(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
角度αは、前記第1のタブの内側表面および前記心室スカートの外側表面によって画定され、αは、前記第1のタブの前記基部が拘束から解放され、前記第1のタブの前記先端が拘束されていないときに減少する、請求項1に記載の人工弁。
角度αは、前記第1のタブの内側表面および前記心室スカートの外側表面によって画定され、αは、前記第1のタブの前記先端が拘束されておらず、前記第1のタブの前記基部が少なくとも部分的に拘束されるときに最大化される、請求項1に記載の人工弁。
前記自己拡張式フレームと連結されている交連柱をさらに備え、前記交連柱は、半径方向内向きに延在する端部を有し、角度βは、前記交連柱の外側表面および前記心室スカートの内側表面によって画定され、βは、前記第1のタブの前記基部が少なくとも部分的に拘束され、前記第1のタブの前記先端が拘束されていないときに最小化される、請求項1に記載の人工弁。
前記自己拡張式フレームと連結されている交連柱をさらに備え、前記交連柱は、半径方向内向きに延在する端部を有し、角度βは、前記交連柱の外側表面および前記心室スカートの内側表面によって画定され、βは、前記第1のタブの前記基部が拘束されておらず、前記第1のタブの前記先端が拘束されていないときに最大化される、請求項1に記載の人工弁。
前記自己拡張式フレームと連結されている交連柱をさらに備え、前記交連柱は、半径方向内向きに延在する端部を有し、前記交連柱は、前記第1のタブの前記基部および前記第1のタブの前記先端が拘束されていない後に、送達カテーテルに連結されたままであるように適合させられている、請求項1に記載の人工弁。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の新規の特徴は、添付の請求項で詳細に記載される。本発明の特徴および利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される、例証的実施形態を記載する以下の発明を実施するための形態、および添付図面を参照することによって得られるであろう。
【0032】
【
図1】
図1は、矢印で収縮期中の血流を示す、心臓の左心室の概略図である。
【0033】
【
図2】
図2は、僧帽弁に逸脱弁尖を有する心臓の左心室の概略図である。
【0034】
【
図3】
図3は、心臓が拡張され、弁尖が交わらない、心筋症に罹患している患者の心臓の概略図である。
【0035】
【0036】
【0037】
【
図4】
図4は、損なわれた乳頭筋を有する心臓の左心室内の僧帽弁逆流を図示する。
【0038】
【0039】
【
図6】
図6は、フレームが平らにされて広げられている、人工心臓弁内の覆われていないフレームの例示的実施形態を図示する。
【0040】
【
図7】
図7は、フレームが平らにされて広げられている、人工心臓弁内の覆われていないフレームの別の例示的実施形態を図示する。
【0041】
【
図8】
図8は、フレームが平らにされて広げられている、人工心臓弁内の覆われていないフレームのなおも別の例示的実施形態を図示する。
【0042】
【
図9A】
図9Aは、拡張した後の人工心臓弁内の覆われていないフレームの斜視図を図示する。
【0043】
【0044】
【
図10】
図10は、被覆を伴い、それによって、人工心臓弁を形成する、
図9Aのフレームを図示する。
【0045】
【
図11A】
図11A−11Dは、人工心臓弁を経心尖的に送達するために使用される送達システムの例示的実施形態を図示する。
【
図11B】
図11A−11Dは、人工心臓弁を経心尖的に送達するために使用される送達システムの例示的実施形態を図示する。
【
図11C】
図11A−11Dは、人工心臓弁を経心尖的に送達するために使用される送達システムの例示的実施形態を図示する。
【
図11D】
図11A−11Dは、人工心臓弁を経心尖的に送達するために使用される送達システムの例示的実施形態を図示する。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【
図15】
図15A−15Bは、送達システムからの人工弁の解放を図示する。
【0050】
【
図16】
図16A−16Bは、送達システムからの人工弁の解放を図示する。
【0051】
【
図17】
図17A−17Bは、送達システムからの人工弁の展開を概略的に図示する。
【0052】
【
図18】
図18A−18Bは、人工弁、および人工弁の展開を制御する送達システムの実施形態を図示する。
【0053】
【
図19】
図19A−19Bは、人工弁、および人工弁の展開を制御する送達システムの別の実施形態を図示する。
【0054】
【
図20】
図20A−20Bは、人工弁、および人工弁の展開を制御する送達システムのさらに別の実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
ここで、図面を参照して、開示されるデバイス、送達システム、および方法の具体的実施形態を説明する。この詳細な説明では、いかなる特定の構成要素、特徴、またはことも、本発明に不可欠であると意図されない。
【0056】
心臓の生体構造。
収縮期の正常な心臓Hの左心室LVが、
図1で図示されている。左心室LVは、収縮しており、血液は、矢印の方向へ大動脈弁AV、三尖弁を通って外向きに流動する。僧帽弁は、左心室内の圧力が左心房LA内の圧力よりも高いときに逆流を防止する「逆止弁」として構成されるため、僧帽弁MVを通る血液の逆流動または「逆流」が防止される。僧帽弁MVは、
図1で図示されるように、閉鎖するように均等に交わる、遊離縁FEを有する一対の弁尖を備える。弁尖LFの反対端は、弁輪ANと称される環状領域に沿って、周辺心臓構造に付着している。尖LFの遊離縁FEは、弁尖LFのそれぞれの下面を覆って固着された複数の分岐腱を含む、腱索(chordae tendineae)CT(本明細書では「腱索(chordae)」とも称される)を通して、左心室LVの下部分に固着される。腱索CTは、ひいては、左心室および心室中隔IVSの下部分から上向きに延在する、乳頭筋PMに付着している。
【0057】
ここで
図2−4を参照すると、心臓内のいくつかの構造欠陥が、僧帽弁逆流を引き起こし得る。
図2に示されるように、不十分な張力が腱索を介して弁尖に伝達されるため、断裂した腱索RCTが、弁尖LF2を逸脱させ得る。他の弁尖LF1が正常な外形を維持する一方で、2つの弁尖は適正に交わらず、左心室LVから左心房LAの中への漏出が、矢印によって示されるように起こるであろう。
【0058】
逆流はまた、
図3に示されるように、心臓が拡張され、増大したサイズが、弁尖LFが適正に交わることを妨げる、心筋症に罹患している患者でも起こる。心臓の拡大は、僧帽弁輪を拡大させ、遊離縁FEが収縮期中に交わることを不可能にする。前尖および後尖の遊離縁は、通常、
図3Aに示されるように接合線Cに沿って交わるが、
図3Bに示されるように、有意な間隙Gが、心筋症に罹患している患者において残され得る。
【0059】
僧帽弁逆流はまた、
図4で図示されるように、乳頭筋PMの機能が損なわれている、虚血性心疾患に罹患した患者でも起こり得る。左心室LVが収縮期中に収縮すると、乳頭筋PMは、適正な閉鎖を達成するように十分接触しない。次いで、弁尖LF1およびLF2が、図示されるように逸脱する。再度、漏出が、矢印によって示されるように左心室LVから左心房LAへ起こる。
【0060】
図5Aは、前側ANTおよび後側POSTを有する二尖弁である、僧帽弁MVの生体構造をより明確に図示する。弁は、前(大動脈)尖ALおよび後(壁)尖PLを含む。腱索CTは、弁尖AL、PLを前外側乳頭筋ALPMおよび後内側乳頭筋PMPMと連結する。弁尖AL、PLは、前外側交連ALCおよび後内側交連PMCと称される線に沿って相互に接合する。弁輪ANは、弁尖を取り囲み、前尖の反対側で弁輪の前部分に隣接する2つの領域は、左線維三角LFT、また、右線維三角RFTと称される。これらの領域は、概して、黒三角形によって示される。
図5Bは、左右の線維三角LFT、RFTをより明確に図示する。
【0061】
種々の外科的技法ならびに埋込型デバイスが提案されており、僧帽弁逆流にとって有望な治療であると考えられるが、外科的アプローチは、長期の回復期間を必要とし得、埋込型デバイスには、様々な臨床結果がある。したがって、依然として、僧帽弁逆流を治療するための改良型デバイスおよび方法の必要性がある。本明細書で開示される実施形態は、僧帽弁逆流を治療するための埋込型人工僧帽弁を対象とするが、当業者であれば、これが限定的であることを目的とせず、本明細書で開示されるデバイスおよび方法はまた、三尖弁、大動脈、肺動脈弁等の他の心臓弁、ならびに静脈弁等の体内の他の弁、ならびに胃腸系、呼吸系の中の弁、および他の解剖学的弁を治療するために使用されてもよいことを理解するであろう。
