(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る記憶媒体の大規模自動化試験システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る記憶媒体の大規模自動化試験システムの側面図である。
図2は、
図1のA−A矢視図である。
図3は、
図1のB−B矢視図である。なお、以下の説明では、本実施形態に係る大規模自動化試験システム1の通常の使用態様における上側を、大規模自動化試験システム1の上側とし、大規模自動化試験システム1の通常の使用態様における下側を大規模自動化試験システム1の下側として説明する。本実施形態に係る大規模自動化試験システム1は、記憶媒体の動作試験等を行う試験装置50を複数用いて大量の試験を行う試験システムになっており、試験を行う際に試験装置50を設置するスタッカーラック4を有している。
【0017】
このスタッカーラック4は、試験装置50を収容可能な収容部である棚5を備えており、スタッカーラック4は、この棚5を水平方向と鉛直方向とにそれぞれ複数有している。具体的には、本実施形態に係る大規模自動化試験システム1では、1つのスタッカーラック4に、水平方向に20個の棚5を備え、この20個の棚5を上下2列で備えている。つまり、1つのスタッカーラック4は、40個の棚5を有している。
【0018】
このようにスタッカーラック4に複数備えられる棚5は、試験装置50を出し入れする開口部6が、1つのスタッカーラック4において全て同じ方向に開口しており、即ち、複数の開口部6は、スタッカーラック4における同一面上に形成されている。大規模自動化試験システム1は、棚5の開口部6が対向する向きで平行に並ぶ2つのスタッカーラック4を1組として、1組、または複数組有している。
【0019】
大規模自動化試験システム1は、スタッカーラック4の長手方向における延長線上に、試験を行う記憶媒体の、試験装置50への着脱作業を行う着脱部である作業スペース8を有している。作業スペース8は、例えば、1組のスタッカーラック4のうち、一方のスタッカーラック4の長手方向における一端側に隣接しており、スタッカーラック4の延在方向に2つが並んで設けられている。この作業スペース8は、作業スペース8に位置する試験装置50に対して、スタッカーラック4の延在方向における両側から、記憶媒体の着脱を行うことができるように設けられている。
【0020】
また、1組のスタッカーラック4の間には、試験装置50の搬送や、棚5への試験装置50の装填、棚5からの試験装置50の回収を行う搬送装置であるクレーン10と、クレーン10の軌道であるレール15とが配設されている。このうち、レール15は、開口部6が対向する向きで並ぶ2つのスタッカーラック4の間に、スタッカーラック4に沿って、スタッカーラック4が設置される建屋の床に配設されており、スタッカーラック4の長手方向におけるスタッカーラック4の配設領域に渡って配設されている。つまり、レール15は、スタッカーラック4における棚5の開口部6が位置する側に配設されている。
【0021】
さらに、レール15は、スタッカーラック4の配設領域から作業スペース8側にも延びており、スタッカーラック4の長手方向において作業スペース8が位置する領域にも設置されている。このようにレール15は、作業スペース8が位置する部分から、スタッカーラック4における作業スペース8が位置する側の反対側の端部が位置する部分に亘って設けられている。
【0022】
クレーン10は、電気モータ等によって構成されるクレーン駆動装置40(
図6参照)により、所望の方向に移動可能になっている。具体的には、クレーン10は、クレーン駆動装置40によって、レール15に沿って移動可能になっており、このためクレーン10は、作業スペース8が位置する部分から、スタッカーラック4の配設領域に亘って移動可能になっている。このため、クレーン10は、作業スペース8とスタッカーラック4との間で、試験装置50の搬送を行うことが可能になっている。
【0023】
また、クレーン10は、試験装置50を載置する載置部12を有しており、載置部12は、クレーン駆動装置40によって、上下方向に延びる昇降ガイド11に沿って昇降可能になっている。さらに、載置部12は、クレーン駆動装置40によって、レール15の延在方向に直交する水平方向に移動可能になっており、即ち、対向する双方のスタッカーラック4に対して、近付いたり離れたりする方向に移動可能になっている。
【0024】
