(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記動力切替機構は、前記クランク軸から他方向の回転が前記入力体に入力されるとき、前記入力体と前記出力体とを連結して一体的に回転させる、請求項1に記載の自転車用ドライブユニット。
前記動力切替機構は、前記クランク軸から一方向の回転が前記リングギアに入力され、前記キャリアの回転が前記リングギアの回転よりも速いとき、前記リングギアと前記キャリアとの相対回転を許容する、請求項3に記載の自転車用ドライブユニット。
前記動力切替機構は、前記クランク軸から一方向の回転が前記リングギアに入力されたとき、前記キャリアの回転が前記リングギアの回転よりも速くなるまでは、前記リングギアと前記キャリアとを連結して一体的に回転させる、請求項3または4に記載の自転車用ドライブユニット。
前記動力切替機構の少なくとも一部は、前記リングギアまたは前記クランク軸と、前記キャリアとの間に配置される、請求項3〜5のいずれか一項に記載の自転車用ドライブユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記自転車用ドライブユニットは、ワンウェイクラッチにより、クランク軸の他方向の回転はキャリアに伝達されないため、コースターブレーキを機能させることができない。
本発明の目的は、コースターブレーキを機能させることができる自転車用ドライブユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕本発明に従う自転車用ドライブユニットの一形態は、遊星歯車機構と、第1のモータと、動力切替機構とを含み、前記遊星歯車機構は、クランク軸の回転が入力される入力体、前記遊星歯車機構の回転を外部に出力する出力体、および伝達体を備え、前記第1のモータは、前記伝達体の回転を制御し、前記出力体は、前記クランク軸から一方向の回転が前記入力体に入力されるとき、一方向に回転し、前記動力切替機構は、前記クランク軸から他方向の回転が前記入力体に入力されるとき、前記出力体を他方向に回転させる。
【0007】
〔2〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記動力切替機構は、前記クランク軸から他方向の回転が前記入力体に入力されるとき、前記入力体と前記出力体とを連結して一体的に回転させる。
【0008】
〔3〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記入力体は、リングギアであり、前記出力体は、キャリアであり、前記伝達体は、サンギアである。
〔4〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記動力切替機構は、前記クランク軸から一方向の回転が前記リングギアに入力され、前記キャリアの回転が前記リングギアの回転よりも速いとき、前記リングギアと前記キャリアとの相対回転を許容する。
【0009】
〔5〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記動力切替機構は、前記クランク軸から一方向の回転が前記リングギアに入力されたとき、前記キャリアの回転が前記リングギアの回転よりも速くなるまでは、前記リングギアと前記キャリアとを連結して一体的に回転させる。
【0010】
〔6〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記動力切替機構の少なくとも一部は、前記リングギアまたは前記クランク軸と、前記キャリアとの間に配置される。
〔7〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記リングギアおよび前記キャリアは、前記リングギアの内周と前記キャリアの外周とが前記遊星歯車機構の径方向において対向する部分を含み、前記動力切替機構は、前記リングギアの内周と前記キャリアの外周とが対向する部分に配置される。
【0011】
〔8〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記動力切替機構は、前記リングギアの内周および前記キャリアの外周の一方に形成され、周方向において深さの異なる溝と、前記溝の内部に配置される転動体と、を含む。
【0012】
〔9〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記溝は、周方向の中間部から両端部に向かうにつれて浅くなる。
〔10〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記動力切替機構は、第1の付勢部材、第2の付勢部材、および、前記遊星歯車機構が設けられるハウジングをさらに含み、前記第1の付勢部材は、前記転動体に前記溝の一方に向かう力を付与し、前記第2の付勢部材は、前記ハウジングに摺動可能に支持され、前記クランク軸から他方向の回転が前記入力体に入力されるとき、前記転動体に前記溝の他方に向かう力を付与する。
【0013】
〔11〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記入力体は、キャリアであり、前記出力体は、リングギアであり、前記伝達体は、サンギアである。
〔12〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記動力切替機構の少なくとも一部は、前記リングギアと、前記キャリアまたは前記クランク軸との間に配置される。
【0014】
〔13〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記クランク軸および前記リングギアは、前記クランク軸の外周と前記リングギアの内周とが前記遊星歯車機構の径方向において対向する部分を含み、前記動力切替機構は、前記リングギアの内周と前記クランク軸の外周とが対向する部分に配置される。
【0015】
