特許第6209493号(P6209493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本電信電話株式会社の特許一覧

特許6209493塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法
<>
  • 特許6209493-塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法 図000002
  • 特許6209493-塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法 図000003
  • 特許6209493-塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法 図000004
  • 特許6209493-塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法 図000005
  • 特許6209493-塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法 図000006
  • 特許6209493-塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法 図000007
  • 特許6209493-塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法 図000008
  • 特許6209493-塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法 図000009
  • 特許6209493-塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法 図000010
  • 特許6209493-塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209493
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/00 20060101AFI20170925BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20170925BHJP
   G01N 21/894 20060101ALI20170925BHJP
   G01N 19/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G01N19/00 Z
   G01N21/84 C
   G01N21/894 Z
   G01N19/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-121206(P2014-121206)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-1146(P2016-1146A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】赤毛 勇一
(72)【発明者】
【氏名】半田 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】高谷 雅昭
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−293152(JP,A)
【文献】 特開2000−046725(JP,A)
【文献】 特開平10−226768(JP,A)
【文献】 実開平07−034352(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0165294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/00 − 19/10
G01N 17/00 − 17/04
G01N 21/84
G01N 21/894
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の表面に形成された塗装膜の良否判定方法であって、
前記塗装膜に打撃を与える工程と、
前記金属と前記塗装膜をアルカリ液に浸漬する工程と、
前記打撃を与える前の前記塗装膜の外観と前記アルカリ液に浸漬した後の前記塗装膜の外観の差に基づいて前記塗装膜の良否を判定する工程と
を含むことを特徴とする塗装膜の良否判定方法。
【請求項2】
金属の表面に形成された塗装膜の良否判定方法であって、
前記塗装膜に打撃を与える工程と、
前記金属と前記塗装膜をアルカリ液に浸漬する工程と、
前記打撃を与える前の前記金属の重量と前記アルカリ液に浸漬した後の前記金属の重量の差に基づいて前記塗装膜の良否を判定する工程と
を含むことを特徴とする塗装膜の良否判定方法。
【請求項3】
金属の表面に形成された塗装膜の耐衝撃性能判定方法であって、
前記塗装膜に打撃を与える工程と、
前記金属と前記塗装膜をアルカリ液に浸漬する工程と、
前記打撃を与える前の前記塗装膜の外観と前記アルカリ液に浸漬した後の前記塗装膜の外観の差に基づいて前記塗装膜の耐衝撃性能を判定する工程と
を含むことを特徴とする塗装膜の耐衝撃性能判定方法。
【請求項4】
金属の表面に形成された塗装膜の耐衝撃性能判定方法であって、
前記塗装膜に打撃を与える工程と、
前記金属と前記塗装膜をアルカリ液に浸漬する工程と、
前記打撃を与える前の前記金属の重量と前記アルカリ液に浸漬した後の前記金属の重量の差に基づいて前記塗装膜の耐衝撃性能を判定する工程と
を含むことを特徴とする塗装膜の耐衝撃性能判定方法。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の表面に形成された塗装膜の良否判定方法および塗装膜の耐衝撃性能判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、例えば、粉体塗装膜は雨や酸素などの大気環境から鋼材等の金属材料を隔離し、鋼材等の腐食対策として利用されている。従って、粉体塗装膜に貫通クラックやピンホールなど水分やガス等が容易に透過できる欠陥があることは問題である。
