特許第6209504号(P6209504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209504
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ケーブル類保護案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/16 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   F16G13/16
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-233933(P2014-233933)
(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-98859(P2016-98859A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2016年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅之
【審査官】 村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−267436(JP,A)
【文献】 特開2014−176279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びるシートを折り曲げ部において折り曲げて前記シートにおける短手方向の一端部と他端部とを連結することで前記シートの内側に前記シートの長手方向に沿って延びるように形成される収容空間にケーブル類を収容するケーブル類保護案内装置であって、
前記一端部には、凸部が設けられ、
前記他端部には、前記凸部を収容可能な収容部が設けられ、
前記凸部は、その両側部に被係止部をそれぞれ有し、
前記収容部は、開口部と、前記開口部を広げるように弾性変形されながら前記開口部から前記凸部が挿入された際に前記被係止部をそれぞれ係止可能な係止部とを有し、
前記凸部の両側部に配置されたそれぞれの前記被係止部は、前記凸部が前記開口部から前記収容部内に挿入される際の挿入方向の位置が互いに異なり、
前記凸部及び前記収容部は、前記収容空間を形成する内周壁に設けられ、
前記係止部は、前記収容部における前記開口部を挟んだ両側にそれぞれ配置され、
前記凸部の両側部に配置されたそれぞれの前記被係止部のうち、前記内周壁からの距離が近い方は第1被係止部とされ、前記内周壁からの距離が遠い方は第2被係止部とされ、
前記第1被係止部は、前記第2被係止部よりも前記挿入方向の前側に配置されていることを特徴とするケーブル類保護案内装置。
【請求項2】
前記凸部が前記収容部に収容されて前記収容空間が形成された状態では、前記凸部及び前記収容部が前記収容空間の外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のケーブル類保護案内装置。
【請求項3】
前記凸部が前記収容部に収容されて前記収容空間が形成された状態では、前記凸部及び前記収容部が前記収容空間内に配置されることを特徴とする請求項1に記載のケーブル類保護案内装置。
【請求項4】
前記凸部が前記収容部に収容されて前記収容空間が形成された状態では、前記開口部を二等分する面が前記凸部を二等分することを特徴とする請求項1〜請求項のうちいずれか一項に記載のケーブル類保護案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、工作機械などの移動部に給電や給液などを行う可撓性のケーブルやホースなどの長尺状のケーブル類を収容状態にして移動部の移動に合わせて案内するケーブル類保護案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のケーブル類保護案内装置としては、押出成形加工された長尺状のエラストマー樹脂製シートを折り曲げ部分において両側方に折り曲げて形成したケーブル収納空間内にケーブル類を当該シートの長手方向に沿って収納するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなケーブル類保護案内装置のエラストマー樹脂製シートは、外周壁形成部分と、外周壁形成部分の両側に折り曲げ部分を介してそれぞれ配置された側壁形成部分と、これら2つの側壁形成部分にそれぞれ垂設された内周壁形成部分とを備えている。
【0003】
