特許第6209587号(P6209587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209587
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】プラスチックレンズおよびその用途
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/04 20060101AFI20170925BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20170925BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20170925BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20170925BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G02B1/04
   G02B5/22
   G02C7/02
   G02C7/10
   C09K11/06
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-503034(P2015-503034)
(86)(22)【出願日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2014054970
(87)【国際公開番号】WO2014133110
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2015年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-36694(P2013-36694)
(32)【優先日】2013年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小島 甲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 守
(72)【発明者】
【氏名】小川 達矢
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−504481(JP,A)
【文献】 特開2004−124062(JP,A)
【文献】 特開平09−194536(JP,A)
【文献】 特開2008−105225(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/087880(WO,A1)
【文献】 特表2007−535708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00−1/08
G02B 5/20−5/28
G02C 7/00−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ基材を備えるプラスチックレンズであって、
前記レンズ基材は、
220〜500nmに励起波長を有し、380〜650nmに蛍光波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有し、且つ400〜500nmに最大蛍光波長を有する、ベンゾオキサゾール類およびクマリン類から選択される少なくとも一種の蛍光体と、
ベンゾトリアゾール系化合物およびベンゾフェノン系化合物から選択される少なくとも一種の紫外線吸収剤と、
ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とからなるポリウレタン、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物とからなるポリチオウレタン、またはポリエピチオ化合物および/またはポリチエタン化合物とからなるポリスルフィドから選択される樹脂と、
を含み、さらに
前記レンズ基材は、厚み2mmで測定した光透過率が下記(1)〜(3)の特性を満たす、プラスチックレンズ:
(1)波長440nmの光透過率が80%以上である。
(2)波長420nmの光透過率が70%以下である。
(3)波長410nmの光透過率が5%以下である。
【請求項2】
前記蛍光体に対し、前記紫外線吸収剤を2重量倍以上含む、請求項1に記載のプラスチックレンズ。
【請求項3】
さらに、コーティング層が積層され、
前記コーティング層は、前記蛍光体および/または前記紫外線吸収剤を含む、請求項1または2に記載のプラスチックレンズ。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤は、前記レンズ基材の少なくとも一方の面の表面近傍に含まれる、請求項1に記載のプラスチックレンズ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のプラスチックレンズからなるプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項6】
厚み2mmで測定した光透過率が下記(1)〜(3)の特性を満たすレンズ基材用の組成物であって、
220〜500nmに励起波長を有し、380〜650nmに蛍光波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有し、且つ400〜500nmに最大蛍光波長を有する、ベンゾオキサゾール類およびクマリン類から選択される少なくとも一種の蛍光体と、
ベンゾトリアゾール系化合物およびベンゾフェノン系化合物から選択される少なくとも一種の紫外線吸収剤と、
ポリ(メタ)アクリレートまたはポリオレフィンから選択される樹脂またはポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との組み合わせ、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の組み合わせ、またはポリエピチオ化合物および/またはポリチエタン化合物から選択される重合性化合物と、
を含む、レンズ基材用組成物
(1)波長440nmの光透過率が80%以上である。
(2)波長420nmの光透過率が70%以下である。
(3)波長410nmの光透過率が5%以下である。
【請求項7】
前記蛍光体に対し、前記紫外線吸収剤を2重量倍以上含む、請求項に記載のレンズ基材用組成物。
【請求項8】
請求項またはに記載の組成物を硬化してなるレンズ基材
【請求項9】
請求項8に記載のレンズ基材を備える、プラスチック眼鏡レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、眼が紫外線に曝露することによる悪影響が、問題視されている。さらに、近年、自然光、オフィス機器の液晶ディスプレイや、スマートフォンまたは携帯電話等の携帯機器のディスプレイ等からの発光に含まれる青色光により、眼の疲れや痛みを感じるなど、眼への影響が問題となってきており、眼が、紫外線から420nm程度の比較的短波長の青色光に曝露する量を低減させることが望まれてきている。
【0003】
420nm程度の短波長青色光の眼への影響については、非特許文献1に記載されている。
この文献では、411nmと470nmのピーク波長の異なる青色LED光の照射による網膜神経細胞(ラットの培養網膜神経R28細胞)へのダメージを検証している。その結果、411nmにピーク波長を有する青色光の照射(4.5W/m)は24時間以内に網膜神経細胞の細胞死を引き起こすのに対し、470nmにピーク波長を有する青色光では、同じ量の照射でも細胞に変化は起こらないことが示されており、400〜420nm波長の光の暴露を抑えることが目の障害予防に重要であることが示されている。
【0004】
特許文献1には、フラーレン類を青色光の吸収成分として使用した光学物品が記載されている。
【0005】
特許文献2には、特定の吸収波長を有する色素と紫外線吸収剤とを含む防眩光学要素が記載されている。当該文献には、防眩光学要素が短波長側可視光域をカットすることができると記載されている。
【0006】
特許文献3には、透明性熱可塑性樹脂と、特定の吸収波長を有する紫外線吸収剤と、酸化鉄微粒子とを含む熱可塑性樹脂組成物と、当該組成物から得られた成形体が記載されている。当該文献には、この成形体が420nmの波長光の吸収能に優れ、眼球保護効果に優れると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−93927号公報
【特許文献2】国際公開2012/165050号パンフレット
【特許文献3】国際公開2006/087880号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】The European journal of neuroscience, vol.34, Iss.4, 548-58, (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、フラーレン類によるブロードな可視光吸収スペクトルにより、得られる光学物品が有色であり外観上の問題があった。
【0010】
特許文献2に記載の技術は、可視光領域の中でも比視感度が高い450〜800nmに大きな吸収を有するために、得られるレンズ等の光学要素は有色であり、外観に改善の余地があった。
【0011】
