(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活性水素基含有樹脂が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース又はこれらの塩及びアミノ基を有する樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1に記載の電極合剤塗料。
前記活性水素基含有樹脂が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース又はこれらの塩及びアミノ基を有する樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項8に記載の非水電解質二次電池用電極の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
先ず、本発明の電極合剤塗料について説明する。
【0017】
本発明の電極合剤塗料は、活性水素基含有樹脂と、イソシアネートの水分散液と、電極活物質とを含有していることを特徴とする。
【0018】
上記活性水素基含有樹脂は、電極合剤層を形成するバインダ樹脂として機能し、上記イソシアネートはそのバインダ樹脂の架橋剤として機能する。本発明の電極合剤塗料は、架橋剤を水分散液として用いているため、電極製造時に防爆設備は必要なく、製造設備を簡便にすることができる。
【0019】
上記活性水素基含有樹脂としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース又はこれらの塩、アクリル樹脂及びアミノ基を有する樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いることができる。これらの樹脂は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有しているため、上記イソシアネートとの架橋反応により架橋体となる。このため、電極合剤層と集電体との密着性及び電極活物質粒子相互間の密着性を向上できる。
【0020】
上記アミノ基を有する樹脂としては、例えば、ジメチルアミノメチルアクリルアミドとブチルアクリレート等を共重合させたアクリル共重合体等を用いることができる。
【0021】
上記イソシアネートの水分散液の市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ社製の商品名“WB40−100”、“WB40−80D”、“WT20−100”、“WT30−100”、“WE50−100”等、DIC社製の商品名“DNW−5000”、“DNW5010”、“DNW−5100”、“DNW−5200”、“DNW−6000”等、日本ポリウレタン社製の商品名“AQ−100”、“AQ−105”、“AQ−130”、“AQ−140”等を使用することができる。
【0022】
また、上記イソシアネートは、ブロックイソシアネートであることが好ましい。上記ブロックイソシアネートは、加熱等により活性化する前の通常環境下では化学的に非常に安定であり、電極合剤塗料のポットライフを大幅に延ばすことができる。
【0023】
上記ブロックイソシアネートの水分散液の市販品としては、例えば、Baxenden社製の商品名“Aqua BI 200”、“Aqua BI 220”等、日本ポリウレタン社製の商品名“AQ−210”、“AQ−120”、“AQ−200”等、旭化成ケミカルズ社製の商品名“WM44−L70G”等を使用することができる。
【0024】
また、本発明の電極合剤塗料は、活性水素基含有樹脂と、ブロックイソシアネートと、有機溶媒と、電極活物質とを含有していてもよい。上記本発明の電極合剤塗料は、ブロックイソシアネートを用いているため、電極合剤塗料のポットライフを大幅に延ばすことができる。
【0025】
上記有機溶媒とともに用いる非水溶性ブロックイソシアネートの市販品としては、例えば、Baxenden社製の商品名“7950”、“7951、“7960”、“7961”、“7982”、“7990”、“7991”、“7992”等、旭化成ケミカルズ社製の商品名“MF−K60B”、“SBN−700”、“MF−B60B”、“17B−60P”、“TPA−B80E”、“E402−B80B”等、日本ポリウレタン社製の商品名“コロネートAP−M”、“BI-301”、“2507”、“2513”等を使用することができる。
【0026】
また、上記非水溶性ブロックイソシアネートとともに用いる有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、トルエン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等を用いることができる。
【0027】
上記ブロックイソシアネートに用いるブロック剤としては、例えば、ジメチルピラゾール、ジエチルマロネート、ジイソプロピルアミン、メチルエチルケトオキシム、カプロラクタム等を用いることができる。
【0028】
更に、本発明の電極合剤塗料は、導電性材料を更に含有してもよい。これにより、形成した電極合剤層の導電性を向上できる。上記導電性材料及び上記電極活物質については後述する。
【0029】
本発明の電極合剤塗料の各成分の含有量は、例えば、上記電極合剤塗料の溶媒を除く全質量に対して、活性水素基含有樹脂が0.5〜10質量%、イソシアネート又はブロックイソシアネートが0.01〜3質量%、電極活物質が82〜98質量%、導電性材料が0〜5質量%とすればよい。
