(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209565
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】二酸化炭素を発生させる固形化粧石鹸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C11D 13/10 20060101AFI20170925BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20170925BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20170925BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20170925BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20170925BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20170925BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20170925BHJP
C11D 9/12 20060101ALI20170925BHJP
C11D 9/18 20060101ALI20170925BHJP
C11D 9/26 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
C11D13/10
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/365
A61Q19/10
A61K8/11
A61K8/36
C11D9/12
C11D9/18
C11D9/26
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-148806(P2015-148806)
(22)【出願日】2015年7月28日
(65)【公開番号】特開2017-25268(P2017-25268A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】501208497
【氏名又は名称】株式会社 ナチュラル
(74)【代理人】
【識別番号】100068308
【弁理士】
【氏名又は名称】後田 春紀
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 正治
(72)【発明者】
【氏名】町田 茂
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−263703(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0059387(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/10−19/00
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般に既に公知の素材として使用されている固形化粧石鹸用素材(水を含む)88.0〜98.0重量%に、炭酸水素ナトリウム1.0〜7.0重量%を添加混入して製造されたアルカリ性固形化粧石鹸用素材に、更に多孔質シリカに有機酸を圧入して内包させて形成したマイクロカプセル1.0〜5.0重量%を配合して製造することを特徴とする二酸化炭素を発生する固形化粧石鹸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来一般に公知の固形化粧石鹸用素材に炭酸水素ナトリウムを含有せしめてアルカリ性の固形化粧石鹸用素材とし、該アルカリ性の固形化粧石鹸用素材に多孔質シリカにクエン酸等の有機酸を圧入して内包させて形成したマイクロカプセルを配合し、固形化粧石鹸の使用時に二酸化炭素を発生させることができる固形化粧石鹸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭酸水素ナトリウムを含有せしめて二酸化炭素を発生させる固形化粧石鹸を含む化粧品は、1剤と2剤(逆の場合もある)を用事混合して、1剤に含まれる炭酸水素ナトリウムを2剤に含まれる有機酸で反応させて二酸化炭素を発生させるものであった。そして、二酸化炭素を発生させずに化粧品として安定に保つために、1剤をアルカリ性にしておけば長時間安定であるが、二酸化炭素を発生させるためには、酸の2剤を添加して、系を酸性にする必要がある。一方、固形化粧石鹸は、その使用時に二酸化炭素を発生させることで、肌の血行促進、皮膚洗浄、消臭等の効能が期待できる。しかし、用事混合で1剤と2剤を混ぜる過程は時間がかかり不便なため、便利な1剤型式で使用時に二酸化炭素を発生させる固形化粧石鹸が待ち望まれていた。
