特許第6209569号(P6209569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209569難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209569
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブル
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20170925BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20170925BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20170925BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20170925BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20170925BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08L83/04
   C08K5/098
   C08K3/26
   C08K3/34
   C08K5/3435
   H01B7/02 Z
   H01B7/18 H
   H01B3/44 F
   H01B3/44 G
   H01B3/44 P
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-168682(P2015-168682)
(22)【出願日】2015年8月28日
(62)【分割の表示】特願2014-106653(P2014-106653)の分割
【原出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2016-27161(P2016-27161A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2015年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】岩田 誠之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 知久
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−208796(JP,A)
【文献】 特開昭63−291957(JP,A)
【文献】 特開2014−084437(JP,A)
【文献】 特開2014−094969(JP,A)
【文献】 特開2014−028910(JP,A)
【文献】 特開2013−108053(JP,A)
【文献】 特開2001−089611(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/062077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−3/40
C08K 5/00−5/59
H01B 3/00−3/56
H01B 7/00−7/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系化合物を含むベース樹脂と、
シリコーン系化合物と、
脂肪酸金属塩と、
炭酸カルシウム粒子及び珪酸塩化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる難燃剤と、
ヒンダードフェノール系化合物と、
ヒンダードアミン系化合物とを含み、
前記ベース樹脂中の前記ポリオレフィン系化合物の含有率が50質量%以上であり、
前記シリコーン系化合物が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合で配合され、
前記脂肪酸金属塩が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の割合で配合され、
前記難燃剤が、前記ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上200質量部以下の割合で配合され、
前記ヒンダードフェノール系化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合され、
前記ヒンダードアミン系化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合され、
前記脂肪酸金属塩がステアリン酸金属塩で構成され、
前記ヒンダードアミン系化合物が、下記式(2)で表される二価の基を有する化合物で構成され、下記式(1)で表される一価の基を有する化合物を含まない、難燃性樹脂組成物。
【化1】
(上記式(1)中、Rは、水素原子を表し、R〜Rは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す)
【化2】
(上記式(2)中、Rは、炭素数1〜30のアルキレン基を表し、R〜R10は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す)
【請求項2】
ポリオレフィン系化合物を含むベース樹脂と、
シリコーン系化合物と、
脂肪酸金属塩と、
炭酸カルシウム粒子及び珪酸塩化合物粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる難燃剤と、
ヒンダードフェノール系化合物と、
ヒンダードアミン系化合物とを含み、
前記ベース樹脂中の前記ポリオレフィン系化合物の含有率が50質量%以上であり、
前記シリコーン系化合物が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合で配合され、
前記脂肪酸金属塩が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の割合で配合され、
前記難燃剤が、前記ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上200質量部以下の割合で配合され、
前記ヒンダードフェノール系化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合され、
前記ヒンダードアミン系化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合され、
前記脂肪酸金属塩がステアリン酸金属塩で構成され、
前記ヒンダードアミン系化合物が、下記式(2)で表される二価の基を有する化合物のみで構成される難燃性樹脂組成物。
【化3】