特許文献3に記載の技術は、酸化鉄微粒子を添加するものであることから、成形体が着色することがあり、メガネレンズ等の透明性が要求される分野においては外観上に問題を有していた。また、透明性熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂が用いられており、屈折率やアッベ数等の光学物性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下に示すことができる。
[1] レンズ基材を備えるプラスチックレンズであって、
前記レンズ基材は、
220〜500nmに励起波長を有し、380〜650nmに蛍光波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有し、且つ400〜500nmに最大蛍光波長を有する、ベンゾオキサゾール類およびクマリン類から選択される少なくとも一種の蛍光体と、
ベンゾトリアゾール系化合物およびベンゾフェノン系化合物から選択される少なくとも一種の紫外線吸収剤と、
ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とからなるポリウレタン、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物とからなるポリチオウレタン、またはポリエピチオ化合物および/またはポリチエタン化合物とからなるポリスルフィドから選択される樹脂と、
を含み、さらに
前記レンズ基材は、厚み2mmで測定した光透過率が下記(1)〜(3)の特性を満たす、プラスチックレンズ:
(1)波長440nmの光透過率が80%以上である。
(2)波長420nmの光透過率が70%以下である。
(3)波長410nmの光透過率が5%以下である。
[2] 前記蛍光体に対し、前記紫外線吸収剤を2重量倍以上含む、[1]に記載のプラスチックレンズ。
[3] さらに、コーティング層が積層され、
前記コーティング層は、前記蛍光体および/または前記紫外線吸収剤を含む、[1]または[2]に記載のプラスチックレンズ。
[4] 前記紫外線吸収剤は、前記レンズ基材の少なくとも一方の面の表面近傍に含まれる、[1]に記載のプラスチックレンズ。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のプラスチックレンズからなるプラスチック眼鏡レンズ。
[6] 厚み2mmで測定した光透過率が下記(1)〜(3)の特性を満たすレンズ基材用の組成物であって、
220〜500nmに励起波長を有し、380〜650nmに蛍光波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有し、且つ400〜500nmに最大蛍光波長を有する、ベンゾオキサゾール類およびクマリン類から選択される少なくとも一種の蛍光体と、
ベンゾトリアゾール系化合物およびベンゾフェノン系化合物から選択される少なくとも一種の紫外線吸収剤と、
ポリ(メタ)アクリレートまたはポリオレフィンから選択される樹脂またはポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との組み合わせ、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の組み合わせ、またはポリエピチオ化合物および/またはポリチエタン化合物から選択される重合性化合物と、
を含む、レンズ基材用組成物
(1)波長440nmの光透過率が80%以上である。
(2)波長420nmの光透過率が70%以下である。
(3)波長410nmの光透過率が5%以下である。
[7] 前記蛍光体に対し、前記紫外線吸収剤を2重量倍以上含む、[6]に記載のレンズ基材用組成物。
[8] [6]または[7]に記載の組成物を硬化してなるレンズ基材
[9] [8]に記載のレンズ基材を備える、プラスチック眼鏡レンズ。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有害な紫外線から420nm程度の青色光の遮断効果が高く、無色透明で外観に優れる光学材料を提供することができる。このような本発明の光学材料は、高屈折率、高アッベ数などの光学特性及び、無色透明で外観に優れるとともに有害光の眼への影響が軽減されているため、特にプラスチック眼鏡レンズとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の光学材料は、厚さ2mmにおいて、波長440nmの光透過率が80%以上であり、波長420nmの光透過率が70%以下であり、且つ波長410nmの光透過率が5%以下である。このような特性を満たすことにより、有害な紫外線から420nm程度の青色光の遮断効果が高く、無色透明で外観に優れる。
【0015】
本発明の光学材料は、上記特性を満たすとともに、220〜500nmに励起波長、380〜650nmに蛍光波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有し、且つ400〜500nmに最大蛍光波長を有する蛍光体と、紫外線吸収剤と、を含むことができる。
光学材料は、このような特性を有する蛍光体と紫外線吸収剤を含むことにより、有害な紫外線から420nm程度の青色光をより効果的にカットでき、さらに蛍光体由来の青色発光との相乗効果により、光学材料への着色を抑制することができるため、外観に優れた無色透明な光学材料を得ることができる。
【0016】
蛍光体に対し、紫外線吸収剤を2重量倍以上、好ましくは3重量倍以上含むことが望ましい。紫外線吸収剤を上記の量となるように含むことにより、不自然に感じられる蛍光体由来の青色発光を抑制することができ、無色透明な光学材料を得ることができる。なお、光学材料の機械強度等への影響の観点から、1500重量倍以下である。
【0017】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
第1の実施形態においては、蛍光体と、紫外線吸収剤とを含む光学材料用組成物を用いて光学材料を調製する態様を説明し、第2の実施形態においては、蛍光体を含む光学材料用組成物を用いて光学材料を調製する態様を説明し、第3の実施形態においては、紫外線吸収剤を含む光学材料用組成物を用いて光学材料を調製する態様を説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
本実施形態の光学材料用組成物は、220〜500nmに励起波長、380〜650nmに蛍光波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有し、且つ400〜500nmに最大蛍光波長を有する蛍光体と、紫外線吸収剤と、光学材料用樹脂または重合性化合物(樹脂モノマー)とを含有する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0019】
[蛍光体]
本実施形態に使用される蛍光体は、220〜500nmの波長領域に励起波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有する。さらに吸収された光は380〜650nmの波長領域に蛍光発光し、最大蛍光波長400〜500nmである。蛍光体は、蛍光物質を含んでなる。蛍光体は、蛍光物質そのものであってもよく、蛍光物質を他の物質と混合したものでもよく、蛍光物質を他の粒子状の物質に付着させたものであってもよい。粒子状物質は、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂、ラテックス樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等の粒子状有機ポリマーであっても良いし、アルミナ、シリカ、ガラス、ジルコニア等の粒子状無機物質であっても良い。
【0020】
蛍光物質は、上記蛍光特性を満足する色素であれば特に限定されないが、4,4′−ジアミノスチルベン、4,4′−ジスチリル−ビフェニレン、メチルウンベリフェロン、クマリン類、ジヒドロキノリノン、1,3−ジアリールピラゾリン、ナフタル酸イミド、CH=CH結合を有するベンゾオキサゾール類、ベンゾイソオキサゾール類、ベンゾイミダゾール類、複素環によって置換されたピレン誘導体等を挙げることができ、組み合わせて用いることもできる。特に、蛍光波長の適合性の観点から、ベンゾオキサゾール類やクマリン類が好ましい。
【0021】
[紫外線吸収剤]
本実施形態に使用される紫外線吸収剤は、可視光領域に吸収がないことが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物等が挙げられる。これらの例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチルなどを挙げることができる。本発明においてはこれら紫外線吸収剤の1種以上を用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。これらの中で、好ましい紫外線吸収剤はベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物であり、これらから選択された少なくとも一種を用いることができる。これらの紫外線吸収剤は、紫外線遮蔽効果に優れるとともに、蛍光体の青色発光との相乗効果により、光学材料への着色を抑制することができるため、無色透明な光学材料(成形体)を得ることができる。
【0022】