このクレーン10は、各種演算処理を行うECU(Electronic Control Unit)や、情報を記憶する記憶部等を有し、クレーン10の動作管理を行う搬送装置制御装置であるクレーン制御装置25に接続されている。これにより、クレーン10は、クレーン制御装置25によって制御され、各動作が可能になっている。
【0025】
さらに、クレーン制御装置25は、クレーン制御装置25と同様に各種演算処理を行うECUや、情報を記憶する記憶部等を有し、大規模自動化試験システム1全体の制御及び管理を行うシステム制御装置20に接続されている。これにより、クレーン制御装置25は、システム制御装置20によって制御可能になっており、クレーン制御装置25は、システム制御装置20からの制御信号に基づいてクレーン10の動作管理を行う。
【0026】
このシステム制御装置20は、クレーン制御装置25を介したクレーン10の動作管理のみでなく、棚5や試験装置50の管理機能や緊急時の試験中止機能を有している。また、システム制御装置20は、試験装置50で保持する記憶媒体の試験開始指示を試験装置50に対して行ったり、記憶媒体の試験結果情報収集や管理を行ったり、大規模自動化試験システム1のメンテナンス情報の管理を行ったりする。
【0027】
図4は、
図1に示す試験装置の模式図である。試験装置50は、棚5に収容可能な略直方体の形状で形成されており、多種の記憶媒体のうち、HDD(Hard Disk Drive)60の試験を行うことができる装置になっている。この試験装置50は、使用状態における四方の側面のうち、互いに反対方向に向かう2つの面に、HDD60を挿入する挿入部51を多数備えている。この挿入部51は、試験を行うHDD60の試験装置50への挿入や試験装置50からの取り出しを行うと共に、HDD60の保持が可能になっている。挿入部51は、本実施形態に係る大規模自動化試験システム1で用いる試験装置50では、1つの面に120個が設けられており、この面が2面なので1台の試験装置50には、挿入部51が240個設けられている。
【0028】
各挿入部51内には、HDD60が備えるインターフェース基板(図示省略)に接続する制御基板(図示省略)が設けられており、HDD60に対して電力を供給したり、HDD60との間で信号のやり取りを行ったりすることが可能になっている。これにより、試験装置50は、挿入部51に挿入されたHDD60の試験を行うことが可能になっており、1台の試験装置50で、最大で240個のHDD60の試験を並行して行うことができる。
【0029】
図5は、実施形態に係る大規模自動化試験システムの各装置の関係を示す平面模式図である。スタッカーラック4の各棚5には、試験装置50に電力を供給したり、試験装置50との間で通信を行ったりする試験装置制御部である試験装置制御用コントローラ30が設けられている。この試験装置制御用コントローラ30は、外部の電源(図示接続)に接続されており、試験装置50側の電源用の接点と接続することにより、試験装置50に対して電力を供給する電源接続部31と、試験装置50側の通信用の接点と接続することにより、試験装置50との間でネットワーク接続を行う通信接続部32と、をそれぞれ有している。
【0030】
このうち、電源接続部31は、クレーン10による棚5への試験装置50の装填動作によって接続される給電機構によって構成されている。同様に、通信接続部32は、棚5への試験装置50の装填動作によって接続される通信機構によって構成されている。電源接続部31と通信接続部32とは、例えば、試験装置50の下面と、棚5の底面にそれぞれ接続部を有すると共に、ガイドピンが配設され、試験装置50を棚5上に載置した際に、ガイドピンによってガイドされながら、試験装置50の自重によって接続部同士が機械的に接続されるように構成されている。これらのように、電源接続部31と通信接続部32とは、接続をするための動作を行わせることなく、試験装置50の装填動作により機械的な接続を行うことができるように構成されている。
【0031】
また、大規模自動化試験システム1が有する各制御装置は、LAN(Local Area Network)35によって、装置間での情報交換が可能になっている。このため、システム制御装置20とクレーン制御装置25と試験装置制御用コントローラ30とは、互いにLAN35によって接続されている。これにより、システム制御装置20は、試験装置制御用コントローラ30を介して試験装置50と通信を行うことが可能になっており、試験装置50に対して試験のための動作を行わせたり、試験の状態についての情報を試験装置50から受け取ったりすることができる。
【0032】
