特許第6209539号(P6209539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209539水分散性、自己架橋性プレポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209539
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】水分散性、自己架橋性プレポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/14 20060101AFI20170925BHJP
   C09D 201/06 20060101ALI20170925BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170925BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08F290/14
   C09D201/06
   C09D7/12
   C09D11/30
【請求項の数】19
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2014-554789(P2014-554789)
(86)(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公表番号】特表2015-506404(P2015-506404A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】US2013022670
(87)【国際公開番号】WO2013112530
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2016年1月21日
(31)【優先権主張番号】61/590,847
(32)【優先日】2012年1月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】パジェルスキー, アンソニー ディー.
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−514408(JP,A)
【文献】 特開平02−206613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290,299、C08F59、C09D、C08L91
C08L57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ヒドロキシル基、(2)少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分、および(3)少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分が付加されている少なくとも1つのトリグリセリド油から構成される自己架橋性プレポリマー組成物。
【請求項2】
前記トリグリセリド油に、エポキシ基が付加されている、請求項1に記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
【請求項3】
遊離カルボン酸基またはイオン化カルボン酸基をさらに含む、請求項1に記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分が式:
【化12】

(式中、Aは1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビル部分を表し、Rは、水素原子、または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
のものである、請求項1〜のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー組成物
【請求項5】
前記少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分が、
【化14A】
(式中、は0〜8の整数を表し、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、水素原子、または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
からなる群から選択される式のものである、またはそうした部分の混合物であり、前記自己架橋性プレポリマーが水分散性である、請求項1〜のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー組成物
【請求項6】
前記プレポリマーが、
(i)式:
【化7】

(式中、Rは、1〜約15個の炭素原子を含むアルキル基、合計1〜約10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基、1〜約10個の炭素原子を含むシアノアルキル基または1〜約18個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基である)
のアルキルアクリレート;
(ii)式:
【化8】

(式中、Rは、1〜約15個の炭素原子を含むアルキル基、合計1〜約10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基、1〜約10個の炭素原子を含むシアノアルキル基または1〜約18個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基であり、Rは、1〜約4個の炭素原子を含むアルキルである)
のアルキルアルクアクリレート;
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、およびイタコン酸モノメチルから選択される不飽和酸;
(iv)スチレン、アルキル置換スチレン 1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−ドデシル−スチレン、4−シクロヘキシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−メトキシ−スチレン、4−ジメチルアミノスチレン、3,5−ジフェノキシスチレン、4−p−トリルスチレン、4−フェニルスチレン、4,5−ジメチル−1−ビニルナフタレン、および3−n−プロピル−2−ビニル−ナフタレンから選択されるビニル置換芳香族化合物;
(v)塩化ビニル;
(vi)塩化ビニリデン;
(vii)ブタジエン;
(viii)式:
【化9】

(式中、R10は、一般に1〜約10または12個の炭素原子を有するアルキル基である)
のビニルエステル;
(ix)式:
【化10】

(式中、Rは望ましくは1〜約10個の炭素原子を有するアルキルである)
のビニルエーテル;
(x)式:
【化11】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子、または1〜約18個の炭素原子を含むアルキル基(直鎖状または分枝状)を表す)
のアクリルアミドモノマー;
(xi)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから選択される官能化されたアクリルアミド;ならびに
(xii) アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルから選択されるアクリロニトリル
から選択されるモノマーと共重合している、請求項1〜5のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
【請求項7】
水、ならびに(1)ヒドロキシル基、(2)エポキシ基、(3)少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分、および(4)少なくとも1つのカルボキシル基またはその塩を含む部分が付加されている分散されたトリグリセリド油から構成される水性自己架橋性プレポリマー分散物。
【請求項8】
前記トリグリセリド油が、前記トリグリセリド油に付加された少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分を追加的に有する、請求項に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分が式:
【化15】

(式中、nは1〜8の整数を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す)
のものである、請求項7または8に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのビニル基を含む部分が、
【化16A】
(式中、は0〜8の整数を表し、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、水素原子、または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
からなる群から選択される式のものである、またはそうした部分の混合物である、請求項8または9に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
【請求項11】
追加的なフリーラジカル重合可能な1種または複数のモノマーをさらに含む、請求項〜10のいずれかに記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物
【請求項12】
前記分散物はさらに、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素マグネシウムおよび亜硫酸水素亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つのビスルフィットまたはスルフィットから構成される、請求項7に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
【請求項13】
前記プレポリマーが、
(i)式:
【化7】

(式中、Rは、1〜約15個の炭素原子を含むアルキル基、合計1〜約10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基、1〜約10個の炭素原子を含むシアノアルキル基または1〜約18個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基である)
のアルキルアクリレート;
(ii)式:
【化8】

(式中、Rは、1〜約15個の炭素原子を含むアルキル基、合計1〜約10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基、1〜約10個の炭素原子を含むシアノアルキル基または1〜約18個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基であり、Rは、1〜約4個の炭素原子を含むアルキルである)
のアルキルアルクアクリレート;
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、およびイタコン酸モノメチルから選択される不飽和酸;
(iv)スチレン、アルキル置換スチレン 1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−ドデシル−スチレン、4−シクロヘキシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−メトキシ−スチレン、4−ジメチルアミノスチレン、3,5−ジフェノキシスチレン、4−p−トリルスチレン、4−フェニルスチレン、4,5−ジメチル−1−ビニルナフタレン、および3−n−プロピル−2−ビニル−ナフタレンから選択されるビニル置換芳香族化合物;
(v)塩化ビニル;
(vi)塩化ビニリデン;
(vii)ブタジエン;
(viii)式:
【化9】

(式中、R10は、一般に1〜約10または12個の炭素原子を有するアルキル基である)
のビニルエステル;
(ix)式:
【化10】

(式中、Rは望ましくは1〜約10個の炭素原子を有するアルキルである)
のビニルエーテル;
(x)式:
【化11】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子、または1〜約18個の炭素原子を含むアルキル基(直鎖状または分枝状)を表す)
のアクリルアミドモノマー;
(xi)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから選択される官能化されたアクリルアミド;ならびに
(xii) アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルから選択されるアクリロニトリル
から選択されるモノマーと共重合している、請求項7〜12のいずれかに記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
【請求項14】
コーティングされた基材であって、その表面上に請求項13のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー分散物を有する基材から構成される、コーティングされた基材。
【請求項15】
(1)エポキシ化トリグリセリド油を(2)ケトン官能化カルボン酸またはアルデヒド官能化カルボン酸と反応させてペンダントアルデヒド基またはケトン基を有するエポキシ化トリグリセリド油反応生成物を形成させるステップを含む、水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製する方法であって、前記方法は、前記エポキシ化トリグリセリド油をビニル官能化カルボン酸と反応させるステップ、または前記エポキシ化トリグリセリド油反応生成物を前記ビニル官能化カルボン酸と反応させるステップをさらに含み、そして前記方法は、a)ジもしくはポリカルボン酸の無水物を前記エポキシ化トリグリセリド反応生成物と反応させるステップ、またはb)前記エポキシ化トリグリセリド油反応生成物に400ダルトン未満の分子量の分散剤を添加するステップによる分散剤をさらに含む方法。
【請求項16】
前記プレポリマーが、
(i)式:
【化7】

(式中、Rは、1〜約15個の炭素原子を含むアルキル基、合計1〜約10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基、1〜約10個の炭素原子を含むシアノアルキル基または1〜約18個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基である)
のアルキルアクリレート;
(ii)式:
【化8】

(式中、Rは、1〜約15個の炭素原子を含むアルキル基、合計1〜約10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基、1〜約10個の炭素原子を含むシアノアルキル基または1〜約18個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基であり、Rは、1〜約4個の炭素原子を含むアルキルである)
のアルキルアルクアクリレート;
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、およびイタコン酸モノメチルから選択される不飽和酸;
(iv)スチレン、アルキル置換スチレン 1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−ドデシル−スチレン、4−シクロヘキシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−メトキシ−スチレン、4−ジメチルアミノスチレン、3,5−ジフェノキシスチレン、4−p−トリルスチレン、4−フェニルスチレン、4,5−ジメチル−1−ビニルナフタレン、および3−n−プロピル−2−ビニル−ナフタレンから選択されるビニル置換芳香族化合物;
(v)塩化ビニル;
(vi)塩化ビニリデン;
(vii)ブタジエン;
(viii)式:
【化9】