内周壁形成部分は、2つの側壁形成部分のうちの一方に垂設された雌型内周壁部と、他方に垂設されて雌型内周壁部に対して雌雄嵌合(凹凸嵌合)可能な雄型内周壁部とを備えている。そして、内周壁形成部分は、ケーブル収納空間の形成時にシートの長手方向に沿って雌型内周壁部と雄型内周壁部とを互いに雌雄嵌合させた状態で閉じ合わせることで、外周壁形成部分に対向して配置される内部平坦面を構成するようになっている。
【0004】
この場合、特許文献1の図5(a)に示すように、雌型内周壁部は凹溝(収容部)を備え、雄型内周壁部は凹溝に挿入されて係止される凸条(凸部)を備えている。そして、凸条は、凹溝に挿入された際に、抜け止めとなる返し部(被係止部)を両側部に対をなすように有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−267436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようなケーブル類保護案内装置では、凸条の両側部に設けられたそれぞれの返し部の位置が凸条の凹溝に対する挿入方向において一致している。このため、凸条を凹溝の開口部から押し込むことで凹溝を弾性変形させながら凸条を凹溝内に挿入する際に、両側の2つの返し部を含んだ凸条の最大幅分の大きさまで開口部が広がるように凸条を凹溝内に押し込む必要があるので、凹溝に対して凸条を容易に挿入することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、一方向に延びるシートを折り曲げてケーブル類を収容する収容空間を形成する際に、シートの短手方向の一端部に設けられた凸部を他端部に設けられた収容部に対して容易に挿入することが可能なケーブル類保護案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するケーブル類保護案内装置は、一方向に延びるシートを折り曲げ部において折り曲げて前記シートにおける短手方向の一端部と他端部とを連結することで前記シートの内側に前記シートの長手方向に沿って延びるように形成される収容空間にケーブル類を収容するケーブル類保護案内装置であって、前記一端部には、凸部が設けられ、前記他端部には、前記凸部を収容可能な収容部が設けられ、前記凸部は、その両側部に被係止部をそれぞれ有し、前記収容部は、開口部と、前記開口部を広げるように弾性変形されながら前記開口部から前記凸部が挿入された際に前記被係止部をそれぞれ係止可能な係止部とを有し、前記凸部の両側部に配置されたそれぞれの前記被係止部は、前記凸部が前記開口部から前記収容部内に挿入される際の挿入方向の位置が互いに異なる。
【0009】
この構成によれば、凸部を開口部から収容部内に挿入する際に、凸部の両側部に配置された2つの被係止部が異なるタイミングで開口部を通過するため、2つの被係止部が同じタイミングで開口部を通過する場合に比べて開口部を広げるための収容部の弾性変形量を小さくすることができる。したがって、一方向に延びるシートを折り曲げてケーブル類を収容する収容空間を形成する際に、シートの短手方向の一端部に設けられた凸部を他端部に設けられた収容部に対して容易に挿入することが可能となる。
【0010】
上記ケーブル類保護案内装置において、前記凸部及び前記収容部は、前記収容空間を形成する内周壁に設けられ、前記係止部は、前記収容部における前記開口部を挟んだ両側にそれぞれ配置され、前記凸部の両側部に配置されたそれぞれの前記被係止部のうち、前記内周壁からの距離が近い方は第1被係止部とされ、前記内周壁からの距離が遠い方は第2被係止部とされ、前記第1被係止部は、前記第2被係止部よりも前記挿入方向の前側に配置されていることが好ましい。
【0011】
通常、内周壁が内側となるようにケーブル類保護案内装置が湾曲された場合、凸部が収容部の開口部から抜け出す方向(挿入方向の反対方向)に荷重がかかる。このときの荷重は、内周壁に近い位置ほど大きくなるので、第1被係止部と第2被係止部との挿入方向の位置が同じである場合、第1被係止部が当該第1被係止部と対応する係止部に係止されるときの荷重は、第2被係止部が当該第2被係止部と対応する係止部に係止されるときの荷重よりも格段に大きくなる。このため、第1被係止部と、当該第1被係止部と対応する係止部との係止状態が解除され易くなるので、収容部から凸部が抜け出し易くなってしまうという問題がある。この点、この構成によれば、第1被係止部が第2被係止部よりも挿入方向の前側に配置されているため、凸部が収容部の開口部から抜け出す方向に荷重がかかった場合には、第2被係止部が当該第2被係止部と対応する係止部に係止されるときの荷重がある程度大きくなってから第1被係止部が当該第1被係止部と対応する係止部に係止される。このため、第1被係止部が当該第1被係止部と対応する係止部に係止されるときの荷重と、第2被係止部が当該第2被係止部と対応する係止部に係止されるときの荷重との差が小さくなるので、第1被係止部と第2被係止部との間での荷重の偏りが抑制される。したがって、凸部が収容部から抜け出すことを抑制することが可能となる。