また、クレーン制御装置25は、クレーン10とLAN35によって接続されており、クレーン駆動装置40(
図6参照)に対して制御信号を送信することにより、クレーン10を作動させることができる。これにより、システム制御装置20は、クレーン制御装置25を介してクレーン10の制御を行うことが可能になっている。
【0033】
図6は、実施形態に係る大規模自動化試験システムのシステム構成図である。クレーン10の動作を行うクレーン制御装置25は、クレーン10を駆動させるクレーン駆動装置40に接続され、クレーン駆動装置40の制御が可能になっている。クレーン駆動装置40は、クレーン10をレール15に沿って移動させるクレーン移動装置41と、クレーン10の載置部12を昇降ガイド11に沿って昇降させる昇降装置42と、載置部12をスタッカーラック4の棚5に近付かせたり離したりする方向に水平移動させる装填回収装置43と、有している。このうち、装填回収装置43は、載置部12を水平移動させることによって、棚5に対して載置部12を出し入れすることができるようになっている。
【0034】
これらのクレーン移動装置41、昇降装置42、装填回収装置43は、モータ等の動力源やギヤ等の動力伝達手段からなり、動力源で発生した動力を用いてクレーン10を作動させることにより、クレーン10に対して所望の動作を行わせることが可能になっている。
【0035】
また、試験装置制御用コントローラ30は、スタッカーラック4の棚5に応じて複数が設けられており、複数の試験装置制御用コントローラ30は、LAN35によって全てシステム制御装置20に接続されている。電源接続部31と通信接続部32とは、各試験装置制御用コントローラ30に設けられており、これにより試験装置制御用コントローラ30は、それぞれ独立して異なる試験装置50に対して、電源接続とネットワーク接続とを行うことが可能になっている。
【0036】
また、各試験装置制御用コントローラ30には、試験装置50が棚5内に装填されたか否かを検出する装填確認センサ47と、載置部12が棚5内に位置しているか否かを検出するクレーン挿入センサ48と、が接続されている。この装填確認センサ47とクレーン挿入センサ48とは、共に棚5内に配設されており、各棚5において、棚5内への試験装置50の装填状態や、棚5内への載置部12の挿入状態を検出することができる。装填確認センサ47とクレーン挿入センサ48とが接続されている試験装置制御用コントローラ30は、これらの状態を検出することが可能になっている。
【0037】
なお、装填確認センサ47とクレーン挿入センサ48とは、赤外線を用いるセンサや、重量を検知するセンサなど、棚5内の試験装置50や載置部12の状態を適切に検知できるものであれば、形式や態様は問わない。
【0038】
また、システム制御装置20は、大規模自動化試験システム1全体の制御及び管理を行うと共に、大規模自動化試験システム1の操作や、HDD60の試験に関する情報及び大規模自動化試験システム1の作動状態に関する情報を、作業者が取得することができるようになっている。このため、システム制御装置20には、キーボード等の入力装置21や、情報の表示装置やスピーカ等の出力装置22が接続されている。
【0039】
この実施形態に係る大規模自動化試験システム1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。大規模自動化試験システム1でHDD60の試験を行う際には、作業スペース8でHDD60を試験装置50に挿入し、試験装置50をクレーン10でスタッカーラック4の棚5まで搬送して棚5に収容した状態で試験を行った後、試験装置50を棚5から回収して作業スペース8まで運搬する。大規模自動化試験システム1では、これらの流れで複数の試験装置50を並行して作動させることにより、多数のHDD60の試験を継続的に行うが、この流れについて、1台の試験装置50の流れを説明することにより詳細に説明する。
【0040】
HDD60の試験を行う際には、まず、作業スペース8に位置した状態の試験装置50に対して、作業者が手作業によって多数のHDD60を試験装置50の挿入部51に挿入する。ここで、試験装置50は、互いに反対方向に位置する2面に挿入部51が設けられているが、試験装置50が作業スペース8に置かれる際には、挿入部51が設けられている2面が、スタッカーラック4の延在方向、或いは、レール15が延びる方向に沿った向きになるように置かれる。これにより、作業者は、スタッカーラック4の延在方向における試験装置50の両側から、複数名の作業者によってHDD60の着脱を行うことができる。
【0041】