(上記式(2)中、Rは、炭素数1〜30のアルキレン基を表し、R〜R10は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す)
【請求項3】
前記シリコーン系化合物が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.2質量部より大きい割合で配合され、
前記脂肪酸金属塩が前記ベース樹脂100質量部に対して3質量部より大きい割合で配合され、
前記ヒンダードアミン系化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下の割合で配合され、
前記ヒンダードアミン系化合物の分子量が1000以上である請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ベース樹脂中の前記ポリオレフィン系化合物の含有率が70質量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ベース樹脂中の前記ポリオレフィン系化合物の含有率が100質量%である、請求項4に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
外被と、
前記外被の内側に設けられ、導体又は光ファイバで構成される伝送媒体と有し、
前記外被が請求項1〜のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物で構成されるケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルの被覆、ケーブルの外被、チューブ、テープ、包装材、建材等にはいわゆるエコマテリアルが広く使用されるようになっている。
【0003】
このようなエコマテリアルとして、ポリオレフィン樹脂に、難燃剤としての炭酸カルシウム、難燃助剤としてのシリコーン油やステアリン酸マグネシウム、及び、酸化防止剤などを添加してなる組成物が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−169918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の組成物は、以下に示す課題を有していた。
【0006】
すなわち、上記特許文献1に記載の組成物は、優れた難燃性を有するものの、耐候性の点で改善の余地があった。このため、上記組成物を用いて得られるケーブルは屋外を通るケーブルとして使用しにくかった。
【0007】
このため、優れた難燃性を確保しながら、耐候性を改善できる難燃性樹脂組成物が求められていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた難燃性を確保しながら、耐候性を改善できる難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため検討を重ねた。例えば本発明者らは組成物の耐候性を向上させるために、光安定剤として知られるベンゾトリアゾールを配合してみた。しかし、ベンゾトリアゾールを配合しても、耐候性が十分に向上しないばかりか、ベンゾトリアゾールを配合することで難燃性が著しく低下することが判明した。そこで、本発明者らは、ベンゾトリアゾールに代えて、ヒンダードアミン系化合物を配合することを試みた。ここで、脂肪酸含有化合物として脂肪酸を用いると、この脂肪酸と、塩基であるヒンダードアミン系化合物が中和反応を起こし、ヒンダードアミン系化合物の機能が阻害される可能性がある。しかし、脂肪酸含有化合物としてステアリン酸マグネシウムのような脂肪酸の金属塩が用いられていれば、このような中和反応は起こらず、ヒンダードアミン系化合物の機能が阻害されることはないものと考えていた。しかし、意外なことに、ヒンダードアミン系化合物であっても、耐候性を十分に向上させることができないばかりか、難燃性を低下させるものがあることが判明した。そこで、本発明者らは更に鋭意研究を重ねた結果、ヒンダードアミン系化合物に含まれる特定の基が上記課題を解決する上で極めて有用であることに気付いた。こうして本発明者らは、以下の発明により上記課題を解決するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、ポリオレフィン系化合物を含むベース樹脂と、シリコーン系化合物と、脂肪酸金属塩と、炭酸カルシウム粒子及び珪酸塩化合物粒子からなる群より選択される少なくとも1種からなる難燃剤と、ヒンダードフェノール系化合物と、ヒンダードアミン系化合物とを含み、前記ベース樹脂中の前記ポリオレフィン系化合物の含有率が50質量%以上であり、前記シリコーン系化合物が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記脂肪酸金属塩が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の割合で配合され、前記難燃剤が、前記ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上200質量部以下の割合で配合され、前記ヒンダードフェノール系化合物が0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記ヒンダードアミン系化合物が0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記脂肪酸金属塩がステアリン酸金属塩で構成され、前記ヒンダードアミン系化合物が、下記式(2)で表される二価の基を有する化合物で構成され、下記式(1)で表される一価の基を有する化合物を含まない、難燃性樹脂組成物である。
【化1】
(上記式(1)中、Rは、水素原子を表し、R〜Rは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す)
【化2】
(上記式(2)中、Rは、炭素数1〜30のアルキレン基を表し、R〜R10は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す)
【0011】
本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた難燃性を確保しながら、耐候性を改善できる。
【0012】
なお、本発明者らは、本発明の難燃性樹脂組成物において、優れた難燃性が得られる理由については以下のように推察している。
【0013】
すなわち、炭酸カルシウム粒子又は珪酸塩カルシウム粒子とシリコーン系化合物と脂肪酸金属塩とを用いることで、燃焼時に表面バリア層が形成されることにより、樹脂組成物の難燃効果が高まるためではないかと本発明者らは推察している。
【0014】