【0030】
(実施形態2)
次に、本発明の非水電解質二次電池用電極を説明する。本発明の非水電解質二次電池用電極は、実施形態1で説明した本発明の電極合剤塗料を集電体の表面に塗布して形成した電極合剤層を備え、上記電極合剤層は、架橋バインダ樹脂を含み、上記架橋バインダ樹脂は、下記式(1)で示される部分構造を含み、上記架橋バインダ樹脂は、上記部分構造を基点に架橋構造を形成していることを特徴とする。
【0032】
本発明の非水電解質二次電池用電極は、正極、負極のいずれにも用いることができる。本発明の非水電解質二次電池用電極は、上記本発明の電極合剤塗料を用いて形成した電極合剤層を備えているため、その電極合剤層に含まれる活性水素基含有樹脂(バインダ樹脂)はイソシアネートにより架橋されて架橋バインダ樹脂を構成し、その架橋バインダ樹脂により電極合剤層と集電体との密着性及び電極活物質粒子相互間の密着性が向上し、本発明の非水電解質二次電池用電極を用いた非水電解質二次電池の充放電サイクル特性が向上する。上記集電体については後述する。
【0033】
(実施形態3)
次に、本発明の非水電解質二次電池用電極の製造方法を説明する。
【0034】
本発明の非水電解質二次電池用電極の製造方法は、活性水素基含有樹脂と、イソシアネートの水分散液又はブロックイソシアネート及び有機溶媒と、電極活物質とを含む電極合剤塗料を作製する電極合剤塗料作製工程と、上記電極合剤塗料を集電体の表面に塗布する塗布工程とを備えることを特徴とする。即ち、本発明の非水電解質二次電池用電極の製造方法は、実施形態1で説明した本発明の電極合剤塗料を集電体の表面に塗布する工程を備えている。これにより、電極合剤層と集電体との密着性及び電極活物質粒子相互間の密着性を向上でき、本発明の非水電解質二次電池用電極の製造方法で製造した電極を用いた非水電解質二次電池の充放電サイクル特性が向上する。
【0035】
上記電極合剤塗料作製工程は特に限定されず、前述の活性水素基含有樹脂と、イソシアネートの水分散液又はブロックイソシアネート及び有機溶媒と、電極活物質とを混合すればよい。
【0036】
また、上記塗布工程も特に限定されず、上記電極合剤塗料を集電体の片面又は両面に所定の厚さで塗布し、その後に乾燥等を行って電極合剤層を形成すればよい。更に、乾燥した後に、必要に応じて電極合剤層にカレンダ処理を施してもよい。
【0037】
(実施形態4)
次に、本発明の非水電解質二次電池を説明する。本発明の非水電解質二次電池は、上記実施形態2で説明した本発明の非水電解質二次電池用電極を備えていることを特徴とする。より具体的には、正極、負極、非水電解質及びセパレータを備え、上記正極及び上記負極から選ばれる少なくとも一方に、上記本発明の非水電解質二次電池用電極を用いている。これにより、前述のとおり、充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供できる。
【0038】
以下、本発明の非水電解質二次電池としてリチウムイオン二次電池を例示し、その構成要素をについて更に説明する。
【0039】
〔負極〕
本発明の非水電解質二次電池に係る負極には、例えば、負極活物質、前述の架橋バインダ樹脂及び必要に応じて導電性材料(導電助剤)等を含む負極合剤層を、集電体の片面又は両面に有する構造のものが使用できる。
【0040】
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば、鱗片状もしくは球形状の黒鉛等の天然黒鉛;熱分解炭素類、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維等の易黒鉛化炭素を2800℃以上で黒鉛化処理した人造黒鉛;難黒鉛化炭素の表面に黒鉛をコートした炭素類等を用いることがでる。また、負極活物質としては、シリコン(Si)と酸素(O)とを構成元素に含む材料を用いることもできる。
【0041】
<バインダ樹脂>
架橋前のバインダ樹脂としては、前述のとおり、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース又はこれらの塩、アクリル樹脂、アミノ基を有する樹脂等の活性水素基含有樹脂を用いることができる。
【0042】
また、上記活性水素基含有樹脂と他のバインダ樹脂とを併用することもできる。上記他のバインダ樹脂としては、例えば、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂等を用いることができる。
【0043】
上記負極合剤層のバインダ樹脂に上記活性水素基含有樹脂と他のバインダ樹脂とを併用する場合には、CMCとSBRとの組み合わせが好ましい。CMCにSBRを組み合せることにより、活物質間及び合剤層と集電体との密着性を向上させることができるからである。
【0044】
<導電助剤>
上記負極合剤層には、更に導電助剤として導電性材料を添加してもよい。このような導電性材料としては、電池内において化学変化を起こさないものであれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック(サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、炭素繊維等の炭素材料;金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の粉末)、金属繊維等の金属材料;ポリフェニレン誘導体(特開昭59−20971号公報に記載のもの)等の材料を、1種又は2種以上用いることができる。