〔14〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記動力切替機構は、前記クランク軸の外周と前記リングギアの内周とが対向する前記部分に配置される切替部を備え、前記切替部は、前記キャリアに連結されて前記キャリアの軸方向に平行な回転軸と、前記回転軸に回転可能に支持される爪部とを備え、前記切替部は、前記クランク軸が一方向に回転するとき、前記爪部が前記クランク軸および前記リングギアの少なくとも一方から離れ、前記クランク軸が他方向に回転するとき、前記爪部が前記回転軸まわりで回転することにより、前記爪部と前記クランク軸および前記リングギアとが接触して前記キャリアと前記リングギアとを連結する。
【0016】
〔15〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記動力切替機構は、前記クランク軸の外周と前記キャリアの内周とが対向する部分において前記クランク軸の外周と前記キャリアの内周の一方に形成される凸部と、前記クランク軸の外周と前記キャリアの内周とが対向する部分において前記クランク軸の外周と前記キャリアの内周の他方に形成され、前記キャリアが前記リングギアに対して移動可能になるように前記凸部を収容する第1の溝と、前記リングギアの内周において前記クランク軸の外周と対向する部分に形成される第2の溝と、前記爪部に力を付与する付勢部材とをさらに含み、前記付勢部材は、前記爪部に前記クランク軸の外周に押さえつける力を付与し、前記爪部は、前記クランク軸が一方向に回転するとき、前記クランク軸が前記キャリアに対して一方向に相対移動することによって、前記リングギアの前記第2の溝から外れるように回転して、前記リングギアから離れ、前記クランク軸が他方向に回転するとき、前記クランク軸が前記キャリアに対して他方向に相対移動することによって、前記リングギアの前記第2の溝に入るように回転して、前記リングギアの前記第2の溝に嵌まり込んで前記キャリアと前記リングギアとを連結する。
【0017】
〔16〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、少なくとも前記遊星歯車機構を収容するハウジングと、前記サンギアと前記ハウジングとの間に設けられ、前記ハウジングに対する前記サンギアの一方向への回転を許容し、他方向への回転を規制するワンウェイクラッチとをさらに含む。
【0018】
〔17〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、少なくとも前記遊星歯車機構を収容するハウジングと、前記第1のモータの出力軸またはロータと前記ハウジングとの間に設けられ、前記ハウジングに対する前記第1のモータの前記出力軸または前記ロータの一方向への回転を許容し、他方向への回転を規制するワンウェイクラッチとをさらに含む。
【0019】
〔18〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記サンギアは、前記クランク軸まわりにおいて前記クランク軸と同軸に配置される。
〔19〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記第1のモータは、前記クランク軸まわりにおいて前記クランク軸と同軸に配置される。
【0020】
〔20〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記サンギアは、前記第1のモータの出力軸と一体的に形成される。
〔21〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記出力体と接続され、かつ、フロントスプロケットを取り付け可能な出力部をさらに備える。
【0021】
〔22〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記クランク軸をさらに備える。
〔23〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記出力体または前記入力体にトルクを伝達する第2のモータをさらに備える。
【0022】
〔24〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記第2のモータの回転軸は、前記クランク軸の径方向に前記クランク軸から離れて配置される。
〔25〕前記自転車用ドライブユニットの一形態によれば、前記第1のモータおよび前記第2のモータを制御する制御部をさらに備える。
【発明の効果】
【0023】
上記自転車用ドライブユニットは、コースターブレーキを機能させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1を参照して、自転車用ドライブユニットを搭載する自転車の構成を説明する。
自転車10は、フレーム12、ハンドルバー14、前輪16、後輪18、駆動機構20、バッテリユニット22、および、ドライブユニット40を備えている。
【0026】
駆動機構20は、左右のクランクアーム24、左右のペダル26、フロントスプロケット30、リアスプロケット32、および、チェーン34を含む。左右のクランクアーム24は、ドライブユニット40のクランク軸42を介して回転可能にフレーム12に取り付けられている。ペダル26は、ペダル軸28まわりに回転可能にクランクアーム24に取り付けられている。
【0027】
フロントスプロケット30は、ドライブユニット40の出力部64(
図2参照)に連結されている。フロントスプロケット30は、クランク軸42と同軸に設けられる。リアスプロケット32は、後輪18の車軸18Aまわりに回転可能に取り付けられている。チェーン34は、フロントスプロケット30とリアスプロケット32とに巻き掛けられている。ペダル26に加えられる人力駆動力によりクランクアーム24が回転するとき、フロントスプロケット30、チェーン34、および、リアスプロケット32によって、後輪18が回転する。
【0028】
バッテリユニット22は、バッテリ36、および、バッテリ36をフレーム12に着脱可能に取り付けるためのバッテリホルダ38を備えている。バッテリ36は、1または複数のバッテリセルを含む。バッテリ36は、2次電池によって構成される。バッテリ36は、ドライブユニット40に電気的に接続されて、ドライブユニット40に電力を供給する。