【0012】
上記ケーブル類保護案内装置において、前記凸部が前記収容部に収容されて前記収容空間が形成された状態では、前記凸部及び前記収容部が前記収容空間の外側に配置されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、凸部及び収容部を収容空間内に配置する場合に比べて、収容空間を広く確保することが可能となる。
上記ケーブル類保護案内装置において、前記凸部が前記収容部に収容されて前記収容空間が形成された状態では、前記凸部及び前記収容部が前記収容空間内に配置されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、凸部及び収容部を収容空間の外側に配置する場合に比べて、装置全体の大きさを小さくすることが可能となる。
上記ケーブル類保護案内装置において、前記凸部が前記収容部に収容されて前記収容空間が形成された状態では、前記開口部を二等分する面が前記凸部を二等分することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、凸部が収容部の開口部から抜け出す方向(挿入方向の反対方向)に荷重がかかった場合に、両被係止部を対応する係止部によってそれぞれ荷重のバランスが良い状態で係止することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一方向に延びるシートを折り曲げてケーブル類を収容する収容空間を形成する際に、シートの短手方向の一端部に設けられた凸部を他端部に設けられた収容部に対して容易に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態のケーブル類保護案内装置の展開図。
図2】同ケーブル類保護案内装置において第1連結部と第2連結部とを連結するときの状態を示す断面図。
図3】同ケーブル類保護案内装置の使用時の斜視図。
図4図3の要部拡大図。
図5】(a)〜(d)は、一実施形態のケーブル類保護案内装置において凸部を収容溝に挿入するときの動作を示す要部拡大図。
図6】(a)〜(c)は、比較例のケーブル類保護案内装置において凸部を収容溝に挿入するときの動作を示す要部拡大図。
図7】(a)〜(d)は、一実施形態のケーブル類保護案内装置において凸部が収容溝から抜き出されるときの動作を示す要部拡大図。
図8】(a),(b)は、比較例のケーブル類保護案内装置において凸部が収容溝から抜き出されるときの動作を示す要部拡大図。
図9】変更例のケーブル類保護案内装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、ケーブル類保護案内装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、ケーブル類保護案内装置11は、押出成形加工によって一方向に延びるように長尺状に形成された合成樹脂製のシート12を備えている。シート12は、略矩形板状をなし、その短手方向Xの中央部に配置された外周壁形成部13と、外周壁形成部13における短手方向Xの両側にそれぞれ折り曲げ部14を介して連結された側壁形成部15と、両側壁形成部15における短手方向Xの外側の端部にそれぞれ設けられた第1内周壁形成部16a及び第2内周壁形成部16bとを備えている。
【0019】
第1内周壁形成部16aには第1連結部17が設けられ、第2内周壁形成部16bには第1連結部17と連結可能な第2連結部18が設けられている。すなわち、シート12における短手方向Xの一端部に第1連結部17が配置され、他端部に第2連結部18が配置されている。そして、折り曲げ部14、第1内周壁形成部16a、第2内周壁形成部16b、第1連結部17、及び第2連結部18は、エラストマーなどの可撓性材料によって構成されている。
【0020】
各側壁形成部15における短手方向Xの外側の位置には、複数の貫通孔19が、短手方向Xと直交する長手方向Yに沿って等間隔で並ぶように、各側壁形成部15の長手方向Yの全体にわたって形成されている。シート12における短手方向Xで対向する複数の貫通孔19同士の間には、これら複数の対向する貫通孔19同士を繋ぐように短手方向Xに延びるスリット20がそれぞれ形成されている。したがって、各スリット20は、外周壁形成部13と2つの折り曲げ部14を横切るように延びている。
【0021】