【0045】
<集電体>
上記負極に用いる集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル等を用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するために厚みの下限は5μmであることが望ましい。
【0046】
<負極合剤層>
上記負極合剤層の厚さは、カレンダ処理後において、集電体の片面あたり35〜115μmであることが好ましい。上記負極合剤層の厚さを上記範囲に設定し、できるだけ厚くすることにより、非水電解質二次電池の高容量化を図ることができる。
【0047】
〔正極〕
本発明の非水電解質二次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、前述の架橋バインダ樹脂、導電性材料(導電助剤)等を含有する正極合剤層を、集電体の片面又は両面に有する構造のものが使用できる。
【0048】
<正極活物質>
上記正極に用いる正極活物質としては、特に限定されず、リチウム含有遷移金属酸化物等の一般に用いることのできる活物質を使用すればよい。リチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、例えば、Li
xCoO
2、Li
xNiO
2、Li
xMnO
2、Li
xCo
yNi
1-yO
2、Li
xCo
yM
1-yO
2、Li
xNi
1-yM
yO
2、Li
xMn
yNi
zCo
1-y-zO
2、Li
xMn
2O
4、Li
xMn
2-yM
yO
4等が例示される。但し、上記の各構造式中において、Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ti、Ge及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、0≦x≦1.1、0<y<1.0、2.0<z<1.0である。
【0049】
<バインダ樹脂>
上記正極に用いるバインダ樹脂としても、上記負極で用いることができる前述のバインダ樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0050】
<導電助剤>
上記正極に用いる導電助剤としても、前述の負極に用いる導電性材料と同様のものが使用できる。
【0051】
<集電体>
上記正極に用いる集電体としては、従来から知られているリチウムイオン二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、厚さが10〜30μmのアルミニウム箔が好ましい。
【0052】
<正極合剤層>
上記正極合剤層の厚さは、カレンダ処理後において、集電体の片面あたり30〜95μmであることが好ましい。上記正極合剤層の厚さを上記範囲に設定し、できるだけ厚くすることにより、非水電解質二次電池の高容量化を図ることができる。
【0053】
〔非水電解質〕
本発明の非水電解質二次電池に係る非水電解質としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した非水電解液を使用できる。
【0054】
上記非水電解液に用いるリチウム塩としては、溶媒中で解離してリチウムイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解等の副反応を起こしにくいものであれば特に制限はない。例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6等の無機リチウム塩、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、Li
2C
2F
4(SO
3)
2、LiN(SO
2F)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC
nF
2n+1SO
3(2≦n≦7)、LiN(RfOSO
2)
2〔ここで、Rfはフルオロアルキル基〕等の有機リチウム塩等を用いることができる。
【0055】
このリチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/Lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/Lとすることがより好ましい。
【0056】
上記非水電解液に用いる有機溶媒としては、上記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解等の副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状カーボネート;プロピオン酸メチル等の鎖状エステル;γ−ブチロラクトン等の環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等の鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル等のニトリル類;エチレングリコールサルファイト等の亜硫酸エステル類等が挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒等、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。