(式中、R10は、一般に1〜約10または12個の炭素原子を有するアルキル基である)
のビニルエステル;
(ix)式:
【化10】

(式中、Rは望ましくは1〜約10個の炭素原子を有するアルキルである)
のビニルエーテル;
(x)式:
【化11】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子、または1〜約18個の炭素原子を含むアルキル基(直鎖状または分枝状)を表す)
のアクリルアミドモノマー;
(xi)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから選択される官能化されたアクリルアミド;ならびに
(xii) アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルから選択されるアクリロニトリル
から選択されるモノマーとさらに共重合している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の方法によって作製される水分散性、自己架橋プレポリマー組成物。
【請求項18】
請求項1〜6のいずれかに記載のプレポリマー組成物を別の水媒介性ポリマーに分散させることによって形成される水性分散物。
【請求項19】
ポリウレタンプレポリマーを、請求項13のいずれかに記載の水性分散物に分散させることによって形成される水性分散物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
他のモノマーとフリーラジカル共重合可能なプレポリマーを開示する。これらは自己架橋性のポリマーを形成することができる。自己架橋は、プレポリマーに連結されているカルボニル(アルデヒドまたはケトン型)の炭素原子と化学的に反応し結合できるヒドラジン含有部分が付加される反応シーケンスを介して達成することができる。プレポリマーは、プレポリマー上のペンダントヒドロキシル基とのエステル結合を介してジまたはポリカルボン酸分子の無水物と化学的に結合することによって、水分散性にすることができる。
【背景技術】
【0002】
水媒介性(waterborne)分散物は、審美的美しさ、耐溶媒性および耐薬品性、耐損傷性(mar resistance)および耐擦り傷性ならびに耐摩耗性を備えた基材を提供するために、コーティング産業において利用される。そうした水媒介性分散物は一般に、木材、石材、プラスチック、テキスタイルおよび金属製品をコーティングするために使用され、また、インクジェット用インク組成物においても使用することができる。最近では、水媒介性分散物は、それらを、低レベルの揮発性有機化合物(VOC)で配合することができ、好ましいことにそれらが揮発性有機化合物を含まないので、環境の観点から、油性のコーティング組成物の代替品として好まれるようになってきている。
【0003】
性能コーティングにおける最近の傾向としては、揮発性有機化合物の放出量が低いまたは低減されている合体被膜(film)を形成できる再生可能資源をもとにした原材料を高い含量で含む、環境に優しいポリマーの種類が対象とされている。したがって、この種のコーティングは、環境への影響が低減される。しかし、今日、被膜形成の際の揮発性有機化合物の放出量の低減をもたらす水媒介性ポリマーは一般に石油由来の原材料をもとにしているか、または、木製床張りなどの特定の用途において必要な性能が不足している。これは、より慣用的な二成分系と比較して、低い毒性問題のためよりユーザーフレンドリーであり、廃棄物の発生が少ないためより環境に優しい一成分の自己架橋組成物の場合に特に当てはまる。
【0004】
米国特許第4,066,591号および米国特許第4,147,679号は、自動酸化的架橋を施すことができる、不飽和官能基を含む水媒介性ポリウレタン分散物の調製を開示している。
【0005】
米国特許第4,598,121号は、水性ポリウレタン分散物を調製するための方法であって、(a)脂肪族または脂環式ポリイソシアネートをポリオールおよびアニオン性化合物と反応させることによって遊離NCO基を有するプレポリマーを調製するステップと;(b)前記プレポリマーを水に分散させるステップと;(c)前記水分散プレポリマーを、鎖延長剤としてのジアミノヒドラジドと反応させるステップと;(d)前記分散物におけるステップ(e)のプレポリマーをホルムアルデヒドと反応させて架橋を実行するステップとを含む方法を開示している。
【0006】
米国特許第4,983,662号は、少なくとも1つのポリウレタンからなる水性分散物を含み、そこにおいてポリウレタンポリマーが、被膜形成の間および/またはその後のアゾメチン形成を介して関与する自己架橋反応をもたらすように、ヒドラジン(またはヒドラゾン)官能基およびカルボニル官能基がその中に配置されている水性自己架橋性コーティング組成物を開示している。
【0007】
米国特許第5,141,983号は、アクリルポリマーおよびポリウレタンポリマー上のケトンまたはカルボニル基がヒドラジド官能基を含むケトン−ヒドラジド架橋技術を開示している。この組成物は、水性ポリウレタン分散物の存在下でアクリルモノマーを重合することによって得られる。
【0008】
米国特許第5,571,861号および米国特許第5,623,016号は、ポリヒドラジドおよびカルボニル含有ポリウレタン−ビニルハイブリッドポリマーを含み、また、望むなら、ベースコーティング、水性コーティング、接着剤および印刷用インクにおいて有用である慣用的な添加剤を含む水性の自己架橋ポリマー分散バインダーを開示している。
【0009】
米国特許第6,239,209号は、自動酸化的に架橋可能な水媒介性ウレタン−アクリル組成物を開示している。一実施形態では、この組成物は、そのケトン/カルボニルがアクリルを介して導入され、ヒドラジド官能基が不飽和の酸化的硬化性官能基と一緒にポリウレタン上に含まれるケトンヒドラジド型自己架橋も含む。
【0010】
米国特許第6,576,702号は、(1)少なくとも1つのポリイソシアネート;(2)ポリオールまたはポリアミドなどの少なくとも1つの活性な水素含有化合物;および(3)また、好ましくは、イソシアネート末端プレポリマーを形成させるための水分散増進基を有する少なくとも1つの水分散性増進化合物を反応させることによって調製される水媒介性ポリウレタン分散物を開示している。続いて、プレポリマーを、(1)任意選択で、少なくとも1つの中和剤と反応させることによって中和し、(2)水に分散させ、次いで、(3)水、あるいは平均約2個以上の第一級および/または第二級アミン基またはその組合せを有する無機または有機ポリアミンの少なくとも1つとの反応によって鎖を延長させる。少なくとも1つの可塑剤を、プレポリマー生成の間、またはプレポリマーを水に分散させる前の任意の時点で、反応混合物中に導入する。この可塑剤は、他の有機希釈剤または溶媒を実質的にまたは完全に置き換える。反応性可塑剤を含む様々な種類の可塑剤を使用することができる。
【0011】
米国特許出願公開番号第2010/0330375号は、エポキシ化天然油から誘導されたケトン官能性分子からの1つまたは複数のポリヒドロキシ化合物を含むウレタンプレポリマーから作製される水性ポリウレタン分散物を開示している。プレポリマー分散物へのヒドラジン官能性部分の付加は、乾燥の際に得られるポリウレタン中でのアゾメチン結合の形成をもたらす架橋機構をさらに提供することができる。そのケトン官能性分子がレブリン酸およびエポキシ化植物油から誘導される場合、得られるウレタン分散物は、ポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタン分散物に1種もしくは複数のビニルモノマーを加えて重合することによって、ハイブリッドポリウレタン−ビニル分散物に転換させることもできる。米国特許出願公開番号第2010/0330375号は、より具体的には、エポキシ化天然油と有機酸の反応によって得られる少なくとも1つのポリオールを含む水性ポリウレタン分散物であって、そのポリオールをポリイソシアネートと反応させてポリウレタンの一部を生成させる分散物を明らかにしている。米国特許出願公開番号第2010/0330375号によって明らかにされている新規な水性ポリウレタン組成物およびポリウレタン−アクリル組成物は、周囲温度または低温で急速に自己架橋するきれいな高品質分散物(少ない沈殿物)を提供することができる。さらに、これらは、貯蔵安定性があり、良好な色安定性を有しており、低い揮発性有機成分含量で配合することができ、相当な量の再生可能な原材料を構成ブロックとして使用することができる。
米国特許出願公開番号第2010/0330375号によって開示されている水媒介性ポリウレタンおよびウレタン−アクリル分散物の主要構成ブロックは、レブリン酸をエポキシ化天然油またはエポキシ官能性天然油、例えばエポキシ化大豆油またはエポキシ化亜麻仁油と反応させることによって得られるポリ−ケトンポリオールである。これらの油は、再生可能な農産物であるという利点をもたらしてくれる。米国特許出願公開番号第2010/0330375号は、エポキシ官能基を含む天然由来の油であるベロニカ油(veronica oil)を代替品として使用できることをさらに示している。レブリン酸が、いわゆる「バイオファインプロセス(Biofine Process)」でバイオマスから得ることができる重要な再生可能原材料であることは十分裏付けられている。エポキシ化大豆油とエポキシ化亜麻仁油はどちらも市販されており、ポリ塩化ビニル用の可塑剤として広範に使用されている。さらに、これらは、ポリ塩化ビニルを熱処理する際に放出される塩酸のための捕捉剤として働くことができる。いずれにしろ、米国特許出願公開番号第2010/0330375号によって記載されているポリウレタン−アクリレート組成物は優れた特性の組合せを提供し、構成ブロックとして相当な量の再生可能な原材料を用いて作製される。しかし、これらのポリウレタン−アクリレート組成物は比較的高価であり、同様の性能特性を提供し、相当な程度に再生可能な資源から誘導されるより低コストの代替品が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,066,591号明細書
【特許文献2】米国特許第4,147,679号明細書
【特許文献3】米国特許第4,598,121号明細書
【特許文献4】米国特許第4,983,662号明細書
【特許文献5】米国特許第5,141,983号明細書
【特許文献6】米国特許第5,571,861号明細書
【特許文献7】米国特許第5,623,016号明細書
【特許文献8】米国特許第6,239,209号明細書
【特許文献9】米国特許第6,576,702号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2010/0330375号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
(1)ヒドロキシル基、(2)少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分、および(3)少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分が付加されている少なくとも1つのトリグリセリド油から構成される自己架橋性プレポリマー組成物。
(項目2)
前記トリグリセリド油に、エポキシ基が付加されている、項目1に記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
(項目3)
遊離カルボン酸基またはイオン化カルボン酸基をさらに含む、項目1に記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
(項目4)
前記少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分が、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選択されるメンバーから誘導される、項目1〜3のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
(項目5)
前記少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分が式:
【化12】

(式中、Aは1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビル部分を表し、Rは、水素原子、または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
のものである、項目1〜4のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
(項目6)
前記少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分が式:
【化13】

(式中、nは1〜8の整数を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す)
のものである、項目1〜5のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
(項目7)
nが2を表す、項目6に記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
(項目8)
Rがメチル基を表す、項目6に記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
(項目9)
前記少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分が、
【化14A】
(式中、mは0〜8の整数を表し、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、水素原子、または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
からなる群から選択される式のものである、またはそうした部分の混合物であり、前記自己架橋性プレポリマーが水分散性である、項目1〜8のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
(項目10)
mが0を表す、項目9に記載の自己架橋性プレポリマー組成物。
(項目11)
水、ならびに(1)ヒドロキシル基、(2)エポキシ基、(3)少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分、および(4)少なくとも1つのカルボキシル基またはその塩を含む部分が付加されている分散されたトリグリセリド油から構成される水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目12)
前記分散物がイオン化塩基からさらに構成される、項目11に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目13)
前記イオン化塩基が、1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を有するトリアルキルアミンからなる群から選択される、項目12に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目14)
前記トリグリセリド油が、前記トリグリセリド油に付加された少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分を追加的に有する、項目11〜13のいずれかに記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目15)
前記少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分が式:
【化15】