【0029】
図2に示されるように、ドライブユニット40は、クランク軸42、ハウジング44、遊星歯車機構46、動力切替機構48、第1のモータ50、および、第2のモータ52を備えている。
【0030】
ハウジング44は、遊星歯車機構46、動力切替機構48、第1のモータ50、および、第2のモータ52を収容する。ハウジング44は、クランク軸42を回転可能に支持している。クランク軸42は、ハウジング44を貫通して設けられている。
【0031】
遊星歯車機構46は、伝達体であるサンギア54、クランク軸42の回転が入力される入力体であるリングギア56、複数のプラネタリギア58、複数のプラネタリピン60、および、遊星歯車機構46の回転を外部に出力する出力体であるキャリア62を備えている。
【0032】
サンギア54は、クランク軸42のまわりにおいてクランク軸42と同軸に配置されている。
リングギア56は、サンギア54よりもクランク軸42の径方向の外側に配置されている。リングギア56は、クランク軸42のまわりにおいてクランク軸42と同軸に配置されている。このため、リングギア56は、サンギア54のまわりにおいてサンギア54と同軸に配置されている。リングギア56の内周とクランク軸42とは、例えば、スプライン嵌合または圧入等により接続されている。リングギア56は、クランク軸42と一体的に回転する。クランク軸42の回転は、リングギア56に入力される。
【0033】
複数のプラネタリギア58は、サンギア54とリングギア56との間に配置されている。各プラネタリギア58は、大径部58Aおよび小径部58Bを備えている。大径部58Aの外周のギアは、サンギア54の外周と対向する部分に配置され、サンギア54と噛み合わせられている。小径部58Bの外周のギアは、リングギア56の内周と対向する部分に配置され、リングギア56と噛み合わせられている。ここでは、大径部58Aおよび小径部58Bを有するプラネタリギア58を用いているが、通常のシングルギアで構成されるプラネタリギアであってもよい。
【0034】
複数のプラネタリピン60は、それぞれプラネタリギア58を軸方向に貫通している。各プラネタリピン60は、各プラネタリギア58を回転可能に支持している。各プラネタリピン60の両端部は、キャリア62により回転可能に支持されている。各プラネタリピン60の両端部が、キャリア62により回転可能に支持されていれば、各プラネタリピン60は、各プラネタリギア58に回転不能に支持されていてもよい。各プラネタリピン60が、各プラネタリギア58を回転可能に支持していれば、各プラネタリピン60の両端部は、キャリア62により回転不能に支持されていてもよい。
【0035】
キャリア62は、クランク軸42のまわりにおいてクランク軸42と同軸に配置されている。キャリア62は、複数のプラネタリピン60を介して、複数のプラネタリギア58を回転可能に保持している。このため、複数のプラネタリギア58は、サンギア54とリングギア56との間において、サンギア54まわりを公転する。
【0036】
キャリア62は、複数のプラネタリピン60の一端を支持する第1キャリア62Aと、複数のプラネタリピン60の他端を支持する第2キャリア62Bを備えている。第1キャリア62Aは、プラネタリギア58のうちの小径部58B側の端部と対向している。第2キャリア62Bは、プラネタリギア58のうちの大径部58A側の端部と対向している。第1キャリア62Aと第2キャリア62Bとは、相互に相対移動不能に連結されており、一体的に回転する。第1キャリア62Aと第2キャリア62Bとは、一体形成されていてもよい。
【0037】
第1キャリア62Aは、サンギア54の内周とクランク軸42との間に形成される空間に配置される円筒形状の連結部62Cを備えている。連結部62Cの端部には、出力部64が接続されている。出力部64の一端はハウジング44の内部に収容され、他端はハウジング44から露出している。出力部64のハウジング44から露出している部分の内周には、ボルトBがねじ込まれる。フロントスプロケット30は、スプラインによって出力部64の周方向に回転不能に支持される。フロントスプロケット30は、ボルトBによって軸方向に移動不能に出力部64に取り付けられる。出力部64は、連結部62Cと一体に形成されていてもよい。
【0038】
第1のモータ50は、クランク軸42のまわりにおいてクランク軸42と同軸に配置されている。第1のモータ50は、クランク軸42の軸方向において、遊星歯車機構46と隣り合う位置に配置されている。第1のモータ50は、クランク軸42の軸方向において、遊星歯車機構46よりもフロントスプロケット30に近い側に配置されている。
【0039】
第1のモータ50は、インナーロータ式のモータであり、ハウジング44に支持されるステータ50Aと、ステータ50Aの内周側に配置されるロータ50Bとを備えている。ロータ50Bの軸方向の端部には、サンギア54の端部が取り付けられている。すなわち、サンギア54は、第1のモータ50の出力軸と一体的に形成されている。ロータ50Bおよびサンギア54は、クランク軸42に対して回転することができる。第1のモータ50は、サンギア54にトルクを伝達し、サンギア54の回転を制御する。ステータ50Aは、ハウジング44に固定されている。
【0040】
第2のモータ52の回転軸は、クランク軸42の径方向にクランク軸42から離れて配置されている。第2のモータ52の出力ギア52Aは、リングギア56の外周に形成されるギア56Aと噛み合わせられている。第2のモータ52は、ギア56Aを介してリングギア56にトルクを伝達する。なお、第2のモータ52の回転軸とリングギア56との間の動力伝達経路に、第2のモータ52の回転をリングギア56に伝達し、かつ、クランク軸42が一方に回転したときの、リングギア56の回転を第2のモータ52に伝達しないワンウェイクラッチを設けることもできる。
【0041】