試験装置50の挿入部51にHDD60を挿入し、試験を行うHDD60を試験装置50で保持したら、作業者は入力装置21を操作することにより、この試験装置50で試験を行う旨の入力指示を、システム制御装置20に対して行う。試験を行う旨の入力が行われたシステム制御装置20は、クレーン制御装置25に対して、試験開始前のHDD60を保持した状態で作業スペース8に位置する試験装置50を、スタッカーラック4の棚5に搬送させる搬入指示を行う。
【0042】
ここで、システム制御装置20は、棚5の管理を行っており、スタッカーラック4が有する複数の棚5のうち、どの棚5に試験装置50があり、どの棚5が空いているかを把握している。このため、試験を行う旨の入力が行われたシステム制御装置20は、空いている棚5の中から、試験装置50を搬入する棚5を選定し、作業スペース8にある試験装置50を、この選定した棚5に搬送させる搬入指示を、クレーン制御装置25に対して行う。
【0043】
システム制御装置20から搬入指示を受けたクレーン制御装置25は、クレーン駆動装置40を制御することにより、指示に応じた動作をクレーン10に行わせる。具体的には、クレーン移動装置41を作動させることにより、クレーン10を作業スペース8の近傍までレール15に沿って移動させる。クレーン10を作業スペース8の近傍まで移動させたら、次に、装填回収装置43を作動させることによって載置部12を水平移動させ、作業スペース8に置かれている試験装置50の下方に、載置部12を位置させる。
【0044】
その際に、載置部12の高さが、鉛直方向において試験装置50よりも下方に位置する高さになっていない場合は、クレーン制御装置25は、昇降装置42を作動させることにより、載置部12を上下方向に移動させる。これにより、載置部12の高さを試験装置50よりも低くした後、載置部12を水平移動させ、試験装置50の下方に載置部12を位置させる。
【0045】
試験装置50の下方に載置部12を位置させたら、昇降装置42を作動させることによって載置部12を上昇させ、載置部12上に試験装置50を載置し、作業スペース8から試験装置50を浮かせる。試験装置50を浮かせたら、クレーン制御装置25は装填回収装置43を作動させることによって載置部12を水平移動させ、載置部12を中立位置、即ち、レール15の上方に位置させる。
【0046】
載置部12が中立位置まで移動したら、クレーン制御装置25は、クレーン移動装置41を作動させることにより、レール15の延在方向において、システム制御装置20で選定した棚5が位置する部分まで、レール15に沿ってクレーン10を移動させる。これによりクレーン10を、システム制御装置20で選定した棚5の開口部6の前まで移動させる。
【0047】
選定した棚5の前までクレーン10を移動させたら、クレーン制御装置25は、昇降装置42を作動させることにより、鉛直方向に並ぶ棚5のうち、選定した棚5が位置する高さに昇降ガイド11に沿って載置部12を移動させる。具体的には、載置部12に載置されている試験装置50を、選定した棚5の開口部6から棚5に入り込ませることができる高さで、且つ、試験装置50を棚5の底面から浮かせた状態で棚5に入り込ませることができる高さに、載置部12を移動させる。
【0048】
載置部12の高さを棚5の高さに合わせたら、クレーン制御装置25は、装填回収装置43を作動させることにより載置部12を水平移動させ、試験装置50を載置した状態の載置部12を、棚5内に挿入する。クレーン制御装置25は、開口部6からの奥行き方向における載置部12の位置が所定の位置に到達したら、装填回収装置43を停止させる。
【0049】
クレーン制御装置25は、この状態で昇降装置42を作動させることにより、載置部12を下降させる。これにより、載置部12に載置されている試験装置50を、棚5の底面上に載置し、システム制御装置20で選択した棚5に試験装置50を装填する。
【0050】
このように、試験装置50を棚5に装填すると、試験装置50の自重により、棚5に設けられる電源接続部31と通信接続部32とが、試験装置50に対して機械的に接続される。即ち、電源接続部31と通信接続部32とは、棚5内で棚5の底面から試験装置50を浮かせている状態の載置部12を下降させる装填動作により、試験装置50側の接続部と機械的に接続される。
【0051】
このように、試験装置50が棚5の底面に載置されることにより試験装置50が棚5に装填されると、装填確認センサ47が、試験装置50が装填されたことを検出する。また、棚5には、載置部12が棚5内に位置しているか否かを検出するクレーン挿入センサ48も設けられており、試験装置50が棚5に装填されても、載置部12が棚5内に位置している場合は、その旨をクレーン挿入センサ48で検出する。この検出結果は、試験装置制御用コントローラ30を介してシステム制御装置20に伝達される。
