(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209620
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】燃料電池アセンブリおよびその作製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0271 20160101AFI20170925BHJP
H01M 8/24 20160101ALI20170925BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20170925BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20170925BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H01M8/02 S
H01M8/24 E
H01M8/02 Z
H01M8/10
H01M8/02 E
H01M4/86 B
【請求項の数】28
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-553176(P2015-553176)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公表番号】特表2016-503230(P2016-503230A)
(43)【公表日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】IB2013002845
(87)【国際公開番号】WO2014111745
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年7月23日
(31)【優先権主張番号】61/754,513
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(73)【特許権者】
【識別番号】500493207
【氏名又は名称】フォード モーター カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・ファリントン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・リー
(72)【発明者】
【氏名】アルビン・リー
【審査官】
太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−016877(JP,A)
【文献】
特表2006−506795(JP,A)
【文献】
特開2012−221619(JP,A)
【文献】
特開2007−213971(JP,A)
【文献】
特開2008−262847(JP,A)
【文献】
特開2012−253282(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/141167(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/093811(WO,A1)
【文献】
特開2009−176611(JP,A)
【文献】
特開2010−080437(JP,A)
【文献】
特開2007−066766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/0297
H01M 8/08 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質燃料電池スタック用の燃料電池アセンブリであって、
第1および第2の表面を有し、かつカソード側ではカソード触媒で被覆され、アノード側ではアノード触媒で被覆される固体高分子膜電解質を含む、触媒被覆膜と、
前記カソード触媒に隣接するカソードガス拡散層と、
前記アノード触媒に隣接するアノードガス拡散層と、
前記カソードガス拡散層に隣接する酸化剤流れ場プレートであって、前記カソードガス拡散層に隣接する面に酸化剤流れ場を備える、平らな酸化剤流れ場プレートと、
前記アノードガス拡散層に隣接する燃料流れ場プレートであって、前記アノードガス拡散層に隣接する面に燃料流れ場を備える、平らな燃料流れ場プレートと、
縁シール位置で酸化剤流れ場プレートを燃料流れ場プレートに対してシールするためのシールと、
内縁と外縁とを有し、少なくとも1つの面が接着剤で被覆され、かつ前記触媒被覆膜を枠組みする可塑性フィルム枠であって、前記可塑性フィルム枠の前記内縁の前記接着剤側が、前記触媒被覆膜の前記第1の表面に積層され、前記可塑性フィルム枠の前記外縁の前記接着剤側が、前記縁シール位置で前記触媒被覆膜の前記第2の表面に面する前記酸化剤および燃料流れ場プレートのうちの1つに積層される、可塑性フィルム枠と、
前記触媒被覆膜の前記第2の表面、および前記可塑性フィルム枠の前記内縁付近の前記可塑性フィルムの前記接着剤側に塗布される接着剤の層と、を備える、燃料電池アセンブリ。
【請求項2】
前記固体高分子膜電解質が、前記可塑性フィルム枠の前記内縁付近の前記第1の表面に触媒被覆を有さず、前記可塑性フィルム枠の前記内縁が、前記固体高分子膜電解質に直接積層される、請求項1に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項3】
前記触媒被覆膜の前記第1の表面が、前記カソード側であり、前記第2の表面が、前記アノード側であり、前記燃料流れ場プレートが、前記第2の表面に面する、請求項1に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項4】
縁シール位置で酸化剤流れ場プレートを燃料流れ場プレートに対してシールするための前記シールが、エラストマーシールである、請求項1に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項5】