そして、図2及び図3に示すように、ケーブル類保護案内装置11は、シート12を2つの折り曲げ部14において折り曲げてシート12における短手方向Xの一端部に位置する第1連結部17と他端部に位置する第2連結部18とを連結することで、シート12の内側にその長手方向Yに沿って延びるように略矩形筒状の収容空間SKを形成する。収容空間SKには、フレキシブルに曲げることが可能な長尺状のケーブル類TKが収容される。
【0022】
収容空間SKが形成された状態のケーブル類保護案内装置11は、第1内周壁形成部16a及び第2内周壁形成部16bによって内側が平坦な内周壁21が構成され、2つの側壁形成部15によって対向する2つの側壁22がそれぞれ構成され、外周壁形成部13によって内周壁21と対向する外周壁23が構成される。すなわち、収容空間SKは、内周壁21、2つの側壁22、及び外周壁23によって囲まれた空間によって構成される。
【0023】
ケーブル類保護案内装置11における長手方向Yの一端部には長手方向Yに往復移動する移動体(図示略)に連結するための移動端ブラケット(図示略)が連結され、長手方向Yの他端部には固定部(図示略)に固定するための固定端ブラケット(図示略)が連結される。そして、ケーブル類保護案内装置11は、収容空間SKに収容されたケーブル類TKを、移動端ブラケット(図示略)に連結された移動体(図示略)の往復移動に合わせて保護しながら案内する。
【0024】
この場合、図3に示すように、長尺状のケーブル類保護案内装置11はその中間部にスリット20が開くことで湾曲部分Wが形成されるように配置され、湾曲部分Wは移動端ブラケット(図示略)に連結された移動体(図示略)の長手方向Yへの往復移動に合わせて長手方向Yへ移動するようになっている。
【0025】
なお、ケーブル類TKとしては、例えば、移動体(図示略)に給電や信号伝送を行う電気ケーブルや光ファイバーケーブル、移動体(図示略)に気体(例えば、空気など)や液体(例えば、水や油など)などを供給するホース、フレキシブルに屈曲可能な長尺状の多関節部材などが挙げられる。
【0026】
次に、第1連結部17及び第2連結部18の構成について詳述する。
図4に示すように、第1連結部17は、第1内周壁形成部16aの先端から収容空間SK側とは反対側に第1内周壁形成部16aと直交するように突設された平板状のベース部30と、ベース部30の第2内周壁形成部16b側の面における中央部にベース部30と直交するように短手方向Xに沿って突設された凸部31とを備えている。ベース部30及び凸部31は、ケーブル類保護案内装置11の長手方向Yの全体にわたって形成されている。
【0027】
凸部31は、長手方向Yから見て先端が丸みを帯びた全体として略矢印のような形状をしている。凸部31は、その先端部における両側部に長手方向Yから見て直角三角形状をなすように突出する被係止部をそれぞれ有している。これら2つの被係止部のうち、内周壁21からの距離が短い方は第1被係止部32とされ、内周壁21からの距離が長い方は第2被係止部33とされている。凸部31の先端部における第1被係止部32側の側部は第1斜面32aになっており、凸部31の先端部における第2被係止部33側の側部は第2斜面33aになっている。
【0028】
第2連結部18は、第2内周壁形成部16bの短手方向Xの中央部における収容空間SK側とは反対側の面に設けられ、長手方向Yから見てL字状をなすとともに第2内周壁形成部16bとで凸部31を収容可能な収容溝35を形成する溝形成部36を備えている。溝形成部36は、ケーブル類保護案内装置11の長手方向Yの全体にわたって形成されている。また、第2連結部18は、第2内周壁形成部16bの先端部と溝形成部36の先端部との間に開口部37を有している。
【0029】
第2内周壁形成部16bの先端部における開口部37側の面には、長手方向Yから見て直角三角形状をなす係止部としての第1係止部38が開口部37の幅を狭めるように突設されている。
【0030】
溝形成部36の先端部における開口部37側の面には、長手方向Yから見て直角三角形状をなす係止部としての第2係止部39が開口部37の幅を狭めるように突設されている。したがって、第1係止部38及び第2係止部39は、第2連結部18における開口部37を挟んだ両側にそれぞれ配置されている。この場合、第1係止部38と第2係止部39とは、開口部37を二等分する面Fに関して面対称になっている。
【0031】
第1係止部38の先端面38aと第2係止部39の先端面39aとは開口部37を挟んで互いに対向しており、先端面38a及び先端面39aは収容溝35に向かうほど開口部37の幅が狭くなるように面Fに対してそれぞれ傾斜している。この場合、先端面38a及び先端面39aは、凸部31の第1斜面32a及び第2斜面33aとそれぞれ対応している。開口部37の幅は、凸部31の先端部の幅よりも狭く、凸部31の基端部の幅とほぼ同じになっている。