【0003】
貫通クラックやピンホールなどがあるかどうかについては外観検査が行われるのが一般的であったが、微細なクラック、ピンホールについては外観観察では判断がつかないことがあった。
【0004】
そこで、例えば、金属と塗装膜をアルカリ液に一定期間浸漬し、塗装膜に欠け、ひび(割れ)が見られたなら、塗装膜は不良品であるとする方法が用いられることがある。
また、日本工業規格(JIS)では、品質管理を目的とした塗料・塗膜に関する試験方法が規格化されている。JIS K 5600-1999塗料一般試験方法では、塗膜の視覚特性、機械的性質、化学的性質、長期耐久性などの試験方法が規定されている。
【0005】
品質管理によく用いられている機械的性質の中で代表的な項目としては、(1)付着性(クロスカット法)、(2)引っかき硬度(鉛筆法)、(3)耐おもり落下性、(4)耐摩耗性(摩耗輪法)などがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「日本工業標準調査会」、[online]、[平成26年5月9日検索]、インターネット<URL:http://www.jisc.go.jp/>
【非特許文献2】「塗膜の機械的性質」、[online]、[平成26年5月9日検索]、インターネット<URL:http://www.iri-tokyo.jp/joho/kohoshi/tiri/gijutsu/documents/tn20090903.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、上記の方法、つまり、金属と塗装膜をアルカリ液に一定期間浸漬し、塗装膜に欠け、ひび(割れ)が見られたなら、塗装膜は不良品であるとする方法では、アルカリ液に浸漬する時間が短いと、不良品塗装膜であっても、欠け、ひび(割れ)が生じない場合がある。その場合は、アルカリ液に浸漬する時間を長くする必要がある。しかしながら、良否判定を短時間で行いたいとの要望が強い。また、同様の理由で、塗装膜の耐衝撃性能を短時間で行いたいとの要望もある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属の表面に形成された塗装膜の良否を短時間で判定できる塗装膜の良否判定方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、金属の表面に形成された塗装膜の耐衝撃性能を短時間で判定できる塗装膜の耐衝撃性能判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、第1の本発明は、金属の表面に形成された塗装膜の良否判定方法であって、前記塗装膜に打撃を与える工程と、前記金属と前記塗装膜をアルカリ液に浸漬する工程と、前記打撃を与える前の前記塗装膜の外観と前記アルカリ液に浸漬した後の前記塗装膜の外観の差に基づいて前記塗装膜の良否を判定する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
第2の本発明は、金属の表面に形成された塗装膜の良否判定方法であって、前記塗装膜に打撃を与える工程と、前記金属と前記塗装膜をアルカリ液に浸漬する工程と、前記打撃を与える前の前記金属の重量と前記アルカリ液に浸漬した後の前記金属の重量の差に基づいて前記塗装膜の良否を判定する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
第3の本発明は、金属の表面に形成された塗装膜の耐衝撃性能判定方法であって、前記塗装膜に打撃を与える工程と、前記金属と前記塗装膜をアルカリ液に浸漬する工程と、前記打撃を与える前の前記塗装膜の外観と前記アルカリ液に浸漬した後の前記塗装膜の外観の差に基づいて前記塗装膜の耐衝撃性能を判定する工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
第4の本発明は、金属の表面に形成された塗装膜の耐衝撃性能判定方法であって、前記塗装膜に打撃を与える工程と、前記金属と前記塗装膜をアルカリ液に浸漬する工程と、前記打撃を与える前の前記金属の重量と前記アルカリ液に浸漬した後の前記金属の重量の差に基づいて前記塗装膜の耐衝撃性能を判定する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塗装膜の良否判定方法によれば、金属の表面に形成された塗装膜の良否を短時間で判定できる。また、本発明の塗装膜の耐衝撃性能判定方法によれば、金属の表面に形成された塗装膜の耐衝撃性能を短時間で判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態に係る塗装膜の良否判定方法を示すフローチャートである。
図2】良品塗装膜の当初の外観の一例である。
図3】不良品塗装膜の当初の外観の一例である。
図4】打撃付加直後の良品塗装膜の外観の一例である。
図5】打撃付加直後の不良品塗装膜の外観の一例である。
図6】打撃付加せずアルカリ液に浸漬した後の良品塗装膜の外観の一例である。
図7】打撃付加せずアルカリ液に浸漬した後の不良品塗装膜の外観の一例である。
図8】打撃付加してアルカリ液に浸漬した後の良品塗装膜の外観の一例である。
図9】打撃付加してアルカリ液に浸漬した後の不良品塗装膜の外観の一例である。
図10】第2の実施の形態に係る塗装膜の良否判定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る塗装膜の良否判定方法を示すフローチャートである。
【0018】
第1の実施の形態に係る塗装膜の良否判定方法は、金属の表面に形成された塗装膜の良否判定方法であって、塗装膜に打撃を与える工程(S1)と、金属と塗装膜をアルカリ液に浸漬する工程(S2)と、打撃を与える前の塗装膜の外観とアルカリ液に浸漬した後の塗装膜の外観の差に基づいて塗装膜の良否を判定する工程(S3)とを含むものである。