前記エラストマーが、シリコーンである、請求項4に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項6】
前記可塑性フィルム枠が、両面に接着剤で被覆され、前記縁シール位置での前記シールが、積層された非エラストマーシールである、請求項1に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項7】
前記可塑性フィルム枠が、ポリエチレンナフタレートを含む、請求項1に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項8】
前記接着剤が、熱活性化接着剤である、請求項1に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項9】
前記触媒被覆膜の前記第2の表面に面する前記ガス拡散層が、前記触媒被覆膜の前記縁を超えて延在し、前記内縁と前記外縁との間の前記可塑性フィルム枠の前記接着剤側にも積層される、請求項1に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項10】
前記触媒被覆膜の前記第1の表面に面する前記ガス拡散層が、前記触媒被覆膜の縁まで延在し、前記可塑性フィルム枠の前記内縁が、前記触媒被覆膜と前記第1の表面に面する前記ガス拡散層との間に位置する、請求項9に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項11】
前記触媒被覆膜の前記第2の表面に面する前記流れ場プレートの面が、前記流れ場に隣接する移行領域を含み、前記移行領域が、シール機構を備える、請求項1に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項12】
前記カソードおよびアノードガス拡散層が、前記触媒被覆膜の縁まで延在し、前記内縁と前記外縁との間の前記可塑性フィルム枠が、前記移行領域の前記シール機構に積層される、請求項11に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項13】
前記酸化剤および燃料流れ場プレートが、単一両極性流れ場プレートに一緒に接合される、請求項1に記載の燃料電池アセンブリ。
【請求項14】
複数の請求項1に記載の燃料電池アセンブリの直列スタックを備える、固体高分子電解質燃料電池スタック。
【請求項15】
請求項1に記載の燃料電池アセンブリを製造する方法であって、
前記触媒被覆膜、前記カソードガス拡散層、前記アノードガス拡散層、前記酸化剤流れ場プレート、前記燃料流れ場プレート、および前記酸化剤流れ場プレートと前記燃料流れ場プレートの縁での前記シールを提供すること、
少なくとも1つの面に接着剤で被覆された前記可塑性フィルム枠を提供すること、
前記可塑性フィルム枠の前記内縁の前記接着剤側を前記触媒被覆膜の前記第1の表面に積層すること、それにより前記触媒被覆膜を枠組みすること、
前記触媒被覆膜の前記第2の表面、および前記可塑性フィルム枠の前記内縁付近の前記可塑性フィルムの前記接着剤側に、接着剤の層を塗布すること、
前記可塑性フィルム枠の前記外縁の前記接着剤側を、前記縁シール位置で前記触媒被覆膜の前記第2の表面に面する前記酸化剤および燃料流れ場プレートのうちの1つに積層すること、を含む、方法。
【請求項16】
前記接着剤の層が、
接着剤被覆バッキングフィルムを、前記触媒被覆膜の前記第2の表面、および前記可塑性フィルム枠の前記内縁付近の前記可塑性フィルムの前記接着剤側に塗布すること、および
前記バッキングフィルムを除去すること、によって塗布される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記固体高分子膜電解質が、前記可塑性フィルム枠の前記内縁の付近にカソード触媒被覆を有さず、前記方法が、
前記可塑性フィルム枠の前記内縁を前記固体高分子膜電解質に直接積層することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒被覆膜の前記第2の表面に面する前記ガス拡散層が、前記触媒被覆膜の前記縁を超えて延在し、前記方法が、
前記可塑性フィルム枠の前記内縁の前記接着剤側を前記触媒被覆膜の前記第1の表面に積層する間に、前記触媒被覆膜の前記第2の表面に面する前記ガス拡散層を前記内縁と前記外縁との間の前記可塑性フィルム枠の前記接着剤側に更に積層することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記接着剤が、熱活性化接着剤であり、前記積層するステップが、熱を適用すること、および圧力を適用すること、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化剤および燃料流れ場プレートが、単一両極性流れ場プレートに一緒に接合され、縁シール位置で酸化剤流れ場プレートを燃料流れ場プレートに対してシールするための前記シールが、エラストマーシールである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
複数の燃料電池アセンブリの直列スタックを含む固体高分子電解質燃料電池スタックを製造する方法であって、請求項20に記載の方法に従って前記燃料電池アセンブリを製造すること、前記燃料電池アセンブリをスタックして直列スタックにすること、および前記酸化剤と流れ場プレートとの間の前記エラストマーシールを圧縮すること、それにより前記燃料電池アセンブリをシールすること、を含む、方法。
【請求項22】
両面に接着剤で被覆された前記可塑性フィルム枠を提供することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