(式中、nは1〜8の整数を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す)
のものである、項目11〜14のいずれかに記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目16)
nが2を表す、項目15に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目17)
Rがメチル基を表す、項目15または16に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目18)
前記少なくとも1つのビニル基を含む部分が、
【化16A】
(式中、mは0〜8の整数を表し、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、水素原子、または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
からなる群から選択される式のものである、またはそうした部分の混合物である、項目14〜17のいずれかに記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目19)
mが0を表す、項目18に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目20)
追加的なフリーラジカル重合可能な1種または複数のモノマーをさらに含む、項目1〜10のいずれかに記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目21)
追加的なフリーラジカル重合可能な1種または複数のモノマーをさらに含む、項目11〜19のいずれかに記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目22)
項目11〜19および21のいずれかに記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物ならびに少なくとも1つの顔料または着色剤から構成される、コーティング組成物。
(項目23)
項目11〜19および21のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー分散物ならびに少なくとも1つの湿潤剤から構成される、コーティング組成物。
(項目24)
項目11〜19および21のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー分散物ならびに少なくとも1つの消泡剤から構成される、コーティング組成物。
(項目25)
少なくとも1つの充填剤からさらに構成される、項目19に記載のコーティング組成物。
(項目26)
コーティングされた基材であって、その表面上に項目11〜19および21のいずれかに記載の自己架橋性プレポリマー分散物を有する基材から構成される、コーティングされた基材。
(項目27)
(1)エポキシ化トリグリセリド油を(2)ケトン官能化カルボン酸またはアルデヒド官能化カルボン酸と反応させてペンダントアルデヒド基またはケトン基を有するエポキシ化トリグリセリド油反応生成物を形成させるステップを含む、水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製する方法であって、a)ジもしくはポリカルボン酸の無水物を前記エポキシ化トリグリセリド反応生成物と反応させるステップ、またはb)前記エポキシ化トリグリセリド油反応生成物に400ダルトン未満の分子量の分散剤を添加するステップによる分散剤をさらに含む方法。
(項目28)
前記分散剤が、ジまたはポリカルボン酸の無水物を前記トリグリセリド油反応生成物と反応させることによって誘導され、前記無水物の開環によって誘導される少なくとも1つのカルボン酸基をイオン化するステップをさらに含む、項目27に記載の水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製するための方法。
(項目29)
前記エポキシ化トリグリセリド反応生成物をビニル官能化カルボン酸と反応させるステップをさらに含む、項目27または28に記載の水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製するための方法。
(項目30)
追加的な有機カルボン酸を前記エポキシ化トリグリセリド反応生成物と反応させるステップをさらに含む、項目27または29に記載の水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製するための方法。
(項目31)
前記追加的な有機カルボン酸が脂肪酸である、項目30に記載の水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製するための方法。
(項目32)
希釈剤が、前記プレポリマーの処理を容易にするために添加される、項目27に記載の水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製するための方法。
(項目33)
前記希釈剤がエチレン不飽和性二重結合を含む、項目32に記載の水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製するための方法。
(項目34)
前記無水物が無水マレイン酸またはイタコン酸無水物を含む、項目28に記載の水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製するための方法。
(項目35)
イオン化塩基を、前記プレポリマー組成物、または前記プレポリマー組成物がその中に分散されている水性媒体に直接添加するステップと、続いて、前記プレポリマーを水性媒体中でビニルモノマー希釈剤と重合させてコポリマーを生成するステップとを含む、項目34に記載の水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製するための方法。
(項目36)
前記イオン化塩基がトリエチルアミンである、項目35に記載の水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製するための方法。
(項目37)
a)1種または複数のビニルモノマーを水媒介性分散物に添加するステップと、b)前記自己架橋プレポリマーと前記1種または複数のビニルモノマーのフリーラジカル共重合を開始させるステップとをさらに含む、項目27〜31のいずれかに記載の水分散性、自己架橋プレポリマー組成物を作製するための方法。
(項目38)
項目27〜37のいずれかに記載の方法によって作製される水分散性、自己架橋プレポリマー組成物。
(項目39)
ヒドラジン含有部分をさらに含む、項目11〜19もしくは21のいずれかに記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物または項目38に記載の水分散性、自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目40)
亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素マグネシウムおよび亜硫酸水素亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーのスルフィットまたはビスルフィットからさらに構成される、項目11に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目41)
前記スルフィットまたはビスルフィットが、前記分散物の固形分含量に対して0.1重量%〜5.0重量%の範囲内にあるレベルで存在する、項目40に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目42)
前記分散物が表面活性剤からさらに構成される、項目11に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目43)
前記表面活性剤がスルフェートである、項目42に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目44)
前記表面活性剤がホスフェートである、項目42に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
(項目45)
上記項目1〜10に記載のプレポリマーを別の水媒介性ポリマーに分散させることによって形成される水性分散物。
(項目46)
ポリウレタンプレポリマーを、上記項目(11〜44)のいずれかに記載の組成物からさらに構成される水性分散物に分散させることによって形成される水性分散物。
(項目47)
アクリルエマルジョンまたはポリウレタン分散物からさらに構成される、項目11または項目40に記載の水性自己架橋性プレポリマー分散物。
本発明は、再生可能な資源からの原材料を高い含量で含む環境に優しいポリマーコーティングへの経済的な経路を提供する。これらのポリマーコーティングは、慣用的なコーティングシステムと競争できる性能特性も提供する。本発明がもとづくこの独特なポリマーは、大豆油、亜麻仁油または他のいくつかの天然油などのトリグリセリド油と、アクリレートまたはメタクリレートなどのビニル化合物およびスチレンなどのビニル芳香族モノマーとのコポリマーである。この独特なポリマーは、それらの分子量を構築するために生物再生不可能なジイソシアネートまたはポリイソシアネートを必要とすることなく、その代わり、フリーラジカル反応させて、ウレタンおよびウレタンハイブリッドと性能で匹敵するポリマーにすることができる。
【0014】
形成されたコロイドの安定化は、主に改質天然油によりもたらされ、これを、ビニルコロイド安定化基または外部界面活性剤で補うこともできる。コポリマーは、目的とする最終用途に応じて、天然油含量が多くても、またビニル含量が多くてもよい。さらに、自己架橋官能基を含む天然油および/またはビニル成分によって、様々な官能基を、コポリマー分散物中に取り込むことができる。
【0015】
本発明は、より特定すると、(1)ヒドロキシル基、(2)少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分、(3)少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分、および(4)任意選択のエポキシ基が付加されているトリグリセリド油から構成される水分散性、自己架橋性プレポリマー組成物を開示する。本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分は無水マレイン酸から誘導される。
【0016】
対象発明は、水、ならびに(1)ヒドロキシル基、(2)少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分、(3)少なくとも1つのカルボキシル基またはその塩を含む部分、および(4)任意選択のエポキシ基が付加されているトリグリセリド油から構成される水性自己架橋性コポリマー分散物も示す。そうした水性自己架橋性コポリマー分散物はイオン化塩基からさらに構成され得る。そうした水性自己架橋性コポリマー分散物では、トリグリセリド油は、少なくとも1つのビニル基が付加されている部分をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、出発原料としてエポキシ化大豆油などのエポキシ化トリグリセリド油を使用するプレポリマー(水分散性のための官能化はまだなされていない)またはマクロモノマーの合成を例示する図である。この反応は、エポキシ化トリグリセリド油を、(1)ケトン官能化カルボン酸またはアルデヒド官能化カルボン酸および(2)任意選択のビニル官能化カルボン酸と反応させることによって実施される。
【0018】
図2図2は、出発原料として図1に記載したような本発明の非分散性プレポリマーを使用する水分散性自己架橋性プレポリマーの合成を例示する図である。この反応においては、非分散性プレポリマーを無水物と反応させて水分散性プレポリマーを調製する。この反応は、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンを、触媒としてまた中和剤として用いて実施することができる。処理性の容易さならびにビニルおよび/または置換ビニル基などの不飽和が提供されるという理由で、使用するのに好ましい無水物は、無水マレイン酸およびイタコン酸無水物である。この反応は、穏やかな温度、例えば90℃未満の温度で実施することができる。この反応を、アセトン、メチルエチルケトンまたはビニルモノマーなどの希釈剤の存在下で実行して、操作性が容易な粘度を維持することがしばしば望ましい。いずれはプレポリマーと共重合し、したがって2つの重要な役割を果たすという事実のため、ビニルモノマーを希釈剤として使用することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の水分散性、自己架橋性プレポリマー組成物は、(1)ヒドロキシル基、(2)少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分、(3)少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分および(4)任意選択のエポキシ基が付加されているトリグリセリド油から構成される。ビニル基という用語は一般に、そのα−β不飽和の2つの炭素に3個の水素原子が一緒に付加されているα−β不飽和を有する基を定義するために使用される。本出願者は、置換ビニル基を、無水マレイン酸またはイタコン酸無水物などのジもしくはポリカルボン酸および/またはC1〜4−アルキル置換アクリル酸の不飽和脂肪族無水物から誘導される基と定義する。一実施形態では、この置換ビニル基は、ジまたはポリカルボン酸の不飽和脂肪族無水物を、トリグリセリド油の炭素、またはトリグリセリド油の1個の酸素原子および2個の炭素原子を含むエポキシ官能基に直接連結されているヒドロキシル基と直接反応させることによって誘導される。この実施形態では、トリグリセリド油とビニル基の間にポリエーテル結合は存在しない。この関連で、本出願者は置換ビニルを、3つの水素のうちの1つもしくは複数が、C1〜4−アルキル基(メタクリル酸から誘導されるものなど)および/または無水マレイン酸もしくはイタコン酸無水物から誘導されるものなどのカルボン酸またはC1〜4−アルキルカルボン酸基で置き換えられているものなどのビニルモノマーとフリーラジカル共重合可能であるものと定義する。このプレポリマー組成物は、エポキシ化トリグリセリド油を、ケトンまたはアルデヒド官能化カルボン酸およびビニル基含有カルボン酸と反応させることによって作製される。この反応は図1に例示されており、通常これは、触媒の存在下、典型的には約100℃〜約150℃の範囲内の高温で実施される。大抵の場合、この反応を、120℃〜約135℃の範囲内の温度で実施することが好ましい。この反応の実施において、亜鉛、ジルコニウム、クロムおよび鉄触媒を有利に使用することができる。使用できる触媒のいくつかの追加的な例には、トリアルキルアミン、ホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン、およびイミダゾール(imidiazole)、例えばN−メチルイミダゾールなどが含まれる。
【0020】
出発原料として使用できるトリグリセリド油は、不飽和植物油、獣脂、または種々の脂肪酸とグリセロールの縮合反応によって誘導されると一般に考えられる合成トリグリセリドである。トリグリセリドはしばしば油として記述されるが、これらは室温で固体であってよい。存在する不飽和の量が多ければ多いほど、同様の反応条件下で可能なエポキシ化度はより高くなる。これらの不飽和油の強酸化剤との反応によって、脂肪酸中の炭素・炭素二重結合をエポキシドに転換させることができる。過酢酸はこの目的で使用できる強酸化剤である。過酢酸は、酢酸と過酸化水素の反応によって得ることができる。酢酸は、周知の細菌発酵プロセスにより得ることができる。
【0021】
エポキシ化植物油は、Dow ChemicalおよびChemturaなどの会社を含む多くの供給業者から市販されている。オキシラン酸素含量は一般に、ケトンまたはアルデヒド官能化カルボン酸との反応前で約2〜14重量%の範囲内であり、典型的には5〜12重量%の範囲内である。一般に、6〜10重量%の範囲内にあるオキシラン酸素含量を有するエポキシ化トリグリセリド油を使用することが好ましい。オキシラン酸素の値は、臭化テトラエチルアンモニウムの存在下で過塩素酸を使用する非水系電位差滴定法によって測定される。エポキシ化トリグリセリド油は不飽和主鎖をもつことができ、また、それは飽和されていてもよい。エポキシ化大豆および亜麻仁油はどちらも可塑剤として使用され、またポリ塩化ビニルのための酸捕捉剤として使用されることもあることに留意すべきである。
【0022】
使用されるケトンまたはアルデヒド官能化カルボン酸は通常式:
【化1】
(式中、Aは1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビル部分を表し、Rは水素原子、または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
のものである。ケトンまたはアルデヒド官能化カルボン酸は一般に式:
【化2】
(式中、nは1〜8の整数を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す)
のものである。大抵の場合、nは2〜4の整数を表し、nは典型的には2を表す。
【0023】
好ましいケトンまたはアルデヒド含有カルボン酸は、レブリン酸(γ−ケト吉草酸;アセチルプロピオン酸、4−オキソペンタン酸)またはピルビン酸(α−ケトプロピオン酸;アセチルギ酸)である。フリーラジカル重合したポリマー中のカルボニル官能基(そうしたものが存在する場合)の割合は、好ましくはポリマー100g当たり3〜200ミリ当量(より好ましくはポリマー100g当たり6〜100ミリ当量)である。主に再生可能な原材料から得られるものと一緒に、合成供給源からケトン官能性ジオールまたはポリオールを使用することが可能である。
【0024】
本発明のプレポリマーを作製するのにビニル基含有カルボン酸を使用する場合、それらは、通常構造式:
【化3】
(式中、R、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、水素原子、または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
のものである。好ましいビニル基含有カルボン酸には、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸などが含まれる。
【0025】
一実施形態では、水分散性、自己架橋性プレポリマー組成物の合成は、エポキシ化植物油をケトンまたはアルデヒド官能化カルボン酸と反応させ、次いで、任意選択で触媒の存在下で、無水マレイン酸などの無水物と反応させて、水性自己架橋性コポリマー分散物を生成するステップを含む。粘度を商業的に受け入れられる範囲内に保持するために、希釈剤、例えばアセトン、メチルエチルケトンまたは好ましくはビニルモノマーを通常加える。この反応を図2に示すが、これは通常触媒の存在下、高温で実施される。触媒は、第三級アミン(トリアルキルアミンなど)、ホスホニウム化合物、無機金属塩、金属アルコキシドまたは金属キレートであってよい。使用できる触媒のいくつかの代表例には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、ピリジン、イソキノリン、キノリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−エチルモルホリン、ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、Al、B、Be、Fe(III)、Sb(V)、Sn、Ti、ZrおよびZnのアルコキシド、キレートまたはハライドなどが含まれる。それらが触媒とイオン化塩基の両方として働くので、触媒としてトリエチルアミンなどのトリアルキルアミンを使用するのが一般に好ましい。
【0026】
水分散性プレポリマーの調製において使用できるジまたはポリカルボン酸の無水物は、脂肪族であっても芳香族であってもよい。そうした無水物のいくつかの代表例には、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、無水コハク酸、無水フタル酸、ピロメリット酸無水物、メリト酸無水物、トリメリット酸無水物などが含まれる。この使用のために好ましい無水物は、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、無水コハク酸、トリメリット酸無水物および無水フタル酸である。最も好ましい無水物は無水マレイン酸およびイタコン酸無水物である。図2に示すように、開環反応後、これらの無水物は、イオン化された後、水分散性プレポリマーのための分散剤として機能することができる。本発明の代替の実施形態では、分散剤として外部界面活性剤が使用される。
【0027】
水分散性、自己架橋性プレポリマー組成物は一般に約1,500〜約19,000の範囲内の数平均分子量を有する。前記プレポリマーは一般に、約2,000〜9,000の範囲内の数平均分子量を有し、より典型的には約2,500〜約5,000の範囲内の数平均分子量を有する。多くのエポキシ化油をプレポリマー中に結合させる(例えば、無水マレイン酸のカルボン酸基からのエステル結合を介して)ことによって、より大きい分子量をもたらすことができる。
【0028】
少なくとも1つのアルデヒド基または少なくとも1つのケトン基を含む部分は式:
【化4A】
(式中、Aは1〜20個の炭素原子を含むヒドロカルビル部分を表し、Rは水素原子、または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
のものである。多くの場合、これらの部分は式:
【化5】