【0019】
金属は、例えば鉄である。また、塗装膜がコンクリートで覆われ、屋外で使用される場合、アルカリ液としては、コンクリートからしみ出た雨水または同様の成分を有する液体が使用される。
【0020】
塗装膜は1層であっても2層以上であってもよい。例えば、1層だけの塗装膜が不良判定となった場合、2層の塗装膜に改良し、良判定となったなら、製品化するという例が考えられる。また、製品化された塗装膜の出荷検査にこの方法を用いてもよい。また、新たな塗装膜の形成方法で形成された塗装膜の検査にこの方法を用いてもよい。
【0021】
図2は、良品塗装膜の当初の外観の一例、図3は、不良品塗装膜の当初の外観の一例、図4は、打撃付加直後の良品塗装膜の外観の一例、図5は、打撃付加直後の不良品塗装膜の外観の一例、図6は、打撃付加せずアルカリ液に7日間浸漬した後の良品塗装膜の外観の一例、図7は、打撃付加せずアルカリ液に7日間浸漬した後の不良品塗装膜の外観の一例、図8は、打撃付加してアルカリ液に7日間浸漬した後の良品塗装膜の外観の一例、図9は、打撃付加してアルカリ液に7日間浸漬した後の不良品塗装膜の外観の一例である。
【0022】
図2図3図4図5に示すように、良品塗装膜の当初の外観、不良品塗装膜の当初の外観、打撃付加直後の良品塗装膜の外観、打撃付加直後の不良品塗装膜の外観は、打撃の痕跡を除けば、ほぼ同様である。
【0023】
図6図7に示すように、打撃付加せずアルカリ液に7日間浸漬した後の良品塗装膜の外観、打撃付加せずアルカリ液に7日間浸漬した後の不良品塗装膜の外観は、図2図3に示す当初の外観とほぼ同様である。つまり、打撃を付加しない場合、アルカリ液に浸漬する時間は7日間では短い。
【0024】
しかし、図8に示すように、打撃付加してアルカリ液に7日間浸漬した後の良品塗装膜の外観は、打撃の痕跡を除けば、図2に示す当初の外観とほぼ同様である。よって、この塗装膜は良品と判定される。
【0025】
一方、図9に示すように、打撃付加してアルカリ液に7日間浸漬した後の不良品塗装膜には、図9に示すような欠けや、図示しないひび(割れ)が見られるようになる。つまり、打撃の痕跡を除いても、図3に示す当初の外観とは明らかな差がある。よって、この塗装膜は不良品と判定される。つまり、打撃を付加することで、アルカリ液に浸漬する時間は、この例の場合、7日間で十分といえる。
【0026】
したがって、第1の実施の形態に係る塗装膜の良否判定方法によれば、金属の表面に形成された塗装膜の良否を短時間で判定できる。
【0027】
なお、図8のように外観変化が少ない塗装膜は、比較的高い耐衝撃性能を有するとも言える。また、図9のように外観変化が多い塗装膜は、比較的低い耐衝撃性能を有するとも言える。したがって、(S3)打撃を与える前の塗装膜の外観とアルカリ液に浸漬した後の塗装膜の外観の差に基づいて塗装膜の良否を判定する工程は、打撃を与える前の塗装膜の外観とアルカリ液に浸漬した後の塗装膜の外観の差に基づいて耐衝撃性能を判定する工程とも言える。つまり、外観変化が多い場合は、耐衝撃性能が低く、外観変化が少ない場合は、耐衝撃性能が高いと判定すればよい。
【0028】
例えば、金属の表面に形成された塗装膜を有する製品を運搬/設置/利用する際において衝撃が加わることが想定される場合、衝撃に対する影響がないように、製品の要求仕様に高い耐衝撃性能が加えられることがある。そのような場合、この耐衝撃性能判定方法により、製品の耐衝撃性能を短時間で判定できる。
【0029】
すなわち、このような耐衝撃性能判定方法によれば、金属の表面に形成された塗装膜の耐衝撃性能を短時間で判定できる。
【0030】
[第2の実施の形態]
図10は、第2の実施の形態に係る塗装膜の良否判定方法を示すフローチャートである。
【0031】
第2の実施の形態に係る塗装膜の良否判定方法は、金属の表面に形成された塗装膜の良否判定方法であって、塗装膜に打撃を与える工程(SS1)と、金属と塗装膜をアルカリ液に浸漬する工程(SS2)と、打撃を与える前の金属の重量とアルカリ液に浸漬した後の金属の重量の差に基づいて塗装膜の良否を判定する工程(SS3)とを含むものである。
【0032】
第1の実施の形態との違いは、打撃を与える前の塗装膜の外観とアルカリ液に浸漬した後の塗装膜の外観の差に基づいて塗装膜の良否を判定する工程(S3)に代えて、打撃を与える前の金属の重量とアルカリ液に浸漬した後の金属の重量の差に基づいて塗装膜の良否を判定する工程(SS3)を設けたことである。
【0033】
図9に示すような欠けや、図示しないひび(割れ)が見られなくても、塗装膜には目に見えないひび(割れ)やピンホールが生じる可能性がある。
【0034】
そこで、ひび(割れ)やピンホールを通じて、アルカリ液が金属に達し、金属を腐食させ、金属の重量が減少することを利用する。例えば、重量の差が予め定めた重量より少なければ、塗装膜は良品と判定する一方、重量の差が予め定めた重量以上ならば、塗装膜は不良品と判定する。
【0035】
したがって、第2の実施の形態に係る塗装膜の良否判定方法によれば、金属の表面に形成された塗装膜の良否を短時間でしかも外観に差が見られなくても判定できる。
【0036】
なお、金属の重量減少が小さくなる原因は、ひび(割れ)やピンホールが小さいことであるから、塗装膜は、比較的高い耐衝撃性能を有するとも言える。また、金属の重量減少が大きくなる原因は、ひび(割れ)やピンホールが大きいことであるから、塗装膜は、比較的低い耐衝撃性能を有するとも言える。したがって、(SS3)打撃を与える前の金属の重量とアルカリ液に浸漬した後の金属の重量の差に基づいて塗装膜の良否を判定する工程は、打撃を与える前の金属の重量とアルカリ液に浸漬した後の金属の重量の差に基づいて塗装膜の耐衝撃性能を判定する工程とも言える。つまり、金属の重量減少が小さい場合、耐衝撃性能が低く、金属の重量減少が大きい場合は、耐衝撃性能が高いと判定すればよい。
【0037】
すなわち、このような耐衝撃性能判定方法によれば、金属の表面に形成された塗装膜の耐衝撃性能を短時間で判定できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10