【0062】
人工弁。
人工弁は、僧帽弁逆流の治療として、心臓に外科的に埋め込まれている。これらの弁のうちのいくつかは、ブタ弁等の動物から採取された弁であり、他の機械的弁は、剛性構成要素から製造され、さらに他の弁は、心膜組織から製造される。つい最近では、人工弁を心臓に送達するために、低侵襲技術が使用されている。これらの弁は、典型的には、弁を患者の心臓に固着するためのアンカーと、剛性弁、動物組織を伴う弁、またはそれらの組み合わせのいずれか一方である弁機構とを含む。
【0063】
人工弁は、いったん埋め込まれると、正常に機能していない天然弁の役割を引き継ぎ、それによって、弁閉鎖不全症を低減または排除する。これらの弁のうちのいくつかは有望と考えられるが、依然として、改良型弁の必要性がある。天然生体構造内に人工弁を位置付けて係留することが、課題のままである。以下は、既存の人工弁と関連付けられる課題のうちのいくつかを克服する、人工弁、人工弁用の送達システム、弁を送達する方法の例示的実施形態を開示する。
【0064】
図6は、折り畳み構成の人工心臓弁の例示的実施形態を図示する。フレームからの被覆(例えば、生地または組織)が、下層のフレーム600の観察を可能にするように除去されている。フレームは、広げられ、平らにされている。人工弁フレーム600は、心房領域606、環状領域608、および心室領域610を有する。フレーム600は、相互に対して拡張および収縮し、それによって、フレームが折り畳み構成で送達カテーテル上に装填され、次いで、埋込のための標的治療部位で半径方向に拡張されることを可能にすることができる、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱から形成される。好ましい実施形態は、自己拡張式であり、超弾性ニチノールまたは他の自己拡張式材料を使用して加工されてもよい。遷移温度以上で跳開する形状記憶合金もまた、使用されてもよく、フレームを開放するために塑性変形(例えば、バルーン膨張)が必要とされるときに、拡張可能な部材もまた、フレームを拡張するために使用されてもよい。
【0065】
心房領域606は、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱を含む、スカート616を有する。この領域中で、支柱は、相互に対して歪曲し、したがって、結果として生じるセルパターンは、拡大端を有し、反対側の端部は、より小さい端部まで先細になる。好ましい実施形態では、心房スカートの前部分は、後部分のようなフランジ付き領域を有さず、したがって、心房領域の前部分602は、後領域604よりも短い支柱を有してもよい。したがって、前部分における頂点および谷部は、心房領域の残りの後部分におけるものから軸方向にオフセットしている。これは、心房スカートの前部分における支柱が上向きに突出し、潜在的に左心房に対して衝突し、穿孔を引き起こすことを防止するため、有利であり得る。加えて、短縮された支柱ならびにオフセット頂点および谷部は、僧帽弁への人工弁の送達および人工弁の拡張に先立った人工弁の整合を可視化するように医師を支援することができる、整合要素614を形成する。随意的な放射線不透過性マーカー614aが、オフセット頂点および谷部の両側に配置され、さらに、弁の埋込中の可視化に役立つ。心房領域は、好ましくは、円筒形状まで自己拡張するか、または前部分602が実質的に平坦であり、後部分604が円筒形状である、D字形断面を有し得るかのいずれかである。これは、心房スカートが天然僧帽弁の生体構造に一致することを可能にし、それによって、大動脈の閉塞を防止する。加えて、心房スカートもまた、拡張時に、スカートが外向きに広がり、僧帽弁の上面に対して静置することができるフランジを形成するように、形成されてもよい。フランジ付き領域は、好ましくは、心房スカートの後部分に沿っており、心房スカートの前部分は、フランジがないままであり、大動脈衝突を防止するのにも役立つ。または、フランジは、完全に心房スカートの周囲に延在してもよい。心房領域は、好ましくは、直線状であり、フレームの長手方向軸と実質的に平行である接続支柱を用いて、隣接する環状領域608に接続される。
【0066】
環状領域608もまた、半径方向拡張を可能にする頂点および谷部を形成する、複数の軸方向に配向して相互接続された支柱から成る。支柱は、好ましくは、相互と平行であり、かつフレームの長手方向軸と平行である。環状領域はまた、自己拡張式であり、円筒形状に拡張してもよく、またはより好ましくは、環状領域は、心房領域に関して上記で説明されるようにD字形断面を有するように拡張してもよい。したがって、環状領域は、同様に、平坦な前部分、および円筒形状の後部分を有してもよい。送達時に、環状領域は、僧帽弁輪と整合させられ、それと係合するように拡張される。コネクタ支柱が、環状領域を心室領域610と接合する。
【0067】
心室領域610もまた、頂点および谷部を形成する複数の相互接続された支柱を含む。加えて、心室領域中の支柱は、人工弁尖を形成するように、生地、心膜組織、または他の材料で覆われる、弁尖交連613を形成する。交連内の穴は、縫合糸がそれに取り付けられることを可能にする。心室領域中の支柱はまた、僧帽弁前および後尖に係合するように外向きに拡張する心室スカート628も形成し、心室領域中の支柱はまた、前タブ624および後タブ630も形成する。前タブは、前タブの内側表面と心室スカートの外側表面との間で僧帽弁前尖を捕捉するように設計されている。任意の隣接する腱索もまた、その間に捕捉されてもよい。また、前タブの先端は、一方が左側、もう一方が右側で、僧帽弁の前部分上の線維三角に係合する。後タブは、同様に、任意の隣接する腱索とともに、後タブの内側表面と心室スカートの外側表面との間で僧帽弁後尖を捕捉する。これを以下でさらに詳細に説明する。
【0068】
フレームに沿って前または後タブの支柱長または軸方向位置を制御することによって、タブの展開が制御されてもよい。したがって、この例示的実施形態では、前タブおよび後タブ624、630内の支柱の長さ、ならびにフレームに沿ったそれらの相対位置が相互と同一であるため、拘束シースがタブから離れて後退させられたとき、前および後タブは、部分的にともに外向きに跳出するであろう。拘束シースがさらに後退させられると、前タブの残りの部分は、半径方向外向きに自己拡張するであろう。次いで、拘束シースのさらなる後退は、後タブの残りの部分が、その半径方向拡張を終えることを可能にし、最終的に、心室スカートが、半径方向外向きに拡張するであろう。後タブおよび心室スカートの支柱長および軸方向位置が類似する一方で、内部支柱が、心室スカートを交連と接続し、これは、心室スカートの拡張をわずかに遅延させ、したがって、後タブが心室スカートの前に拡張を終える。人工弁を展開するこの順序を使用することにより、弁がより正確に送達され、また、よりしっかりと定位置に係留されることを可能にし得る。
【0069】
縫合糸穴621は、心膜あるいはDacronまたはePTFE等のポリマー等のカバーの付着を可能にするように、環状領域ならびに心室領域の支柱に沿って配置される。縫合糸穴はまた、フレームの任意の他の部分に沿って配置されてもよい。返し623は、人工弁を隣接する組織に係留するのに役立つように、心室スカート628に沿って配置される。交連タブまたはタブ612は、交連613の先端の上に配置され、以下で説明されるように、交連を送達システムと解放可能に連結するために使用されてもよい。これは、フレームが最初に拡張することを可能にし、次いで、その後に交連が送達システムから解放されてもよい。当業者であれば、いくつかの支柱の幾何学形状が使用されてもよく、加えて、剛性、半径方向粉砕強度、交連偏向等の所望の機械的性質を補綴具に提供するために、長さ、幅、厚さ等の支柱の寸法が調整されてもよいことを理解するであろう。したがって、図示した幾何学形状は、限定的であることを目的としていない。
【0070】
フレームは、EDM、レーザ切断、光化学エッチング、または当技術分野で公知である他の技法によって形成されてもよい。皮下注射管または平板が、フレームを形成するために使用されてもよい。いったんフレームが切断されて円筒に形成されると、それは、所望の幾何学形状に半径方向に拡張され、形状を設定するように既知のプロセスを使用して熱処理されてもよい。したがって、人工弁は、折り畳み構成で送達カテーテル上に装填され、拘束シースを用いて折り畳み構成で拘束されてもよい。拘束シースの除去は、アンカーがその不偏事前設定形状に自己拡張することを可能にするであろう。他の実施形態では、アンカーをその好ましい拡張構成に半径方向に拡張するために、バルーン等の拡張可能な部材が使用されてもよい。