縁シール位置で酸化剤流れ場プレートを燃料流れ場プレートに対してシールするための前記シールが、非エラストマーシールであり、前記方法が、前記酸化剤および燃料流れ場プレートを単一両極性流れ場プレートに接合することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
複数の燃料電池アセンブリの直列スタックを含む固体高分子電解質燃料電池スタックを製造する方法であって、請求項23に記載の方法に従って前記燃料電池アセンブリを製造すること、前記燃料電池アセンブリをスタックして直列スタックにすること、並びに前記非エラストマーシールを隣接する前記酸化剤および燃料流れ場プレートに積層すること、それにより前記燃料電池アセンブリをシールすること、を含む、方法。
【請求項25】
縁シール位置で酸化剤流れ場プレートを燃料流れ場プレートに対してシールするための前記シールが、非エラストマーシールであり、前記方法が、
前記可塑性フィルム枠の前記接着剤側に前記触媒被覆膜の前記第2の表面に面する前記ガス拡散層を積層すること、それにより前記触媒被覆膜、前記可塑性フィルム枠、前記触媒被覆膜の前記第2の表面に面する前記ガス拡散層、および前記触媒被覆膜の前記第2の表面に面する流れ場プレートを含む積層されたサブアセンブリを作成すること、
前記触媒被覆膜の前記第1の表面に面する前記ガス拡散層を前記サブアセンブリに積層すること、
前記触媒被覆膜の前記第1の表面に面する前記酸化剤および燃料流れ場プレートのうちの1つを前記サブアセンブリに積層すること、並びに
前記酸化剤および燃料流れ場プレートに前記非エラストマーシールを積層すること、それにより前記燃料電池アセンブリをシールすること、を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
複数の燃料電池アセンブリの直列スタックを含む固体高分子電解質燃料電池スタックを製造する方法であって、請求項25に記載の方法に従って前記燃料電池アセンブリを製造すること、前記燃料電池アセンブリをスタックして直列スタックにすること、および各酸化剤流れ場プレートを燃料流れ場プレートに隣接して一緒に接合すること、を含む、方法。
【請求項27】
前記触媒被覆膜の前記第2の表面に面する前記流れ場プレートの面が、前記流れ場に隣接する移行領域を含み、前記移行領域が、シール機構を備える、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記カソードおよびアノードガス拡散層が、前記触媒被覆膜の前記縁まで延在し、前記方法が、前記内縁と前記外縁との間の前記可塑性フィルム枠を前記移行領域の前記シール機構に積層することを含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子電解質燃料電池スタック用の燃料電池アセンブリを製造するための設計および方法に関する。具体的には、触媒被覆膜を枠組みし、かつ適切なシールを提供するための設計を枠組みすることに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子電解質燃料電池等の燃料電池は、電気化学的に燃料および酸化剤反応物(例えば、それぞれ、水素、および酸素または空気)を変換して電力を生成する。固体高分子電解質燃料電池は、一般的に、カソード電極とアノード電極との間の高分子膜電解質を伝導するプロトンを用いる。電極は、適切な触媒を含有し、典型的には、導電性粒子、バインダ、および材料も含み、湿潤度を修正する。2つの電極の間に挟まれる高分子膜を伝導するプロトンを含む構造は、膜電極アセンブリとして知られている。そのようなアセンブリは、高分子膜に触媒混合物を適切に被覆することによって効率的な様式で作製され得、それ故に、触媒被覆膜(CCM)として広く知られている。
【0003】
通常、アノードおよびカソードガス拡散層は、触媒被覆膜の両側の、そのそれぞれの電極に隣接して用いられる。ガス拡散層は、触媒電極に反応物を均一に分散させ、触媒電極から副生成物を除去するように機能する。次いで、燃料および酸化剤流れ場プレートは、典型的に、そのそれぞれのガス拡散層に隣接して提供され、全てのそれらの構成要素の組み合わせは、典型的な個別の燃料電池アセンブリを表す。流れ場プレートは、数多くの流体分散チャネルを通常含む流れ場を備える。流れ場プレートは、ガス拡散層への反応物の分散、そこからの副生成物の除去、構造的担持および封じ込め、および電流収集を含む複数の機能を果たす。しばしば、燃料および酸化剤流れ場プレートは、その間に冷却剤流れ場を組み込むために、および/または他の組み立て目的のために、単一両極性プレートに組み立てられる。単一電池の出力電圧は、1V程度であるため、複数のそのような燃料電池アセンブリは、通常、市販の適用のために直列で一緒にスタックされる。燃料電池スタックは、自動車への適用等における使用のために直列および/また並列して相互接続されるスタックのアレイに更に接続され得る。
【0004】
したがって、数多くのシールが、典型的な燃料電池スタック構成において必要とされ、市販の高容量製造に好適な様式で十分な信頼できるシールを達成することは、課題である。触媒被覆膜の周辺部のあたりでは、加圧燃料および酸化剤ガスは、互いに切り離されていなければならず(すなわち、膜の縁部あたりのガスの不足は、阻止されなければならない)、外的環境に漏出することもまた阻止しなければならない。存在する場合、任意の更なる構成要素(例えば、シール、ガスケット、枠)を使用して、流体ポートをシールし、反対の電極電位での表面の間に電気分離を提供することもまた一般的である。今まで使用されたシールするプロセスにおける問題点は、高いコスト、多い部品点数、複雑性、長いサイクル時間、高額な構成要素に対する収量リスク(例えば、触媒被覆膜)、および高容量生成を率に応じて増やす能力がないこと、である。
【0005】
3つの主要方法を現在使用して、触媒被覆膜の縁で作業流体をシールするが、それらは、枠、直接それに成型されるエラストマーシール、および接着剤でシールすることである。
【0006】