(式中、nは1〜8の整数を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す)
のものである。大抵の場合、nは2〜4の整数を表し、典型的にはnは2を表す。
【0029】
少なくとも1つのビニルおよび/または置換ビニル基を含む部分は、
【化6A】
(式中、は0〜8の整数を表し、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、水素原子、または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基を表す)
からなる群から選択される式のものである、またはそうした部分の混合物である。大抵の場合、は0〜4の整数を表し、典型的にはは0である。通常、平均して1〜約4個の官能基がトリグリセリド油の各分子に付加しており、より典型的には、2または3個の官能基がトリグリセリド油の各分子に付加している。本発明の1つの実施形態では、プレポリマーを少なくとも1つの中和剤との反応によって中和し、水性媒体中に分散させる。
【0030】
種々の追加的なモノマーを、プレポリマーと任意選択で共重合することができる。例えば、アクリルポリマーまたはコポリマーを、アクリレート、アルキル(アルク)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、ブタジエンおよび不飽和酸含有モノマーなどの様々な不飽和モノマーから誘導することができる。種々のアルキルアクリレート(またはアクリル酸のエステル)は式:
【化7】
(式中、Rは、1〜約15個の炭素原子を含むアルキル基、合計1〜約10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基、1〜約10個の炭素原子を含むシアノアルキル基または1〜約18個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基である)
のものである。アルキル構造は、第一級、第二級または第三級の炭素構造を含むことができ、通常1〜約10個の炭素原子を含み、2〜8個の炭素原子が好ましい。そうしたアクリル酸エステルの例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−デシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、n−オクタデシルアクリレートなどが含まれる。好ましい例には、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが含まれる。
【0031】
種々のアルキルアルクアクリレート(またはアルクアクリル酸のエステル)は式:
【化8】
(式中、Rは、1〜約15個の炭素原子を含むアルキル基、合計1〜約10個の炭素原子を含むアルコキシアルキル基、1〜約10個の炭素原子を含むシアノアルキル基または1〜約18個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基(上述したような)であり、Rは、1〜約4個の炭素原子、望ましくは1または2個の炭素原子を含むアルキルであり、メチルが特に好ましい)
のものである。種々のアルキル(アルク)アクリレートの例には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレートなどが含まれる。誘導体には、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレートなどが含まれる。上記モノマーの2つ以上の混合物も使用することができる。
【0032】
不飽和酸含有モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチルアクリレートなどが含まれる。アクリル酸が好ましい。上記ジカルボン酸の半エステルも、モノマーとして使用することができ、ここで、上記エステル部分は望ましくは1〜約10個の炭素原子を有するアルキルであり、具体的な例には、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル(mono methyl fumerate)、イタコン酸モノメチルなどが含まれる。
【0033】
スチレンモノマー(アクリレートラテックス中の共モノマーとして)、塩化ビニル型モノマー、アクリロニトリル型モノマー、種々のビニルエステルモノマー、種々のアクリルアミドモノマー、種々のアルキノールアクリルアミドなどを含む、他の共重合可能な(エチレン不飽和性)モノマーを、コポリマーを作製するために使用することができる。スチレンモノマー(スチレン−ブタジエンポリマー中の主モノマーまたはアクリレートポリマー中の共モノマーの両方として)を考えると、これらはしばしば、ビニル置換芳香族化合物(スチレンモノマー)と称され、それらには、スチレン、アルキル置換スチレン 1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ならびにその中の合計炭素原子数が、置換基を合わせて一般に8〜約12であるそのアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールおよびアラルキル誘導体が含まれる。そうした化合物の例には、3−メチルスチレンビニルトルエン;α−メチルスチレン;4−n−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−ドデシル−スチレン、4−シクロヘキシルスチレン;2−エチル−4−ベンジルスチレン;4−メトキシ−スチレン;4−ジメチルアミノスチレン;3,5−ジフェノキシスチレン;4−p−トリルスチレン;4−フェニルスチレン;4,5−ジメチル−1−ビニルナフタレン;3−n−プロピル−2−ビニル−ナフタレンなどが含まれる。スチレンが一般に好ましい。
【0034】
塩化ビニル型モノマーには、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどが含まれる。
【0035】
ビニルエステルは一般に式:
【化9】
(式中、R10は、一般に1〜約10または12個の炭素原子を有するアルキル基であり、約1〜約6個の炭素原子が好ましい)
で表すことができる。したがって、適切なビニルエステルには、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニルなどが含まれる。より大きいR10基を有するビニルエステルには、ベルサチン酸ビニル(vinyl versatate)モノマー、例えばVeo VA−P、Veo Va−10およびVeo Va−11が含まれる。
【0036】
その種々のビニルエーテルは式:
【化10】
(式中、Rは望ましくは1〜約10個の炭素原子を有するアルキルである)
で表すことができる。具体的な例には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが含まれ、メチルビニルエーテルが好ましい。
【0037】
使用できるアクリロニトリル型モノマーには、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはエタクリロニトリルなどが含まれる。重合してコポリマーを形成することができるアクリルアミドモノマーは一般に以下の式:
【化11】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子、または1〜約18個の炭素原子を含むアルキル基(直鎖状または分枝状)を表す)
を有する。具体的な例には、アクリルアミド、エチルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、tert−オクチルアクリルアミド、tert−ブチルメタクリルアミドなどが含まれる。他の任意選択のモノマーとは異なって、1つまたは複数のアクリルアミドは、多量に、例えば最大でコポリマーの約20重量%、望ましくは約0.5〜約10重量%で使用することができる。
【0038】
官能化されたアクリルアミドも使用することができる。そうしたアクリルアミドの例には、AMPS、すなわち、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、DMAPMA、すなわち、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(dimethylaminopropyl methacryamide)などが含まれる。
【0039】
カルボニル含有不飽和コモノマーを、上記モノマーと共重合してアクリルまたはビニルポリマーを作製することができる。挙げることができるカルボニル含有モノマーの例には、アクロレイン、メタクロレイン、ジアセトン−アクリルアミド、クロトンアルデヒド、4−ビニルベンズアルデヒド、4〜7個の炭素原子のビニルアルキルケトン、例えばビニルメチルケトンならびに式HC=C(R)−C(O)−O−C(R11)H−C(R12)(R)−C(O)H(Rは水素原子またはメチル基を表し、R11はH、または1〜3個の炭素原子のアルキルであり、R12は1〜3個の炭素原子のアルキルであり、Rは1〜4個の炭素原子のアルキルである)のアクリルオキシ−およびメタクリルオキシ−アルキルプロパノールが含まれる。他の例には、アクリルアミドピバルアルデヒド、メタクリルアミドピバルアルデヒド、3−アクリルアミドメチル−アニスアルデヒド、ジアセトンアクリレート、アセトニルアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテートおよびブタンジオールアクリレートアセチルアセテートが含まれる。これらのモノマーの使用についてのより詳細は米国特許第4,983,662号に提供されている。米国特許第4,983,662号の教示を、そうしたモノマーの使用をより詳細に説明するために参照により本明細書に組み込む。
【0040】
一実施形態では、上記ビニルモノマーは、プレポリマーまたはビニルポリマーの生成において、活性水素含有ビニルモノマーを使用することによって、本発明の水分散性プレポリマー成分と意図的にグラフト化または共重合することができる。そうした活性水素含有ビニルモノマーの例には、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)および2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が含まれる。
【0041】
当業界および文献で公知である慣用的なフリーラジカル開始剤を、種々の上記モノマーまたは共モノマーの重合を開始させるために使用して、ポリマーまたはコポリマーを生成させることができる。そうしたフリーラジカル開始剤には一般に、パースルフェート、過酸化物およびアゾ化合物ならびにレドックス組合せ物および放射線源が含まれる。好ましいパースルフェート開始剤の例には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムまたは過硫酸アンモニウムなどが含まれる。フリーラジカル重合は、乳化重合、バルク重合、溶液重合または分散重合であってよい。
【0042】
一般に、過酸化物、アゾ、レドックス系または関連開始剤系のいずれのタイプも使用することができる。過酸化物系には、過酸化ジクミル、クメンヒドロペルオキシド、過安息香酸t−ブチル、ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドおよびn−ブチル4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレートならびに過酸化ベンゾイルおよびt−ブチルヒドロペルオキシドなどが含まれる。クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシドおよびジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドが好ましい。アゾ開始剤には2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)および関連アゾ開始剤が含まれる。
【0043】
ポリマーまたはコポリマーを、連鎖移動剤/ポリマー物理特性改変剤を使用することによって作製することができる。種々のメルカプタン、例えばチオエタノールメルカプタン、ヒドロキシルエチルメルカプタン、メルカプタンと酸性の酸またはチオグリコール酸(thiogylcolic acid)などとのアルキルエステル(そのアルキル基は約2〜約20個の炭素原子を有する)の種々の反応生成物などの慣用的な連鎖移動剤を使用することができる。他の適切な連鎖移動剤は、βメルカプトプロピオン酸およびそのエステル、例えばブチル−3−メルカプトプロピオネート(butyl−3−mercaptoproprinate)である。連鎖移動剤の例は、ジチオカルバメートまたはジもしくはトリチオカーボネートを含むことができる。
【0044】
プレポリマーが形成されたら、水性媒体に分散して分散物を形成させる。水性媒体中へのプレポリマーの分散は、米国特許出願公開番号第2010/0330375A1号に記載されているように、バルク重合または溶液重合によって作製されたポリウレタンプレポリマーを水に分散させるのと同じ方法で、慣用的な任意の技術で行うことができる。米国特許出願公開番号第2010/0330375A1号の教示を参照により本明細書に組み込む。通常、これはプレポリマーブレンドを、混合しながら、水と一緒にすることによってなされる。溶媒重合を用いる場合、望むなら、溶媒および他の揮発性成分を、任意選択で最終分散物から留去させることができる。この段階またはその後で、ケトン基と架橋させるためのヒドラジン官能性部分を付加することができる。
【0045】
好ましいヒドラジン官能性部分は、1つもしくは複数のヒドラジンまたはヒドラゾン基を有する低分子量の分子またはオリゴマーを指す。ヒドラジン官能基は、式−NHNHの官能基を意味する。本発明の実践において、ヒドラゾン官能基は、少なくとも2個の炭素原子を有するモノケトンまたはモノアルデヒド(monaldehyde)との反応によるそうしたヒドラジン基から誘導される基である。ヒドラジン官能性部分は、これらの分子が指定された−NHNH基を有するという点で、以下に示すようなジヒドラジドおよび他のポリヒドラジドであってもよい。
【0046】
高濃度でのヒドラジン自体(HN−NH)は作業者への曝露の問題を惹起するが、ヒドラジド(−NHNH)含有分子は曝露の問題が小さく、室温またはその近傍におけるポリウレタン分散物凝固/被膜形成後での分子量および/または架橋分子/オリゴマー/ポリマーの構築機会を提供する。揮発性アミンは、ヒドラジン官能性部分を用いた反応において重要な役割を果たすことができる。それは、アミンを、ポリウレタン分散物中で用いて合体前にpHを塩基性サイドに調節し、水および揮発性アミンが蒸発するとそのpHが酸性サイドにシフトするように使用する/できるからである。このpHシフトおよび水の蒸発は、ヒドラジン基と利用可能なケトンまたはアルデヒド基との反応を促進する(分子量の増大およびまたは架橋を提供する)。
【0047】
プレポリマーが、乳化剤(界面活性剤)の添加なしで、安定分散物を形成するのに十分な水分散性増進化合物を含む本発明の1つの実施形態では、望むなら、その分散物をそうした化合物なしで、すなわち、界面活性剤を実質的に含まないで作製することができる。本発明の1つの実施形態では、スルフェートまたはホスフェートなどの表面活性剤を、プレポリマー組成物中に含むことが有益であり得る。
【0048】
プレポリマーが、ペンダントカルボキシル基を生成する水分散性増進化合物を含む場合には、プレポリマーの水分散性をさらに増進させるために、これらのカルボキシル基をカルボン酸アニオンに転換させることができる。本発明の分散物を作製できる典型的な方法は、水が実質的に存在しないもとでプレポリマーブレンドを形成させ、次いで混合しながらそのブレンドを水性媒体に分散させることによるものである。本発明の分散物を作製するために、せん断混合、アセトンプロセス、連続プロセス重合および逆フィード(reverse feed)プロセスを含む他の水性分散物の作製方法を用いることもできる。
【0049】
分散物の安定性を向上させるために、ビスルフィットまたはスルフィットを含むことがしばしば望ましい。例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸亜鉛、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素マグネシウムまたは亜硫酸水素亜鉛を分散物中に含めることができる。連鎖移動剤として作用することによってそれが重合を妨害する可能性があるので、スルフィットまたはビスルフィットは一般に、重合ステップ後に分散物に添加される。いずれにしろ、スルフィットまたはビスルフィットは一般に、ポリマー中のケトン基数をもとにして、化学量論量を超えて添加されることはない。スルフィットまたはビスルフィットは、一般に分散物の固形分含量に対して0.1重量%〜0.5重量%の範囲内のレベルで添加される。
