形成され、それらの段部173,174の間に流路175が形成されている。内外の段部173,174間において、面板部材17には、湯水を散水する複数のシャワー孔18が周方向に一定間隔をおいて円環状に配列されている。
【0012】
図6及び
図7に示すように、外周段部173及び内周段部174には前記流路175内の湯水を前記シャワー孔18の接線方向に案内するための案内壁176が形成されている。その案内壁176の先端と、同案内壁176に対向する外周段部173または内周段部174との間には湯水導入部19が形成されている。そして、流路175からの湯水が、前記シャワー孔18に対して接線方向(周方向)に旋回されながら流入される。
【0013】
図3、
図7、
図9及び
図10に示すように、前記外周段部173及び内周段部174上にはリング部材16が載置されて、本体11側の蓋部材111によって押さえられている。前記リング部材16はABS樹脂等の合成樹脂製により形成され、
図8に示すように、その面板部材17側の面には各シャワー孔18の上流側開口内に間隙29を設けて入り込む断面円錐台状の突出部20が周方向に一定間隔をおいて設けられている。
図7に示すように、これらの突出部20間、すなわちシャワー孔18間には、湯水を流路175を介して湯水導入部19へ供給する湯水供給孔21が開口されている。
【0014】
また、リング部材16の外周面には円弧状をなす複数の位置決め凹部22が形成され、外周壁171の内周面に設けられた複数の位置決め凸部23に係合して、リング部材16が面板部材17に位置決め固定されるようになっている。
【0015】
図6及び
図8に示すように、前記シャワー孔18は、面板部材17の外面側ほど狭くなるテーパ状に形成されている。また、シャワー孔18は、その中心軸線xが面板部材17の中心軸線と平行な平行軸線yに対して面板部材17の外面側ほど面板部材17の外周側に位置するように傾斜している。この面板部材17の平行軸線yに対するシャワー孔18の中心軸線xの傾斜角度αは、好ましくは3〜10°に設定される。本実施形態では、シャワー孔18の傾斜角度αは5°に設定されている。
【0016】
この傾斜角度αが3°に満たない場合には、シャワー孔18から吐出される湯水の散水範囲を十分に広げることができず、また吐水が肌に強く当たりやすい傾向を示し、シャワーの使用感が悪くなるため好ましくない。その一方、傾斜角度αが10°を超える場合には、シャワー孔18から吐出される湯水の散水範囲が広がり過ぎて、所望とするシャワー効果が得られ難くなって好ましくない。
【0017】
図8に示すように、前記シャワー孔18の外端部の周囲において面板部材17の表面には、浅いテーパ状の凹部181が形成されている。この凹部181における面板部材17の外周側の内側面には規制面25が形成されている。この規制面25により、シャワー孔18から吐出された湯水の散水範囲が広がり過ぎないよう規制されるようになっている。
【0018】
また、前記シャワー孔18の外端部及び規制面25に連なる散水端面26は、面板部材17の外端面27に対して外周側ほど内側に位置する斜面となっている。面板部材17の外端面27に対する散水端面26の斜状角度βは、好ましくは3〜10°に設定される。この斜状角度βが3°より小さい場合には、シャワー孔18から吐出される湯水の散水範囲を広げることが難しくなって好ましくない。一方、斜状角度βが10°より大きい場合には、シャワー孔18から吐出される湯水の散水範囲が広がり過ぎる傾向を示して好ましくない。
【0019】
図2及び
図3に示すように、前記面板部材17のシャワー孔18より外周部には、シャワー孔18を囲むように周方向に一定間隔をおいて多数の吐水孔28が開口されている。この吐水孔28は前記連通路15に連通して湯水が吐出されるように構成され、前記シャワー孔18から散水される湯水を保温するようになっている。なお、吐水孔28の軸線は、シャワー孔18の中心軸線xとほぼ平行に設定されている。
【0020】
次に、上記のように構成された本実施形態のシャワーヘッド10における散水構造の作用を説明する。
さて、
図3に示すように、シャワーヘッド10の面板部材17のシャワー孔18から湯水をシャワーとして吐出させる場合には、湯水を本体11の流路13及び連通路15からリング部材16の湯水供給孔21を経て面板部材17の湯水導入部19へ導く。このとき、
図5の矢印に示すように、湯水は一対の案内壁176によって案内されることにより、湯水導入部19から渦巻き状に旋回されながらシャワー孔18内へ流れ込む。このため、