蛍光体および紫外線吸収剤は、後述するレンズ基材中や光学フィルム中に含有させることができる。さらに、コーティング層中に含有させても良い。これらフィルムやコーティング層は、偏光性を有するものや、フォトクロミック性を有するものを用いることができる。
【0023】
[光学材料用樹脂または重合性化合物]
本実施形態において、光学材料用組成物は、光学材料用樹脂、または重合性化合物を含む。光学材料用樹脂および重合性化合物から得られる樹脂(以下、いずれも単に「樹脂」と記載することもある。)は、透明性樹脂であることが好ましい。
【0024】
(光学材料用樹脂)
光学材料用樹脂として、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリアリル、ポリウレタンウレア、ポリエン−ポリチオール重合体、開環メタセシス重合体、ポリエステル、エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。これらの材料は透明性が高い材料であり、光学材料用途に好適に用いることができる。なお、これらの材料は単独であっても、これらの複合材料であっても良い。
【0025】
ポリカーボネートは、アルコールとホスゲンの反応、またはアルコールとクロロホーメートを反応させる方法、または炭酸ジエステル化合物のエステル交換反応をすることにより得ることができるが、一般的に入手可能な市販品ポリカーボネート樹脂を用いることも可能である。市販品としては帝人化成株式会社製のパンライトシリーズなどを用いることができる。本実施形態の光学材料用組成物には、ポリカーボネートを光学材料用樹脂として含むことができる。
【0026】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロープロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、
等を挙げることができる。
本実施形態の光学材料用組成物には、ポリ(メタ)アクリレートを光学材料用樹脂として含むことができる。
【0027】
ポリオレフィンは、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒やいわゆるポストメタロセン触媒などの公知のオレフィン重合用触媒の存在下で、α−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンを重合することにより製造される。α−オレフィンモノマーは単一成分であっても、複合成分を共重合させても構わない。
【0028】
ポリオレフィンの製造におけるオレフィンの重合反応は、溶液重合、懸濁重合、バルク重合法などの液相重合法や、気相重合法や、その他公知の重合方法で行うことができる。好ましくは、ポリオレフィンの製造は、溶解重合および懸濁重合(スラリー重合)などの液相重合法が用いられ、さらに好ましくは懸濁重合(スラリー重合)法が用いられる。重合の温度や圧力条件は、公知の条件が適用できる。
本実施形態の光学材料用組成物には、ポリオレフィンを光学材料用樹脂として含むことができる。
【0029】
環状ポリオレフィンは、公知のオレフィン重合触媒の存在下で環状オレフィンから選ばれる少なくとも1種の環状オレフィンを重合させることにより製造される。環状オレフィンモノマーは単一成分であっても、複合成分を共重合させても構わない。環状ポリオレフィンとしては、三井化学株式会社製 商標アペルが透明性が高く、好適に使用することができる。
【0030】
ポリアリルは、公知のラジカル発生性の重合触媒の存在下に、アリル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種のアリル基含有モノマーを重合させることにより製造される。アリル基含有モノマーとしては、アリルジグリコールカーボネートやジアリルフタレートが一般的に市販されており、これらは好適に使用することができる。
【0031】
ポリウレタンウレアは、ポリウレタンプレポリマーおよびジアミン硬化剤による反応正成物であり、商標TRIVEXとしてPPGIndustries,Inc.から販売されているものが代表例である。ポリウレタンポリウレアは透明性の高い材料であり、好適に使用することができる。
【0032】
ポリエン−ポリチオール重合体は、1分子中に2個以上のエチレン性官能基を有するポリエン化合物と、1分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物からなる付加重合並びにエチレン鎖状重合による高分子生成物である。
【0033】
ポリエン−ポリチオール重合体における、ポリエン化合物としては、アリルアルコール誘導体、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル類、ウレタンアクリレート及びジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。アリルアルコール誘導体としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルアジペート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル及びソルビトールジアリルエーテル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル類の中で、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等が挙げられる。
【0034】
開環メタセシス重合体は、触媒を用いて環状オレフィン類を開環重合させてなる高分子である。開環重合させることのできる環状オレフィン類としては、環状構造を有するオレフィン類であれば特に制限はないが、通常は炭素原子数3〜40の単環式シクロアルケン類、単環式シクロアルカジエン類、多環式シクロアルケン類、多環式シクロアルカジエン類が挙げられる。単環式シクロアルケン類の具体例としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテンなどが挙げられる。単環式シクロアルカジエン類の具体例としては、例えば、シクロブタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンなどが挙げられる。多環式シクロアルケン類としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどが挙げられる。多環式シクロアルカジエン類としては、例えば、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらは、酸素や硫黄、ハロゲンなどと置換していても良い。さらに水素化して用いても良い。例えば、JSR社ARTON(商標)などが好適な例としてあげることができる。
【0035】
ポリエステルは、アンチモンやゲルマニウム化合物に代表されるルイス酸触媒や、有機酸、無機酸などの公知のポリエステル製造触媒の存在下に縮合重合される。具体的には、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種または二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種または二種以上とから成るもの、またはヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るもの、または環状エステルから成るものをいう。
【0036】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、4,4'−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p'−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらのジカルボン酸のうちテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸とくに2,6−ナフタレンジカルボン酸が、得られるポリエステルの物性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を構成成分とする。これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0037】
グリコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2、3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオー ル、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4'−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(βーヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(βーヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
これらのグリコールのうちエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0038】
ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好ましい。
【0039】
エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物を開環重合してなる樹脂であり、エポキシ化合物としては、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールFグリシジルエーテル等の多価フェノール化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合反応により得られるフェノール系エポキシ化合物;
水添ビスフェノールAグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコール化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合により得られるアルコール系エポキシ化合物;
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートや1,2−ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の多価有機酸化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合により得られるグリシジルエステル系エポキシ化合物;
一級および二級アミン化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合により得られるアミン系エポキシ化合物等が挙げられる。また、その他、4−ビニル−1−シクロヘキサンジエポキシドなどのビニルシクロヘキセンジエポキシド等脂肪族多価エポキシ化合物等を挙げることができる。
【0040】
(重合性化合物)
本実施形態において、光学材料用組成物には重合性化合物を含むことができ、該重合性化合物から得られる樹脂としては、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィドを好ましく用いることができる。これらの材料は透明性が高い材料であり、光学材料用途に好適に用いることが出来る。
【0041】
ポリウレタンは、重合性化合物である、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とから得られる。ポリチオウレタンは、重合性化合物である、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物とから得られる。光学材料用組成物には、これらの樹脂を構成する、以下の重合性化合物を含むことができる。
【0042】
ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、メシチリレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;
イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;
ジフェニルスルフィド−4,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;
2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0043】
ポリオール化合物は、1種以上の脂肪族または脂環族アルコールであり、具体的には、直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコール、脂環族アルコール、これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε−カプロラクトンを付加させたアルコール等が挙げられる。
【0044】
直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオ−ル、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)等が挙げられる。
【0045】
脂環族アルコールとしては、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、3−メチル−1,2−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、4,4'−ビシクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0046】
これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε−カプロラクトンを付加させた化合物でもよい。例えば、グリセロールのエチレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加体、グリセロールのプロピレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加体、カプロラクトン変性グリセロール、カプロラクトン変性トリメチロールプロパン、カプロラクトン変性ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0047】
ポリチオール化合物としては、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2―メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3―メルカプトプロピネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、3,4−チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等を挙げることができる。
【0048】
本実施形態において、ポリウレタンおよびポリチオウレタンは、重合触媒を用いても良いし、用いなくてもよい。また、内部離型剤、ブルーイング剤、などの任意添加剤を用いても構わない。
【0049】
ポリスルフィドは、重合性化合物である、ポリエピチオ化合物やポリチエタン化合物の開環重合による方法により得ることができる。光学材料用組成物には、これらの樹脂を構成する、以下の重合性化合物を含むことができる。
【0050】
ポリエピチオ化合物としては、ビス(1,2−エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2−エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(エピチオエチルチオ)メタン、ビス(エピチオエチルチオ)ベンゼン、ビス[4−(エピチオエチルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(エピチオエチルチオ)フェニル]メタン等のエピチオエチルチオ化合物;
ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1−(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]エタン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルホン、4,4'−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
ビス(2,3−エピチオプロピル)エーテル、ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)メタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルオキシ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−1−(2,3−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアペンタン、1−(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4−(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4−(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,4,5−トリス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[[2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エチル]チオメチル]−2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[[2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エチル]チオメチル]エタン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,7−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−5,7−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルオキシ化合物;
1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[[2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エチル]チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルオキシ化合物;および、