【0050】
せん断混合では、プレポリマーを、乳化剤(界面活性剤などの外部乳化剤、あるいはポリマー主鎖の一部もしくはそれに懸垂したものとして、および/またはポリマー主鎖上の末端基として非イオン性、アニオン性、カチオン性および/または両性イオン性基を有する内部乳化剤)を用いてせん断力によって分散させる。
【0051】
アセトンプロセスでは、プレポリマーを、アセトン、MEKおよび/または非反応性であり容易に蒸留される他の極性溶媒の存在下、またはその非存在下で形成させる。プレポリマーを、必要に応じて、前記溶媒中にさらに希釈し、任意選択で、活性水素含有化合物を用いて鎖を延長させる。水を加え、次いで溶媒を留去させる。
【0052】
連続プロセス重合手順では、プレポリマーを形成させ、次いで高せん断混合ヘッドを通してポンプ輸送し、水に分散させる。これは、プレポリマー(または中和されたプレポリマー)、任意選択の中和剤、水および/または界面活性剤からなる多重ストリームによって遂行される。
【0053】
逆フィードプロセスでは、水および任意選択の中和剤および/または延長剤アミンを撹拌下でプレポリマーにチャージする。水の添加の前にプレポリマーを中和することができる。
【0054】
次いで水性自己架橋性コポリマー分散物を任意選択で、追加の水で任意の所望濃度(固形分含量)に希釈することができる。次いで水性自己架橋性コポリマー分散物を、当業者に周知の技術を用いて、水ベースのコーティングおよびインク、例えば塗料、ワニス、クリアコート、インクジェット用インクおよび紙コーティングの調製において使用することができる。所望の顔料、可塑剤、合体溶媒(coalescing solvent)、充填剤、湿潤剤、安定剤、消泡剤、乾燥剤、抗菌剤、殺菌剤、殺虫剤、防汚剤および防食剤を、水性自己架橋性コポリマー分散物に直接混合することができる。
【0055】
色を付与しコーティングを隠蔽するために、通常顔料が塗料配合物に添加される。二酸化チタンは、隠蔽および白色を付与するのに広範に使用されている顔料の例である。鉱物性顔料(鉄やクロムの酸化物など)、有機顔料(フタロシアニンなど)および活性な防食性顔料(リン酸亜鉛など)は、広範に使用されている他の顔料の代表例である。
【0056】
水ベースのコーティング配合物を作製するのに使用される充填剤は、所望のコンシステンシーおよび非沈降特性を実現するために添加される一般に安価な材料である。充填剤は、亀裂や摩耗に対する耐性などのコーティングの物理的特性を改善することもできる。広範に使用されている充填剤のいくつかの代表例には、チョーク、粘土、雲母、バライト、タルクおよびシリカが含まれる。
【0057】
殺菌剤および殺藻剤は通常、内部および外部用のハウス塗料に添加され、温暖気候下で使用されるコーティング配合物において特に価値がある。防汚剤化合物は一般に、海洋生物の増殖(marine growth)を阻止するために、船舶用塗料に添加される。
【0058】
被膜形成性水ベース組成物は、水性自己架橋性コポリマー分散物と適切な合体溶媒および可塑剤の混合物を用いて調製することができる。合体溶媒は、少なくとも水と非混和性であることが好ましく、水不溶性であることがさらにより好ましい。使用できる種々の溶媒の中で、一般に、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルおよび/またはジプロピレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。溶媒と可塑剤は、水エマルジョン中で樹脂と直接混合できることに留意すべきである。
【0059】
可塑剤は、コーティングの硬度を制御しかつ/または柔軟性を付与するために使用される。水ベースのコーティングをある基材に塗布した場合、接着不良に遭遇する可能性がある。1つまたは複数の可塑剤を水ベースのコーティング配合物に添加することによって、しばしば接着性を改善することができる。
【0060】
種々の可塑剤のうち、室温、例えば25℃で液体であり、基材に塗布されたときにコーティング組成物から揮発しないように十分に高い沸点、好ましくは少なくとも100℃、さらに好ましくは少なくとも150℃の沸点を有するものを選択することが望ましい。可塑剤は、合体された樹脂の乾燥コーティングの水不溶性を増進させるはずである。可塑剤または可塑剤の混合物は、樹脂自体と適合することが重要である。
【0061】
様々な可塑剤を本発明の実践において使用することができる。それらは、融点、沸点および適合性の要件が満たされる限り、例えば1974年4月出版の「Plasticizers」という表題のFederation Series on Coatings Technology、Unit Twenty−twoに挙げられている種類のものであってよい。使用できる可塑剤のいくつかの代表例には、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル混合物、ポリエチレングリコールジベンゾエート、オルトおよび/またはパラ−トルエンスルホンアミド、トリメチルペンタンジオールジベンゾエートおよびトリメチルペンタンジオールモノイソブチレートモノベンゾエートが含まれる。
【0062】
本発明の水ベースのコーティング組成物の作製において、一般に、自己架橋性コポリマーは、約25重量%〜約70重量%の範囲内の固形分含量を得るのに十分なレベルで添加される。固形分含量は好ましくは30重量%〜60重量%の範囲内であり、一般に約40重量%〜55重量%の範囲内である。しかし、高粘度または低粘度の分散物または溶液が望ましいかどうかに応じて、高い固形分含量または低い固形分含量が望ましいかどうかに応じて、通常、より多いかまたはより少ない水を使用することができる。使用される樹脂のレベルもやはり、使用される合体溶媒および可塑剤の種類および量に依存する。次いで、水性分散物または溶液として、水分が低減されたコーティング組成物を、木材、石材、プラスチックまたは金属などの適切な基材上のコーティングとして塗布することができる。本発明の水ベースのコーティング組成物は、木材床表面などの木材表面に塗布するのに特に価値がある。
【0063】
プレポリマーのケトン基とヒドラジン官能性部分の反応を、粒子の凝固および合体の後まで遅らせることが望ましいが、用いられる技術は限定されない。米国特許第4,210,565号および米国特許第4,983,662号(その教示を参照により本明細書に組み込む)に教示されているように、ケトン基とヒドラジン官能性部分を反応させてアゾメチン結合を形成させることが望ましい。プレポリマーのケトン基とヒドラジン官能性部分とのこの反応を20℃〜25℃での妥当な速度で進行させ、それによって、これらの部分に伴うより低分子量の種が20℃〜25℃(周囲乾燥温度)で、ポリマーの硬度、強度、溶媒耐性および関連する摩耗耐性の特性を損なうのではなくむしろ助ける、より高分子量の種および/または架橋した種に変換されるようにすることが望ましい。
【0064】
本発明を以下の実施例によって例示するが、これらは、単に例示のためだけものものであり、本発明の範囲またはそこで実践される方法を限定するものと見なされるべきではない。別段の具体的な指定のない限り、部およびパーセンテージは重量で与えられる。
【0065】
品目1として挙げたいくつかの材料(エポキシ化大豆油(Acme HardestyからのJenkinol(商標)680またはHallstarからのPlasthall(商標)ESOなどのESO)と有機カルボン酸、典型的にはレブリン酸(LA)およびメタクリル酸(MAA)との反応生成物など)を、大きなバッチで別個に実行し、一定分量を複数の実験分散(物)を実行/調製するために使用した。したがって、いくつかの実施例では、「ESO−LA−MAA」反応生成物の重量だけが示されており、個々の成分の重量は示されていない。しかし、有機カルボン酸反応物の当量は示されている。より規模の大きいまたは商業的な製造設備では、ESOと種々の有機カルボン酸反応物、例えばLAおよびMAAとのこの反応を、最終プレポリマーと同じ反応器の中で逐次的に実施することができる。これは商業的生産のためには最も効率的な経路である。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
ケトンで官能化された大豆油ポリオール
ポリ−ケトン官能性オリゴマーを、温度計、オーバーヘッドスターラーおよび窒素ガス導入口を備えた4ツ口フラスコ中で、以下の構成要素の品目1〜3を混合して調製した。窒素雰囲気(nitrogen blanket)下で撹拌しながら反応混合物の温度を110℃〜114℃に上げ、この温度で1時間保持した。次いで温度を121〜125℃に上げ、この温度で4時間、または酸価が<1.0(mg KOH/g)になるまで保持した。最終物質は、エメラルドグリーン色および70℃で約1,800cpsの粘度、0.98mg KOH/gの酸価を有する透明なものであった。
【数1】
(実施例2)
ケトン/アクリレートで官能化された大豆油ポリオール
【0067】
ポリ(ケトン/アクリレート)官能性オリゴマーを、温度計、オーバーヘッドスターラーおよび乾燥空気導入口を備えた4ツ口フラスコ中で、以下の構成要素の品目1〜5を混合して調製した。窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応混合物の温度を110℃〜114℃に上げ、この温度で1時間保持した。次いで温度を121〜125℃に上げ、この温度で少なくとも2時間、または酸価が<1.0(mg KOH/g)になるまで保持した。最終物質は、エメラルドグリーン色および70℃で約1,730cpsの粘度、0.7mg KOH/gの酸価を有する透明なものであった。
【数2】
(実施例3)
ケトンで官能化された大豆油ポリオール
【0068】
ポリ−ケトン官能性オリゴマーを、温度計、オーバーヘッドスターラーおよび窒素ガス導入口を備えた4ツ口フラスコ中で、以下の構成要素の品目1〜3を混合して調製した。窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応混合物の温度を110℃〜114℃に上げ、この温度で1時間保持した。次いで温度を121〜125℃に上げ、この温度で2時間、または酸価が<1.0(mg KOH/g)になるまで保持した。最終物質は、淡い琥珀色および70℃で約1,450cpsの粘度、0.8mg KOH/gの酸価を有する透明なものであった。
【数3】
(実施例4)
ポリ−ケトン−メタクリレート官能性大豆油ポリオール:
【0069】
ポリ−ケトン官能性オリゴマーを、温度計、オーバーヘッドスターラーおよび乾燥空気導入口を備えた4ツ口フラスコ中で、以下の構成要素の品目1〜5を混合して調製した。窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応混合物の温度を110℃〜114℃に上げ、この温度で1時間保持した。次いで温度を121〜125℃に上げ、この温度で2時間、または酸価が<1.0(mg/g)になるまで保持した。最終物質は、琥珀色および70℃で約1,510cpsの粘度、0.9mg/gの酸価を有する透明なものであった。
【数4】
(実施例5)
ケトン/アクリレートで官能化された大豆油ポリオール
【0070】
ポリ(ケトン/アクリレート)官能性オリゴマーを、温度計、オーバーヘッドスターラーおよび乾燥空気導入口を備えた4ツ口フラスコ中で、以下の構成要素の品目1〜7を混合して調製した。窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応混合物の温度を110℃〜114℃に上げ、この温度で1時間保持した。次いで温度を121℃〜125℃に上げ、この温度で2時間、または酸価が<1.0(mg KOH/g)になるまで保持した。最終物質は、琥珀色および70℃で約1,670cpsの粘度、0.9mg KOH/gの酸価を有する透明なものであった。
【数5】
(実施例6)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0071】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例1(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEA、MMA、スチレンおよびBHT(品目2〜6)を加え、混合物を70℃で20分間保持する。次いで、混合物を室温に冷却し、さらに45分間にわたって反応を続行させた。これにより、プレポリマーがMMAおよびスチレンの中に希釈されているため、室温(約22℃)で中程度の粘度の暗い琥珀色のプレポリマーが得られた。
【数6】
【0072】
得られたプレポリマー(70.9部)を約22℃で、アンモニア(0.5部、28%水溶液)を含む、約20℃〜22℃の初期温度を有する水に分散させて、不透明または乳白色の外観を有するより大きい粒子サイズの分散物を得た。この時点でアンモニアを徐々に加えると、粒子サイズを大幅に小さくして低い粘度で暗い琥珀色を有する半透明状態となるように調節する助けとなった。次いで、34.2部のスチレンおよび2.0部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、分散物中に均質化させた。得られた分散物を、分散物中に混合された0.2部の1%Fe−EDTAおよび2.4部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で3.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、20℃〜44℃での発熱によって明らかなように、ビニル官能性モノマーのかなり遅い/のろのろした重合をもたらした。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、アジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するコーティングを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性(mar and black heel mark resistance)で観察された。最終分散物は、45.7%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.2で102cps(25℃で)の粘度、40.5nmの粒子サイズを有していた。
(実施例7)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0073】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例2(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEAおよびMMA(品目2および3)を加え、混合物を70℃で20分間保持する。次いで、混合物を室温に冷却し、さらに45分間にわたって反応を続行させた。これにより、プレポリマーがMMAに希釈されているため、室温(約22℃)で比較的低い粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーが得られた。
【数7】
【0074】
得られたプレポリマー(89部)を約22℃で、アンモニア(0.5部、28%水溶液)を含む、約20℃〜22℃の初期温度を有する水に分散させて、低い粘度で暗い琥珀色の透明な外観を有する小粒子サイズの分散物を得た。得られた分散物に、42.8部のスチレンを加え、分散物中に均質化させた。得られた分散物を、分散物中に混合された0.2部の1%Fe−EDTAおよび2.0部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で2.6部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、20℃〜34℃での発熱によって明らかなように、ビニル官能性モノマーのかなり遅い/のろのろした重合をもたらし、その時点で、増大した粘度により、20部の水の添加が必要となった。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、4.5部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は42.0%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.6で69cps(25℃で)の粘度、40.7nmの粒子サイズを有していた。
(実施例8)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0075】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例2(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEAおよびMMA(品目2および3)を加え、混合物を70℃で20分間保持する。次いで、混合物を室温に冷却し、さらに45分間にわたって反応を続行させた。これにより、プレポリマーがMMAに希釈されているため、室温(約22℃)で中程度の粘度の暗い琥珀色のプレポリマーが得られた。