【0003】
特に、固形化粧石鹸は脂肪酸の強塩基性塩であって、強塩基性のため、相反する塩基性物質と酸性物質を共存させるのが極めて困難であり、更に加えて、石鹸使用中に酸性2剤を塗布することは、事実上使用法からもほぼ不可能であるので、1剤型式で使用時に二酸化炭素を発生させることができる固形化粧石鹸が望まれていた。
【0004】
そして、基礎化粧品の分野において、二酸化炭素を発生させるものとして、過去の特許文献を遡及検索すると、1剤を酸性の溶液にし、2剤を炭酸塩素を含有するアルカリ性溶液とし、両者を用事混合し二酸化炭素を発生させる「二剤式二酸化炭素発生組成物」が、下記各特許文献に開示されて公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5380758号公報
【特許文献2】特許第5648878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献に記載された「二酸化炭素発生組成物」は、1剤を酸性の溶液にし、2剤を炭酸塩を含有するアルカリ性溶液とし、両者を用事混合して二酸化炭素を発生させるものであるが、1剤と2剤を用事混合するのに手間と時間がかかり不便であるという課題があった。
【0007】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであって、従来一般に公知の固形化粧石鹸用素材に、炭酸水素ナトリウムを含有せしめてアルカリ性固形化粧石鹸用素材とし、該アルカリ性固形化粧石鹸用素材に多孔質シリカにクエン酸等の有機酸を圧入して内包させて形成したマイクロカプセルを配合することにより、従来のように、1剤と2剤を用事混合することなく、1剤式で系の安定性を保ちつつ、固型化粧石鹸の使用時のみ、二酸化炭素を発生させることができる固形化粧石鹸の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一般に既に公知の素材として使用されている固形化粧石鹸用素材(水を含む)88.0〜98.0重量%に、炭酸水素ナトリウム1.0〜7.0重量%を添加混入して製造されたアルカリ性固形化粧石鹸用素材に、更に多孔質シリカに有機酸を圧入して内包させて形成したマイクロカプセル1.0〜5.0重量%を配合して製造するという手段を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
前記本発明製造方法に基づき、一般に既に公知の素材として使用されている複数種の固形化粧石鹸用素材に、炭酸水素ナトリウムを含有せしめて製造したアルカリ性固形化粧石鹸用素材に、クエン酸等の有機酸を多孔質シリカに圧入して内包させて形成したマイクロカプセルを配合して製造した固形化粧石鹸の使用時に、湯水等により溶かした石鹸液を手で肌に塗布摩擦すると、その摩擦力により、前記マイクロカプセルが破壊され、該マイクロカプセルに内包されている有機酸が露出して、これらが炭酸水素ナトリウムを反応して二酸化炭素を発生させ、肌の血行促進、洗浄および消臭効果を実現することができるという優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明二酸化炭素を発生させる固形化粧石鹸の製造方法により製造された固形化粧石鹸と、他の方法により製造された固形化粧石鹸の各素材の配合割合とその評価結果を示す図である。
【実施例】
【0011】
本発明の実施例を詳細に説明する。本発明は、固形化粧石鹸を製造する際、一般に既に公知の素材として使用されている複数種の固形化粧石鹸用素材に、炭酸水素ナトリウムを添加混入して製造されたアルカリ性固形化粧石鹸用素材に、更に多孔質シリカに有機酸を圧入して内包させて形成したマイクロカプセルを配合して製造する固形化粧石鹸の製造方法であって、前記本発明によって製造された固形化粧石鹸を、湯水等により溶かした石鹸液を手で肌に塗布摩擦すると、その摩擦力により、前記マイクロカプセルが破壊され、該マイクロカプセルに内包されている有機酸を露出させて、該露出した有機酸が炭酸水素ナトリウムと反応して、石鹸の使用時に二酸化炭素を発生させることができる化粧用石鹸の製造方法である。
【0012】
前記有機酸を圧入して内包させて形成するマイクロカプセルは、従来一般に広く知られている方法により製造することができるが、本発明においては、多孔質のシリカの粉末を使用する。また、前記多孔質のシリカに圧入して内包する有機酸は、α―ヒドロキシ酸であるクエン酸、グリコール酸、リンゴ酸および乳酸のいずれをも使用することができる。そして、前記有機酸を圧入して内包させるマイクロカプセルは、平均粒径0.5〜450μmの多孔質シリカを担体として製造される。
