【文献】
Accession No. Q9XAB3,Uniprot[online],2012年10月 3日,検索日2017.6.6,URL,http://www.uniprot.org/uniprot/Q9XAB3.txt?version=46
【文献】
Accession No. H1QB75,Uniprot[online],2012年 5月16日,検索日2017.6.6,URL,http://www.uniprot.org/uniprot/H1QB75.txt?version=3
【文献】
Accession No. D9Y207,Uniprot[online],2012年 5月16日,検索日2017.6.6,URL,http://www.uniprot.org/uniprot/D9Y207.txt?version=6
【文献】
Accession No. Q825P2,Uniprot[online],2012年10月 3日,検索日2017.6.6,URL,http://www.uniprot.org/uniprot/Q825P2.txt?version=50
【文献】
Appl. Microbiol. Biotechnol.,2011年,Vol. 91,pp. 229-235
【文献】
J. Agric. Food Chem.,2010年,Vol. 58,pp. 10431-10436
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の配列番号1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質が、配列番号3もしくは配列番号4で示される塩基配列を有するDNAを含むそれぞれの組換えベクターで、宿主細胞を形質転換して得られた組換えタンパク質である、請求項1に記載のD−アロースの生産方法。
D−プシコースが、未利用資源からD−グルコースを得て、そのD−グルコースを異性化してD−フラクトースへ導き、そのD−フラクトースをエピ化して生産したものである請求項1に記載のD−アロースの生産方法。
【背景技術】
【0002】
単糖類は還元基(カルボニル基)の状態によりアルドース(カルボニル基としてアルデヒド基を持つ糖)、ケトース(カルボニル基としてケトン基を持つ糖)、糖アルコール(別名:ポリオール、カルボニル基を持たない糖)に大別される。単糖類には「希少糖」といわれるものがある。希少糖とは、国際希少糖学会の定義によれば自然界に希にしか存在しない糖と定義されており、その種類によっては、有機化学的合成方法における収量も少ないものも多い。そのため、アロースを含めたアルドヘキソース(アルドース)希少糖の効率的な製造方法の開発とその特異な性質が探求されているのが現状である。
【0003】
希少糖が生理活性を有することは知られている。例えば、D−アロースの誘導体を有効成分とする抗腫瘍剤が開示され(特許文献1)、糖類の活性酸素に対する性質を利用したものでは、例えば、活性酸素を抑制する性質を有する多糖類を含有させた活性酸素産生抑制剤は知られている(特許文献2)。
【0004】
プシコースは、還元基としてケトン基を持つ六炭糖であり、近年、エピメラーゼの出現により比較的入手が容易となった糖である。D−プシコースは、甘味料、醗酵用炭素源、試薬、化粧品・医薬品の原料・中間体などとして有効に利用できることが示唆されている。プシコースの試薬・医薬品等の中間原料としての応用例としては、例えば、D−プシコースを原料としたヒダントイン誘導体の合成例が報告されている(非特許文献1)。
【0005】
D−アロースはD−プシコースから製造することができる。例えば、D−プシコースからD−アロースを生産することができる酵素であるイソメラーゼを利用したD−アロースの製造に関する特許文献には、例えば、異性化を触媒する酵素の作用で基質希少糖から目的希少糖へ変換し、得られる原液を擬似移動層により連続的に目的希少糖画分としてクロマト分離することを特徴とする精製希少糖の大量生産方法。(特許文献3)や、
Pseudomonas stutzeri(IPOD FERM BP−08593)由来のL−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質を作用させてD−アロースへと異性化するD−アロースの生産方法(特許文献4)が提案されている。
【0006】
また、D−プシコースおよび/またはL−プシコースを含有する溶液にD−キシロース・イソメラーゼを作用させて、D−プシコースからはD−アロースとD−アルトロースを、L−プシコースからはL−アルトロースを生成せしめ、これらD−アロース、D−アルトロースおよびL−アルトロースから選ばれる1種または2種以上のアルドヘキソースを採取するアルドヘキソースの製造方法が提案されている(特許文献5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまで各種の微生物からD−アロースを製造する技術は開発されてきたが、その微生物の安全性に問題があるため食用のD−アロースの生産への実用化が困難であった。そこで、従来、安全性に問題のない微生物由来の酵素を用いて希少糖を生産することが求められていた。