従来の枠組みされたCCMは、典型的に、縁でCCMに接合されCCMを挟む2つの高分子フィルムを備える。次いで、枠は、シールする目的のためにガスケットとして使用され得る。しばしば、そのような設計を使用して用いられるガス拡散層は、他の周辺部のシールにおいて機械的に補助するように電極の活性エリアを超えて延在する。これらの設計では、燃料電池アセンブリの外側をシールするためのエラストマーシールは、両極性プレート上に成型され得るかまたは離散的に成型され得るかのいずれかであり、次いで、両極性プレートに予め組み立てられ得る。用いられる高分子フィルムは、一般的な種類であり得る。第1の種類は、それ自体が融解し得一緒に積層され得る熱可塑性(例えば、ポリエチレン)である。第2の種類は、好適な接着剤(例えば、熱活性化接着剤)で1つの面に被覆される高分子物である。このことは、改善した機械特性(例えば、PEN)を備えるベース高分子フィルムの使用を可能にする。2つのそのような接着剤被覆フィルムは、接着剤側と接着剤側とを一緒に積層させ得る。そのような高分子フィルムの積層は、典型的に、それらを一緒に融合するかまたは接着剤を活性化させるかのいずれかのために、熱サイクルを必要とする。典型的な触媒被覆膜、枠、およびガス拡散層が、薄く柔軟であるため、この製造プロセスは、問題となる場合がある。更に、CCMは、温度変化および湿度変化の下で寸法的に歪み得る。組み立てのために典型的に必要とされる工具は、接合圧力の高精度に正確な量で活性エリアの縁で順に積層物の各薄い層を接触させるように高精度に機械加工されたステップを含む。許容誤差は、各構成要素が、かなり薄くそれ自体の許容誤差を有するため、非常に厳格である(例えば、CCM、枠、およびガス拡散層は、それぞれ、約10〜25μm、25〜50μm、および150〜200μmの厚さの範囲である)。加えて、熱分離は、加熱積層エリアとCCMの活性エリアとの間で時に必要である。活性エリアは、積層プロセス中に冷却を更に必要とし得る。この複雑なアセンブリ固定具は、数千の熱サイクルにわたって数ミクロン内で寸法的に安定して残らなければならない。また残念なことに、枠材料のうちの大部分は、活性エリアウィンドが周辺部の数mm(ミリメートル)のみの境界部を残すように連続シートから切断されるため、無駄になってしまう。
【0007】
エラストマーシールが膜電極アセンブリ上に直接成型される場合に、液体注入成型プレスを典型的に使用して、CCMおよびガス拡散層を含む積層膜電極アセンブリに直接貼り付けられるシリコーンシールを生成する。シリコーンは、ガス拡散層の縁を飽和させ、ガスへのアクセスからCCMの縁を分離する。シリコーンシールは、流体を外側に向けてシールするように隣接するセパレータプレート上の平らなシール溝に対して圧縮される。このことはまた、所与の膜電極アセンブリに合わせた高精度の工具を必要とし、次に、膜電極アセンブリの安定した構造/機械特性を必要とする。変形は、プロセスの安定性に影響を与え、典型的なガス拡散層の無作為のファイバー材料の所与の本質を制御することは困難であり得る。更に、キャビティ金型の高圧力エラストマーは、ガス拡散層をCCMに接合させるために、数種の不具合をもたらすかまたは更なるガスケットを必要とするかのいずれかで、ガス拡散層からCCMの非拘束縁を切り離すことができる。成型はまた、高い資本コストおよび長いサイクルタイムであるため、それ故に不要な動作である。
【0008】
接着剤でシールする手法では、2つの種類の接着剤は、すなわち、熱硬化接着剤および周囲温度硬化接着剤が考えられ得る。前者では、前述の枠組みプロセスに説明されるように、CCMへの組み立て中に同じリスクが存在し、それ故に同じ種類の制御を必要とする。後者では、硬化時間は、一般的に、必要なポット寿命を獲得し構成要素への適用を可能にするためには、不要に長い。
【0009】
典型的な固体高分子電解質燃料電池の別のシールする要件は、流れ場プレートの反応物流れ場と反応物ポートとの間に存在する移行領域にある。ここで再度述べるが、反応物流体ストリームは、適切に切り離されなければならない。これらの領域のためのシールはまた、膜電解質またはCCMにシールする必要があり、反応物間の圧力差から生じる曲げ力に抵抗するのに十分なほど剛性である必要があり、それ故に、シールは、移行領域の流体流れを吸蔵せず、よって性能に影響しない。一般的に、より厚くシールする構成要素が、必要な剛性を獲得するために考慮されなければならないため、剛性と燃料電池厚さとの間でトレードオフがなされなければならない。従来技術の構成では、延在枠(移行領域にわたって延在する)と延在ガス拡散層を備える枠組みされたCCMを用いる設計は、移行領域において必要なシールを提供できる。ガス拡散層が剛性を提供する一方で、枠組みされたCCMは、CCMにシールを提供する。あるいは、更なる架橋構成要素(例えば、金属インレー、強化高分子材料シム)は、更なる剛性を提供するように含まれ得る。そのような手法が移行領域において十分なシールすることを提供できるが、それらは、更なる材料および複雑さを含む。
【0010】
これまでになされた進歩にもかかわらず、燃料電池アセンブリプロセスにおいては、より大きな単純化、信頼性、およびコスト削減の必要性が残る。本発明は、これらの必要性を満たし、更なる関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、固体高分子電解質燃料電池スタック用の燃料電池アセンブリを製造するためのより単純な構成および方法を提供する。燃料電池アセンブリは、触媒被覆膜と、可塑性フィルム枠を使用してその内部に触媒被覆膜を枠組みする構成と、を用いる。本発明の実施形態は、減少された部品点数、構成要素材料のより効率的な使用、および関連する積層プロセスの改善した頑健性をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、可塑性フィルム枠は、1つの面に接着剤で被覆され、その内縁で触媒被覆膜の1つの表面およびその外縁で反対側の流れ場プレートに積層される。