図3及び
図8の二点鎖線に示すように、湯水はシャワー孔18の外端部から広がりながらミスト状になって吐出される。
【0021】
この場合、
図8に示すように、面板部材17の中心軸線と平行な平行軸線yに対するシャワー孔18の中心軸線xの傾斜角度αが5°に設定されている。このため、シャワー孔18からの湯水の中心は、前記平行軸線yの延長線より外周側へ向かうことになる。従って、本実施形態の場合には、シャワー孔18の中心軸線xが前記平行軸線yと同じ場合に比べて、肌に対する湯水の当たりが柔らかくなるとともに、シャワー全体としての散水範囲を広げることができる。
【0022】
また、シャワー孔18の外端部の周囲には環状の規制面25が形成されていることから、シャワー孔18から吐出される湯水のうち外周側の湯水が規制面25に当たって湯水の広がり過ぎが規制され、湯水の散水範囲が整えられる。
【0023】
加えて、
図2に示すように、面板部材17のシャワー孔18より外周部には多数の吐水孔28がシャワー孔18の周囲を囲むように設けられ、各吐水孔28から湯水が吐出されることから、シャワー孔18から吐出される湯水の周囲の温度が上昇し、シャワー孔18からの湯水の温度低下が抑えられる。
【0024】
以上の実施形態により発揮される効果について以下にまとめて記載する。
(1)本実施形態のシャワーヘッド10における散水構造では、面板部材17には複数のシャワー孔18を開口し、面板部材17の内面にはシャワー孔18に対して湯水を接線方向に流入させて旋回させる湯水導入部19を設けた。さらに、シャワー孔18の中心軸線xを面板部材17の中心軸線と平行な平行軸線yに対して面板部材17の外面側ほど面板部材17の外周側に位置するように傾斜させた。このため、シャワー孔18から散水される湯水を旋回流にできるとともに、湯水の散水方向を外周方向へ斜めに設定することができる。従って、体に対して散水される湯水の面積を広げることができるとともに、肌当たりを弱めることができる。
【0025】
よって、本実施形態のシャワーヘッド10における散水構造によれば、湯水の散水範囲を広げることができるとともに、湯水による肌当たりを優しくして使用感を向上させることができるという効果を奏する。
【0026】
(2)前記シャワー孔18の外端部の周囲には、面板部材17を切欠くことにより環状の規制面25が形成されている。このため、湯水の散水範囲を広げることを許容しつつ、湯水の過剰な拡散を抑制することができる。
【0027】
(3)前記平行軸線yに対するシャワー孔18の中心軸線xの傾斜角度αは3〜10°に設定されている。このため、湯水による肌当たりを良好に維持しながら、湯水の散水範囲を適度に広げることができる。
【0028】
(4)前記シャワー孔18は、面板部材17の外面側ほど狭くなるテーパ状に形成されている。そのため、シャワー孔18内において湯水の旋回流を形成しやすくすることができる。
【0029】
(5)前記本体11と面板部材17との間にはリング部材16を介装し、該リング部材16の面板部材17側の面にはシャワー孔18に入り込む突出部20を備えている。従って、シャワー孔18に流入する湯水に対して旋回流の生成を促進させることができる。
【0030】
(6)前記リング部材16の各突出部20間には、湯水を面板部材17内面の湯水導入部19へ供給する湯水供給孔21が開口されている。そのため、湯水を湯水導入部19に対して円滑に供給することができる。
【0031】
(7)前記面板部材17のシャワー孔18より外周部には、シャワー孔18を囲むように複数の吐水孔28が開口されている。このため、シャワー孔18から散水される湯水の温度低下を抑制することができる。
【0032】
なお、前記各実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・面板部材17の外面に凸部を形成し、この凸部に前記規制面25を形成してもよい。
・前記湯水導入部19をシャワー孔18の外周側又は内周側のいずれか一方のみにし、他方を省略するように構成してもよい。
【0033】
・前記シャワー孔18内に螺旋溝を形成し、シャワー孔18内において湯水の旋回を促すように構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…シャワーヘッド、11…本体、16…リング部材、17…面板部材、18…シャワー孔、19…湯水導入部、20…突出部、21…湯水供給孔、25…規制面、28…吐水孔、x…シャワー孔の中心軸線、y…面板部材の中心軸線と平行な平行軸線、α…傾斜角度。