【0071】
図7は、折り畳み構成の人工心臓弁の別の例示的実施形態を図示し、以前の実施形態に類似し、主な違いは、前タブ、後タブ、および心室スカートにおける支柱長である。支柱長を変化させることにより、前および後タブならびに心室スカートの拡張の順序が制御されることを可能にする。フレームからの被覆(例えば、生地または組織)が、下層のフレーム700の観察を可能にするように除去されている。フレームは、広げられ、平らにされている。人工弁フレーム700は、心房領域706、環状領域708、および心室領域710を有する。フレーム700は、相互に対して拡張および収縮し、それによって、フレームが折り畳み構成で送達カテーテル上に装填され、次いで、埋込のための標的治療部位で半径方向に拡張されることを可能にすることができる、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱から形成される。好ましい実施形態は、自己拡張式であり、超弾性ニチノールまたは他の自己拡張式材料を使用して加工されてもよい。遷移温度以上で跳開する形状記憶合金もまた、使用されてもよく、フレームを開放するために塑性変形(例えば、バルーン膨張)が必要とされるときに、拡張可能な部材もまた、フレームを拡張するために使用されてもよい。
【0072】
心房領域706は、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱を含む、スカート716を有する。この領域中で、支柱は、相互に対して歪曲し、したがって、結果として生じるセルパターンは、拡大端を有し、反対側の端部は、より小さい端部まで先細になる。心房領域の前部分702は、後領域704よりも短い支柱を有する。したがって、前部分における頂点および谷部は、心房領域の残りの後部分におけるものから軸方向にオフセットしている。これは、医師が人工弁を僧帽弁に送達し、人工弁の拡張に先立って人工弁を整合させるのに役立つように、整合要素714の生成を可能にする。心房領域706の他の側面は、
図6の心房領域606のものに類似する。随意的な放射線不透過性マーカー714aが、オフセット頂点および谷部の両側に配置され、弁の埋込中の可視化に役立つ。心房領域は、好ましくは、円筒形状まで自己拡張するか、または前部分702が実質的に平坦であり、後部分704が円筒形状である、D字形断面を有し得るかのいずれかである。これは、心房スカートが天然僧帽弁の生体構造に一致することを可能にし、それによって、左心室流出路の閉塞を防止する。加えて、心房スカートもまた、拡張時に、スカートが外向きに広がり、僧帽弁の上面に対して静置することができるフランジを形成するように、形成されてもよい。フランジ付き領域は、好ましくは、心房スカートの後部分に沿っており、心房スカートの前部分は、フランジがないままである。または、フランジは、完全に心房スカートの周囲に延在してもよい。心房領域は、好ましくは、直線状であり、フレームの長手方向軸と実質的に平行である、接続支柱を用いて、隣接する環状領域708に接続される。
【0073】
環状領域708もまた、半径方向拡張を可能にする頂点および谷部を形成する、複数の軸方向に配向して相互接続された支柱から成る。支柱は、好ましくは、相互と平行であり、かつフレームの長手方向軸と平行である。環状領域はまた、自己拡張式であり、円筒形状に拡張してもよく、またはより好ましくは、環状領域は、心房領域に関して上記で説明されるようにD字形断面を有するように拡張してもよい。したがって、環状領域は、同様に、平坦な前部分、および円筒形状の後部分を有してもよい。送達時に、環状領域は、僧帽弁輪と整合させられ、それと係合するように拡張される。コネクタ支柱が、環状領域を心室領域710と接合する。
【0074】
心室領域710もまた、頂点および谷部を形成する複数の相互接続された支柱を含む。加えて、心室領域中の支柱は、人工弁尖を形成するように、生地、心膜組織、または他の材料で覆われる、弁尖交連713を形成する。交連内の穴は、縫合糸がそれに取り付けられることを可能にする。心室領域中の支柱はまた、僧帽弁前および後尖に係合するように外向きに拡張する心室スカート728も形成し、心室領域中の支柱はまた、前タブ724および後タブ730も形成する。前タブは、前タブの内側表面と心室スカートの外側表面との間で僧帽弁前尖を捕捉するように設計されている。任意の隣接する腱索もまた、その間に捕捉されてもよい。また、前タブの先端は、一方が左側、もう一方が右側で、僧帽弁の前部分上の線維三角に係合する。後タブは、同様に、任意の隣接する腱索とともに、後タブの内側表面と心室スカートの外側表面との間で僧帽弁後尖を捕捉する。これを以下でさらに詳細に説明する。
【0075】
フレームに沿って前または後タブの支柱長または軸方向位置を制御することによって、タブの展開が制御されてもよい。したがって、この例示的実施形態では、前タブおよび後タブ724、730内の支柱の長さ、ならびにフレームに沿ったそれらの相対位置が相互と同一であるため、拘束シースがタブから離れて後退させられたとき、前および後タブは、部分的にともに外向きに跳出するであろう。拘束シースがさらに後退させられると、前タブの残りの部分は、心室スカートおよび後タブにおける支柱に対して最も短いため、半径方向外向きに自己拡張するであろう。次いで、拘束シースのさらなる後退は、心室スカートが半径方向に拡張することを可能にし、最終的に、シースのさらなる後退は、後タブの残りの部分が、その半径方向拡張を終えることを可能にする。人工弁を展開するこの順序を使用することにより、弁がより正確に送達され、また、よりしっかりと定位置に係留されることを可能にし得る。
【0076】
縫合糸穴721は、心膜あるいはDacronまたはePTFE等のポリマー等のカバーの付着を可能にするように、環状領域ならびに心室領域の支柱に沿って配置される。縫合糸穴はまた、フレームの任意の他の部分に沿って配置されてもよい。返し723は、人工弁を隣接する組織に係留するのに役立つように、心室スカート728に沿って配置される。交連タブまたはタブ712は、交連713の先端の上に配置され、以下で説明されるように、交連を送達システムと解放可能に連結するために使用されてもよい。これは、フレームが最初に拡張することを可能にし、次いで、その後に交連が送達システムから解放されてもよい。当業者であれば、いくつかの支柱の幾何学形状が使用されてもよく、加えて、剛性、半径方向粉砕強度、交連偏向等の所望の機械的性質をアンカーに提供するために、長さ、幅、厚さ等の支柱の寸法が調整されてもよいことを理解するであろう。したがって、図示した幾何学形状は、限定的であることを目的としていない。フレームは、
図6に関して上記で説明されるように同様に形成されてもよい。
【0077】
図8は、折り畳み構成の人工心臓弁の別の例示的実施形態を図示し、以前の実施形態に類似し、主な違いは、後タブが、拡張して、後尖と心室壁との間の弁輪下領域との後タブの係合および係留を可能にする細長い水平区分を形成するように設計されていることである。したがって、細長い水平区分は、支柱の間の単一のヒンジから形成される先細先端のみを有する後タブと比較して、弁輪下領域のより広い領域に接触する。これは、人工弁の係留増進を提供する。この例示的実施形態では、前タブが、最初に完全に自己拡張し、それに続いて、後タブ、次いで、心室スカートが自己拡張する。しかしながら、状況によっては、送達システム、生体構造等の外部要因が、拡張の順序を変更し得、したがって、これは限定的であることを目的としていない。フレームからの被覆(例えば、生地または組織)が、下層のフレーム800の観察を可能にするように除去されている。フレームは、広げられ、平らにされている。人工弁フレーム800は、心房領域806、環状領域808、および心室領域810を有する。フレーム800は、相互に対して拡張および収縮し、それによって、フレームが折り畳み構成で送達カテーテル上に装填され、次いで、埋込のための標的治療部位で半径方向に拡張されることを可能にすることができる、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱から形成される。好ましい実施形態は、自己拡張式であり、超弾性ニチノールまたは他の自己拡張式材料を使用して加工されてもよい。遷移温度以上で跳開する形状記憶合金もまた、使用されてもよく、フレームを開放するために塑性変形(例えば、バルーン膨張)が必要とされるときに、拡張可能な部材もまた、フレームを拡張するために使用されてもよい。
