特許第6209534号(P6209534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209534
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】無収差結像分光器
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/18 20060101AFI20170925BHJP
   G01J 3/36 20060101ALI20170925BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G01J3/18
   G01J3/36
   G01J3/02 C
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-552250(P2014-552250)
(86)(22)【出願日】2013年1月8日
(65)【公表番号】特表2015-503764(P2015-503764A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】US2013020637
(87)【国際公開番号】WO2013106307
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年10月30日
(31)【優先権主張番号】13/350,060
(32)【優先日】2012年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512190734
【氏名又は名称】ローパー サイエンティフィック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ROPER SCIENTIFIC,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マクルーア、ジェイソン
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02051050(EP,A1)
【文献】 特開平08−327452(JP,A)
【文献】 特開平11−264762(JP,A)
【文献】 特開2002−131129(JP,A)
【文献】 特開2005−331419(JP,A)
【文献】 特開2002−005741(JP,A)
【文献】 特表2006−523330(JP,A)
【文献】 特開平06−194510(JP,A)
【文献】 特開昭49−134346(JP,A)
【文献】 特開平01−321325(JP,A)
【文献】 米国特許第05384656(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−3/52
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
G03H 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光器であって、
点光源からの光の入射ビームを受ける入光アセンブリを有するハウジングと、
焦点面アレイ検出器と、
光の前記入射ビームをコリメートしてコリメートビームを生成するように設けられたコリメート部と、光の前記コリメートビームを、複数の波長を含む分散光ビームに分散させる分散部とを有する少なくとも1つの光学素子と、
前記分散光ビームを前記焦点面アレイ検出器上に集光するように設けられた、凹面を有する集光光学素子であって、
前記集光光学素子は、曲率半径を有し、かつ前記分散部から、前記曲率半径に等しい距離に配置され、
前記集光光学素子は、収差を加えるか、または減らすように構成された、前記凹面からの非球面のずれを含む、前記集光光学素子と、
前記ハウジング内に配置され、光を受けて反射させるための少なくとも1つの収差補正素子であって、収差を加えるか、または減らすように構成された非球面を含む、前記収差補正素子と
を備える、分光器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光学素子の前記コリメート部が、
光の前記入射ビームをコリメートして前記コリメートビームにするトロイダル・コリメート鏡と、
前記コリメートビームを、複数の波長を含む前記分散光ビームに分散させるように構成された別個の平面−分散素子とを含み、
前記少なくとも1つの収差補正素子が、前記平面−分散素子と前記集光光学素子との間にある補正プレートを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項3】
前記点光源と前記トロイダル・コリメート鏡との間の光路にある第2の収差補正素子を備える、請求項2に記載の分光器。
【請求項4】
前記集光光学素子が、半径座標において四次多項式によって表わされる非球面のずれを有して、ザイデル係数SI、SII、およびSIIIによって表わされる三次ザイデル収差を含む収差を生じさせるようにする、請求項2に記載の分光器。
【請求項5】
前記集光光学素子が、1以上の次数の多項式のデカルト「x」および「y」座標において、自由形状の多項式によって表わされる非球面のずれを有して、1次以上の収差を生じさせるようにする、請求項2に記載の分光器。
【請求項6】
前記非球面が、半径座標において四次多項式によって表わされて、ザイデル係数SI、SII、およびSIIIによって表わされる三次ザイデル収差を生じさせるようにする、請求項1に記載の分光器。
【請求項7】
前記第2の収差補正素子が、1以上の次数の多項式のデカルト「x」および「y」座標において、自由形状の多項式によって表わされて、1次以上の収差を生じさせるようにする、請求項3に記載の分光器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの光学素子が、光の発散ビームをコリメートしかつ分散させるように構成された凹面回折格子を含み、
前記少なくとも1つの収差補正素子が、凹面格子と前記集光光学素子との間にある補正プレートを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項9】
凹面格子が、正または負のSIII収差を前記分散光ビームに加えるように構成された、不均一に離間した溝を含む、請求項7に記載の分光器。
【請求項10】
光の入射ビームを光の分散ビームに変換する分光器であって、
光の前記入射ビームをコリメートして光のコリメートビームにするように構成された光学素子と、
光の前記コリメートビームを、複数の波長を含む光の分散ビームに変換するように構成された分散素子と、
光の前記分散ビームを焦点面上に集光するように構成された集光素子と、
第1の収差補正素子と
を備え、
前記集光素子は、曲率半径を有し、かつ前記分散素子から、前記曲率半径に等しい距離に配置され、
前記集光素子は、凹面からの非球面のずれを含み、前記非球面のずれは、収差を加えるか、または減らすように構成され、
前記第1の収差補正素子は、光の前記入射ビームと前記集光素子との間の光路にある、分光器。
【請求項11】
光の前記入射ビームと前記分散素子との間に配置された第2の収差補正素子をさらに備える、請求項10に記載の分光器。
【請求項12】