また本発明者らは、本発明の難燃性樹脂組成物において、耐候性を改善できる理由について詳細は不明であるが以下のように推察している。
【0015】
すなわち、ヒンダードアミン系化合物として上記式(2)で表される二価の基を有する化合物を用いることで、脂肪酸金属塩とヒンダードアミン系化合物との相互作用を低減することができると考えられる。これに対し、上記式(1)で表される一価の基において、Rが水素原子であると、脂肪酸金属塩とヒンダードアミン系化合物とが相互作用しやすくなり、ヒンダードアミン系化合物の本来の機能が低下する。こうして本発明者らは、本発明の難燃性樹脂組成物において、耐候性を改善できるものと推察している。
また本発明は、ポリオレフィン系化合物を含むベース樹脂と、シリコーン系化合物と、脂肪酸金属塩と、炭酸カルシウム粒子及び珪酸塩化合物粒子からなる群より選択される少なくとも1種からなる難燃剤と、ヒンダードフェノール系化合物と、ヒンダードアミン系化合物とを含み、前記ベース樹脂中の前記ポリオレフィン系化合物の含有率が50質量%以上であり、前記シリコーン系化合物が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記脂肪酸金属塩が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の割合で配合され、前記難燃剤が、前記ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上200質量部以下の割合で配合され、前記ヒンダードフェノール系化合物が0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記ヒンダードアミン系化合物が0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記脂肪酸金属塩がステアリン酸金属塩で構成され、前記ヒンダードアミン系化合物が、下記式(2)で表される二価の基を有する化合物のみで構成される難燃性樹脂組成物である。
【化3】
(上記式(2)中、Rは、炭素数1〜30のアルキレン基を表し、R〜R10は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す)
【0016】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記シリコーン系化合物が、前記ベース樹脂100質量部に対して0.2質量部より大きい割合で配合され、前記脂肪酸金属塩が前記ベース樹脂100質量部に対して3質量部より大きい割合で配合され、前記ヒンダードアミン系化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記ヒンダードアミン系化合物の分子量が1000以上であることが好ましい。
【0017】
この場合、より優れた難燃性が得られる。
上記難燃性樹脂組成物においては、前記ベース樹脂中の前記ポリオレフィン系化合物の含有率が70質量%以上であることが好ましい。
上記難燃性樹脂組成物においては、前記ベース樹脂中の前記ポリオレフィン系化合物の含有率が100質量%であってもよい。

【0020】
また本発明は、外被と、前記外被の内側に設けられ、導体又は光ファイバで構成される伝送媒体と有し、前記外被が、上述した難燃性樹脂組成物で構成されるケーブルである。
【0021】
この場合、外被が上述した難燃性樹脂組成物で構成され、この難燃性樹脂組成物が、優れた難燃性を確保しながら、耐候性を改善できるため、本発明のケーブルは屋外を通るケーブルとしても有用である。
なお、本発明において、「分子量」とは、ゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて保持時間を測定し、ポリスチレン標準試料を測定することで作成した較正曲線から算出された値を言うものとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、優れた難燃性を確保しながら、耐候性を改善できる難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のケーブルの一実施形態を示す部分側面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3】本発明のケーブルの他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図1及び図2を用いて詳細に説明する。
【0025】
[ケーブル]
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す部分側面図であり、丸形ケーブルを示すものである。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2に示すように、丸形ケーブル10は、絶縁電線4と、絶縁電線4を被覆するチューブ状の外被3とを備えている。そして、絶縁電線4は、伝送媒体としての内部導体1と、内部導体1を被覆するチューブ状の絶縁体2とを有している。すなわち、丸形ケーブル10では、内部導体1は、チューブ状の絶縁体2の内側に設けられるとともにチューブ状の外被3の内側に設けられている。
【0026】
ここで、チューブ状の絶縁体2及び外被3は難燃性樹脂組成物で構成されており、この難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン系化合物を含むベース樹脂と、シリコーン系化合物と、脂肪酸金属塩と、炭酸カルシウム粒子及び珪酸塩化合物粒子からなる群より選択される少なくとも1種からなる難燃剤と、ヒンダードフェノール系化合物と、ヒンダードアミン系化合物とを含む。ここで、シリコーン系化合物は、ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合で配合され、脂肪酸金属塩は、ベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の割合で配合され、難燃剤は、ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上200質量部以下の割合で配合され、ヒンダードフェノール系化合物は0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合され、ヒンダードアミン系化合物は0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合されている。そして、ヒンダードアミン系化合物は、下記式(1)で表される一価の基又は下記式(2)で表される二価の基を有する。
【化3】
(上記式(1)中、Rは、炭素数1〜30のアルキル基又はアルコキシ基を表し、R〜Rは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す)