【0052】
システム制御装置20は、試験装置50が装填され、載置部12が棚5から退避されたことが検出された場合に、棚5内の試験装置50に対して給電を行う。このため、システム制御装置20は、試験装置50が装填されたとの情報を受けても、載置部12が棚5内から退避していないとの情報を受けた場合には、試験装置50に対する給電の指示は行わない。
【0053】
載置部12を下降させることにより試験装置50を棚5の底面に載置したクレーン制御装置25は、次に装填回収装置43を作動させることによって載置部12を水平移動させ、載置部12を中立位置に位置させる。これにより、クレーン制御装置25は、載置部12を棚5内から退避させる。
【0054】
載置部12が棚5内から退避すると、クレーン挿入センサ48はこの退避を検出し、検出結果が、試験装置制御用コントローラ30を介してシステム制御装置20に伝達される。これにより、棚5内への試験装置50の装填と、載置部12が棚5から退避されたこととを検出したシステム制御装置20は、試験装置制御用コントローラ30に対して、棚5内の試験装置50への給電開始の指示を行う。
【0055】
給電開始の指示を受けた試験装置制御用コントローラ30は、外部の電源と試験装置50との間で、電源接続部31を介して通電を行うことにより、試験装置50に対して給電を行う。つまり、電源接続部31は、試験装置50が棚5の底面に載置されるのみでなく、クレーン10の載置部12が棚5内から退避して、棚5への試験装置50の装填が完了した後に、試験装置50に対して給電する。
【0056】
また、このように試験装置50に給電されることにより、試験装置50は動作が開始され、通信接続部32を介してシステム制御装置20等との間でネットワーク接続が開始される。このネットワーク接続は、例えば、光通信によって行われる。試験装置50のネットワーク接続が行われることにより、試験装置50の試験を行うことが可能な状態になると、試験装置制御用コントローラ30は、システム制御装置20に対して、試験の事前準備ができたことを報告する。
【0057】
この報告を受けたシステム制御装置20は、試験装置制御用コントローラ30に対して、HDD60の試験開始の指示を送る。試験開始の指示を受けた試験装置制御用コントローラ30は、この指示に基づき、試験装置50に対して試験開始の指示を送る。これにより、試験装置50は、HDD60の試験を開始する。
【0058】
HDD60の試験を行う試験装置50は、予め設定された試験用のプログラムに沿ってHDD60に対して所定の動作を行わせながら、動作状態を確認し、試験を行う。この場合におけるHDD60への電力の供給や、HDD60を作動させる際の信号のやり取りは、試験装置50内の制御基板と、HDD60のインターフェース基板との間で通電したり、信号の送受信を行ったりすることにより行う。試験装置50は、試験装置50で保持する複数のHDD60に対して、これらのように電力を供給し、HDD60を作動させる信号を送信して所定の動作を行わせながら、その動作状態を確認することにより、複数のHDD60の試験を行う。
【0059】
また、試験装置50は、試験の開始後、試験の状況や結果を、通信接続部32を介して試験装置制御用コントローラ30に報告し、試験装置制御用コントローラ30は、試験装置50から送られた試験の状況や結果を、LAN35を介してシステム制御装置20に報告する。この試験装置制御用コントローラ30からシステム制御装置20への試験の状況の報告は、試験を行っている間、定期的に行われる。
【0060】
システム制御装置20では、継続的に、または作業者が入力装置21を操作することにより、必要に応じて、試験の状況や結果を、出力装置22で出力する。例えば、作業者が、所望の棚5の試験装置50での試験の状況を確認する操作を入力装置21に対して行った場合には、システム制御装置20は、その試験装置50の状況を、出力装置22が有する表示装置で表示する。作業者は、この表示装置の表示を視認することにより、試験装置50での試験の状況を確認する。
【0061】
これらのようにHDD60の試験を行い、試験装置50で保持する全てのHDD60の試験が完了したら、試験装置50は、試験の結果、及び試験が完了したことを試験装置制御用コントローラ30に報告し、試験装置制御用コントローラ30からシステム制御装置20に報告する。試験完了の信号を受信したシステム制御装置20は、クレーン制御装置25に対して、試験が完了したHDD60を保持しているこの試験装置50を、作業スペース8に搬送させる搬出指示を行う。