【0013】
本発明は、従来一般に公知の素材として使用されている複数種の固形化粧石鹸用素材に、炭酸水素ナトリウムを含有せしめてアルカリ性固形化粧石鹸用素材とし、該アルカリ性固形化粧石鹸用素材に、クエン酸等の有機酸を多孔質シリカに圧入して内包させて形成したマイクロカプセルを配合して製造する固形化粧石鹸の製造方法であり、以下、
図1に、本発明の素材を使用して製造された固形化粧石鹸と、他の素材を使用して製造された固形化粧石鹸の各素材の配合割合および製造された各化粧用石鹸の評価を比較して示す。なお、本実施例においては、前記有機酸として、クエン酸を使用するものとして説明する。
【0014】
図1は、本発明二酸化炭素を発生させる固形化粧石鹸の製造方法により製造された固形化粧石鹸と、他の方法により製造された固形化粧石鹸の各素材の配合割合(重量%)とその評価結果を示す図である。
図1に示す「処方1」〜「処方8」が各素材の配合割合を変えて製造した固形化粧石鹸を示す。前記処方中の「石鹸素地」・「グリセリン」・「1・3BG」および「防腐剤」は、固形化粧石鹸用の素材として一般に既に公知の素材として使用されているので、その配合割合はいずれも同一である。
図1中の「クエン酸多孔質シリカマイクロカプセル」は、前記「多孔質シリカにクエン酸を圧入して内包させて形成したマイクロカプセル」のことで、本発明製造方法における素材であるが、他の「クエン酸ゼラチンマイクロカプセル」は、前記本発明素材である「クエン酸多孔質シリカマイクロカプセル」と比較するために使用した。前記「クエン酸ゼラチンマイクロカプセル」は、本発明とは異なり、クエン酸を「ゼラチンマイクロカプセル」に内包したものである。更に、「炭素水素ナトリウム」はクエン酸等の酸と反応して二酸化炭素を発生させるものとして使用している。また更に、配合割合の表中の最下段の「水で100」との記載は、前記各素材を配合した後、これらに水を加えて、全体の重量を「100重量%」とするという意味である。なお、前記「クエン酸多孔質シリカマイクロカプセル」は、クエン酸35重量%、多孔質シリカ65重量%の配合比率として製造したものを使用した。
【0015】
前記各処方に従い各素材を配合して製造された固形化粧石鹸の「評価」の欄の上段には、「1.製剤の定着性(使用前に二酸化炭素を発生しない)」につき検証した結果が示されている。そして、「二酸化炭素」を発生しない、すなわち「固形化粧石鹸の完成直後、1日後、2日後、1週間後」の経時において、何も変化なし:◎」という評価を得たのは、「処方4」と「処方5」であった。また、「処方6」〜「処方8」および「処方2」も最高の評価ではないが、ある程度の評価が得られた。更に「評価」の欄には、「2、二酸化炭素の気泡の発生」を検証した結果が示されている。「気泡の確認」および「血行良し悪し」を検証した結果、「良好◎」の評価を得たのは、「処方2」・「処方3」・「処方5」・「処方6」および「処方7」であり、「処方8」は最高の評価ではないが、ある程度の評価が得られた。そして、前記2つの評価で、いずれも最高の評価を得たのは「処方5」の固形化粧石鹸であり、また多少優れた評価を得たのは、「処方2」および「処方6」〜「処方8」の固形化粧石鹸であった。
【0016】
前記
図1の評価の結果、一般に既に公知の素材として広く使用されている複数種の固形化粧石鹸用素材(水を含む)88.0〜98.0重量%に、炭酸水素ナトリウム1.0〜7.0重量%を添加混入して製造されたアルカリ性固形化粧石鹸用素材に、更に多孔質シリカに有機酸を圧入して内包させて形成したマイクロカプセル1.0〜5.0重量%を配合する配合割合が、特に好ましい配合割合であることを確認した。
【0017】
そして、
図1の評価の結果、一般に既に公知の素材として使用されている複数種の固形化粧石鹸用素材(水を含む)93.0重量%に、炭酸水素ナトリウム4.0重量%を添加混入して製造されたアルカリ性化粧品石鹸用素材に、更に多孔質シリカに有機酸を圧入して内包させて形成したマイクロカプセル3.0重量%を配合する場合割合が、最も好ましい配合割合であることを確認した。
【0018】
以上のことから、一般に既に公知の素材として使用されている複数種の固形化粧石鹸用素材(水を含む)88.0〜98.0重量%に、炭酸水素ナトリウム1.0〜7.0重量%を添加混入して製造されたアルカリ性固形化粧石鹸用素材に、更に多孔質シリカに有機酸を圧入して内包させて形成したマイクロカプセル1.0〜5.0重量%を配合して製造した固形化粧石鹸が、固型化粧石鹸として使用しないときは二酸化炭素が発生せず安定で、使用時のみ二酸化炭素を発生させ、肌の血行促進、洗浄、消臭効果において優れていることが確認できた。