図4に示されるように、動力切替機構48は、キャリア62とリングギア56との間に配置されており、さらに詳細には、第2キャリア62Bの外周とリングギア56の内周とが径方向において対向する部分に配置されている。動力切替機構48は、複数の転動体66、複数の転動体66を保持するリテーナ68、第1の付勢部材70(
図5参照)、および、第2の付勢部材72を備えている。
【0042】
図5に示されるように、複数の転動体66は、リングギア56の内周に形成される溝56Bの内部に配置されている。溝56Bは、周方向において深さが異なる。溝56Bは、周方向の中間部から両端部に向かうにつれて浅くなっている。
【0043】
第1の付勢部材70は、溝56Bとリテーナ68とに取り付けられている。第1の付勢部材70は、複数の転動体66に溝56Bの一方に向かう力を付与している。第1の付勢部材70が転動体66に付与する力の向きは、自転車10が前進するときのクランク軸42の回転方向と逆方向(以下、「逆転方向」)の向きに等しい。
【0044】
第2の付勢部材72は、円環状のスプリング部材である。第2の付勢部材72は、いわゆるスライドスプリングである。第2の付勢部材72は、円環状の部分がハウジング44の内部に設けられる円筒状の支持部44Aに嵌め込まれている。支持部44Aは、ハウジング44の内壁から延びて形成されている。第2の付勢部材72の周方向の一端と他端とは、離間している。第2の付勢部材72の一端は、リテーナ68に形成される溝68Aに嵌め込まれている。第2の付勢部材72は、支持部44Aに摺動可能に支持されている。このため、第2の付勢部材72は、クランク軸42から他方向の回転がリングギア56に入力されるとき、転動体66に溝56Bの他方に向かう力を付与する。このとき、第2の付勢部材72が複数の転動体66に付与する力の向きは、自転車10が前進するときのクランク軸42の回転方向(以下、「正転方向」)の向きに等しい。第2の付勢部材72は、クランク軸42から一方向の回転がリングギア56に入力されるとき、転動体66に溝56Bの一方に向かう力を付与する。
【0045】
図5に示されるように、クランク軸42から正転方向の回転がリングギア56に入力されてリングギア56が正転方向に回転し、かつ、キャリア62がリングギア56よりも速く正転方向に回転しているとき、転動体66とキャリア62との摺動抵抗が、第1の付勢部材70と第2の付勢部材72とによる溝56Bの一方へのバイアス力よりも大きくなり、複数の転動体66は溝56Bの深い部分に位置する。このため、リングギア56とキャリア62との相対回転が許容される。
【0046】
図6に示されるように、クランク軸42から逆転方向の回転がリングギア56に入力されてリングギア56が逆転方向に回転しているとき、第2の付勢部材72の支持部44Aに対する摺動抵抗が増大し、第2の付勢部材72はリテーナ68を介して複数の転動体66に正転方向に向かう力を付与する。このため、複数の転動体66は溝56Bの他方の浅い部分に移動し、リングギア56とキャリア62とを連結する。このため、キャリア62が逆転方向に回転する。このように、
図7に示されるように、クランク軸42から逆転方向の回転がリングギア56に入力されるとき、リングギア56とキャリア62とは一体的に逆転方向に回転する。クランク軸42から逆転方向に回転すると、制御部74は、第1のモータ50への電力の供給を停止する。
【0047】
図8に示されるように、クランク軸42から正転方向の回転がリングギア56に入力されてリングギア56が正転方向に回転し、かつ、キャリア62の回転が正転方向かつリングギア56と等しくなったとき、複数の転動体66は、第1の付勢部材70の力および第2の付勢部材72の力により溝56Bの一方の浅い部分に移動し、リングギア56とキャリア62とを連結する。このため、キャリア62がリングギア56と一体的に正転方向に回転する。複数の転動体66は、キャリア62の回転がリングギア56の回転よりも速くなるまでは、リングギア56とキャリアと62を連結して一体的に回転させる。
【0048】
図2に示されるようにドライブユニット40は、制御部74をさらに備えている。制御部74は、ハウジング44に収容されている。制御部74は、第1のモータ50を駆動する駆動回路、第2のモータ52を駆動する駆動回路を含む。制御部74は、バッテリ36(
図1参照)から供給される電力を用いて第1のモータ50および第2のモータ52を駆動する。制御部74は、例えば、図示しないトルクセンサおよび車速センサ等から入力される信号に基づいて第1のモータ50および第2のモータ52を制御する。トルクセンサは、人力駆動力を検出するためのものである。トルクセンサは、たとえばリングギア56に設けられる歪センサによって実現される。この場合、歪センサからの出力は、無線通信装置またはスリップリングなどを介して、制御部74に与えられる。歪センサは、たとえば歪ゲージである。トルクセンサの代わりとして、第1のモータ50および第2のモータ52の少なくとも一方に与えられる電流に基づいて、制御部74がトルクを演算してもよい。また、制御部74は、遊星歯車機構46に入力された回転数に対する遊星歯車機構46から出力された回転数である遊星歯車機構46の変速比γを変更するための操作信号が入力されたとき、クランク軸42の回転に対する出力部64の回転の比率が、所定の変速比になるように第1のモータ50を制御する。また、制御部74は、図示しない操作装置からアシスト力を変更するための操作信号が入力されたとき、人力駆動力に対する第2のモータ52の出力が大きくなるように第2のモータ52を制御する。
【0049】
制御部74は、第1のモータ50を駆動させることにより、サンギア54に逆転方向のトルクを伝達する。これにより、
図3に示すように、サンギア54の回転がサンギア54まわりで回転するプラネタリギア58の自転速度を加速させる。このため、キャリア62の回転速度も大きくなり、変速比γが大きくなる。サンギア54の回転速度に応じて、変速比γは無段階に変更される。なお、制御部74は、変速比γ、すなわちサンギア54の回転速度を段階的に変更するように制御することもできる。また、制御部74と外部の装置とを無線または有線により接続し、外部の装置を用いて変速比γの段階の数、および、大きさを変更することもできる。外部の装置は、たとえばサイクルコンピュータまたはパーソナルコンピュータである。