【数8】
【0076】
得られたプレポリマー(85部)を約22℃で、アンモニア(0.5部、28%水溶液)を含む、約20℃〜22℃の初期温度を有する水に分散させて、不透明または乳白色の外観を有するより大きい粒子サイズの分散物を得た。このとき、アンモニアを徐々に加えると、粒子サイズを大幅に小さくして低い粘度で暗い琥珀色を有する半透明状態となるように調節する助けとなった。次いで、40.9部のスチレンおよび3.0部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、分散物中に均質化させた。得られた分散物に、分散物中に混合された0.2部の1%Fe−EDTAおよび2.4部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で3.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、20℃〜39℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーのかなり遅い重合をもたらした。その時点で、増大した粘度により、30部の水の添加が必要となった。ビニル重合が進行するにしたがって、分散物の透明度の増大で観察されるように、その粒子サイズは小さくなった。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、5.8部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は、38.0%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH8.9で133cps(25℃で)の粘度、43.0nmの粒子サイズを有していた。
(実施例9)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0077】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例2(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEAおよびMMA(品目2および3)を加え、混合物を70℃で20分間保持する。次いで、混合物を室温に冷却し、さらに45分間にわたって反応を続行させた。これにより、プレポリマーがMMAに希釈されているため、室温(約22℃)で中程度の粘度の暗い琥珀色のプレポリマーが得られた。
【数9】
【0078】
得られたプレポリマー(85部)を約21℃で、アンモニア(0.5部、28%水溶液)を含む、約20℃の初期温度を有する水に分散させて、不透明または乳白色の外観を有するより大きい粒子サイズの分散物を得た。このとき、アンモニアを徐々に加えると、粒子サイズを大幅に小さくして低い粘度で暗い琥珀色を有する半透明状態となるように調節する助けとなった。次いで、40.9部のスチレン、3.0部のジビニルベンゼン(DVB80)および1.2部のジアセトンアクリルアミド(20%水溶液として)を加え、分散物中に均質化させた。得られた分散物に、分散物中に混合された0.2部の1%Fe−EDTAおよび2.4部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で3.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、20℃〜41℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーのかなり遅い重合をもたらした。
【0079】
ビニル重合が進行するにしたがって、観察される分散物の透明度の増大によって確認されるように、その粒子サイズは小さくなった。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、6.4部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は、42.5%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.3で88cps(25℃で)の粘度、39.8nmの粒子サイズを有していた。
(実施例10)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0080】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例2(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEAおよびMMA(品目2および3)を加え、混合物を70℃で20分間保持する。次いで、混合物を室温に冷却し、さらに45分間にわたって反応を続行させた。これにより、プレポリマーがMMAに希釈されているため、室温(約22℃)で中程度の粘度の暗い琥珀色のプレポリマーが得られた。
【数10】
【0081】
得られたプレポリマー(85部)を約21℃で、アンモニア(3部、28%水溶液)を含む、約20℃の初期温度を有する水に分散させて、不透明または乳白色の外観を有するより大きい粒子サイズの分散物を得た。このとき、アンモニアを徐々に加えると、粒子サイズを大幅に小さくして低い粘度で暗い琥珀色を有する半透明状態となるように調節する助けとなった。次いで、42.4部のスチレンおよび3.4部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、分散物中に均質化させた。得られた分散物に、分散物中に混合された0.2部の1%Fe−EDTAおよび2.4部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で3.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、20℃〜34℃での発熱によって明らかなように、ビニル官能性モノマーのかなり遅い開始および重合をもたらし、その時点で、増大した粘度により、40部の水の添加が必要となった。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、アジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は小粒子サイズから中程度の粒子サイズであり、39.6%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.5で73cps(25℃で)の粘度、52.1nmの粒子サイズを有していた。
(実施例11)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0082】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例2(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEAおよびMMA(品目2および3)を加え、混合物を70℃で20分間保持する。次いで、混合物を室温に冷却し、さらに45分間にわたって反応を続行させた。これにより、プレポリマーがMMAに希釈されているため、室温(約22℃)で中程度の粘度の暗い琥珀色のプレポリマーが得られた。
【数11】
【0083】
得られたプレポリマー(85部)を約21℃で、アンモニア(3部、28%水溶液)を含む、約20℃の初期温度を有する水に分散させて、不透明または乳白色の外観を有するより大きい粒子サイズの分散物を得た。このとき、アンモニアを徐々に加えると、粒子サイズを大幅に小さくして低い粘度で暗い琥珀色を有する半透明状態となるように調節する助けとなった。次いで、21.9部のスチレンおよび2.6部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、続いて42.5部の水を加えた。次いでこれらの構成要素を約45分間均質化した。得られた分散物を、分散物中に混合された0.2部の1%Fe−EDTAおよび4.2部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で5.3部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、19℃〜23℃での発熱によって明らかなように、加えられた全エリソルビン酸の約30%で、ビニル官能性モノマーのかなり遅い開始および重合をもたらした。分散物に熱を施して39℃の温度にし、残りのエリソルビン酸を約30分間かけて徐々に加えた。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、アジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は小粒子サイズから中程度の粒子サイズであり、34.6%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH8.1で33cps(25℃で)の粘度、44.7nmの粒子サイズを有していた。
(実施例12)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0084】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例3(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEAおよびMMA(品目2および3)を加え、混合物を70℃で180分間保持する。次いで、混合物を、水に分散させるために約50℃に冷却した。この時点で、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意なピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分は消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基についてのものなどの他の吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。これは、約50℃の分散物温度で低い粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーをもたらした。
【数12】
【0085】
得られたプレポリマー(その91部)を約50℃で、0.7部の水酸化カリウムおよびアンモニア(0.9部、28%水溶液)を含む約20℃の初期温度を有する150部の水に分散させて、半透明な外観を有する小粒子サイズの分散物を得た。次いで、38.7部のスチレン、2.8部のブチルアクリレートおよび2.8部のヘキサンジオールジアクリレートを加え、分散物中に均質化させた。得られた分散物を、分散物中に混合された0.03部の1%Fe−EDTAおよび3.5部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で5.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、21℃〜49℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および重合をもたらした。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、5.0部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は、43.1%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.1で185cps(25℃で)の粘度、46.8nmの粒子サイズを有していた。
(実施例13)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0086】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例4(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEAおよびMMA(品目2および3)を加え、混合物を70℃で90分間保持する。次いで、混合物を、水に分散させるために約50℃に冷却した。この時点で、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意なピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分は消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基に関連するものなどの他の吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。これは、約50℃の分散物温度で低い粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーをもたらした。
【数13】
【0087】
得られたプレポリマー(その93.8部)を約50℃で、0.7部の水酸化カリウムおよびアンモニア(0.5部、28%水溶液)を含む約20℃の初期温度を有する150部の水に分散させて、半透明な外観を有する小粒子サイズの分散物を得た。次いで、39.6部のスチレン、2.8部のブチルアクリレートおよび2.0部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、分散物中に均質化させた。これは、不透明な外観を有する分散物によって明らかなように、粒子サイズの大幅な増大をもたらした。得られた分散物を、分散物中に混合された0.03部の1%Fe−EDTAおよび3.5部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で5.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、20℃〜36℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および重合をもたらした。ビニル重合が進行するにしたがって、粒子サイズは低下し、粘度が上昇することが分かった。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、5.1部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は、46.3%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH6.9で260cps(25℃で)の粘度、63.3nmの粒子サイズを有していた。
(実施例14)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0088】
実施例5(品目1)で調製したポリオールからのプレポリマーを、反応器中で、以下の表の品目1〜5を一緒に混合し、70℃〜72℃で300分間加熱することによって無水フタル酸と反応させた。この時点で、プレポリマーは均一であるように見え、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意な無水物ピークを示さないことから明らかなように、無水物のすべてが反応したようである。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基に関連するものなどの他の吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。いずれにしろ、これは、約50℃の分散物温度で比較的低い粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーをもたらした。
【数14】
【0089】
得られたプレポリマー(その93.8部)を約50℃で、0.5部の水酸化ナトリウムおよび0.66部のDextrol OC−40(TEAで中和した)を含む約20℃の初期温度を有する150部の水に分散させて、少量のアンモニア(約28%水溶液)を添加してpHを6.9超に上げた後、中程度の粒子サイズの分散物を得た。次いで、42.8部のスチレン、2.8部のブチルアクリレートおよび2.8部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、分散物中に均質化させた。これは、不透明な外観を有する分散物によって明らかなように、粒子サイズの大幅な増大をもたらした。得られた分散物を、分散物中に混合された0.1部の1%Fe−EDTAおよび3.0部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、35℃の初期温度で4.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、35℃〜41℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および遅い重合をもたらした。ビニル成分の重合によって分散物は増粘した。19.1部の水を加えて粘度を調節した。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。追加的な30.5gの水を加えて粘度を低下させた。続いて、3.4部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。最終分散物は、42.5%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.5で440cps(25℃で)の粘度、207.5nmの粒子サイズを有していた。