【0032】
そして、第1係止部38及び第2係止部39は、開口部37が広がるように第2連結部18が弾性変形されながら開口部37から凸部31が挿入された際に、第1被係止部32及び第2被係止部33をそれぞれ係止可能になっている。また、凸部31の第1被係止部32及び第2被係止部33は、凸部31が開口部37から収容溝35内に挿入される際の挿入方向(図4では短手方向Xに沿って右から左に向かう方向)の位置が互いに異なっている。
【0033】
すなわち、第1被係止部32は、第2被係止部33よりも上記挿入方向(図4では短手方向Xに沿って右から左に向かう方向)の前側(図4では左側)に配置されている。つまり、凸部31が収容溝35内に挿入されて収容空間SKが形成された状態では、短手方向Xにおける第1被係止部32から開口部37までの距離が短手方向Xにおける第2被係止部33から開口部37までの距離よりも長くなっている。
【0034】
この場合、開口部37を二等分する面Fは凸部31を二等分している。さらに、この場合、凸部31及び第2連結部18は、収容空間SKの外側に配置されている。なお、本実施形態では、第2連結部18によって収容部が構成されている。
【0035】
次に、上記のように構成された実施形態のケーブル類保護案内装置11において、第1連結部17と第2連結部18とを連結するときの作用、すなわち開口部37から収容溝35内に凸部31を挿入するときの作用について説明する。
【0036】
さて、短手方向Xに沿うように開口部37から収容溝35内に凸部31を挿入しようとすると、図5(a)に示すように、凸部31の第1斜面32a及び凸部31の第2斜面33aが第1係止部38の先端面38a及び第2係止部39の先端面39aに対してそれぞれ当接する。引き続き、凸部31を短手方向Xに沿って収容溝35内に向かって押圧すると、凸部31の第1斜面32a及び凸部31の第2斜面33aが第1係止部38の先端面38a及び第2係止部39の先端面39aに対してそれぞれ摺動する。
【0037】
すると、図5(b)に示すように、凸部31の第1斜面32a及び凸部31の第2斜面33aが第1係止部38の先端面38a及び第2係止部39の先端面39aをそれぞれ押圧するため、開口部37が広がるように第2内周壁形成部16bの先端部及び溝形成部36の先端部が弾性変形する。
【0038】
このとき、凸部31における第1被係止部32は、第2被係止部33よりも凸部31の挿入方向(図5(a)〜(d)では短手方向Xに沿って右から左に向かう方向)の前側(図5(a)〜(d)では左側)に配置されているため、第2内周壁形成部16bの先端部の弾性変形量は、溝形成部36の先端部の弾性変形量よりも大きくなる。さらにこのとき、溝形成部36の先端部の弾性変形量は僅かとなっている。
【0039】
引き続き、凸部31を短手方向Xに沿って収容溝35内に向かって押圧すると、図5(c)に示すように、第1被係止部32が収容溝35内に移動するため、弾性変形していた第2内周壁形成部16bの先端部の形状が自らの弾性復元力によって弾性変形前の元の形状に戻る。このとき、凸部31の第2斜面33aによる第2係止部39の先端面39a対する押圧力が大きくなるので、溝形成部36の先端部の弾性変形量も大きくなる。
【0040】
引き続き、凸部31を短手方向Xに沿って収容溝35内に向かって押圧すると、図5(d)に示すように、第2被係止部33が収容溝35内に移動するため、弾性変形していた溝形成部36の先端部の形状が自らの弾性復元力によって弾性変形前の元の形状に戻る。
【0041】
これにより、第1連結部17と第2連結部18との連結作業、すなわち開口部37から収容溝35内に凸部31を挿入する作業が完了する。この場合、凸部31に対して収容溝35内から開口部37を通して引き抜かれる方向に外力が作用した場合に、第1被係止部32及び第2被係止部33が第1係止部38及び第2係止部39によってそれぞれ係止される状態となっている。
【0042】
このように、本実施形態のケーブル類保護案内装置11では、凸部31を開口部37から収容溝35内に挿入する際に、凸部31の両側部に配置された第1被係止部32及び第2被係止部33が互いに異なるタイミングで開口部37を通過する。このため、第1被係止部32及び第2被係止部33が同じタイミングで開口部37を通過する場合に比べて、開口部37を広げるための第2内周壁形成部16bの先端部の弾性変形量と溝形成部36の先端部の弾性変形量との和の最大値を小さくすることができる。
【0043】