【0050】
制御部74は、第2のモータ52を駆動させることにより、キャリア62に正転方向のトルクを伝達する。これにより、クランク軸42から入力されたトルクにアシスト力が加えられて遊星歯車機構46から出力する。
【0051】
遊星歯車機構46は、リングギア56が入力部として機能し、キャリア62が出力部64に接続されているため、サンギア54がハウジング44に対して回転しないとき、遊星歯車機構46に入力された回転は減速されて出力される。動力切替機構48は、キャリア62の回転速度がリングギア56の回転速度以下になったとき、キャリア62とリングギア56とを一体的に回転させる。このため、制御部74がサンギア54のハウジング44に対する回転を停止させる制御を行うときの変速比γは1である。
【0052】
ドライブユニット40は、以下の作用および効果を奏する。
(1)ドライブユニット40は、クランク軸42から逆転方向の回転がリングギア56に入力されるとき、キャリア62を逆転方向に回転させる動力切替機構48を備えている。このため、運転者がクランクアーム24を逆転方向に回転させたとき、リングギア56およびフロントスプロケット30に逆転方向のトルクが伝達される。このため、コースターブレーキを機能させることができる。動力切替機構48を、機械的な構成で実現しているので、バッテリの有無に関係なく、コースターブレーキを機能させることができる。
【0053】
(2)動力切替機構は48、クランク軸42から逆転方向の回転がリングギア56に入力されるとき、リングギア56とキャリア98とを連結して一体的に回転させる。このため、リングギア56の逆転方向の回転が遊星歯車機構86により変速されてキャリア98に伝達される構成と比較して、遊星歯車機構86内でのトルクのロスが少なくなるため、コースターブレーキをより効果的に使用することができる。また、クランク軸42が逆転方向に回転したときのクランク軸42の移動角度と、フロントスプロケット30の移動角度とが等しくなるので、違和感なくコースターブレーキを操作することができる。
【0054】
(3)動力切替機構48は、リングギア56とキャリア62との相対回転を許容し、キャリア62の回転がリングギア56の回転よりも速くなるまでは、リングギア56とキャリア62とを連結して一体的に回転させる。このため、第1のモータ50への電力の供給が停止したときであっても、遊星歯車機構46から回転を出力することができる。ドライブユニット40は、変速比γが1のときには、第1のモータ50へ電力の供給を停止することができるため、第1のモータ50へ電力を供給して、サンギア54のハウジング44に対する位相を維持する構成と比較して、電力の消費低減に貢献できる。
【0055】
(4)ドライブユニット40は、1つの動力切替機構48により、コースターブレーキの機能と、第1のモータ50への電力の供給が停止したときのサンギア90のハウジング44に対する回転規制の機能とを実現している。このため、これらの機能を各別の機構により実現する場合と比較して、ドライブユニット40の構造を簡略化することができる。
【0056】
(5)第1のモータ50は、クランク軸42まわりにおいてクランク軸42と同軸に配置される。このため、第1のモータ50をクランク軸42の径方向の外側に配置する構成と比較して、ドライブユニット40のクランク軸42の径方向の大型化を抑制できる。
【0057】
(6)サンギア54は、第1のモータ50の出力軸と一体的に形成される。このため、ドライブユニット40の部品点数の削減に貢献できる。
(7)第2のモータ52の回転軸は、クランク軸42の径方向にクランク軸42から離れて配置される。このため、第2のモータ52の回転軸をドライブユニット40のクランク軸42と同軸に配置する場合と比較して、クランク軸42の軸方向の大型化を抑制できる。
【0058】
(8)出力部64は、クランク軸42の軸方向において遊星歯車機構46にオフセットして配置されている。このため、フロントスプロケット30を取り付ける部分がクランク軸42の軸方向において遊星歯車機構46の内部に配置される構成と比較して、フロントスプロケット30の取り付けおよび取り外しが容易になる。
【0059】
(9)ドライブユニット40は、キャリア62にトルクを伝達する第2のモータ52と、サンギア54にトルクを伝達し、サンギア54の回転を制御する第1のモータ50とを含む。このため、第1のモータ50による変速比γの変更と、第2のモータ52によるアシスト力の変更とを独立して行うことができる。このため、より走行状況等に応じた制御を行うことができる。
【0060】
(第2実施形態)
図9〜
図13を参照して、第2実施形態のドライブユニット80について説明する。
図9に示されるように、ドライブユニット80は、クランク軸82、ハウジング84、遊星歯車機構86、動力切替機構88、第1のモータ50、第2のモータ52、および、制御部74を備えている。
【0061】
ハウジング84は、遊星歯車機構86、動力切替機構88、第1のモータ50、第2のモータ52、および、制御部74を収容する。ハウジング84は、クランク軸82を回転可能に支持している。クランク軸82は、ハウジング84を貫通して設けられている。
【0062】
遊星歯車機構86は、伝達体であるサンギア90、遊星歯車機構86の回転を外部に出力する出力体であるリングギア92、複数のプラネタリギア94、複数のプラネタリピン96、および、クランク軸82の回転が入力される入力体であるキャリア98を備えている。
【0063】
サンギア90は、クランク軸82のまわりにおいてクランク軸82と同軸に配置されている。リングギア92は、サンギア90のまわりにおいてサンギア90と同軸に配置されている。リングギア92には、出力部100が接続されている。出力部100の一端はハウジング84の内部に収容され、他端はハウジング84から露出している。出力部100のハウジング84から露出している部分の内周には、ボルトBがねじ込まれる。リングギア92と、出力部100とは一体に形成されていてもよい。