1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]スルホン、4,4'−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ビフェニル等の芳香族の2,3−エピチオプロピルオキシ化合物等を挙げることができる。
【0051】
ポリチエタン化合物としては、金属含有チエタン化合物または非金属チエタン化合物を用いることができる。
これらのポリチエタン化合物は、WO2005−95490や特開2003−327583号公報に開示されるように、分子内に1つ以上のチエタニル基を含有する。好ましくはチエタニル基を合計2つ以上含有する化合物である。例えば、ビスチエタニルスルフィド、ビス(3−チエタニルチオ)ジスルフィド、ビス(3−チエタニルチオ)メタン、3−(((3'−チエタニルチオ)メチルチオ)メチルチオ)チエタン等のスルフィド系チエタン化合物:ビス(3−チエタニル)ジスルフィド、ビス(3−チエタニル)トリスルフィド、ビス(3−チエタニル)テトラスルフィド、ビス(3−チエタニル)ペンタスルフィド等のポリスルフィド系チエタン化合物等が挙げられる。
【0052】
<光学材料用組成物>
本実施形態の光学材料用組成物は、蛍光体と、紫外線吸収剤と、光学材料用樹脂または重合性化合物(樹脂モノマー)とを含む。さらに、その他の成分として、樹脂改質剤等を含んでいてもよい。光学材料用組成物は、これらの成分を所定の方法で混合することにより得ることができる。
【0053】
組成物中の各成分の混合順序や混合方法は、各成分を均一に混合することができれば特に限定されず、公知の方法で行うことができる。公知の方法としては、例えば、添加物を所定量含むマスターバッチを作製して、このマスターバッチを溶媒に分散・溶解させる方法などがある。例えばポリウレタン樹脂の場合、ポリイソシアネート化合物に添加剤を分散・溶解させてマスターバッチを作製する方法などがある。
本実施形態において、ポリウレタンおよびポリチオウレタンを得る際には、重合触媒を用いても良いし、用いなくてもよい。
【0054】
(その他成分)
(内部離型剤)
本実施形態の重合組成物は、成形後におけるモールドからの離型性を改善する目的で、内部離型剤を含むことができる。
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルを用いることができる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独または2種類以上混合して使用することできる。
例えば、STEPAN社製のZelecUN、三井化学社製のMR用内部離型剤、城北化学工業社製のJPシリーズ、東邦化学工業社製のフォスファノールシリーズ、大八化学工業社製のAP、DPシリーズ等、を用いることができる。
【0055】
(樹脂改質剤)
また、本実施形態の重合性組成物には、得られる樹脂の光学物性、耐衝撃性、比重等の諸物性の調節及び、当該組成物の粘度やポットライフの調整を目的に、樹脂改質剤を本実施形態の効果を損なわない範囲で加えることができる。
樹脂改質剤としては、例えば、エピスルフィド化合物、アルコール化合物、アミン化合物、エポキシ化合物、有機酸及びその無水物、(メタ)アクリレート化合物等を含むオレフィン化合物等が挙げられる。
【0056】
(光安定剤)
光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物を用いることができる。ヒンダードアミン系化合物は、市販品としてChemtura社製のLowilite76、Lowilite92、BASF社製のTinuvin144、Tinuvin292、Tinuvin765、ADEKA社製のアデカスタブLA−52、LA−72、城北化学工業社製のJF−95等を挙げることができる。
【0057】
(ブルーイング剤)
ブルーイング剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂からなる光学材料の色相を調整する機能を有するものが挙げられる。ブルーイング剤は、さらに具体的には、青色から紫色を示す物質を含む。
【0058】
本実施形態の光学材料用組成物は、蛍光体に対し、紫外線吸収剤を2重量倍以上、好ましくは3重量倍以上含むことができる。紫外線吸収剤を上記の量となるように含むことにより、不自然に感じられる蛍光体由来の青色発光を抑制することができ、無色透明な光学材料を得ることができる。なお、光学材料の機械強度等への影響の観点から、1500重量倍以下である。
【0059】
光学材料用組成物から得られる成形体は、このような特性を有する蛍光体と紫外線吸収剤を含むことにより、有害な紫外線から420nm程度の青色光を効果的にカットでき、さらに蛍光体由来の青色発光との相乗効果により、光学材料への着色を抑制することができるため、外観に優れた無色透明な光学材料を得ることができる。
【0060】
また、本願発明の効果の観点から、蛍光体を、光学材料用樹脂または重合性化合物の総重量100重量部に対して、0.00001〜1重量部、好ましくは0.0001〜0.1重量部となる量で含むことができる。
【0061】
光学材料用組成物から得られる成形体に蛍光体と紫外線吸収剤を含有させるには、蛍光体と紫外線吸収剤と重合性化合物とを含む光学材料用組成物を混合し、重合させる方法や、蛍光体と紫外線吸収剤と光学材料用樹脂とを含む光学材料用組成物を硬化させる方法により行うことができる。
【0062】
<用途>
本実施形態の光学材料用組成物から得られる成形体は、蛍光体と紫外線吸収剤と光学材料用樹脂とを含み、光学材料として使用することができる。光学材料としては、プラスチック眼鏡レンズ、ゴーグル、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器用レンズ、液晶プロジェクター用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、コンタクトレンズなどの各種プラスチックレンズ、発光ダイオード(LED)用封止材、光導波路、光学レンズや光導波路の接合に用いる光学用接着剤、光学レンズなどに用いる反射防止膜、液晶表示装置部材(基板、導光板、フィルム、シートなど)に用いる透明性コーティングまたは透明性基板、ヘルメットや車両等のフロントガラスに貼り合わせるフイルムやシート等を挙げることができる。
【0063】
このような成形体(光学材料)は、厚さ2mmにおいて、波長440nmの光透過率が80%以上、好ましくは85%以上であり、420nmの光透過率が70%以下、好ましくは50%以下であり、且つ410nmの光透過率が5%以下であり、好ましくは2%以下である。上記透過率の範囲であれば、有害な紫外線から420nm程度の青色光の遮断効果が高く、無色透明で外観に優れる。また、440nmの光透過率を80%以上とすることにより、無色透明の外観に優れた成形体(光学材料)を得ることができる。なお、これらの数値範囲は任意に組み合わせることができる。
【0064】
本実施形態の光学材料は、上記のような特性を有する蛍光体と紫外線吸収剤を含むことにより、有害な紫外線から420nm程度の青色光を効果的にカットすることができ、無色透明な外観に優れた光学材料を得ることができる。したがって、光学材料(プラスチック眼鏡レンズ)を通して青色光を含む光源を観察すると、蛍光体と紫外線吸収剤を含まないプラスチック眼鏡レンズと比較して、眼精疲労を効果的に改善することができる。
さらに、本実施形態の光学材料は、紫外線吸収剤を上記の量となるように含むことにより、不自然に感じられる蛍光体由来の発光を抑制することができ、無色透明な光学材料を得ることができる。
【0065】
本実施形態の光学材料は、レンズ基材と、必要に応じて積層されるフィルム層とコーティング層とを備えるプラスチックレンズとして好適に用いることができる。前述の蛍光体および紫外線吸収剤は、前記レンズ基材または前記フィルム層のいずれかに含まれ、さらに前記コーティング層に前記蛍光体および/または前記紫外線吸収剤を含むことができる。蛍光体は、上記効果の観点から、光学材料100重量部に対して、0.00001〜1重量部、好ましくは0.0001〜0.1重量部となる量で含むことができる。
【0066】
本実施形態のプラスチックレンズとしては、以下の構成を挙げることができる。
プラスチックレンズA:光学材料用組成物からなるレンズ基材を備える。
プラスチックレンズB:レンズ基材(光学材料用組成物から得られるレンズ基材を除く)表面の少なくとも一方の面上に、光学材料用組成物からなるフィルムまたは層を備える。
プラスチックレンズC:光学材料用組成物からなるフィルムの両面上に、レンズ基材(光学材料用組成物から得られるレンズ基材を除く)が積層されている。
光学材料は、プラスチック眼鏡レンズに好適に用いることができる。
【0067】
(プラスチックレンズA)
光学材料用組成物からなるレンズ基材を備えるプラスチックレンズAを製造する方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法としてレンズ注型用鋳型を用いた注型重合が挙げられる。レンズ基材は、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリ(メタ)アクリレート等から構成することができ、蛍光体と、紫外線吸収剤と、これら光学材料用樹脂または重合性化合物とを含む光学材料用組成物を用いることができる。
【0068】