具体的には、これらの燃料電池アセンブリは、第1および第2の表面を有し、かつカソード側ではカソード触媒で被覆され、アノード側ではアノード触媒で被覆される固体高分子電解質膜電解質を含む、触媒被覆膜と、カソード触媒に隣接するカソードガス拡散層と、アノード触媒に隣接するアノードガス拡散層と、酸化剤流れ場プレートが、カソードガス拡散層に隣接する面に酸化剤流れ場を備える、カソードガス拡散層に隣接する酸化剤流れ場プレートと、燃料流れ場プレートが、アノードガス拡散層に隣接する面に燃料流れ場を備える、アノードガス拡散層に隣接する燃料流れ場プレートと、縁シール位置で酸化剤流れ場プレートを燃料流れ場プレートに対してシールするためのシールと、少なくとも1つの面に接着剤で被覆され、触媒被覆膜を枠組みする可塑性フィルム枠と、を備える。更に、可塑性フィルム枠の内縁の接着剤側が、触媒被覆膜の第1の表面に積層され、可塑性フィルム枠の外縁の接着剤側が、縁シール位置で触媒被覆膜の第2の表面に面する酸化剤および燃料流れ場プレートのうちの1つに積層される。この構成は、接着剤が裏打ちされた枠材料の単一層が燃料電池電極をそれらの縁で切り離すことを可能にする。また、触媒被覆膜は、平らな安定した流れ場プレートに積層され得、それにより積層プロセスの頑健性を改善することができる。
【0013】
先行する実施形態では、接着剤の層は、触媒被覆膜の第2の表面、および可塑性フィルム枠の内縁付近の可塑性フィルムの接着剤側に塗布され得る。この方法で、より信頼できる流体シールが、獲得され得る。あるいは、固体高分子膜電解質は、可塑性フィルム枠の内縁付近の第1の表面上に触媒被覆を有し得ない。次いで、可塑性フィルム枠の内縁は、固体高分子膜電解質に直接積層され得、より信頼できる流体シールを達成することができる。
【0014】
可塑性フィルム枠は、触媒被覆膜のいずれの表面にも積層され得るが、カソード側にもそれを行うことが好ましくあり得る。よってここでは、触媒被覆膜の第1の表面は、カソード側であり、第2の表面は、アノード側であり、燃料流れ場プレートは、第2の表面に面する。この方法では、燃料ガスに曝露される触媒被覆膜のエリアは、カソードガスに曝露されるものよりもやや大きくなり得、それにより燃料切れ関連の触媒腐食のリスクを緩和し得る。
【0015】
縁シール位置で酸化剤流れ場プレートを燃料流れ場プレートに対してシールするためのシールは、シリコーンエラストマー等のエラストマーシールであり得る。そのような選択および単一両極性流れ場プレートに一緒に接合される酸化剤および燃料流れ場プレートを使用して、巧みな繰り返し単位は、後の組み立てのために、燃料電池スタックに製造され得る。
【0016】
代替的な実施形態では、可塑性フィルム枠は、両面に接着剤で被覆され、縁シール位置でのシールが、次いで、積層された非エラストマーシールであり得る。この選択では、完全なシールされた燃料電池単位は、後の組み立てのために、燃料電池スタックに製造され得る。
【0017】
好適な可塑性フィルム枠は、ポリエチレンナフタレートである。ポリプロピレンは、別の潜在的選択肢である。用いられる接着剤は、熱活性化接着剤であり得、それ故に、積層するステップは、熱を適用することおよび圧力を適用することを含むことができる。
【0018】
これらの実施形態では、内縁と外縁との間の可塑性フィルム枠の接着剤側にも積層され得るように、触媒被覆膜の第2の表面に面するガス拡散層は、触媒被覆膜の縁を超えて任意に延在し得る。および、触媒被覆膜の第1の表面に面するガス拡散層は、触媒被覆膜の縁まで任意に延在し得、可塑性フィルム枠の内縁は、触媒被覆膜と第1の表面に面するガス拡散層との間に位置し得る。
【0019】
別の有利な実施形態では、可塑性フィルム枠は、流れ場プレート内の移行領域に組み込まれるシール機構に積層される。具体的には、これらの燃料電池アセンブリでは、触媒被覆膜の第2の表面に面する流れ場プレートの面が、流れ場に隣接する移行領域を含み、移行領域が、シール機構を備える。カソードおよびアノードガス拡散層は、触媒被覆膜の縁まで延在し得る。内縁と外縁との間の可塑性フィルム枠は、移行領域内および周りのシール機構に積層される。
【0020】
前述の実施形態は、可塑性フィルム枠の内縁の接着剤側を、触媒被覆膜の第1の表面に積層すること、それにより触媒被覆膜を枠組みし得ること、および可塑性フィルム枠の外縁の接着剤側を、縁シール位置で触媒被覆膜の第2の表面に面する酸化剤および燃料流れ場プレートのうちの1つに積層することによって製造され得る。
【0021】
関連のある実施形態では、接着剤の層は、触媒被覆膜の第2の表面、および可塑性フィルム枠の内縁付近の可塑性フィルムの接着剤側に、接着剤被覆バッキングフィルムを触媒被覆膜の第2の表面、および可塑性フィルム枠の内縁付近の可塑性フィルムの接着剤側に塗布することによって塗布され得、次いでバッキングフィルムを除去し得る。
【0022】
関連のある実施形態では、可塑性フィルム枠の内縁は、固体高分子膜電解質に直接積層され得る。触媒被覆膜の第2の表面に面するガス拡散層が、触媒被覆膜の縁を超えて延在する実施形態では、このガス拡散層はまた、可塑性フィルム枠の内縁の接着剤側の、触媒被覆膜の第1の表面への積層中に、内縁と外縁との間の可塑性フィルム枠の接着剤側に積層され得る。
【0023】
エラストマーシールが用いられると、燃料電池スタックは、燃料電池アセンブリをスタックして直列スタックにすること、および酸化剤と流れ場プレートとの間のエラストマーシールを圧縮すること、それにより燃料電池アセンブリをシールすること、によって製造され得る。
【0024】