【化4】
(上記式(2)中、Rは、炭素数1〜30のアルキレン基を表し、R〜R10は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す)
【0027】
上記難燃性樹脂組成物で構成される絶縁体2及び外被3は、優れた難燃性を確保しながら、耐候性を改善することができる。従って、丸形ケーブル10は屋外を通るケーブルとして有用である。
【0028】
[ケーブルの製造方法]
次に、上述した丸形ケーブル10の製造方法について説明する。
【0029】
<導体>
まず伝送媒体としての内部導体1を準備する。内部導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、内部導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
【0030】
<難燃性樹脂組成物>
一方、上記難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、ポリオレフィン系化合物を含むベース樹脂と、シリコーン系化合物と、脂肪酸金属塩と、炭酸カルシウム粒子及び珪酸塩化合物粒子からなる群より選択される少なくとも1種からなる難燃剤と、ヒンダードフェノール系化合物と、ヒンダードアミン系化合物とを含む。
【0031】
(1)ベース樹脂
ベース樹脂は、ポリオレフィン系化合物を含んでいればよい。ポリオレフィン系化合物としては、例えばポリエチレン(PE)、エチレン系共重合体、ポリプロピレン(PP)、プロピレン系共重合体、変性ポリオレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。エチレン系共重合体としては、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体及びエチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。プロピレン系共重合体としては、例えばブロックポリプロピレン共重合体及びランダムポリプロピレン共重合体などが挙げられる。
【0032】
ベース樹脂は、ポリオレフィン系化合物と、それ以外の樹脂との混合樹脂であってもよい。この場合、ポリオレフィン系化合物以外の樹脂としては、例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、水添SBR、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)などのスチレン系熱可塑性エラストマエステル、ポリカーボネート樹脂などのエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。
【0033】
ベース樹脂中のポリオレフィン系化合物の含有率は特に制限されるものではないが、好ましくは30〜100質量%であり、より好ましくは50〜100質量%である。
【0034】
(2)シリコーン系化合物
シリコーン系化合物は、難燃助剤として機能するものであり、シリコーン系化合物としては、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。ここで、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、例えばメチル基、ビニル基、エチル基、プロピル基、フェニル基などが挙げられる。具体的にはポリオルガノシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。ポリオルガノシロキサンは、シリコーンオイル、シリコーンパウダー、シリコーンガム又はシリコーンレジンの形態で用いられる。中でも、ポリオルガノシロキサンは、シリコーンガムの形態で用いられることが好ましい。この場合、ブルームが起こりにくくなる。
【0035】
シリコーン系化合物は、上述したようにベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合で配合される。この場合、シリコーン系化合物の配合割合が0.1質量部未満である場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。また、ベース樹脂100質量部に対するシリコーン系化合物の配合割合が上記範囲内にあると、シリコーン系化合物の配合割合が10質量部より大きい場合に比べて、難燃性及び耐候性のムラがより少なくなる。これは、シリコーン系化合物がベース樹脂に均等に混ざりやすくなり、部分的に塊が発生するということが起こりにくくなるためである。
【0036】
ベース樹脂100質量部に対するシリコーン系化合物の配合割合は1質量部以上であることが好ましい。この場合、シリコーン系化合物の配合割合が1質量部未満である場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0037】
シリコーン系化合物は、難燃剤の表面に予め付着させておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中においてシリコーン系化合物の偏析が起こりにくくなり、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。
【0038】
難燃剤の表面にシリコーン系化合物を付着させる方法としては、例えば難燃剤にシリコーン系化合物を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕することによって得ることができる。
【0039】
(3)脂肪酸金属塩
脂肪酸金属塩は、難燃助剤として機能するものである。ここで、脂肪酸としては、例えば炭素原子数が12〜28である脂肪酸が用いられる。このような脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸及びモンタン酸が挙げられる。中でも、脂肪酸としては、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。この場合、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸以外の脂肪酸を用いる場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0040】
脂肪酸の金属塩を構成する金属としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛及び鉛などが挙げられる。脂肪酸の金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウムが好ましい。この場合、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウム以外の脂肪酸金属塩を用いる場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0041】