具体的には、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内に光学材料用組成物を注入する。この時、得られるプラスチックレンズに要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0069】
そして、組成物が注入された後、レンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて加熱して硬化成型する。樹脂成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
【0070】
本実施形態において、樹脂を成形する際には、上記「その他の成分」に加えて、目的に応じて公知の成形法と同様に、鎖延長剤、架橋剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤、密着性向上剤などの種々の添加剤を加えてもよい。
また、本実施形態におけるプラスチックレンズAは、その目的や用途に合わせて、光学材料用組成物からなるレンズ基材上に種々のコーティング層を有していてもよい。コーティング層には蛍光体を含むことができる。蛍光体および/または紫外線吸収剤を含むコーティング層は、蛍光体および/または紫外線吸収剤を含むコーティング材料(組成物)を用いて調製することができ、または紫外線吸収剤を必要に応じて含むコーティング層を形成した後、蛍光体を水または溶媒中に分散させて得られた分散液に、コーティング層付きプラスチックレンズを浸漬して蛍光体をコーティング層中に含浸させることにより調製することができる。
【0071】
(プラスチックレンズB)
本実施形態におけるプラスチックレンズBは、レンズ基材表面の少なくとも一方の面上に、光学材料用組成物からなるフィルムまたは層を備える。レンズ基材は、本実施形態の光学材料用組成物から形成されたものではない。
プラスチックレンズBの製造方法としては、(1)レンズ基材を製造し、次いで当該レンズ基材の少なくとも一方の面上に、光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートを貼り合わせる方法、(2)後述のようなガスケットまたはテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内において、光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートをモールドの一方の内壁に沿って配置し、次いでキャビティ内に重合性組成物を注入し、硬化させる方法等を挙げることができる。
【0072】
前記(1)の方法において用いられる、光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートは、特に限定されないが、溶融混練や含浸等により得られた光学材料用組成物のペレットを、従来種々公知の方法、具体的には、例えば、射出成形法、異形押出成形法、パイプ成形法、チューブ成形法、異種成形体の被覆成形法、インジェクションブロー成形法、ダイレクトブロー成形法、Tダイシートまたはフィルム成形法、インフレーションフィルム成形法、プレス成形法などの成形方法により得ることができる。得られるフィルムまたはシートは、ポリカーボネート、またはポリオレフィン等を含んでなる。
レンズ基材は、公知の光学用樹脂から得ることができ、光学用樹脂としては、(チオ)ウレタン、ポリスルフィド等を挙げることができる。
光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートを、レンズ基材の面上に貼り合わせる方法は公知の方法を用いることができる。
【0073】
前記(2)の方法における注型重合は、プラスチックレンズAの方法と同様に行うことができ、注型重合に用いる組成物としては、重合性化合物を含む組成物(蛍光体および紫外線吸収剤を含まない)を挙げることができる。
また、本実施形態におけるプラスチックレンズBは、その目的や用途に合わせて、光学材料用組成物からなるレンズ基材上または「フィルムまたは層」上に種々のコーティング層を有していてもよい。プラスチックレンズAと同様に、コーティング層には蛍光体および/または紫外線吸収剤を含むことができる。
【0074】
(プラスチックレンズC)
本実施形態におけるプラスチックレンズCは、光学材料用組成物からなるフィルムの両面上に、レンズ基材(光学材料用組成物から得られるレンズ基材を除く)が積層されている。プラスチックレンズCは、プラスチック偏光レンズとして用いることができる。
プラスチックレンズCの製造方法としては、(1)レンズ基材を製造し、光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートの両面上に貼り合わせる方法、(2)ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内において、光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートを、モールドの内壁から離間した状態で配置し、次いでキャビティ内に重合性組成物を注入し、硬化させる方法等を挙げることができる。
【0075】
前記(1)の方法において用いられる、光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートおよびレンズ基材は、プラスチックレンズBの(1)の方法と同様のものを用いることができる。光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートを、レンズ基材の面上に貼り合わせる方法は公知の方法を用いることができる。
【0076】
前記(2)の方法は具体的に以下のように行うことができる。
プラスチックレンズAの製造方法で用いた、レンズ注型用鋳型の空間内に、光学材料用組成物からなるフィルムまたはシートを、この両面が、対向するフロント側のモールド内面と並行となるように設置する。
次いで、レンズ注型用鋳型の空間内において、モールドと偏光フィルムとの間の2つの空隙部に、所定の注入手段により、重合性化合物を含む組成物(蛍光体および紫外線吸収剤を含まない)を注入する。
【0077】
そして、組成物が注入された後、レンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて加熱して硬化成型する。樹脂成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
また、本実施形態におけるプラスチックレンズCは、その目的や用途に合わせて、レンズ基材上に種々のコーティング層を有していてもよい。プラスチックレンズAと同様に、コーティング層には蛍光体および/または紫外線吸収剤を含むことができる。
【0078】
[プラスチック眼鏡レンズ]
本実施形態のプラスチックレンズを用いて、プラスチック眼鏡レンズを得ることができる。
本実施形態のプラスチック眼鏡レンズは、屋外での作業やオフィスワークやスマートフォンの操作など青色光を含む光源を観察する際に用いることで眼精疲労を抑制することができる。なお、必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。
【0079】
コーティング層として、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0080】
これらのコーティング層はそれぞれ、本実施形態において用いられる蛍光体および/または紫外線吸収剤、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0081】
プライマー層は通常、後述するハードコート層とレンズとの間に形成される。プライマー層は、その上に形成するハードコート層とレンズとの密着性を向上させることを目的とするコーティング層であり、場合により耐衝撃性を向上させることも可能である。プライマー層には得られたレンズに対する密着性の高いものであればいかなる素材でも使用できるが、通常、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。プライマー組成物は組成物の粘度を調整する目的でレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。無論、無溶剤で使用してもよい。
【0082】
プライマー層は塗布法、乾式法のいずれの方法によっても形成することができる。塗布法を用いる場合、プライマー組成物を、スピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法でレンズに塗布した後、固化することによりプライマー層が形成される。乾式法で行う場合は、CVD法や真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じてレンズの表面は、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行っておいてもよい。
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等機能を与えることを目的としたコーティング層である。
【0083】
ハードコート層は、一般的には硬化性を有する有機ケイ素化合物とSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiの元素群から選ばれる元素の酸化物微粒子の1種以上および/またはこれら元素群から選ばれる2種以上の元素の複合酸化物から構成される微粒子の1種以上を含むハードコート組成物が使用される。