前記分散素子が、コリメート素子の面に配置されて、分散およびコリメート素子を形成するようにする、請求項10に記載の分光器。
【請求項13】
光の前記入射ビームが、まず、前記第1の収差補正素子の方へ向けられ、かつ前記第1の収差補正素子からコリメート素子の方へ向けられ、前記コリメートビームが前記分散素子の方へ向けられ、前記分散ビームが前記集光素子の方へ向けられる、請求項10に記載の分光器。
【請求項14】
光の前記入射ビームが、まず、前記分散およびコリメート素子の方に向けられ、光のコリメートされ、かつ分散されたビームを形成し、光のコリメートされ、かつ分散されたビームが、前記第1の収差補正素子の方へ向けられ、次に、前記集光素子の方へ向けられる、請求項12に記載の分光器。
【請求項15】
光の前記入射ビームが、まず、第2の収差補正素子の方へ向けられ、次に、コリメート素子の方へ向けられ、光の前記コリメートビームが前記分散素子の方へ向けられ、光の前記分散ビームが、前記第1の収差補正素子の方へ向けられ、次に、前記集光素子の方へ向けられる、請求項10に記載の分光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分光器に関し、より詳細には、焦点面アレイ検出器に像が形成される分散光ビームにおける球面、コマ、および非点収差を補正するように設計された改良型の分光器に関する。
【背景技術】
【0002】
分光器は光学機器であり、一般に機器の水平面または接平面である分散面において光を分散し、焦点面アレイ検出器に鮮鋭に集光するために使用される。さらに明確にするために、本明細書では、接平面は、紙面に対して平行な平面を指す。分光器は、一般に、物質との光の様々な相互作用によって特定の材料特性を調査するために使用される。いくつかの例は、限定されるものではないが、ラマン散乱、蛍光放射/励起分光法、レイリー散乱などが含まれる。近頃の市販の分光器は、一般に、反射鏡または屈折レンズのいずれかの1つ以上の曲面光学素子を組み合わせている。その曲面光学素子は、光を、回折格子やプリズムなどの分散素子へとコリメートして向けて、その分散素子からの分散光を集光する。複数の分散波長からなる光は、電荷結合素子(CCD:charge coupled device)やフォトダイオードアレイ(PDA:photo diode array)などの焦点面アレイ検出器に集光される。
【0003】
典型的な市販の分光器は、ツェルニー・ターナー型の光学設計またはその変形を採用している。この設計では、2つの鏡が、2つの鏡の中間点付近に置かれた分散素子を用いて軸外の主光線とともに「W字」形状を形成するように使用される。より具体的には、2つの鏡はWの底部頂点に置かれ、および格子が上部頂点に置かれる。第1の鏡は、一般に形状がトロイドであり、分光器の入射スリットに置かれた点光源からの光をコリメートする。点光源は、スリット平面に置かれた1つの光ファイバー、複数の光ファイバー、または任意の光学機器から投影された像とし得る。分散素子、通常、回折格子が、第1の鏡からのコリメート光を受けて、コリメート光を第2の鏡の方へ分散させるように配置される。第2の鏡は、一般に形状が球面であり、点光源のスペクトル分散した、残存収差のある像を、焦点面アレイ検出器上に集光する。これらの残留像収差は、典型的なツェルニー・ターナー型の設計に内在的であり、かつ機器を定義付ける特徴である。
【0004】
ツェルニー・ターナー型分光器の結像性能は、分散されたスペクトル特性をどの程度分解するかということ、およびスリット平面に沿って垂直に配置された点光源がどの程度空間的に分解され得るかということに関連がある。スリット平面に沿った空間分解能は、マルチチャンネル分光法またはハイパー・スペクトル結像技術にとって極めて重要である。分光器の設計に重要である結像性能を制限する3つの主要な三次「ザイデル」収差を、本明細書ではそれらのザイデル係数によってリストすると、球面収差(SI)、コマ収差(SII)、および非点収差(SIII)である。これらの3つの収差のうち、コマ収差および非点収差は、設計者に最も重要である。なぜなら、これら収差は、記録されたスペクトル特性を非対称的に歪ませ、かつ分散分解能および空間分解能の双方に影響を及ぼすためである。球面収差、すなわちSIについては、あまり心配していない。なぜなら、球面収差はスペクトル線の形を対称的に拡大し、スペクトル特性のピーク強度を低下させるためである。
【0005】
典型的なツェルニー・ターナー型分光器における未補正SIは、点光源の像の周りの対称的な拡散ボケとして観察され、かつ、1/(f/#)の場合に重大性が増すことが知られている。本明細書では、f/#すなわち「F値」は、鏡またはレンズの有効焦点距離対その入射瞳の直径との比を指す。鏡のf/#はまた、1/(f/#)の場合にその集光パワーと相関関係にある。それゆえ、分光器のf/#が小さいほど、より高速に光を集め、かつますます像収差を減衰しやすくなる。
【0006】
レイリー判定基準から、歴史的に、SIのみによって引き起こされる波面収差WIをλ/4未満にして、光学系において、回折が限定された性能を保証する必要があることが知られている。本明細書では、WIは、SIおよび光の特定波長λによって生成された波面収差である。より大きなアパーチュアの低f/#の鏡に関し、例えば、設計波長λ500nmで動作する、直径が32mm超の、f/#がf/5未満の鏡は、顕著なWIに対処する必要があり、かつ分光器の光学設計に補正を実施する必要がある。
【0007】
数学的に、球面鏡のザイデル係数SIを、式1として載せる。式中、「y」は、鏡の頂点からアパーチュア縁部まで測定された半径方向距離であり、および「R」は曲率半径である。下付き文字は全て、それぞれ対象の鏡を指し、およびザイデル係数などの全ての和によって、分光器を含む光学経路のそれぞれの収差の合計が与えられる。SIに関連する波面収差(WIを付す)は、式2によって与えられる。式中、yは、鏡の最大アパーチュアの半値幅である。SIおよびWIは、それぞれ、鏡の半値幅において4乗で増大するため、WIは、より大きなアパーチュアの低f/#の光学素子では、より急速に問題となる。
【0008】
【数1】
未補正SIIは、主に分光器の接平面または分散平面において、点光源の像の非対称的な拡がりとして観察される。SIIは、光学軸の周りで回転された鏡から反射する主光線によって引き起こされる。ツェルニー・ターナー型分光器の場合、鏡は、サジタル軸または垂直軸の周りで回転され、それにより、像には、主に正または負の接線SIIが加わる。サジタルSIIが存在するが、かなり少ない程度であるため、ほとんど問題がない。数学的に、球面鏡のSII係数は、式3によって表される。式中、sは、鏡の頂点から系のストップ(stop)、すなわち格子の中心まで辿った主光線に沿った距離であり、およびuは、鏡上の主光線の角度または軸外角(off−axis angle)である。
【0009】
【数2】