【0078】
心房領域806は、一連の頂点および谷部を形成する、複数の相互接続された支柱を含む、スカート816を有する。この領域中で、支柱は、相互に対して歪曲し、したがって、結果として生じるセルパターンは、拡大端を有し、反対側の端部は、より小さい端部まで先細になる。心房領域の前部分802は、後領域804よりも短い支柱を有する。したがって、前部分における頂点および谷部は、心房領域の残りの後部分におけるものから軸方向にオフセットしている。これは、医師が人工弁を僧帽弁に送達し、人工弁の拡張に先立って人工弁を整合させるのに役立つように、整合要素814の生成を可能にする。心房領域806の他の側面は、
図6の心房領域606のものに類似する。随意的な放射線不透過性マーカー814aが、オフセット頂点および谷部の両側に配置され、弁の埋込中の可視化に役立つ。心房領域は、好ましくは、円筒形状まで自己拡張するか、または前部分802が実質的に平坦であり、後部分804が円筒形状である、D字形断面を有し得るかのいずれかである。これは、心房スカートが天然僧帽弁の生体構造に一致することを可能にし、それによって、左心室流出路の閉塞を防止する。加えて、心房スカートもまた、拡張時に、スカートが外向きに広がり、僧帽弁の上面に対して静置することができるフランジを形成するように、形成されてもよい。フランジ付き領域は、好ましくは、心房スカートの後部分に沿っており、心房スカートの前部分は、フランジがないままである。または、フランジは、完全に心房スカートの周囲に延在してもよい。心房領域は、好ましくは、直線状であり、フレームの長手方向軸と実質的に平行である、接続支柱を用いて、隣接する環状領域808に接続される。
【0079】
環状領域808もまた、半径方向拡張を可能にする頂点および谷部を形成する、複数の軸方向に配向して相互接続された支柱から成る。支柱は、好ましくは、相互と平行であり、かつフレームの長手方向軸と平行である。環状領域はまた、自己拡張式であり、円筒形状に拡張してもよく、またはより好ましくは、環状領域は、心房領域に関して上記で説明されるようにD字形断面を有するように拡張してもよい。したがって、環状領域は、同様に、平坦な前部分、および円筒形状の後部分を有してもよい。送達時に、環状領域は、僧帽弁輪と整合させられ、それと係合するように拡張される。コネクタ支柱が、環状領域を心室領域810と接合する。
【0080】
心室領域810もまた、頂点および谷部を形成する複数の相互接続された支柱を含む。加えて、心室領域中の支柱は、人工弁尖を形成するように、生地、心膜組織、または他の材料で覆われる、弁尖交連813を形成する。交連内の穴は、縫合糸がそれに取り付けられることを可能にする。心室領域中の支柱はまた、僧帽弁前および後尖に係合するように外向きに拡張する心室スカート828も形成し、心室領域中の支柱はまた、前タブ824および後タブ830も形成する。前タブは、前タブの内側表面と心室スカートの外側表面との間で僧帽弁前尖を捕捉するように設計されている。任意の隣接する腱索もまた、その間に捕捉されてもよい。また、前タブの先端は、一方が左側、もう一方が右側で、僧帽弁の前部分上の線維三角に係合する。後タブは、同様に、任意の隣接する腱索とともに、後タブの内側表面と心室スカートの外側表面との間で僧帽弁後尖を捕捉する。これを以下でさらに詳細に説明する。後タブは、この実施形態では、後タブが2本の相互接続された支柱とは対照的に、4本の相互接続された支柱を備えることを除いて、
図6−7において上記で説明される後タブに類似する。したがって、この実施形態では、複数の相互接続された支柱が、タブに沿って3つのヒンジ連結領域836を形成する。後タブの拡張時に、ヒンジ連結領域も拡張し、それによって、後尖と心室壁との間の弁輪下領域との後タブの係合および係留を可能にする、細長い水平区分を形成するであろう。これは、僧帽弁の後部分と係合するためのより小さい設置面積または単一の先細先端のみを有する後タブよりも良好に人工弁を位置付け、係留するのに役立ち得る。この実施形態での後尖は、本明細書で説明される他の後タブのうちのいずれかと置換されてもよい。
【0081】
フレームに沿って前または後タブの支柱長または軸方向位置を制御することによって、タブの展開が制御されてもよい。したがって、この例示的実施形態では、前タブおよび後タブ824、830内の支柱の長さ、ならびにフレームに沿ったそれらの相対位置が相互と同一であるため、拘束シースがタブから離れて後退させられたとき、前および後タブは、部分的にともに外向きに跳出するであろう。拘束シースがさらに後退させられると、前タブの残りの部分は、心室スカートおよび後タブにおける支柱に対して最も短いため、半径方向外向きに自己拡張するであろう。次いで、拘束シースのさらなる後退は、後タブの残りの部分が自己拡張し終えることを可能にし、心室スカートの自己拡張が続く。人工弁を展開するこの順序を使用することにより、弁がより正確に送達され、また、よりしっかりと定位置に係留されることを可能にし得る。
【0082】
縫合糸穴821は、心膜あるいはDacronまたはePTFE等のポリマー等のカバーの付着を可能にするように、環状領域ならびに心室領域の支柱に沿って配置される。縫合糸穴はまた、フレームの任意の他の部分に沿って配置されてもよい。返し823は、人工弁を隣接する組織に係留するのに役立つように、心室スカート828に沿って配置される。交連タブまたはタブ812は、交連813の先端の上に配置され、以下で説明されるように、交連を送達システムと解放可能に連結するために使用されてもよい。これは、フレームが最初に拡張することを可能にし、次いで、その後に交連が送達システムから解放されてもよい。当業者であれば、いくつかの支柱の幾何学形状が使用されてもよく、加えて、剛性、半径方向粉砕強度、交連偏向等の所望の機械的性質を補綴具に提供するために、長さ、幅、厚さ等の支柱の寸法が調整されてもよいことを理解するであろう。したがって、図示した幾何学形状は、限定的であることを目的としていない。フレームは、上記で説明されるように同様に形成されてもよい。
【0083】
図9Aは、拡張された後の人工心臓弁のフレーム900を図示する。上記のフレームのそれぞれが、類似幾何学形状を有するが、異なる順番で拡張するため、上記で説明されるフレームの実施形態のうちのいずれかは、この形態を成してもよい。フレームは、前部分914および後部分916を伴う心房スカート906を含む。フランジ付き領域が、後部分の周囲に形成され、前部分は、フランジがないままである。加えて、前部分が、略平坦である一方で、後部分は、円筒形状であり、それによって、僧帽弁の生体構造に適応するD字形断面を形成する。
図9Bは、
図9Aの実施形態の上面図であり、D字形断面をより明確に図示する。
【0084】
フレームはまた、環状領域910および心室スカート912も含む。前タブ904(この図では1つだけが可視的である)は、前タブの内側表面と心室スカートの外側表面との間に空間が存在するように、完全に拡張される。これは、前尖および隣接する腱索がその間に捕捉されることを可能にする。同様に、後タブ902の内側表面と心室スカートの外側表面との間に類似空間を伴って、後タブ902も完全に展開される。これは、後尖および隣接する腱索がその間に捕捉されることを可能にする。交連柱908もまた、可視的であり、フレームによって形成される内側チャネルの中に配置される。交連柱は、人工僧帽弁尖を形成するために使用される。拡張したフレームの全体的形状は、前部分が平坦で後部分が円筒形状である、D字形である。
【0085】
図10は、心膜組織、またはePTFE等のポリマー、あるいはDacronのような生地等のカバー1002がフレームに取り付けられ、それによって、人工心臓弁1000を形成する、拡張したフレームを図示する。心房スカートは、材料によって完全に覆われてもよく、または好ましい実施形態では、被覆は、心房スカートのフランジ付き部分の中の隣接セル内の隣接支柱1012の間にのみ配置される。同一のセル内の隣接支柱の間の領域1014は、覆われないままとなる。これは、人工弁が埋め込まれている間に血流が実質的に途切れないままとなることを可能にする。縫合糸1010が、カバーをフレームに取り付けるために使用されてもよい。この図では、後タブ1006のみが、心室スカート1008および心房スカート1004とともに、人工弁の後部分上で可視的である。
【0087】