希少糖の製造に関しては、例えば、シュードモナス・チコリ(
Pseudomonas cichorii)由来のD−ケトへキソース3−エピメラーゼを利用することによりD−フラクトースからD−プシコースが製造できることが知られている。しかしながら、シュードモナス・チコリは植物病原性微生物であるから食品用途に利用する上で適しているとは言えない。リゾビウム属に属する微生物によるD−プシコースの製造も提案されている(特許文献6)が、リゾビウム属に属する微生物は、植物病原性微生物の場合もあり、食品用途に使用する菌としては望ましくない。また、これら技術は、いずれもD−プシコースを生産する技術であって、D−アロースを生産するものではない。
【0010】
こうした従来技術の安全性に関する問題点を解決するために、本発明は、食品を製造する際に使用が認められている既存添加物名簿収載品目リストに収載されている菌種であって毒性がほとんどないと推定できる菌種から、高い収率でD−プシコースからD−アロースへの異性化を触媒するイソメラーゼを取得すること、その酵素を用いたD−アロースの製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、既存添加物として食品の製造に問題なく使用できる可能性が高い放線菌から得られる新規な酵素によりD−アロースを製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らはこうした従来技術の問題点である安全性に関する懸念のないD−アロースを産生する微生物、つまりは、微生物が生産する当該酵素を求めて研究を積み重ねることにより本発明に到達したのである。すなわち、本発明は、土壌より放線菌を単離してライブラリーを作成し、その中から、D−プシコースからD−アロースに転換する作用を有する酵素を見出したことに基づくものである。放線菌は既存添加物酵素の起源微生物として食品製造に問題なく使用できる可能性が高いことから、放線菌から得られるイソメラーゼは非常に有用なD−アロースの大量生産手段となりうる。
【0012】
すなわち具体的には、本発明は以下の技術的事項からなる。
(1)D−プシコースに
下記(1)または(2)のいずれかのタンパク質を作用させてD−アロースへと異性化することを特徴とする、D−アロースの生産方法。
(1)配列番号1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質。
(2)配列番号1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列と
90%以上の
同一性を有し、
以下(a)および(d)の活性を有するタンパク質。
(a)アルドースのC1のCHO基とC2のOH基を認識して反応し、C1のCHO基をOH基に、C2のOH基をCO基に変換するか、あるいは、ケトースのC1のOH基とC2のCO基を認識して反応し、C1のOH基をCHO基に、C2のCO基をOH基に変換する活性を有する。
(d)L−ラムノース、D−キシロース、D−リボース、D−アロース、D−グルコース、およびL−アラビノースに対して反応性を有する。
(2)
前記(2)のタンパク質が、以下(b)および(c)の性質を有するタンパク質である、
上記(1)に記載のD−アロースの生産方法。
(b)作用pHは6.0〜11.0であり、至適pHは9.0である。
(c)作用温度は10〜80℃であり、至適温度は60℃である。
【0013】
(3)上記(1)に記載の配列番号1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質が、配列番号3もしくは配列番号4で示される塩基配列を有するDNAを含むそれぞれの組換えベクターで、宿主細胞を形質転換して得られた組換えタンパク質である、上記(
1)に記載のD−アロースの生産方法。
(4)D−プシコースが、D−フラクトースをエピ化して生産したものである上記(
1)に記載のD−アロースの生産方法。
【0014】
(5)D−プシコースが、D−グルコースを異性化してD−フラクトースへ導き、そのD−フラクトースをエピ化して生産したものである上記(
1)に記載のD−アロースの生産方法。
(6)D−プシコースが、未利用資源からD−グルコースを得て、そのD−グルコースを異性化してD−フラクトースへ導き、そのD−フラクトースをエピ化して生産したものである上記(
1)に記載のD−アロースの生産方法。
(7)目的とするD−アロースがD−プシコースとD−アロースの混合物である上記(
1)ないし(6)のいずれかに記載のD−アロースの生産方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、すなわち、ストレプトマイセス属(
Streptomyces)に属する微生物由来の酵素タンパク質を使用することにより、アルドースC1のCHO基とC2のOH基を認識して反応し、C1のCHO基をOH基に、C2のOH基をCO基に変換する、あるいは、ケトースのC1のOH基とC2のCO基を認識して反応し、C1のOH基をCHO基に、C2のCO基をOH基に変換すること、好ましくはD−プシコースからD−アロースを生産すること、が可能となった。ストレプトマイセス属(