可塑性フィルム枠が、両面に接着剤で被覆され、非エラストマーシールが用いられるとき、燃料電池スタックは、酸化剤と燃料流れ場プレートとを単一両極性流れ場プレートに一緒に接合すること、燃料電池アセンブリをスタックして直列スタックにすること、非エラストマーシールを隣接する酸化剤および流れ場プレートに積層すること、それにより燃料電池アセンブリをシールすること、によって製造され得る。あるいは、燃料電池スタックは、(触媒被覆膜、可塑性フィルム枠、触媒被覆膜の第2の表面に面するガス拡散層、および触媒被覆膜の第2の表面に面する流れ場プレート、を含む)可塑性フィルム枠の接着剤側に触媒被覆膜の第2の表面に面するガス拡散層を積層すること、それにより積層されたサブアセンブリを作成すること、触媒被覆膜の第1の表面に面するガス拡散層をサブアセンブリに積層すること、触媒被覆膜の第2の表面に面する流れ場プレートをサブアセンブリに積層すること、並びに非エラストマーシールを酸化剤および流れ場プレートに積層すること、それにより燃料電池アセンブリをシールすること、によって、複数の燃料電池サブアセンブリを作製することによって製造され得る。次いで、スタックは、燃料電池アセンブリをスタックして直列スタックにすること、各酸化剤流れ場プレートを燃料流れ場プレートに隣接して一緒に接合すること、によって製造される。
【0025】
本発明の別の実施形態では、可塑性フィルム枠は、触媒被覆膜を各燃料電池アセンブリに枠組みし、流れ場プレートのうちの少なくとも1つは、流れ場に隣接する移行領域を備える。移行領域は、シール機構を備え、可塑性フィルム枠は、移行領域のシール機構に積層される。そのような燃料電池アセンブリは、可塑性フィルム枠を少なくとも1つの面に接着剤で被覆すること、可塑性フィルム枠の接着剤側を移行領域のシール機構に積層すること、によって作製され得る。そのような実施形態では、より薄い可塑性枠は、ここで、より厚いガス拡散層のかわりに移行領域の流体切り離し機能を提供でき、それ故に、電池の厚さおよび廃棄される拡散層材料を削減できる。および前述の実施形態のように、触媒被覆膜は、平らな安定した流れ場プレートに積層され、それにより積層プロセスの頑健性を改善することができる。移行領域をシールするこれらの実施形態は、単独で、あるいは接着剤が裏打ちされた枠材料の単一の層を使用して燃料電池電極をそれらの縁で切り離す実施形態と組み合わせて、使用され得る。後者は、前者を可能にするために特に有用である。
【0026】
本発明のこれらおよび他の態様は、添付の図面および続く詳細な説明への参照時に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1a】1つの面に接着剤を備える単一の可塑性フィルム枠を含み、CCMのカソード側とアノード流れ場プレートとに積層される燃料電池アセンブリの模式的断面図を示す、図である。また、本アセンブリでは、アノードガス拡散層が、CCMを超えて延在し、エラストマーシールが、用いられる。
【
図1b】可塑性フィルム枠の内縁が、固体高分子膜電解質に直接積層されることを除いて、
図1aのものと同様の燃料電池アセンブリの模式的断面図を示す、図である。
【
図2】アノードガス拡散層が、CCMの縁まで延在し、可塑性フィルム枠が、両面に接着剤を有し、非エラストマーシールが用いられることを除いて、
図1aのものと同様の燃料電池アセンブリの模式的断面図を示す、図である。
【
図3】可塑性フィルム枠が、移行領域のシール機構に積層されることを除いて、
図1aのものと同様の燃料電池アセンブリの模式的断面図を示す、図である。
【
図4】従来の可塑性フィルム枠構成が、CCMの両面に用いられることを除いて、
図3のものと同様の燃料電池アセンブリの模式的断面図を示す、図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書には、下記の定義が使用されている。定量的文脈では、「約」という用語は、上はプラス10%〜下はマイナス10%の範囲であるとして解釈されたい。
【0029】
「積層する」は、少なくとも2枚のシート状の構成要素を接合または統合することを指し、「積層物」は、関連する生成物である。
【0030】
「移行領域」という用語は、反応物流れ場のチャネルと燃料電池流れ場プレートの反応物ポートとの間の領域を参照して本明細書に使用される。この領域では、流体流れは、単一の流れの大型の本体から多重の小さいチャネルの流れストリームに移行する。移行領域は、一般的に、流れ場で必要とされる分散された流れとポートで生じるバルク流れとの間の反応物と副生成物との流れを適切に移行させるために、機能を備える。移行領域は、一般的に、燃料電池の電気化学的に活性な部分として考慮されない。
【0031】
本発明の例示的な実施形態の模式的断面図が、
図1aに示される。含まれるより小さい構成要素を解像することを補助するように、CCMの縁近くの拡大図も提供される。ここでは、燃料電池アセンブリ1は、電解質3の対向表面に被覆されたカソード4およびアノード5を備える固体高分子電解質3を含むCCM2を含む。カソードガス拡散層6およびアノードガス拡散層7は、それぞれ、カソード4およびアノード5に隣接して位置する。燃料電池アセンブリ1はまた、単一アセンブリに一緒に接合されている燃料流れ場プレート8および酸化剤流れ場プレート9を含む両極性流れ場プレートアセンブリも含む。エラストマーシール10は、類似の燃料電池アセンブリの直列スタックを備える燃料電池スタックにおいて隣接の燃料流れ場プレート(図示されず)に対して、燃料流れ場プレート8をシールするための燃料電池アセンブリ1の縁、縁位置10aで現れる。
図1aの実施形態では、1つの面に接着剤13を備える単一の可塑性フィルム枠12は、その内縁12aでCCM2のカソード側に、およびその外縁12bで燃料流れ場プレート8に積層される。
図1aでは、アノードガス拡散層7のセクション7aは、CCM2の縁を超えて延在し、可塑性フィルム枠12は、セクション7aにも積層される。
【0032】
任意の更なる接着剤なしにCCM2の縁で十分なシールを獲得することは可能であるが、
図1の好ましい実施形態では、更なる接着剤層14は、CCM2のアノード表面、および可塑性フィルム枠12の内縁12a付近の可塑性フィルム枠12の接着剤側に塗布される。更なる接着剤層14と接着剤が裏打ちされた可塑性フィルム枠12との組み合わせは、より頑健なシールのためにCCM2の縁を基本的に封止する。