未補正SIIIは、検出器を、最高分解能または最大限でサジタル焦点に位置決めするときに、サジタル面または垂直面において、点光源の像の非対称的な拡がりとして観察される。SIIIは、軸外点光源の像が形成されるように配置されるときに、互いに長手方向に離れる凹面鏡に対する接線焦点面およびサジタル焦点面の結果である。SIIIは、非軸上の像点、またはフィールド点(field point)の全てに関して焦点面の中心からの接線方向の像距離を増大させて、典型的なツェルニー・ターナー型分光器において急速に増大することが観察される。本明細書では、用語「フィールド」は、焦点面の中心から測定可能な距離で形成された任意の像点または像点の収差に関係する。次いで、記録されたスペクトル画像におけるフルエンス(fluence)が全フィールド点で低下する。なぜなら、点光源の像が垂直に拡張され、より多くの結像検出ピクセルをカバーするようになるためである。数学的に、球面鏡のSIII係数を式4と定義できる。
【0010】
【数3】
典型的なツェルニー・ターナー型分光器では、軸上のSIIおよびSIIIを補正する方法が実現される一方で、SIの補正方法は一般にはないため、設計者は、歴史的に、大まかな設計ガイドとしてレイリー判定基準に従った。しかしながら、この基準は、焦点距離の長い低f/#、すなわち高速光学素子(fast optics)の使用について注意を喚起する。なぜなら、分光器における分散分解能は、その集光鏡(focusing mirror)、高速高分解能機器(fast, high resolution instrument)の焦点距離に比例するので、従来の設計を使用する場合には、SIが存在しないのは不可能であるためである。
【0011】
鏡の半径Rおよび軸外角uを正しく選択することによって、1つの格子角度において軸上SIIを完全に補正できることが知られている。これは、式3から、軸外角uの符号が、コリメート鏡および集光鏡の従来の「W」字型の配置において、逆になるであろうことは、明らかである。それゆえ、第1の鏡によって導入されたコマ収差が第2の鏡のコマ収差に等しくかつそれと反対である場合に、条件を満たすことができる。しかしながら、回折格子は、分散ビームにアナモルフィック倍率を与え、それにより、ビームを圧縮または拡大させ、かつ、最も重要なことには、このアナモルフィック効果は格子角度で変わることである。それゆえ、第2の鏡に照射するビームの半値幅は格子角度に応じたものであるため、SIIは、特別設計の格子角度、またはもっと正確にいえば、設計波長帯に関してのみ、補正できる。
【0012】
SIIIは、一般に、軸上像点のみに関し補正される、すなわち、焦点面の中心においてゼロの傾向を有するにすぎず、フィールドSIIIは、未補正のままにされる。いくつかの方法で軸上SIIIの補正を達成できることが知られている。軸上SIIIの補正の最も一般的な方法は、サジタル面における曲率半径が接平面よりも短いトロイダルのコリメート鏡を使用することである。最適なサジタル半径(sagittal radius)の選択は、それぞれの軸外角uにおいて使用される2つの凹面鏡によって与えられた、非点収差による総合的な焦点ずれを考慮することによって、決定される。それぞれ1つの無限共役面を有し、かつ第1の鏡から距離ft1に配置された点光源の像が形成されるように配置された2つの凹面鏡に関する非点収差による総合的な焦点ずれは、式5aとして与えられる。サジタル焦点距離fおよび接線焦点距離fは、トロイダルである場合、鏡のサジタル曲率半径Rおよび接線曲率半径Rに関係し、式5bおよび式5cによって与えられる。式5a〜5c中の数字および添え字「i」の下付き文字は、第1の「コリメート」鏡および第2の「集光」鏡を指す。球面鏡RはRに等しいが、fおよびfは、非ゼロの軸外角uゆえに等しくないことに留意されたい。コリメート鏡Rs1のサジタル半径は、ゼロの非点収差による焦点ずれに関し、式5aに従って決定され得る。すなわち、ΔfSIII=0。この方法は、最後の像から軸上非点収差を除去する。
【0013】
【数4】
トロイダルコリメート鏡の代わりに、溝間隔が均一な格子の形状自体をトロイダルにして、式5aによる軸上SIII補正に必要な条件を提供する。この構成では、トロイダル格子は、コリメート鏡の代わりをし、かつ1つの波長で、またはより正確には、1つの格子角度で軸上SIIIの補正をもたらす。焦点面アレイ検出器によって測られた、観察される波長帯を変更するために、格子が理想的な角度から回転されるにつれて、軸上SIIIの補正は損なわれるであろう。
【0014】
軸上SIIIを補正する第3の方法は、様々な線間隔を有する収差補正ホログラフィー格子を使用することを含む。そのような格子は、1つの波長で軸上SIIIを完全に補正でき、かつ他の波長では軸上SIIIを適度に抑制する((特許文献1))。本明細書に引用する全参照文献は、本明細書で十分に説明されたかのように、参照することにより援用される。
【0015】
分光器の未補正フィールドSIIIは、入射スリットに沿って垂直に配置された点光源の空間分解能が望まれるときには、非常に有害である。例えば、線形ファイバー束からの複数の光ファイバー光源がスリット平面に配置される場合、未補正フィールドSIIIにより、隣接する光ファイバー光源から分散光が生じて、焦点面の縁部において重なり合うか、または「クロストーク」する。これは、最終的に、結像分光器がクロストークが発生する前に適合できるように、光ファイバー光源または離散した光チャネルの数が削減される。さらに、顕微鏡または任意の他の結像機器から投影された像が分光器の入射スリット平面に入射する場合、未補正SIIIは、サジタル面のフィールド点に関する空間像の情報を分解できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第3,628,849号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
それゆえ、低f/#で動作し、かつ設計波長において平坦な焦点面アレイ検出器のフィールド全体にわたって無収差結像を提供し、かつその設計波長から逸脱する波長に関しほとんど無収差のままである、高分解能の結像分光器を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、分光器であって、点光源からの光の入射ビームを受けるコリメート素子と、コリメート素子からの光を受けて、接平面においてコリメート光を分散するように配置された分散素子と、分散素子からの光を受ける非球面補正プレートと、補正プレートからの分散光を伸長された焦点面アレイ検出器の長さに沿って集光するように配置された非球面の凹面集光素子(aspheric concave focusing element)とを備え、補正プレートが、分散光ビームに対し、ある量のSI、SIIおよびSIIIを加えることおよび減らすことのうちの少なくとも一方を行ない、非球面の凹面集光素子が、追加的なフィールドSIIIを導入しないように、分散素子から正確な距離に配置され、およびその非球面が、残存SI、SII、およびSIIIフィールド収差のバランスを取るように設計されている、分光器が提供される。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、分光器であって、点光源からの光の入射ビームを受ける第1の収差補正プレートと、第1の収差補正プレートからの光を受けるコリメート素子と、コリメート素子からの光を受ける、接平面においてコリメート光を分散させるように配置された分散素子と、分散素子からの光を受ける第2の非球面補正プレートと、分散素子からの分散光を、伸長された焦点面アレイ検出器の長さに沿って集光するように置かれた非球面の凹面集光素子とを備え、第1の補正プレートが、入射発散光ビームに対し、ある量のSI、SIIおよびSIIIを加えることおよび減らすことのうち少なくとも一方を行い、第2の補正プレートが、分散光ビームに対し別の量のSI、SIIおよびSIIIを加えることおよび減らすことのうちの少なくとも一方を行ない、非球面の凹面集光素子が、追加的なフィールドSIIIを導入しないように、分散素子から正確な距離に配置され、その非球面が、残存SI、SII、およびSIIIのフィールド収差のバランスを取るように設計されている、分光器が提供される。