【0064】
複数のプラネタリギア94は、サンギア90とリングギア92との間に配置されている。各プラネタリギア94は、大径部94Aおよび小径部94Bを備えている。大径部94Aの外周のギアは、サンギア90の外周と対向する部分に配置され、サンギア90と噛み合わせられている。小径部94Bの外周のギアは、リングギア92の内周と対向する部分に配置され、リングギア92と噛み合わせられている。ここでは、大径部94Aおよび小径部94Bを有するプラネタリギア94を用いているが、通常のシングルギアで構成されるプラネタリギアであってもよい。
【0065】
複数のプラネタリピン96は、それぞれプラネタリギア94を軸方向に貫通している。各プラネタリピン96は、各プラネタリギア94を回転可能に支持している。各プラネタリピン96の両端部は、キャリア98により回転可能に支持されている。各プラネタリピン96の両端部が、キャリア98により回転可能に支持されていれば、各プラネタリピン96は、各プラネタリギア94に回転不能に支持されていてもよい。各プラネタリピン96が、各プラネタリギア94を回転可能に支持していれば、各プラネタリピン96の両端部は、キャリア98により回転不能に支持されていてもよい。
【0066】
キャリア98は、クランク軸82のまわりにおいてクランク軸82と同軸に配置されている。キャリア98は、複数のプラネタリピン96を介して、複数のプラネタリギア94を回転可能に保持している。このため、複数のプラネタリギア94は、サンギア90とリングギア92との間において、サンギア90まわりを公転する。
【0067】
キャリア98は、複数のプラネタリピン96の一端を支持する第1キャリア98Aと、複数のプラネタリピン96の他端を支持する第2キャリア98Bを備えている。第1キャリア98Aは、プラネタリギア94のうちの小径部94B側の端部と対向している。第2キャリア98Bは、プラネタリギア94のうちの大径部94A側の端部と対向している。第1キャリア98Aと第2キャリア98Bとは、相互に相対移動不能に連結されており、一体的に回転する。第1キャリア98Aと第2キャリア98Bとは、一体形成されていてもよい。
【0068】
第2キャリア98Bの内周およびクランク軸82の外周は、対向する部分を含んでいる。
図12に示されるように、第2キャリア98Bの内周には、クランク軸82に向かって突出する凸部98Dが形成されている。クランク軸82において凸部98Dと対向する部分には、第1の溝82Aが形成されている。凸部98Dは、第1の溝82Aに嵌め込まれている。第1の溝82Aの周方向の大きさは、凸部98Dの周方向の大きさよりも大きい。このため、第2キャリア98Bは、クランク軸82に対して第1の溝82Aの周方向の大きさと凸部98Dの周方向の大きさとの差分だけ相対移動することができる。
【0069】
図9に示されるように、第1のモータ50は、クランク軸82の軸方向において、遊星歯車機構86と隣り合う位置に配置されている。第1のモータ50は、クランク軸82の軸方向において、遊星歯車機構86よりもフロントスプロケット30から遠い側に配置されている。
【0070】
第1のモータ50のロータ50Bの内周とクランク軸82との間には、ハウジング84の支持部84Aが配置されている。支持部84Aは、円筒形状を有し、クランク軸82と同軸を有する。ロータ50Bは、支持部84Aに回転可能に支持されている。ロータ50Bは、一対のベアリング84Bを介して、支持部84Aに支持されている。ロータ50Bの軸方向の端部には、サンギア90の端部が取り付けられている。すなわち、サンギア90は、第1のモータ50の出力軸と一体的に形成されている。ロータ50Bおよびサンギア90は、クランク軸82に対して回転することができる。第1のモータ50は、サンギア90にトルクを伝達し、サンギア90の回転を制御する。ステータ50Aは、ハウジング84に固定されている。
【0071】
支持部84Aは、サンギア90の内周とクランク軸82との間に形成される空間に延びる部分を含む。サンギア90の内周と支持部84Aの外周との間には、ワンウェイクラッチ102が設けられている。ワンウェイクラッチ102は、支持部84Aに対するサンギア90の一方への回転を許容し、他方への回転を規制する。具体的には、サンギア90が支持部84Aに対して逆転方向に回転することを許容し、サンギア90が支持部84Aに対して、正転方向に回転することを規制する。換言すれば、サンギア90は、支持部84Aに対して正転方向に回転することができない。第1のモータ50に電力が供給されていないときに、クランク軸82の正転方向の回転が入力された場合、サンギア90はワンウェイクラッチ102によって回転が規制される。このため、クランク軸82の正転方向の回転が、遊星歯車機構86によって増速されて出力部64に伝達される。なお、ワンウェイクラッチ102は、ローラクラッチによって構成されてもよく、爪式のクラッチによって構成されてもよい。
【0072】
第2のモータ52の出力ギア52Aは、第2キャリア98Bの外周に形成されるギア98Cと噛み合わせられている。第2のモータ52は、ギア98Cを介してキャリア98にトルクを伝達する。なお、第2のモータ52の回転軸とキャリア98との間の動力伝達経路に、第2のモータ52の回転をキャリア98に伝達し、かつ、クランク軸82が一方に回転したときの、キャリア98の回転を第2のモータ52に伝達しないワンウェイクラッチを設けることもできる。
【0073】
図11に示されるように、動力切替機構88は、クランク軸82とリングギア92との間に配置されており、さらに詳細には、クランク軸82の外周とリングギア92の内周とが遊星歯車機構86の径方向において対向する部分に配置されている。動力切替機構88は、切替部104および付勢部材106を備えている。リングギア92の内周部には、動力切替機構88の爪部110に対向する位置に、第2の溝92Aが形成されている。第2の溝92Aは、周方向に間隔をあけて、たとえば等間隔に複数形成されている。
【0074】