したがって、第1被係止部32及び第2被係止部33が同じタイミングで開口部37を通過する場合に比べて、小さい力で凸部31を開口部37から収容溝35内に挿入することができる。よって、凸部31を開口部37から収容溝35内に容易に挿入することができる。
【0044】
次に、凸部31の挿入方向(図5(a)〜(d)では短手方向Xに沿って右から左に向かう方向)における第1被係止部32と第2被係止部33との位置を同じにした従来構成において、凸部31を開口部37から収容溝35内に挿入する際の作用を比較例として以下に説明する。なお、以下の比較例では、実施形態の第1被係止部32及び第2被係止部33をそれぞれ第1被係止部101及び第2被係止部102に変更し、これら以外の他の部材については実施形態と同じ符号を用いて説明する。
【0045】
さて、短手方向Xに沿うように開口部37から収容溝35内に凸部31を挿入しようとすると、図6(a)に示すように、凸部31の第1斜面32a及び凸部31の第2斜面33aが第1係止部38の先端面38a及び第2係止部39の先端面39aに対してそれぞれ当接する。引き続き、凸部31を短手方向Xに沿って収容溝35内に向かって押圧すると、凸部31の第1斜面32a及び凸部31の第2斜面33aが第1係止部38の先端面38a及び第2係止部39の先端面39aに対してそれぞれ摺動する。
【0046】
すると、図6(b)に示すように、凸部31の第1斜面32a及び凸部31の第2斜面33aが第1係止部38の先端面38a及び第2係止部39の先端面39aをそれぞれ押圧するため、開口部37が広がるように第2内周壁形成部16bの先端部及び溝形成部36の先端部が弾性変形する。
【0047】
このとき、挿入方向(図6(a)〜(c)では短手方向Xに沿って右から左に向かう方向)における凸部31の第1被係止部101と第2被係止部102との位置が同じであるため、第2内周壁形成部16bの先端部の弾性変形量と、溝形成部36の先端部の弾性変形量とが同じタイミングで最大値をとる。
【0048】
その後、さらに、凸部31を短手方向Xに沿って収容溝35内に向かって押圧すると、図6(c)に示すように、第1被係止部101及び第2被係止部102が収容溝35内に移動するため、弾性変形していた第2内周壁形成部16bの先端部の形状及び溝形成部36の先端部の形状がそれらの弾性復元力によってそれぞれ弾性変形前の元の形状に戻る。これにより、第1連結部17と第2連結部18との連結作業、すなわち開口部37から収容溝35内に凸部31を挿入する作業が完了する。
【0049】
このように、比較例では、凸部31を開口部37から収容溝35内に挿入する際に、凸部31の両側部に配置された第1被係止部101及び第2被係止部102が同じタイミングで開口部37を通過する。このため、第1被係止部32及び第2被係止部33が異なるタイミングで開口部37を通過する上記実施形態の場合に比べて、開口部37を広げるための第2内周壁形成部16bの先端部の弾性変形量と溝形成部36の先端部の弾性変形量との和の最大値が大きくなってしまう。
【0050】
したがって、第1被係止部32及び第2被係止部33が異なるタイミングで開口部37を通過する上記実施形態の場合に比べて、凸部31を開口部37から収容溝35内に挿入するために必要な力が大きくなってしまうので、凸部31を開口部37から収容溝35内に挿入し難くなる。
【0051】
次に、上記実施形態のケーブル類保護案内装置11において、使用時に、第1連結部17と第2連結部18との連結状態が解除されるときの作用、すなわち収容溝35内に挿入されている凸部31が開口部37から抜き出されるときの作用について説明する。
【0052】
さて、移動体(図示略)が長手方向Yに往復移動すると、ケーブル類保護案内装置11はその湾曲部分Wが移動体(図示略)に追従して変位するようにして長手方向Yに往復移動する。すると、ケーブル類保護案内装置11により、収容空間SKに収容されたケーブル類TKが移動体(図示略)の移動に合わせて保護されながら案内される。このとき、ケーブル類保護案内装置11における湾曲部分Wの内周側(内周壁21側)では、第1内周壁形成部16aと第2内周壁形成部16bとが短手方向Xにおいて離れる方向に力が作用する。
【0053】
すると、凸部31が収容溝35内から開口部を通って抜け出す方向(挿入方向の反対方向)に力が作用し、図7(a)に示すように、まず、凸部31の第2被係止部33が溝形成部36の第2係止部39によって係止される。引き続き上記力が作用することによって第2被係止部33が第2係止部39に係止されるときの荷重が所定値以上になると、図7(b)に示すように、凸部31が第2係止部39側に傾いて、凸部31の第1被係止部32が溝形成部36の第1係止部38によって係止される。
【0054】