(実施例15)
ケトン/アクリレートで官能化された大豆油ポリオール
【0090】
ポリ(ケトン/アクリレート)官能性オリゴマーを、温度計、オーバーヘッドスターラーおよび乾燥空気導入口を備えた4ツ口フラスコ中で、以下の構成要素の品目1〜5を混合して調製した。窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応混合物の温度を110℃〜114℃に上げ、この温度で1時間保持した。次いで温度を121℃〜125℃に上げ、この温度で2時間、または酸価が<1.0(mg KOH/g)になるまで保持した。最終物質は、琥珀色および70℃で約1,540cpsの粘度、0.7mg KOH/gの酸価を有する透明なものであった。
【数15】
(実施例16)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0091】
プレポリマーを、少なくとも固体無水コハク酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで120℃で加熱して、無水コハク酸を用いて、実施例15(品目1)で調製した大豆油ポリオールを最初に均質化することによって調製した。混合物を120℃で2時間保持し、その時点でこの物質のFTIRをチェックし、1779および1849cm−1での有意なピークによって明らかなように、高い含量の無水物を含んでいることが分かった。したがって、希釈剤としてのMMAおよび触媒としてのTEA(続いて酸中和剤/イオン化剤(ionizer))を加えてヒドロキシルとの効果的な無水物反応を可能にするために、無水コハク酸が120℃〜より低温(<90℃)で均質化したら直ちに反応混合物を冷却することが望ましいと考えられた。それに応じて反応混合物を82℃〜84℃に冷却し、この時点で、MMAおよびTEA(品目2および3)を加え、混合物を82℃〜84℃で30分間保持した。FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意なピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分はこの時点で消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基に関連するものなどの他の吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。続いて、混合物を、水に分散させるために約50℃に冷却した。これは、より淡い琥珀色および約50℃の分散物温度で低い粘度を有するプレポリマーをもたらした。
【数16】
【0092】
得られたプレポリマー(その89.6部)を約50℃で、1.5gの30%ラウリル硫酸ナトリウムを含む約20℃の初期温度を有する150部の水に分散させて、最初に大きい粒子サイズの分散物を得た。アンモニア(約28%水溶液)を添加すると粒子サイズは著しく小さくなって、最終的にはpH約7.6で小粒子サイズがもたらされた。得られた分散物に、19部のスチレン、2.8部のブチルアクリレートおよび1.3部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、少なくとも30分間分散物中に均質化させた。これは、不透明な外観を有する分散物によって明らかなように、粒子サイズの大幅な増大をもたらした。得られた分散物に、分散物中に混合された0.2部の1%Fe−EDTAおよび2.0部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、19℃の初期温度で2.8部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、19℃〜30℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および遅い重合をもたらした。ビニル成分の重合によって、粒子サイズが低下し、半透明分散物となるのが観察された。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけた。続いて、2.9部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。最終分散物は、39.6%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.7で55cps(25℃で)の粘度、68.0nmの粒子サイズを有していた。
(実施例17)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0093】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例3(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEAおよびMMA(品目2および3)を加え、混合物を70℃で180分間保持した。次いで、混合物を、水に分散させるために約50℃に冷却した。この時点で、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意なピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分は消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基についてのものなどの他の吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。いずれにしろ、これは、約50℃の分散物温度で低い粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーをもたらした。
【数17】
【0094】
次いで、93.5部の得られたプレポリマーを約50℃で、0.7部の水酸化カリウムおよびアンモニア(0.9部、28%水溶液)を含む約20℃の初期温度を有する150部の水に分散させて、半透明な外観を有する小粒子サイズの分散物を得た。次いで、39.5部のスチレン、2.8部のブチルアクリレートおよび1.8部のジビニルベンゼンを加え、分散物中に均質化させた。次いで、得られた分散物を、分散物中に混合された0.03部の1%Fe−EDTAおよび3.5部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で5.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、21℃〜49℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および重合をもたらした。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、5.0部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は、43.5%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.2で53cps(25℃で)の粘度、52.6nmの粒子サイズを有していた。
(実施例18)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0095】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例3(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEAおよびMMA(品目2および3)を加え、混合物を70℃で180分間保持した。次いで、混合物を、水に分散させるために約50℃に冷却した。この時点で、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意なピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分は消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基についてのものなどの他の吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。これは、約50℃の分散物温度で低い粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーをもたらした。
【数18】
【0096】
次いで、93.2部の得られたプレポリマーを約50℃で、0.7部の水酸化カリウムおよびアンモニア(0.9部、28%水溶液)を含む約20℃の初期温度を有する150部の水に分散させて、半透明な外観を有する小粒子サイズの分散物を得た。次いで、32.5部のスチレン、2.9部のブチルアクリレート、8.0部のアクリロニトリルおよび2.1部のジビニルベンゼンを加え、分散物中に均質化させた。得られた分散物を、分散物中に混合された0.03部の1%Fe−EDTAおよび3.5部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で5.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、21℃〜49℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および重合をもたらした。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、5.1部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は、44.7%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH6.8で95cps(25℃で)の粘度、58.5nmの粒子サイズを有していた。
(実施例19)
大豆油ビニルコポリマー分散物
【0097】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸がポリオール中に均質化される(溶融する)まで70℃で加熱して、無水マレイン酸を用いて、実施例3(品目1)で調製したポリオールを最初に均質化することによって調製した。この時点で、TEAおよびMMA(品目2および3)を加え、混合物を70℃で180分間保持する。次いで、混合物を、水に分散させるために約50℃に冷却した。この時点で、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意なピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分は消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基についてのものなどの他の吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。これは、約50℃の分散物温度で低い粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーをもたらした。
【数19】
【0098】
次いで、93.5部の得られたプレポリマーを約50℃で、0.7部の水酸化カリウムおよびアンモニア(0.9部、28%水溶液)を含む約20℃の初期温度を有する150部の水に分散させて、半透明な外観を有する小粒子サイズの分散物を得た。次いで、35.4部のスチレン、2.8部のブチルアクリレートおよび6.3部のジビニルベンゼンを加え、分散物中に均質化させた。得られた分散物に、分散物中に混合された0.03部の1%Fe−EDTAおよび3.5部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で5.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、21℃〜49℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および重合をもたらした。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、5.1部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は、40.6%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.0で81cps(25℃で)の粘度、67.5nmの粒子サイズを有していた。
【0099】
コーティング配合物
上記分散物のコーティングを、抵抗特性の試験のための木材上およびKonig硬度試験のための鋼製パネル上に作製した。共溶媒または合体剤を全く加えることなく、すべてのコーティングをそのまま使用し、色の変化(color development)の非常に少ない高品質の光沢のあるコーティングを形成させた。試験する前に、すべてのコーティングを室温で1週間硬化させた。コーティングの硬度を、Koenig硬度(振り子式硬度)試験装置の振幅で表す。水および1%Spic and Span(登録商標)スポット試験を、コーティングにその薬品を4時間施し、薬品を除去し、評価前に1時間回復させることによって実施した。5%アンモニアおよび70%IPAスポット試験を、コーティングにその薬品を1時間施し、薬品を除去し、評価前に1時間回復させることによって実施した。次いで曝露領域を、その外観について;0=コーティングの除去、10=コーティングに対する影響なしの0〜10までのスケールでランク付けした。それに応じて、一般に、抵抗特性を改善するために、適切な共溶媒を追加することができる。
【0100】
試験結果を表1に示す。コーティングは、添加合体剤(すなわち、有機溶媒)を加えることなしで、並外れて良好な硬度、耐アルコール性および耐ブラックヒールマーク性(または耐損傷性)を示している。コーティングにおける合体剤としての有機溶媒の使用はVOC(揮発性有機成分)放出を助長する。多くのVOC’sはヒトの健康にとって危険である、または、スモッグの発生を助長するなどのように、環境に悪影響を及ぼす。スポット試験で得られたどの低いスコアの場合も、これはある程度、試験後に残る木材基材の観察された黒ずみに起因するものであった。しかし、5%アンモニアを除いて、この変色は、その後数時間以内に消失した。本発明のコーティングの慣用的な配合物は、コーティング特性のさらなる改善をもたらすはずであると予想される。一般的な水媒介性のアクリル、あるいはさらにポリウレタンは、相当な量の合体溶媒で配合することなしでは、本発明の実施例によって示された硬度特性と抵抗特性の両方を獲得することはできないはずである。
【表1】
【0101】
最後に、本発明のコーティングは、相当量の再生可能な原材料を用いても有用な特性を提供し、改善された持続可能性を提供する。低いVOCと合わせた多量の再生可能内容物は、環境やヒトの健康に対する影響が少ないことと相まって「グリーン」製品に大きく寄与する。さらに、特に得られるその性能に比べて、全般的な原材料コストおよび加工要件は極めて低く、したがって、高い性能/コスト比が得られる。
【0102】
残留ヒドロキシル基が通常プレポリマーおよびその下流製品上に存在するが、残留ヒドロキシル基が望ましくない場合、モノイソシアネート(例えば、フェニルイソシアネート)とのウレタン形成反応またはカルボン酸含有種もしくはその無水物(例えば、無水酢酸)とのエステル形成反応によって、残留ヒドロキシル基の数を最少化するかまたはそれを排除することができることが予想される。
(実施例20)
大豆油−ビニルコポリマー分散物