【0062】
システム制御装置20から搬出指示を受けたクレーン制御装置25は、クレーン駆動装置40を制御することにより、指示に応じた動作をクレーン10に行わせる。具体的には、まず、クレーン移動装置41を作動させることにより、試験が完了した試験装置50が収容されている棚5の前までクレーン10を移動させる。
【0063】
さらに、試験装置50の装填時と同様に、昇降装置42と装填回収装置43とを作動させることにより、載置部12を水平移動させて試験装置50の下方に差し込み、載置部12を棚5内で上昇させる。これにより、試験装置50を棚5の底面から浮かせ、載置部12に載置される状態にする。
【0064】
なお、電源接続部31での給電と、通信接続部32での通信は、この段階までに共に遮断をする。そのタイミングは、試験完了の信号をシステム制御装置20で受信した後、システム制御装置20から試験装置制御用コントローラ30に対して、給電と通信とを遮断する旨の信号を送信することにより、試験装置制御用コントローラ30でこれらの遮断を行ってもよい。または、クレーン挿入センサ48での検出状態に基づいて、載置部12が棚5内に挿入されたことをシステム制御装置20で検出した際に、同様にシステム制御装置20から給電と通信とを遮断する旨の信号を送信することにより、遮断を行ってもよい。
【0065】
載置部12を上昇させて試験装置50を棚5の底面から浮かせると、試験装置50の移動により、試験装置50に対して機械的に接続されていた電源接続部31と通信接続部32とが、共に分離する。つまり、電源接続部31と通信接続部32とは、棚5の底面に載置されている試験装置50を浮かせる動作である回収動作により、試験装置50側の接続部と機械的に分離する。
【0066】
クレーン制御装置25は、試験装置50を浮かせたら、装填回収装置43を作動させることにより載置部12を水平移動させ、載置部12を中立位置に位置させる。これにより、試験装置50は開口部6を通って棚5内から外に出て、試験装置50は棚5内から回収される。
【0067】
試験装置50を回収したら、クレーン制御装置25は、クレーン移動装置41を作動させることにより、作業スペース8の近傍まで、レール15に沿ってクレーン10を移動させる。その際に、作業スペース8は2つ設けられているが、システム制御装置20は現在の作業スペース8の状態も把握しているため、システム制御装置20は、空いている方の作業スペース8にクレーン10を移動させるように、クレーン制御装置25に指示を行う。
【0068】
空いている作業スペース8の近傍までクレーン10が移動したら、クレーン制御装置25は、試験装置50を棚5に装填する場合と同様に、昇降装置42と装填回収装置43とを作動させ、載置部12を昇降させたり水平移動させたりすることにより、試験装置50を作業スペース8に位置させる。作業スペース8に試験装置50を位置させることが完了したら、クレーン制御装置25は、システム制御装置20に対して、試験装置50の移動が完了したことを報告する。この信号を受信したシステム制御装置20は、試験が完了した試験装置50が作業スペース8に移動したことを、出力装置22によって作業者に報知する。この場合の作業者への報知は、表示装置での表示のみでなく、出力装置22が有するスピーカで、音によっても報知するのが好ましい。
【0069】
試験装置50が作業スペース8に移動したことの報知を受けた作業者は、試験装置50の挿入部51に挿入されて保持されている多数のHDD60を、手作業によって挿入部51から取り出す。試験装置50から全てのHDD60を取り出したら、試験を行っていない別のHDD60を挿入部51に挿入し、上述した流れで試験を行う。
【0070】
本実施形態に係る大規模自動化試験システム1では、複数の試験装置50を使用し、各試験装置50へのHDD60の着脱タイミングや試験装置50の搬送タイミングを異ならせることによって、多数のHDD60の試験を複数の試験装置50で継続的に行う。その際に、各試験装置50での試験時間は予め予想ができるため、試験装置50を収容する棚5の位置や搬送時間を考慮して、効率の良い順番で試験装置50の搬送を行うのが好ましい。
【0071】