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態によれば、分光器であって、点光源からの光の入射ビームを受ける、接平面において光を分散およびコリメートさせるように配置された凹面分散素子と、分散素子からの光を受ける非球面補正プレートと、補正プレートからの分散光を、伸長された焦点面アレイ検出器の長さに沿って集光するように配置された非球面の凹面集光素子とを備え、補正プレートが、分散光ビームに対し、ある量のSI、SIIおよびSIIIを加えることおよび減らすことのうちの少なくとも一方を行ない、非球面の凹面集光素子が、追加的なフィールドSIIIを導入しないように、分散素子から正確な距離に配置され、その非球面が、残存SI、SII、およびSIIIフィールド収差のバランスを取るように設計される、分光器が提供される。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態によれば、分光器であって、点光源からの光の入射ビームを受ける収差補正プレートと、差補正プレートからの光を受けるコリメート素子と、コリメート素子からの光を受ける、接平面においてコリメート光を分散させるように配置された分散素子と、分散素子からの分散光を、伸長された焦点面アレイ検出器の長さに沿って集光するように配置された非球面の凹面集光素子とを備え、補正プレートが、入射発散光ビームに対し、ある量のSI、SIIおよびSIIIを加えることおよび減らすことのうちの少なくとも一方を行ない、非球面の凹面集光素子が、追加的なフィールドSIIIを導入しないように、分散素子から正確な距離で配置され、その非球面が、残存SI、SII、およびSIIIフィールド収差のバランスを取るように設計される、分光器が提供される。
【0022】
さらなる実施形態では、光の入射ビームを光の分散ビームに変換する分光器が開示される。分光器は、光の入射ビームをコリメートして光のコリメートビームにする光学素子と、光のコリメートビームを、複数の波長を含む光の分散ビームに変換する分散素子と、光の分散ビームを焦点面上に集光する集光素子と、収差補正素子とを含む。集光素子は、分散素子から、その曲率半径に等しい距離に位置決めされ、集光素子は、凹面からずれる非球面を含み、非球面のずれは、収差を加えるか、または減らすように構成されている。収差補正素子は、光の入射ビームと集光素子との間の光路にある。さらなる実施形態では、第2の収差補正素子が含まれる。
【0023】
さらなる実施形態では、分散素子が、コリメート素子の面に配置されて、分散およびコリメート素子を形成する。さらなる実施形態では、光の入射ビームは、まず、分散およびコリメート複合素子の方へ向けられ、光のコリメートされ、かつ分散されたビームを形成し、その後、光のコリメートされ、かつ分散されたビームは、第1の収差補正素子の方へ向けられてから、集光素子の方へ向けられる。
【0024】
さらなる実施形態では、光の入射ビームは、まず、第1の収差補正素子の方へ向けられ、かつ第1の収差補正素子から、ビームは、コリメート素子の方へ向けられ、コリメートビームは分散素子の方へ向けられ、そこから分散されたビームは集光素子の方へ向けられる。
【0025】
さらなる実施形態では、光の入射ビームは、まず、第2の収差補正素子の方へ向けられ、次に、コリメート素子の方へ向けられる。その後、光のコリメートされたビームは分散素子の方へ向けられる。その後、光の分散されたビームは、第1の収差補正素子の方へ向けられ、次に、集光素子の方へ向けられる。
【0026】
さらなる実施形態では、分光写真を生成する方法が開示される。方法は、
光のビームを少なくとも1つの光学素子の方へ向け、光のビームをコリメートしかつ分散させて、光のコリメートされかつ分散されたビームを生成すること、
光のコリメートされかつ分散されたビームを、少なくとも第2の光学素子の方へ向けて補正しかつ集光して、焦点面上に光のビームの分光的な像を生成することであって、集光素子が、分散素子から、集光素子の曲率半径に等しい距離に配置され、補正素子が、収差を加えるか、または減らすように構成された非球面を含む、前記像を生成すること
を含む。
【0027】
本明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を示し、および説明と共に、本発明の原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】分光器の第1の実施形態の線図である。
図2】分光器の第2の実施形態の線図である。
図3】分光器の第3の実施形態の線図である。
図4】分光器の第4の実施形態の線図である。
図5】複数の点光源と共に使用する分光器の実施形態の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
初めに図1を参照して説明すると、分光器の一実施形態が、全体的に参照符号10で示されている。分光器10を、点光源11からの光のスペクトル分析に使用する。点光源は、スリット平面13に置かれた多くの点光源からなってもよく、かつスリット平面の軸に沿って垂直に空間的に分離された単一または複数の光ファイバー光源の形態にあってもよい。スリット平面に置かれた物理的な光源の代わりに、顕微鏡または任意の結像機器からの像をスリット平面に投影し得る。分光器はハウジング12を含み、ハウジングは、一対の入射スリット、開放アパーチュア、または光ファイバー束自体の端部の形態とし得る入光アセンブリ14を備える。
【0030】
図1を参照して説明すると、点光源11からの光は、発散入射ビーム15としてハウジングに入り、かつ軸外角αを有するトロイダル形状の凹面のコリメート鏡16の方に向かって伝搬する。コリメート鏡16は、コリメートされたビームすなわちコリメートビーム28として光を反射し、このコリメートビームは回折格子17の方に向かう。ここで、コリメートビーム28は、トロイダル鏡が、設計のトロイドの接線半径に等しい半径を有する球面であるという近似の範囲内で、それぞれ式6a、式6b、および式6cで与えられた、ある量の(SI)、(SII)、および(SIII)を有する。これらの収差は、光ビームが分光器10の残りの面から反射するときの収差のように代数的に加算する。本明細書では、任意のザイデル係数の下付き文字1は、コリメート鏡16を指す。
【0031】
【数5】
回折格子17は、等間隔の溝18を有する平面を有し、溝は、互いに平行であり、かつ分光器のサジタル軸または垂直軸である。図1を参照して説明すると、コリメートビーム28は、入射角(AOI)αで格子に入射し、および出射角(AOE)βを有する分散ビーム19として回折される。分散されたビームすなわち分散ビーム19は、格子から非球面収差補正プレート20の方へ回折される。補正プレート20は、回転対称である面と、表面サグ、すなわち式7(式中、下付き文字plは、補正プレート20を指す)によって与えられる、平面からのずれとを有する。