Streptomyces)に属する微生物由来の配列番号1もしくは配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる、アルドースC1のCHO基とC2のOH基を認識して反応し、C1のCHO基をOH基に、C2のOH基をCO基に変換する、あるいは、ケトースのC1のOH基とC2のCO基を認識して反応し、C1のOH基をCHO基に、C2のCO基をOH基に変換する、好ましくはD−プシコースをD−アロースへと異性化する酵素を提供することができ、また、それを使用することによりD−アロースを生産することが可能となった。
本発明により、菌体培養物の安全性が非常に高い菌を使用できることは大きな技術の進歩であり、D−プシコースを異性化してD−アロースを産生する酵素とその製造方法の確立は、製糖産業のみならず、これに関連する食品、化粧品、医薬品産業における工業的意義が極めて大きい。また、本発明は、最も安価に大量に入手できるD−グルコースや、フラクトースを原料としてD−プシコース経由でD−アロースの製造を可能とした。
【発明を実施するための形態】
【0017】
D−アロースは非常に有用な希少糖のひとつであり、ガン細胞の増殖抑制に重要な役割を果たす。ArnoldとSiladyは、D−アロースが、他の有害な臨床的影響を及ぼさずに、実質的に分節核好中球の産生を阻害し、血小板数を下げるということを報告しており(特許文献7)、活性酸素の産生を阻害する報告もある(非特許文献3)。D−アロースについては、ここ数年、特に抗癌作用について多くの研究がなされている。そこで、本発明者らは、この有用なD−アロースを大量にかつ安全に製造できる手法として、食品製造に用いることのできる安全な菌種から、D−プシコースをD−アロースへと変換する酵素を得ることを目的とし、鋭意研究を試みた。
D−プシコースからD−アロースへの異性化反応を触媒する酵素のひとつとしては、L−ラムノースイソメラーゼ(L−RhI, E.C: 5.3.1.14)があり、これは本来、L−ラムノースを相応するケトースであるL−ラムニュロースへ可逆的に異性化する反応を触媒する酵素で、
Escherichia coli(非特許文献2)において知られているが、食品製造に安全に利用できる菌とは言えない。
よって、本発明者らは、この産業的に有望なD−アロースの生産をより容易にする手法を確立する目的で、土壌より放線菌を単離してライブラリーを作成し、そのライブラリーよりD−プシコースからD−アロースへ変換するイソメラーゼを生産する菌を探索した。
【0018】
本発明におけるD−プシコースからD−アロースを生産することができる酵素としては、上記のストレプトマイセス属(
Streptomyces)に属する微生物由来の配列番号1もしくは微生物由来の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するD−プシコースからD−アロースに変換する活性を有するタンパク質を用いる。
通常、得られた培養菌体から目的とする酵素を抽出し、そのままで反応に用いることができるが、好ましくは固定化した形態で用いる。固定化の対象とする上記の活性を有する酵素そのものは、使用目的に応じて、必ずしも高純度に精製されたものでなくてもよく、粗酵素であっても用いることができる。粗酵素の具体的例としては、上記の活性を有する酵素産生能を有する微生物自体を、また、その培養物や部分精製した培養物を用いることができる。
【0019】
上記固定化酵素は、例えば本発明の目的とする酵素を担体結合法、架橋法、または包括法等の定法によって固定化して用いることができる。これは、酵素に限定せず、菌体そのものや粗酵素を樹脂等の担体に対して固定化等することで得られる。固定化によって、これまで1週間ほどの安定性であったものが数ヶ月の安定性を持つ固定化酵素を得ることができる。
例えば、本発明の目的とする酵素および/または微生物を、担体結合法のうちのひとつである共有結合法によって固定化した固定化酵素および/または固定化微生物に、50%エタノールを含むD−プシコース溶液を通液することで、反応時は42℃、結晶化時は4℃というように、温度をコントロールすることによりD−アロースの結晶を連続的に製造することができる。また、その結晶化後のろ液をエタノール除去、濃縮することなしに上記の固定化酵素および/または固定化微生物に再度通液することで、再度連続的にD−アロースを製造することができる。
これは、D−プシコースとD−アロースの混合溶液に、エタノールを添加することでD−アロースのみを分離することができる画期的な方法であり、しかも、酵素反応に用いる緩衝液を除く必要もなく、分離過程を大幅に省力化し、効率化できるという非常に大きなメリットがある。50%D−プシコースを原料にして酵素反応でD−アロースを生産した場合、生産物は、35%D−プシコースと15%D−アロースの混合溶液として得られるので、酵素反応産物から迅速にD−プシコースとD−アロースを分離して高純度のD−アロースを得ることが可能となる。