【0084】
ハードコート組成物には上記成分以外にアミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物および多官能性エポキシ化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。ハードコート組成物にはレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよいし、無溶剤で用いてもよい。
【0085】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。干渉縞の発生を抑制するため、ハードコート層の屈折率は、レンズとの屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0086】
反射防止層は、通常、必要に応じて前記ハードコート層の上に形成される。反射防止層には無機系および有機系があり、無機系の場合、SiO、TiO等の無機酸化物を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビ−ムアシスト法、CVD法などの乾式法により形成される。有機系の場合、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用い、湿式により形成される。
【0087】
反射防止層は単層および多層があり、単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。効果的に反射防止機能を発現するには多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。この場合も低屈折率膜と高屈折率膜との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。高屈折率膜としては、ZnO、TiO、CeO、Sb、SnO、ZrO、Ta等の膜があり、低屈折率膜としては、SiO膜等が挙げられる。
【0088】
反射防止層の上には、必要に応じて防曇層、防汚染層、撥水層を形成させてもよい。防曇層、防汚染層、撥水層を形成する方法としては、反射防止機能に悪影響をもたらすものでなければ、その処理方法、処理材料等については特に限定されずに、公知の防曇処理方法、防汚染処理方法、撥水処理方法、材料を使用することができる。例えば、防曇処理方法、防汚染処理方法では、表面を界面活性剤で覆う方法、表面に親水性の膜を付加して吸水性にする方法、表面を微細な凹凸で覆い吸水性を高める方法、光触媒活性を利用して吸水性にする方法、超撥水性処理を施して水滴の付着を防ぐ方法などが挙げられる。また、撥水処理方法では、フッ素含有シラン化合物等を蒸着やスパッタによって撥水処理層を形成する方法や、フッ素含有シラン化合物を溶媒に溶解したあと、コーティングして撥水処理層を形成する方法等が挙げられる。
【0089】
[第2の実施形態]
本実施形態においては、蛍光体を含む光学材料用組成物を用いて光学材料を調製することができる。なお、光学材料用組成物中に、紫外線吸収剤を含まない以外は、第1の実施形態に記載の各種成分を用いることができ、同様の構成を採用することができる。この態様について以下に説明する。なお、前述の実施形態と同様である場合は適宜説明を省略する。
【0090】
本実施形態における光学材料はプラスチック眼鏡レンズとして好適に用いることができ、レンズ基材と、必要に応じて積層されるフィルム層とコーティング層とを備える。
【0091】
本実施形態のプラスチック眼鏡レンズは、例えば、以下の工程により得ることができる。
工程a:蛍光体と樹脂(光学材料用樹脂または重合性化合物から得られる樹脂)とを含むレンズ基材を準備する。
工程b:得られたレンズ基材に、紫外線吸収剤を含浸させる。
【0092】
工程aは、光学材料用組成物中に紫外線吸収剤を含まない以外は、第1の実施形態に記載の光学材料用組成物を用いることができ、第1の実施形態と同様にしてレンズ基材(成形体)を得ることができる。
工程bでは、紫外線吸収剤を水または溶媒中に分散させて得られた分散液に、得られたレンズ基材を浸漬して、紫外線吸収剤をレンズ基材中に含浸させ、乾燥する。
【0093】
紫外線吸収剤の含浸量は、分散液中の紫外線吸収剤の濃度と、分散液の温度、レンズ基材を浸漬させる時間により所望の含浸量に制御することができる。濃度を高く、温度を高く、浸漬時間を長くするほどに含浸量が増す。含浸量を精密に制御したい場合は、含浸量が少ない条件で、複数回浸漬を繰り返すことにより実施する。
【0094】
本実施形態においては、さらに、紫外線吸収剤が含浸されたレンズ基材の少なくとも一方の面に、コーティング層を形成する工程を含むことができる。
また、紫外線吸収剤が含浸されたレンズ基材を、フィルムの少なくとも一方の面に、好ましくは両面に積層する工程を含むこともできる。
【0095】
第2の実施形態において、当該製造方法により得られた光学材料は、レンズ基材と、必要に応じて積層されるフィルム層とコーティング層とを備える。そして、紫外線吸収剤は、蛍光体を含むレンズ基材の少なくとも一方の面の表面近傍に含まれる。蛍光体に対する紫外線吸収剤の量は、レンズ基材の少なくとも一方の面の表面近傍に局在していれば特に限定されず、厚み2mmで測定した透過率が前記(1)〜(3)の特性を満たすように調整される。このような光学材料は、不自然に感じられる蛍光体由来の発光を効果的に抑制することができ、プラスチック眼鏡レンズとして好適に用いることができる。
【0096】
[第3の実施形態]
本実施形態においては、紫外線吸収剤を含む光学材料用組成物を用いて光学材料を調製することができる。なお、光学材料用組成物中に、蛍光体を含まない以外は、第1の実施形態に記載の各種成分を用いることができ、同様の構成を採用することができる。この態様について以下に説明する。なお、前述の実施形態と同様である場合は適宜説明を省略する。
【0097】
本実施形態における光学材料は、レンズ基材と、必要に応じて積層されるフィルム層とコーティング層とを備えるプラスチックレンズとして用いることができる。蛍光体または紫外線吸収剤は、レンズ基材、フィルム層およびコーティング層の少なくとも一つに含んでいればよい。
【0098】
具体的には、紫外線吸収剤を含む(蛍光体を含まない)光学材料用組成物を用いて成形体(レンズ基材や光学フィルム)を調製し、次いで、蛍光体を水または溶媒中に分散させて得られた分散液に当該成形体を浸漬して蛍光体を成形体中に含浸させ、乾燥する。このようにして得られた、成形体を用いて光学材料を調製することができる。
【0099】
蛍光体の含浸量は、分散液中の蛍光体の濃度と、分散液の温度、光学材料用樹脂組成物を浸漬させる時間により所望の含浸量に制御することができる。濃度を高く、温度を高く、浸漬時間を長くするほどに含浸量が増す。含浸量を精密に制御したい場合は、含浸量が少ない条件で、複数回浸漬を繰り返すことにより実施する。
【0100】
本実施形態においては、さらに、蛍光体が含浸されたレンズ基材の少なくとも一方の面に、コーティング層を形成する工程を含むことができる。
また、蛍光体が含浸されたレンズ基材を、フィルムの少なくとも一方の面に、好ましくは両面に積層する工程を含むこともできる。
【0101】
第3の実施形態において、当該製造方法により得られた光学材料は、レンズ基材と、必要に応じて積層されるフィルム層とコーティング層とを備える。そして、蛍光体は、紫外線吸収剤を含むレンズ基材の少なくとも一方の面の表面近傍に含まれる。
【0102】
また、蛍光体を含むコーティング材料を用い、プラスチックレンズなどの光学材料上に蛍光体含有コーティング層を形成することもできる。
【0103】
以上、本発明を実施形態により説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の効果を損なわない範囲で様々な態様を取り得ることができる。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明の実施例において用いた材料・評価方法は以下の通りである。
【0105】
蛍光体
・TINOPAL OB(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、2,5−ビス(5−t−ブチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン):励起波長245〜445nm、蛍光波長390〜605nm、極大励起波長380nm、最大蛍光波長440nm
・7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン:励起波長235〜440nm、蛍光波長380〜550nmnm、極大励起波長370nm、最大蛍光波長425nm
【0106】
紫外線吸収剤
・Viosorb 583(共同薬品社製、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)
・SEESORB106(シプロ化成社製、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン)
【0107】
青色光カット率の測定
2mm厚のプラノーレンズ、または2mm厚の樹脂平板を作成し、日本分光製UV−VISスペクトロメータで吸収スペクトルを測定する。380〜500nmの平均透過率を求め、100から減じた値を青色光カット率として算出する。