なお、これらのように試験装置50を用いてHDD60の試験を行っている最中に、試験装置50の不具合等により、所定の試験装置50で試験を行うことができなくなった場合には、システム制御装置20は、その試験装置50での試験を中止する信号を、当該試験装置50が接続される試験装置制御用コントローラ30に送信する。この信号を受けた試験装置制御用コントローラ30は、試験装置50への給電を遮断する。
【0072】
この場合、クレーン10の作動時間が比較的短く、試験装置50を搬送する時間に余裕がある場合には、他の試験装置50の搬送に影響がないタイミングで、試験を中止した試験装置50を回収して作業スペース8に移動させる。これに対し、クレーン10の作動時間が長く、試験装置50を搬送する時間に余裕がない場合には、試験を中止した試験装置50で試験を行う際に、予め設定した回収のタイミングを変更せずに、この回収タイミングで試験装置50を回収して作業スペース8に移動させる。
【0073】
以上の実施形態に係る大規模自動化試験システム1は、棚5を水平方向と鉛直方向とにそれぞれ複数有するスタッカーラック4を備えているため、HDD60の試験を行う試験装置50を水平方向のみでなく、高さ方向にも複数設置して試験を行うことができる。これにより、フロアの面積当たりの試験装置50の設置台数を増加させることができ、スペース効率を向上させることができる。また、大規模自動化試験システム1は、試験装置50を搬送するクレーン10を備えているため、試験装置50へのHDD60の着脱作業は全て作業スペース8で行うことができる。これにより、試験装置50を複数用いてHDD60の試験を行う場合における作業者の移動距離を短くすることができ、作業者の負担を小さくすることができる。
【0074】
また、大規模自動化試験システム1は、棚5に収容された試験装置50との間で通信を行うシステム制御装置20を備えているため、試験装置50の集中管理が可能となり、試験装置50を直接確認することなく、各試験装置50での試験の状況を認識することができる。さらに、システム制御装置20は、棚5に装填された試験装置50に対してHDD60の試験の開始指示を行い、試験開始前の試験装置50を棚5に搬送させる搬入指示と、試験が完了した試験装置50を作業スペース8に搬送させる搬出指示と、を行うため、作業者の負担を、さらに小さくすることができる。この結果、フロアスペースの有効利用を可能にし、且つ、作業者の作業効率を大幅に改善することができる。
【0075】
また、棚5には、棚5への試験装置50の装填動作によって接続される通信接続部32が設けられているため、試験装置50とシステム制御装置20とを手作業で通信可能な状態にしたり、機械的な接続を行わせる装置を設けたりすることなく、棚5に収容された試験装置50とシステム制御装置20との間で通信を行わせることができる。この結果、作業者の作業効率を、より確実に改善することができ、また、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0076】
また、棚5には、棚5への試験装置50の装填動作によって接続される電源接続部31が設けられているため、試験装置50に対して手作業で給電可能な状態にしたり、機械的な接続を行わせる装置を設けたりすることなく、棚5に収容された試験装置50に給電することができる。この結果、作業者の作業効率を、より確実に改善することができ、また、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0077】
また、電源接続部31は、棚5への試験装置50の装填の完了後に試験装置50に対して給電するため、試験装置50の装填時に短絡等が発生することを抑制できる。この結果、安全性を向上させることができる。
【0078】
また、試験装置50は、互いに反対方向に向かう2つの面からHDD60の着脱ができるため、試験装置50の1台あたりのHDD60の収容数を増加させることができる。この結果、より確実にフロアスペースの有効利用を可能にし、且つ、作業者の作業効率を大幅に改善することができる。
【0079】
また、試験装置50は、試験時に設置する棚5から着脱自在に、試験を行う場合にのみ、棚5に収容するようにしたので、異なる種類の試験装置50で試験を行う必要になった場合や、異なるサイズや種類の記憶媒体の試験を行う必要になった場合も容易に対応することができる。例えば、試験装置50は、1台の試験装置50で保持して試験を行うことのできる記憶媒体の数が異なっていたり、記憶媒体の動作試験のみを行うものや、温度に関する試験も行ったりするものがある。また、記憶媒体もHDD60のサイズが異なっていたり、HDD60以外に、SSD(Solid State Drive)のように種類が異なっていたりするものがあるなど、様々な形態のものがある。試験装置50は、試験を行う場合にのみ、棚5に収容するようにしたので、これらの種類の異なる試験装置50や記憶媒体に、容易に対応することができる。つまり、試験装置50の大きさが、棚5に収まる大きさであり、電源接続部31と通信接続部32とに接続可能になっていれば、異なる種類の試験装置50で試験を行ったり、異なるサイズや種類の記憶媒体の試験を行ったりすることができる。この結果、記憶媒体の試験を行う際における汎用性を大きくすることができ、コストの低減を図ることができる。