切替部104は、第2キャリア98Bに連結され、具体的には、第2キャリア98Bの内周部分に連結されている。切替部104は、第2キャリア98Bに連結されて第2キャリア98Bの軸方向に平行な回転軸108と、回転軸108まわりに回転可能に支持される爪部110とを備えている。付勢部材106は、爪部110の一端部110Aをクランク軸82の外周に押さえつける力を爪部110に付与する。クランク軸82のうちの爪部110が配置される部分には、第3の溝82Bが形成されている。
【0075】
図12に示されるように、クランク軸82から正転方向の回転がキャリア98に入力されるとき、クランク軸82がキャリア98に対して一方向に相対移動することによってクランク軸82の第1の溝82Aの逆転方向側の端面82Cが第2キャリア98Bの凸部98Dを押す。このため、クランク軸82と第2キャリア98Bとが正転方向に一体的に回転する。このとき、爪部110の一端部110Aは、クランク軸82の外周のうちの第3の溝82Bが形成されていない部分によって付勢部材106の付勢する方向とは反対の方向に押されている。このため、爪部110の他端部110Bがリングギア92の第2の溝92Aから外れる方向に移動している。これによって、爪部110は、クランク軸82の外周のうちの第3の溝82Bが形成されていない部分に接触し、かつ、リングギア92の内周から離れて接触していない状態となるので、キャリア98とリングギア92との相対回転が許容される。クランク軸82が正転方向に回転しているときには、爪部110がクランク軸82の外周のうちの第3の溝82Bが形成されていない部分に接触した状態が維持され、爪部110がリングギア92の第2の溝92Aから外れた状態が維持される。このため、クランク軸82の回転速度とキャリア98の回転速度との関係に関わらず、キャリア98とリングギア92との相対回転が許容される。
【0076】
図13に示されるように、クランク軸82から逆転方向の回転がキャリア98に入力されるとき、凸部98Dが第1の溝82Aの内部で移動し、クランク軸82の第1の溝82Aの正転方向側の端面82Dが第2キャリア98Bの凸部98Dを押す。このため、クランク軸82と第2キャリア98Bとが逆転方向に一体的に回転する。このとき、爪部110の一端部110Aは、クランク軸82の外周のうちの第3の溝82Bが形成されている部分に移動している。このため、爪部110の一端部110Aが付勢部材106(
図11参照)の力に従って第3の溝82B内に移動するように、爪部110が回転軸108まわりで回転する。このため、爪部110の他端部110Bがリングギア92に近付く方向に移動してリングギア92の第2の溝92Aに嵌まり込んで第2の溝92Aの内面と接触し、第2キャリア98Bとリングギア92とを連結する。このため、リングギア92とキャリア98とが一体的に逆転方向に回転する。
【0077】
制御部74は、第1のモータ50を駆動させることにより、サンギア90に逆転方向のトルクを伝達する。これにより、
図10に示すように、サンギア90の回転がサンギア90まわりで回転するプラネタリギア94の自転速度を加速させる。このため、リングギア92の回転速度も大きくなり、変速比γが大きくなる。サンギア90の回転速度に応じて、変速比γは無段階に変更される。
【0078】
図9に示す制御部74が第1のモータ50への電力の供給を停止したとき、第1のモータ50の駆動が停止する。サンギア90と支持部84Aとの間には、ワンウェイクラッチ102が設けられているため、サンギア90の支持部84Aに対する回転が規制される。このため、制御部74が第1のモータ50への電力の供給を停止したとき、変速比γは遊星歯車機構86の各構成要素のギア数に応じた変速比γに維持される。遊星歯車機構86は、キャリア98が入力部として機能し、リングギア92が出力部64に接続されているため、サンギア90が支持部84Aに対して回転しないとき、遊星歯車機構86に入力された回転は増速されて出力される。このため、制御部74が第1のモータ50への電力の供給を停止したときの変速比γは、1以上であり、例えば、1.2以上である。第1のモータ50は、変速比γを少なくとも1.2〜1.5の範囲を含んで変更することが好ましい。第1のモータ50が変更する変速比γの最大値は、例えば3.0以下である。換言すれば、第1のモータ50は、変速比γを1〜3.0以上の範囲内において変更する。
【0079】
ドライブユニット40は、第1実施形態の(1)〜(3)、(5)〜(9)に準じた効果に加えて、以下の作用および効果を奏する。
(10)遊星歯車機構86は、第1のモータ50の回転が停止しているときの変速比γが1以上である。このため、第1のモータ50の回転が停止しているときの変速比γが1未満の遊星歯車機構と比較して、第1のモータ50の大型化をともなわずに変速比γの範囲を1以上の領域において大きくすることができる。
【0080】
(11)遊星歯車機構86の変速比γは1以上であるため、サンギア90が回転しないときに、リングギア92の回転速度は、キャリア98の回転速度以上となる。第2のモータ52は、キャリア98に接続されているため、リングギアに第2のモータ52を接続してトルクを伝達する構成と比較して、アシスト力を付与するときに第2のモータ52の回転速度が大きくなることを抑制できる。このため、第2のモータ52の電力の消費低減に貢献できる。
【0081】
(変形例)
自転車用ドライブユニットが取り得る具体的な形態は、上記実施形態に例示された形態に限定されない。自転車用ドライブユニットは、上記実施形態とは異なる各種の形態を取り得る。以下に示される上記実施形態の変形例は、自転車用ドライブユニットが取り得る各種の形態の一例である。
【0082】
・第1実施形態の動力切替機構48を、クランク軸42とキャリア62との間に配置することもできる。この場合、クランク軸42の外周およびキャリア62の内周の一方に周方向に深さの異なる溝が形成され、転動体が溝の内部に配置される。動力切替機構48は、クランク軸42が逆転方向に回転するとき、クランク軸42とクランク軸42およびリングギア56とキャリア62とを一体的に回転させる。
【0083】
・第1実施形態のキャリア62の外周においてリングギア56と対向する部分に周方向において深さの異なる溝を形成することもできる。転動体66はこの溝に配置される。この場合、リングギア56の溝56Bを省略することもできる。