人工弁は、心房スカート、環状領域、および心室スカートを使用して、天然僧帽弁に係留される。前および後タブはさらに、前および後尖に係合することによって、人工弁を僧帽弁に係留する。弁尖が動いているため、弁尖に係合することは困難であり得る。本明細書で開示される係留構造およびそれらの展開の順序に加えて、デバイスの展開中に心臓の関連生体構造を失敗なく捕捉および保持するために、人工弁展開の他の側面が制御されてもよい。これらのうちのいくつかは、レーザ切断プロセスを通して達成される人工弁フレームの特定の幾何学形状の慎重かつ細心の設計、フレームの形状設定を通して達成されるフレームの特定の幾何学形状、および制御可能な様式でフレームと相互作用するように設計されている特殊構成要素を有する送達システムとのフレームの特定の部分の相互作用を含む。
【0088】
図14は、前尖ALおよび後尖PLを有する僧帽弁MVの中で部分的に展開された人工弁1408を図示する。図の拡大区分は、部分的展開状態のタブを強調表示し、次いで、完全展開状態のタブも図示する。図示されるタブは、人工弁上の前または後タブであってもよい。送達システム1402は、左心室LVおよび右心房RAに及ぶようにガイドワイヤGWを経由して経心尖的に送達されている。送達システム外側シース1404が後退させられると、心房スカート1410は、環状領域1412および心室スカート1414とともに、説明されるように展開する。外側シース1404は、前および後タブ1406の基礎部分を拘束し、それによって、タブが、心房スカートの後に、補綴具の長手方向軸と直角である水平な位置または実質的に水平な位置まで半径方向外向きに部分的に拡張することを可能にする。これは、心房スカート1410の縁とタブ1406の先端との間に、弁尖を受け取ることができる窓1416を生成する。好ましくは、この窓間隙は、弁尖が窓に進入することを確実にするために可能な限り幅広い。いったん外側シース1404が完全に後退させられると、心室スカート1414は、タブ1406とともに完全に展開する。タブの基礎部分が、外側シースの拘束から解放され、これは、タブが、その水平な位置または実質的に水平な位置からより垂直な位置まで、半径方向外向きにさらに拡張することを可能にする。より垂直な位置は、補綴具の長手方向軸と平行または実質的に平行であり得、依然として、補綴具の長手方向軸と直角であり得るが、その間の角度は、タブの基礎部分が解放されたときに対して低減させられる。したがって、タブ1406の先端はまた、心房スカート1410の縁により近づき、それによって、窓1416を閉鎖し、弁尖がその中で係合されるであろうことを確実にするのに役立つ。したがって、展開中の最大間隙および完全展開後の最小間隙を確保するように、展開中に窓サイズを制御することが望ましいであろう。
【0089】
図15A−15Bは、送達システムからの人工弁の解放、また、弁尖受け取り窓の構成が展開の種々の段階中にどのようにして変化するかを図示する。
図15Aでは、送達システム1402の外側シース1404は、心房スカート1410および環状領域1412が既に自己拡張しているように、人工弁から離れて部分的に後退させられている。同様に、心室スカート1414が、心室タブ1406とともに部分的に自己拡張している。心室タブ1406は、前タブまたは後タブであってもよい。心室タブ1406の先端1406aが、拘束されておらず、補綴具の長手方向軸と直角である、ほぼ水平な位置または実質的に水平な位置まで半径方向外向きに自己拡張する一方で、心室タブ1406の基部1406bは、外側シース1404の先端1404aの下で拘束されたままである。交連柱1420の一方の端部が、送達カテーテル上の受け取り部1422の中にとどまり、これが、内側カテーテル1424を覆って配置されるベルカテーテル1418によって拘束されるため、交連柱1420は、人工弁を送達カテーテルと連結する。したがって、
図15Aでは、窓1416が、タブ1406の先端1406aと心房スカート1410の縁1410aとの間に形成される。先端1406aと縁1410との間の間隙は、弁尖の受け取りを可能にするために、この位置で最大である。次いで、弁尖は、心房スカート1410の内側表面、環状領域1412の外側表面、心室スカート1414の外側表面、および心室タブ1406の内側表面によって形成される弁尖受け取り部の中で受け取られる。
【0090】
図15Bでは、外側シース1404は、さらに後退させられており、それによって、外側シース1404の拘束から心室タブ1406の基部1406bを解放し、心室スカート1414および心室タブ1406が半径方向外向きにさらに自己拡張することを可能にしている。したがって、基部1406bは、外向きに自己拡張し、送達システムから離れて枢動または揺動する。これは、上向きに移動し、心房スカート1410の縁1410aにより近づくように、心室タブ1406の先端1406aを回転および平行移動させ、それによって、間隙を縮小し、窓1416を少なくとも部分的に閉鎖する。タブはまた、その水平な位置または実質的に水平な位置から、補綴具の長手方向軸と平行または実質的に平行であり得る、より垂直な位置まで、半径方向外向きに拡張し、かつ依然として補綴具の長手方向軸と直角であり得る。したがって、タブと心室スカートとの間の角度は、タブの基礎部分が解放されたときに対して低減させられ、窓は、好ましくは、弁尖が弁尖受け取り部の中で係合させられるように十分に閉鎖し、それによって、人工弁を弁尖に係留する。交連柱1420は、本明細書の中の他の場所で説明されるように、後にベルカテーテルが後退させられるまで、送達システムに連結されたままである。この説明は、1つの心室タブのみを説明するが、当業者であれば、同一の開示が、人工弁の中の全ての心室タブ、例えば、本明細書の実施形態で説明される2つの前タブおよび1つの後タブに該当し得ることを理解するであろう。
【0091】
図16A−16Bは、
図15Aに類似するが、人工弁の展開に関連する位置照準情報を提供する。特徴が、議論を容易にするために標識されている。目印は、人工弁の展開中に行われる機械的相互作用の説明を補助するために使用される。いかなる特定の理論によっても拘束されないが、以下の変数および動作機構が、人工弁の相互作用および展開に関連すると考えられ、それらは以下のように標識されている。
A=送達システムの受け取り部内の弁交連の係留点
B=心室スカートの中への交連柱の挿入点
C=心房スカートの縁
D=心室タブの先端
E=心室タブの中への心室スカート支柱の挿入点
F=外側シースカテーテルの前縁
G=ベルカテーテルとの心室タブの基部の接触点
Z=点CおよびDの間の垂線距離
β=線ABと線BEとの間の角度
α=線BEと線EDとの間の角度
ψ
1=外側シースカテーテルの外径
ψ
2=ベルカテーテルの外径
【0092】
図17A−20Bは、送達システムのそれぞれの特徴との人工弁の種々の側面の相互作用を検討する目的で、人工弁および送達システム、ならびに種々の代替実施形態を概略的に図示する。これらの説明図は、ステントの全ての関連構造の単純概略図を提供し、存在する固有の固体機械的変形をさらに詳述することを目的としている。本説明図は、人工弁の解放および展開を引き起こす機構を視覚的に単純化し、また、人工弁および/または送達システムの幾何学的および機械的操作を通して展開を制御する代替実施形態を説明するための枠組みを提供する。
【0093】
図17Aは、送達システムから部分的に展開された人工弁を図示する。したがって、
図17Aでは、EDによって画定される心室タブは、上記で以前に説明されたように、水平または実質的に水平に延在する。
図17Bは、送達システムからの完全な解放ではないが、さらなる展開後の人工弁を図示する。心室タブは、垂直に配向され、上記で以前に説明されたように補綴具の長手方向軸と平行または実質的に平行であるように、位置を変化させる。点CおよびDを水平な平行面内に位置させる。点CおよびDの間の垂線距離をZ
1と称する。人工弁の展開中に天然僧帽弁尖を失敗なく受け取り、それに係合するために、Z
1は、好ましくは最大化される。この理由は単純である。点C、B、E、およびDによって境界を画定される領域は、弁尖受け取りおよび係合が起こる窓、受け取り部、または空間と考えることができ、天然弁尖が展開後に静置するであろう空間(
図17BのC、B、E、Dによって境界を画定される領域)になるであろう。したがって、窓(Z
1)が大きくなるほど、展開中に弁尖を捕捉する可能性が高くなる。
図17Bで見られるように、最終展開後構成は、Z
2がZ
1より大幅に小さいことを明らかにし、心室タブ(前タブまたは後タブ、あるいは他のタブ)が天然僧帽弁尖に関して有する「ラッチ」または「把持」効果を例証する。好ましい実施形態がZ