本発明において、例えば、D−プシコースからD−アロースを生産する場合の酵素反応は、通常、下記の条件で行われる。即ち、基質としてD−プシコースを含有する溶液として、通常、水溶液を用い、その基質濃度は、1〜60w/v%、望ましくは、10〜50w/v%、さらに望ましくは20〜40w/v%の範囲から適宜選ばれる。酵素反応温度は、酵素が失活しない温度、例えば、10〜85℃、望ましくは40〜80℃、より望ましくは至適温度60℃から選ばれる。同様に、酵素反応pHは6.0〜11.0、より望ましくは至適pH9.0から選ばれる。酵素活性は基質グラム当り1単位以上、望ましくは、50〜5,000単位の範囲から選ばれる。反応時間は、使用する基質量、酵素量、温度、pH条件等により変動するが、固定化酵素ではなくバッチ式を採用する場合を例に挙げるとすれば、経済性を考慮して、約2〜100時間、望ましくは約5〜50時間の範囲で行うことが望ましい。
【0020】
本発明は、D−プシコースに、下記(a)から(c)のいずれかに記載の活性を有するタンパク質を作用させてD−アロースへと異性化することを特徴とするD−アロースの生産方法に関するものであり、安全性の高い放線菌から産生されるD−プシコースからD−アロースを生産する酵素によりD−プシコースからD−アロースを製造する。
(a)配列番号1もしく配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる上記活性を有するタンパク質。
(b)配列番号1もしくは配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が、置換、付加、挿入もしくは欠失したアミノ酸配列からなる上記活性を有するタンパク質。
(c)配列番号1もしくは配列番号2に記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる上記活性を有するタンパク質。
上記タンパク質のL−ラムノースイソメラーゼ活性は、以下の(d)〜(f)の物理化学的性質によって特定されるものである。
本発明の酵素活性は、以下の(d)〜(f)の物理化学的性質によって特定されるものである。
(d)作用pHおよび至適pH
作用pHは6.0〜11.0であり、至適pHは9.0である。
(e)作用温度および至適温度
作用温度は10〜80℃であり、至適温度は60℃である。
(f)L−ラムノース、D−キシロース、D−リボース、 D−アロース、D−グルコース、およびL−アラビノースに対して反応性を有する。
【0021】
[D− プシコース]
本発明で使用するD−プシコースは様々な方法で製造することができるが、例えば、D−フラクトースをエピ化して生産する、D−グルコースを異性化してD−フラクトースへ導き、そのD−フラクトースをエピ化して生産する、D−プシコースが、未利用資源からD−グルコースを得て、そのD−グルコースを異性化してD−フラクトースへ導き、そのD−フラクトースをエピ化して生産する、などを挙げることができる。
【0022】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
[D−プシコースからD−アロースへの変換能を有する酵素の生産菌株の取得]
環境から採取した土壌0.1gを滅菌蒸留水1mLに懸濁した。この懸濁液を滅菌蒸留水で50倍希釈し、その0.1mLを放線菌分離培地に接種し、30℃で3日間培養した。現れたコロニーをピックアップ(約200株)した。放線菌分離培地は表1の組成の放線菌培地を用いた。
【表1】
【0024】
次に、得られた約200菌株を、試験管に入れた下記に示す生産培地5mLにそれぞれ植菌し、28℃、振とう速度220rpmの条件下で振とう培養した。培養7日目にそれぞれの培養液を15mLずつ遠心管に回収し、HITACHI微量高速遠心機(CF15RXII型)9000rpm、10分遠心後、上清を廃棄した。菌体を蒸留水で1回洗浄し、再び遠心を行い、上清を廃棄した。それぞれの菌体を40mMトリス−マレイン酸緩衝液(pH7.0)2mLに懸濁し、HEAT SYSTEM社アストラソン超音波細胞破砕機(W385)、DUTY CYCLE50%、出力コントロール目盛り5で20秒間2回超音波処理を行った。破砕溶液を9000rpm、10分遠心し、それぞれの上清を回収して粗酵素液とした。この粗酵素液のタンパク濃度を0.10mg/50μLとなるよう調整したものを「酵素試料」とし、以下、酵素活性測定に用いることとした。
【0025】
[生産培地組成]
糖培地(1.0%D−プシコース、0.1%D−タガトース、0.1%グリセロール)とミネラル培地(0.26%硫酸アンモニウム、0.24%リン酸二水素カリウム、0.56%リン酸水素二カリウム、0.01%硫酸マグネシウム7水和物、0.05%酵母エキス:pH7.0)のそれぞれを121℃、20分間滅菌処理して等量ずつを無菌的に混合調製する。
【0026】
[酵素活性の確認方法]
上記方法で得た酵素試料を用いて、各酵素試料のイソメラーゼ活性は、HPLC法または/およびシステインカルバゾール法(Cysteine Carbazole法)により確認した。