【0033】
図1bは、
図1aに示されるものに対して代替的な実施形態を示す。再度述べるが、CCMの縁近くの拡大図も提供される。
図1bでは、
図1aと同じ番号を使用して共通の構成要素を示す。ここで燃料電池アセンブリ15は、類似の構成であるが、電解質3は、可塑性フィルム枠12の内縁12a付近の両方の表面に触媒被覆を有しない(すなわち、電解質3の縁でカソード4およびアノード5が存在しない)。この実施形態では、可塑性フィルム枠12は、電解質3に直接積層され得る。
【0034】
図2は、接着剤が可塑性フィルム枠の両面に使用される本発明の更なる実施形態を示す。このことは、非エラストマーシールをアセンブリにおいて使用することを可能にする。再度述べるが、CCMの縁近くの拡大図も提供される。前と同様、
図1aと同じ番号を使用して共通の構成要素を示す。しかしながらここでは、燃料電池アセンブリ20は、可塑性フィルム枠12の両面に接着剤13を用い、次いでそれを使用して、隣接する燃料流れプレート8および隣接する酸化剤流れ場プレート9を外縁12bで直接シールする。接着剤13と可塑性フィルム枠の外縁12bとの組み合わせは、燃料電池に関して非圧縮性非エラストマー縁シールとして機能する。代替的な実施形態では(図示されず)、非エラストマーガスケットまたはスペーサが、燃料および酸化剤流れ場プレート8、9のうちの1つまたは両方と、接着剤が被覆された可塑性フィルム枠の外縁12bとの間で用いられてもよい。この代替的な実施形態では、接着剤13と可塑性フィルム枠の外縁12bとの組み合わせは、燃料電池に関して非エラストマー縁シールとして機能する。
【0035】
したがって、
図2の燃料電池アセンブリ20は、完全にシールされた単位の燃料電池であるが、予め組み立てられた単一両極性プレートを含まない。代わりに、隣接する燃料および酸化剤流れ場プレートは、燃料電池スタックの後の組み立て中に一緒に接合される。例えば、
図2は、燃料電池スタックの2つの隣接する燃料電池から酸化剤流れ場プレート21および燃料流れ場プレート22が、それぞれ、接着剤23を介して、燃料流れ場プレート8および酸化剤流れ場プレート9にどのように接合され得るかを示す。
【0036】
図2の実施形態はまた、可塑性フィルム枠の内縁12a付近の代替的な配置を示す。ここで、アノードガス拡散層7もカソードガス拡散層6もいずれもが、CCM2の縁丁度まで延在する。
【0037】
先行の図では、流れ場プレートの移行領域においてシールする構成は、多種多様な従来の方法でなされ得るも図示はされない。
図3は、可塑性フィルム枠が燃料流れ場プレート8の移行領域においてシール機構に積層される、本発明の有利な実施形態の等角図を示す。ここで燃料電池アセンブリ30は、CCM2の付近における
図1aの燃料電池アセンブリ1に対する構成に類似している。再度述べるが、同じ番号を使用して共通の構成要素を示す。ここではしかしながら、シールは、延在した可塑性フィルム枠12を種々のシール機構32に積層することによって移行領域31において獲得される。(
図3では、可塑性フィルム枠12は、基本構造を表示するために移行領域31において透過的に示される。可塑性フィルム枠12がシール機構32に積層されているエリアは、平行線模様で示されている。)これらのシール機構32は、典型的に移行領域31の周りおよび内に現れ、基本的に接着剤が裏打ちされた可塑性フィルム枠12が接合するであろう着地部である。そのような機能は、典型的に、流れ場プレートの床部に向かって差動流体圧力に対抗してそれらを前進させる膜電極アセンブリを担持する。
【0038】
図4は、
図3に示される移行領域のシールする構成が別様の従来技術の燃料電池構成で用いられる、本発明の更なる実施形態を示す。CCMの縁近くの拡大図がまた提供される。
図4は、従来の可塑性フィルム枠構成が、CCM2の両面に用いられる燃料電池アセンブリ40の模式的断面図を示す。(電池アセンブリ40は、従来の可塑性フィルム枠構成を除いてであるが、
図1に示される実施形態にかなり類似している。再度述べるが、同じ番号を使用して共通の構成要素を示す。しかしながらここで、燃料流れ場プレート8および酸化剤流れ場プレート9は、接着剤23aを用いて一緒に接合される。)従来の可塑性フィルム枠構成は、2つの切り離された可塑性フィルム枠41、42を用いるが、それらは、挟んでCCM2の縁をシールし、燃料電池の燃料と酸化剤側との間に切り離しを提供する。示されるように、可塑性フィルム枠41、42は、それらが合うところで接着剤被覆43を用いて一緒に接合される。(代替的な従来の実施形態では、可塑性フィルム枠41、42は、更なる接着剤を用いることなく融解して一緒に接合され得る。)示されるように、移行領域31は、移行領域44、酸化剤移行領域45、および酸化剤ポート47に流体接続する酸化剤のためのバックフィードスロット46を含む。
【0039】
図3にあるように、シールは、可塑性フィルム枠41、42を種々のシール機構32に積層することによって移行領域31において獲得される。このことを達成するために、接着剤49は、最初に被覆されるかまたは別途シール機構32に塗布され、その後、可塑性フィルム枠41、42は、そこに積層される。次いで、燃料電池スタックは、複数の燃料電池アセンブリ40を適切にスタックして一緒に接合することによって容易に作製され得る。
図4は、接着剤23bを介してすでに一緒に接合されている酸化剤流れ場プレート21および燃料流れ場プレート22を含む隣接するそのような燃料電池アセンブリからの両極性プレートを示す。隣接する燃料電池アセンブリは、シール機構32に相補的である酸化剤流れ場プレート21に、それ自体のシール機構48を有する。したがって、シールすることによる接合は、最初に被覆することかまたは接着剤50をシール機構48に塗布することによって生成され、その後、整合し、隣接する燃料電池アセンブリを燃料電池アセンブリ40に積層する。(接着剤型のシールを用いる代わりに、エラストマーシールが代わりに考慮されてもよい。しかしながら、可塑性フィルム枠の引張強度の規格は、任意のオープンスパンにわたってシールの反応力に耐えるように十分により高くなる必要があり得る。一方で、接着剤50の使用によって発現される圧力が存在せず、したがって、そのような接着剤型のシールが望ましい場合がある。)