脂肪酸金属塩は、上述したようにベース樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の割合で配合される。この場合、脂肪酸金属塩の割合が0.1質量部未満である場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。また、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合が上記範囲内にあると、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合が20質量部より大きい場合に比べて、より優れた耐候性が得られる。
【0042】
ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合は3質量部よりも多い割合で配合されることが好ましい。この場合、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸金属塩の配合割合が質量部以下である場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0043】
脂肪酸金属塩はシリコーン系化合物とともに、難燃剤の表面に予め付着させておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中においてシリコーン化合物及び脂肪酸金属塩の偏析がより起こりにくくなり、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。
【0044】
難燃剤の表面にシリコーン系化合物及び脂肪酸金属塩を付着させる方法としては、例えば難燃剤にシリコーン系化合物及び脂肪酸金属塩を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕することによって得ることができる。
【0045】
(4)難燃剤
難燃剤は、炭酸カルシウム粒子及び珪酸塩化合物粒子からなる群より選択される少なくとも1種からなる。従って、難燃剤は、炭酸カルシウム粒子のみで構成されてもよく、珪酸塩化合物粒子のみで構成されてもよく、これらの混合物で構成されてもよい。
(炭酸カルシウム粒子)
炭酸カルシウム粒子は、重質炭酸カルシウム又は軽質炭酸カルシウムのいずれでもよい。
(珪酸塩化合物粒子)
珪酸塩化合物粒子は、珪酸塩化合物からなる粒子である。珪酸塩化合物としては、例えばタルク、クレイなどが挙げられる。ここで、クレイとしては、例えばカオリンクレイ、ろう石クレイ、それらを焼成処理した焼成クレイ、及び、シラン系カップリング剤等で表面改質した改質クレイ等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。中でも、カオリンクレイが好ましい。この場合、不純物の含有量が少なく、着色し難いという利点が得られる。
【0046】
難燃剤は、ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上200質量部以下の割合で配合される。この場合、難燃剤の割合がベース樹脂100質量部に対して5質量部未満である場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0047】
また、ベース樹脂100質量部に対する難燃剤の配合割合が上記範囲内にあると、ベース樹脂100質量部に対する難燃剤の配合割合が200質量部より大きい場合に比べて、難燃性樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
【0048】
また、ベース樹脂100質量部に対する難燃剤の配合割合は10質量部以上80質量部以下であることが好ましく、30質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。ベース樹脂100質量部に対する難燃剤の配合割合が上記範囲内である場合、配合割合が上記各範囲の上限値を超える場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性を十分に確保しつつ、機械的特性をより十分に向上させることができる。
【0049】
(5)ヒンダードフェノール系化合物
ヒンダードフェノール系化合物とは、下記一般式(3)で示されるフェノール性水酸基に対するオルト位に置換基を有する一価の基を分子内に少なくとも一個有する化合物をいう。
【化5】
【0050】
一般式(3)において、R11及びR12は、各々独立して、水素原子又はアルキル基を表し、R11及びR12のうちの少なくとも1つは炭素数が1〜6のアルキル基である。
【0051】
11及びR12で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基等炭素数1〜6のものが挙げられる。なかでも、R11及びR12がいずれも、t−ブチル基のような嵩高い分岐アルキル基であることが好ましい。
【0052】
上記ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、4,4',4''−(1−メチルプロパノールー3−イリデン)トリス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、6,6'−ジ−t−ブチル−4,4'−ブチリデン−ジ−m−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシー5−メチルフェニル)プロピオニロキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルメチル)−2,4,6−トリメチルベンゼン等が挙げられる。
【0053】
ヒンダードフェノール系化合物は、ベース樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合される。
【0054】
この場合、ヒンダードフェノール系化合物の割合がベース樹脂100質量部に対して0.05質量部未満である場合に比べて、より優れた耐候性が得られる。また、ベース樹脂100質量部に対するヒンダードフェノール系化合物の配合割合が上記範囲内にあると、ベース樹脂100質量部に対するヒンダードフェノール系化合物の配合割合が10質量部より大きい場合に比べて、難燃性樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
【0055】