HPLC法: 表2に示される組成で酵素反応させた後、100℃・2分間の処理により酵素反応を停止させ、室温まで冷却してからイオン交換樹脂およびフィルターによる精製処理を施し、HPLCに供する試料とした。このHPLC用試料を、三菱化学株式会社製CK08ECカラム(80℃)に供し、流速0.4mL/minの純水で溶出させて、東ソー株式会社製 検出器RI−8020にて生成する糖組成を測定した。
システインカルバゾール法: 表2に示される組成で反応させた後、反応液を100℃・2分間の処理により酵素反応を停止させ、室温まで冷却してから、500μLの酵素反応溶液に50μLの10%トリクロロ酢酸を加えて反応を停止させた。この試料550μLに、100μLシステイン溶液と3mLの70%硫酸を加えて20℃で1分間保温後、さらに100μLのCarbazole溶液を加えて35℃で20分間加温し、540nmにおける吸光度を測定することにより、生成する糖組成を測定した。
【0027】
【表2】
【0028】
上記一連の手順により、目的とする酵素活性の高い2株(
Streptomyces sp.710株および
Streptomyces sp.720株。属は、16SrRNA塩基配列から同定した。)を得た。これらの菌株
Streptomyces sp.710株および
Streptomyces sp.720は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NITE、千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、それぞれ平成24年(2012年)10月10日付け(原寄託日)で受託番号NITE BP−01423、NITE BP−01424の下でブタペスト条約に基づき国際寄託されており、そこから入手可能である。なお本寄託の710株は平成25年(2013年)10月7日に、720株は平成25年(2013年)10月30日に、国内寄託(原寄託)からブダペスト条約に基づく国際寄託に移管請求し、受領された。そして、それらの2株について25年(2013年)10月30日に国際寄託の受託証が発行された。
【実施例2】
【0029】
Streptomyces sp.710株および
Streptomyces sp.720株からショットガンクローニングを行った。
[
Streptomyces sp.710株(または720株)の染色体の調製]
Streptomyces sp.710株(または720株)を0.5%のグリシンを加えたトリプティック・ソイ・ブロス培地(ベクトン・ディッキンソン社製)(50mL)で30℃、160rpmで2日間培養し、遠心分離(3,000rpm、10分、4℃)で菌体を回収した。TS緩衝液(10.3%スクロース、50mMトリス緩衝液(pH8.0)、25mM EDTA・2Na)(30mL)で菌体を洗浄し、再び遠心分離(3,000rpm、10分、4℃)で菌体を回収した。ついで、0.5%リゾチームと0.002%N−アセチルムラミダーゼ入りTS緩衝液(10mL)を菌体に加え、37℃、60分静置した。プロトプラスト状になった菌体溶液に、10%SDS水溶液(2.4mL)と2mg/mLプロテイナーゼK入りTS緩衝液(0.4mL)を加え、ゆっくり撹拌した後、37℃、60分静置して、さらに50℃、30分静置した。ここに、5M塩化ナトリウム水溶液(2mL)と65℃に加温した10%セチルトリメチルアンモニウムブロマイドの0.7M塩化ナトリウム水溶液(1.6mL)を加え、ゆっくり撹拌した後、65℃、20分静置した。そして、クロロホルム:イソアミルアルコール溶液(24:1、20mL)を加え、ピペットで撹拌した。遠心分離(12,000rpm、10分、4℃)した後、上層に上層の0.6倍量のイソプロピルアルコールを加え、生じた沈殿を回収した。沈殿を70%エタノールで洗浄し、真空乾燥した。真空乾燥後、沈殿は、Rnase(0.5mg)を加えたTE緩衝液(10mMトリス緩衝液(pH8.0)、1mM EDTA・2Na)(10mL)に溶解させ、
Streptomyces sp. 710株(または720株)の染色体溶液を調製した(4℃で保存)。
【実施例3】
【0030】
[染色体の部分分解]
Streptomyces sp.710株(または720株)の染色体溶液(40.4μL)に10×H緩衝液(タカラバイオ社製)(4.6μL)と0.25ユニットの制限酵素Sau3AIを加え、40分、37℃で静置した。0.5M EDTA水溶液(50μL)を加え、0.5%低融点アガロースゲルで電気泳動して、23kb以上のDNA断片を含むアガロースゲル分画を切り出した。切り出したゲルブロックは、蒸留水(50mL)に入れ、ゆっくりと15分振とうし、もう一度同じ操作を繰り返した。ゲルブロックの重量に対し、最終濃度が1×になるように10×β-アガラーゼの緩衝液を加え、68℃で、融解するまで静置した。融解させた後、10分、40℃で静置して、β-アガラーゼ(ゲル0.5gあたり3ユニット)を加え、60分、40℃で静置した。