【0032】
【数6】
図1を参照して説明すると、非球面補正プレート20は、βplによって与えられたAOIで、回折格子からの光を受けるように配置されており、かつ式8a〜8c(式中、nおよびn’は、光路19および21をそれぞれ含む媒質の屈折率を指す)として挙げられた一連の式によって与えられる収差を、反射ビーム21に導入する。空気界面がある場合には、n=−n’である。
【0033】
【数7】
半径座標yに4次の面のみを有すると、補正プレート20が系のストップに配置される場合(すなわちspl=0)、補正プレート20は、式8aおよび式8dによって与えられた(SI)plの形態の純粋なSIのみを導入する。しかしながら、補正プレートは系のストップすなわち格子から距離splだけシフトされているため、補正プレートは、式8bおよび式8cによってそれぞれ与えられる(SII)plおよび(SIII)plを導入する。
【0034】
図1を参照して説明すると、光路21は、βで与えられるAOIで非球面の凹面集光鏡22に入射する。集光鏡22上の表面サグは、式9aによって与えられ、式中、yは、頂点から縁まで測定された半径方向距離であり、および鏡の曲率cは、式9bによってその曲率半径Rに関係する。集光鏡の面は、典型的な球面からの表面サグ、式9aの第1項、およびその球面からの、式9aの第2項によって与えられる非球面のずれの代数和として理解できる。式9aの係数aは、集光鏡22が有し得る非球面のずれの量を与える。
【0035】
【数8】
光路21は、βによって与えられたAOEで収束ビーム23として反射され、式1、式3、および式4からそれぞれ与えられる(SI)、(SII)、および(SIII)の形態の収差を有し、ここで、任意のザイデル係数の下付き文字2は、本明細書では、非球面集光鏡22を指す。鏡22が非球面であるため、鏡22は、その面に非球面の寄与に由来して加えられた追加的な収差係数を有する。鏡22に得られたザイデル収差係数は、一連の式10a〜10dとして与えられる。
【0036】
【数9】
非球面の集光鏡22からの反射後、収束ビーム23は、分散された点光源11の無収差像を焦点面アレイセンサー24上に形成する。図1を参照して説明すると、焦点面アレイ検出器24は、角度δでハウジング26内に置かれ得る。これを説明するために、本明細書では、用語「無収差」は、最適にされた設計波長において、SI、SIIおよびSIIIのザイデル係数によって与えられた形態の軸上収差およびフィールド収差のない像が生成される光学系の状態を指す。すなわち、スリット平面に置かれた任意の点光源の像は、無視できる程度の像収差で焦点面アレイ検出器24に形成される。本明細書では、用語「ほぼ無収差」は、設計波長から離れるように格子を回転させることに起因する軸SIIおよびフィールドSIIの増大を指す。
【0037】
式6および式10から、四次非球面係数「a」のみを有する、球面鏡と非球面鏡との間のザイデル収差係数の差は、波面に純粋な三次球面収差δSIを加えたものであり、これが同様に、鏡が系のストップ「s」からシフトされる距離に比例する量で追加的なSIIおよびSIIIを生じさせることが明白である。
【0038】
先の議論では、個々のザイデル収差係数は、それぞれ鏡が、自由空間では分離した光学素子であるかのように、これら鏡について導き出される。この処置は、厳しい条件下でのみ正しく、その条件では、各光学部品は、コリメートビームによって分けられている、すなわち、各鏡に対し少なくとも1つの無限共役面が存在する。補正プレートの場合、像の共役面および物体の共役面の双方とも、無限遠に置かれる。分光器10における各タイプのザイデル収差により得られる寄与は、個々のザイデル項の和によって与えられ、かつ下記に式11a〜11cとして挙げる。
【0039】
【数10】
本発明は、式11a〜11cによって与えられる分光器10における各タイプのザイデル収差の総計を最小にすることが前提である。上述の説明では、軸上収差およびフィールド収差のそれぞれは、ストップの位置への依存が異なるため、独立して処理される。SIIタイプの軸上の像収差の処置では、ストップの位置sは、あたかも分光器10の各鏡の面にあるかのように処理される。すなわち、任意の光学系の軸上収差は、系のストップが配置されている位置に全く関係なく、フィールド収差のみが関係する。図1を参照して、式11bにおいて、(SII)Totalおよびsをゼロに等しく設定し、項を再整理し、かつ式12aとして与えられるビーム圧縮率の代わりとすることによって、本明細書では式12bとして与えられる軸上コマ収差補償に周知のcos関係が生じる。この関係を使用して、所与の設計波長において軸上SII補正に関して分光器10の設計を制約する。
【0040】
【数11】
軸上SIIIは、式11cによっては考慮されず、これはむしろコリメート鏡のサジタル半径を変化させることによって補償され、この補償は、式5a〜5cによって与えられるように、長手方向に分離された接線焦点およびサジタル焦点を軸上像点において一緒にする。サジタル焦点と接線焦点との間の長手方向の分離の量は、コリメート鏡の半径および集光鏡の半径、および主光線のAOIにのみ依存する。光は、一定のAOIでコリメート鏡に入射するが、図1を参照して説明すると、回折格子は、光を、それぞれ異なる角度約βで格子を離れる複数の波長に分散させる。それゆえ、それぞれの波長における光は、軸光線角度βからずれる主光線角度で集光鏡に入射する。これは、SIIIを、中心波長から異なる波長の程度で増大させ、かつ、典型的なツェルニー・ターナー型分光器のフィールドSIII収差の主要因である。
【0041】
フィールドSIIIは、トロイダル鏡16のサジタル半径を正しく選択して式11cにおける(SIII)を強制的にゼロにすることによって、および接平面における主光線の角度を、スリット平面に置かれた全ての点光源に対して等しくすることによって分光器10において補正される。すなわち、図1を参照して説明すると、鏡16はそのサジタル半径が、特定のかつ一定の設計の主光線の角度αに関し、(SIII)のバランスを取るように選択されたため、フィールド(SIII)は、定義では、ゼロに等しい。図1を参照して説明すると、集光鏡22の球面の寄与からのフィールド(SIII)は、ストップ距離を鏡の曲率半径に等しく設定する(s=R)ことによって、正確にゼロにされる。これにより、式13cとして与えられる補正プレート20および集光鏡22からの非球面の寄与のみが残り、分光器10の総合的なフィールドSIII収差に対する寄与項が残る。
【0042】
【数12】
式13a〜13cは、分光器10に残存する残存フィールド収差を詳細に示し、これは、非線形最小二乗式の解法(式8dおよび式10dを参照し、式中、非球面係数aplおよびaは変数に設定される)を使用して最小にされる。式5および式12につき軸上SIIおよびSIIIの補正の式をそれぞれ使用して、さらに改善を図れる。おおよその設計パラメータを決定したら、ZEMAX光学系設計ソフトウェアなどの光線追跡プログラムを使用して、設計をさらに最適にする。ZEMAXは、Zemax Development Corporation(Bellevue、Washington 98004、USA)の商標である。
【0043】