また、ベース樹脂100質量部に対するヒンダードフェノール系化合物の配合割合は0.1質量部以上3質量部以下であることが好ましい。ベース樹脂100質量部に対するヒンダードフェノール系化合物の配合割合が上記範囲で配合される場合、配合割合が上記各範囲を外れる場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性を十分に確保しつつ、機械的特性をより十分に向上させることができる。
【0056】
(6)ヒンダードアミン系化合物
ヒンダードアミン系化合物は、上記式(1)で表される一価の基又は上記式(2)で表される二価の基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。
【0057】
上記式(1)において、Rは、炭素数1〜30のアルキル基又はアルコキシ基を表す。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブトキシ基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基,テトラデシル基,ペンタデシル基,ヘキサデシル基,ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基,イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基などが挙げられる。中でもアルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0058】
アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基,テトラデシルオキシ基,ペンタデシルオキシ基,ヘキサデシルオキシ基,ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基,イコシルオキシ基、ヘンイコシルオキシ基、ドコシルオキシ基、トリコシルオキシ基、テトラコシルオキシ基、ペンタコシルオキシ基、ヘキサコシルオキシ基、ヘプタコシルオキシ基、オクタコシルオキシ基、ノナコシルオキシ基、トリアコンチルオキシ基などが挙げられる。
【0059】
上記式(1)において、R〜Rは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。このようなアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブトキシ基、ペンチル基、ヘキシル基を用いることができる。
【0060】
上記式(2)において、Rは、炭素数1〜30のアルキレン基を表す。アルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基,テトラデシレン基,ペンタデシレン基,ヘキサデシレン基,ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基,エイコシレン基、ヘンエイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基などが挙げられる。中でもアルキレン基としては、エチレン基が好ましい。
【0061】
上記式(2)において、R〜R10は各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。このようなアルキル基としては、R〜Rで表されるアルキル基と同様のものを用いることができる。
【0062】
ヒンダードアミン系化合物の分子量は1000以上であることが好ましい。この場合、分子量が1000未満である場合と比べて、より優れた耐候性が得られる。但し、ヒンダードアミン系化合物の分子量は3000以下であることが好ましい。
【0063】
またヒンダードアミン系化合物の分子量が1000以上である場合、式(1)及び式(2)において、Rがアルキル基を表すことが好ましい。この場合、より優れた耐候性が得られる。
【0064】
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸とテトラメチルエステルと1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと、 β,β,β’,β’−テトラメチルー2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンー4−イル)カーボネート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ホルムアルデヒド重縮合物と{2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン・[N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサン−1,6−ジイルジアミン]・モルフォリン重合物}とギ酸との反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物、ブタン二酸とジメチルエステルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの反応生成物が挙げられる。
【0065】
ヒンダードアミン系化合物は、ベース樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下の割合で配合される。
【0066】
この場合、ヒンダードアミン系化合物の配合割合がベース樹脂100質量部に対して0.05質量部未満である場合に比べて、より優れた耐候性が得られる。また、ベース樹脂100質量部に対するヒンダードアミン系化合物の配合割合が上記範囲内にあると、ベース樹脂100質量部に対するヒンダードアミン系化合物の配合割合が10質量部より大きい場合に比べて、難燃性樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
【0067】
また、ベース樹脂100質量部に対するヒンダードアミン系化合物の配合割合は0.2質量部以上1質量部以下であることが好ましい。ベース樹脂100質量部に対するヒンダードアミン系化合物の配合割合が上記範囲で配合される場合、配合割合が上記各範囲を外れる場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性を十分に確保しつつ、機械的特性をより十分に向上させることができる。
【0068】
また、シリコーン系化合物が、ベース樹脂100質量部に対して0.2質量部より大きい割合で配合され、脂肪酸金属塩がベース樹脂100質量部に対して3質量部より大きい割合で配合され、ヒンダードアミン系化合物の分子量が1000以上である場合、ヒンダードアミン系化合物がベース樹脂100質量部に対して0.05質量部以上1質量部未満の割合で配合されることが好ましい。