そして、5M塩化ナトリウム水溶液を終濃度0.5Mになるように加え、氷上で15分静置して、遠心分離(15,000rpm、15分、4℃)した後、上清に上清の3倍量のエタノールを加えた。−80℃で10分静置した後、遠心分離(15,000rpm、15分、4℃)し、生じた沈殿に70%エタノールを加え、遠心分離(15,000rpm、15分、4℃)した。沈殿を真空乾燥した後、蒸留水(8μL)に溶解した。ここに10×アルカリフォスファターゼ緩衝液(1μL)とアルカリフォスファターゼ(1μL)を加え、60分、37℃で静置した。ついで蒸留水(90μL)とフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール溶液(25:24:1、100μL)を加え、撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、10分、25℃)した。上層に上層の3倍量のエタノールを加えた。−80℃で10分静置した後、遠心分離(15,000rpm、15分、4℃)し、生じた沈殿に70%エタノールを加え、遠心分離(15,000rpm、15分、4℃)した。この
Streptomyces sp.710株(または720株)の染色体の部分分解DNA断片を含む沈殿を真空乾燥した後、蒸留水(5μL)に溶解した。
【実施例4】
【0031】
[
Streptomyces sp.710株(または720株)染色体のコスミドライブラリーの作製]
放線菌−大腸菌シャトルコスミドベクターpTOYAMAcos(尾仲宏康(Hiroyasu Onaka)ら、「ザ・ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(J.Antibiotics)」、2003年、56巻、950−956頁に記載)の10μgを制限酵素BamHIで分解し、アガロースゲルで電気泳動し、8.3kbのDNA断片を含むアガロースゲル分画を切り出した。切り出したゲルブロックから、ジンクリーンキット(Qバイオジーン社製)でDNA断片を精製し、蒸留水(2.5μL)に溶解した。ここに実施例で得た
Streptomyces sp. XP−710株およびXP−720株の染色体の部分消化DNA断片水溶液(5μL)を加え、ライゲーションキット(タカラバイオ社製)(7.5μL)を加え、17時間、16℃で静置した。ついで、このライゲーション溶液中のプラスミドをギガパックIIIパッケージングエクストラクトキット(Stratagene社製)で、接合性大腸菌に導入した。カルベニシリン入り(50μg/L)のLB寒天培地で30℃、2日間、プラスミドの入った大腸菌を培養し、生育した形質転換体(大腸菌)から1,000コロニーを釣菌して別のカルベニシリン入り(50μg/L)のLB寒天培地で30℃、1日間、培養した。
【実施例5】
【0032】
[大腸菌コスミドライブラリーから放線菌へのプラスミドの導入]
実施例4で取得したコスミドプラスミドが入った大腸菌1,000コロニーを、それぞれ1コロニーずつカナマイシン入り(50μg/mL)LB培地(5mL)で、吸光度660nmが0.6になるまで、30℃で培養した。この培養液(2mL)を滅菌済みのエッペンチューブに移し、遠心分離(3,000rpm、5分、4℃)した。上清をデカンテーションした後、LB培地(1mL)を加えて激しく撹拌し、菌体を洗浄した。遠心分離(3,000rpm、5分、4℃)し、上清をデカンテーションした後、さらにもう2回同じ操作を繰り返した。LB培地(0.5mL)を加えて菌体を懸濁した。別に容易した滅菌済みのエッペンチューブにストレプトマイセス・リビダンス(
Streptomyces lividans 1326株(NBRC番号:15675)の胞子懸濁液(1μL)とプラスミドの入った接合性大腸菌の懸濁液(0.1mL)をよく混合し、放線菌培地「ダイゴ」No.4(日本製薬社製)に広げた。30℃で18時間培養後、チオストレプトン(167μg/mL)とナリジキシン酸Na(67μg/mL)入りニュートリエント・ブロス(ベクトン・ディッキンソン社製)寒天培地(寒天0.5%、3mL)を重層し、さらに3日間培養を続けた。生育してきたコロニーを取得した(1つの大腸菌に対して1コロニー取得した)。
【実施例6】
【0033】
[イソメラーゼ生産能を持つ組換え放線菌の取得]
実施例5で作製した1,000コロニーを500mLバッフルフラスコに入れた上記で示した培地50mLにそれぞれ植菌し、28℃、回転数160rpmの条件下で回転培養した。培養3日目にそれぞれの培養液を50mL遠心管に回収した。HITACHI微量高速遠心機(CF15RXII型)9000rpm、10分遠心後、上清を廃棄した。菌体を蒸留水で1回洗浄し、再び遠心を行い、上清を廃棄した。それぞれの菌体を40mMトリス−マレイン酸緩衝液(pH7.0)30mlに懸濁した。HEAT SYSTEM社アストラソン超音波細胞破砕機(W385)DUTY CYCLE 50%、出力コントロール目盛り5で20秒間2回超音波処理を行った。破砕溶液を9,000rpm、10分遠心し、それぞれの上清を回収した。ザルトリウス社のMinisart1.2μmで膜ろ過し、それぞれの粗酵素液(1,000コロニー分)を得た。