【0084】
・第1実施形態のリングギア56の溝56Bを、逆転方向の端部が深く、かつ、正転方向に向かうにつれて浅くなる溝に変更することもできる。転動体66が溝56Bの逆転方向の端部に配置されているときには、リングギア56とキャリア62とが相対回転可能となる。この場合、サンギア54またはロータ50Bとハウジング44との間にワンウェイクラッチを設け、このワンウェイクラッチにより第1のモータ50への電力の供給が停止されたときのサンギア54のハウジング44に対する回転を規制することもできる。また、クランク軸42とキャリア62との間にワンウェイクラッチを設け、このワンウェイクラッチにより第1のモータ50への電力の供給が停止されたときクランク軸42のキャリア62に対する回転を規制することもできる。
【0085】
・第1実施形態の動力切替機構48を爪式の動力切替機構に変更することもできる。クランク軸42から正転方向の回転が入力されたときには、リングギア56とキャリア62との接続を解除し、クランク軸42から逆転方向の回転が入力されたときにはキャリア62とリングギア56とを一体的に逆転方向に回転させる構成であれば、どのような構成も採用することができる。
【0086】
・第2実施形態のワンウェイクラッチ102を、ロータ50Bと支持部84Aとの間に設けることもできる。また、ワンウェイクラッチ102をロータ50Bとハウジング84の支持部84A以外の部分との間に設けることもできる。
【0087】
・第2実施形態のワンウェイクラッチ102を省略することもできる。この場合、サンギア90のハウジング84に対する回転を規制するときには、第1のモータ50が回転しないように制御することにより、サンギア90のハウジング84に対する回転位相を維持する。
【0088】
・第2実施形態の動力切替機構88を、
図14に示されるようにクランク軸82と出力部100との間に設けることもできる。この場合、出力部100に第2の溝が形成され、切替部104は、出力部100の内周とクランク軸82の外周とが対向する部分に配置される。
【0089】
・各実施形態の制御部74は、第1のモータ50を正転方向に駆動させることもできる。この場合、第1実施形態のリングギア56の溝56Bを、逆転方向の端部が深く、かつ、正転方向に向かうにつれて浅くなる溝に変更する。また、第2実施形態のワンウェイクラッチ102は設けない。第1のモータ50が、サンギア54を正転方向に回転させると、変速比γが小さくなる。
【0090】
・各実施形態の第1のモータ50をクランク軸42,82の径方向の外側に配置することもできる。この場合、サンギア54,90として、クランク軸42,82に同軸に配置される段付き歯車を用いる。
【0091】
・各実施形態の第1のモータ50を、ロータ50Bがステータ50Aのまわりに配置されるアウターロータ型のモータにすることもできる。
・各実施形態のサンギア54,90と第1のモータ50の出力軸とを別体に構成し、サンギア54,90と第1のモータ50の出力軸とをスプライン嵌合等により接続することもできる。
【0092】
・各実施形態の第2のモータ52をクランク軸42,82まわりにおいてクランク軸42,82と同軸に配置することもできる。
・各実施形態の第2のモータ52を省略することもできる。
【0093】
・第1実施形態の第2のモータ52をリングギア56に接続することもできる。また、第2実施形態の第2のモータ52をキャリア98に接続することもできる。要するに、第2のモータ52は、遊星歯車機構46,86の入力体および出力体のいずれに接続することもできる。
【0094】
・各実施形態のドライブユニット40,80からクランク軸42,82を省略し、ドライブユニット40,80と別体のクランク軸を取り付けることもできる。
・各実施形態の第1のモータ50および第2のモータ52の少なくとも一方を、ハウジング44,84の外部に設けることもできる。
【0095】
・各実施形態のクランク軸42,82とキャリア62,98との間、または、リングギア56,92とフロントスプロケット30との間に減速機構を設けることもできる。この減速機構は、少なくとも2枚以上の歯車によって実現されてもよいし、遊星歯車機構によって実現されてもよい。
【0096】
・各実施形態の遊星歯車機構46,86を入力体がキャリアであり、出力体がサンギアであり、伝達体がリングギアである遊星歯車機構にすることもできる。
・各実施形態の遊星歯車機構46,86を入力体がサンギアであり、出力体がキャリアであり、伝達体がリングギアである遊星歯車機構にすることもできる。
【0097】
・各実施形態の遊星歯車機構46,86を入力体がリングギアであり、出力体がサンギアであり、伝達体がキャリアである遊星歯車機構にすることもできる。この遊星歯車機構は、リングギアの回転方向とサンギアの回転方向とが異なる。このため、サンギアとフロントスプロケット30との間には回転方向を変換する伝達ギアを備える。
【0098】
・各実施形態の遊星歯車機構46,86を入力体がサンギアであり、出力体がリングギアであり、伝達体がキャリアである遊星歯車機構にすることもできる。この遊星歯車機構は、サンギアの回転方向とリングギアの回転方向とが異なる。このため、リングギアとフロントスプロケット30との間には回転方向を変換する伝達ギアを備える。
【0099】
・各実施形態において、クランク軸42,82、サンギア54,90、キャリア62,98、または、リングギア56,92が有する各構成については、クランク軸42,82、サンギア54,90、キャリア62,98、またはリングギア56,92と連結され、これらと一体で回転する構成であれば、これらと別体で構成されていてもよい。例えば、第1実施形態の連結部62Cを第1キャリア62Aと別体で構成し、スプライン嵌合または圧入により接続して一体的に回転させることができる。また、第2実施形態のリングギア92の第2の溝92Aが形成される部分を、リングギア92の外周部分とは別体で構成し、スプライン嵌合または圧入により接続して一体的に回転させることができる。