【0069】
この場合、より優れた難燃性が得られる。
【0070】
ここで、シリコーン系化合物がベース樹脂100質量部に対して1質量部より大きい割合で配合され、ヒンダードアミン系化合物が式(1)で表される一価の基を有し、式(1)においてRがアルキル基を表すことが好ましい。
【0071】
この場合、より一層優れた難燃性が得られる。
【0072】
なお、上述した「アルキル基」には、非置換アルキル基のみならず、置換アルキル基も含まれる。置換アルキル基としては、非置換アルキル基の水素原子を塩素等のハロゲン原子で置換したものなどを用いることができる。また上述した「アルコキシ基」には、非置換アルコキシ基のみならず、置換アルコキシ基も含まれる。置換アルコキシ基としては、非置換アルコキシ基の水素原子を塩素等のハロゲン原子で置換したものなどを用いることができる。
【0073】
上記難燃性樹脂組成物は、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、加工助剤、着色顔料、滑剤、カーボンブラックなどの充填剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
【0074】
上記難燃性樹脂組成物は、ベース樹脂、シリコーン系化合物、脂肪酸金属塩、難燃剤、ヒンダードフェノール系化合物及びヒンダードアミン系化合物等を混練することにより得ることができる。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。このとき、シリコーン系化合物の分散性を向上させる観点からは、ベース樹脂の一部とシリコーン系化合物とを混練し、得られたマスターバッチ(MB)を、残りのベース樹脂、脂肪酸金属塩、難燃剤、ヒンダードフェノール系化合物及びヒンダードアミン系化合物等と混練してもよい。
【0075】
次に、上記難燃性樹脂組成物で内部導体1を被覆する。具体的には、上記の難燃性樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、チューブ状の押出物を形成する。そして、このチューブ状押出物を内部導体1上に連続的に被覆する。こうして絶縁電線4が得られる。
【0076】
<外被>
最後に、上記のようにして得られた絶縁電線4を1本用意し、これら絶縁電線4を、上述した難燃性樹脂組成物を用いて作製した外被3で被覆する。外被3は、いわゆるシースであり、絶縁体2を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
【0077】
以上のようにして丸形ケーブル10が得られる。
【0078】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では丸形ケーブル10は1本の絶縁電線4を有しているが、本発明のケーブルは丸形ケーブルに限定されるものではなく、外被3の内側に絶縁電線4を2本有していてもよく、3本以上有していてもよい。また外被3と絶縁電線4との間には、ポリプロピレン等からなる樹脂部が設けられていてもよい。
【0079】
また上記実施形態では、絶縁電線4の絶縁体2及び外被3が上記の難燃性樹脂組成物で構成されているが、絶縁体2が通常の絶縁樹脂で構成され、外被3のみが、絶縁体2を構成する難燃性樹脂組成物で構成されてもよい。さらに絶縁体2は必ずしも必要なものではなく、省略が可能である。
【0080】
さらに、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁体2及び外被3を構成する難燃性樹脂組成物は、光ファイバケーブルにおいて光ファイバを被覆する外被としても適用可能である。例えば図3は、光ファイバケーブルの一例としてのドロップ型光ファイバケーブルを示す断面図である。図3に示すように、光ファイバケーブル20は、支持線21と、2本のテンションメンバ22,23と、光ファイバ24と、これらを被覆する外被25とを備えている。ここで、外被25が上記実施形態において絶縁電線4の絶縁体2及び外被3を構成する難燃性樹脂組成物で構成される。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例1〜36、38及び比較例1〜17)
ベース樹脂、シリコーンマスターバッチ(シリコーンMB)、シリコーン、脂肪酸金属塩、難燃剤、ヒンダードフェノール系化合物、及び、ヒンダードアミン系化合物又はベンゾトリアゾールを、表1〜5に示す配合量で配合し、バンバリーミキサによって160℃にて15分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。なお、表1〜5において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。また表1〜5において、ベース樹脂の配合量が100質量部となっていない実施例及び比較例が存在するが、これらの実施例及び比較例では、シリコーンMB中にもベース樹脂の一部が含まれており、ベース樹脂の配合量とシリコーンMB中のベース樹脂の配合量とを合計すれば100質量部となる。
【0083】
上記ベース樹脂、シリコーンMB、シリコーン、脂肪酸金属塩、難燃剤、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物及びベンゾトリアゾールとしては具体的には下記のものを用いた。
【0084】
(A)ベース樹脂
(A−1)ポリエチレン(PE1)
LLDPE、エクセレンGMH GH030(商品名、住友化学社製)
(A−2)ポリエチレン(PE2)
LLDPE、エボリューSP9018(商品名、プライムポリマー社製)
(A−3)ポリエチレン(PE3)
LDPE、C150(商品名、宇部丸善ポリエチレン社製)
(A−4)エチレン系共重合体1
エチレン−ブテン系共重合体、タフマーDF940(商品名、三井化学社製)
(A−5)エチレン系共重合体2
エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、A1150(商品名、日本ポリエチレン社製)
(A−6)エチレン系共重合体3
エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、EV460(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
(A−7)変性ポリオレフィン
マレイン酸変性ポリエチレン(m−PE)、タフマーMA8510(商品名、三井化学社製)
(A−8)ポリプロピレン(PP)
ブロックPP、E−150GK(商品名、プライムポリマー社製)
(A−9)スチレン系熱可塑性エラストマー1
水添スチレン−ブタジエンゴム(水添SBR)、ダイナロン1320P(商品名、JSR社製)
(A−10)スチレン系熱可塑性エラストマー2
スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、セプトン4033(商品名、クラレ社製)
【0085】
(B)シリコーンMB
(B−1)シリコーンMB1
X−22−2125H(商品名、信越化学社製)
50質量%シリコーンガム(ジメチルポリシロキサン)と50質量%PEとを含有
(B−2)シリコーンMB2
X−22−2101(商品名、信越化学社製)
50質量%シリコーンガム(ジメチルポリシロキサン)と50質量%PPとを含有
【0087】
(D)脂肪酸金属塩
(D−1)脂肪酸金属塩1
ステアリン酸マグネシウム、エフコケムMGS(商品名、ADEKA社製)
(D−2)脂肪酸金属塩2
ステアリン酸カルシウム、SC−P(商品名、堺化学社製)
【0088】
(E)難燃剤
(E−1)炭酸カルシウム粒子
NCC−P(商品名、日東粉化社製)
(E−2)珪酸塩化合物粒子
タルク粒子、NANO ACE D−1000(商品名、日本タルク社製)、平均粒径1.0μm
【0089】
(F)ヒンダードフェノール系化合物
IRGANOX1010(商品名、BASF社製)
【0090】
(G)ヒンダードアミン系化合物
(G−1)ヒンダードアミンA
サイアソーブ UV−3529(商品名、サイテック・インダストリーズ社製、N−アルキル型、分子量1700±10%
(G−2)ヒンダードアミンB
アデカスタブLA−63P(商品名、ADEKA社製、N−アルキル型、分子量約2000
(G−3)ヒンダードアミンC
チヌビン(TINUVIN)622SF(商品名、BASF社製、N−アルキレン型、分子量3100〜4000
(G−4)ヒンダードアミンD
LA−81(商品名、ADEKA社製、N−アルコキシ型、分子量681)
(G−5)ヒンダードアミンE
チヌビン(TINUVIN)765(商品名、BASF社製、N−アルキル型、分子量509)
(G−6)ヒンダードアミンF
チマソーブ(CHIMASSORB)2020FDL(商品名、BASF社製、N−H型、分子量2600〜3400
【0091】
なお、「N−アルキル型」は、式(1)においてRがアルキル基であるヒンダードアミン系化合物を、「N−アルコキシ型」は、式(1)においてRがアルコキシ基であるヒンダードアミン系化合物を、「N−H型」は、式(1)においてRが水素原子であるヒンダードアミン系化合物を、「N−アルキレン型」は、式(2)で表される化合物を意味する。
【0092】
(H)ベンゾトリアゾール
チヌビン(TINUVIN)234(商品名、BASF社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、分子量447)
【0093】
次いで、この難燃性樹脂組成物をバンバリーミキサによって160℃にて15分間混練した。その後、この難燃性樹脂組成物を、単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入し、その押出機からからチューブ状の押出物を押し出し、導体(素線数1本/断面積2mm)上に、厚さ0.7mmとなるように被覆した。こうして絶縁電線を得た。

【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0094】
[特性評価]
上記のようにして得られた実施例1〜36、38及び比較例1〜9の絶縁電線について、以下のようにして難燃性及び耐候性の評価を行った。
【0095】
<難燃性>
(1)水平燃焼試験
実施例1〜36、38及び比較例1〜9の絶縁電線について、JIS C3005の水平燃焼試験を行い、難燃性を評価した。具体的には、各実施例及び比較例ごとに、10本の絶縁電線を用意して難燃性試験を行った。このとき、接炎は、30秒以内で電線に着火が起こるまで行った。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5において、10本全てが自己消火した場合には「○」と表記し、10本全てが自己消火しなかった場合には「×」と表記した。
【0096】
(2)傾斜燃焼試験
実施例1〜36、38及び比較例1〜9の絶縁電線について、JIS C3005の60度傾斜燃焼試験を行い、難燃性を評価した。具体的には、各実施例及び比較例ごとに、10本の絶縁電線を用意して難燃性試験を行った。このとき、接炎は、30秒以内で電線に着火が起こるまで行った。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5において、10本全てが自己消火した場合には「○」と表記し、10本全てが自己消火しなかった場合には「×」と表記した。
【0097】
(3)垂直一条燃焼試験
実施例1〜36、38及び比較例1〜9の絶縁電線について、JIS C3665の垂直一条燃焼試験を行い、難燃性を評価した。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5において、自己消火が見られ且つ絶縁電線を上部で支持する上部支持材の下端から炭化の終了時点までの長さが50〜540mm以内である場合には「○」と表記し、そうでない場合には「×」と表記した。
【0098】
(4)評価
上記(1)〜(3)のうち(1)の水平燃焼試験に合格すれば難燃性の点で合格とした。
【0099】
<耐候性>
実施例1〜36、38及び比較例1〜9の樹脂組成物を、160℃×5分加圧プレスすることで厚さ1mmのシートサンプルを得た。その後、JIS K 6251 3号形 ダンベル状打抜刃にて打ち抜きを行い、ダンベル状試験片を用意した。そして、この試験片に対して、メタルハライドランプ式耐光性試験機(岩崎電気社製、アイスーパーUVテスター「型式:SUV−W13、照度:70mW/cm)を用いて紫外線(UV光)を100時間照射した後に試験片についてJIS K7350に準拠して引張試験を行い、引張伸び残率を測定した。結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5において、引張伸び残率が50%以下である場合には耐候性の点で合格であるとした。
【0100】
表1〜5に示す結果より、実施例1〜36、38の絶縁電線は、難燃性及び耐候性の全ての点で合格基準に達していた。これに対し、比較例1〜9の絶縁電線は、難燃性及び耐候性のうち少なくとも1つの点で合格基準に達していなかった。
【0101】
このことから、本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた難燃性を確保しながら、耐候性を改善できることが確認された。
【符号の説明】
【0102】
1…内部導体(伝送媒体)
2…絶縁体
3…外被
4…絶縁電線
10…丸形ケーブル(ケーブル)
20…光ファイバケーブル(ケーブル)
24…光ファイバ(伝送媒体)
25…外被
図1
図2
図3