これら粗酵素液の活性の確認を、上記記載の方法で行ったところ、1コロニーの粗酵素液で本活性が確認された。
本コロニーのコスミドライブラリーのDNA配列を解析した結果、機能が推定できない構造遺伝子配列が確認されたため、本構造遺伝子の発現を試みることにした。
【実施例7】
【0034】
本例では、接合型放線菌プラスミドpTONA4(特許文献8)を用いて、PCR断片をプラスミドpTONA4に導入し、ストレプトマイセス・リビダンス(
Streptomyces lividans 1326株(NBRC番号:15675))に発現させ、
図1に示す組換え型イソメラーゼの構成(制限酵素地図)を得た。
商品名「InstaGene(商標)Matrix」(BIO−RAD社製)を用いて、Streptomyces sp.710株および720株からそれぞれのゲノムDNAを単離した。フォワードプライマー(配列番号5)およびリバースプライマー(配列番号6)を合成した。前記2つのプライマーを用いて、
Streptomyces sp.710株ゲノムDNAを鋳型としたPCR反応を行った。なお、前記PCR反応は、商品名「Phusion DNA Polymerase」(FINNZYMES社製)を用い、1サイクル(98℃で10秒間、58℃で10秒間、72℃で2分間を順に行う)を35サイクル行った。前記PCR反応により得られたPCR断片を、制限酵素NdeIおよびHindIIIで処理した。また、前記接合型放線菌プラスミドpTONA4も制限酵素NdeIおよびHindIIIで処理した。得られた2つの断片を互いにライゲーションした後、ストレプトマイセス・リビダンス(
Streptomyces lividans 1326株(NBRC番号:15675))に導入し、XGP−710株を得た。得られたPCR断片は、DNAシークエンサーで分析し、塩基配列を決定し、配列番号3と全く同じであることを確認した。
また、フォワードプライマー(配列番号7)およびリバースプライマー(配列番号8)を合成した。前記2つのプライマーを用いて、
Streptomyces sp.720株ゲノムDNAを鋳型としたPCR反応を行い、以下、上記と同様の操作を行い、XGP−720株を得た。得られたPCR断片は、DNAシークエンサーで分析し、塩基配列を決定し、配列番号4と全く同じであることを確認した。配列番号5〜8のプライマーを表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
次に、上記発現系を含んでなる宿主細胞を培養して粗酵素液を得た。
500mLバッフルフラスコに入れたTSB培地50mL2本にXGP−710株およびXGP−720株をそれぞれ植菌し、28℃、回転数160rpmの条件下で回転培養した。培養3日目にそれぞれの培養液を50mL遠心管に回収した。HITACHI微量高速遠心機(CF15RXII型)9000rpm、10分遠心後、上清を廃棄した。菌体を蒸留水で1回洗浄し、再び遠心を行い、上清を廃棄した。それぞれの菌体を40mMトリス−マレイン酸緩衝液(pH7.0)30mlに懸濁した。HEAT SYSTEM社アストラソン超音波細胞破砕機(W385)DUTY CYCLE 50%、出力コントロール目盛り5で20秒間2回超音波処理を行った。破砕溶液を9000rpm、10分遠心し、それぞれの上清を回収した。ザルトリウス社のMinisart 1.2μmで膜ろ過し、それぞれの粗酵素液(XGP−710粗酵素液およびXGP−720粗酵素液)を得た。
【実施例8】
【0037】
D−アロースは、化学的または生物学的な方法により生産することができ、化学的には、D−リボースから生産したり(非特許文献5)、1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−α−D−リボヘキソフラノース−3−ウロースを還元することで得られ(非特許文献6)、酵素的には、
Pseudomonas stutzerii LL172からのL−リボースイソメラーゼ(L−RhI)の利用により、D−プシコースから生産することができる(非特許文献7)。
本発明においては、
Streptomyces属から得られたイソメラーゼの特性を調べることとした。
【0038】
(1)本酵素の反応性
まず、本酵素の各基質に対する反応性を調べることとした。
基質として、アルドースであるL−ラムノース、D−リボース、D−アラビノース、L−アラビノース、D−キシロース、D−グルコース、D−アロースをそれぞれ用い、前述の酵素活性反応条件で反応させた後、得られたそれぞれの反応液をCysteine Carbazole法に従って酵素活性を測定した。その結果、L−ラムノースに対する基質活性が高く、次いで、D−キシロース、D−リボース、D−アロース、D−グルコース、およびL−アラビノースに対する基質反応活生が高かった(
図5)。
【0039】
(2)本酵素活性へ及ぼす金属の影響