【0057】
〔セパレータ〕
本発明の非水電解質二次電池に係るセパレータには、80℃以上(より好ましくは100℃以上)170℃以下(より好ましくは150℃以下)において、その孔が閉塞する性質(即ち、シャットダウン機能)を有していることが好ましく、通常のリチウムイオン二次電池等で使用されているセパレータ、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータを構成する微多孔膜は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体であってもよい。
【0058】
〔電池の形態〕
本発明の非水電解質二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶等を外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形等)等が挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0060】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質であるLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2:92質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:5質量部と、バインダ樹脂であるポリフッ化ビニリデン(PVDF):3質量部とを混合し、更に適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加し、ボールミルにて直径1mmのジルコニアビーズを用いて15時間均一に攪拌した後、濾過してジルコニアビーズを除去し、正極合剤塗料を調製した。次に、正極集電体となる厚さが15μmのアルミニウム箔の両面に、上記正極合剤塗料を塗布長が表側280mm、裏側210mmとなるように塗布し、85℃で乾燥した後、更に120℃で8時間真空乾燥した。その後、ロールプレス機を用いてカレンダ処理を施して、全厚が150μmの正極合剤層を備えた正極前駆体を作製した。その後、この正極前駆体を幅43mmになるように切断し、正極集電体の正極合剤未塗布部に集電タブを取り付けて正極を得た。
【0061】
<負極の作製>
負極活物質である黒鉛:97質量部と、バインダ樹脂であるカルボキシメチルセルロース(CMC):1.5質量部及びスチレンブタジエンラバー(SBR):1.5質量部と、非ブロック型イソシアネート架橋剤である旭化成ケミカルズ社製のイソシアネートの水分散液“WB40−100”(商品名):0.1質量部とを混合し、更に適量のイオン交換水を添加し、ボールミルにて直径1mmのジルコニアビーズを用いて15時間均一に攪拌した後、濾過してジルコニアビーズを除去し、負極合剤塗料を調製した。次に、負極集電体となる厚さが10μmの銅箔の両面に、上記負極合剤塗料を塗布長が表側290mm、裏側230mmとなるように塗布し、85℃で乾燥した後、更に120℃で8時間真空乾燥した。その後、ロールプレス機を用いてカレンダ処理を施して、全厚が142μmの負極合剤層を備えた負極前駆体を作製した。その後、この負極前駆体を幅45mmになるように切断し、負極集電体の負極合剤未塗布部に集電タブを取り付けて負極を得た。
【0062】
<電池の組み立て>
上記正極と上記負極とを、ポリエチレン製微多孔膜セパレータ(厚さ18μm)を介して重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回電極体とし、この巻回電極体を扁平状に押しつぶし、厚さ4mm、高さ50mm、幅34mmのアルミニウム製の外装缶に収容した。次に、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを3:7の体積比で混合した溶媒に、LiPF
6を1.2mol/Lの濃度で溶解させた非水電解液を上記外装缶内に注入した後、上記外装缶を封止して、本実施例の非水電解質二次電池を得た。
【0063】
図1に得られた非水電解質二次電池の外観図を示す。
図1において、本実施例の非水電解質二次電池1は、正極端子を兼ねる外装缶2と蓋3とを備え、蓋3には、絶縁パッキング4を介して負極端子5が設けられている。また、蓋3には、非水電解液注入口6及び開裂ベント7が設けられている。
【0064】
(実施例2)
負極合剤塗料の架橋剤をブロック型イソシアネート架橋剤であるBaxenden社製のブロックイソシアネートの水分散液“Aqua BI 220”(商品名):0.1質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、本実施例の非水電解質二次電池を作製した。
【0065】
(実施例3)
負極合剤塗料のバインダ樹脂を全て水溶性アクリル樹脂(水酸化ナトリウム部分中和型アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体:酸価250、中和率80%、ガラス転移温度25℃):3質量部に変更し、架橋剤をブロック型イソシアネート架橋剤であるBaxenden社製のブロックイソシアネートの水分散液“Aqua BI 220”(商品名):0.1質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、本実施例の非水電解質二次電池を作製した。