【0080】
〔変形例〕
なお、上述した実施形態に係る大規模自動化試験システム1では、スタッカーラック4は、棚5を水平方向に20個を備え、この棚5が上下2列になっているが、1つのスタッカーラック4が有する棚5の数は、これ以外でもよい。スタッカーラック4は、棚5を水平方向と鉛直方向とにそれぞれ複数有していれば、その数は問わない。また、上述した実施形態に係る大規模自動化試験システム1では、スタッカーラック4は、2つが用いられているが、スタッカーラック4の数は、これ以外でもよい。
【0081】
さらに、上述した実施形態に係る大規模自動化試験システム1では、2つを1組としており、クレーン10は、この2つのスタッカーラック4に対して試験装置50の装填や回収を行っているが、スタッカーラック4とクレーン10との組み合わせは、これ以外でもよい。例えば、クレーン10は、1つのスタッカーラック4に対応して設置してもよい。
【0082】
また、上述した実施形態に係る大規模自動化試験システム1では、電源接続部31や通信接続部32は、試験装置50を棚5に装填する際における試験装置50の自重によって機械的な接続を行うように構成されているが、電源接続部31や通信接続部32は、これ以外によって接続が行われてもよい。電源接続部31や通信接続部32は、例えば、棚5における開口部6が位置する部分に対向する面に設け、試験装置50側の接続部は、試験装置50の棚5への装填時に、この面に対向する部分に設けてもよい。これにより、試験装置50を開口部6から入り込ませる際に、クレーン10の動作に伴う試験装置50の移動により、電源接続部31や通信接続部32の機械的な接続を行うことができるため、手作業で接続したり、機械的な接続を行わせる装置を設けたりすることなく、接続を行うことができる。
【0083】
また、上述した実施形態に係る大規模自動化試験システム1では、システム制御装置20は、試験装置50との通信や、クレーン10の動作の制御を行っているが、これ以外の制御を行ってもよい。例えば、大規模自動化試験システム1が設置される建屋の空調管理をシステム制御装置20で行ってもよい。試験装置50は、試験を行う記憶媒体や試験の種類によって、試験装置50から要求される温度が異なっていることがあるので、システム制御装置20で空調管理を行うことにより、スタッカーラック4の周囲の温度を適切な温度にすることができる。または、建屋内の温度をエリアによって異ならせ、棚5への試験装置50の搬入時に、試験装置50から要求される温度のエリアの棚5に、試験装置50を搬送することができる。これにより、より適切に記憶媒体の試験を行うことができる。
【0084】
また、上述した実施形態に係る大規模自動化試験システム1では、試験装置50の設置位置は、棚5と作業スペース8のみになっているが、これ以外の試験装置50の設置位置を設けてもよい。例えば、スタッカーラック4の長手方向において作業スペース8が設けられている側の端部の反対側の端部に、試験装置50の搬入・搬出エリアを設けてもよい。これにより、例えば、試験装置50が故障した際に、故障した試験装置50を、搬入・搬出エリアに移動させたり、試験装置50の交換や新たな試験装置50の導入を行う際に、交換や導入を搬入・搬出エリアから行ったりすることにより、作業スペース8でのHDD60の着脱に影響を与えることなく、これらを行うことができる。これにより、作業効率を低下させることなく、大規模自動化試験システム1の使い勝手を向上させることができる。
【0085】
また、大規模自動化試験システム1は、上述した実施形態、及び変形例で用いられている構成等を適宜組み合わせてもよく、または、上述した構成以外を用いてもよい。大規模自動化試験システム1の構成等に関わらず、棚5を複数有するスタッカーラック4と、試験装置50を搬送するクレーン10とを備え、試験装置50へのHDD60の着脱は作業スペース8で行い、試験は試験装置50を棚5に収容して行うことにより、フロアスペースの有効利用を可能にし、且つ、作業者の作業効率を大幅に改善することができる。