光透過率の測定
2mm厚のプラノーレンズ、または2mm厚の樹脂平板を作成し、日本分光製UV−VISスペクトロメータで800nm〜250nmの間の吸収スペクトルを測定し、各波長におけると透過率を測定する。
屈折率、アッベ数の測定
島津製プルフリッヒ屈折計KPR−30を用い、20℃にて測定した。
ガラス転移温度[Tg]の測定
TMAペネトレーション法(50g荷重、ピン先0.5mmφ、昇温速度10℃/min)により、島津製熱機械分析装置TMA−60にて測定した。
【0108】
(実施例1)
十分に乾燥させたフラスコにジブチル錫(II)ジクロリド0.042g、ZelecUN(ステファン社製)0.084g、Viosorb 583 1.05g、TINOPAL OB 0.0124gを正確に仕込み、2,5(6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン35.4gを仕込み、25℃で1時間攪拌して溶解させた。その後、この調合液にペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)16.7g、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン17.9gを仕込み、これを25℃で30分攪拌した調合液を調製した。
調合液を600Paにて1時間脱泡を行った後、中心厚2mm、直径80mmの6Cのプラノー用ガラスモールドに注入した。
このガラスモールドを25℃から16時間かけて少しずつ昇温し、120℃まで上昇させ、120℃で4時間保温した。室温まで冷却させて、ガラスモールドから外し、プラノーレンズを得た。青色光カット率を測定した結果、40.8%であった。また、波長440nmの光透過率が88.4%であり、420nmの光透過率が39.3%であり、410nmの光透過率が0.5%であった。得られたレンズの屈折率:1.598、アッベ数:39、Tg:112℃であった。
レンズをNIDEK製エッジングマシーンで適当な形状に削り取り、メガネフレームを装着してサンプルメガネを得た。
【0109】
(実施例2)
実施例1に記載の方法で、TINOPAL OBの代わりに7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン0.021gを用いて行った。それ以外は、実施例1の方法と同様に行った。得られたプラノーレンズの青色光カット率は、40.4%であった。また、波長440nmの光透過率が84.6%であり、420nmの光透過率が43.4%であり、410nmの光透過率が3.3%であった。
【0110】
(実施例3)
Viosorb 583を無添加とした以外は実施例1と同様にしてプラノーレンズを製造した。SEESORB106 10.0gと界面活性剤(日華化学社製、サンソルト7000)10.0g、ベンジルアルコール20.0gを水1リットルに溶解させ、95℃に加温した紫外線吸収剤含有液中に、プラノーレンズを30分間浸漬した。プラノーレンズを取り出し、水洗、アセトンで洗浄後、乾燥してプラノーレンズを得た。紫外線吸収剤はレンズの表面近傍に存在していた。得られたプラノーレンズの青色光カット率は41.4%であった。また、波長440nmの光透過率が88.2%であり、420nmの光透過率が41.8%であり、410nmの光透過率が0.8%であった。
【0111】
(比較例1)
実施例1のViorsorb583の使用量を0.02gとした以外は、実施例1と同様にして行った。紫外線吸収剤の量は、蛍光体に対して1.6重量倍である。青色光カット率は39.6%であった。また、波長440nmの光透過率が87.6%であり、420nmの光透過率が41.3%であり、410nmの光透過率が7.2%であった。
【0112】
(比較例2)
実施例1に記載の方法で、TINOPAL OBを用いないで行った。それ以外は実施例1と同様にして行った。青色光カット率は31.6%であった。また、波長440nmの光透過率が89.0%であり、420nmの光透過率が85.1%であり、410nmの光透過率が65.6%であった。
【0113】
サンプルレンズの評価
実施例と比較例で作成したサンプルレンズを装着して、5時間連続して液晶ディスプレイを備えたパソコンの操作を実施した。次の日に装着しないで5時間連続してパソコンの操作を実施した。A〜Eの5人で評価し、サンプルレンズを装着した方が眼精疲労を感じなかった場合は〇、サンプルレンズを装着しても眼精疲労に変化がないと感じた場合は△、装着した方が眼精疲労を感じた場合は×とした。
また、各実施例と比較例で得られたサンプルレンズの外観を目視にて評価した。
【0114】
【表1】
【0115】
以上の結果より、実施例で得られたサンプルレンズでは、比較例と比べて眼精疲労が感じられず、また外観に優れていることが分かった。
【0116】
この出願は、2013年2月27日に出願された日本出願特願2013−036694号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0117】
本発明は以下の態様も取り得る。
(1) 220〜500nmに励起波長を有し、380〜650nmに蛍光波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有し、且つ400〜500nmに最大蛍光波長を有する蛍光体と、紫外線吸収剤とを含み、
前記蛍光体に対し、前記紫外線吸収剤を2重量倍以上含む、光学材料。
(2) 前記蛍光体がベンゾオキサゾール類および/またはクマリン類を含んでなる、(1)に記載の光学材料。
(3) 前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物およびサリチル酸エステル系化合物から選択される少なくとも一種である、(1)または(2)に記載の光学材料。
(4) レンズ基材と、必要に応じて積層されるフィルム層とコーティング層とを備え、
前記蛍光体および前記紫外線吸収剤は、前記レンズ基材、前記フィルム層および前記コーティング層の少なくとも一つに含まれる、(1)〜(3)のいずれかに記載の光学材料。
(5) 前記レンズ基材および前記フィルム層の少なくとも一方が、220〜500nmに励起波長を有し、380〜650nmに蛍光波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有し、且つ400〜500nmに最大蛍光波長を有する蛍光体と、紫外線吸収剤と、光学材料用樹脂または樹脂モノマーとを含む、光学材料用組成物から得られる、(4)に記載の光学材料。
(6) 前記光学材料用樹脂または前記樹脂モノマーから得られる樹脂が、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリオレフィンである、(5)に記載の光学材料。
(7) 厚さ2mmにおいて、波長440nmの光透過率が80%以上であり、波長420nmの光透過率が70%以下であり、且つ波長410nmの光透過率が5%以下である、光学材料。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の光学材料からなるプラスチック眼鏡レンズ。
(9) 220〜500nmに励起波長を有し、380〜650nmに蛍光波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有し、且つ400〜500nmに最大蛍光波長を有する蛍光体と、紫外線吸収剤と、光学材料用樹脂または樹脂モノマーとを含み、
前記蛍光体に対し、前記紫外線吸収剤を2重量倍以上含む、光学材料用組成物。
(10) 前記蛍光体がベンゾオキサゾール類および/またはクマリン類を含んでなる、(9)に記載の光学材料用組成物。
(11) 前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物およびサリチル酸エステル系化合物から選択される少なくとも一種である、(9)または(10)に記載の光学材料用組成物。
(12) 前記光学材料用樹脂または前記樹脂モノマーから得られる樹脂が、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリスルフィド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートまたはポリオレフィンである、(9)〜(11)のいずれかに記載の光学材料用組成物。
(13) (9)〜(12)のいずれかに記載の組成物からなる成形体。
(14) 220〜500nmに励起波長を有し、380〜650nmに蛍光波長を有し、350〜400nmに極大励起波長を有し、且つ400〜500nmに最大蛍光波長を有する蛍光体と、紫外線吸収剤と、光学材料用樹脂とを含んでなる、成形体。
(15) (13)または(14)に記載の成形体からなる光学材料。
(16) (13)または(14)に記載の成形体からなるレンズ基材を備える、プラスチック眼鏡レンズ。
(17) (13)または(14)に記載の成形体からなるフィルム。
(18) レンズ基材表面の少なくとも一方の上に、(17)に記載のフィルムからなる層を備える、プラスチック眼鏡レンズ。
(19) (17)に記載のフィルムの両面上にレンズ基材層を備える、プラスチック眼鏡レンズ。
(20) 厚さ2mmにおいて、波長440nmの光透過率が80%以上であり、420nmの光透過率が70%以下であり、且つ410nmの光透過率が5%以下である、プラスチック眼鏡レンズ。