1の最大化を可能にするであろうため、最大窓サイズを得るために使用され得る技法および方法が、以下で説明される。
【0094】
図17Aに示されるように、および人工弁の形状設定に関して、Z
1を最大化するために操作することができる、少なくとも3つの属性がある。いかなる変更も、Bによって特定される点の上方に任意の幾何学形状を含む人工弁の心房側に行われないであろうと仮定されたい。
【0095】
第1の属性については、分岐EDへの修正を行うことができる。徐々にEBから離れてEDを下方に湾曲することによって、点Dが実質的に下げられ、距離Z
1がより大きくなる。角度α
1はまた、EBからより大きい角度で分岐EDを形状設定し、点Eで屈曲を開始し、EDが点Eの周囲で回転することを可能にすることによって、増加させることもできる。
【0096】
第2の属性は、分岐BEの長さである。全ての分岐は不変のままであり、分岐BEがより長くさせられた場合、分岐FEDを押さえつけ、点Fの周囲でそれを回転させ、α
1を増加させる傾向がある。
【0097】
第3の属性は、分岐EGの形状、および点Fとのその相互作用である。心室タブが解放されると、基部(分岐EG)が、外側シースカテーテルの前縁を表す点Fに沿って引っ張られる。分岐EBから離れて分岐EGを下方に湾曲することによって、心室タブがその解放を遅延させられる(非常に有用な特性)とともに、より大きいα
1で展開させられる。分岐GDの長さを維持しながら分岐EGの長さを縮小することはまた、分岐EBおよびEDの間の角度変位を増幅する、梃子の効果を有する。概略図では、これは、心室タブの付着点(E)を点Fに近づけることによって達成される。したがって、Eの周囲のEGの任意の角度変位が増幅され、分岐EDの角度変位(α
1)が増加するであろう。実践では、この効果はまた、送達システムの特定の部分の幾何学形状への微妙な操作によって生成することもでき、これらの操作は、以下でさらに詳細に説明される。
【0098】
図18A−20Bは、窓サイズZ
1を最大化するのに役立つ特徴を有する、人工弁および送達システムの種々の実施形態を概略的に図示する。再度、いかなる変更も、Bによって特定される点の上方に任意の幾何学形状を含む人工弁の心房側に行われないであろうと仮定されたい。これらの場合において、Z
1に影響を及ぼすために使用される全ての方法は、人工弁の幾何学形状への操作または形状設定手技を通してではなく、人工弁と送達システムとの間の相互作用を通してもたらされる。心房スカートまたはフランジが、最初に展開して心房の中に補綴具を係留し、次いで、補綴具の残りの部分が、僧帽弁輪および心室に係留される。心室タブは、上記で説明されるように同様に展開し、最初に部分的に展開されたとき、それは水平または実質的に水平であり、タブが送達システムから解放された後、タブは、補綴具の長手方向軸と平行または実質的に平行であるように、より垂直に移動する。
【0099】
図18Aは、分岐EGおよびEDの間で見られる梃子の効果を利用する、第1の実施形態を図示する。
図18Bで見られる点GおよびFの間の水平距離を減少させることによって、角度変位(α
1)が再度、増加させられる。しかしながら、この場合、変化は、ベルカテーテル1418に近づけ、それによって、分岐FGを短縮するように作用する、外側シースカテーテル1404の直径の縮小によってもたらされる。この場合、人工弁修正が採用されるときの点Eとは対照的に、支点が点Fでより容易に感じられる。
図18Bは、この実施形態、および結果として生じたより大きい窓Z
1を概略的に図示する。
【0100】
図19A−19Bは、窓サイズZ
1を増加させるための第2の実施形態を図示する。第2の属性は、シースカテーテル1404の前縁に採用することができる、カム作用を利用する。
図19Aでは、カム付き内側表面1902が図示されている。このカム付き内側表面1902は、人工弁上の分岐FGの規定形状と相互作用し、分岐EDによって具現化される、平行移動フォロワの精密制御の目的で平行移動カムの役割を果たす、環状内側フランジまたは他の構造であってもよい。角度変位(
【化1】
)および角度変位(α
1)の速度の両方は、この点に関してカム作用の使用によって制御することができる。したがって、展開中に観察される心室タブの反跳の速度は、より正確に制御することができるが、依然として、それが作製される材料のばね剛性に大きく依存している。
図19Bは、展開中に、カムが心室タブの先端により水平な位置を帯びさせるため、より幅広い窓Z
1の形成を促進する、展開中の心室タブの基部とのカム1902の係合を促進する。
【0101】
図20A−20Bは、窓サイズZ
1を増加させるためのさらに別の実施形態を図示する。第3の属性は、点GおよびFの間の心室タブの基部の部分と相互作用する、プッシャ要素2012等の押勢機構の形態を成す。Gの場所で人工弁に直接上向きに力を印加することによって、点Eの周囲でのEDの回転に、制御可能な様式で直接影響を及ぼすことができる。
図20Bは、心室タブの基部に押し付け、それによって、窓Z
1をさらに開放するプッシャ要素2012を図示する。
【0102】
送達システム。
図11A−11Dは、本明細書で開示される人工心臓弁のうちのいずれかを送達するために使用され得る、送達システムの例示的実施形態を図示する。送達システムの作動は、本明細書内の他の場所で説明されるように、人工心臓弁が展開されることを可能にする。送達システムは、好ましくは、人工心臓弁を経心尖的に送達するように設計されているが、当業者であれば、それはまた、経中隔経路を使用する等して、人工弁がカテーテルを介して経管腔的に送達され得るように修正されてもよいことを理解するであろう。当業者であれば、経中隔経路を使用することは、僧帽弁に対する送達システムの位置に適応するために、種々のシャフトの相対的運動が修正されることを要求し得ることを理解するであろう。
【0103】
図11Aは、送達システム1100の斜視図を図示する。送達システム1100は、送達システムの近位端の付近のハンドル1112と、遠位組織貫通先端1110とを含む。4本の細長いシャフトが送達システムに含まれ、外側シースカテーテルシャフト1102と、外側シースカテーテルシャフト1102の中に摺動可能に配置されるベルカテーテルシャフト1104と、他のシャフトに対して静止したままであるが、ベルカテーテルシャフトがハブシャフトに対して摺動する、ハブカテーテルシャフト1106と、最終的に、他のシャフトに対して固定もされ、それを通過して遠位組織貫通先端から退出するガイドワイヤを受け取るようにサイズ決定される管腔を有する、内側ガイドワイヤカテーテルシャフト1108とを含む。アクチュエータ機構1114は、以下でさらに詳細に説明されるように、種々のシャフトの移動を制御するために使用され、ルアーコネクタを伴う洗浄ライン1116、1118が、隣接シャフトの間の環状領域を洗浄するために使用される。洗浄ライン1118は、外側シースカテーテルシャフト1102とベルカテーテルシャフト1104との間の環状空間を洗浄するために使用される。洗浄ライン1116は、ベルカテーテル1104とハブカテーテル1106との間の環状空間を洗浄するために使用される。内側ガイドワイヤカテーテルシャフト1108は、ハブカテーテル1106に対して静止しており、したがって、環状空間は、Oリングまたは他の材料で密閉されてもよい。ルアーコネクタ1122は、ガイドワイヤ管腔の洗浄を可能にし、止血を維持しながら、ガイドワイヤがガイドワイヤカテーテルシャフトを通して前進させられることを可能にするように、Tuohy−Borst等の止血弁が、ルアーコネクタに連結されてもよい。ネジ1120は、ともに連結されたままハンドル筐体を保つ。
図11Bは、送達システム1100の側面図を図示する。
【0104】
図11Cは、送達システム1100の部分分解図であり、ハンドル1112の中の構成要素およびそれらがどのようにして相互作用するかをより明確に図示する。ハンドル1112は、全ての構成要素を保持する2つの半体1112a、1112bを有する、筐体を含む。ハンドルは、好ましくは、ネジ1120およびナット1120bを用いてともに保持されるが、また、圧入、スナップ留め、接着接合、超音波溶接等の他の技法を使用して密閉されてもよい。アクチュエータホイール1114の回転は、ネジ山付き挿入物1124の直線運動に変換される。外側シースカテーテルシャフト1102は、ネジ山付き挿入物1124に連結され、したがって、1つの方向へのアクチュエータホイール1114の回転は、シースカテーテルシャフト1102を前進させ、反対方向への回転は、シースカテーテルシャフト1102を後退させるであろう。アクチュエータホイール1114のさらなる回転は、挿入物1128に連結されているピン1126に衝突し、それによって、挿入物1128も移動させるほど十分にネジ山付き挿入物1124を後退させる。ベルカテーテルシャフト1106は、挿入物1128に連結され、したがって、アクチュエータホイール1114のさらなる回転は、外側シャフト1102を移動させ、また、ベルカテーテルシャフト1106も移動させるであろう。