【0103】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸が均質化される(溶融する)まで60〜70℃で加熱して、無水マレイン酸およびMMA(品目1〜3)を用いて、実施例4(品目1)で述べたようなポリオールを最初に均質化することによって調製した。次いでTEA(品目4)を加え、混合物を70℃で90分間保持した。この時点で、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意なピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分は消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基についてのものなどの他の吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。次いで、混合物を25〜30℃に冷却し、品目5を加え、プレポリマー中に均質化した。これは、約25℃のプレポリマー分散物で中程度の粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーをもたらした。
【数20】
得られたプレポリマー(その92.8部)を約25℃で、約20℃の初期温度を有する150部の水に分散させて、半透明な外観を有する小粒子サイズの分散物を得た。得られた分散物に、18.7部のスチレン、11.2部のメチルメタクリレートおよび2.3部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、分散物中に均質化させた。これは、不透明な外観を有する分散物によって明らかなように、粒子サイズの増大をもたらした。得られた分散物を、分散物中に混合された0.03部の1%Fe−EDTAおよび4.0部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で5.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、20℃〜46℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および重合をもたらした。ビニル重合が進行するにしたがって、粒子サイズは低下し、粘度が上昇することが分かった。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、3.9部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は、40.3%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.7で160cps(25℃で)の粘度、47.3nmの粒子サイズを有していた。
(実施例21)
大豆油−ビニルコポリマー分散物
【0104】
プレポリマーおよび最終分散物を、ビニル重合が完了した後、固体に対して2%の亜硫酸水素ナトリウムを、アンモニアでpH>7.0に中和された25%水溶液として徐々に加えたこと以外は、実施例20で説明したのと同様の仕方で調製した。最終分散物は、38.7%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH8.5で78cps(25℃で)の粘度、44.9nmの粒子サイズを有していた。長期および熱時の貯蔵安定性において、この分散物と実施例20で得られたものとの間に著しい違いがある。本実施例が60℃で1週間および52℃で1ヵ月の貯蔵に合格したのに対して、実施例20は合格せず、60℃で1日足らずで完全なゲル化を示した。
(実施例22)
大豆油−ビニルコポリマー分散物
【0105】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸が均質化される(溶融する)まで60〜70℃で加熱して、無水マレイン酸およびMMA(品目1〜3)を用いて、実施例4(品目1)で述べたようなポリオールを最初に均質化することによって調製した。次いでTEA(品目4)を加え、混合物を70℃で90分間保持した。この時点で、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意なピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分は消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基についてのものなどの他の吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。いずれにしろ、次いで、混合物を25〜30℃に冷却し、品目5を加え、プレポリマー中に均質化した。これは、約25℃のプレポリマー分散物温度で中程度の粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーをもたらした。
【数21】
【0106】
得られたプレポリマー(その180部)を約25℃で、約20℃の初期温度を有する297部の水に分散させて、半透明な外観を有する小粒子サイズの分散物を得た。得られた分散物に、37.0部のスチレン、22.2部のメチルメタクリレートおよび4.6部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、分散物中に均質化させた。これは、不透明な外観を有する分散物によって明らかなように、粒子サイズの増大をもたらした。得られた分散物に、分散物中に混合された0.03部の1%Fe−EDTAおよび8.0部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で10.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、20℃〜41℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および重合をもたらした。ビニル重合が進行するにしたがって、粒子サイズは低下し、粘度が上昇することが分かった。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、7.7部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は、43.0%の固形分レベルで0.3%の沈殿物レベル、pH6.7で180cps(25℃で)の粘度、82.0nmの粒子サイズを有していた。熱時安定性は不良であり、60℃で1日足らずでゲル化が起こった。
(実施例23)
大豆油−ビニルコポリマー分散物
【0107】
プレポリマーを、上記実施例22と同様に、固体無水マレイン酸が均質化される(溶融する)まで60〜70℃で加熱して、無水マレイン酸およびMMA(品目2および3)を用いて、実施例4で説明したようにして調製したポリオール(品目1)を最初に均質化することによって調製した。次いでTEA(品目4)を加え、混合物を70℃で90分間保持した。この時点で、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意なピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分は消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基についてのものなどの他の吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。次いで、水中の亜硫酸ナトリウム溶液(品目5)をプレポリマーに加え、均質化して不透明混合物を得た。これを50℃で1時間保持した。これは、暗い琥珀色および約50℃の温度で低い粘度を有する透明な(もはや不透明でない)プレポリマーをもたらした。
【数22】
【0108】
得られたプレポリマー(その180部)を約50℃で、約20℃の初期温度を有する297部の水に分散させて、半透明な外観を有する小粒子サイズの分散物を得た。得られた分散物に、37.0部のスチレン、22.2部のメチルメタクリレートおよび4.6部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、分散物中に均質化させた。これは、不透明な外観を有する分散物によって明らかなように、粒子サイズの増大をもたらした。得られた分散物に、分散物中に混合された0.03部の1%Fe−EDTAおよび8.0部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で10.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、20℃〜44℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および重合をもたらした。ビニル重合が進行するにしたがって、粒子サイズは低下し、粘度が上昇することが分かった。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、7.7部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ヒドラジドとポリマー上のケトンの縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。その効果は、乾燥コーティングについての著しい硬度の増大ならびに非常に良好な耐損傷性および耐ブラックヒールマーク性で観察された。最終分散物は、43.3%の固形分レベルで<0.1%の無視できる沈殿物レベル、pH6.9で64cps(25℃で)の粘度、57.0nmの粒子サイズを有していた。分散物が60℃で1週間後、粘度またはPSの変化をほとんど示していないことから、熱時安定性は優れていた。実施例22と比較すれば、水に分散させる前にスルフィット(またはビスルフィット)をプレポリマーに添加すると、改善された分散物品質ならびに熱時安定性が得られた。
(実施例24)
大豆油−ビニルコポリマーポリウレタン複合物
【0109】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸が均質化される(溶融する)まで60〜70℃で加熱して、無水マレイン酸およびMMA(品目1〜3)を用いて、実施例4(品目1)で説明したようなポリオールを最初に均質化することによって調製した。次いでTEA(品目4)を加え、混合物を70℃で120分間保持した。この時点で、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意な無水物ピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分は消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基についてのものなどの他のより大きい吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。次いで、混合物を25〜30℃に冷却し、品目5を加え、その組成物中に均質化した。これは、約25℃のプレポリマー分散物温度で中程度の粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーをもたらした。
【数23】
【0110】
得られたプレポリマー(その90部)を約25℃で、約20℃の初期温度を有する139部の水および292.4部のSancure970(42%固形分の比較的硬いポリウレタン分散物)に分散させた。これは、いくぶん濁った外観を有する中程度の粒子サイズの分散物を生成した。得られた分散物に、17.5部のスチレン、13.5部のメチルメタクリレートおよび2.2部のジビニルベンゼン(DVB80)を加え、分散物中に均質化させた。これは、不透明な外観を有する分散物によって明らかなように、粒子サイズの増大をもたらした。得られた分散物を、分散物中に混合された0.03部の1%Fe−EDTAおよび4.0部の3.5%t−ブチル過酸化水素を加え、続いて、20℃の初期温度で5.0部の2.0%エリソルビン酸を徐々に加えることによってフリーラジカル重合させた。これは、20℃〜46℃で観察される発熱を伴った、ビニル官能性モノマーの開始および重合をもたらした。ビニル重合が進行するにしたがって、粒子サイズが低下することが分かった。ビニル重合を、少量の追加のt−ブチル過酸化水素およびエリソルビン酸を用いて追いかけ、ポリマーへのビニルモノマーの転換を完了させる助けとなるように熱を施した。続いて、30.5部の水および3.7部のアジピン酸ジヒドラジドを分散物に加えて、ジヒドラジドとポリマー上のケトン官能基の縮合によって、自己架橋する潜在性を有するポリマーを得た。最終分散物は、41.4%の固形分レベルで沈殿物が少なく、pH7.6で230cps(25℃で)の粘度、76.1nmの粒子サイズを有していた。
(実施例25)
大豆油−ビニルコポリマーポリウレタン複合(またはハイブリッド)分散物のための大豆ベースのプレポリマー
【0111】
プレポリマーを、固体無水マレイン酸が均質化される(溶融する)まで60〜70℃で加熱して、無水マレイン酸およびMMA(品目1〜3)を用いて、実施例4(品目1)で述べたようなポリオールを最初に均質化することによって調製した。次いでTEA(品目4)を加え、混合物を70℃で120分間保持した。この時点で、FTIRスペクトルにおいて1779および1849cm−1でなんら有意な無水物ピークを示さないことから明らかなように、全部ではないが、無水物の大部分は消費されていた。しかし、いくらかの無水物ピークが、エステル基についてのものなどの他のより大きい吸収ピークの下に埋もれている可能性がある。いずれにしろ、これは、約25℃のプレポリマー分散物温度で中程度の粘度の暗い琥珀色を有するプレポリマーをもたらした。200gの得られたプレポリマーを540gの水に分散させ、続いて、実施例26で説明する分散物の調製において使用した。
【数24】
(実施例26)
大豆油−ビニルコポリマーポリウレタン複合(またはハイブリッド)分散物
【0112】
プレポリマーを、温度計、オーバーヘッドスターラーおよびガス導入口を備えた4ツ口フラスコ中に、60℃の温度で以下の構成要素の品目1〜3を混合して調製した。以下の反応を、反応器のガス導入口を通した乾燥窒素流下で実行した。反応混合物の温度を102℃〜105℃に上げ、この温度で120分間、または少量サンプルの滴定で示されたものが理論NCOに達するまで保持した。次いで品目4を加え、温度を72℃〜75℃に調節し、その時点で品目5を加えた。次いで温度を84〜87℃に調節し、そこで1時間、または少量サンプルの滴定で示されたものが理論NCO%に達するまで保持した。プレポリマーが理論NCOに達したら、プレポリマー温度を57〜60℃に下げ、品目6を加え、プレポリマー中に均質化した。続いて、品目8を加え、57〜60℃分散物中に均質化してプレポリマーを中和(イオン化)し、次いでその後これをすぐ分散させた。
【数25】
【0113】
208.2g部の得られた中和プレポリマーを、トリエチルアミンでpH7.1に調節された、実施例25で説明した200gの大豆ベースのプレポリマーを含む540gの水に分散させた。分散された大豆プレポリマーを含む水の温度は最初約20〜22℃であり、上記ポリウレタンプレポリマーをその中に分散させながら、28℃未満の水/分散物温度に保持した。分散されたプレポリマーを、16.2部のヒドラジン水和物(35%ヒドラジン含量)で延長させた(extended)。ヒドラジン添加5分後、5.7部のエチレンジアミンの25%水溶液を加えて鎖延長を完了させた。これは、分散粒子サイズの大幅な増大をもたらした。約30分間鎖延長させた後、分散物の温度を33〜35℃に調節し、0.1部の1%溶液Fe−EDTA錯体、8.0部の3.5%tert−ブチル過酸化水素水溶液および12.0部の2.0%エリソルビン酸水溶液をトリエチルアミンで中和した。もたらされた発熱は存在するアクリルモノマーの開始および重合を示している。この分散物に、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)を加えて、ジイソシアネートとのカルボニル/ケトン官能性ジオール反応によって、ポリウレタンポリマー相中に取り込まれたカルボニル/ケトン基間の自己架橋をさせた。これは、pH7.2で98cps(25℃で)の粘度、156.2nmの粒子サイズを有する、少ない沈殿物を含む38.2%固形分のポリウレタン−大豆−ビニルコポリマー分散物をもたらした。ポリウレタン−大豆−ビニルコポリマー分散物は、追加の合体剤を加えることなく、室温(約21℃)で硬い強靭な耐性のあるコーティングをもたらす。
【0114】
水相中に大豆プレポリマーなしで同様の条件下で分散され、鎖延長されフリーラジカル重合された同じポリウレタンプレポリマーは、pH8.3で918cps(25℃で)の粘度、53.0nmの粒子サイズを有する、少ない沈殿物を有する38.2%固形分のポリウレタン−アクリル分散物を生成した。得られるポリウレタン−アクリル分散物は、合体溶媒の添加なしで、合体されたコーティングを生成することはない(被膜形成のために、>275g/Lの合体溶媒が必要とされる)。
【0115】
本発明を例示するために、特定の代表的な実施形態および詳細を示してきたが、当業者には、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更および改変をそれに加えることができることは明らかである。
図1
図2