引き続き上記力が作用すると、図7(c)に示すように、開口部37が広がるように第2内周壁形成部16bの先端部及び溝形成部36の先端部が弾性変形し始める。このとき、第1被係止部32が第1係止部38によって係止される位置は、第2被係止部33が第2係止部39によって係止される位置よりも、内周壁21(第1内周壁形成部16a及び第2内周壁形成部16b)に対して近い。
【0055】
このため、第1被係止部32が第1係止部38によって係止されるときの荷重は、第2被係止部33が第2係止部39によって係止されるときの荷重よりも格段に大きくなる。しかしながら、本実施形態では、凸部31における第1被係止部32は、第2被係止部33よりも凸部31の挿入方向(図7(a)〜(d)では短手方向Xに沿って右から左に向かう方向)の前側(図7(a)〜(d)では左側)に配置されている。
【0056】
このため、第1被係止部32が第1係止部38によって係止されるときの荷重と、第2被係止部33が第2係止部39によって係止されるときの荷重との差が大きくなることが抑制される。したがって、第1被係止部32と第2被係止部33との間での荷重の偏りが抑制されるので、第1係止部38による第1被係止部32の係止状態が維持される。
【0057】
引き続き上記力が作用すると、第2内周壁形成部16bの先端部は、溝形成部36の先端部よりも、格段に大きく弾性変形する。すると、図7(d)に示すように、第1係止部38による第1被係止部32の係止状態が解除される。その後、第2係止部39による第2被係止部33の係止状態が解除され、収容溝35内に挿入されている凸部31が開口部37から抜き出される。
【0058】
次に、凸部31の挿入方向(図7(a)〜(d)では短手方向Xに沿って右から左に向かう方向)における第1被係止部32と第2被係止部33との位置を同じにした従来構成において、収容溝35内に挿入されている凸部31が開口部37から抜き出される際の作用を比較例として以下に説明する。なお、以下の比較例では、実施形態の第1被係止部32及び第2被係止部33をそれぞれ第1被係止部101及び第2被係止部102に変更し、これら以外の他の部材については実施形態と同じ符号を用いて説明する。
【0059】
さて、第1内周壁形成部16aと第2内周壁形成部16bとが短手方向Xにおいて離れる方向に力が作用すると、凸部31が収容溝35内から開口部を通って抜け出す方向(挿入方向の反対方向)に力が作用する。すると、図8(a)に示すように、凸部31の第1被係止部101及び第2被係止部102が溝形成部36の第1係止部38及び第2係止部39によってそれぞれ係止される。
【0060】
このとき、第1被係止部101が第1係止部38によって係止される位置は、第2被係止部102が第2係止部39によって係止される位置よりも、内周壁21(第1内周壁形成部16a及び第2内周壁形成部16b)に対して近い。このため、第1被係止部101が第1係止部38によって係止されるときの荷重は、第2被係止部102が第2係止部39によって係止されるときの荷重よりも格段に大きくなる。
【0061】
したがって、引き続き上記力が作用すると、図8(b)に示すように、第2内周壁形成部16bの先端部が直ぐに大きく弾性変形し、第1係止部38による第1被係止部101の係止状態が簡単に解除されてしまう。その後、第2係止部39による第2被係止部102の係止状態が解除され、収容溝35内に挿入されている凸部31が開口部37から抜き出される。
【0062】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)ケーブル類保護案内装置11において、凸部31の両側部にそれぞれ配置された第1被係止部32及び第2被係止部33は、凸部31が開口部37から収容溝35内に挿入される際の挿入方向の位置が互いに異なっている。このため、凸部31を開口部37から収容溝35内に挿入する際に、凸部31の両側部にそれぞれ配置された第1被係止部32及び第2被係止部33が異なるタイミングで開口部37を通過する。したがって、第1被係止部32及び第2被係止部33が同じタイミングで開口部37を通過する場合に比べて開口部37を広げるための第2内周壁形成部16bの先端部の弾性変形量と溝形成部36の先端部の弾性変形量との和の最大値を小さくすることができる。この結果、第1被係止部32及び第2被係止部33が同じタイミングで開口部37を通過する場合に比べて、小さい力で凸部31を開口部37から収容溝35内に挿入することができる。よって、一方向に延びるシート12を折り曲げてケーブル類TKを収容する収容空間SKを形成する際に、シート12の短手方向Xの一端部に設けられた凸部31を他端部に設けられた収容溝35に対して開口部37から容易に挿入することができる。