図2を参照すると、分光器の第2の実施形態を全体的に参照符号30で示す。分光器30は、点光源11からの光のスペクトル分析に使用される。点光源は、スリット平面13に置かれた多くの点光源からなってもよく、かつスリット平面の軸に沿って垂直に空間的に分離された単一または複数の光ファイバー光源の形態としてもよい。スリット平面に置かれた物理的な光源の代わりに、顕微鏡または任意の結像機器からの像をスリット平面に投影し得る。分光器はハウジング12を含み、ハウジングは、一対の入射スリット、開放アパーチュア、または光ファイバー束自体の端部の形態であり得る入光アセンブリ14を備える。点光源11からの光が、発散入射ビーム31としてハウジングに入り、かつ、第1の非球面収差補正プレート32の方へ向かって伝搬する。補正プレート32は、回転対称である面と、表面サグ、すなわち、式14(式中、下付き文字pl1は、第1の補正プレート32を指す)によって与えられる平面からのずれとを有する。
【0044】
【数13】
非球面補正プレート32は、光をコリメート鏡16の方へ向けるように配置され、かつストップ距離spl1および非球面係数apl1は補正プレート32に特有である点を除き、式8a〜8cとして挙げられる一連の式によって同様に与えられる収差を反射ビーム33に導入する。発散ビームに置かれた補正プレートに関するストップ距離spl1は、コリメート鏡16によって見られるようなその虚像の距離によって与えられる。これは、下記に式15(式中、fおよびgは、それぞれ、鏡16の有効焦点距離、および入光アセンブリ14から補正プレート32までの距離である)として与えられる。
【0045】
【数14】
図2を参照して説明すると、補正プレート32から反射された光は、軸外角αを有するトロイダル形状の凹面のコリメート鏡16の方へ向けられる。コリメート鏡16は、コリメートビーム28として光を反射させ、コリメートビームは、回折格子17の方へ向けられる。コリメートビーム28は、トロイダル鏡が、設計のトロイドの接線半径に等しい半径を有する球面であるという近似の範囲内で、それぞれかつ同じように式6a、式6b、および式6cから与えられる、ある量の(SI)、(SII)、および(SIII)を有する。これらの収差は、光ビームが分光器30の残りの面から反射するときの収差のように代数的に加算される。
【0046】
回折格子17は、等間隔の溝18を有する平面を有し、溝は、互いに平行であり、かつ分光器のサジタル軸または垂直軸である。図2を参照して説明すると、コリメートビーム28は、入射角(AOI)αで格子に入射し、かつ出射角(AOE)βを有する分散ビーム19として回折される。分散ビーム19は、格子から、第2の非球面収差補正プレート34の方へ回折される。補正プレート34は、回転対称である面と、表面サグ、すなわち、式16(式中、下付き文字pl2は、第2の補正プレート34を指す)によって与えられる平面からのずれとを有する。
【0047】
【数15】
図2を参照して説明すると、第2の非球面補正プレート34は、βplによって与えられるAOIで回折格子17からの光を受けるように配置され、かつストップ距離spl2および非球面係数apl2は、補正プレート34に特有である点を除き、式8a〜8cとして挙げられた一連の式によって同様に与えられる収差を反射ビーム21に導入する。
【0048】
図2を参照して説明すると、光路21は、βによって与えられるAOIで非球面の凹面集光鏡22に入射する。集光鏡22の表面サグは、同じように式9aによって与えられ、式中、yは、頂点から縁まで測定した半径方向距離であり、および鏡の曲率cは、式9bによってその曲率半径Rに関係する。式9aの係数aは、集光鏡22が有する非球面のずれの量を与える。
【0049】
非球面集光鏡22からの反射後、収束ビーム23は、分散点光源11の無収差像を焦点面アレイセンサー24上に形成する。図2を参照して説明すると、焦点面アレイ検出器24は、角度δでハウジング26内に置かれ得る。これを説明するために、用語「無収差」は、最適にされた設計波長においてSI、SIIおよびSIIIのザイデル係数によって与えられる形態の軸上収差およびフィールド収差がない状態で像が生成される光学系の状態を指す。すなわち、スリット平面に置かれた任意の点光源は、無視できる程度の像収差で焦点面アレイ検出器24に像が形成される。
【0050】
図2に示す実施形態では、各タイプのザイデル収差の寄与全体は、式11a〜11cによって説明するものと同じ趣旨において与えられる。軸上SIIの補正は、式12aおよび式12bによって与えられるものと同じ趣旨において達成される。軸上SIIIは、コリメート鏡のサジタル半径を変更することによって補償され、それにより、式5a〜5cによって与えられるように、長手方向に分離された接線焦点およびサジタル焦点を軸上像点において一緒にする。
【0051】
フィールドSIIIは、トロイダル鏡16のサジタル半径を正しく選択して式11c中の(SIII)を強制的にゼロにすることによって、およびスリット平面に置かれた全ての点光源に対して接平面における主光線の角度を等しくすることにより、分光器30において補正される。すなわち、図2を参照して説明すると、特定のおよび一定の設計の主光線の角度αに対して、鏡16はそのサジタル半径は、(SIII)のバランスを取るように選択されているため、フィールド(SIII)は、定義上は、ゼロに等しい。図2を参照して説明すると、集光鏡22の球面の寄与からのフィールド(SIII)は、ストップ距離を鏡の曲率半径に等しく設定することによって(s=R)、正確にゼロにされる。これにより、補正プレート32、34および集光鏡22からの非球面の寄与のみを残し、分光器30内の総合的なフィールドSIII収差が寄与項として残る。
【0052】
式13a〜13cと趣旨が同様の一連の式は、分光器30に残る残存フィールド収差のために導き出され、これら収差は、非線形最小二乗式の解法(それぞれ式14、式16、および式9aを参照し、式中、非球面係数apl1、apl2、およびaは、変数として設定される)を使用して最小にされ得る。式5および式12につき軸上SIIおよびSIII補正に関する式をそれぞれ使用して、さらに改善を図れる。おおよその設計パラメータを決定したら、ZEMAX光学系設計ソフトウェアなどの光線追跡プログラムを使用して、設計をさらに最適にする。
【0053】
図3を参照して説明すると、分光器の第3の実施形態を全体的に参照符号50で示す。分光器50は、点光源11からの光のスペクトル分析に使用される。点光源は、スリット平面13に置かれた多くの点光源からなってもよく、かつスリット平面の軸に沿って垂直に空間的に分離された単一または複数の光ファイバー光源の形態としてもよい。スリット平面に置かれた物理的な光源の代わりに、顕微鏡または任意の結像機器からの像をスリット平面上に投影し得る。分光器はハウジング12を含み、ハウジングは、一対の入射スリット、開放アパーチュア、または光ファイバー束自体の端部の形態とし得る入光アセンブリ14を備える。
【0054】