次に、イソメラーゼ活性に対する金属イオンの影響を調べる目的で、酵素を一部透析して酵素活性を測定した。透析は、粗酵素液をセルロース膜に入れ、20mMEDTAを含むグリシン−NaOH緩衝液(pH9.0)に浸し、この緩衝液をゆっくりと16時間かけて撹拌することにより行い、他の金属イオンの影響を取り除いた。こうして得られたアポ酵素の酵素活性を、各種二価イオン存在下(表4の反応条件下)で反応後、システインカルバゾール法により測定した。
その結果、MnCl
2は本酵素活性を著しく上昇させ、本酵素は金属依存性を示した一方、MgSO
4、MgCl
2、CoCl
2は、その活性をわずかに上昇させた。CaCl
2、BaCl
2、ZnCl
2、CuSO
4はその活性を阻害することがわかった(
図2)。
E.coliで発現するL−RhIは、その酵素活性を示すのにMn
2+またはZn
2+を要求することが報告されている(非特許文献8)。
【0040】
【表4】
【0041】
(3)本酵素活性へ及ぼす温度の影響(至適温度)
次に、本酵素活性へ及ぼす温度の影響を調べた。
酵素活性は、表5の条件において反応温度を随時10、20、30、40、50、60、70、80、90℃と変えて酵素反応をさせた後に、システインカルバゾール法により測定することにより確認した。
その結果、本酵素活性の至適温度は60℃であった(
図3a)。
【0042】
【表5】
【0043】
(4)本酵素活性の熱耐性
次に、本酵素活性の熱耐性を調べた。
各酵素液を、グリシン−NaOH緩衝液(pH9.0)中で各温度条件(10、20、30、40、50、60、70、80℃)下で1時間保温し、その残存する酵素活性を、上記条件下で酵素反応させた後に、システインカルバゾール法により測定した。
その結果、60℃における1時間の保温後にも、約80〜90%の酵素活性が残存していた(
図3b)。
【0044】
(5)本酵素活性へ及ぼすpHの影響(至適pH)
次に、本酵素活性へ及ぼすpHの影響を調べた。
具体的には、各pH緩衝溶液(50mMクエン酸緩衝液 (pH3.0−6.0)、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0−8.0)、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.0−9.0)、50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9.0−11.0))中に、酵素液を4℃で24間置いた後、表6の反応条件下で酵素反応をさせ、残存する酵素活性をCysteine Carbazole法により測定した。この際のD−アロースからD−プシコースへの異性化反応条件は下表に示す。
その結果、本酵素の至適pHはpH9.0であることがわかり(
図4a)、pH9.0のグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中における酵素活性がより安定であった(
図4b)。
【0045】
【表6】
【0046】
(6)本酵素が触媒する反応の平衡点における各希少糖の生成率
次に、本酵素が、アルドースであるL−ラムノース、D−リボース、D−アラビノース、L−アラビノース、D−キシロース、D−グルコース、D−アロースのそれぞれを基質とし、表7の反応条件で反応させ(ただし、反応時間は6〜48時間)、平衡点に達したときに得られる反応液の糖組成をHPLC法により調べた。
【0047】
【表7】
【0048】
表8に、各アルドースに本酵素(XGP−720酵素液)を作用させたときのケトースとアルドースの生成率を示す。
【0049】
【表8】
a すべての場合において、はじめにケトースの生成がみられた。
b 生成率は、平衡点に達したときのアルドース(残存した基質):ケトース(生成物):アルドース(生成物)を示す。
【0050】
(7)D−プシコースとD−アロース間のイソメラーゼ反応
次に、D−プシコースからD−アロースへのイソメラーゼ反応について調べた。
表9の反応条件下で酵素反応させ、HPLC法により糖組成を測定した。反応前(0時間、D−プシコース)と反応後(24時間反応後のD−プシコース、D−アルトロース、D−アロース混合液)のHPLC分析結果を
図6に示す。
その結果、D−プシコースを基質として酵素反応を開始したときにも、先の各アルドースを基質としたときの変換率に示したように、本酵素は、D−プシコース:D−アロース:D−アルトロース=66:33:1の比率で、D−プシコースからD−アロースを生成するということが確認できた。
【0051】
【表9】
【0052】
[結論]
両酵素ともL−ラムノースに対して高い親和性を示し、XGP−710酵素に比較してXGP−720酵素のほうがやや高い活性を示した。これら酵素の至適温度および安定性は60℃近辺にあり、微生物汚染を防ぐ効果が見込まれる。さらに、金属イオンとしてのMnCl
2存在下、pH9.0のグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液中で最も高い活性を示した。これらの結果から、同定された本ストレプトマイセス属(
Streptomyces)に属する菌株の酵素はD−プシコースからD−アロースを生産するのに効果的な酵素であることを明らかに示唆している。