反対方向へのアクチュエータホイールの回転は、シースを前進させ、ネジ山付き挿入物1124は、ピン1126から係脱する。バネ1130は、挿入物1128をその不偏位置に戻し、それによって、ベルカテーテルシャフトをその不偏位置に戻す。
【0105】
本明細書で開示される人工心臓弁のうちのいずれかは、送達システム1100によって運搬されてもよい。心房スカート、環状スカート、前タブ、後タブ、および心室スカートは、ベルカテーテルシャフトを覆って装填され、外側シースカテーテルシャフト1102の下に配置される。心室スカートは、ハンドル1112に最も近いように近位に装填され、心房スカートは、先端1110に最も近いように最も遠位に装填される。したがって、外側シースカテーテルシャフト1102の後退は、人工心臓弁の展開を制御することに有意な役割を果たす。したがって、心房スカートは、外側シースカテーテルが後退させられたときに最初に拡張する。人工弁交連は、ハブカテーテル1106の遠位部分上でハブ1106aと連結されてもよく、次いで、ベルカテーテルシャフトは、それを覆って配置され、それによって、交連を送達カテーテルと解放可能に係合させる。いったん人工心臓弁の他の部分が拡張すると、交連が解放されてもよい。
【0106】
図11Dは、送達システム1100の遠位部分を強調表示する。外側シースカテーテルシャフト1102は、外側シースカテーテルシャフト1102の中に摺動可能に配置される、ベルカテーテルシャフト1104に対して前進および後退する。ハブカテーテルシャフト1106は、人工弁交連を保持するスロット1106bを有するハブ1106aを露出するよう、ベルカテーテルシャフト1104が後退させられた状態で、ベルカテーテルシャフト1104の中に摺動可能に配置されて示されている。内側ガイドワイヤカテーテルシャフト1108は、最内シャフトであり、人工弁の円滑な移行を提供し、人工心臓弁フレームの不要な屈曲または座屈を防止する、先細円錐区分1130を有する。組織貫通先端1110は、特に、心臓の経心尖手技で、組織を貫通するように適合させられている。
【0107】
送達方法。
いくつかの方法が、人工心臓弁を心臓に送達するために使用されてもよい。人工僧帽弁を送達する例示的方法は、心臓の右および左側の間の中隔を横断する経中隔技法でもあり得る、経管腔送達経路を含んでもよく、またはより好ましい実施形態では、
図12A−12Lで図示されるような経心尖経路が使用されてもよい。上記で以前に説明された送達デバイスが、本明細書で説明される人工弁の実施形態のうちのいずれかを送達するために使用されてもよく、または参照することにより本明細書に以前に組み込まれた、米国特許出願第13/096,572号で開示されるもの等の他の送達デバイスおよび他の人工弁もまた、使用されてもよい。しかしながら、この好ましい例示的実施形態では、前タブが最初に展開し、それに続いて後タブ、次いで、心室スカートが展開するように、
図6の人工心臓弁が使用される。
【0108】
図12Aは、左心房LAおよび左心室LVを含む、患者の心臓の左側の基本生体構造を図示する。肺静脈PVが、肺からの血液を左心房に戻し、次いで、血液が、左心房から僧帽弁MVを横断して左心室の中へ送出される。僧帽弁は、弁の前側Aに前尖ALと、弁の後側Pに後尖PLとを含む。弁尖が、腱索CTに付着し、後に、腱索は乳頭筋PMで心臓壁に固着される。次いで、血液が、逆流を防止する大動脈弁AVを伴う大動脈AOの中へ左心室から送出される。
【0109】
図12Bは、左心房LAの中への心尖を通した送達システム1202の経心尖送達を図示する。送達システム1202は、ガイドワイヤGWを経由して左心房の中へ前進させられてもよく、組織貫通先端1204は、組織を拡張し、送達システムの残りの部分が通過するためにより大きいチャネルを形成することによって、送達システムが心尖を通過するのに役立つ。送達カテーテルは、人工心臓弁1208を運搬する。いったん送達システムの遠位部分が左心房の中へ前進させられると、外側シース1206は、近位に(例えば、オペレータに向かって)後退させられてもよく、それによって、人工弁1208の心房部分から拘束を除去してもよい。これは、心房スカート1210が最初に半径方向外向きに自己拡張することを可能にする。
図12Cでは、外側シースがさらに後退させられると、心房スカートは、
図12Dで見られるように完全に展開するまで、自己拡張し、その一部が見え続ける。心房スカートは、円筒形状を有してもよく、または大動脈弁および左心室流出路の他の側面に干渉することを回避するよう、平坦な前部分および円筒形の後部分を伴って、上記で議論されるようなD字形であり得る。人工心臓弁は、心房スカートを適正に位置付けるように上流または下流に前進させられてもよい。好ましい実施形態では、心房スカートは、僧帽弁の上面に対して静置するフランジを形成し、これは、人工弁を係留し、左心室の中への不要な下流の移動を防止する。補綴具を動く弁尖に係留することは困難であり、典型的には、最初に行われ、その後に、より容易であり得る心房係留が続くであろうため、最初に心房の中に補綴具を係留することは予想外である。しかしながら、最初の心房係留は、補綴具をよりしっかりと定着させるのに役立つことができる。当然ながら、当業者であれば、補綴具は、使用される送達システム、ならびに補綴具自体の設計に基づいて、任意の所望の順番で展開されてもよいことを認識するであろう。したがって、現在の人工弁は、以前の人工弁とは異なってそれ自体を係留してもよい。以前の人工弁は、送達システムから抜くことによって送達され、次いで、弁尖の後ろで定位置に引かれてもよく、その後に心房係留が続くという点で、受動的に係留されてもよい。この理由により、弁尖アンカーが最初に展開される必要があり、その後に、比較的平坦な心房底により、展開することがより容易である心房アンカーが続く。本実施形態では、アンカーが展開順序中に位置および配向を変化させて心室構造を捕捉し、それによって、以前の人工弁からの逆係留順序の使用を可能にするため、能動係留が利用される。
【0110】
外側シース1206が近位に後退させられ続けると、人工心臓弁の環状領域が、次に、弁輪と係合するように自己拡張する。環状領域もまた、好ましくは、D字形幾何学形状を有するが、また、円筒形であり得るか、または天然生体構造に合致する他の幾何学形状を有してもよい。
図12Eでは、シース1206の後退は、最終的に、好ましくは、前または後尖あるいは腱索に係合することなく、前1212および後1214タブの両方が部分的に外向きに自己拡張することを可能にする。タブは、最初に、補綴具の長手方向軸と直角である、水平または実質的に水平な位置に外向きに拡張する。この実施形態では、次いで、外側シース1206のさらなる後退は、
図12Fで図示されるように、前尖が前タブのそれぞれの内側表面と心室スカート1216の外側表面との間に捕捉されるように、前タブ1212(この図では1つだけが可視的である)がそれらの自己拡張を完了することを可能にする。前タブは、補綴具の長手方向軸と平行または実質的に平行である、より垂直な位置に拡張する。タブは、依然として補綴具の長手方向軸と直角であり得る。後タブ1214は、部分的に開いたままであるが、その拡張をまだ完了していない。加えて、前タブの先端はまた、以下でさらに詳細に図示されるように、僧帽弁の左右の線維三角の中に係留する。
【0111】
図12Gでは、次いで、外側シース1206のさらなる後退は、後タブ1214から拘束を解放し、その自己拡張を完了することを可能にし、それによって、後タブ1214の内側表面と心室スカート1218の外側表面との間で後尖PLを捕捉する。したがって、後タブは、水平な位置または実質的に水平な位置から、補綴具の長手方向軸と平行または実質的に平行である、より垂直な位置まで移動する。
図12Hでは、シースがさらに後退させられ、心室スカート1220を解放し、心室スカート1220が半径方向外向きに拡張することを可能にし、さらに、心室スカートの外側表面とそれぞれの前または後タブとの間で前および後尖を捕捉する。心室スカートの拡張はまた、前および後尖を外向きに押し、それによって、天然弁尖が人工弁または人工弁尖のいかなる部分にも干渉しないことを確実にする。ここで、人工弁は、僧帽弁の上方に、弁輪に沿って、弁尖に、および僧帽弁の下方に定位置で係留され、それによって、それを定位置で固着する。