点光源11からの光が、発散入射ビーム15としてハウジングに入り、かつトロイダル形状の凹面回折格子51の方へ向かって伝搬する。回折格子51は、等間隔の溝52を有するトロイダル面を有し、溝は、互いに平行であり、かつ分光器のサジタル軸または垂直軸である。図3を参照して説明すると、発散ビーム15は、入射角(AOI)αで格子に入射し、かつ出射角(AOE)βを有する分散ビーム19として回折される。ここで、分散ビーム19は、トロイダル格子51が、設計のトロイドの接線半径に等しい半径を有する球面であるという近似の範囲内で、それぞれ式6a、式6b、および式6cから与えられる、ある量の(SI)、(SII)、および(SIII)を有する。本明細書では、任意のザイデル係数の下付き文字「g」は、トロイダル回折格子51を指す。分光器50においてトロイダル格子51によって生成された収差は、分光器10のトロイダルコリメート鏡16と全く同じ趣旨で存在し、かつ図1および図3を参照してα=αであることを除き、同じように式6a〜6cによって与えられる。これらの収差は、光ビームが分光器50の残りの面から反射されるときの収差のように代数的に加算される。
【0055】
回折格子51は、理想的には、等距離の溝を有する、凹面でトロイダルのホログラフ的に記録された回折格子である。あるいは、回折格子51は、同一出願人による米国特許第3,628,849号明細書に説明されているように、不均一に離間した溝を有する、凹面の球面格子とし得る。このタイプの格子は、その溝構造の均一性を変化させることによって、制御された量のSIIIを回折ビームに加える能力を有する。そのようなものとして、本発明で使用されたこのタイプの格子は、格子51をトロイダル形状にする必要性をなくしながら、依然として必要なSIII補正を行えるようにする。
【0056】
分散ビーム19は、格子51から非球面収差補正プレート20の方へ回折される。補正プレート20は、回転対称である面と、表面サグ、すなわち式7(式中、下付き文字plは補正プレート20を指す)によって与えられる平面からのずれとを有する。
【0057】
図3を参照して説明すると、非球面補正プレート20は、βplによって与えられるAOIで回折格子からの光を受けるように配置され、かつ、式8a〜8c(式中、nおよびn’は、それぞれ光路19および21を含む媒質の屈折率を指す)として挙げられる一連の式によって与えられる収差を反射ビーム21に導入する。空気界面がある場合、n=−n’である。
【0058】
図3を参照して説明すると、光路21は、βによって与えられるAOIで非球面の凹面集光鏡22に入射する。集光鏡22の表面サグは、式9a(式中、yは、頂点から縁まで測定された半径方向距離であり、および鏡の曲率cは、式9bによってその曲率半径Rに関係する)によって与えられる。式9aの係数aは、集光鏡22が有する非球面のずれの量を与える。
【0059】
図3を参照して説明すると、光路21は、βによって与えられるAOEで、それぞれ式1、式3および式4によって与えられる(SI)、(SII)、および(SIII)の形態の収差を有する収束ビーム23として反射され、ここで、任意のザイデル係数の下付き文字2は、本明細書では非球面集光鏡22を指す。鏡22は非球面であり、その面に非球面の寄与が存在することから、追加的な収差係数が加えられる。鏡22に得られるザイデル収差係数は、一連の式10a〜10dとして与えられる。
【0060】
非球面集光鏡22からの反射後、収束ビーム23は、分散点光源11の無収差像を焦点面アレイセンサー24上に形成する。図3を参照して説明すると、焦点面アレイ検出器24は、角度δでハウジング26内に置かれ得る。これを説明するために、用語「無収差」は、最適な設計波長においてSI、SIIおよびSIIIのザイデル係数によって与えられる形態の、軸上およびフィールド収差がない状態で像が生成される光学系の状態を指す。すなわち、スリット平面に置かれた任意の点光源は、無視できる程度の像収差で焦点面アレイ検出器24に像が形成される。
【0061】
図3に示す実施形態では、各ザイデル収差の全体が、式11a〜11cによって説明されるのと同じ趣旨によって与えられる。軸上SII補正は、図1および図3を参照してα=αであることを除き、式12aおよび式12bによって与えられるのと同じ趣旨において達成される。軸上SIIIは、特定の格子角度においてトロイダル格子51のサジタル半径を変えることによって補償され、これにより、式5a〜5cによって与えられるように、長手方向に分離された接線およびサジタル焦点を軸上像点において一緒にする。
【0062】
フィールドSIIIは、分光器50において、トロイダル格子51のサジタル半径を正しく選択して、式11cの(SIII)を強制的にゼロにすることによって、1つの設計格子角度において補正される。図3を参照して説明すると、集光鏡22の球面の寄与に由来するフィールド(SIII)は、ストップ距離を鏡の曲率半径に等しく設定することにより(s=R)、正確にゼロにされる。これにより、補正プレート20および集光鏡22からの非球面の寄与のみを残し、分光器50における総合的なフィールドSIII収差に対する寄与項が残る。
【0063】
式13a〜13cと趣旨が同様の一連の式は、非線形最小二乗式の解法(それぞれ式7、および式9aを参照し、式中、非球面係数aplおよびaは変数に設定される)を使用して最小にされる、分光器50に残る残存フィールド収差のために導き出され得る。式5および式12につき軸上SIIおよびSIII補正に対する式をそれぞれ使用して、さらに改善を図れる。おおよその設計パラメータを決定したら、ZEMAX光学系設計ソフトウェアなどの光線追跡プログラムを使用して、設計をさらに最適にする。
【0064】
図4を参照して説明すると、分光器の第4の実施形態を、全体的に参照符号70で示す。分光器70は、点光源11からの光のスペクトル分析に使用される。点光源は、スリット平面13に置かれた多くの点光源からなってもよく、かつスリット平面の軸に沿って垂直に空間的に分離された単一または複数の光ファイバー光源の形態としてもよい。スリット平面に置かれた物理的な光源の代わりに、顕微鏡または任意の結像機器からの像をスリット平面上に投影し得る。
【0065】
分光器はハウジング12を含み、ハウジングは、一対の入射スリット、開放アパーチュア、または光ファイバー束自体の端部の形態とし得る入光アセンブリ14を備える。
点光源11からの光は、発散入射ビーム71としてハウジングに入り、かつ非球面収差補正プレート72の方へ向かって伝搬する。補正プレート72は、回転対称である面と、表面サグ、すなわち式7(式中、下付き文字plは補正プレート72を指す)によって与えられる平面からのずれとを有する。
【0066】
非球面補正プレート72は、光をコリメート鏡16の方へ向けるように配置され、かつストップ距離splおよび非球面係数aplは補正プレート72に特有である点を除き、同じように式8a〜8cとして挙げた一連の式によって与えられる収差を反射ビーム73に導入する。発散ビームに置かれた補正プレートのストップ距離splは、コリメート鏡16によって見られるようなその虚像距離によって与えられる。これは、式15(式中、fおよびgは、それぞれ、鏡16の有効焦点距離、および入光アセンブリ14から補正プレート72までの距離である)として与えられる。
【0067】
図4を参照して説明すると、補正プレート72から反射された光は、軸外角αを有するトロイダル形状の凹面のコリメート鏡16の方へ向けられる。コリメート鏡16は、光をコリメートビーム28として反射させ、コリメートビームは、回折格子17の方へ向けられる。コリメートビーム28は、トロイダル鏡が、設計のトロイドの接線半径に等しい半径を有する球面であるという近似の範囲内で、それぞれ同様に、式6a、式6b、および式6cから与えられる、ある量の(SI)、(SII)、および(SIII)を有する。これらの収差は、光ビームが分光器70の残りの面から反射されるときの収差のように代数的に加算される。