【0040】
可塑性フィルム枠を移行領域のシール機構に(例えば
図3および4に示されるように)シールすることによって、フィルム枠は、反応物流体キャビティにわたって引張状態で保持される。流体圧力荷重は、引張状態にそれを持ってくるフィルムに作用し(それ故にフィルムの材料属性を理想的に適合させる)、それは、プレートを備える積層される接着剤継目のせん断荷重に変換される(それ故に接着剤の材料属性を理想的に適合させる)。
【0041】
先行の実施形態では、可塑性フィルム枠は、燃料電池環境での使用のために好適な任意の高分子材料製であり得、許容される機械属性を有し得る。ポリエチレンナフタレートは、特に好適である。接着剤裏打ちは、市販のSheldahl A438等のこの目的のための種々の接着剤を含み得、25〜50ミクロン程度の厚さであり得る。シールする目的のための材料重複は、一般的に、1〜3mm(ミリメートル)程度の寸法であり得る。
【0042】
一般的に、接着剤塗布が示されるとき、接着剤は、任意に、離散パターンに(例えば、スクリーンまたはインクジェットを用いて)被覆され得るか、あるいはローラ被覆を介して連続的に塗布され得る。例えば、可能なとき、接合される任意の構成要素エリアは、(
図3および4の燃料流れ場プレート8のシール機構32等の)直立した着地部を組み込む場合がある。そのような構成要素がローラ被覆機を通過すると、接着剤は、連続的かつ均一にそれらの直立した着地部に堆積されるであろう。
【0043】
先行のアセンブリの設計および方法は、多くの潜在的な利点を提供する。これらは、減少された部品点数を含む(例えば、枠の1つの層および潜在的に1つの成型されるエラストマーシールが、排除され得る)。積層プロセスの頑健性は、柔軟なフィルムよりもむしろ平らな安定したプレート表面に積層することにより、それ自体が改善される。積層固定具への整合および位置付けは、より正確になされ得る。
【0044】
更に、燃料電池の厚さにおける減少に関して可能性が存在する。流体をシールすることおよび反応物流体圧力荷重を達成するために必要とされる全体的な厚さは、より低いものである。例えば、CCM縁近くのシールエリアでは、接着剤が被覆されたポリエチレンナフタレートの1つの層は、2つのガス拡散層およびCCMの1つの層を置換し得、それにより最先端の構成要素厚さに基づいて最大約300ミクロンの厚さを留保し得る。
【0045】
更なる可能性のある利点は、必要とされる成型装置の量、電池をシールすることを行うのに必要とされる全体的なサイクル時間、およびコストにおける削減を含む(ガス拡散層材料の排除かまたはCCM縁近くのシールエリアの更なる架橋構成要素を介して)。
【0046】
下記の実施例は、本発明の例示的なものであるが、いかなる方法においても限定されるように解釈されるべきではない。
【0047】
実施例
実験室サイズの実験用燃料電池アセンブリを、固体高分子電解質燃料電池に関する従来の構成要素、すなわち、ペルフルオロスルホン酸塩化イオノマー膜電解質にカーボン担持された白金触媒を含むCCM、カーボン粒子ベースの副層を含むカーボン繊維ガス拡散層、およびグラファイト/樹脂複合材料製である燃料および酸化剤流れ場プレート、を用いて作製した。しかしながら、燃料電池アセンブリを、単一の接着剤で被覆された可塑性フィルム枠を用いてCCMの縁でシールを提供するように、本発明に従って作製した。使用された可塑性は、ポリエチレンナフタレートであり、接着剤は、Sheldahl A438であった。アセンブリを、CCMの縁近くのアノード表面に塗布された任意の更なる接着剤層14を用いないことを除いて、
図1aに示されるように作製した。
【0048】
次いで、実験用燃料電池アセンブリを、反応物圧力および動作条件の温度の下で試験した。CCMでの縁シールは、初期には許容されるものであったが、アセンブリは、ガスおよびCCMの縁周辺の電気的短絡が原因で経時的に早期不具合を受けた。
【0049】
先行の試験を、今回は更なる接着剤層(
図1aの更なる接着剤層14のようなもの)を塗布したことを除いて、別の実験用燃料アセンブリを使用して繰り返した。この実験用燃料電池アセンブリを、前と同じ動作条件の下で試験した。今回は、燃料電池アセンブリは、ガスおよびCCMの縁のあたりの電気的短絡が原因での早期不具合を受けなかった。
【0050】
先行の試験を、CCMの縁近くのアノード表面に更なる接着剤層を再度用いつつ、今回は市販サイズの実験用燃料アセンブリ(例えば、自動車への適用のためにサイズ決めされたもの)を使用して再度繰り返した。更に、
図3に示されるように、可塑性フィルム枠を、燃料流れ場プレートの移行領域においてシール機構に積層した。このより大きい実験用燃料電池アセンブリを、前と同じ動作条件の下で試験した。および前のように、試験において、燃料電池アセンブリは、いかなる早期不具合も受けなかった。
【0051】
本明細書において参照される上記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物の全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
本発明の特定の要素、実施形態、および適用が、示され説明されるが、本開示の趣旨および範囲、特に前述の教義の観点から逸脱することなく当業者によって修正がなされ得るため、当然ながら、本発明は、それらに限定されるものではないことが理解されるであろう。そのような修正は、本明細書に添付される特許請求の範囲の権限および範囲内であると考えられる。