【0066】
(実施例4)
負極活物質である黒鉛:97質量部と、バインダ樹脂である非水溶性アクリル樹脂(アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体:酸価100、ガラス転移温度10℃):3質量部と、ブロック型イソシアネート架橋剤であるBaxenden社製の非水溶性ブロックイソシアネート“7950”(商品名):0.1質量部とを混合し、更に適量のNMPを添加し、ボールミルにて直径1mmのジルコニアビーズを用いて15時間均一に攪拌した後、濾過してジルコニアビーズを除去し、負極合剤塗料を調製した。
【0067】
次に、上記負極合剤塗料を用いた以外は実施例1と同様にして、本実施例の非水電解質二次電池を作製した。
【0068】
(実施例5)
正極活物質であるLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2:92質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック:5質量部と、バインダ樹脂である水溶性アクリル樹脂(水酸化ナトリウム部分中和型アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体:酸価250、中和率80%、ガラス転移温度25℃):3質量部と、ブロック型イソシアネート架橋剤であるBaxenden社製のブロックイソシアネートの水分散液“Aqua BI 220”(商品名):0.1質量部を混合し、更に適量のイオン交換水を添加し、ボールミルにて直径1mmのジルコニアビーズを用いて15時間均一に攪拌した後、濾過してジルコニアビーズを除去し、正極合剤塗料を調製した。また、架橋剤を用いなかった以外は実施例1と同様にして、負極合剤塗料を調製した。
【0069】
次に、上記正極合剤塗料及び上記負極合剤塗料を用いた以外は実施例1と同様にして、本実施例の非水電解質二次電池を作製した。
【0070】
(比較例1)
架橋剤を用いなかった以外は実施例1と同様にして、負極合剤塗料を調製した。次に、上記負極合剤塗料を用いた以外は実施例1と同様にして、本比較例の非水電解質二次電池を作製した。
【0071】
(比較例2)
架橋剤を用いなかった以外は実施例3と同様にして、負極合剤塗料を調製した。次に、上記負極合剤塗料を用いた以外は実施例3と同様にして、本比較例の非水電解質二次電池を作製した。
【0072】
(比較例3)
架橋剤を用いなかった以外は実施例5と同様にして、正極合剤塗料を調製した。次に、上記正極合剤塗料を用いた以外は実施例5と同様にして、本比較例の非水電解質二次電池を作製した。
【0073】
表1に実施例1〜5及び比較例1〜3の電池の正極合剤層及び負極合剤層の各成分の含有量を示す。
【0074】
次に、実施例1〜5及び比較例1〜3で作製した正極合剤塗料、負極合剤塗料、正極、負極及び非水電解質二次電池について下記の評価を行った。その結果も表1に合わせて示す。
【0075】
<塗料粘度変化率>
作製した正極合剤塗料及び負極合剤塗料を30℃で1週間保存し、保存前後の25℃の粘度をB型粘度計を用いて測定した。その測定値に基づき下記式により粘度変化率を算出して、塗料の安定性を評価した。
粘度変化率(%)=〔(保存後の粘度−保存前の粘度)/保存前の粘度〕×100
【0076】
<合剤耐水性>
作製した正極及び負極を60℃の温水に8時間浸漬し、電極合剤層の溶解・剥離を観察し、下記基準で電極合剤層の電極活物質粒子相互間の密着性を評価した。
評価A:電極合剤層に溶解・剥離が認められない場合
評価B:電極合剤層に溶解・剥離が認められる場合
【0077】
<合剤剥離強度>
作製した正極及び負極を用いて日本工業規格(JIS)Z−0237に規定する90°剥離試験を行い、電極合剤層の集電体への密着性を評価した。
【0078】
<充放電サイクル特性>
作製した電池について、1Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が0.1CmAになるまで4.2Vで定電圧充電する充電と、1Cの電流値で2.5Vになるまで定電流で行う放電とを1サイクルとして充放電を繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する300サイクル目の放電容量の容量維持率を下記式により算出して、電池の充放電サイクル特性を評価した。
容量維持率(%)=〔(1サイクル目の放電容量−300サイクル目の放電容量)/1サイクル目の放電容量〕×100
【0079】
【表1】
【0080】
表1から、架橋剤としてブロックイソシアネートを使用した実施例2〜4の負極合剤塗料及び実施例5の正極合剤塗料は、架橋剤として非ブロックイソシアネートを使用した実施例1の負極合剤塗料に比べて、塗料粘度変化率が小さく、塗料のポットライフが長いことが分かる。また、架橋剤を用いた電極は、架橋剤を用いない電極に比べて合剤耐水性が高く、電極合剤層の電極活物質粒子相互間の密着性が高いことが分かる。また、架橋剤を用いた電極は、架橋剤を用いない電極に比べて合剤剥離強度が大きく、電極合剤層の集電体に対する密着性が高いことが分かる。更に、電極合剤層に架橋剤を添加した実施例1〜5の電池は、電極合剤層に架橋剤を添加していない比較例1〜3の電池に比べて、充放電サイクル特性も優れていることが分かる。
【0081】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。