【0112】
送達デバイスのさらなる作動は、
図12Iで図示されるように、ハブカテーテル1224から拘束を除去するよう、外側シース1206およびベルカテーテルシャフト1222を後退させる。これは、人工弁交連1226がハブカテーテルから解放されることを可能にし、したがって、交連がそれらの付勢構成まで拡張する。次いで、人工弁1208を定位置に残して、送達システム1202およびガイドワイヤGWが除去され、そこで、
図12Jで見られるように、天然僧帽弁の役割を引き継ぐ。
【0113】
図12Kおよび12Lは、それぞれの前および後尖との前および後タブの係合を強調表示する。
図12Kでは、前タブ1212が完全に拡張された後、それらは、前タブの内側表面と心室スカート1220の外側表面との間に前尖ALおよび隣接する腱索を捕捉する。また、前タブ1212の先端1228は、僧帽弁の前側の線維三角FTと係合させられる。線維三角は、弁の線維性領域であり、したがって、前タブはさらに、天然僧帽弁生体構造の中へ人工弁を係留する。一方の前タブが、左線維三角の中へ係留し、他方の前タブが、右線維三角の中へ係留する。三角は、弁尖の前側の反対側にある。
図12Lは、後タブの内側表面と心室スカート1220の外側表面との間で捕捉される後尖PLとの後タブ1214の係合を図示する。加えて、隣接する腱索もまた、後タブと心室スカートとの間で捕捉される。
【0114】
図13A−13Lは、送達方法の別の例示的実施形態を図示する。この実施形態は、以前に説明されたものに類似し、主な違いは、人工心臓弁が僧帽弁と係合するように自己拡張する順番である。本明細書で開示される任意の送達デバイスまたは任意の人工心臓弁が使用されてもよいが、好ましい実施形態では、
図7の実施形態が使用される。順番を変化させることにより、インプラントのより良好な位置付け、弁尖のより容易な捕捉、およびインプラントのより良好な係留を可能にし得る。この例示的方法はまた、好ましくは、経心尖経路も使用するが、経中隔も使用されてもよい。
【0115】
図13Aは、左心房LAおよび左心室LVを含む、患者の心臓の左側の基本生体構造を図示する。肺静脈PVが、肺からの血液を左心房に戻し、次いで、血液が、左心房から僧帽弁MVを横断して左心室の中へ送出される。僧帽弁は、弁の前側Aに前尖ALと、弁の後側Pに後尖PLとを含む。弁尖が、腱索CTに付着し、後に、腱索は乳頭筋PMで心臓壁に固着される。次いで、血液が、大動脈から左心室の中へ戻る血液の逆流を防止する大動脈弁AVを伴う、大動脈AOの中へ左心室から送出される。
【0116】
図13Bは、左心房LAの中への心尖を通した送達システム1302の経心尖送達を図示する。送達システム1302は、ガイドワイヤGWを経由して左心房の中へ前進させられてもよく、組織貫通先端1304は、組織を拡張し、送達システムの残りの部分が通過するためにより大きいチャネルを形成することによって、送達システムが心尖を通過するのに役立つ。送達カテーテルは、人工心臓弁1308を運搬する。いったん送達システムの遠位部分が左心房の中へ前進させられると、外側シース1306は、近位に(例えば、オペレータに向かって)後退させられてもよく、それによって、人工弁1308の心房部分から拘束を除去する。これは、心房スカート1310が半径方向外向きに自己拡張することを可能にする。
図13Cでは、外側シースがさらに後退させられると、心房スカートは、
図13Dで見られるように完全に展開するまで、自己拡張し、その一部が見え続ける。心房スカートは、円筒形状を有してもよく、または大動脈弁および左心室流出路の他の側面に干渉することを回避するよう、平坦な前部分および円筒形の後部分を伴って、上記で議論されるようなD字形であり得る。人工心臓弁は、心房スカートを適正に位置付けるように上流または下流に前進させられてもよい。好ましい実施形態では、心房スカートは、僧帽弁の上面に対して静置するフランジを形成し、これは、人工弁を係留し、左心室の中への不要な下流の移動を防止する。したがって、以前に説明されたように、最初に補綴具を心房に係留することは、予想外であり、補綴具の係留を促進する。
【0117】
外側シース1306が近位に後退させられ続けると、人工心臓弁の環状領域が、次に、弁輪と係合するように自己拡張する。環状領域もまた、好ましくは、D字形幾何学形状を有するが、また、円筒形であり得るか、または天然生体構造に合致する他の幾何学形状を有してもよい。
図13Eでは、シース1306の後退は、最終的に、好ましくは、前または後尖あるいは腱索に係合することなく、前1312および後1314タブの両方が部分的に外向きに自己拡張することを可能にする。タブは、以前の実施形態で以前に説明されたように、類似する水平または実質的に水平の位置を有する。この実施形態では、次いで、外側シース1306のさらなる後退は、
図13Fで図示されるように、前尖が前タブのそれぞれの内側表面と心室スカート1316の外側表面との間に捕捉されるように、前タブ1312(この図では1つだけが可視的である)がそれらの自己拡張を完了することを可能にする。したがって、タブは、以前に説明されたように、補綴具と平行または実質的に平行である、より垂直な位置を有するであろう。後タブ1314は、部分的に開いたままであり、以前に説明されたものと略同一の位置を有するが、その拡張をまだ完了していない。加えて、前タブの先端はまた、以下でさらに詳細に図示されるように、僧帽弁の左右の線維三角の中に係留する。
【0118】
図13Gでは、次いで、外側シース1306のさらなる後退は、心室スカート1320から拘束を解放し、心室スカートが半径方向に拡張することを可能にする。次いで、これは、前タブ1312と心室スカート1316との間で前尖ALをさらに捕捉する。心室スカートの拡張はまた、前および後尖を外向きに押し、それによって、天然弁尖が人工弁または人工弁尖のいかなる部分にも干渉しないことを確実にする。
図13Hで図示されるようなシース1306のさらなる後退は、後タブ1314から拘束を解放し、その自己拡張を完了することを可能にし、それによって、後タブ1314の内側表面と心室スカート1318の外側表面との間で後尖PLを捕捉する。次いで、後タブは、上記で以前に説明されたものに類似する、より垂直な位置を成す。ここで、人工弁は、僧帽弁の上方に、弁輪に沿って、弁尖に、および僧帽弁の下方に定位置で係留され、それによって、それを定位置で固着する。
【0119】
送達デバイスのさらなる作動は、
図13Iで図示されるように、ハブカテーテル1324から拘束を除去するよう、外側シース1306およびベルカテーテルシャフト1322を後退させる。これは、人工弁交連1326がハブカテーテルから解放されることを可能にし、したがって、交連がそれらの付勢構成まで拡張する。次いで、人工弁1308を定位置に残して、送達システム1302およびガイドワイヤGWが除去され、そこで、
図13Jで見られるように、天然僧帽弁の役割を引き継ぐ。
【0120】
図13Kおよび13Lは、それぞれの前および後尖との前および後タブの係合を強調表示する。
図13Kでは、前タブ1312が完全に拡張された後、それらは、前タブの内側表面と心室スカート1320の外側表面との間で前尖ALおよび隣接する腱索を捕捉する。また、前タブ1312の先端1328は、僧帽弁の前側の線維三角FTと係合させられる。線維三角は、弁の線維性領域であり、したがって、前タブはさらに、天然僧帽弁生体構造の中へ人工弁を係留する。一方の前タブが、左線維三角の中へ係留し、他方の前タブが、右線維三角の中へ係留する。三角は、弁尖の前側の反対側にある。
図13Lは、後タブの内側表面と心室スカート1320の外側表面との間で捕捉される後尖PLとの後タブ1314の係合を図示する。加えて、隣接する腱索もまた、後タブと心室スカートとの間で捕捉される。
【0121】
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示され、説明されているが、そのような実施形態は、一例のみとして提供されることが当業者に明白となるであろう。多数の変形例、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。本明細書で説明される本発明の実施形態の種々の代替案が、本発明を実践する際に採用されてもよいことを理解されたい。以下の請求項が本発明の範囲を定義し、これらの請求項およびそれらの同等物内の範囲内の方法および構造が、それによって対象とされることが意図される。