【0068】
回折格子17は、等間隔の溝18を有する平面を有し、溝は、互いに平行であり、かつ分光器のサジタル軸または垂直軸である。図4を参照して説明すると、コリメートビーム28は、入射角(AOI)αで格子に入射し、かつ出射角(AOE)βを有する分散ビーム19として回折される。図4を参照して説明すると、分散ビーム19は、βによって与えられるAOIで非球面の凹面集光鏡22に入射する。集光鏡22上の表面サグは、同様に式9a(式中、yは、頂点から縁まで測定された半径方向距離であり、および鏡の曲率cは、式9bによってその曲率半径Rに関係する)によって与えられる。式9aの係数aは、集光鏡22が有する非球面のずれの量である。
【0069】
非球面集光鏡22からの反射後、収束ビーム23は、分散点光源11の無収差像を焦点面アレイセンサー24上に形成する。図4を参照して説明すると、焦点面アレイ検出器24は、角度δでハウジング26内に置かれ得る。これを説明するために、用語「無収差」は、最適な設計波長におけるSI、SIIおよびSIIIのザイデル係数によって与えられる形態の軸上収差およびフィールド収差がない状態で像が生成される光学系の状態を指す。すなわち、スリット平面に置かれた任意の点光源は、無視できる程度の像収差で焦点面アレイ検出器24に像が形成される。
【0070】
図4に示す実施形態では、各ザイデル収差の全体は、式11a〜11cで説明されるのと同じ趣旨で与えられる。軸上SIIの補正は、式12aおよび式12bによって与えられるものと同じ趣旨で達成される。軸上SIIIは、コリメート鏡のサジタル半径を変えることによって補償され、それにより、式5a〜5cによって与えられるように、長手方向に分離された接線およびサジタル焦点を軸上像点において一緒にする。
【0071】
フィールドSIIIは、分光器70において、トロイダル鏡16のサジタル半径を正しく選択して、式11cの(SIII)を強制的にゼロにすることにより、およびスリット平面に置かれた全ての点光源に対して接平面の主光線の角度を等しくすることによって、補正される。すなわち、図4を参照して説明すると、鏡16は、特定および一定の設計の主光線の角度αに関し(SIII)のバランスを取るようにそのサジタル半径が選択されているため、フィールド(SIII)は、定義上は、ゼロに等しい。図4を参照して説明すると、集光鏡22の球面の寄与からのフィールド(SIII)は、ストップ距離を鏡の曲率半径に等しく設定することにより(s=R)、正確にゼロにされる。これにより、補正プレート72および集光鏡22からの非球面の寄与のみを残し、分光器70の総合的なフィールドSIII収差に対する寄与項が残る。
【0072】
式13a〜13cと同様の趣旨の一連の式は、非線形最小二乗式の解法(それぞれ式7および式9aを参照し、式中、非球面係数aplおよびaを変数として設定する)を使用して最小にされる、分光器70に残る残存フィールド収差のために導き出され得る。式5および式12につき軸上SIIおよびSIII補正に対する式をそれぞれ使用して、さらに改善を図れる。おおよその設計パラメータを決定したら、ZEMAX光学系設計ソフトウェアなどの光線追跡プログラムを使用して、設計をさらに最適にする。
【0073】
好適な寸法の説明に役立つ一例として、図1の参照例では、コリメート鏡16は、軸外角α=7.0度で、それぞれ705mmおよび682mmに等しい接線半径およびサジタル半径を有し得る。図1の参照例では、非球面補正プレート20は、非球面係数apl=1.63E−9、および軸外角βpl=15.8度を有し得る。図1の参照例では、非球面集光鏡22は、646mmに等しい曲率半径、および軸外角β=7.5度で非球面係数a=1.00E−9を有し得る。鏡22のストップ距離sは、その曲率半径に等しくてもよく、それにより、フィールドSIIIを完全に補償できるが、許容できる性能を与えつつも本発明の範囲または趣旨から逸脱しない値の範囲が決定され得る。特定の分光器の精密な寸法は、市販の光線追跡ソフトウェア、例えばZEMAXを使用することを含め、当業界で公知の方法を使用して計算され得る。
【0074】
本発明の範囲または趣旨から逸脱せずに、本発明において、様々な修正および変形(perturbation)を行うことができる。それゆえ、本発明は、本発明の修正および変形を、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にあることを条件として、網羅するものである。
【0075】
例えば、図1図2図3、および図4の参照例では、内部f/#を低下させることによって、画質をさらに改善するために、バッフルを使用して光ビーム15、25、19、21、または23の直径を制限してもよい。バッフルはまた、迷光または不要な光が検出器24に到達する量を低減させるような方法で、分光器10、30、50、および70の内部のどこかほかの場所にあってもよい。
【0076】
また、分光器10、30、50、および70は、単一の点光源11を有すると説明されているが、分光器は、その代わりに、図1図2図3、および図4の図面の接平面に垂直に分散された1つ以上の光源を有してもよい。これを図5に示し、図5は、像点92および93として無収差に像が形成され、かつCCDまたはPDAとし得る焦点面アレイ検出器94によって記録される点光源90および91を示す。
【0077】
図2に示すような分光器30における追加的な非球面補正プレート31の使用は、収差の追加的な補償を可能にする本発明の変形例を表す。上述の実施形態のいずれかに第3または追加的な非球面補正プレートを追加することは、本発明の範囲および趣旨内にあるとみなされる。
【0078】
本明細書で説明した非球面補正プレートは、全て、式9aによって与えられる球面からの四次のずれに関係している。分光器10、30、50、および70における補正プレート20、32、71、または73は、式9aによって表される必要はなく、むしろ、式17として与えられる自由形状の多項式を使用して、本発明の三次ザイデル収差よりも高い収差を補償し得る。式18を参照すると、自由形状の多項式の係数Cijは多項式展開係数を示し、およびx、yは、それぞれ、接線およびサジタル面におけるデカルト座標である。式17の第1項は、標準球面の式を示し、および第2項は、自由形状のずれを表す。
【0079】
【数16】
分光器10、30、50、および70のコリメート素子および集光素子は、それぞれ、トロイダル面および非球面によって説明される必要はない;むしろ、それらの分析的な閉形式表現から形が逸脱することなく、式17によって同じように表現され得る。さらに、光学設計ソフトウェア、例えばZEMAXを使用する係数Cijのさらなる修正は、三次よりも高い収差を小さくするために行われ得る。これにより、自由形状の各鏡の製造費用負担で、結像性能に有益となる。
【0080】
本発明を詳細に、その特定例を参照して説明したが、当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、様々な変更および修正を行うことができることが明白である。
図1
図2
図3
図4
図5