【0063】
(2)ケーブル類保護案内装置11において、凸部31の両側部に配置された第1被係止部32及び第2被係止部33のうち、内周壁21からの距離が近い第1被係止部32は、内周壁21からの距離が遠い第2被係止部よりも挿入方向(凸部31が開口部37から収容溝35内に挿入される際の方向)の前側に配置されている。通常、内周壁21が内側となるようにケーブル類保護案内装置11が湾曲された場合、凸部31が収容溝35内から開口部37を介して抜け出す方向(上記挿入方向の反対方向)に荷重がかかる。このときの荷重は、内周壁21に近い位置ほど大きくなるので、第1被係止部32と第2被係止部33との挿入方向の位置が同じである場合、第1被係止部32が第1係止部38に係止されるときの荷重は、第2被係止部が第2係止部39に係止されるときの荷重よりも格段に大きくなる。このため、第1被係止部32と第1係止部38との係止状態が解除され易くなるので、収容溝35から凸部31が抜け出し易くなってしまうという問題がある。この点、本実施形態では、凸部31において第1被係止部32が第2被係止部33よりも挿入方向の前側に配置されている。このため、凸部31が収容溝35内から開口部37を介して抜け出す方向に荷重がかかった場合には、第2被係止部33が第2係止部39に係止されるときの荷重がある程度大きくなってから第1被係止部32が第1係止部38に係止される。したがって、第1被係止部32が第1係止部38に係止されるときの荷重と、第2被係止部33が第2係止部39に係止されるときの荷重との差が小さくなるので、第1被係止部32と第2被係止部33との間での荷重の偏りを抑制できる。よって、第1被係止部32と第1係止部38との係止状態が解除され難くなるので、凸部31が収容溝35から抜け出すことを抑制することができる。
【0064】
(4)ケーブル類保護案内装置11において、凸部31が収容溝35内に挿入されて収容空間SKが形成された状態では、凸部31及び収容溝35が収容空間SKの外側に配置されている。このため、凸部31及び収容溝35(第2連結部18)を収容空間SK内に配置する場合に比べて、収容空間SKを広く確保することができる。
【0065】
(5)ケーブル類保護案内装置11において、凸部31が収容溝35内に挿入されて収容空間SKが形成された状態では、開口部37を二等分する面Fが凸部31を二等分する。このため、凸部31が収容溝35内から開口部37を介して抜け出す方向(挿入方向の反対方向)に荷重がかかった場合に、第1被係止部32及び第2被係止部33を第1係止部38及び第2係止部39によってそれぞれ荷重のバランスが良い状態で係止することができる。
【0066】
(変更例)
なお、上記実施形態は次のように変更してもよい。
図9に示すように、ケーブル類保護案内装置11において、凸部31が収容溝35に挿入されて収容空間SKが形成された状態では、凸部31及び収容溝35が収容空間SK内に配置されるように構成してもよい。このようにすれば、凸部31及び収容溝35(第2連結部18)を収容空間SKの外側に配置する場合に比べて、ケーブル類保護案内装置11全体の大きさを小さくすることができる。
【0067】
・ケーブル類保護案内装置11において、凸部31が収容溝35内に挿入されて収容空間SKが形成された状態では、開口部37を二等分する面Fが必ずしも凸部31を二等分する必要はない。
【0068】
・ケーブル類保護案内装置11において、凸部31の両側部に配置された第1被係止部32及び第2被係止部33のうち、内周壁21からの距離が近い第1被係止部32は、内周壁21からの距離が遠い第2被係止部よりも挿入方向(凸部31が開口部37から収容溝35内に挿入される際の方向)の後側に配置してもよい。
【0069】
・ケーブル類保護案内装置11において、第1連結部17及び第2連結部18は、ケーブル類保護案内装置11の長手方向Yの全体にわたって断続的に設けるようにしてもよい。
【0070】
・ケーブル類保護案内装置11において、内周壁21の厚さを厚くし、内周壁21内に第1連結部17及び第2連結部18を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
11…ケーブル類保護案内装置、12…シート、14…折り曲げ部、18…第2連結部(収容部)、21…内周壁、31…凸部、32…第1被係止部(被係止部)、33…第2被係止部(被係止部)、37…開口部、38…第1係止部(係止部)、39…第2係止部(係止部)、F…開口部を二等分する面、SK…収容空間、TK…ケーブル類、X…短手方向、Y…長手方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9